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農業害虫としてのカイガラムシの見分け方(1)連載にあたって

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Academic year: 2021

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植 物 防 疫  第 68 巻 第 8 号 (2014 年) ― 44 ― 481 カイガラムシはカメムシ目腹吻亜目カイガラムシ上科 に含まれる昆虫である。この上科はアブラムシ上科,コ ナジラミ上科,キジラミ上科等に近縁で,これらととも に腹吻亜目という特殊なグループを形成する。カイガラ ムシ上科はこの中でも最も特殊化の進んだ一群と考えら れており,寄主植物に固着して寄生生活を営む方向に高 度に適応して進化してきた結果として,一般的に体型が 著しく単純化し,形態上の種的な特徴に乏しい(河合, 1980)。また,このグループに含まれる昆虫は体長がお およそ 1 mm から 5 mm くらいの小型のものが多く,そ して低密度である場合は発見が難しく,さらにはその厳 密な分類や同定にプレパラート標本の作製と検鏡を必要 とすることもあって一般の方にはやや取っ付きづらい昆 虫だと思われる。 カイガラムシ類にはよく知られているように農林業上 の害虫種を数多く含んでおり,応用上極めて重要な分類 群でもある。KOSZTARAB(1996)によれば,カイガラム シ類による経済的被害はその防除費用と合わせて北米で 年間 5 億 US ドルに達すると見積もられている。これは かなり以前の推定値であるため現在の実際の被害額とは 異なると考えられるものの,それでもカイガラムシ類が 北米において重要な害虫群であることは間違いないこと と思われる。日本においてもヤノネカイガラムシやルビ ーロウムシ,イセリアカイガラムシといったカイガラム シが,少なくとも過去には我が国の農業に大被害を与え ていたことはこの報文を読まれる方にとっては説明の要 はないであろう。 またカイガラムシ類は害虫として重要である一方で, その分泌物や体内色素の利用等で昔から人類に恩恵をも たらしてきた昆虫群でもある。日本においても奈良時代 にすでにラックカイガラムシの分泌物が薬用品として渡 来し,これが「紫鉱」という名で正倉院に保管されてい たり,あるいは大分時代は下るものの江戸時代の本草学 者であった栗本丹州(1756 ∼ 1834)がまとめた栗氏千 蟲譜(ただし筆者が確認したのは国立国会図書館デジタ ルコレクションで公開されている写本)という本草資料 の有用昆虫の部分に蜜蜂,蚕,五倍子(ヌルデシロアブ ラムシの虫えい)とともにイボタロウムシの雄幼虫の産 生するロウ塊が蟲白蠟(和名:イボタロウ)として紹介 されている等,こうしたカイガラムシの存在は昔からよ く知られており,またその生産物の利用が行われてきて いた。これらのカイガラムシ生産物の利用は決して過去 の話ではなく,現在でも続いていることが渡辺(2003) によってよく紹介されている。実際筆者のアパートの近 くにあるコンビニエンスストアでカイガラムシ由来の物 質が使われている商品を調べてみると,ラックカイガラ ムシの分泌物を精製して得られるシェラックや,コチニ ールカイガラムシが産生する赤色色素として著名なコチ ニール色素を用いている食品や薬品が 15 商品程度は確 認できた。いろいろとご意見はあるものと思うが,カイ ガラムシ由来の物質が今日の日本社会でも普通に使われ ていることは記憶しておいてよいことだと思う。 このようにカイガラムシ類は害虫として,あるいは有 用昆虫として経済的な重要な昆虫であると思われるが, それにもかかわらず国内におけるその分類学的な研究は まだそれほど進んでいない。特にコナカイガラムシ科や カタカイガラムシ科等の比較的原始的なグループにおい てその停滞傾向が顕著である。しかし世界的にはカイガ ラムシ類の分類研究が現在でも活発に行われており,従 来のコナカイガラムシ科が二つの科に分割されたり,ま たワタフキカイガラムシ科も多数の科に分割されるとい った高次分類体系の大きな改変なども近年行われてい る。また分子系統解析技術の進展によりカイガラムシ類 の分類研究は他の昆虫群と同じく新しい時代を迎えてい る。今後の研究の進展に伴い,カイガラムシの分類体系 は随時変更が加えられていくであろう。 日本国内におけるカイガラムシの一般向けの同定用資 料としては河合省三先生の日本原色カイガラムシ図鑑 (河合, 1980)などをはじめとして,各種の病害虫図鑑・ 辞典類(例えば梅谷・岡田,2004)などがいくつも既に 出版されている。これらは今でも重要かつ有用な資料で あると思われるが,上述のように大きく変更されてきて いる今日のカイガラムシ分類の現状には即していないよ うに感じられる点もいくつか見受けられる。またこれら の同定用資料が出版されていてもなお,カイガラムシの An Introduction to the Identifi cation of Scale Insect on the Crops.  

