• 検索結果がありません。

顔と声による情動認知と他の認知課題との関連

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "顔と声による情動認知と他の認知課題との関連"

Copied!
6
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)Vol.2016-MUS-113 No.8       2016/10/14. 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG TechnicalReport. 顔と声による情動認知と他の認知課題との関連 河原美彩子 1 1. 山本寿子 2 3. 田中章浩 2. 東京女子大学大学院人間科学研究科 〒167-8585 東京都杉並区善福寺 2-6-1 2 東京女子大学現代教養学部 〒167-8585 東京都杉並区善福寺 2-6-1 3 東京大学大学院教育学研究科 〒113-0033 東京都文京区本郷 7-3-1 E-mail: [email protected]. あらまし. 表情と音声を手がかりとした情動認知における発達的変化と他の認知課題,特に発話からの感情理解との関連につ. いて 5~12 歳の子どもおよび大人を対象に検討した.実験では,表情と音声感情が一致または矛盾する動画を呈示し,それが喜 びと怒りのどちらを表現しているか参加者に判断させる課題 1 と,言語内容と言い方が一致または矛盾する音声を呈示し,発話 者の感情をポジティブ感情かネガティブ感情に分類させる課題 2 を実施した. その結果, 課題 1 では音声感情を重視した判断が, 課題 2 では言い方を重視した判断が,児童期において年齢に伴い徐々に増加すること,さらに,表情と音声,あるいは言語内容 と言い方が表す感情の組み合わせによって発達的変化の時期や様相が異なることが示された.また,2 つの課題間の相関を検討 したところ,大人において関連が見られた.これらの結果は,各情動認知課題において発達的な変化の過程に差異があること, さらに複数の情報を手がかりとした課題間の関連を示唆している.. キーワード. 多感覚知覚,認知発達,情動. The Relationship between Emotion Perception from Face and Voice and Other Cognitive Tasks Misako KAWAHARA1 , 1 Tokyo. Hisako W. YAMAMOTO 1 2,. Akihiro TANAKA1. Woman’s Christian University 2-6-1 Zempukuji, Suginami-ku, Tokyo, 167-8585 Japan 2 The. University of Tokyo. 7-3-1 Hongo, Bunkyo-ku, Tokyo, 113-0033 Japan. E-mail: [email protected] Abstract The current study investigated the development of emotion perception from face and voice and the relationships with other cognitive tasks, especially emotion perception from spoken words in Japanese adults and children from ages five to twelve. In Task 1, a face and a voice, expressing either congruent or incongruent emotions, were presented simultaneously on each trial. Participants judged whether the person is happy or angry. In Task 2, a vocal tone and verbal content, expressing either congruent or incongruent emotions, were presented on each trial. Participants judged whether the person is positive or negative. The rate of vocal responses in Task 1 and the rate of vocal tone responses in Task 2 gradually increased with age in childhood. Results also showed that these developmental period and process differ by the combinations of facial and vocal emotions or verbal and nonverbal emotions. The correlations between these two tasks were observed only in adults. These results suggest differential developmental changes in each cognitive task, and shared processes between these tasks. Keywords Multisensory perception, Cognitive development, Emotion. 1. は じ め に. るため,複数の情報を手がかりとして相手の感情を読. 私たちは日常生活において多くの他者と関わり,コ. みとる必要がある.しかし,その際に手がかりとしや. ミュニケーションをとっているが,その中で伝達し合. すい情報への重みづけは普遍的ではなく,文化差や発. っているものは言語情報に限定されず,表情や声の調. 達的な変化がみられることが明らかにされてきている.. 子 と い っ た 非 言 語 情 報 も 大 い に 含 ま れ て い る [1].ま た , 我々はこうした様々な非言語情報を同時に知覚してい. 顔と声を手がかりとした情動認知においては,多感 覚情報の統合様式に文化差があることが報告されてお り,視覚情報である表情は日本人よりも 欧米人に,聴. ©2016 Information Processing Society of Japan.

