トルコ国際私法の改正について (【退職記念号】
佐藤 俊一 教授 三沢 元次 教授 盛岡 一夫 教授)
著者名(日)
笠原 俊宏
雑誌名
東洋法学
巻
53
号
3
ページ
233-265
発行年
2010-03-01
URL
http://id.nii.ac.jp/1060/00000739/
︽研究ノート︾
トルコ国際私法の改正について
東洋法学 第53巻第3号(2010年3月)七六五四三二一
︵参考資料︶ 緒言 緒言 立法化の経緯 総則規定の概容 国際家族法の概容 国際財産法の概容 国際民事手続法の概容 結語 トルコ国際私法及び国際民事手続法笠 原
俊 宏
一 トルコにおける本格的な国際私法の法典化を実現したのは、一九八二年一一月二二日に施行された﹁トルコ国際 私法及び国際民事訴訟法に関する一九八二年五月二〇日法律第二六七五号﹂︵以下、﹁旧法﹂として引用する︶であ る。それ以前におけるトルコ国際私法の法源として挙げられるのは、殆ど、オスマン帝国時代の﹁トルコに滞在する外国人の権利義務に関する暫定的法律﹂第四条のみであった︵溜池良夫目国友明彦11河野俊行”出口耕自コ九八二 年トルコ国際私法﹂法学論叢一一五巻四号八九頁参照。尚、旧法の法文の邦訳及びそれに関する諸文献についても、同稿 八九頁以下において詳細である︶。また、トルコ国際民事訴訟法についても、上記旧法が成立する以前は、一九二七 年法律第一〇八六号による民事訴訟法典中の僅かな規定によって賄われていた。その後、四半世紀を経て、新しい 国際私法の立法化ないし改正へ向けた展開が見られるに至ったが、その背景には、トルコの欧州連合︵EU︶への 加盟という思惑が絡んでいるが、それとともに、二〇〇二年一月一日から施行されている新しい民法典︵二〇〇一 年法律第四七二一号︶の影響、就中、家族法関係の諸規定の改正という事情が存在していたことも指摘されている ︵田B貧寄鼠R\霊ω§乞・日①同函量pZ①器ωぎけ①旨善・邑Φω田く弩①。拝一⇒α段2爵Φ一㌔ミ誤魯亀ミミミ融§ミ§ミ§㍗ §駄寄さミ§。。ミらミ切︵以下、彊肉嚢として引用︶800 。矯のNO oじ。 この小稿は、トルコの新しい国際私法の法源となった改正法、すなわち、﹁トルコ国際私法及び国際民事手続法 に関する二〇〇七年一一月二七日法律第五七一八号﹂︵以下、﹁新法﹂として引用する︶を中心として、それについ て、とくに旧法との比較の観点から、その概容及び特徴を明らかにし、もって、若干の比較立法的考察を試みよう とするものである。尚、それに先立ち、新法の成立に至る過程についても、極く簡略ながら、言及しておくことと したい。 二 立法化の経緯 新法の立法化に際しても、旧法の場合と同様、イスタンブール大学国際法及び国際関係研究所による予備的作業 に負うところが大きい。同研究所は、その改正作業において主導的役割を果たし、二〇〇二年には、国際私法予備
東洋法学 第53巻第3号(2010年3月) 草案︵奮再︶を上梓している。同予備草案は、同年、法務省関係者とともに検討され、部分的に改訂されている。 その後、二〇〇四年一一月、法務省委員会において審議されて、政府草案︵奮畳︶として採択された。そして、 その三年後の二〇〇七年一一月二七日、その法律案は大きな変更も加えられないまま、国会において可決され、 二〇〇七年二月二七日法律第五七一八号として、二〇〇七年一二月一二日付トルコ官報第二六七二八号において 公布され、同法律第六五条に基づき、同日から施行されている︵寄凝段\2・日雫甲雷P9卑ρ器。 。ご。 右法律第六四条により、旧法である﹁トルコ国際私法及び国際民事訴訟法に関する法律﹂︵一九八二年五月二〇日 法律第二六七五号︶、﹁トルコ商法典第八六六条第二号﹂︵一九五六年六月二九日法律第六七六二号︶、﹁知的及び芸術的 作品に関するトルコ法第八八条﹂︵一九五一年一二月五日法律第五八四六号︶の諸規定は廃止されている。尚、新法中 には、経過規定は置かれていないが、その理由として指摘されているのは、﹁トルコ民法典施行法﹂︵二〇〇一年法 律第四七二二号︶第一条が法律の不遡及の一般原則を定めているため、ここにおいても、それが適用されることと なるからである。従って、新法が施行される以前からの法律関係については、旧法が適用されるべきものと考えら れる︵国呂⑯R\ZO目R−甲蜜P鉾99の鵠ご。 三 総則規定の概容 新法の構成は旧法と同一である。すなわち、第一章﹁国際私法﹂、第二章﹁国際民事手続法﹂、第三章﹁最終規 定﹂から成っている。そして、第一章第一節﹁総則﹂の標題の下に置かれている第一条ないし第七条の中、適用範 囲に関する第一条、連結点の変更に関する第三条、国籍主義に関する第四条、公序違反に関する第五条は、旧法の 諸規定の内容と同一である。それに対して、外国法の適用に関する第二条については、外国法の調査に関する第一
項、及び、外国法の内容の不明の場合にトルコ法をもって補うべきとする第二項は、旧法上の規定と同一である が、反致に関する第三項は、旧法と同様、転致までも認めながら、それが考慮されるべき場合を人事法及び家族法 の分野における争訟の場合に限定するに至っている。また、新たに、反致の制限に関する規定として、第四項が追 加され、﹁法選択が許されている場合には、当事者が明らかに何か別段の決定をしていない限り、選択された法の 実質規定が適用される。﹂と規定して、当事者意思の尊重の観点から、反致を退けている。更に、地域的不統一法 国法の適用に関する規定として、第五項が追加され、﹁適用すべきである法が帰属する国家が、二つ又は多数の地 域的法秩序を有し、かつ、それらが異なる内容を有するときは、当該国家法が、何れの地域の法が適用されるかを 決定する。かような規則がないときは、争訟と最も密接な関連性を有する地域の法が適用される。﹂と規定して、 間接指定主義の立場、及び、補充法の決定における密接関連性の原則を導入している。しかし、人的不統一法国法 の適用については、何ら言及されていない。更に、また、新設された第六条は直接的適用の規定であるが、それ は、トルコ法の直接的適用を顧慮した内容のものに止まっている。 尚、法律行為の方式に関する第七条、及び、消滅時効に関する第八条は、旧法と同様、総則規定として置かれ、 また、旧法と同一の内容を有する規定である。それらの規定は、寧ろ、各論規定というべき種類の規定であろう が、各個法律関係について押し並べて規律するものとして、総則中に置かれていると見られる。 四 国際家族法の概容 第一章第二節﹁連結規則﹂、すなわち、 一一条は国際人事法に関する規定である。 各個規定に関する第九条ないし第三九条の諸規定中、第九条ないし第 これらの中、旧法の立場が変更されているのは、行為能力に関する第九
