国際的再編下の日本型鉄鋼産業システム
著者
十名 直喜
雑誌名
名古屋学院大学論集 社会科学篇
巻
38
号
1
ページ
17-39
発行年
2001-07-31
URL
http://doi.org/10.15012/00000803
国際的再編下の 日本型鉄鋼産業 システム
1.
は じ め に 提携,統
合,分
社化,そ
して合併… と,企
業 の事業再編が加速 している。世界的な競争激化 の下で提携・ 合併 を繰 り返 し巨大化す る産業再 編の大波が,
日本の産業界 に押 し寄せているの である。企業の事業再編が産業再編 を促 し,さ
らには他産業の再編の呼び水 となるという構図 は,製
造業 に とどまらず金融・ サー ビス業 など 日本の産業界 を席巻 し始めている。 とりわけ,成
熟産業 (いわゆる在来型重化学 工業)に
み る最近の変容はす さまじい。名門企十
名
直
喜
業が,企
業集団の枠を超 え,最
適 と思われる相 手を選んで提携関係 を築いている。大手7社が ひ しめ く造船業界は,石
川島播磨重工業 と川崎 重工,日 立造船 とNKKの
造船事業の統合など で,2002年
秋には3グ
ループに集約 される。三 菱,三
井系で大合併が続いた化学業界は,住
友 化学 と三井化学の経営統合により,再
編がさら に加速 している(1)。 鉄鋼大手のNKKと
川鉄 に よる経営統合の合意は,成
熟産業で相次 ぐ企業 の再編成を象徴する動 きといえる。 成熟産業で再編が進む背景には,グ
ローバル 化による国際競争の激化, とりわけ世界的な寡 目次1.は
じめ に2.大
口需要家 にみ る鋼材調達集約化 の動向 とその イ ンパ ク ト 2.1.自動車 メーカーにみ る鋼材調達集約化の動向 2.2.電機 メーカーにみ る集 中購買化戦略 2.3.造船業界 における再編統合 と鋼材調達戦略3.商
社生 き残 りの鉄鋼戦略 と大型再編成 3.1.総合商社 にみ る鉄鋼部門の統合再編 3.2.鉄鋼部門で始 まった商社大再編,その背景 と行方 4。 日本型鉄鋼 システムの再編の鼓動 4.1.日本型鉄鋼 システムの揺 らぎ 4.2.リーデ ィング・ カ ンパニーの新 しい競争戦略 4.3.高炉再編 の胎動一大手高炉 メーカー間 における協 力・提携 の模索― 5。 鉄鋼産業 システムの国際的再編成 と日本鉄鋼業 5.1.アジアにおける鉄鋼再編 と日本鉄鋼業 5.2.欧州鉄鋼業の再編成 と日本鉄鋼業 5.3.メ ガ・ スチール時代 の鉄鋼産業 システム ーNKK・川鉄の経営統合 とその衝撃一 6. おわ りに占化の進行やアジア企業の台頭がある。欧米で は石油のエクソン・モービル
,自
動車のダイム ラー・クライスラーなど世界的な企業同士の合 併など,川
上 。川下における外資の巨大化が進 行する。そ して,韓
国,中
国などアジア企業が 急速に力をつけてきている。 日本企業にみ られ る最近の活発な事業再編は,両
社の挟み撃ちに うちによる苦境か らの一つの脱出策で もある。 小論においては,区炒│ヽ│や日本,ア
ジアの鉄鋼 業において急展開する提携・統合など鉄鋼再編 の動向について, 自動車,造
船,電
機など主要 な鉄鋼需要産業ならびに商社における事業再編 や鋼材調達戦略などの新 しい動 きをふ まえつ つ,分
析する。 さらに,そ
うした動向が,従
来 の 日本的な産業・企業システムの特質 を多面的 かつ体系的に示 してきた「日本型鉄鋼 システム」 図表1
国内向 け鋼 材用途別受注量 (1998年) を, どのように変えつつあるかを明らかにした い 。2.大
口需 要 家 にみ る鋼 材 調 達 集 約 化 の 動 向 とその イ ンパ ク ト 2.1.自動車 メーカーにみる鋼材調達集約化の 動向 2.1.1。 日産 自動車の鋼材調達集約化 とそのイ ンパク ト 主要な鋼材ユーザーである自動車,電
機,造
船向けの国内鋼材需要 (1998年度)は,そ
れぞ れ 1,059万 トン,211万
トン,324万
トン(図表1)で
,
とりわけ自動車向け需要が大 きな比重 を占め,そ
の動向が 日本の鉄鋼メーカーの浮沈 を握 るもの となっている。 自動車用鋼板の取引契約交渉は,こ
れまで国 (単位 :万 トン) 部 門 普 通鋼鋼材 特 殊鋼鋼材 合 計 97年 98年 97年 98年 97年 98年 数 量 数 量 構成比 (%) 98/97 (%) 数 量 数 量 構成比 (%) 98/97 (%) 数 量 数 量 構成比 (%) 98/97 (%) 建 設用計 373 743 366 664 7.1 12.9 ▲1.9 ▲10.6 29 9 30 8 3.5 1.0 4.0 ▲7.8 402 752 396 672 6.6 11.2 ▲1.5 ▲10.6 1,428 1.294 25.2 ▲9.4 8.1 ▲11.0 1,506 1,363 22.8 ▲9.5 製造業用計 174 242 62 326 972 199 342 62 128 200 52 317 831 177 285 53 2.5 3.9 1.0 6.2 16.2 3.4 5.5 1.0 ▲26.2 ▲17.1 ▲16.0 ▲2.9 ▲14.5 ▲10.9 ▲16.8 ▲14.9 136 13 23 8 271 2 363 17 98 10 19 8 228 2 298 11 11.5 1.2 2.2 0.9 26.7 0.2 34.9 1.2 ▲27.9 ▲17.5 ▲18.4 ▲3.2 ▲15.9 ▲2.4 ▲17.9 ▲38.7 310 254 85 334 ,243 201 705 80 227 211 71 324 1,059 179 583 64 3.8 3.5 1.2 5.4 17.7 3.0 9.7 1.1 ▲27.0 ▲17.2 ▲16.6 ▲2.9 ▲14.8 ▲10.8 ▲17.4 ▲20.0 2,380 2,044 39.8 ▲14.1 833 673 78.8 ▲19.1 3,212 2,717 45.3 ▲15.4 販売業者 向 2,166 1,799 35.0 ▲16.9 141 112 13.1 ▲20.7 2,307 1.911 31.9 ▲17.1 合 計 5,974 5,138 100.0 ▲14.0 1,051 854 100.0 ▲18.7 7,025 5,992 100.0 ▲14.7 出所:日本鉄鋼連盟 「日本の鉄鋼業(1999)』内ではチャンピオン交渉
,固
定シェアを慣行 と してきた。新 日鉄 とトヨタ自動車 という最大手 が交渉 し,価
格水準が決 まる。その水準で,他
の高炉メーカー各社 も納入する。新 日鉄が先に 交渉するが、シェア割 りは固定する。 日産,ホ
ングで も同様の図式であった。この長年の協調 体制を突 き崩 したのは,仏
ルノーの傘下に入っ た日産 自動車であ り,新
日鉄の豹変である。 日産 自動車(ゴーン社長)は,1999年
10月に 「 リバイバルプラン」を打ち出 し,素
材 。部品 の調達先の集約化に乗 り出 した。2000年1月, 自動車用鋼板の調達について,従
来の5社体制 か ら,新日鉄,川鉄,NKKの
3社に集約すると 共 に,こ
れ まで28%前
後だった3社
の シェア を,大
きく変えた。新 日本製鉄 をメインの調達 先 としシェアを60%に
倍増 させ る一方,川崎製 鉄は28%か
ら30%に
,NKKは
28%か
ら10%
へ と大幅に絞った。一つの企業に量的優位性 を 与えることで,調
達コス トの引き下げを狙 った ものである。 また,一
部高張力鋼板など特殊品を納入 して いる神戸製鋼 も,引
き続 き納入を継続する。重 要保安部品の素材 となる特殊鋼条鋼 につ いて は,メ
イン2社 (大同特殊鋼 と神戸製鋼)へ
の 集約が進み,両
社 トータルのシェアは (従来の70%か
ら)90%強
ヘアップする(2)。 日産の ドラスチックな鋼板調達集約化は,新
