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浅間火山天明噴火の鎌原火砕流/岩屑なだれ堆積物の諸性質

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の死者を出した。鎌原火砕流/ 岩屑なだれについては, これまで多くの堆積物の調査や史料調査が行われ,発生 地点や発生要因,流下機構について議論されてきた(Ar-amaki,1956;Aramaki,1963;荒牧・他,1986;山田・他 1993;井上・他 1994;田村・早川 1995 など)。これまで の知見は火山学的見地から荒牧(1993)に,また一連の 1.はじめに 鎌原火砕流/ 岩屑なだれは,浅間前掛火山の最新の大 規模噴火である天明噴火(1783年)の最盛期の火砕噴火 の直後の 8 月 5 日午前に発生した。北麓の鎌かんばら原村を埋 没させた後,吾妻川に流入して泥流・洪水となった流れ は,関東平野を流下して太平洋にまで達し,約1500 人

田中 栄史

・安井 真也

**

・荒牧 重雄

***

A devastating phenomenon occurred immediately after the climactic pyroclastic eruption in the Asama 1783 eruption generating Kambara pyroclastic flow/debris avalanche deposit. It rushed on the northern foot of the volcano and entered into Agatsuma river to be a mud flow via flood causing a serious disaster. Previous study revealed that the deposit on the upper stream has nature of pyroclastic flow which is characterized by the gigantic essential blocks up to 65 meters in diameter whereas that on the lower stream has nature particular to debris avalanche deposit. In order to collect informa-tion for future discussion on the origin of the phenomenon, we describe geological features of the deposit in this study. The area of Kambara pyroclastic flow/debris avalanche deposit is divided into two; Area A: Rich in gigantic blocks, Area B: Poor in huge blocks. Instead of that, several meter-thick deposit with a nature particular to debris avalanche deposit distributes in Area B. Pre-existing topographic height between Area A and Area B is considered to have been a topo-graphic barrier against the flow. Consequently, main flow might have directed toward the NNE and a lot of gigantic blocks deposited beyond the barrier. U-shaped depression exists near Asama-en on the NNE flank slope. Three units of blast deposit can be recognized around the depression. It suggests that explosion occurred for at least three times. The blast deposit consists of glassy, angular essential blocks and matrix ash. The blocks of the blast deposit are massive and show high apparent density of more or less than 2500 kg/m2. They are also characterized by abundant broken crystals and distinct eutaxitic texture indicating that they were originated from strongly welded pyroclastic rock. Although direct relation has not been revealed, similarities between essential materials of Kambara pyroclastic flow/debris avalanche deposit and Kambara blast deposit would be a constraint on their origin.

Keywords : Kambara pyroclastic flow/debris avalanche deposit, blast deposit, the 1783 eruption, Asama Volcano

浅間火山天明噴火の鎌原火砕流

/岩屑なだれ堆積物の諸性質

Nature of the Kambara Pyroclastic Flow/Debris Avalanche Deposit of the Asama 1783 Eruption

Eiji TANAKA

, Maya YASUI

**

and Shigeo ARAMAKI

*** (Received October 31, 2011)

Division of Ear th-Environmental Sciences, Graduate School of Integrated Basic Sciences, Nihon University:

3−25-40 Sakurajosui, Setagaya-ku, Tokyo, 156-8550 Japan. Present address: Geoplan CO., LTD.:

6-24-1 Nishi Shinjuku, Shinjuku-Ku, Tokyo 160-0023 Japan

** Department of Geosystem Sciences, College of Humanities and Sciences, Nihon University:

3-25-40 Sakurajosui, Setagaya-ku, Tokyo, 156-8550 Japan.

*** Department of Geosystem Sciences, College of Humanities and Sciences, Nihon University:

3-25-40 Sakurajosui, Setagaya-ku, Tokyo, 156-8550 Japan. Present address: Institute of Environmental Sciences, Yamanashi: 5597-1 Kenmarubi, Kamiyoshida, Fujiyoshida, Yamanashi, 403-0005 Japan * 日本大学大学院総合基礎科学研究科地球情報数理専攻 現:(株)ジオプラン 〒160-0023 東京都新宿区西新宿6-24-1 ** 日本大学文理学部地球システム科学科: 〒156-8550 東京都世田谷区桜上水3-25-40 *** 日本大学文理学部地球システム科学科 現:山梨環境科学研究所 〒403-0005 山梨県富士吉田市上吉田字剣丸尾5597-1

(2)