(2) 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG TechnicalReport. 覚情報である音声感情は欧米人よりも日本人に重視さ. Vol.2016-MUS-113 No.8       2016/10/14. っ た . 喜 び (M=777.1ms, SD=88.5) と 怒 り (M=767.4ms,. れ や す い こ と が 示 さ れ て い る [2,3]. ま た , こ の 文 化 差. SD=95.7)の 発 話 刺 激 が 組 み 合 わ さ れ た , 表 情 と 音 声 感. は 5-6 歳 の 幼 少 期 で は 見 ら れ ず , 児 童 期 に お い て 日 本. 情 が 矛 盾 す る 不 一 致 刺 激 も 使 用 し た .し た が っ て 計 32. 人が徐々に音声感情を重視する傾向を強めていくとい. 個 の 発 話 刺 激( 2( 話 者 )×4( セ リ フ )×4( 表 情 と 音. う 発 達 的 変 化 も 報 告 さ れ て い る [4].. 声 の 組 み 合 わ せ:2 感 情 一 致 ×2 感 情 不 一 致 ))が あ っ. 音声を手がかりとした情動認知に ついては,表情の. た.この他,練習用として「あれどうなったの」とい. みを手がかりとした感情判断に比べ,難易度が高いこ. うセリフに,表情と音声感情がどちらも喜び,あるい. と が 明 ら か と な っ て い る [5].ま た ,発 達 的 変 化 が み ら. は怒りの感情を付与して発話した 2 個の動画を用いた.. れることも報告されており,音声からの感情識別能力. 課題 2. は 児 童 期 の 間 向 上 し 続 け る こ と が 示 さ れ て い る [6].こ. 記録された音声刺激を使用した.音声は,ポジティブ. 男女の日本語話者が発話した感情的な発話が. の音声による情動認知でも,言語情報(ことばの字義. な言語内容のセリフ(「いいよ」「上手だね」「優し. 的な意味)とパラ言語情報(言い方)という複数の情. いね」「楽しいね」)と,ネガティブな言語内容のセ. 報を手がかりとして発話者の感情を判断する場合があ. リ フ(「 が っ か り だ よ 」「 だ め だ よ 」「 下 手 だ ね 」「 つ. り,これらの情報に対する重みづけは, 言語情報から. まらないね」)が,ポジティブまたはネガティブな言. パラ言語情報に重きをおくよう年齢に伴い徐々に変化. い 方 で そ れ ぞ れ 発 話 さ れ て い た .し た が っ て 計 16 種 類. す る こ と が 示 さ れ て い る [7,8]. こ れ に 加 え , 日 本 人 は. の刺激があった.. 欧米人と比較してパラ言語情報をより重視する傾向に あ る と い う 文 化 差 の 存 在 も 明 ら か と な っ て い る [9]. 顔と声による情動認知と,言語情報とパラ言語情報. 2.3. 手 続 き 課題 1. 実験は日本科学未来館の実験工房にて実施し. による情動認知の 2 つの認知課題は,発話者の感情を. た.各実験参加者はパーティションで仕切られた個別. 判断する際に複数の情報を手がかりとするという点で. ス ペ ー ス に 設 置 さ れ た PC の 正 面 に 着 席 し , 課 題 に 取. 共通している.しかしながら,これまでにこの関連性. り 組 ん だ .各 試 行 で は ,注 視 点( + 記 号 )と 合 図 音 (440Hz. については検討されておらず,各課題における発達的. の 純 音 )が 同 時 に 呈 示 さ れ た 後 ,動 画 刺 激 が モ ニ タ お よ. 変化の過程も比較されていない.. びヘッドホンからランダムに呈示された.