東洋法学 第53巻第3号(2010年3月) 条第二項である。旧法において採られていた内国取引保護の立場は、一般的な取引保護主義の立場へと前進してい る。新規に追加された同条第五項は、定款を有しない法人、並びに、法人格を有しない社団又は財団の能力につい て、それらを有する法人ないし社団又は財団と同様、主たる管理の本拠地法に服せしめることを明らかにする規定 である。その他の人事法に関する諸規定の内容に改正された点は見られない。 次に、国際婚姻法に関する諸規定として、第一二条ないし第一五条が置かれている。それらの中、特徴的な婚約 に関する規定として第一二条が置かれている点は、旧法の場合と同一である。それに対して、婚姻の成立に関する 第一三条第一項は、方式に関し、婚姻挙行地法の適用のみを規定し、国際条約に従った領事婚の方式に関する但書 の規定を削除している。又、婚姻の効力に関する第一三条第三項における段階的連結の規則は、連結点としての住 所の後退という一般的傾向を反映し、その採用を廃止している。尤も、夫婦の共通常居所地法がないときには、短 縮的な﹁ケーゲルの梯子﹂の規則、すなわち、旧法と同様、トルコ法をもって補充法とする立場を維持している点 において、必ずしも、忠実な﹁ケーゲルの梯子﹂の立場が採用されているわけではない︵寄轟R\乞・日窪甲9pp鉾 ρ認。 。5。その点については、離婚及び別居に関する第一四条第一項、及び、夫婦財産制に関する第一五条第一 項においても同様である。しかし、離婚後扶養に関する同条第二項が、新たに、その規則の適用を婚姻の無効の場 合にまで拡大している点は、一九七三年一〇月二日のハーグ扶養条約第八条に対し、より忠実なものとなっている と言うことができるであろう。第一四条に新たに追加された第三項は、﹁離婚の範疇における父母の監護及び父母 の監護の事項については、第一項の規定に服する。﹂として、離婚の際の未成年の子の親権者の指定について、離 婚準拠法説の立場を表明していると見られる規定である。これは、旧法第二〇条を取り込んだ規定である。また、 暫定的措置については、法廷地法としてのトルコ法に依ることを明確にしている第四項も追加されている。更に、
夫婦財産制に関する第一五条において、不動産に関する夫婦財産の清算についての特別規定が置かれた点も、新法 に見られる新規な点である。 更に、親子関係について言えば、前記二〇〇一年民法典との整合性のため、国際私法上においても、単位法律関 係として、嫡出親子関係と非嫡出親子関係という区分が廃止されたことが、何よりも注目されるべきであろう。こ れは、既に、ドイツ国際私法を始めとする欧州諸国のいくつかの国際私法立法においても導入されている立場であ り、その限りにおいて、必ずしも最も先進的であると言えるものではないが、やはり、新法が国際親子関係法にお ける今後のあり方を改めて喚起させていることは否定できないであろう。かくして、新法の第一六条第一項は、ま ず、連結の単位を親子関係の成立として単一主義の立場に拠り、その法律関係の連結規則も、父母の法から子のそ れを中心とした規則へと改めている。同項の規定については、それとともに、瞠目する程に、連結の多元化が図ら れている点において、徹底した子の保護の理念が確立されていることを察知することができる。そして、親子問の 法律関係についても、新法第一七条は、同一の規則に依るべきことを明らかにしている。尚、わが国の学説におい ても論議が見られる親子関係の存在の否認︵嫡出否認︶についても、新たに第一六条第二項が置かれて、その成立 を認める準拠法に依るべきことが明らかにされている。また、準正の成立につき、実質的な利益考慮の観点を表現 していた旧法第一六条は、新法において、削除されているが、それについても、新法第一六条の事項的範囲に吸収 されていると解するのが妥当である︵内急総ミZ・目零甲蜜戸鉾9ρ器。 ・N︶。因みに、非嫡出親子関係に関する旧法 第一七条の規定も、新法において削除されていることは、改めて言及するまでもないであろう。 実親子関係に関する規則の改正に対して、養親子関係に関する諸規定については、実質的な改正点は見られな い。すなわち、新法第一八条第一項は、養子縁組の能力及び要件につき、当事者の本国法の配分的連結の立場を定
東洋法学 第53巻第3号(2010年3月) めており、また、第二項は、養子縁組及び養子縁組に対する他方配偶者の同意につき、夫婦の本国法の累積的連結 の立場を定めており、更に、第三項は、養子縁組の効力につき、養親の本国法主義の立場を定め、そして、夫婦の 共同養子縁組の場合についても旧法と同一であるが、近時、諸国立法例及びわが国学説においても支持が増えてい る婚姻の一般的効力の準拠法説の立場が、ポルトガル国際私法第六〇条第二項に続き、早くから採用されている ︵拙稿﹁夫婦共同養子縁組の準拠法について﹂大東ロージャーナル五号三七頁以下参照︶。 更に、又、国際相続法に関する第二〇条第一項ないし第五項の諸規定については、新法の規則の内容は旧法のそ れと全く同一である。すなわち、被相続人の本国法主義及び遺産所在地法主義の併用という相続分割主義が維持さ れており、一方、遺言相続の場合には、実質につき、単一的連結の規則、そして、方式につき、多元的連結の規則 が定められているが、方式の面から見られる遺言保護は、必ずしも、一九六一年のハーグ条約︵遺言の方式に関す る法律の抵触に関する条約︶に見られる程に徹底されたものではない。その点は、国際扶養法に関する第一九条の規 定においても、旧法の立場が維持されており、要扶養者の保護は、扶養権利者の常居所地法に依るという形式的な 保護に止まっている。 尚、国際氏名法については、新法上、明文規定はないが、本人の本国法に服するというのが一致した見解であ る。それに対して、身分変動に伴う氏の取得及び喪失は、それと関連する身分の効力として、当該身分の準拠法に よる︵国昌鴨ミZOBR自辞曽P勲鉾○こ¢NO 。P︶。 五 国際財産法の概容 新法において最も充実が図られているのは国際財産法の分野の規定である。旧法において、僅かに、物権、契約