土砂移動現象の見地から井上(2009)にまとめられてい る。1990 年代を中心に,鎌原火砕流/ 岩屑なだれの発生 機構について複数の説が出されたが,実証的な議論の段 階までは至っていない。重要な問題点の一つは,その発 生地点が山頂か山腹かがはっきりしない点である。こう した問題点は,野外での定量的記載や室内分析など堆積 物の諸性質のデータがまだ十分ではないことによると考 えられる。ここでは今後の議論のために,堆積物の分布 や産状の詳細,本質岩片の見かけ密度,岩石組織などの 性質のさらなる記載を行う。また鎌原火砕流/ 岩屑なだ れ堆積物の本質岩塊は鬼押出溶岩の表面岩塊と産状が似 ている場合があるため,両者の諸性質の比較も行う。 2.鎌原火砕流 / 岩屑なだれ堆積物の概要 浅間火山の山頂から北北東に約4 km の浅間園の西方 には最大40m の深さに達する窪地が存在する(図1,詳 細は図4)。この窪地を頂点とする北方へ約30°開いた扇 形の地域に鎌原火砕流/岩屑なだれ堆積物が分布する。 扇形の地域は幅1.1 ∼ 2 km,最大 40m の深さの溝状の 低地となっており,溝状低地の両側の崖の一部は堆積後 間もない吾妻火砕流堆積物およびそれより古い追分・小 滝火砕流堆積物などが削られてできたと考えられている (Aramaki, 1956)。また溝状の低地の両側の崖の高さは 北方にいくにつれ減少し,火口から約8 km の地点でほ ぼ0 となることが示されている。 鎌原火砕流/岩屑なだれ堆積物は巨大岩塊と厚さ2 ∼ 3 m の matrix support の部分から成る。5 m 以上の岩塊 は少なくとも3400 個分布域に確認されている(井上, 2009)。荒牧・他(1986)と荒牧(1993)によればmatrix support の部分の厚さの一様性が特徴的である。matrix supportの部分の厚さが岩塊の大きさに対して薄いため, 巨大な岩塊(直径3 m以上)が堆積物の表面に露出して 点在するという特異な産状を呈している。3 - 1 で後述す るが,巨大岩塊の多くは巨大なパン皮状火山弾のような 独特の形状の本質岩塊であるが(図2 -(1)),山体を構成 する類質岩塊も存在する。matrix support の部分は,不 均一でソフトブロックを含み(例,図2 -(9)(10)),岩屑 なだれ堆積物に特有の岩相を示す。 溝状低地の東側の崖の外側には天明噴火の吾妻火砕流 堆積物に由来する岩塊が少数点在していたが(Aramaki, 1956),現在では道路工事などにより殆ど失われてし まった。これらの岩塊は古地磁気学的に高温状態で定置 したことが示されることからAramaki(1956)は,定置 して間もない吾妻火砕流堆積物を巨大岩塊に富む流れが 掘り起こしたと考えた。荒牧(1993)の図 3 には,浅間 図 1 浅間火山天明噴火の噴出物の分布 火山の北斜面を本質岩塊に富む高温火砕流が流下して斜 面を削りながら溝状の低地を形成し,さらに北方では掘 り出された物質が岩屑なだれとなり堆積作用が卓越する 様子が概念的に示されている。つまり上流部では高温の 本質岩塊に富む火砕流的な性質,下流部では岩屑なだれ 的な性質をもった流れであるととらえられている。 吾妻川に沿ってみられる天明泥流の堆積物は,雑多な レキと砂および少量の巨大岩塊から成るが,緻密でガラ ス光沢のある角張った黒灰色の岩片を特徴的に含む(図 2 -(11))。これは浅間火山北麓の鎌原火砕流/岩屑なだ れ堆積物に含まれる岩片と同質である。また吾妻川の河 川敷に現存するもので,浅間山から65km の地点で15m 近い大きさの巨大岩塊がある(「金島の浅間石」群馬県指 定天然記念物)。井上・他(1994)の古地磁気測定結果 によれば,この岩塊は漂着後もキュリー温度を保ってい た。当時の絵図にも赤熱の岩塊(火石)が流れる様子が 描かれている(例:中央防災会議,2006の絵図ID:141,

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合もある。分布域の下流では,東側に巨大岩塊が多く, 西側で少ない傾向が顕著である。小倉(1997MS)の地 域分類を基に,長径2 m 以上の巨大な岩塊の多い地域 をA 地域,少ない地域を B 地域として分け,その境界を BL とした(図 3)。分布のかたよりを定量的に調べるた め,堆積域の7 エリア(Area I ∼Ⅵ)において,長径が 2 m 以上且つ地表から 30cm 以上露出している岩塊全て の長径を現地で計測した。 Area I ∼Ⅵの大部分は木が まばらなので視界は良い。視界を10m 以内とすること で岩塊の見落としは無くなると考えられるため,次のよ うにしてエリア内の全てをカバーした:1)道沿い及び 林の中においては20m 間隔の直線上を歩く,2)建造物 や小丘などの遮蔽物がある場合, 周囲を様々な角度から 観察する。また,岩塊を発見する毎にその岩塊の外観も 記載することで,重複して数えることを無くした。なお, Area I(約400×800m)はBLをエリア内に含むため,BL を境界にしてArea IaとArea Ibに分けた(図3)。 158,175,191,200,211)。巨大本質岩塊の多くは中腹に 堆積したと考えられているが(鈴木・他,1986),一部の 赤熱の巨大岩塊は,吾妻川に流入した後,洪水となった 流れによって遠方まで運搬されたことが示される。 3.鎌原火砕流 / 岩屑なだれ堆積物 3-1.鎌原火砕流/岩屑なだれ堆積物の岩相 鎌原火砕流/岩屑なだれ堆積物を構成する巨大岩塊に は本質岩塊と類質岩塊がある。本質岩塊は一般に暗灰色 で,緻密で角張った形状を示す。多くの場合,本質岩塊 の高さは 6 m 以下で,鏡餅のような扁平な形をしてい るものが多い(図2 -(1))。大きさは長径が最大 65m に 及ぶものが確認される。しばしば表面数cm に急冷縁が あり,幅数センチの冷却節理も発達する。急冷縁の割れ 目がパン皮状火山弾と似た形状のものもある。赤褐色の 多孔質な火砕物の集合から成る岩塊もしばしば認められ る(図2 -(2)(3))。手標本スケールで赤色酸化した基地 に暗灰色部がレンズ状に含まれる場合(図2 -(12))や, 斜長石の定方配列が見られるものもある(図2 -(13))。 本質岩塊は,熱残留磁気の方向が1783 年頃の地球磁場 の方向と一致することから,堆積時に約500 度以上の高 温であったと推定されている(Aramaki,1956)。 類質岩塊は,全体に赤褐色を呈する溶結した火砕流堆 積物のブロックや,凹凸に富むスコリア質のブロックな どが見られる。これらの特徴は小滝火砕流堆積物や追分 火砕流堆積物と類似するため,これらの堆積物に由来す るものと考えられる。 matrix support の部分は,雑多な細粒物質とブロック から構成される。ブロックは様々なものが含まれるが, ガラス質の黒灰色の緻密な岩片が特徴的に含まれる。ま た天仁元年噴火(1108年)やより古い時代の火砕流堆積 物に由来するスコリア質の岩塊や,風化火山灰や黒色腐 植土などのルーズな物質のブロックが含まれる。基質部 分は不均質で図2 -(9)(10)に示すようなソフトブロッ ク(あるいはパッチワーク構造)を特徴的に含む。約1.3 万年前噴火の火山灰互層のブロックも認められるが,ほ とんど変形を受けていない(図2 -(9))。このようなやわ らかい物質が攪拌されることなく,堆積時の構造を保持 していることは岩屑なだれの堆積物に特徴的な性質と同 様といえる。 3-2.巨大岩塊の分布 巨大岩塊の分布密度は北方つまり下流へ向かって減少 する。鬼押出溶岩の先端付近では径10m 以上の巨大な 岩塊が密集しており,複数の岩塊が積み重なっている場 図 3 鎌原火砕流 / 岩屑なだれ堆積物の巨大岩塊の面積比お よび本質岩塊と類質岩塊の割合 BL:A地域とB地域の境界.B1:地形的高まり.