動画は,黒. そこで,本研究では上記の問題を検討することを目. い 背 景 の デ ィ ス プ レ イ ( 15.6 イ ン チ ) の 中 央 に 640×. 的 と し ,先 行 研 究 [2]で 用 い ら れ た 刺 激 と 手 続 き が 類 似. 480 ピ ク セ ル の 大 き さ で 呈 示 さ れ , 再 生 後 に は た だ ち. し た 実 験 ( 課 題 1) と , 言 語 情 報 と パ ラ 言 語 情 報 の 複. にブランク画面が呈示された.音声は快適レベルの音. 数の情報を手がかりとして発話者の感情を判断する 実. 圧 で ヘ ッ ド ホ ン ( SENNHEISER HDA300) か ら 呈 示 さ. 験 ( 課 題 2) を , 日 本 人 の 児 童 期 に あ る 子 ど も お よ び. れた.実験参加者には,1 試行ごとに刺激の話者の感. 大人を対象に実施した.. 情が喜びか怒りかのどちらか判断し, ブランク画面呈. 2. 実 験. 回答するよう教示した.なお,判断の際に表情と音声. 2.1. 方 法. 感情のどちらに注目するかは指定せず,実験参加者の. 示 時 に PC( DELL Latitude3540) の キ ー 押 し に よ っ て. 子 ど も の 参 加 者 と し て ,日 本 語 を 母 語 と す る 5-12 歳. 感じたままに判断するよう指示した.回答キーの配置. 児 ( 5 歳 16 名 , 6 歳 27 名 , 7 歳 42 名 , 8 歳 50 名 , 9. は実験参加者間でランダムに振り分けた.各刺激は再. 歳 49 名 , 10 歳 46 名 , 11 歳 27 名 , 12 歳 10 名 ) が 参. 生が終了するまでキー押しができないようにあらかじ. 加した.また,成人の参加者として,日本語を母語と. め設定されていたため,実験参加者は必ず各発話を最. す る 30 歳 か ら 73 歳 ま で の 173 名 が 参 加 し ,こ の う ち ,. 後 ま で 視 聴 し た .実 験 は 計 34 試 行( 練 習 試 行 2 試 行 +. 30 歳 か ら 39 歳 ま で の 62 名 ( 平 均 36.1 歳 ) を 分 析 対. 本 試 行 32 試 行 ) で , 所 要 時 間 は 4-5 分 程 度 だ っ た .. 象とした.. 課題 2. 課題 1 と同じ空間にて,必ず課題 1 の後に実. 施 さ れ た .各 試 行 で は ,注 視 点( + 記 号 )と 合 図 音 (440Hz. 2.2. 刺 激. の 純 音 )が 同 時 に 呈 示 さ れ た 後 ,音 声 刺 激 が ヘ ッ ド ホ ン. 先 行 研 究 [2]で 使 用 さ れ た 日 本 語 話 者 の 感 情 的. ( SENNHEISER HDA300) か ら 快 適 レ ベ ル の 音 圧 で 呈. な発話が記録された視聴覚刺激を,顔にノイズをかけ. 示された.実験参加者には,1 試行ごとに刺激の話者. ない状態で使用した.日本人女性 2 名によって,4 種. の感情が「楽しそう」か「嫌そう」かのどちらか判断. の 中 立 的 な 意 味 の セ リ フ(「 さ よ う な ら 」「 こ れ な に 」. し ,PC( DELL Latitude3540)の キ ー 押 し に よ っ て 回 答. 「そうなんですか」「あれどうなったの」)が発話さ. するよう教示した.判断の際に言語内容と言い方のど. れた.セリフに付与された感情は喜びまたは怒りであ. ちらに注目するかは指定せず,実験参加者の感じたま. 課題 1. ©2016 Information Processing Society of Japan.