債務関係、不法行為、不当利得に関する四箇条のみであったのに対し、新法においては、連結規則に関する第二章 第二節中の第二一条ないし第三九条が国際財産法に関する規定であり、以下に述べられるように、形式的にも、実 質的にも、飛躍的に充実されるに至った。 先ず、国際物権法について言えば、旧法第二三条︵新法第二一条対応︶の諸規定に追加されたのは、輸送手段の 物権に関する第二二条、及び、知的財産権に関する第二三条である。前者は、特異な製造地法への連結の規則を定 めながら︵第二二条第一項︶、それが、多くの立法例に倣い、輸送手段の登録地法であることを明らかにしている ︵同条第二項︶。また、それがない場合について、船舶については船籍港所在地法、鉄道輸送手段については許可地 法をもって補充すべきものと定めている。一方、後者は、必ずしも充分に明確ではないが、知的財産権の保護が求 められる地の法の適用の立場、すなわち、属地的保護の立場を表明したものであると解される。 次に、契約債務関係についてであるが、わが国における平成一八年の法例改正の場合と同様、成文規定の整備と いう点において最も大きな変更が実現された分野である。契約準拠法の基本規定である第二四条第一項及び第四項 は、それぞれ、旧法第二四条第一項及び第二項上の立場を基本的に継承しながら、その現代化を実現している。す なわち、契約準拠法の適用範囲に関する第二項、及び、準拠法の変更に関する第三項の新設、そして、当事者によ る法選択がない場合における履行地法から最密接関連法への規則の変更がそれらとして指摘することができる。こ れらの規則は、全て、今日の諸国立法の動向に同調するものである。新設された消費者契約に関する第二六条、及 び、労働契約に関する第二七条の特別規定とともに、本来の準拠法の適用に代わる最密接関連法上の直接的適用規 定の優先的適用を定める第三一条が新設された点についても、同様のことが言えるであろう。そして、それらの規 定の内容が、一九八○年六月一九日の﹁契約債務の準拠法に関するEC条約﹂︵いわゆるローマ条約︶第三条以下の
東洋法学第53巻第3号(2010年3月) 諸規定に準拠した支配的な規則であることも、殊更、多言を要しないであろう︵寄凝R\2・B零卑母P鉾鉾ρ 総。 。N︶。尚、トルコ法の直接的適用規定に関する第六条による留保については、前述したところであるが、立法理 由に依れば、同条は、寧ち、経済的又は社会政策的側面からの留保である︵寄轟輿\乞・日甲甲鐙p鉾9ρ鴇・ 。N︶。 ここにおいては、寧ろ、不動産に関する契約︵第二五条︶、知的財産権に関する契約︵第二八条︶、物品運送契約︵第 二九条︶、代理契約︵第一二〇条︶、契約関係の存在及びその実質的効力︵第三二条︶、履行及び措置の方法︵第三三条︶ についての諸規定に、新法の特徴が認められる。 そして、法定債権、就中、不法行為の準拠法に関する諸規定の現代化ないし精緻化が注目されるべきであろう。 不法行為の準拠法に関する基本規定として、不法行為地法主義を原則とする旧法第二五条第一項ないし第三項上の 規則を維持しつつ、当事者自治を導入し︵第三四条第五項︶、更に、人格権侵害、生産物貢任、不正競争、競業妨害 ︵第三五条ないし第三八条︶等に関する特別規定を充実させている。尚、不当利得に関する第三九条の規定の内容 は、旧法第二六条と同様である。 新法に規定がない事項として挙げられるのは、債権譲渡の準拠法に関する規則である。しかし、それについて は、被譲渡債権それ自体の準拠法に依るべきものと解されている︵寄轟R\2・9雫田鼠P鉾勲ρ器・ 。N︶。 六 国際民事手続法の概容 従来より、第二章﹁国際民事手続法﹂の一章を置いて、かなり詳細な国際手続法規定︵旧法第二七条ないし第四五 条︶を有していたことにトルコ国際私法の特色が認められたが、新法にあっても、第四〇条ないし第六三条の諸規 定をおいて、一段と、その充実が図られている。すなわち、トルコ裁判所の国際的裁判管轄権︵第四〇条ないし第
四九条︶、外国裁判の執行︵第五〇条ないし第五七条︶、外国裁判の承認︵第五八条ないし第六一二条︶についての諸規定 がそれらである。例えば、国際管轄に言及すれば、労働契約、消費者契約、保険契約に関する特別規定の新設も、 新法の特徴の一つとして指摘することができる︵囚り鼠R\2・ヨ甲醇鼠戸鉾鉾9器G 。し。.︶。 七 結語 上述のように、新法は、全体として言えば、旧法施行以後におけるトルコ国際私法及び国際民事手続法の発展を 適正に集大成している。個別問題については、今なお、あらゆる問題に十分に対処しうるかは疑問の残るところで あるが、欧州連合における展開と歩調を合わせて、更に発展することが期待されているところである︵寄凝霞\29 B零甲富p9勲ρ器。 。堕︶。尚、上述されなかった重要な点として、補足して言えば、当事者自治が大幅に拡大され ている点が注目されるべきであろう。旧法において、夫婦財産制︵旧法第一四条第一項第一文︶及び契約︵同第二四 条第一項︶についてのみ認められていたそれは、新法において、それらの二つの法律関係︵それぞれ、第一五条第一 項、第二四条第一項︶の他、消費者契約︵第二六条第二項︶、労働契約︵第二七条第一項︶、知的財産権に関する契約 ︵第壬二条第二項︶、物品運送契約︵第二九条第一項︶、不法行為後の不法行為準拠法︵第三四条第五項︶、不当利得の 準拠法︵第一二九条第二項︶へも導入されるに至っている。 以下は、新法、すなわち、国際私法及び国際民事手続法に関する二〇〇七年一一月二七日法律第五七一八号の試 訳である。訳出に際しては、鴫肉§愚題︸¢題蝿所載の独語訳に依拠した。
︵参考資料︶トルコ国際私法及び国際民事手続法
国際私法及び国際民事手続法に関する
二〇〇七年一一月二七日法律第五七一八号