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1

2

3

4

5

図 2 鎌原火砕流/岩屑なだれ堆積物と鎌原ブラスト堆積物の産状 (1)鎌原火砕流/岩屑なだれ堆積物の巨大本質岩塊.岩塊の高さ約 4メートル.火口の北北東約 9 km.(2)鎌原火砕流/岩屑なだれ堆積物の 巨大本質岩塊.火口の北北東約5.5km.図4のAU地域.スケール:33cm,(3)鎌原火砕流/岩屑なだれ堆積物の巨大本質岩塊.火口の北北 東約5.5km.図 4 の AU 地域.スケール:33cm,(4)鬼押出溶岩の表面岩塊.火口の北北東約 2.4km.(5)鬼押出溶岩の表面岩塊.火口の

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10

9

8

11

7

6

13

12

NE pfa

Unit-2

Unit-1

Unit-2

Unit-1

Unit-3

lava

20 cm 北北東約4 km.スケール:39cm,(6)鎌原ブラスト堆積物.鬼押出溶岩の表面岩塊の窪みを埋める Unit- 3.図 8 の A 地点,スケール:

13.5cm,(7)鎌原ブラスト堆積物のUnit- 1とUnit- 2.Unit- 1の下位は天明噴火のNE降下軽石堆積物.図 8 のD地点,スケール:15cm,(8)

鎌原ブラスト堆積物のUnit- 1とUnit- 2,図 8 のE地点,(9)B地域における鎌原火砕流/岩屑なだれ堆積物.軽石流期の火山灰互層のブロッ

ク,火口の北∼北北東9 km.(10)B地域における鎌原火砕流/岩屑なだれ堆積物.変形したソフトブロック,火口の北北東9.3km.スケー

ル:39cm,(11)天明泥流堆積物に含まれる黒灰色の本質岩片.火口の北北東16km.スケール:39cm.(12)鎌原火砕流の本質岩塊の切断面.

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年米軍撮影の空中写真を用いて判読した(図4)。小丘の 全体的な分布をみると,山頂から8 km 付近において小 丘の数・大きさが急激に減少する傾向がみられる。 小丘の形状について,500m メッシュで区切った地域 ごとの小丘の長径・短径・長軸方向・大きさを,「Scion これらのデータから,単位面積中に占める岩塊の面積 の割合を岩塊の分布密度として算出した。岩塊の面積S は,岩塊の形を円と仮定して長径Rを直径とする,S=π (R / 2)2 で計算した。また,本質岩塊と類質岩塊の割 合も算出した。岩塊の分布密度はA 地域と B 地域で明瞭 な差がみられた(図3)。B 地域の Area Ib は 0.3%,Ⅵは 0%であるのに対し,A 地域の上流にあたる Area Ⅱでは 21%,AreaⅢでは24.2%と高く,中流から下流にあたる Area Ia は5.2%,AreaⅣは4.1%,AreaⅤでは5.6%とな る。また,下流に行くにつれて本質岩塊に対する類質岩 塊の割合が増加する傾向がみられる(図3)。 3-3.小丘の分布と構成物質 鎌原火砕流/ 岩屑なだれ堆積物の分布域には巨大岩塊 以外にも数多くの小丘状地形がみられる。これらの小丘 の分布を明らかにするため,以下の作業を行った。まず 鎌原火砕流/ 岩屑なだれ堆積域に点在する小丘を,1947

0

5

1 0

N

E

S

W

1 0

N

E

S

W

0 5

(1) A地域

(2) B地域

図 4 鎌原火砕流/岩屑なだれ堆積物の小丘分布

BL:A 地域と B 地域の境界.AU:A 地域の上流部,AL:A

地域の下流部,B1:地形的高まり. 浅間園西方の窪地とブラスト堆積物の等層厚線図(cm)も 図示してある. 図 5 鎌原火砕流 / 岩屑なだれ堆積物の A 地域と B 地域の小 丘の長軸方向. 図 4 の空中写真判読結果から短径/長径< 0.5,>1000m2 岩塊を抽出して作成したローズダイヤグラム.

