Title
日本における家計地震保険の適正な普及に向けた改善( 内容
と審査の要旨(Summary) )
Author(s)
野崎, 洋之
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(工学) 工博甲第487号
Issue Date
2016-03-25
Type
博士論文
Version
ETD
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/54546
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。1 別紙様式第16号(論文内容の要旨及び論文審査の結果の要旨) 氏 名 ( 本 籍 ) 学 位 の 種 類 学 位 授 与 番 号 学 位 授 与 日 付 専 攻 学 位 論 文 題 目 学位論文審査委員 野崎 洋之 (東京都) 博 士(工学) 甲第487号 平成28年3月25日 生産開発システム工学専攻 日本における家計地震保険の適正な普及に向けた改善
(Improvement regarding the Fair Distribution of Japanese Household Earthquake Insurance)
(主 査) 教授 倉内文孝 (副 査) 教授 髙木朗義、准教授 出村嘉史、フェロー 宮城俊彦 論 文 内 容 の 要 旨 本論文は,世界有数の地震国である日本において,1966 年の地震保険制度発足当時から現在に至る まで,未だ十分な解決が図られていない課題(強靭性・商品性・保険料率・普及)の中で,特に「普 及」と「商品性」に着目し,家計分野の地震保険の適正な普及に向けた改善を目指している. 論文では,まず,地震保険制度・商品の創設と変遷について文献等を整理し,加えて,「地震保険 に関する消費者意識調査」の結果から,現状(実態)を把握するとともに,課題の明確化に努めてい る.また,消費者による地震保険加入・非加入の選択行動や,損害保険代理店の募集行動の調査から, 現行の地震保険を普及させる方策を示している.更に,現在,地震保険に加入している者(地震保険 加入者)でさえ,加入の理由が「地震保険制度(補償内容や保険料)に満足している訳ではないが, 大規模な地震に遭遇した場合の補償として地震保険に勝る制度を知らないから」といった消極的な理 由であることから,地震保険制度・商品の改定の必要性を示し,東日本大震災に関連する一連の調査 の結果をもって,目的・補償の異なる 2 つの地震保険の同時運営の提案を行っている.本論文で得ら れた知見は以下の通りである. 1. 地震保険の加入実態に関しては,損害保険料率算出機構や日本損害保険協会が,実際の地震保険 契約情報をもとに分析を行っている.また,地震保険契約情報では把握できない情報について, アンケート調査等を実施し,その結果を分析した既往研究も存在する.本研究では,これらを網 羅的にレビューした上で,地震保険の普及等の戦略を検討するのに重要な情報であるにも関わら ず,今まで把握できていなかった課題を明らかにした.具体的には,世帯年収が高い世帯ほど地 震保険の加入率は高く,世帯年収が低い世帯は,世帯年収が高い世帯と比較して地震保険の加入 率が低いことを明らかにした.このことは,地震保険の目的が期待する加入者の属性と,実際の 加入者の属性に乖離があることを示している. 2. 現行の地震保険は,火災保険に「原則自動付帯」というオプト・アウト方式を採用しているため, 本来であれば,ほとんどの者が地震保険に加入(火災保険に地震保険を付帯)するはずである. しかし実際には,地震保険の加入率・付帯率は決して高いとは言えない.本研究では,東京損害 保険代理業協会の会員(一般的な損害保険代理店)の協力を得て,役割演技法による募集行動の 調査・分析を実施し,火災保険・地震保険の申込書の構造を含め,オプト・アウト方式ではなく オプト・イン方式による募集が行われている実態を明らかにした.一方で,地震保険の付帯率が 他の地域と比較して群を抜いて高い宮城県の損害保険代理店を対象に実施したグループインタビ ュー調査から,地震保険の付帯率の高い損害保険代理店では,オプト・アウト方式による募集が 行われていることを確認した.これらの結果から,政策決定者が期待するように,地震保険をオ
2 プト・アウト方式で説明することで,地震保険の付帯率の向上(地震保険の普及)に繋げること ができる可能性を示した. 3. 地震保険加入者でさえ,消極的な理由で地震保険に加入している実態(先述)から,地震保険制 度・商品の改定の必要性を説き,その上で,東日本大震災における「地震保険金の使途等に関す る調査」の結果に基づいて,支払われた地震保険金の多くが地震保険の本来の目的とは別に,建 物等の修繕費に充てられていることを確認した.つまり,現在の地震保険の加入者は,地震保険 金の支払区分の細分化(財物保険化)を望んでいることを明らかにした.また,現在の地震保険 加入者の期待に応える保険商品(地震保険金の支払区分の細分化(財物保険化))に改定した場 合の効果をモデル分析した結果,現在の地震保険加入者をターゲットにした場合には,損害査定 時間を延長したとしても実損填補方式の地震保険商品を提供することが消費者の期待に応える保 険商品と言え,一方で,地震保険に関する法律が示す地震保険本来の目的に鑑みて,今後の更な る地震保険の普及(未来の地震保険加入者)を考えた場合には,その商品改定は不合理なもので あり,1 つの保険商品で万人の満足を得ることは困難であることを明らかにした. 論文審査結果の要旨 本研究は,地震保険制度・地震保険商品が抱える課題のうち,特に普及と商品性について,例えば 保険募集の現場における運用方法を変えることによって,課題解決を図るものであり,また,地震保 険が建物等の損壊を補償する保険ではなく,当面の生活費を保障する保険であることについて,地震 保険の目的から検討することが必要であることや,その上で,ターゲットを明確にして保険商品(補 償内容や保険料等)を設計することの必要性など,今後の制度設計に有用な知見も含まれており,学 術上実務上寄与するところが少なくないと考えられる. 最終試験結果の要旨 学位論文審査委員会は,本論文及び論文別刷などを慎重に検討し,学位論文として十分完成された 内容を有していることを確認した.また,平成 28 年 2 月 9 日に,上記審査申請者に対して最終試験(公 聴会)を開催し,審査を行った. その結果,本論文は十分に学位授与に値するものであり,最終試験を合格と判定した. 発表論文(論文名、著者、掲載誌名、巻号、ページ)
1. Observations on the Segmentation of Earthquake Insurance in Japan,Mahito Okura and Hiroyuki Nozaki,International Journal of Business,Vol.19,No.4,pp.311-321.
2. 地震保険加入・非加入の選択行動と地震保険の募集実態に関する調査・研究,野崎洋之・髙木朗 義,自然災害科学特別号(2015),pp.87-98.