(3) 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG TechnicalReport. Vol.2016-MUS-113 No.8       2016/10/14. まに判断するよう指示した.回答キーの配置は実験参. 法 )の 結 果 を Figure 1 に 示 す . な お , 本 研 究 で は 9-12. 加者間でランダムに振り分けた.なお,各刺激は再生. 歳群よりも大人群における声選択率が低かった.この. が終了するまでキー押しができないようにあらかじめ. た め ,先 行 研 究 [4]で 得 ら れ た 大 学 生( 平 均 21.1 歳 )の. 設定されていたため,実験参加者は必ず各発話を最後. 結 果 も 参 考 の た め に 併 せ て Figure 1 に 示 し た . 5-8 歳. ま で 聴 い て い た .実 験 は 計 32 試 行 で ,試 行 順 序 は ラ ン. 群 の 声 選 択 率 を 9-12 歳 群 と 比 較 す る と ,怒 り 顔 + 喜 び. ダ ム で あ っ た . 所 要 時 間 は 4-5 分 程 度 だ っ た .. 声では有意な差異はみられなかったが, 喜び顔+怒り 声 で は 9-12 歳 群 の 方 が 有 意 に 大 き か っ た .こ の こ と か ら,表情と音声の組み合わせによって ,発達的変化の. 3. 結 果 課題 1. 実験参加者ごとに,感情一致刺激に対する課. 時期や様相が異なることが示唆された.. 題の正答率と,感情不一致刺激に対して刺激話者の音 声感情を選択した割合を,感情の組み合わせ別に算出. 60. した.なお,感情一致刺激に対する正答率は,表情を 手がかりとした判断でも,音声を手がかりとした判断 でも回答が同一であるため,本研究では刺激への反応. 声 選 択 率 を 算 出 し た (Table.1). 感 情 一 致 刺 激 に 対 す る 正 答 率 が 5-8 歳 群 に お い て す で に 95%以 上 と な っ て い. *** 5-8歳. ***. 9-12歳. % 20. 大人. ). 年 齢 群 ( 5-8 歳 , 9-12 歳 , 大 人 ) に 分 け , 各 群 の 平 均. 声 40 選 択 30 率. (. を「声選択率」に統一した.その後,実験参加者を 3. *** *** **. 50. 大学生(Kawahara,2016). 10 0. ること,また,本研究の関心は複数の手がかりに対す. 怒り顔+喜び声. 喜び顔+怒り声. 刺激. る重みづけの発達的変化にあることから,以下の分析. Figure 1. 感 情 の 組 み 合 わ せ ご と の 声 選 択 率 の 発 達 的 変 化 .. では不一致刺激に着目する.. ( エ ラ ー バ ー は 標 準 誤 差 を 示 す .***p <.001, **p <.001) Table 1. 各 年 齢 群 に お け る 平 均 声 選 択 率 .. 課題 2. (括弧内は標準誤差を示す). 刺激 怒り表情 怒り音声(一致) 喜び音声(不一致) 喜び表情 怒り音声(不一致) 喜び音声(一致). 実験参加者ごとに言語内容とパラ言語情報が. 一致している刺激に対する課題の正答率と,矛盾して. 5-8歳. 