日鉄主導の高炉5社協調体制をつ き崩 した。「こ の 日を境 に鉄鋼 業 界 はが ら りと変 わった」(NKK,下
垣内社長)。 鋼板調達の集約化は, 他の自動車メーカーに拡大する一方,こ
の動 き を見守っていた造船,電
機 をは じめ とする他の 需要産業界の調達にもインパク トを与えた。 さらに総合商社など,そ
こに結びつ く鋼板加 工業者などに大 きなインパク トを与えている。 メーカーの集約 に伴って,今
後 は起用す る商 社・ コイルセンターの選択 と集約化が開始 され るからである。需要業界の選択 と集中の動 きは, £難岡流通加工業界を今後,数
年のうちに一変さ せかねない問題 をはらんでいる。 2.1.2.ト ヨタ自動車の調達戦略見直 し これ まで表立 って動 きを見せ ていなかった ト ヨタ自動車が,調
達戦略 を一変 させ,今
後3年 間 に部品調達 コス トを約3割削減 す る計画 を発 表 した。中核 となるモジュール部品など173品 目につ いて,国
際競争 を勝 ち抜 く「絶対原価」 を設定 し,設
計時点か ら部品メーカー と共同で 使用の共通化な どを進め,製
造原価 を大幅に引 き下げる。達成すればコス ト削減額 は最大で1 兆円規模 になる見込みである(3)。 トヨタ自動車 はまた,本
田技研工業,三
菱 自 動車工業,マ
ツダ,デ
ンソー (トヨタ系の国内 部品最大手)と共 に2001年,米
ゼネラル・モー ターズな ど日米欧の 自動車大手5社が設立 した 部 品・素材の電子商取引市場「 コビシン ト」 に 参加す る。トヨタや本田は,大
量調達 によるコ ス ト削減効果が大 きいボル トやナ ッ トなどの汎 用部 品や事務用品の調達 に活 用す る方針 で あ る。トヨタなど国内大手がコビシン トヘの参加 を決断 したことで,標
準化が容易な部品の調達 は オープ ン化 の方 向 に進 む。部 品 メーカーに とって も,系
列取 引の崩壊 をいっそ う加速 させ るこ とになる。世界規模で部品 を開発で きる体 制が必要 とな り,外
資系メーカー との合従連衡 や体力のない企業淘汰 も一段 と本格化す ること が見込 まれ る(4)。 素材 につ いて も,
トヨタの選択基準 は「競争 力の ある企業 に納めて もらう」 ことである。ト ヨタは,仏
工場で塗料の調達先 を米デュポン1 社 に絞 った。同工場 は揮発性有機溶剤 を含 まな い水系塗料 を使 うが,「要求 した条件の塗料 を供給で きるメーカーが他になかった」 という。塗 料の調達先は日産や三菱 自動車工業 も集約 して いるが
,大
日本塗料 と中堅の田辺化学工業が合 併する引 き金になった(5)。 2001年度の鋼材調達で トヨタは,調
達メー カーの絞込みはしないものの発注シェアを見直 す。第1位の新 日鉄,第
2位のNKKか
らの調 達量を増や し,新 日鉄のシェアは40%台
に乗っ た模様である。スズキも, 4社
か ら鋼材 を調達 しているが,「多す ぎるので集約する」(スズキ幹 部)と
いう(6)。2.2電
機 メーカーにみる集中購買化戦略 2.2.1.松下電器グループの「集中購買」 大手鉄鋼需要家による鉄鋼メーカー選別の動 きが, 自動車業界から電機業界へ と広がるなど 加速 している。松下電器グループは,2001年
4 月からの事業部再編に伴い,家
電用鋼板の主要 3品種の調達先を,従
来の主要調達先8社か ら 新 日本製鉄,住
友金属工業,川
崎製鉄,神
戸製 鋼所の4社に絞 り込む「集中購買」に踏み切 る。 家電製品の海外生産シフ トが進むなか,松
下 グループの国内製品に占める鋼板素材の使用比 率は,樹脂化の流れの中で年々低下 して20%を 大 きく割 り込み,電
子部品や樹脂素材が調達資 材の主流 を占めるに至っている。鉄鋼資材の集 中購買は,そ
うした流れを受け,徹
底 した購買 業務の簡略fヒ 組織のス リム化に照準 を合わせ たものである。 松下グループが目指す「集中購買」は, 自動 車業界の「集中購買」 とは異なる。本社の資材 部が,調
達先メーカー,シ
ェア配分を決め,価
格交渉を行 う。契約は,各
事業所がシェア配分 に応 じて指定されたメーカー,代
理店商社 と結 ぶ。本社資材部は,発
注せず一元管理の下で, 個々の事業所の資材調達をサポー トする管理購 買の手法 を探 る(7)。 第1段階 となる4月からの集中購買は,対
象 品種 を冷延鋼板,電
機亜鉛めっき鋼板,溶
融亜 鉛めっき鋼板の3品種 に絞 り,11事
業所から始 める。これまで小ロットの割高な価格で仕入れ ていた事業所が,最
大 ロットの事業所購入価格 に一本化 されることにな り, 4月からの仕入れ 単価引き下げが実現 した(8)。 これにより,鋼板3 品種の調達費用は,年
間10億円減の30億円 と なる見込みである(9)。 高炉4社
はシェアアップ するものの,個
別メーカーの受注総量は,海
外 生産への傾斜 による国際生産規模の縮小から減 少は必至 と見 られる。松下側は集中購買メ リッ トを享受できるが,高
炉メーカーにとっては量 が減 り値段 も下がるという苦渋の決断を強いら れる(10)。 今回の集中購買化の対象 となる数量は,松
下 グループの鋼材買い付 け量全体の1/4程度 し かない。同グループの集中購買化は,今
後の対 象を高級カラー鋼板,電
磁鋼板,ス
テンレスな どの素材,電
子 レンジなどの他の事業所,に
拡 大 してい く。今回起用の高炉4社
は,今
後の対 象範囲拡大で も有利になるが, 4社
独 占の構図 は考えに くい。 松下グループが推進する資材調達部門の大改 革は,国
内生産の数倍の事業所規模 をもつ海外 拠点 も視野に入れている。国内での改革が軌道 に乗れば,海
外事業所 も対象に加えたグローバ ルな管理集中購買システムを構築 したい考えで ある(H)。2.2.2.鉄
鋼流通にも選別,集
約化の波■―松下 グループ「集中購買」化のインパク トー 仕入れメーカーの選別が進むと,商社や間屋, 加エセンター等の流通加工部門で も選別,集
約 化の動 きが避けがたい,とみられる。松下側 は,旧態依然 とした鉄鋼流通, とりわけ窓口商社の 機能に疑間を抱いている。中間流通 としての商 社機能が薄れ 加エセンターの機能が信用力を 合め強化 されているなかで,「中間流通不要論」 が出てきている。 また
,
リサイクル法や生産拠 点の見直 し,集
中購買化の流れのなかで,ユ
ー ザー主導の枠組み作 りが始 まっている。今回の 集中購買化において も,経
営の軸心をユーザー に移す加エセ ンターが増 えてお り,鉄
鋼 メー カー色の薄れがユーザー主導の再編に弾みをつ ける可能隆も否定できなぃ(12ゝ 2.2.3.電機メーカー各社にみる集中購買化の 動 き 松下グループの集中購買化は,他
の家電メー カーにも大 きな影響 を与えている。関西家電3 社の うち,三
洋電機グループ も集中購買化に向 け調達先メーカーの絞込みを検討 している。同 社は,国
内の自物家電製品の生産 を群馬工場に 集約する機 生産部門の集約 と並行 し,鋼
材調 達先を3∼4社
程度に絞 り込む意向で,松
下グ ループが進めている集中購買化の成 り行 きを見 守っている。シャープは,松
下,三
洋のような 集中購買化の計画はないが,松
下グループの動 向に強い関心 を寄せている(13)。 一方,三
菱電機は,家電や重電など全部門で, 鋼材の調達先 を国内6社
か ら新 日鉄,川
鉄,NKK住
金の4社
に絞 り込んだ。4社への発注 シェアも見直 し,新
日鉄など取引量の多い上位2社
への発注比率を徐々に引き上げている。同 社の鋼材購入額は年間約200億円だが,調
達先 の絞込みにより「国内価格 より安い国際価格の 水準に少 しで も近づ`ける」 という。 電機各社は,鉄
鋼メーカーか ら製鉄所の制御 システムや発電設備などを受注 しているため, 営業面の配慮から取引先は選別 しにくかった。 しか し,海