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Area 1a,Ib,Ⅲ,Vの単位面積中に占める小丘の面積

の割合を小丘の分布密度として算出した(図6)。この結

果を岩塊の分布密度と比較すると,岩塊の分布密度が 24.2%であったAreaⅢの小丘の分布密度は27.9%,5.2% のArea Ia は17.9%,0.3のArea Ib は7.9%,5.6%のArea Ⅴは0 %となる。 4.鎌原ブラスト堆積物 長野原町立鬼押出し浅間園(浅間火山博物館)付近に は,厚さ約15cm の表土の直下にガラス質で光沢のある 黒灰色の岩片を特徴的に含むmatrix support の堆積物が 分布する。この堆積物はその分布域の東縁付近では吾妻 火砕流堆積物を,その西側では鬼押出溶岩を,その中間 の地域ではNE 降下火砕堆積物を直接覆う。約15cm の 表土に覆われることもこれらの天明噴火の噴出物と同様 である。従ってこの堆積物は層位的に天明噴火によって もたらされたものといえる。この堆積物は主に黒灰色の ガラス質の岩片からなり,鎌原火砕流/岩屑なだれ堆積 物に含まれる岩片と酷似するがよりガラス質である。ま た4 - 4で述べるように岩片の全岩化学組成は組成変化図 上において高橋・他(2007)に示される天明噴火の噴出 物の組成分布範囲にあることから(図7),天明噴火の本 質岩片であるといえる。 炭化した木片が含まれることから高温状態で堆積した とみられ,Aramaki(1956)はこの堆積物を,鎌原火砕流 に伴って発生した熱雲(ブラスト)によるものと考えた。 田村・早川(1995)に記述されている 熱雲 も,この堆 積物のことを指していると思われる。ここでは 鎌原ブ Image」を使用して計測した。隣り合って重なっている と思われる小丘については手動で切り離しを行った。短 径/長径が0.5 以下の小丘及び,上空からみた面積が 1000m2 以上という条件を設定して,長軸の方位を表す ローズダイヤグラムを作成した(図5)。短径/長径を 0.5 以下としたのは,円に近い形の小丘を取り除く事で 長軸の方向の傾向をみるためである。上空からみた面積 が1000m2 以上としたのは,小さな小丘は空中写真の判 読ミスがある可能性があるためである。その結果,小丘 の長軸の方位は,A 地域ではほぼ東西方向に卓越するの に対して,B 地域では北北西−南南東方向に卓越するこ とがわかった。図4 の B1 の領域には長径 300m 以上の大 型の小丘が存在する。現在では人工的にかなり地形が改 変されているが,例えば平成13 年修正測量の 2 万 5000 分の1 地形図では青山の地名の三角点の周辺に,その 地形が明瞭に認められる。この小丘の長軸の方位は北北 西−南南東であり,B 地域の小丘の典型例といえる。ま た現地調査の結果,堆積域西端やBL が大きく東に屈曲 している付近(図4 の青山の南方)には,追分火砕流堆 積物から構成される小丘が多数存在することがわかっ た。またA 地域と B 地域の境界付近には比高約 15m の やや大型の高まりが存在する(図4のB1)。 2 2.8 3.3 3.8 4.3 4.8 58 59 60 61 62 63 64 65 66 SiO2 wt% M gO 溶岩 SiO -MgO 降下軽石と火砕流 鎌原ブラストの本質岩片 鎌原火砕流の本質岩塊 図 6 鎌原火砕流/岩屑なだれ堆積物の小丘の面積比 図 7 鎌原火砕流 / 岩屑なだれ堆積物の本質岩塊,鎌原ブラ スト堆積物の本質岩片,鬼押出溶岩およびその他の天 明噴火の噴出物のSiO2 - MgO変化図. 鎌原火砕流 / 岩屑なだれ堆積物の本質岩塊と鎌原ブラスト 堆積物の本質岩片を除くデータは高橋・他(2007)による.

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から約8 m の深度まで堆積物が確認されている。また 図8 -(1)のF地点付近でも,浅間園周辺の堆積物と類似 した厚さ数10cm以上の堆積物が確認される。 浅間園付近の鎌原ブラスト堆積物は複数枚のユニット からなる(図2 -(6)∼(8))。ここでは下位からUnit- 1, 2,3 と 呼 ぶ こ と と す る。 Unit- 1 は 分 布 域 の 東 よ り, Unit- 3 は西よりに分布する(図 8 -(1))。浅間園の遊歩 道では,入り口から見晴台間において窪地の内壁斜面に アバットするようにUnit- 2 と Unit- 3 が堆積しているの ラスト堆積物 と呼ぶこととし,その分布と産状,その 他の性質を記載する。 4-1.分布と産状 鎌原ブラスト堆積物全体の層厚分布を図8 -(1)に示 す。堆積物の層厚は浅間園西方の窪地の周りで厚く,離 れるにしたがって急激に薄くなる。浅間園付近が特に厚 く,長井・他(2011)によれば浅間園の浅間記念館(二 輪車博物館)の敷地南西のボーリング掘削により,地表