年齢群 9-12歳. 96.2(0.8) 17.1(2.1). 98.7(0.4) 22.3(2.3). 大人. いる刺激に対して刺激話者のパラ言語情報が示す感情 を選択した割合を,感情の組み合わせ別に算出した.. 99.3(0.2) 6.7(1.2). なお,一致刺激に対する正答率は,言語内容を手がか りとした判断でも,パラ言語情報を手がかりとした判 断でも回答が同一であるため,本研究では刺激への反. 21.7(1.8) 95.8(0.8). 33.1(1.9) 94.2(0.8). 応を「パラ言語選択率」に統一した. その後,実験参. (単位:%). 言 語 選 択 率 を 算 出 し た (Table 2). 一 致 刺 激 に 対 す る 正. 42.0(2.6) 94.6(0.9). 加 者 の 年 齢 群 別 ( 5-8 歳 , 9-12 歳 , 大 人 ) に 平 均 パ ラ 答 率 は 5-8 歳 群 に お い て す で に 95%以 上 と な っ て い る. 声選択率に年齢による差異が見られるかどうか検. こと,また,本研究の関心は複数の手がかりに対する. 討 す る た め , 2( 感 情 の 組 み 合 わ せ ) ×3( 年 齢 群 ) の. 重みづけの発達的変化にあることから,以下の分析 で. 分散分析を実施したところ,感情の組み合わせの主効. は不一致刺激に着目する.. 果 が み ら れ (F(1, 442)=173.25, p<.001)), 喜 び 顔 が 怒 り 声 と と も に 呈 示 さ れ た と き (32.3%)の 方 が ,怒 り 顔 が 喜 び 声 と と も に 呈 示 さ れ た と き (15.4%) よ り も 声 選 択 率 が 高 い こ と が 示 さ れ た . 年 齢 群 の 主 効 果 (F(2, 442)=18.61, p<.001)も 有 意 で あ り ,年 齢 群 に よ る 差 異 が み ら れ た . ま た , 感 情 の 組 み 合 わ せ ×年 齢 群 の 交 互 作 用 も み ら れ た た め (F(2, 442)=25.89, p<.001), 単 純 主 効 果の検定を実施した.その結果,どちらの感情の組み 合わせにおいても年齢群による差異が有意であった (怒 り 顔 + 喜 び 声 : F(2, 442)=20.21, p<.001;喜 び 顔 + 怒 り 声 : F(2, 442)=21.43, p<.001). 多 重 比 較 (Bonferroni. ©2016 Information Processing Society of Japan. Table 2. 各 年 齢 群 に お け る パ ラ 言 語 情 報 選 択 率 (括弧内は標準誤差を示す). 5-8歳. 年齢群 9-12歳. 言い方ネガティブ 内容ネガティブ(一致) 内容ポジティブ(不一致). 96.1(0.7) 82.6(1.9). 95.9(0.9) 91.7(1.3). 98.7(0.4) 93.3(1.0). 言い方ポジティブ 内容ネガティブ(不一致) 内容ポジティブ(一致). 56.3(2.9) 95.0(1.0). 71.5(2.5) 94.9(1.0). 79.8(1.6) 97.1(0.5). 刺激. 大人. (単位:%).