外メーカーなどとの競争がi:文化する 中で,収
益構造を一段 と改善するには取引慣行 の 全面 見 直 しが 必 要 と判 断 した もの で あ る(“)。 日産 自動車など自動車大手に続 き,鋼
材 の大 口需要家である電機各社が調達先の絞 り込 みに動 くことで,鉄
鋼など素材産業の再編力功ロ 速する見通 しである。2.3.造
船業界 における再編統合 と鋼材調達戦略 2.3.1.造船業界再編のシナ リオ 国内の造船大手7社体制を揺 り動かす造船再 編 は,メ
ーカー間の業務提携 か ら始 まった。 1999年9月に三井造船 と川崎重工業が,資材の 共同調達等での業務提携 を発表 した。2000年5 月にはNKKと
日立造船が業務提携 し,同9月 には三井 。川重連合に石川島播磨力勁口わること になった。 こうした動 きに先立ち運輸省は,・ 日本造船業 の競争力強化のため,造
船大手を合めた業界の 再編成が不可欠する提言「日本造船業の生 き残 り策」をまとめた。その内容の骨子は,大
手7 社 を3∼ 4社体制に再編する必要があるという ものである。最大手の三菱重工業を除き,他
の6社
における造船部門の年間売上高は500億 円か ら 1,300億 円と小 さく,ラ イバルの韓国造 船業 との競争力に懸念がある。業界再編により 1社当た りの売上高を2千億円か ら3千億円規 模に拡大する必要があると指摘する。規模の拡 大 と統合によって営業力や設計能力,資
材調達 の効率化 を図 り,競
争力を維持することが狙い である(15)。 業務提携 を契機 とする造船業界の再編は,ま
さに運輸省の提言に沿った形で急展開 してい く のである。2.3.2.3大
グループヘの集約が進む造船再編 (国内造船業界で第6位の)NKKと
(同第3 位 の)日立造船 は2001年2月 に,造
船事業の統 合 を正式 に発表 した。2002年10月 に折半出資 会社 を設け,営
業か ら設計 開発,生
産 まで を一 体化 し,重
複部門の統廃合等 を通 じてコス ト削 減 を図 る。新会社の売上高は約1,800億円で, 三菱重工業(2,689億円)に 次 ぐ国内第2位の規 模 になる(16)。 これに続 いて,石
川 島播磨重工業(同第2位) と川崎重工(同第5位)は2001年4月,2002年
10月 に折半出資です斤会社 を設立 し,造船事業 を 統合す る と正式発表 した。両社の造船部門の年 間売 上高 は約2,100億円で, 日立造船一NKK
の新会社 を上回 る国内第2位の規模 となる。新 会社 は2003年春 までに住友重機械工業 の艦艇 部門 を統合す るほか,三
井造船 との業務提携 を 継 続す る。石播 と川重は,商
船部 門で提携 して い る三井造船 を加 えた3社
連合 を目指 していた が,統
合 を急 ぐ2社が先行す ることになった。 図表2
造船 大手の提携 。総合相 関図 造船大手7社は図表 2に 見るように,三
菱重工 を合め3大グループヘの集約が進む見通 しであ る(17)。 造船重機各社にとって,造
船は発祥事業 とし ての重みをもつ。それだけに統合に向けた交渉 は,「メンツのぶつか り合いになる」。戦後,三 度 の造船不況を経て,業
界再編性はこれまで何度 も浮上 しては再び水面下に沈む歴史を繰 り返 し てきた。 しか し,図
表 3に みるように韓国企業 が新造船の受注量で2年
連続世界一の座 につ き,今
後は「中国が大 きな脅威 となる」の力誦雀 実視 される中,産
業構造調整の圧力や株式市場 の厳 しい目が各社の背中を押 した(18)。 2.3.3.造船再編のインパ ク トー鉄鋼再編 を加 速 させ る引 き金 に も一 「造船部門を抱えているだけで株価が下がる」 (造船大手首脳)という。各社の収益の足を引っ 張る存在 となっていた造船部門の再編にメ ドが ついたことで,造
船再編が他事業の再編の促進 剤 ともな りうる。日立造船 とNKKの
統合合意 で,「NKKは
川崎製鉄 との経営統合をにらみ, 最大の懸案であった造船にメスを入れた」 とい われる(19)。 造船業界の大型再編 。統合の動 きは,造
船用 図表3
日韓 の新 造船 受注量 三菱重工業(2689) (注 )カ ッコ内は99年 度 の船 舶 関連 売上 高,億
円 住友重機械工 業 (650) 日立 造船 (994) 護 衛 鑑 の 設 計 な ど で 提 供 鑑 艇 部 門 を 統 合 ヘ 2002年10月 に 造船 事業 を統合 2 0 0 2 年 10 月 に 造 船 事 業 を 統 合 商 船 分 野 で 提 携 ﹁ ︱ ︱ ︱ 劃 本 国 ロ ロ 89年91 93 95 97 992000
日韓 の新 造船 受注量 ︵推 定 ︶ 百 万 総 ト ン 0 出所:日本経済新聞,2001年3月29日付 出所 :日本経済新聞,2001年2月24日付鋼板 を供給 してい る鉄鋼 メーカーに も無視 で き ない影響 を及ぼす。造船用厚板 の年間需要 は, 大 手
7社
全体 で約200万トン強 で あ る。鉄鋼 メーカーはこれ まで, 日本の造船 メーカーの規 模縮小 に合わせ て,厚
板 ミルの統廃合 を実施 し て きた。現在,新 日鉄が 3ミ ル,NKKが
2ミ ル, 川鉄,住
金,神
鋼 の3社が 1ミ ル を保有 してい る。 また,各
造船 メーカーヘの納入実績 では,三
菱重工,石
播, 日立造船が (シェア配分 は異な る ものの)鉄
鋼大手5社体制 を とってい る。一 方,川
重 は川鉄 。新 日鉄,三
井造船 は新 日鉄・ 住金の各2社か ら,住
重は住金 。NKK。
新 日鉄 の3社
か ら購 入 し,NKKは 100%NKKが
供 給 している。 造船 メーカーの再編 に伴 い,資
材調達 に集約 化が図 られ る と,鉄
鋼 メーカーヘの影響 は大 き い。とくにり││,失,生し `卜 ,オ申£岡の3オ土は '早 オ反ミル が1基だけに,資
材調達の集約イ跛口何 では,厚
板 ミルの存続問題 に発展 しかねなぃ(20)。 3。 商社 生 き残 りの鉄鋼 戦 略 と大 型再 編成3.1.総
合商社 にみる鉄鋼部門の統合再編3.1.1.伊
藤忠 と九紅の鉄鋼部門統合 伊藤忠商事 と丸紅 は2000年10月,£難岡部門 の統合 を正式発表 した。両社 は2001年6月の 株主総会で承認 を得 た うえで,本
社か らつ帰岡部 門 を切 り離 し統合 させ る方針で,早ければ 2001 年秋 に も統合 させ る意向である。両社 の鉄鋼部 門が統合すれは 売上高(2000年3月 期,単
体 ベース)は 1兆 4,979億円 とな り,業
界 トップ の三井物産 (1兆 3,992億円)を抜 いて1位と な る(2t 3.1.2.三菱商事 と日商岩井の鉄鋼部門統合 三菱商事 と日商岩井は2001年1月,2002年
秋 をメ ドに した鉄鋼事業の統合 を正式発表 し た。新会社の鉄鋼製品の連結売上高は2兆 1千 億円,総
資産は1兆円で,図
表4にみるように 現在 トップの三井物産ならびに伊藤忠―丸紅の 新会社を凌駕 し,国
内最大の「鉄鋼会社」にな る。鉄鋼製品だけでな く,鉄
鋼原料やアル ミな ど非鉄部門の統合 も検討する。 これまで下位商社 を中心にライバル企業 との 提携が相 次 ぎ,鉄
鋼部門以外で日商岩井は,業
界再編の「主役」を演 じてきた (図表5)。 しか し鉄鋼部門は,同
社の売上高の2割,社
員数で 1割 を占め,同
社の「長男坊」にあたる。また, 三菱商事 という旧財閥を代表する大手商社まで が主力事業の統合に踏み切 ることで,本
格的な 商社再編の波が業界全体 に押 し寄せて きてい る。 三菱商事が他社 との事業統合に踏み切 った背 景には,鉄
鋼メーカーによる取引先の選別があ る。つ帰岡メーカー各社はここ数年,資
金力のあ る商社を中心に取引先を絞 り込む傾向にあり, 商社1社当たりの取扱高を増やす一方で仲介手 数料の削減 を狙っている。商社の鉄鋼部門は, 三井物産,住