東洋法学 第53巻第3号(2010年3月) 第一章 国際私法 第一節 総則 第︸条 適用範囲 一 外国関連を有する私法上の行為及び関係へ適用すべき法、トルコ裁判所の国際的管轄、並びに、外国裁判の承 認及び執行は、本法によって規律される。 ニ トルコ共和国が締約国である国際条約の規定は、影響を受けない。 第二条 外国法の適用 一 裁判官は、職権により、トルコ抵触法上の規則、及び、その規則に基づいて基準となる外国法を適用する。裁 判官は、適用すべき外国法の内容を確定するため、当事者の助力を利用することができる。 二 あらゆる努力に拘わらず、事件に適用すべき外国法の関連規則が探知されることができないときは、トルコ法 が適用される。 三 適用すべき外国法上の抵触規定が他法へ送致するときは、その送致は、人事法及び家族法の分野における争訟の場合においてのみ顧慮しなければならず、かつ、当該他法上の実質規定が適用される。 四 法選択が許されている場合には、当事者が明らかに何か別段の決定をしていない限り、選択された法の実質規 定が適用される。 五 適用すべきである法が帰属する国家が、二つ又は多数の地域的法秩序を有し、かつ、それらが異なる内容を有 するときは、当該国家法が、何れの地域の法が適用されるかを決定する。かような規則がないときは、争訟と最 も密接な関連性を有する地域の法が適用される。 第一一一条 連結点の変更 準拠法が国籍、住所又は常居所に基づいて決定されるべきである場合であって、如何なる規定も反対しないとき は、訴え提起の当時における国籍、住所又は常居所が基準とされる。 第四条 国籍主義に従う準拠法 本法の規定に基づき、準拠法が国籍主義に従って決定されるべきである場合であって、本法において反対に定め られていないときは、次に掲げる法が適用される。 @ 無国籍者及び難民へは、住所地法、それがないときは、常居所地法、また、それがないときは、当事者が訴 え提起の当時に所在する地の法 ㈲ 何れかの者が多数の国籍を保有し、かつ、その中の一つがトルコ国籍である場合には、トルコ法 @ 何れかの者が多数の国籍を保有し、かつ、その中の何れもトルコ国籍でない場合には、最も密接な関連性が 存在する国家の法 第五条 公序違反
東洋法学 第53巻第3号(2010年3月) 一定の事実関係へ適用されるべき外国法上の規定が、明らかにトルコの公序に違反する場合には、それは適用さ れない。その場合には、必要により、トルコ法が適用される。 第六条 トルコ法の直接的適用規定 外国法の適用の場合において、事実関係が、トルコ法上の直接的に適用されるべき法規の目的及び適用範囲に関 連し、その法規に服するときは、基準となるトルコ法規が適用される。 第七条 法律行為の方式 法律行為は、その実行地において施行されている法上の方式、又は、法律行為の準拠法上の実質法規が定める方 式の下に行われることができる。 第八条 消滅時効 消滅時効は、問題となる法律行為及び法律関係へ適用されるべき法に服する。 第二節一連結規則 第九条 能力 一 権利能力及び行為能力は、本人の本国法に服する。 二 何れかある者が、その本国法によれば能力を有しないが、法律行為が行われた地の法によれば能力を有すると き、その者は法律行為によって拘束される。家族法及び相続法、並びに、何れかの他の地に所在する不動産に対 する物権と関連する法律行為は、本規定によって触れられない。 三 何れかある者が、その本国法によれば成年に達したとき、その者は、国籍の変更に際し、それを失わない。
四 法人又は社団若しくは財団の権利能力及び行為能力は、定款において定められたその主たる管理の本拠地の法 に服する。但し、主たる管理の事実上の本拠地がトルコに所在する場合には、トルコ法が適用されることができ る。 五 定款を有しない法人、及び、法人格を有しない社団若しくは財団の能力は、主たる管理の事実上の本拠地の法 に服する。 第一〇条 後見、保佐及び補助 一 後見又は保佐の命令又は取消についての事由は、後見又は保佐の命令又は取消が申し立てられる者の本国法に 服する。 二 外国人が、その本国法によれば後見の下に置かれることができないか、又は、保佐に付されることができない 場合には、本人がトルコにその常居所を有するとき、後見又は保佐の命令又は取消に関するトルコ法によって裁 決される。人が強制的にトルコに滞在する場合にも、トルコ法が適用される。 三 後見又は保佐、及び、補助に関するあらゆる事項は、後見又は保佐の命令又は取消についての事由を除き、ト ルコ法に服する。 第一︻条 失踪宣告又は死亡宣告 失踪宣告又は死亡宣告は、失踪又は死亡について宣告されるべき者の本国法に服する。何れかの者につき、その 本国法によれば失踪宣告又は死亡宣告が下されることができない場合には、本人の財産がトルコに所在するか、又 は、その配偶者若しくはその相続人の一人がトルコ国民であることを条件として、失踪宣告又は死亡宣告はトルコ 法に従って下されることができる。
東洋法学 第53巻第3号(2010年3月) 第一二条 婚約 一 婚約の締結能力及び要件は、それぞれの当事者につき、婚約の当時のその本国法に服する。 二 婚約の効力及び結果については、共通本国法、また、当事者が異なる国籍を有するときは、トルコ法が適用さ れる。 第=一一条 婚姻及びその一般的効カ 一 婚姻能力及び婚姻締結の要件は、婚姻締結の当時のそれぞれの当事者の本国法に服する。 二 婚姻締結の方式については、それが行われる地の法が適用される。 一一一婚姻の一般的効力は、夫婦の共通本国法に服する。当事者が異なる国籍を有するときは、共通常居所地法、か ようなものがないときは、トルコ法が適用される。 第一四条 離婚及び別居 一 離婚及び別居の事由及び効果は、夫婦の共通本国法に服する。当事者が異なる国籍を有するときは、共通常居 所地法、かようなものがないときは、トルコ法が適用される。 二 離婚した夫婦における扶養請求権については、第一項の規定が適用される。その規則は、別居及び婚姻の無効 の場合についても適用される。 三 離婚に伴う父母の監護及び父母の監護の事項については、第一項の規定に服する。 四 暫定的措置の申立てについては、トルコ法が適用される。 第一五条 夫婦財産制 一 夫婦は、その婚姻財産に関し、明示的に、婚姻締結の当時のその常居所地法、又は、婚姻締結の当時のその一
