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〈新刊紹介〉『ゲーム理論はアート社会のしくみを思いつくための繊細な哲学』松島 斉 著 『政府の銀行貸出への関与は日本の中小企業を強くしたか円滑化法、信用保証制度、資本注入政策の効果についての実証研究』近藤隆則 著

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Academic year: 2021

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彦根論叢 Winter / Dec. 2018 / No.418 164

新刊紹介

過去約2年間に発行された書籍の中から時事的で 話題性があり内容豊かなものを会員のご要望に応 えながら編集委員会が選択して紹介いたします。

『ゲーム理論はアート 社会のしくみを

思いつくための繊細な哲学』

松島斉 著|日本評論社、2018、280pp.

『政府の銀行貸出への関与は日本の中小企

業を強くしたか

 円滑化法、信用保証制度、資 本注入政策の効果についての実証研究

近藤隆則 著|晃洋書房、2018、182pp.  本書は、ゲーム理論の高名な研究者である著者が、 貧困の救済、全体主義、腎交換などのタブー、証券 取引などの様々な「社会のしくみ」を考えるに際して ゲーム理論をどのように使うことができるかという点 を、入門者向けに解説したものである。  入門者向けといっても、ゲーム理論の入門書にあ りがちなゲーム理論そのものあるいはその理解のた めに必要な数学を解説するのではない。先述した具 体的な「社会のしくみ」を説明する簡単な仮設的モデ ルを提示しながら、ゲーム理論が特に経済学におい てこれまで如何に大きな貢献をしてきたか、また今後 も有益であるために何が必要かという点が説明され ると共に、経済学を離れた社会理論としてのゲーム 理論の可能性を説く。この過程において、仮設モデ ルを思いつく創造性、芸術性が強調される。その一 方で、ゲーム理論は具体的な問題解決の手助けに はなるがそれだけでは最終的な解決には至らないと いう点についても正直に認めている。  本書はこれらについて個人的体験を含めつつ著 者独特の筆致で描いており、この点において読者を 選ぶ面があるのかもしれない。仮にそうであったとし ても、芸術性、創造性というこれまで必ずしも重視さ れていなかった観点からゲーム理論を眺めるという 着想は既存の類書からは得がたいものである。他と は一線を画す新たな切り口による入門書の登場で ある。   評/『彦根論叢』編集委員/片山雅志  本書は、政府の銀行貸出に対する関与のうち、中 小企業金融円滑化法、公的信用保証制度、銀行へ の資本注入政策という

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つの政策・制度について、政 府関与による効果の実証分析を試みたものである。  その一例として、円滑化法施行から失効

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年前ま での

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カ年分のデータを用いて、同法に基づく貸出 条件変更の増加は当期の倒産件数を有意に減少さ せるが、

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期先には係数の有意性はなくなり、

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期先 には逆に有意に倒産件数を増加させているとの結 論を得、そのような分析結果などを根拠として、円滑 化法は政府の失敗であるとの評価を行っている。  しかし円滑化法は、本書にもある通りあくまで中 小企業再生のための「時間稼ぎ」でしかなく、再生支 援協議会や銀行等金融機関を中心とした再生支援 の取組とセットになって中小企業の倒産を防止する という政策目的を達成しようとしたその一部分であっ て、仮に円滑化法による条件変更自体は機能したと しても再生支援がきちんと作動しなければ倒産は増 加する。この点を踏まえれば、円滑化法による条件 変更だけではなく再生支援策についても踏み込み、 両者合わせて検証を行わなければ、円滑化法に関 する正確な検証を行うことができないであろう。  このように気になる点はいくつか存在するものの、 本書のような円滑化法等の政策効果に関する直接 的な実証研究はこれまでにはなく、今後の政府によ る貸付市場への介入政策を検討する上で多大な意 義を有するものと考えられる。 評/『彦根論叢』編集委員/片山雅志

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