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税制の国際的潮流と抜本的税制改革

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税制の国際的潮流と抜本的税

制改革

RIETIシンポジウム(平成19年12月5日)

中央大学法科大学院教授

ジャパン・タックス・インスティテュート代表

森信茂樹

(2)

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世界税制改革の潮流

その1 公平から効率へ

-所得税率・法人税率の引き下げ

-資本所得の分離・低率課税

その2 税と社会保障の一体化

-税制の所得再分配機能低下への対応

格差問題、就労促進、少子化対策としての

給付付税額控除の導入・拡充

2

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ドイツの税制改革

• 財政再建のための付加価値税の引き上げ(2007)

VAT16%から19%へ、1%分は失業保険料の引き

下げへ充当。あわせて所得税最高税率を引き上げ

(42%から45%)

• 国際競争力確保のための法人税改革(2008)

法人実効税率を39%から30%へ

法人税は25%から15%へ

• 二元的所得税・金融所得一元課税(2009)

利子・配当・キャピタルゲイン25%の源泉分離課税

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二元的所得税

ーS.Cnossen,”Dual Income Tax”(1997)に基づく概念図ー

比例税率適用 =勤労所得の最低税率 =法人税率 累進税率 適用 資本所得 勤労所得 すべての所得を2種に区分 利子、配当、株・土地等の キャピタルゲイン、家賃、事 業収益(投資収益的部分) 等 賃金、給与、フリンジベネフィット 社会保障給付、事業収益(賃金 報酬的部分)等 (政府税制調査会資料を加 税率 ( 分 離 ) 7

(8)

8 8 米国税制改革案の比較 第1案ー簡素な所得税制案 第2案ー成長及び投資税制案 家計 税率 15、25、30、33% 15,25,30% 受取り配当 非課税 15%で課税 株式譲渡益 4分の1だけ総合課税 15%で課税 受取利子 総合課税 15%で課税 (注)1案も2案も、税率構造を簡素化、代替ミニマム税を廃止、住宅ローン利子控除、慈善寄附金控除等の各種項 目別控除については、整理・縮減。人的控除(基礎控除、扶養控除に類似)、概算控除、勤労所得税額控除、子女 税額控除等の各種控除を家族税額控除と就労税額控除の2制度に統合。 法人 税率 事業体への課税 31.5% 大規模企業は、組織形態に関 わらず法人課税 30% あらゆる事業体について同等に 課税 投資 簡素な加速度償却 即時損金算入 支払利子 現行どおり 金融機関以外控除できず 受取利子 現行どおり 金融機関以外非課税 国際課税 外国所得非課税 仕向け地課税(国境調整)

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背景

• 包括的所得税の問題点が浮き彫りになってきたこと

(課税ベースの狭さ、税制の複雑さ、足の速い所得

の問題、租税回避の蔓延等)

• 二重課税の問題、直接金融と間接金融の中立性の

問題が、貯蓄・資本不足経済のもとでクローズアッ

プされてきたこと(インピュテーションの脱落等)

• 代わりの税制として、消費課税の分野において、選

択肢が出てきたこと

フラットタックス、Xタックス、二元的所得税(金融・資

本所得を分離して軽課)、小売売上税、VAT、IRA

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法人課税の検討に当たって

• わが国法人の負担は高いか 法人実効税率による比較、社会保険料を含めた比較 低下する米国法人実効税率 • 法人税引き下げの論理と減税効果 投資増・生産性向上・雇用増・国際競争力 他国に流出した企業所得の取り戻し 外国企業の対日投資の呼び込み 減税分は、投資・配当・賃金増? • 地方分権・税源移譲論と地方法人課税(2税)の見直し • 歳出・歳入一体改革との整合性 税収中立での改革は可能か 10%引き下げには5兆円の財源