方の本国法を選択することができる。かような選択が行われないときは、婚姻財産に関し、婚姻締結の当時の共 通本国法、また、かようなものがないときは、婚姻締結の当時の共通常居所地法、また、かようなものもないと きは、トルコ法が適用される。 二 不動産に関する財産の清算については、それが所在する地の法が適用される。 三 婚姻締結後に新しい共通国籍を取得した夫婦は、第三者の権利に触れないことを条件として、その新しい法に 服することができる。 第一六条 親子関係の成立 一 親子関係の成立は、出生の当時の子の本国法に服する。その法に基、づき、成立が基礎付けられないとき、それ は子の常居所地法に服する。成立がその法によって基礎付けられないとき、親子関係の成立は子の出生の当時の 母又は父の本国法に服する。それがその法によれば基礎付けられないとき、それは子の出生の当時の母及び父の 常居所地法に従い、それがそれによっても基礎付けられないときは、子の出生地の法が基準とされる。 一一親子関係の異議は、いずれの場合においても、親子関係が基礎付けられる法に服する。 第一七条 親子関係の効力 親子関係の効力は、親子関係が基礎付けられる法に服する。但し、母、父及び子が共通本国法を有するときは、 親子関係の効力につき、その法が適用される。共通本国法がないときは、共通常居所地法が適用される。 第一八条 養子縁組 一 養子縁組の能力及び要件は、養子縁組の当時のそれぞれの当事者の本国法に服する。 二 養子縁組及び養子縁組に対する他方配偶者の同意については、夫婦の本国法が同時に適用される。
東洋法学 第53巻第3号(2010年3月) 一一一養子縁組の効力は、養親の本国法に服する。夫婦の共同養子縁組の場合には、それは婚姻の一般的効力を規律 する法に服する。 第一九条 扶養 扶養請求権は、扶養権利者の常居所地法に服する。 第二〇条 相続 一 相続は被相続人の本国法に服する。トルコに所在する不動産に関しては、トルコ法が適用される。 一一相続の開始の原因、並びに、相続の取得及び分割に関する規定は、遺産が所在する地の法に服する。 一一一トルコに所在する相続人のいない遺産は、国家に帰属する。 四 死因処分の方式については、第七条の規定が適用される。被相続人の本国法上の方式の下に行われた死因処分 は同様に有効とする。 五 遺言能力は、処分作成の当時の作成者の本国法に服する。 第一一一条 物権 一 動産及び不動産に対する所有権及びその他の物権は、それが法律行為の当時所在する地の法に服する。 一一運送中の物に対する物権については、仕向地法が適用される。 三 所在地の変更の際になお取得されていない物権は、物が最後に所在した地の法に服する。 四 不動産に対する物権と関連する法律行為の方式は、物が所在する地の法に服する。 第二一一条 輸送手段 ︻ 航空、海上及び鉄道の輸送手段に関わる物権については、その製造地の法が適用される。
二 航空及び海上の輸送手段に関わる物権につき、製造地とは、それが関係登録簿に登録された地とする。海上輸 送手段が登録地を欠くとき、それは船籍港とし、鉄道輸送手段が登録地を欠くとき、それは許可地とする。 第二一一一条 知的財産に基づく権利の準拠法 一 知的財産に基づく権利は、保護が請求される地の法に服する。 二 当事者は、権利侵害後、裁判所所在地法が知的財産の侵害に因る請求権に適用されることを合意することがで きる。 第二四条 契約債務関係の準拠法 一 契約による債務関係は、当事者が明示的に選択した法に服する。契約条項に基づくか、又は、そのときの情況 に従って疑いなく決定される法選択は、同様に有効とする。 二 当事者は、選択された法が契約の全体又は契約の一部のみに適用されることを合意することができる。 三 法選択は、当事者により、いつでも行われるか、又は、変更されることができる。契約締結後の法選択は、第 三者の権利に触れられないことを条件として有効とする。 四 当事者が法選択を行わなかったときは、債務関係につき、契約が最も密接な関連性を有する法が適用される。 その法は、契約締結の当時、特徴的給付を行うべき債務者の常居所地法とする。それが営業上又は職業上締結さ れた契約の場合には、特徴的給付を行うべき債務者の営業本拠地の法とする。それがないときは、住所地法が適 用される。特徴的給付を行うべき債務者が多数の営業本拠地を有するときは、契約が最も密接な関連性を有する 営業本拠地の法が適用される。但し、そのときの全体的情況に従い、契約とより密接な関連性を有する法が存在 するとき、契約はその法に服する。
東洋法学 第53巻第3号(2010年3月) 第二五条 不動産に関する契約 不動産に関するか、又は、その用益に関する契約は、不動産が所在する地の法に服する。 第二六条 消費者契約 一 職業上又は営業上の目的を有することなく締結された物又はサービス提供又はクレジットの調達に関する消費 者契約は、消費者がその常居所地法上の強行法規によって有する最少の保護が触れられないことを条件として、 当事者が選択した法に服する。 二 当事者が法選択を行わないときは、消費者の常居所地法が適用される。消費者の常居所地法が適用されること ができるためには、次に掲げる情況でなければならない。 @ 契約が、消費者に送られた特別の申込み若しくは勧誘に基づき、その者の常居所地において締結され、か つ、契約締結に必要な消費者の法律行為がその地において行われたことになること、又は、 ㈲ 他方当事者若しくはその代理人が、その地において消費者の注文を受けたこと、又は、 @ 売買契約に関するときは、売主が消費者に契約締結させるために旅行を催行し、かつ、消費者が、その者が 居住する地とは別の地へ旅行することとなり、そこにおいて注文を出したこと 三 第二項において指示された情況の下に成立した消費者契約の方式については、消費者の常居所地法が適用され る。 四 本条は、セット旅行を除き、運送契約、及び、契約に基づき、消費者に対するサービス提供が必然的にその者 の常居所地とは別の地において行われる契約につき、適用されない。 第二七条 労働契約