友商事の2社が取扱高で1, 2位
を占める。4位の三菱商事には, 3位
の 日商岩 井が三井,住
友のいずれかと手を組めば「メー カーの選別から漏れる」 との危機感があった。 2000年 10月に事業統合 を発表 した伊藤忠―丸 紅 とともに,大
手商社の鉄鋼部門は4グ
ループ に集約される(22)。 三菱商事一 日商岩井のう難罰統合によって誕生 する「巨大専業商オ劃 は,鉄
鋼商社機能の大 き な基準 となる自動車,電
機部品メーカー向けを 主体 とする鋼板加工能力で も,他社を圧倒する。 総加工能力は,全
国能力の約10%を占め,関
東図表
4
大手商社 の鉄鋼部 門売上 高 と 鉄鋼 部門統合 大手商社 の鉄鋼 部門売上 高 (2000年 3月 期,単
体 ベ ース) 三菱商事 十 日商岩井2兆1041億 円 伊藤忠商事 十九紅1兆
4978億 円 三井物産1兆
3992億 円 住友商事1兆
2193億 円 日商岩井1兆
757億 円 三菱商事1兆
284億 円 丸紅7696億
円 伊 藤忠7282億
円 (注)伊 藤忠 と丸紅 は年 内統合予 定 出所:日本経済新聞,2001年1月26日付 図表5
大 手商社 間の事業再 編 の動 き ▽鉄鋼・ 金属 ・ 伊藤忠商事 と川鉄商事が鋼管輸 出事業 を統合 (2000.4) 。丸紅 と伊藤忠商事が鉄鋼製品部門の統合検討 開始(2000.10)
・ 豊 田通商が トーメ ンの鉄鋼製品事業 を段階的 に買収(2000.11-)
。三菱商事 と日商岩井が鉄鋼製品部門の統合発 表、 その他金属事業 も検 討(2001.1)
▽バ イオ ・ トーメ ンとニチメ ンが農 医薬事業 を統合 (2001.4計 画) ▽情報通信 。日商岩井が情報産業部門 をITXと して分社 、 帝人、船 井 電機 な ど出資(2000.3)
。ITXが
ニ チ メ ンの情報 関連 子 会社5社を買 収 、10%出資受 け入れ(200.7-8)
▽ その他 ・ 兼松 が紙パルプ事業 を 日商岩井会社 に譲渡、 子会社 に出資(2000.2)
。日商岩井 とニチメ ンが建材販売 子会社 を合 併 、「サ ン建材」設立(2000.7)
。日商岩井がLPG子
会社株7割を大 阪ガ ス に売 去 「(2000.9)
。日商岩井が子会社 に繊維事業集約、帝人商事 と合併(2001.4計
画) 出所:日本経済新聞,2001年2月10日付 地方に限れば40%の
シェアに達する。 こうした国内市場での巨大 な在庫 。鋼板加 工・輸送機能を持つ新会社への統合方針発表が, 国内流通業界に与えた衝撃は,丸
紅=¨伊藤忠の 統合方針発表をはるかに上回る。他の総合商社 や鉄鋼主力商社,高
炉メーカー直系商社の対抗 策,
さらにコイルセンター, 2次
鉄鋼販売業者 (特約店)を
合めた再編が加速す るとみ られ る(23)。3.2.鉄
鋼部門で始 まった商社大再編,その背景 と行方 3.2.1.鉄鋼部門統合の衝撃 とその背景 九紅=―伊藤忠, さらに三菱商事一日商岩井の 鉄鋼統合合意で浅夫鋼流通の業界地図は瞬 く間に 変わった。中下位商社で始 まった事業統合の動 きは,1日財閥系を合む上位商社にも押 し寄せ, 対象分野は鉄鋼 か ら情報技術,バ
イオまで広 がっている (図表5)。 しか し,課
題 も山不責み している。「合理化は自 分の組織のなかで取 り組む方がはるかに容易。 統合にメ リットを感 じない」 とのオ動商もある。 鉄鋼統合を決めた丸紅 と伊藤忠は資産の再評価 など膨大な作業量に驚いている。 商社の鉄鋼部門を取 り巻 く環境は,厳
しい。 鉄鋼メーカーと自動車,電機などのユーザーは, 世界規模の再編で巨大化する。 さらにIT革
命 は,商
社が支配 してきた鉄鋼流通に,メ
ーカー やユーザーが足を踏み入れる道を開いた。電子 商取引などによる直接調達の広が りで,商
社が 得意だった仲介業務の存在意義が薄 くなってい るのである。「商社を中抜 きしたい」(新日鉄幹 部)との声 もある。1996年 に鉄鋼大手6社が支 払った仲介手数料(口銭)は推定 1,700億 円で, 2000年には 1,200億 円に減ったとされる。 鉄鋼流通分野で商社が生 き残るには,鋼
材 を加工 してユーザーが使いやすい形で提供する能 力や きめ細かな小 日配送を磨 くしかない。三井 物産は20億円を投 じて大阪府堺市に最新鋭の 大型加工拠点を建設 し,2000年末から本格稼動 した。豊田通商は
,
トーメンか ら加工拠点を買 収 し, 自社の施設 と統合する。 人材や信用力が最大の資産 とされる商社で, 鉄鋼部門は設備産業に変身 しつつある。製造業 と同様に,規
模の拡大は増大する設備負担を軽 減 し,収
益改善の有力な武器 となる。三菱商事 と日商岩井の鉄鋼統合 により,新
会社 は年間 200万トンの圧倒的な量の加工能力を手に入れ る。 鉄鋼で始 まった素材の流通革命は,化
学,I繊 糸色 紙パルプなどに広が り,商
社の存立基盤 を 激 しく揺 さぶる。£難岡部門の統合は,商
社大再 編の序章にす ぎなぃ(24)。 3.2.2.商社に求め られる新 しい総合力 世界で も類例のない日本的業態,総
合商社は どこに向かおうとしているのか。他社 との事業 統合 を推進する動機 に,「決算が連結主体 に変 わったことが大 きい」(ニチメン半林社長)こと があげられる。単体決算の時代には,ど
んな部 門であれ分離は,売
り上げや収益の減少につな が り,規
模 を競 い合 う商社業界では抵抗 が強 かった。 しか し連結決算では,分
離 して他社 と 結合 させて も,部
門の収益は持ち分比率で本体 に反映 される。統合の成果で収益力が向上すれ ば,本
体にとどめていた時代 よりも貢献度は高 まるのである。 一方,鉄
鋼部門などはこれまでプラン ト,建
設をはじめ他部門 と共同で取 り組む案件 も多 く み られる。他社 との統合企業になれば,商
社特 有のシナジー効果は薄れるなど,そ
れな りの副 作用 も出て くる。 伝統的な部門は分離 し他社 と統合する一方, 新規事業は純粋投資によるキャピタルゲインが 主 目的になる。これがさらに進めば,商
社は調 達 した賃金のポー トフォリオ運用する投資会社 に変身 しかねず,競
争力の源泉が何であるかが ます ます見えにくくなる。商社の枠組み自体が 解け始めているのである。新 しい商社像の構築 が必要な時代がきている(25)。 再編が進めば,一
つ屋根の下であらゆる商品 を扱い,部
門間で情報や顧客を共有することで 相未効果 を得 ようとして きた総合商社の業態 は,変
質せ ざるを得ない。しか し,「もし巨大な 専門商社になるなら歓迎 しない」(新日鉄,千
速 社長)と
いう顧客の声 も無視で きないとみられ る。 世界に張 り巡 らす海外拠点網 と類を見ない営 業力,そ
して商品の総合力といった,総
合商社 の栄華を築いた強さは,過
去の もの となってい る。今,商
社に求め られているのは,「新 しい総 合力」である。すなわち,成
長企業の発掘や新 事業の開拓など,情
報技術や金融技術 を駆使 し て,顧
客の抱える課題 を解決する新 しい型の総 合力が求め られている(26)。 4。 日本 型鉄鋼 シス テ ムの再 編 の鼓動 4。 1。 日本型鉄鋼 システムの揺 らぎ 日本の鉄鋼業 において,大
手高炉メーカーの 存在感 。支配力は圧倒的 に高 い。1970年の新 日 鉄誕生以来,国
内の鉄鋼業界 は鋼材価格 を維持 す るため に長 く協調 して きた。高炉大手5社の 市場 シェアはほ とん ど変わ らず,“ 結束"の 固 さ を誇 って きた。 新 日鉄 を中心 に大 手 高炉 メーカーは原料 調 達,生
産,技
術開発,販
売,労
務対策 な ど主要 分野 にまたが って,他
の業界や先進諸国に も例をみない体系的で強固な業界協調体制 を構築 し,国家 との密接な関係でそれを補強 してきた。 さらに