(4) 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG TechnicalReport. Vol.2016-MUS-113 No.8       2016/10/14. パラ言語情報選択率に年齢による差異が見られるか. では有意な相関はみられなかった.しかし, 大人群で. ど う か 検 討 す る た め , 2( 感 情 の 組 み 合 わ せ ) ×3( 年. は,課題 1 における「喜び顔+怒り声」に対する声選. 齢群)の分散分析を実施した.その結果,感情の組み. 択率と課題 2 における「言い方ポジティブ+内容ネガ. 合 わ せ の 主 効 果 が 有 意 で あ り (F(1,442)=226.92,. ティブ」に対するパラ言語情報選択率との間に 弱い負. p<.001)), ポ ジ テ ィ ブ な 言 語 内 容 が ネ ガ テ ィ ブ な 言 い. の 相 関 が ( r= -.31, p<.05) み ら れ た .. 方 で 発 話 さ れ た と き (89.2%)の 方 が ,ネ ガ テ ィ ブ な 言 語 内 容 が ポ ジ テ ィ ブ な 言 い 方 で 発 話 さ れ た と き (69.2%). Table 3. 5-8 歳 群 に お け る 課 題 間 の 相 関. よりもパラ言語情報選択率が高いことが示された. 年. 内容ポジティブ +言い方ネガティブ. 内容ネガティブ +言い方ポジティブ. 怒り表情+喜び音声. 0.00. 0.09. 喜び表情+怒り音声. 0.03. 0.12. 齢 の 主 効 果 (F(2, 442)=33.97, p<.001)も み ら れ , 年 齢 に 伴い徐々にパラ言語情報をより重視するよう変化する ことが示された. ま た , 感 情 の 組 み 合 わ せ ×年 齢 の 交 互 作 用 も み ら れ た た め (F(2, 442)=8.28, p<.001),下 位 検 定 を 実 施 し た と ころ,どちらの感情の組み合わせにおいても年齢の単. Table 4. 9-12 歳 群 に お け る 課 題 間 の 相 関. 純 主 効 果 が み ら れ た (内 容 ポ ジ テ ィ ブ + 言 い 方 ネ ガ テ. 内容ポジティブ +言い方ネガティブ. 内容ネガティブ +言い方ポジティブ. 怒り表情+喜び音声. -0.04. -0.08. 喜び表情+怒り音声. 0.12. 0.11. ィ ブ : F(2, 442)=17.46, p<.001; 内 容 ネ ガ テ ィ ブ + 言 い 方 ポ ジ テ ィ ブ:F(2, 442)=27.16, p<.001).し か し ,ポ ジ ティブな言語内容がネガティブな言い方で発話された 刺 激 に 対 す る パ ラ 言 語 情 報 選 択 率 は 9-12 歳 群 と 大 人 群の間に有意な差異がみられなかったのに対し ,ネガ ティブな言語内容がポジティブな言い方で発話された. Table 5.大 人 群 に お け る 課 題 間 の 相 関. 刺 激 に 対 す る パ ラ 言 語 情 報 選 択 率 は 9-12 歳 群 と 大 人. 内容ポジティブ +言い方ネガティブ. 内容ネガティブ +言い方ポジティブ. 怒り表情+喜び音声. -0.05. -0.19. 喜び表情+怒り音声. 0.05. -0.31*. 群の間でも有意な差異がみられた.このことから,言 語内容と言い方の組み合わせによって発達的変化の時 期 や 様 相 が 異 な る こ と が 示 唆 さ れ た (Figure 2).. パ ラ 言 語 情 報 選 択 率 ( %. ). 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0. *P<.05. *** ***. ***. ***. *. 4. 考 察 5-8歳. 9-12歳 大人. 課題 1 では,顔と声による情動認知における情報の 重 み づ け の 発 達 的 変 化 に つ い て ,5-12 歳 の 子 ど も お よ び 大 人 を 対 象 に 検 討 し た . そ の 結 果 , 5-8 歳 か ら 9-12 歳にかけて声の表す感情を重視する割合が高くなるが, 大人では再び低くなることが示された.これに加え,. 内容ポジティブ + 言い方ネガティブ. 内容ネガティブ + 言い方ポジティブ 刺激. 表情と音声感情の組み合わせによって音声感情を重視 する程度が異なることも示され,怒り顔+喜び声の組 み合わせよりも,喜び顔+怒り声の組み合わせに対す. Figure 2. 各 感 情 の 組 み 合 わ せ に お け る パ ラ 言 語 情 報 声 選 択率の発達的変化. ( エ ラ ー バ ー は 標 準 誤 差 を 示 す . ***p < .001, *p<.05). る声選択率はより高く,児童期における変化も大きい ことが示された.児童期において,重視しやすい感情 情報を表情から音声感情へとシフトさせている点,さ らに,表情と音声感情の組み合わせによって重みづけ の 大 き さ が 異 な る 点 は 先 行 研 究 [4]の 結 果 と 一 致 す る .. 課題 1 と課題 2 の関連. 複数の情報を手がかりとした. 喜び顔とともに怒り声が表出される組み合わせは,怒. 情動認知において,どちらの情報を重視しやすいかと. りというネガティブな感情を笑顔によって隠蔽 してい. いう点で 2 つの課題間に関連があるか検討することを. る状態と捉えることができるだろう.日本人がネガテ. 目的とし,課題 1 における声選択率と課題 2 における. ィブな感情を顔に表出することを抑制する傾向にある. パラ言語情報選択率との相関係数を,年齢群ごとに算. と い う 先 行 研 究 [10]の 知 見 と も 合 致 し て い る こ と か ら ,. 出 し た (Table 3, 4, 5). そ の 結 果 , 5-8 歳 群 と 9-12 歳 群. 日本人はネガティブな感情を笑顔によって抑制する感. ©2016 Information Processing Society of Japan.