一 労働契約は、労働者がその平常の労務地法上の強行法規に従って有する最少の保護が触れられないことを条件 として、当事者が選択した法に服する。 二 当事者が法選択を行わないときは、労働契約につき、労働者が平常的にその労務を実行する労務地法が適用さ れる。労働者が一時的に他の地においてその労務を実行するとき、その地は平常の労務地として見倣されない。 三 労働者が一定の地において平常的にその労務を実行する代わりに、その者が継続的に多数の地において実行す るとき、労働契約は使用者の主たる本拠が所在する地の法に服する。 四 但し、そのときの全体的情況により、労働契約がより密接な関連性を示す法が存在するときは、その法が、契 約につき、第二項及び第三項に定められた規則に代わって適用されることができる。 第二八条 知的財産権に関する契約 一 知的財産権に関する契約は、当事者が選択した法に服する。 二 当事者が法選択を行わないときは、契約上の関係につき、知的財産権又はその利用権を付与する当事者が、契 約締結の当時、その営業の本拠を有する地の法が適用される。その者が営業の本拠を有しないときは、その常居 所地法が適用される。但し、そのときの全体的情況により、契約により密接な関連性を有する法が存在すると き、契約はその法に服する。 一二 労働者と使用者との問における契約であって、労働者がその労務の範囲内において、かつ、その活動の実行中 に創造した無体財産権に関する契約については、労働契約が服する法が適用される。 第二九条 物品運送契約 一 物品運送契約は、当事者が選択した法に服する。
東洋法学第53巻第3号(2010年3月) 二 当事者が法選択を行わないときは、契約につき、契約が最も密接な関連性を有する地の法が適用される。荷積 み地及び荷降ろし地又は送り主の主たる本拠も同一の地に所在する限り、運送人の主たる本拠が契約締結の当時 に所在する地が、契約と最も密接な関連性を有するものと推定される。一次の航海のチャーター契約、及び、物 品運送を主たる目的とする他の契約も、本条の規定に服する。 一二 そのときの全体的情況により、物品運送契約により密接な関連性を有する法が存在するときは、契約につき、 その法が適用される。 第三〇条 代理権 一 委任者と代理人の間における法律行為の代理権は、それらの者の間における契約関係について適用される法に 服する。 二 代理人の行為が委任者を第三者に対して義務付ける条件は、代理人の営業本拠地法に服する。代理人の営業の 本拠がないか、若しくは、かようなものが第三者に知られていないとき、又は、代理権が営業本拠地外において 実行されるときは、代理権はそれが実際に実行される地の法に服する。本項は、代理権のない代理の場合におけ る代理人と第三者の間の法律関係についても適用される。 三 代理人と委任者の間の労働関係が存在し、かつ、代理人が固有の営業の本拠を有しないとき、代理権は、委任 者の営業の本拠が所在する地の法に服する。 第一二一条 直接的適用規定 契約関係が服する法の適用の場合に、第三の国の法が契約と密接な関連性を有するときは、その法の直接的に適 用すべき法規が考慮されることができる。その法規の考慮、及び、それが適用されるか否かの判断に際しては、そ
の法規の目的、種類、内容及び効果が考慮されなければならない。 第三二条 契約関係の存在及びその実質的効力 一 契約関係の存在及び実質的効力、又は、その確定は、契約が有効であれば適用されるべきである法に服する。 二 そのときの情況により、当事者の関係の効力が第一項による準拠法に従属することが正当でないことが明らか であるときは、意思表示の存在につき、その承諾の無効を主張する当事者がその常居所を有する地の法が適用さ れる。 第三三条 履行及び措置の方法 事実行為及び法律行為の際、並びに、履行の当時における物の保護に関する措置の際には、行為が行われ、か つ、法律行為が成立したか、又は、措置が行われた地の法が考慮される。 第一二四条 不法行為 一 不法行為による義務は、不法行為が行われた地の法に服する。 二 不法行為の行為地と損害発生地とが異なる地に所在するときは、損害が発生している地の法が適用される。 一二 不法行為によって成立した債務関係が他の地とより密接な関連性を有するときは、その地の法が適用される。 四 不法行為又は保険契約の準拠法が可能であることを定めるとき、被害者は、責任者の保険に対し、直接的にそ の請求権を主張することができる。 五 当事者は、不法行為の発生後、明示的に準拠法を選択することができる。 第三五条 人格権侵害の責任 一 例えば、新聞、ラジオ、テレビのようなメディア、及び、インターネット又は他のマスコミュニケーション媒
東洋法学 第53巻第3号(20!0年3月) 体による人格権の侵害に因る請求権については、被害者の選択に従い、次に掲げる法が適用される。 @ 加害者が、被害者がその常居所を有する地における損害の発生を予見すべきであったときは、その地の法 ㈲ 加害者の営業の本拠又は常居所が所在する地の法、又は、 @ 加害者が、損害が発生した地における損害の発生を予見すべきであったときは、その地の法 二 人格権の侵害の場合には、定期的に出版される媒体に対する反対陳述権は、専ら、印刷物が発行された地か、 又は、流布の発送地の法に服する。 一二 本条第一項は、個人データの改窟による人格権の侵害、及び、個人データに関する情報に対する権利の侵害に 因る請求権についても適用される。 第三六条 製造者の契約外責任 生産物によって惹起された損害のための貢任については、被害者の選択に従い、加害者がその常居所若しくはそ の営業の本拠を有するか、又は、生産物が取得された地の法が適用される。生産物が取得された地の法を適用する ことができるためには、生産物が加害者の同意なく当該地に到達したことをその者が知ることを要しない。 第三七条 不正競争 一 不正競争に基づく請求権は、不正競争が直接的にその効力を展開する市場が属する地の法に服する。 二 不正競争の際における権利侵害が専ら被害者の営業上の利益に向けられるときは、企業の営業の本拠が所在す る地の法が適用される。 第三八条 競業妨害 一 競業妨害に基づく請求権は、妨害によって直接的に問題となる市場が所在する地の法に服する。