,商
社 をはじめ大 ロユーザーや納入業者 などとの密接な長期継続取引や共同開発の仕組 みをつ くり出 してきたのである。そこには,こ
れまでの 日本の主要産業にみられた産業・企業 システムの諸特徴が数多 く合 まれてお り,む
し ろ日本型 としての体系性 を有するもの となって いる。筆者は,そ
れを「日本型£難岡システム」 と捉 えた(27)。 寡占的支配に基づ く「協調的競争」体質が維 持できてきたのは,圧
倒的なシェアを誇 る新 日 鉄の存在があったればこそのことで,安
定指向 の リーダーとしての役割 を発揮 してきた。「業界 は一種の運命共同体, 1社
のみが自己の利益だ けを追求すればあとに残 るのは無用の混乱だ け」 との認識が,発
足以来これまでの新 日鉄の “原理"と されてきた。行動基準の中核に「業 界の安定」を据えるという同社の経営スタンス は,今
も変わっていないといわれる(28)。 新 日鉄に付けられた「企業の中の企業」といっ た種々の冠詞は,
日本の産業界におけるこれま での同社の評価,信
用力の高さを物語 るもので あった。通産省 との大いパイプによって「通産 省は新 日鉄の霞 ヶ関分室」 と115楡され 鉄鋼春 闘の主役 として日本の労使関係 を牛耳った影響 力の強さに「労働省鉄鋼局」の冠詞が付けられ た。 日本鉄鋼業の「斜陽」イL
日本の産業界に占 める経済的比重の低下に伴い,新
日鉄の社会的 評価は他の大手高炉メーカー共々大 きく低下 し た。 しか し,財
界総理 といわれる経団連会長を 輩出 し続ける底力,豊
富な人材,オ
ピニオン・ リーダーとしての信用力は,業
界内で も群 を抜 いてお り,業
界内における同社の圧倒的存在感 は揺 らでいないといわれる。「財務力,もたらさ れ る情報量,取
引先 に一流ユーザー を網羅す る 強力な営業力。 これ らは2, 3社
が東 になって もかな うまい」(業界関係者)との指摘 もみ られ る(29)。 新 日鉄 の全 国粗鋼 シェアは,合
併後 の30年 間 に大 き く低 下 した。1970年 35.7%→ 80年 29.5%→ 90年26.0%で
,そ の後26%前
後 で推 移 してお り,発
足時のシェアを約10%,1千
万 トン減 らしたことになる。 シェアを抑 え,販
売 秩序 の先頭 に立 ち続 けた結果,収
益 力の大幅低 下 と合理化 に次 ぐ合理化, さらに資本市場 にお け る厳 しい評価 に直面 す る。グ ローバ リゼー シ ョン,グ
ローバル・ スタンダー ドを背景 に, 金融 さらには大手ユーザー間での一大再編が進 み,大
手ユーザーの鋼材調達集約 など新 しい波 が一気 に押 し寄せている。 4.2.リーディング・カンパニーの新 しい競争戦略 こうした中で,新
日鉄の「安定」への手段が 大 きく変わ りつつある。「安定のためにはシェア 低下 には目をつぶ る」 というこれ までの リー ダー観か ら,「恐れ られるほど強い新 日鉄」(千速 社長)への転換を図っている。「一番シェアの高 いところがコス ト競争力をざりぎりまで高め, 再生産可能な価格 を打 ち出 してい く。 トップ シェアの ところが競争力,価
格などで リーダー シップ を発揮 してい く」(今井敬会長)と
いう リーディング・カンパニー像を掲げる。「個別企 業の論理」を前面に出 しながらの「安定策の模 索」である(30)。 しか し,そ
れは,規
模の利益が 顕著 に働 く鉄鋼業 においては,下
位高炉 メー カーにとってその存在基盤 を揺 るが し再編統合 を促がす不安定化の道に他ならない。 「鉄は国家な り」を自負 し,「産業の米」の供 給者 として日本の経済成長を支えてきた鉄鋼業界は
,こ
れまでの「協調体制」から本格的な「競 争体制」に突入 している。 とくに活発な動 きを みせているのが,新
日鉄である。内外の提携戦 略をテコに,技
術開発や販売の競争を仕掛け, 他社の引 き離 しにアクセルを踏み始めた新 日鉄 が,「業界再編の主役」すなわち仕掛け人 となっ ている。 「 リバイバル・プラン」を掲げ大幅な鋼材値 下げを要求する日産 自動車 と高炉大手の駆け引 きが続 く中,2001年
1月,新
日鉄が 日産の要求 をあえて受け入れた結果,調
達比率を倍増 させ 6割のシェアを手に入れた。高炉他社は,新
日 鉄が圧倒的な販売力・収益力を武器に値下げと 引 き換えでシェアを拡大 したと警戒する。交渉 の過程で,「新 日鉄は覇権主義に走 った」との批 判 も出た(31)。 これを引き金に,鋼
材の販売競争 はあらゆる分野に波及 し,高
炉各社は,こ
のま までは生 き残れないと悲鳴を上げなが ら,泥
沼 の価格競争を繰 り広げている(32)。 新 日鉄は,大
手ユーザーにおける鋼材調達先 の絞込みの動 きを,シ
ェア拡大による収益改善 の「一つのチャンス」 と捉 えていると,他
高炉 首脳はみる。調達先の絞 り込みは,稼
働率がい まひとつで収益性 に問題のある表面処理鋼板分 野が中心で,増
産による収益改善効果が大 きい か らである(33)。4.3.高
炉再編の胎動一大手高炉 メーカー間 に おける協力・ 提携の模索―4.3.1.NKK・
川鉄,製
鉄所間協力・提携で合 `冒、NKKと
川鉄 は2000年4月,両
社の4製
鉄 所(NKKは
福山・水島製鉄所,川
鉄は水島。千 葉製鉄所)間の協力提携で合意 したと発表 した。 近接 して立地する両社の製鉄所間で,「製品搬送 など物流関連分野,製鉄所設備の補修関連分野, 資材 。原料の共同購入および在庫運用など購買 関連分野を対象に協力,提
携について検討を進 めてい く」というものである(34)。 両社の合意は , 「今後の協カメ リット次第では,両
社の関係に 多大な影響 を及ぼす可能性 を合んだ一大合意」 とみ られてお り,さ
らなる提携拡大や「事業統 合」の可能性 を合んだ ものである(35)。 その後,両
社は2000年 10月,新
たに経営統 合を前提に基幹分野である研究開発 も共同で進 めることを明らかにし,経
営統合に向けて本格 的な調整に入った(36)。 4.3.2.新 日鉄。住金,事
業再編で提携―シーム レス鋼管 とステンレス鋼板― 住金 と新 日鉄 は2000年5月,シ
ーム レス鋼 管 とステンレス鋼板の事業再編での提携合意を 発表 した。新 日鉄が八幡製鉄所のシームレス鋼 管設備の前面体止,住
金が和歌山製鉄所のステ ンレス用電炉の体止 という,生
産構造再編→設 備廃棄に踏み込んだ もの となっている。 新 日鉄は2000年5月,2001年
3月末 をメ ド に八幡製鉄所のシームレス鋼管設備 を全面休止 し,油
井管 (石油掘削用鋼管)を
中心 とした輸 出向けシームレス鋼管事業から撤退すると発表 した。全量が輸〕出向けとなる油井管事業は,世
界的に過剰で長期 にわたって採算割れが続 いて お り,大
手ユーザーであるオイルメジャーの大 型 。合併による購買数量の巨大化, 1社
集中購 買に対応 した事業規模の再編 を迫 られる中,全
面撤退を決めたものである。 新 日鉄の油井管事業撤退 に よ り,日
本メー カーの得意品種 となる高級油井管需給が改善 し,最
大手の住金などの受注量増加が大 きく進 む ものとみ られる(37)。 他方,ス
テンレス鋼板事業では住金が,2001
年4月か らステンレス母材 (ホットコイル,厚
板用スラブ
)を
段階的に新 日鉄か らの購入に切 り替え,切
り替え終了に合わせて和歌山の電炉 などステンレス母材工程 を体止する。 住金は,ス
テンレス母材生産を和歌山製鉄所 の電炉一熱延 ミルで行ってきたが,電
炉が更新 期 を迎え, さらに熱延 ミルが普通鋼 との併用操 業で操業効率があがらず,和
歌山の採算改善を 進めるうえで大 きなネックとなっていた。今回 の提携で,和
歌山の熱延 ミルは一般材に一本化 され,操
業効率 も向上 し要員削減による収益改 善 も進む。 しか し一方で,母