(5) 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG TechnicalReport. Vol.2016-MUS-113 No.8       2016/10/14. 情の表示規則と,笑顔で隠蔽されたネガティブな本心. って「いじめ」と受け取ってしまうことが中学生にな. を音声から読みとろうとする解読規則を持っていると. った以降も生じる可能性が示唆される.. 解釈することができる.また,この規則の習得は,他. 本研究では,複数の情報を手がかりとした情動認知. 者との関わりの中で経験的に蓄積されることによって. において,どちらの情報を重視しやすいかという点で. すすむことが推測される.. 2 つの課題間に関連があるかについても検討した.そ. し か し な が ら ,大 人 の 声 選 択 率 は 9-12 歳 よ り も 低 く. の結果,大人にのみ,課題 1 における「喜び顔+怒り. な っ て お り , こ れ は , 声 選 択 率 が 11-12 歳 よ り も 大 学. 声」に対する声選択率と課題 2 における「からかい」. 生 の 声 選 択 率 の 方 が 高 い と い う 先 行 研 究 [4] と 合 致 し. に対するパラ言語情報選択率との間に 負の相関がみら. ない結果である.このような差異が生じた要因として. れた.これは,笑顔であっても言い方に怒りが含まれ. は ,本 研 究 の 大 人 の 実 験 参 加 者 が 平 均 年 齢 36.1 歳 と 年. ていればその話者の感情を「怒り」と判断する という. 齢が高く,さらに今回の実験に参加した子どもの保護. ことと,言い方がポジティブであっても意味的な要素. 者であったという点で,先行研究の大学生の参加者と. を重視してその発話をネガティブなものとして捉える. 属性が異なっていたことが挙げられる.この点から,. ことに関連があることを示唆しており,ネガティブな. 声選択率が大人で低かったことについて 2 つの可能性. 感情を示す情報を重視するという点で共通している.. を指摘できる.第一に,成人後は一般的に,加齢に伴. 対人関係において相手のネガティブな感情を察知する. い重視する情報を音声感情から表情へと 再度変化させ. 傾向が強い者ほど,笑顔で隠しきれなかった怒りの感. る可能性が考えられる.第二に,子育て期にある大人. 情を音声から読み取り,からかいにも受け取れる発話. が一時的に情動認知様式を変化させ,児童期にある子. から言語内容のネガティブな要素を取り 出す傾向にあ. どもと合致した重みづけをするようになるという可能. るのかもしれない.しかしながら,今回みられた負の. 性も考えられる.子どもは表情を重視した感情判断を. 相関について「ネガティブな感情への敏感さ」で説明. 行いやすいため,子どもを相手とした感情コミュニケ. することができるのであれば,「怒り顔+喜び声」の. ーションを円滑なものにするためには,表情を手がか. 表現に対して表情を重視する傾向との関連もみられた. りとした感情の表出がなされることが必要であるだろ. はずである.これに加え,「内容ネガティブ+言い方. う.日常生活において子どもと頻繁に接する親がその. ポジティブ」の発話(つまり,皮肉音声)に対してネ. 必要性を無意識ながらも察知し,子どもに対する感情. ガティブな言い方を重視する傾向との関連も推測され. の表出方法を音声から表情に変化させ ,それに伴い,. るが,そのような結果は示されなかった.その要因と. 他者感情の判断様式も表情を重視したものに変化する. しては,個人差が見えにくいほど,ほとんどの大人が. のかもしれない.この可能性に関しては,今後様々な. 「怒り顔+喜び声」の表現に対しては表情を,皮肉 音. 属性の成人を対象に検討がなされることが必要である.. 声に対しては言い方を重視していたことが考えられる.. 課題 2 では,発話音声に含まれる言語情報とパラ言. 表情では怒りを示しながら声によって喜びを表出する. 語情報を手がかりとした情動認知における発達的変化. ことを自然に行うのは難しく,日本の表示規則および. を検討した.その結果,課題 1 と同様に年齢に伴った. 解読規則にも一致しにくい表現であるだろう.また,. 発達が見られ,児童期にかけてパラ言語情報を重視す. 皮 肉 音 声 に 対 し て 言 い 方 を 重 視 し た 割 合 は 97.1%と 非. る程度が増加することが示された.また,その変化の. 常に高く,このような感情価の組み合わせがなされた. 過程は言語内容とパラ言語情報の感情価の組み合わせ. 場合には言語情報のネガティブ感情が優先されると推. によって異なり,パラ言語情報選択率の増加は,ポジ. 測される.したがって,矛盾する情報が組み合わされ. ティブな言語内容がネガティブな言い方で発話された. ていても,それに対する判断に天井効果が生じた表現. 音声に対する判断よりも,ネガティブな言語内容がポ. については相関がみられなかった可能性が考えられる.. ジティブな言い方で発話された音声に対する判断 の方. 本 研 究 で は 大 人 の 参 加 者 と し て 30 代 に 限 定 し て い. が長期にわたることが示された.これらの結果は先行. たが,先にも述べたように,今回の大人群の示した結. 研 究 [8]と 一 致 し て い る .感 情 価 の 組 み 合 わ せ に つ い て. 果 は 先 行 研 究 [4]の 大 学 生 の 結 果 と は 異 な り ,顔 と 声 に. は,ネガティブな内容がポジティブな言い方で発話さ. よる情動認知課題において音声感情を重視する程度が. れた音声は「からかい」,ポジティブな内容がネガテ. 小さかった.音声感情をより重視する傾向にある大学. ィブな言い方で発話された音声は「皮肉」と捉えるこ. 生では,声選択率とパラ言語情報選択率との関連でも. と が で き る [8].「 皮 肉 」よ り も「 か ら か い 」に 対 す る. 30 代 の 大 人 と は 異 な っ た 結 果 が み ら れ る 可 能 性 も 否. 判 断 能 力 の 方 が 発 達 に 時 間 を 要 し ,12 歳 以 降 も 継 続 し. めないため,より長いスパンで発達的な変化を検討す. て発達がすすむということから,発話者にはそのつも. る必要もあるだろう.. りがなくとも,聞き手が言語内容を重視することによ. ©2016 Information Processing Society of Japan.