ニ トルコにおける競業妨害が外国法に服する場合には、トルコ法が適用されたときよりもより高い損害賠償が言 い渡されてはならない。 第三九条 不当利得 一 不当利得による請求権は、利得が発生した原因となる現存法律関係、又は、想定される法律関係が支配されて いる法に服する。他の場合には、不当利得につき、それが発生した地の法が適用される。 二 当事者は、不当利得の発生後、明示的に準拠法を選択することができる。 第二章 国際民事手続法 第一節 トルコ裁判所の国際的管轄権 第四〇条 国際的管轄権 土地管轄に関する内国法上の規則が、トルコ裁判所の国際的管轄権を決定する。 第四一条 トルコ人の身分法に関する訴訟 トルコ国民は、その者が外国裁判所へ身分法事項の訴訟を提起しないか、又は、提起することができない場合に は、トルコにおける土地管轄を有する裁判所へそれを提起することができる。かような裁判所がないとき、その者 は、トルコにおけるその居所地の裁判所、トルコにおける居所地がないときは、トルコにおけるその最後の住所の 裁判所、また、それがないときは、アンカラか、イスタンブールか、又は、イズミールにおける裁判所へ提起する ことができる。
東洋法学 第53巻第3号(2010年3月) 第四二条 外国人の身分法に関する若干の訴訟 トルコに住所を有しない外国人の場合には、後見、保佐、補助、失踪及び死亡宣告に関する裁判が、本人がトル コに居住する地の裁判所により、また、居住地がないときは、その財産が所在する地の裁判所によって言い渡され る。 第四一一一条 相続訴訟 相続に関する訴訟は、被相続人のトルコにおける最後の住所地の裁判所、また、その者がトルコに最後の住所を 有しなかったときは、相続対象物が所在する地の裁判所へ提起される。 第四四条 労働契約及び労働関係に関する訴訟 個人の労働契約及び労働関係による争訟については、労働者が平常的にその活動を実行するトルコにおける労務 地の裁判所が管轄権を有する。労働者が使用者に対して提起する訴訟については、使用者の住所地、労働者の住所 地又は労働者の常居所地のトルコ裁判所も管轄権を有する。 第四五条 消費者契約に関する訴訟 一 第二六条において定義された消費者契約による争訟については、消費者の選択に従い、消費者の住所地若しく は常居所地、及び、相手方当事者の営業の本拠又は住所地若しくは常居所地のトルコ裁判所が管轄権を有する。 二 第一項に定められた消費者契約による訴訟であって、消費者に対して提起されるものについては、消費者のト ルコにおける常居所地の裁判所が管轄権を有する。 第四六条 保険契約に関する訴訟 保険契約による争訟については、トルコにおける保険者の主たる本拠、及び、保険者の支店、又は、保険契約を
締結した保険代理人の営業の本拠が所在する地の裁判所が管轄権を有する。但し、保険契約者、被保険者又は保険 金受取人に対して提起される訴訟については、それらの者のトルコにおける住所地又は常居所地の裁判所が管轄権 を有する。 第四七条 管轄権の合意及びその範囲 一 土地管轄に関し、トルコ裁判所の専属的管轄権が存在しない場合には、渉外的関連を有する債務関係による当 事者の争訟につき、何れかの外国裁判所の管轄権が合意されることができる。契約の有効性は書面をもって指示 されなければならない。訴訟は、外国裁判所が管轄権がないと明言するか、又は、トルコ裁判所へ管轄異議が主 張されない場合にのみ、管轄権を有するトルコ裁判所へ提起されることができる。 二 第四四条、第四五条及び第四六条において定められた管轄権は、合意によって取り消すことができない。 第四八条 保証 ︻ トルコ裁判所へ訴えを提起する外国の自然人又は法人は、訴訟に参加するか、又は、強制執行を進める際に、 裁判費用及び執行費用、並びに、相手方当事者の被害及び損害の担保のため、裁判所によって決定される方法を もって保証しなければならない。 二 裁判所は、相互主義の保証の場合に、原告、訴訟参加者又は強制執行を進める者に保証の実行を免除する。 第四九条 外国国家の裁判権の免除 一 外国国家の私法関係によって生じた法的争訟において、裁判権からの免除は認められない。 二 かような場合に、送達は外国国家の外交上の代表者へ行われることができる。
東洋法学 第53巻第3号(2010年3月) 第二節 外国の司法裁判及び仲裁判断の執行及び承認 第五〇条 執行判決 一 民事事件において、外国裁判所によって下され、かつ、その国家の法律に従って確定力を有している判決をト ルコにおいて執行することができるようにするため、それは管轄権を有するトルコ裁判所による執行判決を必要 とする。 二 外国裁判所の刑事判決において私権に関わる裁判が行われたときも、準拠規定に従い、同様に、執行判決が申 し立てられることができる。 第五一条 事物管轄及び土地管轄 一 執行判決についての事物管轄裁判所は、基本裁判所とする。 一一その判決の言渡しは、執行力が申し立てられる者のトルコの住所地の裁判所、かようなものがないときは、そ の者の居所地の裁判所、又は、トルコに住所も居所も存在しないときは、アンカラ、イスタンブール又はイズ ミールにおける裁判所へ申し立てられる。 第五二条 執行力の申立て 判決の執行力に法的利害関係を有する者は、執行力を申し立てることができる。執行力の申立ては、書面をもっ て行われなければならない。申立てには、相手方当事者の数に相応した複写が添付されなければならない。申立て は、次に掲げる記載を含まなければならない。 @ 申立人、相手方当事者、並びに、場合により、法定代理人及び任意代理人の氏名及び宛先
㈲ 執行の対象となる裁判が下された国家の裁判所による記載であって、裁判所の名称、並びに、裁判の日付及 び整理記号、及び、判決本文 @ 裁判の一部のみの執行が申し立てられるときは、その部分の指摘 第五三条 申立てに添付すべき証書 執行力の申立てには、次に掲げる証書が添付されなければならない。 @ 外国官庁によって公証された同国裁判所の判決、又は、判決を下した司法官庁によって公証された判決の複 写、並びに、公証されたその翻訳 ㈲ 判決の確定力を確認する証明書又は文書であって、その国家の官庁によって公証されたもの、及び、公証さ れたその翻訳 第五四条 執行力の要件 管轄権を有する裁判所は、次に掲げる要件が存在するとき、執行判決を言い渡す。 @ トルコ共和国と判決が下された国家の間に相互主義の保証に関する条約が存在するか、又は、その国家にお いて、法律上の規定若しくは事実上の慣行に基づき、トルコ裁判所の裁判の承認が可能である場合 ㈲ 判決が、トルコ裁判所の専属管轄権に属しない対象に関わる場合、又は、裁判所と訴訟物若しくは当事者と の間に事実上の関連性がなく、自らが管轄権を有すると見倣した何れかの国家の裁判所の判決が、被告がそれ に対して異議を主張しないことを条件として下された場合 @ 裁判が明らかに公の秩序に違反しない場合 ⑥ 執行力を申し立てられる者が、申立てに対し、トルコ裁判所へ、次に掲げる異議を主張しない場合。すなわ