材工程の撤退に伴 う単圧化により,販
売数量,商
権の確保が課題 となる。 新 日鉄は,ス
テンレス母材設備の稼働率が向 上 し,そ
れに伴 う生産 コス トの削減が可能にな る。ステンレス事業では新 日鉄が, 日新製鋼 と 事業統合 も視野に入れた事業再編についての検 討を進めてお り,新
日鉄 を核 とするステンレス 業界の一大再編が進むとみられる(38)。 以上にみるNKK。
川鉄の4製鉄所間協力・提 携,新
日鉄 。住金の事業再編での提携など,大
手高炉メーカー間の提携 に向けた動 きは,こ
れ までの「5社
体制」再編の序曲 となるものであっ た。5.鉄
鋼 産 業 シ ス テ ムの 国際 的再 編 成 と 日本 鉄鋼 業 5。1.ア
ジアにおける鉄鋼再編 と日本鉄鋼業 5。 1.1.川鉄,韓
国の東国製鋼グループ と提携 川崎製鉄は 1999年 7月,韓 国の最大手電炉。 単圧グループ企業 となる東国製鋼グループ と提 携,相
互協力基本協定を結び,ス
ラブ,ホ
ット コイルの大量供給,技
術耐瘍力を柱 とする協力関 係 をスター トさせた。同グループヘの新たな素 材供給 は年 間40∼50万 トンが見込 まれ てお り,川
鉄の「設備 フル稼動化戦略」の核 とな る(39)。 続 いて1999年 10月,川鉄 は東国製鋼への出 資 を決 め,同
社の株式4%相
当を取得す ると発 表 した。また,技
術協 力関係 については,厚
板, 形鋼,表
面処理鋼板の各製造技術お よび物流 シ ステムの5分
野 を対象 とした検討チームを編成 し,協
力内容 を詰めている。川鉄 は,東
国製鋼 との協力関係強化 を合めた韓国向け鉄鋼 ビジネ スの拡大 に対応 し,同
年 12月 1日 付 で「 ソウル 事務所」 を開設す る(40)。 5。1.2.川鉄,韓
国の現代ハイスコと提携 川鉄は2000年12月末,韓
国の大手冷延・鋼 管メーカーで現代 自動車グループの有力企業, 現代ハイスコ (旧現代鋼管)と
自動車用鋼板技 術の導入を合む包括提携契約を締結 した。現代 ハイスコは,1999年頃から海外メーカーとの提 携について検討を始め,仏
ユジノールおよび独 ティッセン・ クル ップ と接触 したが具体的な進 展はみ られなかったという。川鉄がソウル事務 所 を開設 したのを機に提携 を申 し入れ 提携に 至ったものである。 川鉄 を合む 日本の高炉大手にとって韓国にお ける最大のホットコイル輸出先 となる現代ハイ スコは,素
材であるホットコイルの安定確保を め ぐって浦項製鉄 との確執が表面化するなど, その動向が 日韓双方で大 きな関心 を集めて き た。現代ハイスコには,川
鉄 との提携 により自 動車用鋼板技術の導入 と共にホットコイルの安 定確保 を図るという狙いがある(a)。 一方,川
鉄 サイ ドか らは,ホ
ットコイルの安定的な供給先 力誦雀保できるとともに,(ハイスコの親会社であ る)現
代 自動車に対 して自動車用鋼板の安定供 給 が将 来 可 能 に な る とい うメ リットが あ る(42)。5。1.3。 新 日鉄
,韓
国の '歳 頁製鉄 と戦略提携 新 日鉄 は2000年8月,韓
国の浦項製鉄 と基 礎技術の共同開発および海外合弁事業,IT分
野 などで「戦略提携 を結ぶことで合意,調
印 した」 と発表 した。 新 日鉄は,98年
12月か ら3年間で浦項総合 製鉄の株式1%を
取得 し,浦
項製鉄 も同等総額 の範囲で新 日鉄株 を取得す ることを決 めてい た。株式の持合は浦項製鉄の要請で具体化 した ものだが,そ
の後の意見交換の中で連携強化が 打ち出され,今
回の合意に至ったものである。 連携強化の具体的項 目は,「基礎的技術の共同 開発,IT分
野および海外合弁事業の推進など」 とし,今
後,両
社間で実施に向けた具体的な手 順などを詰めることになる。今回の連携強化に 伴い, 1%を
限度 としていた株式の持合の上限 を3%に
引 き上げる方針 も決めた(43)。 世界1, 2位 (2000年8月現在)の連携強化は,わ
が国 高炉メーカーを合む世界鉄鋼大手の経営戦略に も少なからぬ影響 を与えてい く(“)。 5。1.4.浦
項 。現代 の対立 に も日本の影 現代 自動車グループ と(その兄弟会社である) 起亜 自動車 は,浦
項 製鉄が鋼材供給量や価格 を 一方的に決定 し,他
の鉄鋼 メーカーか ら購入 さ せず に独 占的な供給 を押 しつ けて くるとして, 韓 国公正取引委員会 に提訴 を起 こ した。その背 景 には,現
代 ハイス コと川崎製鉄の提携 をめ ぐ る,現
代 グル ープ と浦項製鉄 の対立が あるとみ られ る(45)。 1静頁製鉄 と現代 自動車 グループのホ ッ トコイ ルの供給 をめ ぐる対立 には, 日本鉄鋼業界の勢 力争 いが影 を落 としている。 '詐 頁製鉄 は新 日鉄 と,現
代 自動車系列 の現代ハ イス コは川鉄 と提 携 を結んでい る。 発端は,ハ
イス コが浦項製鉄 にホッ トコイル (熱延鋼板)の
供給を求めてきたのに対 し,浦
項製鉄が「冷延鋼板で競合するメーカーを助け ることは出来ない」と応 じなかったことである。 これに対 して,現
代 自動車は2001年度分につ いて浦項製鉄からの購入i成 ハイスコからの調 達増の措置を表明 した。 ハイスコは2000年秋, 日本の大手商社 を回 り出資を要請 したが,い
ずれ も応 じず,包
括提 携 を結んだり│1鉄だけとなった。川鉄首脳は,「浦 項 と (提携 した)新
日鉄の両方か らの圧力がか か り,商
社が出資できなかった」 と憤 る。川鉄 は,ハイスコと組むことで,「現代 自動車が海外 に進出す る際,有
利 な立場 に立つ」こ とを狙 ぅ(46)。 韓国公正取引委員会は2001年3月,「浦項製 鉄が現代ハイスコに自動車用ホッ トコイルの供 給を拒否 していることは寡占メーカーの市場支 配的地位 を乱用する不正行為である」と裁定 し, 浦項製鉄 に対 し16億4,020万 ウォンの課徴金 を課 した(47)。 一方,7静頁製鉄は,「川鉄が韓 国市場に値下げ 攻勢をかけ,市
場 を混乱 させた」 と批判 し,川
鉄 を含む 日本の鉄鋼大手を反ダンピング (不当 廉売)提
訴する動 きもみせた(48)。 5。2口
卿1卜1鉄鋼業の再編成 と日本鉄鋼業 5。2.1.[幻│1発の鉄鋼 ビッグ・バ ンー民営化 。統 合再編の嵐一 欧州 で は,1988年
11月 に英 国プ リティッ シュ・スチール社が民営化 され,さ
らに90年代 に入ると,EUに
おける市場統合やソ連崩壊 に 伴 うコメコン市場解体によって,
自由化が進展 した。そうした中で,非
効率化が目立つ国有鉄 鋼企業を民営化 し,競
争力向上 を模索する動 き が,各
国で加速 した。 こうした動 きは,EU諸
国や東欧の旧社会主1986 1991 1993 西欧 米 国 日本 オセ アニ ア アフリカ(南アを含む) 中南米 アジア(中国を除 く) ロシア 48.0 100.0 100.0 92.0 13.8 31.0 39.5 0.0 65.0 100.0 100.0 100.0 64.0 64.0 54.0 0.0 70.0-72.0 100.0 100.0 100.0 65.0-70.0 95.0 65.0-70.0 80.0 図表
6
世界各国 。地域の民間部門の粗鋼生産比率 (単位:%)
出戸斤:ILO. PrivatizatiOn in the lrOn and Steel
lndustry 注 :93年 は見込値,94年以降,民間部門の比率 はさ らに上昇 している もの とみ られ る。 出所:日本鉄鋼連盟『鉄鋼界」1996年11月号 義圏諸国に とどまらず
,主
要製鉄 国 を巻 き込 ん だ世界的傾向 とな り,図
表6に見 るように最近 では世界のすべての国 。地域で民間部門が多魅岡 生産の主流 となって きている(49)。 民営化の進展により,図ひIヽ1鉄鋼業では企業の 再編や多角化,海