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(1)

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図 8 鎌原ブラスト堆積物の分布と柱状図 (1)全体の等層厚線図(cm),(2)Unit- 1の層厚(cm),(3)Unit- 2の層厚(cm),(4)代表的地点の柱状図.地点は(1)参照. Tr:trace

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Unit- 1 と類似した岩相を示す 3 枚のユニットからなる (図8 -(4))。これらは黒灰色でガラス質の本質岩片と同 質の基質からなり,最下位のユニットは炭化木片を含 む。 4-2.粒度組成 Unit- 1,2,3 の粒径分布を図 10 -(1)(2)(3)に示す。 Unit- 1は平均値Mφ=−2.3,とうた度 σ φ =2.5,Unit- 2 は平均値Mφ =−1.7,とうた度σ φ =2.7,Unit- 3は平均 値Mφ =−0.9,とうた度 σ φ = 2.3 である。また F 地点 の試料は平均値Mφ =−1.2,とうた度σ φ =2.3と上記3 が確認される。Unit- 3 は鬼押出溶岩の岩塊の窪みを埋め ている(図2 -(6),図 8 -(4))。代表的な地点の柱状図 を図8 -(4)に示す。 Unit- 1 は,黒灰色でガラス質の本質岩片と,同質の 基質からなる。本質岩片は15 センチ以上の大きさのも のもしばしば含まれる(図9 -(1))。Unit- 1 には炭化木 が多く含まれている。僅かでも地形的に低い場所では厚 い傾向がある。Unit- 2 は Unit- 1 を整合的に覆う。Unit- 2 は,黒灰色でガラス質の本質岩片と赤褐色のやや丸味を 帯びたスコリア質の粒子および褐色の基質からなる。 Unit- 1 に比べ炭化木は少ない。Unit- 3 は,スコリア質の 粒子(図9 -(2)左)と緻密でやや角張った岩片(図 9 -(2) 右)と,Unit- 2と似た基質から構成される(図 9 -(2))。 各ユニットは無層理である場合が多いが,図2 -(7)の Unit- 1 のように色調の異なる部分が含まれることもあ る。 また図8 -(1)のF地点では低地の東側の崖の上方に吾 妻火砕流堆積物の断面が露出するが,ブラスト堆積物は そ れ を 直 接 覆 っ て い る。F 地 点 の ブ ラ ス ト 堆 積 物 は 5 cm

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(1)

6 2 7 5 4 1 3 5 cm 0 5 10 15 20 25 - 5.0 - 4.0 - 3.0 - 2.0 - 1.0 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 4.0<0 20 40 60 80 100 0 5 10 15 20 25 0 20 40 60 80 100 0 5 10 15 20 25 0 20 40 60 80 100 0 5 10 15 20 25 0 20 40 60 80 100 粒径(φ) 重量︵%︶

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累積︵%︶

3)

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図 9 鎌原ブラスト堆積物の本質岩片の標本写真 (1)Unit- 1,岩片の番号1 ∼7は顕微鏡写真(図12の表参照) に対応.(2)Unit- 3.破線の右側:気泡を含まない緻密な 岩片,左側:スコリア質岩片 図10 鎌原ブラスト堆積物の粒径分布

Phi(φ )= - log2d,d:粒径(mm).(1)Unit- 1,(2)Unit-2,(3)Unit- 3,(4)F地点

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5. 鎌原火砕流/岩屑なだれ堆積物と鬼押出溶岩の諸 性質の比較 鎌原火砕流/ 岩屑なだれ堆積物の巨大本質岩塊の産状 (図2 -(2)(3))はしばしば鬼押出溶岩の表面岩塊の産状 (図2 -(4)(5))と酷似しており,赤褐色の火砕物の集合 が特徴的に見られる。どちらもの場合も,しばしば単一 の岩塊内で溶結の程度が非溶結から強溶結まで変化す る。ここでは鎌原火砕流/岩屑なだれ堆積物の本質岩塊, 鎌原ブラスト堆積物を構成する本質岩片および鬼押出溶 岩の岩石組織,見かけ密度と全岩化学組成を比較する。 鬼押出溶岩は顕著な溶結組織を呈し,破片状結晶に富 む(例,図12 -(13)∼(16))ことから溶結火砕岩である と考えられている(Yasui and Koyaguchi,2004)。鎌原火 砕流/岩屑なだれの本質岩塊(図12 -(11),(12))と鎌原 ブラスト堆積物を構成する本質岩片も溶結組織と豊富な 破片状結晶で特徴付けられ,溶結火砕岩であると考えら れる。 見かけ密度の測定法に関して,鎌原火砕流/ 岩屑なだ れ堆積物の本質岩塊と鬼押出溶岩については,岩石カッ ターで立方体に整形した試料の重量と体積を測定して見 かけ密度を求めた。鎌原ブラスト堆積物を構成する本質 岩片の見かけ密度の測定法は4 - 3 に示したとおりであ る。鎌原火砕流/岩屑なだれ堆積物の本質岩塊の見かけ密 度はやや幅が広いが,高いタイプは2400 ∼ 2700kg/m3 低いタイプは1800 ∼2200kg/m3を示す(図11 -(1))。鎌 原ブラスト堆積物を構成する本質岩片については4-3 に 示したとおり,多くは2400 ∼ 2650kg/m3で,気泡を含 む岩片は1950 ∼ 2370kg/m3を示す。鬼押出溶岩の表層 部の岩塊の見かけ密度は1300 ∼ 2500 kg/m3の幅がある が,2000 kg/m3が多い(図11 -(2))。建設省土木研究所 により浅間園の窪地内で掘削された厚さ64 m の鬼押出 溶岩のボーリングコア試料の密度は,地表から30 数 m の深度までは1400 ∼ 2500 kg/m3であるのに対し,そ れ以深は2600 kg/m3前後の高い値を示す(図11 -(2))