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275社の法人実効税率の推移

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2.法人所得課税と社会保険料を併せた負担

(出所)経済産業省資料(OECD 「Revenue Statistics」、厚生労働省 「社会保障の給付と負担の見通し」(平成18年5月) (備考)1.法人所得税、社会保険料被用者・事業主負担をそれぞれ名目GDPで割った数値を国際比較したもの 2.日本の2015年度の社会保険料被用者・事業主負担については、厚生労働省「社会保障の給付と負担の見通し(平成18年5月)」の2015年度の保険料負担(対GDP比) に、OECD「Revenue Statistics」における直近の社会保険料の被用者・事業主負担割合をかけたもの。 3.アメリカでは、民間医療保険が主であり、法定福利費は低いが、法定外福利費が高くなっているため、企業の実質的な負担は見かけより大きい。 法人所得税と社会保険料負担の国際比較(対GDP比) ○法人所得課税と社会保険料を併せた負担は、ドイツ、フランス、スウェーデンより低いものの、米 国。英国、韓国より高い。 (注)法人所得課税は法人が嫁得した所得に対する負担。社会保険料は賃金に対する負担であり、両者は性格が異なることに注意。 【ドイツ】 ドイツ政府は、2007年1月から失業保険 料の労使負担率を6.5%から4.2%に引き 下げた。 (2007年6月16日 日経新聞朝刊 7面) 【フランス】 サルコジ大統領は、大統領選に際し、週 35時間労働の見直しや、残業代割増率 の上昇、及びこれにかかる所得税や社会 保障関連の企業負担軽減を掲げていた。 4.2 5.3 3.0 3.0 2.8 6.1 4.1 2.8 4.4 5.3 2.1 3.4 3.8 6.9 11.1 11.5 3.6 3.6 3.5 2.2 2.9 1.5 2.8 3.1 0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 12.0 14.0 16.0 18.0 20.0 日本 日本 韓国 米国 英国 ドイツ フランス スウェーデン 2004 2015 2004 2004 2004 2004 2004 2004 法人所得課税負担 社会保険料雇用者負担 社会保険料被用者負担 今後増加 12.2% 14.2% 8.6% 8.6% 9.5% 14.5% 17.9% 17.5%

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15

新たな潮流その2

税と社会保障の一体化

・税制の効率化・消費課税化、国際競争の激化

等による所得格差の拡大から所得再分配機

能再構築の必要性

・モラルハザードを生む「大きな政府」政策への

回帰をやめて、高齢化のもとでの財政資金の

効率的活用

・貧困対策・就労促進、少子化対策としての給

付付税額控除の導入・拡充(税と社会保障の

一体化)

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• 第1に、社会保障給付と税額控除をセットにするの

で、給付額と課税最低限が連動し効率的・効果的な

政策となる。

• 第2に、労働時間と給付額・控除額をリンクさせる事

により労働インセンティブを高め就業を促進する。働

かなくても給付が受けられるモラルハザードを縮小

させる。

• 第3に、所得控除を税額控除に改めることにより、

課税ベースの浸食を防ぎ低所得層に恩恵を集中さ

せ、所得再分配機能を高める。

• 第

4に、消費税負担増の逆進性対策として、軽減税

率に代替しうる

給付付税額控除の利点

(17)

17 17 図表10-8 就労・児童税額控除額と所得税額(子供2人のケース) -12 -8 -4 0 4 8 12 0 4 8 12 16 20 24 28 32 36 40 44 48 52 56 60 64 千ポンド(年間所得) 千ポンド 生活保護、就労・児童税額控除 所得税額(税額控除前) 生活保護額、所得税額(税額控除後)  週16時間就労  (年間所得4040ポンド)  週30時間就労  (年間所得7140ポンド) (出所)財務総合政策研究所研究部

(18)

18 韓国 アメリカ イギリス フランス 名称 勤労奨励税制 EITC WTC(Working Tax Credit) PPE (Prime pour l'Emploi) 導入 (08施行) 2006年 1975年 ・ 88 : Family Credit ・99:WFTC ・03:WTC 2002年 運営主体 国税庁 国税庁 国税庁 国税庁 適用単位 世帯 世帯 世帯 世帯 最大給与額 (子供2人) ₩80万 (11万円) $4,400(53万円) (05年) ₤3,875(93万円) (05年) €605(10万円) (05年) 最大所得 (円) ₩1,700万 (224万) $37,263(450万) (05年) ₤13,910(335万) (05年) €24,547(400万) (05년) 受給世帯 (04年基準) 31万世帯 (全体の1.8%) 220万世帯 (19.5%) 180万世帯 (7.3%) 880万世帯 (25.9%) 予算 (04年) ₩1,500億(政府支 出の0.08%) $380億 (0.81%) ₤ 43.5億 (1.14%) €24.5億 (0.3%) 主要国のEITC比較 (資料:財政経済部)