東洋法学 第53巻第3号(2010年3月) ち、その者が、当該国家の法律に正式に従って判決裁判所へ召喚されなかったこと。その者が、その裁判所へ 代理されなかったか、又は、それが欠席判決であるか、若しくは、判決が、その国家の法律に違反して、その 者の出席なしに下されたこと。 第五五条 送達及び異議 一 執行力の申立ては、期日までに召喚状とともに相手方当事者へ送達される。争いのない裁判権の決定の承認及 び執行も、同様に本規定に服する。相手方当事者がなく、争いのない裁判権の決定の場合には、送達に関する規 定は適用されない。申立ては、判決によって終結される略式手続に関する規定に従って審理される。 二 相手方当事者は、本節の規定に従った執行力の要件が存在しないこと、又は、外国判決に既に部分的若しくは 完全に応えられたこと、又は、このために障害となる原因が存在するという主張をもってのみ、異議を申し立て ることができる。 第五六条 判決 裁判所は、判決の一部若しくは全部の執行力、又は、申立ての拒否を裁決することができる。その裁判は、外国 判決上に記載され、かつ、裁判官により、公印及びその署名が具備される。 第五七条 執行及び破棄 一 判決によって執行が認容された外国裁判は、トルコ裁判所の判決と同様に執行される。 二 執行力の申立ての認容又は拒否に関する判決に対する破棄請求は、一般規定に服する。破棄請求は執行を中止 させる。 第五八条 承認
一 裁判所により、外国判決が執行力の要件を充足することが確認されることをもって、外国裁判所の判決は、争 うことができない証明手段、又は、確定力を有する裁判として承認されることができる。承認については、第 五四条@号は適用されない。 二 争いのない裁判権の裁決の承認については、同一の規定が適用される。 三 外国裁判所の判決に基づき、トルコにおいて行政行為が行われなければならないときは、同一の手続に従う。 第五九条 確定力のある裁判及び抗弁できない証明手段の評価 外国判決が確定力を有する裁判、又は、争うことができない証明手段と見倣されるとき、直ちに、それは確定力 を有する。 第六〇条 外国仲裁判断の執行力 ︻ 確定力を有し、かつ、執行できるか、又は、当事者にとって拘束的である外国仲裁判断は、執行できることを 宣言されることができる。 二 外国仲裁判断の執行力は、当事者により、書面をもって土地管轄を有するものと合意された地方裁判所の場合 には、書面をもって申し立てられなければならない。当事者がかような合意を行わなかったときは、仲裁判断が 下されている当事者のトルコにおける住所地の裁判所が土地管轄を有する。かようなものがないときは、その者 の居所地におけるそれ、また、それもないときは、執行されることができる財産が所在する地におけるそれが土 地管轄を有する。 第六一条 申立て及び手続 一 外国仲裁判断の執行力を求める当事者は、書面によるその申立てに、次に掲げる証書、及び、相手方当事者の
東洋法学 第53巻第3号(2010年3月) 数に相応した複写を添付しなければならない。 @ 仲裁取決め又は仲裁条項の原本又は合法的に認証された謄本 ㈲ 確定力を有し、かつ、執行できるか、又は、当事者を拘束する仲裁判断の原本及び合法的に認証された謄本 @ @号及び㈲号に定められた文書の合法的に認証された翻訳 二 仲裁判断の執行力に関する裁判の際には、第五五条、第五六条及び第五七条の諸規定に含まれた規則が、裁判 所によって準用される。 第六二条 拒否事由 一 裁判所は、次に掲げる場合には、外国仲裁判断の執行力の申立てを拒否する。 @ 仲裁取決めが行われなかったか、又は、仲裁条項が主たる契約に記載されなかった場合 @ 仲裁判断が善良な風俗又は公の秩序に違反する場合 @ 仲裁判断の対象となる争いが、トルコ法によれば、仲裁裁判手続において裁判されることができるという可 能性がない場合 ◎ 当事者の一方が仲裁裁判に合法的に代理されず、かつ、その後、その者が明らかに手続を承認しなかった場 合 ⑥ 執行力を求められた当事者が、仲裁裁判官の任用を合法的に知らされなかったか、又は、その者から攻撃及 び防御の機会が奪われた場合 ㈲ 仲裁取決め又は仲裁条項が、当事者がそれらを服従させた法により、又は、かような合意が行われなかった ときは、仲裁判断が行われた地の法により、有効でない場合
ω 仲裁裁判官の任用、又は、仲裁裁判官によって適用された手続が、当事者の合意、又は、かような合意がな いときは、仲裁判断が下された地の法に反する場合 図 仲裁判断が、その部分につき、仲裁取決め若しくは仲裁条項において言及されていないか、又は、取決め若 しくは条項の範囲を超える事項に関わる場合 ㈲ 仲裁判断が、それが成立したか、若しくは、下された地の法の規定、又は、それが服する手続により、なお 確定力を有しないか、若しくは、執行力を有しないか、又は、拘束力を有しなくなった場合、又は、それが、 それが下された地の管轄官庁により、破棄された場合 二 上記⑥号、⑥号、㈲号、ω号、図号及び㈲号に定められた情況についての立証貢任は、執行力が申し立てられ る当事者が負う。 第六一二条 外国仲裁判断の承認 外国仲裁判断の承認も、同様に、執行力に関する規定に服する。 第三章 最終規定 第六四条 廃止される規定 次に掲げる法律ないし条項は、無効とされる。 @ 国際私法及び国際手続法に関する一九八二年五月二〇日法律第二六七五号 ㈲ 一九五六年六月二九日法律第六七六二号トルコ商法典第八六六条第二号 @ 一九五一年一二月五日法律第五八四六号知的及び芸術的作品に関するトルコ法第八八条
第六五条 発効 本法は、その公布日に発効する。 第六六条 施行 本法の規定は、内閣が施行する。 東洋法学 第53巻第3号(2010年3月) −かさはら としひろ・法学部教授1