(Yasui and Koyaguchi,2004)。以上より,鎌原ブラスト 堆積物を構成する本質岩片と鬼押出溶岩のボーリング コアの下半分の見かけ密度が共通して高いものが多い。 また鬼押出溶岩の表層部と鎌原火砕流/岩屑なだれ堆積 物の本質岩塊は幅が広いが,2000 kg/m3前後が多い(図 11). 天明噴火の噴出物全体では全岩SiO2含有量は60 ∼ 64wt%の幅があるが,鬼押出溶岩は 62 wt%前後が多い (高橋・他,2007)。SiO2- MgO変化図(図7)上でみると, 鎌原火砕流/岩屑なだれの本質岩塊とブラスト堆積物を 例と類似した粒度組成を示す(図10 -(4))。Unit- 1 が他 に比べ平均値が高く,粗い粒子を含むが,とうた度は4 試料で大きな差はない。いずれも+4 φ(1/16mm)より 細かい細粒火山灰が全体の0.1 ∼ 0.9 パーセントと非常 に少ないのが特徴的である(図10)。 4-3.見かけ密度 Unit- 1 を構成する径 2 ∼ 3cm の黒灰色岩片 30 個の見 かけ密度を測定した。重量を測定した個々の岩片をロウ でコーティングした後,マイクロメリテックス乾式自動 密度計アキュピック1330 を用いて体積を測定した。緻 密な岩片24 個の見かけ密度は 2400 ∼ 2650kg/m3で,気 泡を含む岩片6 個は1950 ∼2370kg/m3の値を示した(図 11 -(1))。 4-4.岩石組織と全岩化学組成 鎌原ブラスト堆積物の本質岩片は顕微鏡下で顕著な ユータキシティック組織を示し,破片状の結晶が多く認め られる(図12 -(1)∼(10),(17)∼(24))。鎌原ブラスト 堆 積 物 の 本 質 岩 片 の 全 岩 のSiO2含 有 量 は61.2 ∼ 62.4wt%を示す。また SiO2- MgO 変化図上では天明噴 火の噴出物の組成範囲にプロットされる(図7)。

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鎌原 0 2 4 6 8 10 12 14 鎌原ブラストの本質岩片 鎌原火砕流の本質岩塊 鬼押出溶岩 0 2 4 6 8 10 12 14 10 00 11 00 12 00 13 00 14 00 15 00 16 00 17 00 18 00 19 00 20 00 21 00 22 00 23 00 24 00 25 00 26 00 27 00 密度 (kg/m3) ボーリングコア31m以深 ボーリングコア31m以浅 表面岩塊 個 数 個 数 図11 鎌原火砕流 / 岩屑なだれ堆積物と鬼押出溶岩の見かけ 密度

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1 mm 図12 鎌原ブラスト堆積物の本質岩片,鎌原火砕流/岩屑なだれ堆積物の本質岩片および鬼押出溶岩の顕微鏡写真 撮影データ等は表参照.