外展開 に転 じるな ど,国
境 を 越 えた資本流動化が進んだ。さらに,99年
1月 か ら単一通貨ユーロを法定通貨 として導入す る な ど,市
場環境 が大 き く変容 してお り,本
格化 す るメガ・ コンピテ ィシ ョンヘの対応 を追 られ る中,企
業再編 が加速 している。国境 を越 えた 合弁,合併の活発化 による生産の集約化が進み, EU 15カ国で は粗鋼生産総計 に 占め る上位 10 企業の シェアが1997年に73.8%と な り,91年
比で17.1ポイン ト上昇 した。1991年以降の企 業再編の内訳 (図表7)を
み ると, 5割
以上 が 鋼板分野に関す るもの となっている(50)。 国境 を越 える統合 は90年代後 半 に加速 し, 欧州の鉄鋼 メーカーを特定の国籍で呼ぶことが ほ とん ど出来 ない状況が出現 している。イタ リ アの鉄鋼大手4社は リーバ1社に統合 された。 97年にはル クセ ンブル クのアルベ ッ トが スペ イ ン国営CSIを吸収 し,ド イツの2大メーカー のテ ィッセ ンとクル ップが合併 した。98年には 仏ユ ジノールがベル ギー最大手の コック リル・ サ ンブル を買収 した。さらに99年秋 には,英ブ リテ ィッシュ・ スチール と蘭国営のホッホオー フェンス と合併 してコーラスが 誕生 した。図表8に
み る よ うに,80年
代 に は22あった高炉 (件数) 図表7
欧州鉄鋼企 業 にお け る主要 な合弁 。合併 の動 き(1991∼97年) 形 態 主 要 目 的 提 携 合 弁 合 併 買 収 計 域 内基 盤 強化 域外基 盤 強化 合理化/ 専門化 生産 多 品種化 総 計 14 13 23 52 35 13 25 11 10 27 18 11 10 出所:日本鉄鋼連盟『Tekkohkai」 1999年 1月号図表
8 90年
代欧州鉄鋼企 業 の再編 フロー 80年代 数 字 は88年 粗 鋼 生 産 90年 代 現 在 数字 は98年 粗 鋼 生 産 リーバ(電炉) 鋼 板 (lLP) 95年 売 却 イタルシデル 鋼 管(グル ミネ) 9611,t去│' 88年総合 イルバ 1,150万t テルニ リーバ ・ グル ー プ 1,330万t (うち高炉900万t) 鋼 板60% 条鋼40% ステ ンレス(AST) 941・ ,t去「 ' デル タンデ ル テ ィ ソセ ン 1.190万t 94年 ス テ ン レス,電磁 ぶ りきで合弁 会社 設 立 97年 鉄 部門統 合 テ イ ンセ ン・クル ソプ 資 本T60%,K40% テ イ ンセ /・ クル ノブ 1,480万 t 鋼 板(含ス テ ン レス、電磁) に特 化 410万t クル ソフ・ 460万t 92年 合併 クル ンプ・ ヘ ノンユ エ コ・ シュタール (東独)80万t 90年民営化 エ コ・ ンユタル 95年 売 却 200万t AHV ンドメ ′ド 94年 統 合CS1 500万 t 97年 民営 化,売却 ア セ ラ│,ア600万t エ ンンデサ400万t アルベ ンド 730万t アル ベ ン ト・ グル ープ 2,030万 t 鋼 板65%、 SUS10% 条 板25% ル タセ ンブ ル グ政 府 が 30%株式 所 有 62年 ベ ル ギー シ ドマ ール 設立 94年 独 ン ユ タル・ ベ ル ケ ブ レー メ ン 11収360万t プ リテ イ ソンユ スチール 88年民営化 1.420万 t 2,300万 t 99年 秋 ブ│'テイ アン ユ スチ ール とホ ノホオ フ ェ ン スが 合併 し新 会社 設 立 ホ ソホオーフェンス 540万t コ ァタ リル コ ンク リル・サ ンブ ル 450万t 98年54%株式 売 却 680万t サ ンブル 97年 社 名変更 ユ ジ ノール ユ シ ノール・ グル ープ 2.320万 t 鋼│'x,SUSに特 化 87年 統 合 ユ ジノール・サンノール 2290万t 95年 民 営 化 ユ ジノール・ サ シ ノール 1850万t サ ンロル イタリア││
ドイツ スペイン ■■■■■ ■畿 ‐│: ■■■■■ ルクセンブルグ ■■■■ 口■■■ オランダ ベルギー フランス菫
11
英 国 ドイツ ドイツ魃
スペイン オランダ ドイツ ―――ベルギー フランス│
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英 国 ぶ 「 11フ盪 … 協 `1lSN蝙
澤
:│:1轟 イタリア 出所:日本鋼鉄連盟 『Tekkohkai』 2000年11月 号メーカーは
, 5グ
ループにまで集約 されたので ある。 5。2.2.図UIIのう難岡再編 と日本鉄鋼業(1)新
日鉄,仏
ユジノール との提携発表 新 日鉄 は2001年1月,欧
州の鉄鋼最大手で ある仏ユジノール と「グローバル戦略提携契約」 (契約期間は10年)に調印 し,'帰
岡事業での包 括提携 を正式発表 した。 自動車用鋼板 を柱に相 互 に技術供与や新製品の共同開発を進めるとい うもので,最大市場の米国での合弁事業のほか, 原料資材の購買,電
子商取引での協力 も検討す る。 提携の第一弾 として,図υlヽ│に進出 している ト ヨタ自動車など日系 自動車メーカー向けの表面 処理鋼板などで,新
日鉄がユジノールに技術供 与 し,新
製品を共同開発する。北米で も合弁事 業などの機会があれはい責極的に検討する。容器 やステンレス鋼板で も相互技術供与や共同開 発,合
弁事業などを検討する。鉄鉱石や石炭な どの原料や生産資材の購買,電
子商取引での協 力関係 も進め,輸
送や在庫管理のノウハウの共 有化を図る。資本提携や営業面での協力は当面, 検討 しないとしている。 ユジノールは当初,ブ
ラジルのツバ ロン製鉄 に共同で出資する川崎製鉄 と1年以上にわたっ て提携交渉 してきたが,「北米事業で川鉄 とは意 見が食い違った」(メアー会長)ため,2000年
末 に交渉が決裂する。川鉄は,「提携の寸前になっ て突然キャンセルされた」(江本社長)という。 横から新 日鉄がさらった形 となった(51)。 国際展開を急 ぐ日米欧の 自動車メーカー大手 は,世
界のどの工場でも均一で高品質の鉄鋼製 品を受注状況 に合わせて納入す ることを鉄鋼 メーカーに求めている。米国やアジアで提携な どを通 じた供給体制を整えてきた新 日鉄にとっ て,残
されていたの力洒期ヽ1戦略であった。複数 の自動車メーカーから「区炒│ヽ│への鋼板供給体制 を ど うす るのか」 と度々聞 かれ て いた とい ぅ(52)。 ュジノール との提携は,そ
うした問いへ の回答 となった。(2)住
金,英
蘭 コー ラス との提携交渉 住金 は2001年1月,英
ブ リテ ィッシュ・ ス チールの流れ を くむ区炒│ヽ1第二の鉄鋼 メーカー, コーラス社 と自動車用鋼板 で包括提携 に入っ た。 コーラスは,英
通貨ポン ドの対ユーロ相場 が高騰 した影響 で英 国工場 の リス トラに追 わ れ,住
金 との交渉 は2000年末か ら足踏 み状 態 だ ったが,新
日鉄 とユ ジノールが包括提携 した こ とで,交
渉が加速 し始めた。区炒│ヽ1第一のユ ジ ノールヘの対抗軸 をつ くりたいコーラス と,住
金 との利害が一致 し始 めたか らである。 住金が コー ラス との提携交渉 に入 ったのは, 大手鉄鋼 メーカーの主戦場である自動車向け薄 板 での競争 に生 き残 るためには,欧
州 での拠点 が不可欠 と判断 した ものである。住金 は,コ
ー ラス とは前身のプ リテ ィッシュ・スチール時代 か らアメ リカで電炉の合弁事業 を行 うなど友好 な関係 を築 いて いた。 日産 自動車 が大手鉄鋼 メーカーに鋼板調達価格の引 き下げを求め,住