By Hirotaka TANAKA (キーワード:カイガラムシ類,分類,同定,植物防疫講座)

連 載 に あ た っ て

田  中  宏  卓

鳥取県立博物館 植物防疫基礎講座:農業害虫としてのカイガラムシの見分け方

(2)

連 載 に あ た っ て ― 45 ― 482 同定は難しいという声を各方面からお聞きする機会もあ った。 今回そうした背景の中で害虫種のカイガラムシ同定用 の解説資料となるようなものを本「植物防疫」誌上に連 載させていただくという望外の機会を得た。浅学非才の 身であり,不定期連載となる予定であるが,できる限り 努力してこの厄介な虫であるカイガラムシのためのなる べく「使える」同定資料となるようなものを執筆してい きたいと考えているので,最後までお付き合いいただけ れば幸いである。 引 用 文 献 1) 河合省三(1980): 日本原色カイガラムシ図鑑,全国農村教育 協会,東京,455 pp.

2) KO S Z T A R A B, M.(1996): Scale insects of Nor theaster n Nor th America. Identification, biology, and distribution. Virginia Museum of Natural Histor y, Martinsburg, Virginia. USA, 650 pp. 3) 梅谷献二・岡田利承(2004): 日本農業害虫大辞典,全国農村 教育協会,東京,1203 pp. 4) 渡辺弘之(2003): カイガラムシが熱帯林を救う,東海大学出 版会,神奈川,136 pp.

新しく登録された農薬

(26.6.1 ∼ 6.30)

掲載は,種類名,登録番号:商品名(製造者又は輸入者)登録年月日,有効成分:含有量,対象作物:対象病害虫:使用 時期等。ただし,除草剤・植物成長調整剤については,適用作物,適用雑草等を記載。 「殺虫剤」 燐酸第二鉄粒剤 23486:N スラゴ(長瀬産業)14/6/25 23487:NS スラゴ(ナガセサンバイオ)14/6/25 燐酸第二鉄水和物:0.98% ナメクジ類,カタツムリ類,アフリカマイマイ,ヒメリンゴ マイマイが加害する農作物等(温室,ハウス,圃場,花壇): ナメクジ類,カタツムリ類:発生時(1 ∼ 5 g/m2 ナメクジ類,カタツムリ類,アフリカマイマイ,ヒメリンゴ マイマイが加害する農作物等(温室,ハウス,圃場,花壇): アフリカマイマイ:発生時(3 ∼ 5 g/m2 ナメクジ類,カタツムリ類,アフリカマイマイ,ヒメリンゴ マイマイが加害する農作物等(温室,ハウス,圃場,花壇): ヒメリンゴマイマイ:発生時(5 g/m2 燐酸第二鉄粒剤 23488:N フェラモール(長瀬産業)14/6/25 23489:NS フェラモール(ナガセサンバイオ)14/6/25 燐酸第二鉄水和物:0.98% ナメクジ類,カタツムリ類,アフリカマイマイ,ヒメリンゴ マイマイが加害する農作物等(温室,ハウス,圃場,花壇): ナメクジ類,カタツムリ類:発生時(1 ∼ 5 g/m2 ナメクジ類,カタツムリ類,アフリカマイマイ,ヒメリンゴ マイマイが加害する農作物等(温室,ハウス,圃場,花壇): アフリカマイマイ:発生時(3 ∼ 5 g/m2 ナメクジ類,カタツムリ類,アフリカマイマイ,ヒメリンゴ マイマイが加害する農作物等(温室,ハウス,圃場,花壇): ヒメリンゴマイマイ:発生時(5 g/m2 燐酸第二鉄粒剤 23490:N スクミンベイト 3(長瀬産業)14/6/25 燐酸第二鉄水和物:3.0% 稲:スクミリンゴガイ:発生時 「殺虫殺菌剤」 還元澱粉糖化物液剤 23485:キモンブロック液剤(アリスタライフサイエンス) 14/6/25 還元澱粉糖化物:60.0% かんきつ:ミカンハダニ:収穫前日まで トマト,ミニトマト,いちご,豆類(種実),いも類:アブ ラムシ類,ハダニ類,うどんこ病,コナジラミ類:収穫前 日まで いちご:ハダニ類:定植前(10 秒∼ 1 分間苗浸漬) 野菜類(いちご,トマト,ミニトマトを除く):アブラムシ類, ハダニ類,うどんこ病,コナジラミ類:収穫前日まで 花き類・観葉植物:アブラムシ類,ハダニ類,うどんこ病, コナジラミ類:発生初期 「殺菌剤」 ピリベンカルブ・メパニピリム水和剤 23482:オルパ顆粒水和剤(クミアイ化学工業)14/6/11 23483:日曹オルパ顆粒水和剤(日本曹達)14/6/11 ピリベンカルブ:20.0% メパニピリム:20.0% きゅうり,いちご:うどんこ病:収穫前日まで きゅうり,ミニトマト,トマト,いちご:灰色かび病:収穫 前日まで 「除草剤」 イマザピル液剤 23481:アーセナルパワー(BASF ジャパン)14/6/11 イマザピル:26.7% 樹木等(公園,庭園,堤とう,駐車場,道路,運動場,宅地, のり面,鉄道等):一年生,多年生雑草 「植物成長調整剤」 1―メチルシクロプロペンくん蒸剤 23484:スマートフレッシュ タブ(ローム・アンド・ハー ス・ジャパン)14/6/11 1―メチルシクロプロペン:0.63% りんご,なし,かき(倉庫等施設内):収穫果実の熟期抑制 収穫直後

参照

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