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0.125 mm 0.125 mm 0.5 mm

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岩塊の多いA 地域と少ないB 地域はBL(図4)によっ て境されるが,その方向は北北東∼南南東である。B 地 域に巨大岩塊が少ないのはB1の地形的高まり(図4)が 障害となって,岩塊が選択的にBL の南側を北北東へ流 下したことによる可能性がある。A 地域に分布する小丘 はその大部分が本質岩塊からなる。A 地域に分布する細 長い小丘の長軸方向は西北西∼南南東方向に卓越してい る(図5 -(1))。この方向は推定される流下方向(北北東) に直交しており,本質岩塊が長軸方向を軸に回転しつつ 転動して流下したことが示唆される。 青山付近(図4)では径・比高が数 m 以下の小丘が多 数みられ,それらの岩相は追分火砕流堆積物と酷似す る。これらの小丘には 1 m 近い大きさの鎌原火砕流/ 岩屑なだれの本質岩塊が含まれていることもあり,本質 岩塊が追分火砕流堆積物に突入して停止したと考えられ る。つまりこれらの小丘は,非溶結のルーズな追分火砕 流堆積物が変形して生じたものとみられる。これらの小 構成する本質岩片は鬼押出溶岩と同様の領域にプロット されるが,鎌原火砕流/岩屑なだれの本質岩塊とブラス ト堆積物を構成する本質岩片は62 wt%以下の,60 ∼ 64wt%の組成幅の中ではより苦鉄質側の組成を示すも のが多い。 6.議 論 ここでは本報告で記載した堆積物の諸性質が示唆する ことと,鎌原火砕流/岩屑なだれ,鎌原ブラストおよび 鬼押出溶岩の関連について考える。 6-1.鎌原火砕流/岩屑なだれの流下過程 鎌原火砕流/岩屑なだれ堆積物の分布域はBL を境に 岩塊の多いA 地域と少ない B 地域にわけられる(図 3)。 またA地域の上流部(AU)は下流部(AL)に比べ岩塊に 富む(図4)。以下ではこれらの特徴に基づいて鎌原火砕 流/岩屑なだれの流下過程を考える。 図12 顕微鏡写真の説明 写真 番号 試料名 顕著な組織 倍率 ニコル 薄片番号 試料番号 岩片の番号 備考 Fig. 9-1 1 鎌原ブラストの本質岩片 細粒結晶に富む部分 40 オープン 390 641 1 Unit-1 2 同上 同上の視野 40 ク ロ ス 390 641 1 Unit-1 3 同上 ユータキシティック組織 40 オープン 391 641 2 Unit-1 4 同上 同上の視野 40 ク ロ ス 391 641 2 Unit-1 5 同上 ユータキシティック組織 40 オープン 392 641 3 Unit-1 6 同上 同上の視野 40 ク ロ ス 392 641 3 Unit-1 7 同上 ユータキシティック組織 40 オープン 396 641 7 Unit-1 8 同上 同上の視野 40 ク ロ ス 396 641 7 Unit-1 9 同上 ユータキシティック組織 40 オープン 192 281 10 同上 ユータキシティック組織 40 オープン 205 281 11 鎌原火砕流の巨大本質岩塊 ユータキシティック組織 40 オープン 187 237 12 同上 同上の視野 40 ク ロ ス 187 237 13 鬼押出溶岩(表層部) ユータキシティック組織 40 オープン 263 435 14 同上 同上の視野 40 ク ロ ス 263 435 15 (ボーリング鬼押出溶岩 -33m) 石基の結晶度が高い 40 オープン 251 -16 同上 同上の視野 40 ク ロ ス 251 -17 鎌原ブラストの本質岩片 ユータキシティック組織 100 オープン 394 641 5 Unit-1 18 同上 淡褐色ガラス,気泡に富む 100 オープン 395 641 6 Unit-1 19 同上 ユータキシティック組織 100 オープン 391 641 2 Unit-1 20 同上 ユータキシティック組織 100 オープン 393 641 4 Unit-1 21 同上 破片状の斜長石 100 オープン 394 641 5 Unit-1 22 同上 同上の視野 100 ク ロ ス 394 641 5 Unit-1 23 同上 細粒の結晶片 400 オープン 396 641 7 Unit-1 24 同上 円内:顆粒状暗黒粒子 400 オープン 396 641 7 Unit-1