金 は 日産への納入 を断念せ ざるを得なかった。 世界規模での現地生産 を進め る日系 自動車メー カーヘの シェア拡大が,住
金 に とって不可欠の 課題 となってい る(53)。(3)NKKと
川鉄,独テ ィッセ ン・クル ッフ°と提 携交渉NKKは
2001年1月,欧
州戦 略の強化 に向 けて,独
鉄鋼大手のテ ィッセ ン・ クル ップ社 と 自動車鋼板 を中心 とした提携交渉 を開始 した。 共同開発や製品の相互供給などを通 じて,
トヨ夕やホンダなど日系 自動車大手の欧州工場への 鋼板の供給体制を整える。 ティッセン・ クル ップはグループで自動車部 品や重機部門を持ち, 自動車部品の加工 を考慮 した鋼板設計などに強みを持つ。ダイムラー 。 クライスラーやフォルクス・ワーゲンなど独 自 動車メーカーには強い力ヽ 日系メーカーの区炒│ヽ│ 工場への食い込みが比較的弱い。 一方
,NKKは
,米国で子会社のナショナルス チールが自動車メーカーに鋼板を納入 している が,欧
州 に有力なパー トナーがいない。ティッ センとの提携で,国
内自動車メーカーの海外生 産 で も実質的 な シェア確 保 を図 る考 えで あ る(54)。 その後 さらに,川
鉄 を加えた3社
は2001年 4月, 自動車用鋼板 を中心 とした包括提携交渉 を始めることで大筋合意 した。NKKと
ティッ センが続けていた交渉に(NKKと
経営統合す る)川
鉄力功口わ り,対
象範囲 も自動車用の薄板 に加 えステンレス鋼やブ リキなどに も拡大す る。技術計瘍力を中心に,卿1ヽ│,ア ジアそれぞれの 地域で製品を相互供給することや北米での事業 協力 も検討する。 提携 を通 じて,自
動車メーカーなどの世界各 地の工場に高品質の製品を安定供給するのが当 面の狙いだが, 自動車軽量化のための次世代鋼 板の共同開発なども進める見通 しである。lL米 での協 力は,NKKの
子会社 のナ ショナル ス チールや川鉄が提携 した米AKス
チール も関 係する可能性 もある(55)。 (4)区炒卜1鉄鋼3社合併 で,世
界最大の鉄鋼会社 誕生 欧州鉄鋼大手のユ ジノール (仏)と
アルベ ッ ト(ルクセ ンブル ク),ア
セ ラ リア (スペ イン) の3社
は2001年2月,合
併す るこ とで合 意 し たと発表 した。合併は,株
式交換方式により, 2001年秋 までに実現 を目指す。ユジノールの株 主が56.5%,アルベ ッドが23.4%,アセラリア が20.1%を保有する。 新会社 (仮称「ニューコ」)の
年間粗鋼生産量 は約 4,600万 トンで,現
在世界1位の新 日鉄やNKK・
川鉄の統合新会社 をも大 きく上回 り,世
界最大のう難岡会社が誕生する(図表9)。 合併の 目的は,「最 も効率的な生産体制 を確立するた め」(ユジノールのメア会長)である。合併によ り新規設備投資が節約できるほか,ユ
ジノール と新 日鉄 との包括提携 も「新会社に適用する」 とし,国
際的な提携戦略を通 じた競争力強化 と 経済のグローバル化に対応する戦略を一段 と進 めることになる。 図表9
世界の鉄鋼メーカーの粗鋼生産ランキング1
新 日本製鉄 (日本)2
浦項総合製鉄 (韓国) 約4600 3357 2907 2848 今 秋 合 併 来 年 10 月 経 営 統 合4 KNM(英
国)7
コー ラス (英)8
ティッセン・クルップ(独)9
上海 宝鋼 (中国)10
リバ (イ タ リア) ︵連 結 子 会 社 を 含 む 単 位 、 万 ト ン ︶ 1998 1800 1772 155712
住友金属工 業 (日本) 1165
27
神戸製鉄所 (日本) 643
出所 :読売新聞,2001年4月14日付 2001年1月 にユ ジノール と提携 した新 日鉄 は,ユ
ジノール主導の合併を「パー トナーが強 ユジノール+アルペット+アセラリア(スペイン) 3 アルペット(ルクセンブルク) 2410
5
ユ ジ ノール (仏) 2100
NKK十
川 崎製鉄 20566 NKK(日
本)11
川崎製鉄 (日本) 1301
くなるのは基本的に歓迎」 と受け止めている。 アルベ ッ トとも素材供給な どで協力関係 にあ り,「提携関係 に変化はお きない」としてお り, 今後 もユジノール との提携 をベースにいろいろ な可能性を模索するとみ られる(56)。 5。
3.メ
ガ・ スチール時代の 日本鉄鋼業 一NKK。 川鉄の経営統合 とその衝撃―5.3.1.NKKと
川鉄の経営統合戦略 国内第2, 3位
のNKKと
川鉄 は2001年4 月,経
営統合 で基本合意 した と発表 した。2002 年 10月 に共同持 ち株会社 を設立 し,2003年
4 月 をメ ドに鉄鋼事業などを統合す る。統合会社 の粗鋼生産量(2000年連結ベース)は 3,357万 トンで,新
日鉄の2,907万 トンを上 回 り国内最 大,世
界第二位 とな る。 高炉の経営統合 は,1970年の八幡製鉄 と富士 製鉄 (現新 日鉄)の
合併以来で,32年
ぶ りとな る。鋼材の大 口需要家である自動車業界な どで 大規模 な再編が進み,調
達先の集約が進 んで い るこ とに対応 した ものである。統合 により,営
業や開発 を効率化 しコス ト削減 を進め,国
際競 争力 を高め るのが狙 いである。両社合わせ て約 500億円の統合効果 を見込んでい る。 統合 は2段階で行 う。まず,2002年10月 に株 式 移 転 に よって共 同持 ち株 会 社 を設 立 し,NKKと
川鉄 はその傘下 に入 る。2003年4月 を メ ドに鉄鋼やエ ンジニア リングな どを事業統合 して,持
ち株会社の下 に置 く。なお,
日立造船 と2002年 10月 をメ ドに事 業統合 す るNKK
の造船部門は,共
同持 ち株会社 かエ ンジエア リ ング事業会社が管轄す る。 両社 は2000年4月,近接す る製鉄所間で,物 流や設備補修,購
買の3分
野の コス ト削減 で提 携 した。 その後,研
究設備の相互利用や建材の 販売協力な どで提携範囲 を拡大す る中で,「新 日 鉄に対抗する勢力が必要」 と判断 し統合を決め たものである(57)。 この間,両
社 とも巨額の有利子負債 を抱え, また多角化事業の内容や規模が異なるため,財
務体質の健全化を優先させ ることで一致 し,ま
ずは製鉄所間の提携 を進めてきた。両社「対等 の立場」が統合の前提 になっているため,こ
れ まで,(NKKの
株価が長 らく100円 を割 る状態 が続 くなど)株
価,財
務内容の格差カギ章害 とな り,なかなか合意できなかった。その後,NKK
の株価が 100円 近 くまで回復す る中で,「一つ のバ リアは除去 された」 とみて統合に踏み切 っ たものである(58)。 5。3.2.二
強時代の鉄鋼産業 システム ーNKK。
川£失の経:営統合の篠子冑警―― 年間粗鋼生産量力奪斤日鉄を上回るグループの 誕生で, 日本の鉄鋼業界は「二強時代」を迎え る。大手ユーザー側の世界規模の再編 と,欧
州 の鉄鋼:再編によるグロー′ツレな競争激化が,31
年続 く日本の鉄鋼業界の旧体制 (すなわち,新
日鉄主導の「大手5社
体制」)を
突 き崩 した(59)。 1901年の官営八幡製鉄所の操業開始か ら百年, 官営八幡製鉄所―八幡製£類斤―新 日本製鉄 と続 いた リーデ ィング・カンパニーを頂点 とした日 本の鉄鋼産業システムは,ま
さに構造的な変革 期 に突入 している。 国内シェアで2位以下を引き離 し,国
際提携 で も先行 してきた新 日鉄は,NKKと
川鉄の統 合で連結決算では国内 トップの座を奪われる。 鉄鋼の代表製品である自動車用鋼板で も統合会 社のシェアは約4割と並ぶ。 ライバルに危機感を強める新 日鉄は,両
社が 統合作業に力を注いでいる間隙を縫って「営業 攻勢をかける」(新日鉄幹部)。 自らの経験か ら, 企業の合併 に必要な内向きのエネルギーの大 きさを知っている。それだけに