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19 受 給 額 0       A B C       年 収 c h ild b e n e fit 児 童 税 額 控 除 就 労 に 関 係 な く 、 子 を 持 つ 者 が 受 給 で き る 。 就 労 税 額 控 除 就 労 を 条 件 に 受 給 で き る 。 In c o m e S u p p o rt A:週16時間以上勤務(就労税額控除受給要件) B:5,220£以上の控除額削減 C:週30時間以上勤務 WTC,CTC給付イメージ

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子育て減税の具体的提言

• 「女性の労働に中立的でないとの批判の多い配偶者控除を 、現行の38万円から28万円に10万円削減。その財源で、 15歳以下の扶養親族の人数に応じた税額控除をする。ただ し、モデル世帯(夫婦・子2人)で年収700万円以下の納税 者に限定する。」 • 配偶者控除削減による増収額は約2000億円、700万円以 下の納税者に扶養されている15歳以下の扶養者は約100 0万人、扶養者一人当たりの税額控除額は2万円。7百万円 程度の納税者の税負担は、配偶者控除の削減により1万円 増加する(10万円×10%)が、子供が2人いるので4万円(2 万円×2)の税額控除が受けられ、差し引き3万円の減税に なる。

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21 税額 収入(万円) 0 給付 ① 現 行 (325 万 円) ②変更後(315万円) ③給付つき 325 315 395 700 減税 増税

(22)

22 まず・・ 所得控除から税額控除へ、「児童税額控除」を創設する →今後拡大することにより、児童手当(毎月5千円、1万円)、 児童扶養手当等と一体設計せよとの議論 次に・・ ・消費税の逆進性対策の必要時に「給付付き税額控除」を導 入 ・給与所得控除を削減しつつ勤労税額控除に替える ・税と年金の徴収の一元化を前提に、税・年金保険料負担の 範囲内で(給付なしで)「勤労税額控除」を創設。 制度設計は・・ ・「最低賃金でフルタイムで働いた者がEITCを受ければ、税・社 会保険料控除後所得が貧困ラインを超えること」を目標とす べき ・中期のプランを立てつつ、「所得控除を税額控除に変えていく 」ことから実施に移していくこと (注)貧困ラインー全世帯の平均所得の半分以下の所得の世帯

具体的進め方

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23

給付付税額控除の課題(1)

1、政策目標、政策ターゲットの明確化

若年層を中心としたワーキングプア、母子家庭に

対する就労を通じた貧困対策、少子化対策

2、他の政策手段と比較しつつ政策効果の十分な検

討を行うこと。

3、不正給付(還付)問題の防止、クロヨンと呼ばれる

事業者の所得の正確な捕捉の必要性。

給付(還付)事務を会社レベルで行うこと、納税者

番号制度の導入が課題

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給付付税額控除の課題(2)

4、税務当局と社会保障官庁との協力・統合の検討。 5、税制度の手直しー個人単位から世帯単位税制への変更、 資産テスト導入の可否。 個人単位のもとで厳格な定義の行われている配偶者、扶 養家族と、社会保障制度との整合性を保つ必要性もある。 分離課税となっている金融所得のことや、資産テスト(ミー ンズテスト)の導入の可否等を検討する必要もある。 6、児童手当、児童扶養手当、生活保護等の現行社会保障給 付、配偶者控除を始めとする各種所得控除、最低賃金制度 のあり方を根本的・総合的な見直し。 7、「歳出・歳入一体改革」との整合性。税収中立、さらには歳 出面も含めた「財政中立」という考え方の下で制度設計。

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税制改革の3段階

1st stage

It’s crazy. It’ll never work. Don't waste my time.

2

nd

stage

It’s possible, but it’s not worth doing.

3

rd

stage

I’ve always said it was a good

idea. I’m glad I thought of it.

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