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6-3.浅間園西方での爆発と鎌原火砕流/岩屑なだれの 関係 浅間園西方の窪地と鬼押出溶岩先端の北方の溝状低地 は地形的に連続している可能性がある(図4)。このこと は浅間園西方での爆発と鎌原火砕流/ 岩屑なだれが一連 のイベントであったことを示すのかもしれない。F 地点 のブラスト堆積物(図8 -(1))は浅間園周辺のUnit- 1と 岩相が類似するため,両堆積物は対比できるかもしれな い。しかし層厚の分布は浅間園周辺とその北方で連続的 ではないようである(図8 -(1))。Aramaki(1956)は 13m にも及ぶ炭化木がこの付近のブラスト堆積物に含 まれていることと,それらの向きが溝に対してN30°E からN80°Eの間であることを記載し,強烈な爆風によっ てもたらされたものと考えた。Aramaki(1956)が考えた ように,F 地点付近の堆積物は鎌原火砕流/岩屑なだれ 本体の流下時に外側に排出されたもので,窪地を取り巻 くブラスト堆積物とは別のものなのかもしれない。田 村・早川(1995)は,地震がきっかけとなって山体崩壊 が生じて岩屑なだれをもたらし,減圧により鬼押出溶岩 が爆発したと考えたが,これらの直接的な関係を示す証 拠は示されていない。柳井沼付近で黒色の噴煙が噴出す る様子と,北方への流れの両方が描かれた絵図があり,示 唆的ではある(中央防災会議,2006の絵図ID136,165な ど)。しかしながら山頂から北方の吾妻川まで流れが連 続して描かれている絵図も多く(中央防災会議,2006の 絵図ID061,071,081,084,091,107,120,149など),鬼押 出溶岩との関係もこれらの絵図からはよくわからない。 鎌原火砕流/岩屑なだれ堆積物および鎌原ブラスト堆積 物の本質岩片の化学組成は鬼押出溶岩の組成範囲とオー バーラップするが,詳しくみると苦鉄質よりの組成を示 すものが多い(図7)。巨視的には鎌原火砕流/岩屑なだ れの本質岩塊も鬼押出溶岩もスコリア質部分から緻密な 部分まであり,見かけ密度の幅も広い(図11)。またい ずれも破片状結晶に富み,顕著な溶結構造を示すため岩 石組織上は区別がつけにくい(図12 -(11)と(13)を比 較)。従って岩相や岩石組織,化学組成,見かけ密度で みる限り,鎌原火砕流/岩屑なだれ堆積物と鎌原ブラス ト堆積物は鬼押出溶岩と密接に関連するとみられる。し かしながら,鬼押出溶岩は浅間山頂部の釜山火砕丘と同 様の岩石組織や化学組成を示し,鬼押出溶岩は最盛期の 火砕噴火時に火口内や周辺に火砕物が降下堆積した部分 に由来する火砕成溶岩と考えられている(Yasui and Koyaguchi, 2004)。従って本研究で記載した鎌原火砕 流/岩屑なだれの本質岩塊の諸性質は,火口から火道浅 部の壁に付着した溶岩が引きちぎられて放出されたとす 丘はB1 の北方に発達するため,南方から流れてきた本 質岩塊がB1 の地形的高まりによって方向転換や停止を させられた時の衝撃が伝わって生じた可能性がある。 3 - 3 で示した小丘の分布密度と3 - 2 で示した岩塊の分 布密度と比較すると,岩塊の分布密度が24.2%であった Area Ⅲの小丘の分布密度は 27.9%,5.2%の Area Ia は 17.9%,0.3のArea Ib は7.9%,5.6%のArea Vは0%とな り,小丘,岩塊とも分布密度は下流へいくにつれ減少す る。これは上流側(Area Ⅲ)においては,空中写真で判 読した小丘は岩塊に対応するのに対し,中流(Area Ia, Ib)は岩塊以外の小丘が多くみられ,下流(Area V)で 小丘として認められるような岩塊がほとんど無くなるこ とに対応するとみられる。これらの数値からも岩塊の多 くは上流部で堆積しているのに対し,下流部では山体を 構成する類質物質由来の細粒物質が増加したと解釈でき る。 以上より鎌原火砕流/岩屑なだれの流下過程では,B1 の地形的高まりが障害となったために巨大岩塊を選択的 に上流部(AU 地域)に落としながら,細粒物質が多く 遠方に到達するような一種のとうた作用が働いた可能性 がある。しかしながら,AL 地域には深い谷地形が発達 しているため,谷に流れこんで遠方まで運ばれた巨大岩 塊も少なからずあるとみられる。 6-2.浅間園西方の鎌原ブラスト堆積物について 4 章で記載した鎌原ブラスト堆積物の存在は,浅間園 西方で何らかの爆発が起きたことを示している。ユニッ トが少なくとも3 枚確認されることは,複数回の爆発 があったことを示唆する。鎌原ブラスト堆積物の粒度組 成は,細粒火山灰サイズ(16分の1ミリ以下)の粒子が きわめて少ないことから(図10),数 10 センチから 100 ミクロン前後までの幅をもつ粒径分布の粒子が爆発で生 産されたと考えられる。堆積物はmatrix support で淘汰 が悪いため,流れ堆積物であるとみられるが,窪地の縁 辺部で厚く,離れるにしたがって急激に薄くなる(図8 -(1))。浅間園西方の窪地の内壁上部から縁辺部に降り 注ぐように定置した後,外側への流下距離はきわめて短 いものであったとみられ,流動性に富む膨張した流れで はなかったと推測される。ブラスト堆積物を構成する本 質岩片は顕著なユータキシティック組織を呈し,破片状 結晶に富む(図12 -(1 ∼10,17 ∼24))ことから,強溶結 の火砕岩に由来するとみられる。本質岩片が角張ってい る点やガラス質であることは(図9 -(1)),高温状態の 溶結火砕岩が脆性的に破砕された後,急冷されたことを 示唆する。

(16)

3)鎌原ブラスト堆積物を構成する本質岩片,鎌原火 砕流/岩屑なだれの本質岩塊,鬼押出溶岩はいずれも顕 著な溶結組織を呈し,破片状結晶に富むことから溶結火 砕岩に由来する。鎌原ブラスト堆積物の本質岩片はガラ ス質の角レキを主とし,高温状態の溶結火砕岩が脆性的 に破砕されて急冷したものとみられる。溶結火砕岩の起 源や,鎌原ブラストと鎌原火砕流/岩屑なだれの直接的 な関係を探ることが今後の課題である。 謝辞 本報告は日本大学文理学部応用地学科の小倉章の卒業論文 (1996 年提出)と,本報告の著者の田中の日本大学大学院に おける修士論文(2001年提出)の結果をもとに,その後の調 査結果を加えてまとめられた。現地調査にあたりお世話に なった町営火山博物館浅間園,鬼押出し園,別荘地管理会社 の関係各位に厚く御礼申し上げます。また現地で数々の議論 をしていただいた井上公夫,井上素子,守屋以智雄,小屋口 剛博,高橋正樹の諸氏に感謝いたします。 る荒牧(1968)のモデルを否定するものではない。本報 告は堆積物の性質の記載を主目的とするため,溶結火砕 岩の起源に関する詳しい議論は,別の機会に譲りたい。 浅間園西方の窪地での爆発と鎌原火砕流/ 岩屑なだれと の関連の有無,またそれらの鬼押出溶岩との直接的な関 連の有無を明確にすることが今後の課題である。 7.まとめ 1)鎌原火砕流/岩屑なだれの流下過程では,進行方 向にあった地形的高まりが流れに対して障壁となり,溝 状低地内の上流部に多数の巨大岩塊が定置したらしい。 2)浅間園西方の鬼押出溶岩の分布域内には窪地があ り,窪地の内側斜面上部から窪地の縁辺部において天明 噴火の本質岩片から成るブラスト堆積物が分布する。ブ ラスト堆積物には少なくとも3 枚のユニットがあり, 窪地付近で複数回爆発が起きたことが示唆される。

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