職業移動の傾向分析
一ハウザー・フェザーマン命題の検証一
小島 秀夫*・浜名 篤**
(1983年9月30日受理)
Trend Analysis of Occupational Mobility
一Verification of Hauser−Featherman proposition一Hideo KoJIMA*and Atsushi HAMANA*掌
(Received September 30,1983)
Abstract
After Lipset−Bendix proposition was denied, in the middle of 1970s a new
proposition was made by Hauser and Featherman. After running loglinearanalysis to the mobility table, they conclude that industrial societies can be
shown not to have the same rate of observed mobility, it seems that, oncestructual mobility has taken into account, circulation mobility has been nearly
constant over time. This proposion has been confirmed in several countries l
唐奄獅モ?@then. The purpose of this paper is to verify Hauser−Featherman propo一
sition using Japanese SSM(Social Stratification and Social Mobility)data.The results show that the proposition holds when we observe full matrix and
when we block rnain diagonal cells. It is also shown that the quasi−perfect mo一
bility holds when we block three broad occuaption groups(nonmanual, m&nual,and farm).
問 題
社会移動を研究する場合に,社会移動を概念的に強制移動と純粋移動に区分して研究するのが通 常とられる方法である曾 強制移動とは職業構造の変動や出生率の差などの外在的条件によって生 ずる移動であり,純粋移動とは社会の開放性によって生ずる移動である。そして実際に観察される 社会移動は事実移動とよばれる。すなわち,事実移動から強制移動を除去したものが純粋移動であ る。この強制移動と純粋移動のどちらが社会移動の研究にとってより重要であるということはない が,純粋移動が社会の開放性を示すものであるという理由によって,より多くの研究者は強制移動
*茨城大学教育学部教育社会学研究室Sociology of Education, Ibaraki University.
**上智大学社会学大学院 Graduate School of Sociology, Sophia University.
r
よりも純粋移動に関心を示している2)。
これら事実移動,強制移動,純粋移動については,社会移動の国際比較研究あるいはコーホート 分析などを通じて,いろいろな命題が立てられてきている。事実移動に関しては,リップセット・
ベンディクスによって立てられた命題が最初のものであろう。リップセット・ベンディクスは世界 6ケ国の社会移動のデータを比較することによって,「社会移動の量は,主として産業化した社会 に多かれ少なかれ共通な構造変化によって決定されているため,その種のあらゆる社会でほぼ同程
度になると考えられる3)」という結論を得た。この命題は,リップセット・ベンディクス命題とよば れるものであり,社会移動の研究で受け入れられたものである。しかしながらその後,ジョーンズは,リップセット・ベンディクスの使用したデータを組みなおし,再分析を実施した結果,産業社会に おいてほぼ同程度の社会移動がみられるというリップセット・ベンディクスの命題は支持されない
ことを明らかにした4乙 したがって,今日では社会移動の量は産業社会によって異なるという命題
が支持されている。強制移動については,産業化の第1局面および第2局面においては高くなるが,第3局面におい ては低くなるという命題が立てられている5も一方,純粋移動は社会が産業化されればされるほど大 きくなるという命題が立てられている6乙この純粋移動の量が,社会が産業化されればされるほど大 きくなるという命題は,より多くのデータで検証されるべき余地を残してはいるが,これまでの社
会移動の研究においては,この命題を支持する結論が出されている7乙以上のように社会移動の研究においてこれまで立てられてきた命題は,それが強制移動であれ純 粋移動であれ,移動の量に関するものであることに注意を払う必要がある。これに対し,最近の社 会移動の研究において,ハウザーとフェザーマンによって立てられている命題は,社会移動の量で はなく移動のパターンに注目するものである。それは,「産業社会においてみられる社会移動の量 は異なるかもしれないが,職業構造の影響を除去した場合の純粋移動のパターンは,すべての産業 社会において等しい8)」というものである。この命題を本槁ではハウザー・フェザーマン命題とよ