(6) 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG TechnicalReport. Vol.2016-MUS-113 No.8       2016/10/14. 謝. 辞. 実験実施にご協力いただきました日本科学未来館の 皆さま,実験にご参加いただきました皆さまに深く感 謝いたします.. 文. 献. [1] de Gelder, B., & Vroomen, J. (2000). The perception of emotions by ear and by eye. Cognition & Emotion, 14(3), 289-311. [2] Tanaka, A., Koizumi, A., Imai, H., Hiramatsu, S., Hiramoto, E., & de Gelder, B. (2010). I feel your voice: Cultural differences in the multisensory perception of emotion. Psychological Science, 21, 1259–1262. [3] Liu, P., Rigoulot, S., Pell, M.D. (2015) Culture modulates the brain response to human expressions of emotion: Electrophysiological evidence. Neuropsychologia, 67, 1-13. [4] Kawahara, M., Sauter, D.A., Tanaka, A. “Development of cultural differences in emotion perception from face and voice”, Poster presented at 31st International Congress of Psychology, 2016. [5] 髙 木 幸 子 , 平 松 沙 織 , 田 中 章 浩 . (2014). 表 情 と 音 声に同時に感情を込めた動画刺激に対する感情 知 覚 . 認 知 科 学 , 21(3), 344-362. [6] Sauter, D.A., Panattoni, C., & Happé, F. (2013) Children's recognition of emotions from vocal cues. British Journal of Developmental Psychology, 31 (1), 97-113. [7] Morton, J. B., & Trehub, S. E. (2001). Children's understanding of emotion in speech. Child development, 72(3), 834-843. [8] 野 口 由 貴 , 小 澤 由 嗣 , 山 崎 和 子 , 今 泉 敏 . (2004). 音声から話者の心を理解する能力の発達. 音声言 語 医 学 , 45(4), 269-275. [9] Ishii, K., Reyes, J. A., & Kitayama, S. (2003). Spontaneous attention to word content versus emotional tone differences among three cultures. Psychological Science, 14(1), 39-46. [10] Ekman, P. (1972) Universals and cultural differences in facial expressions of emotion. In J. Cole (Ed.), Nebraska symposium on motivation. Lincoln: University of Nebraska Press. pp. 207 -282.. ©2016 Information Processing Society of Japan.

(7)

参照

関連したドキュメント

いかなる使用の文脈においても「知る」が同じ意味論的値を持つことを認め、(2)によって

うのも、それは現物を直接に示すことによってしか説明できないタイプの概念である上に、その現物というのが、

るところなりとはいへども不思議なることなるべし︒

身体主義にもとづく,主格の認知意味論 69

Results of logistic regression analyses for individual labels revealed that the degree of environmental interest, energy reduction efforts, and inclination to change power

It follows from [4] that a dual ovoidal subspace of H(K) is either the set of lines at distance at most 3 from a given point (type P), or the set of lines of an ideal

*課題関連的訓練(task-related training)は,目的志向的訓練(task-oriented

The categories of prespectra, symmetric spectra and orthogonal spec- tra each carry a cofibrantly generated, proper, topological model structure with fibrations and weak