ぶことにしよう。この命題が立てられたのは1970年代の中頃であるが,それ以来この命題を支持す 9)
髟 告が世界数ケ国でなされている。たとえば,アメリカとオーストラリアのデータを比較した研究, 12)
アメリカのOCG調査の分析101アメリカとカナダを比較した研究111イギリスの社会移動の分析な
どはすべて,この命題を支持するものである。本稿の目的は,ハウザー・フェザーマン命題が日本についても成立するかどうかを,SSM(社
会階層と社会移動)データを使用して検討することである。ログリニア・モデル
ここでは本稿において使用される分析方法について説明しておこう。ここで使用される分析方法
13)ヘ,ログリニア分析 である。
父職を行に本人(子ども)の職業を列にとった移動表がコーホート別にとられていると仮定しよ
う。すなわち,父職×本人の職業×コーホートの三重クロス表があるとしよう。父職のカテゴリー
F(i=1,2,……1),本人の職業のカテゴリーS(j=1,2,……J),コーホートのカテゴリーC(k=1,2,…K)がある場合,飽和モデル(saturated model)は,加法モデルでは,
logfi,k=u+u『+u号+uii+u腎+uFξ+11号£+u野ξ (11
と表わされる。この飽和モデルのもとで求められる期待度数は実測度数とかならず一致するため,
飽和モデルの分析的意味はないが,それぞれのパラメータのもつ意味を説明するのには便利である。
〔1)式において,109は自然対数であり,fi」kはijk番目のセルの実測度数であり,Uは総平均であ る。u亨, U§,燥は,それぞれlogfi j kに対する父職,本人の職業,コーホートの効果を示している。
u盟とu聾はそれぞれ10gfijkに対する,コーホート別の父職,本人の職業の効果を示してい る。u腺 とu聾とが一緒になった場合には,それはコーホート別の職業構造の変動を除去する
ことを意味している。u昏は職業構造の変動を除去した場合の, logfljkに対する効果を示す。換 言すれば,職業構造の変動をコントロールした場合にみられる,父職と本人の職業間のコンスタン
トな交互作用がlogfi j kに与える効果を示している。 u『聾は,父職と本人の職業のコンスタントな交互作用がコーホートによって異なっていることがlogfi l kに与える効果を示している。この 飽和モデルは,モデルの表記としては〔FSC〕で表わされる。(1)式が〔FSC〕と表記されることか らも明らかなように,変数間により高いレベルでの相互作用が存在する場合には,同じ変数がより
下位のレベルにおいても存在しているということを意味するω。〔1}式で示される飽和モデルは,前述したように,期待度数と実測度数がかならず一致するため分
析的意味はない。われわれのここでの関心は,飽和モデルよりもより単純なモデルが成立するかど
うかということである。したがって,われわれは飽和モデルにかわって,次のモデルをテストして
みることとする。そのモデルは,10gFiJk=u+uギ+u号+u宝+u器+u号霊 (2)
で表わされるモデルである。ここでF至」kはijk番目のセルの期待度数である。(2)式と(1)式は,
u野=u¥報=0であるという点が異なる。(2)式はモデルの表記としては〔FC〕〔SC〕と示される。
②式で示されるモデルの仮説は,父職と本人の職業はコーホートとともに変化するが,父職と本人 の職業間にはなんの関連もみられないというものである。すなわち,どのコーホートにおいても完 全移動がみられるというものである。このモデルは完全移動を仮定しているということで,非現実 的なモデルであるが,本稿の分析においては,他のモデルと比較するための基本モデル(baseline mode1)としての役割をはたす。
ログリニア分析においては,こうしたモデルの適合度が問題とされる。モデルの適合度は尤度比 統計量G2(likelihood−ratio statistics)を求めることと自由度を求めることによって測られ
る。G2は次式のように表わされる。
G2−2,愚・・1・9(flj・/F1・・)(i=1・2・° 1・j=1・2・ °J・k=1・2;°°K)(3)
アこで,fi」kは実測度数であり, Fijkはあるモデルのもとで求められた期待度数である。G2は 近似的にz2分布をすることが知られており,自由度を求めることによってモデルの適合度を調べる ことができる。②式で示されるモデルの場合,G2が統計的に有意である場合には,職業構造の変動 を除去した後に,父職と本人の職業間にコンスタントな交互作用が存在するか,その交互作用がコ
一ホートによって異なるか,あるいはその両方であるかを示している。ログリニア分析においては,このG2は二つのモデル間の比較に重要な役割をはたしている。すな
わち,二つのモデル間のG2と自由度の差を求めることによって,一方のモデルには含まれているが,他方のモデルには含まれていない変数の統計的有意性を調べることができる15)。
次にわれわれは,②式に父職と本人の職業間のコンスタントな交互作用を加えて,(4)式で示され るモデルを考えることができる。
IogFijk=u+uぞ+u号+u足+u鍔+u『震+u§宝 (4)
このモデルは,〔FS〕〔FC〕〔SC〕と表わされる。(4)式で示される仮説は次のようなものである。父
職と本人の職業はコーホートとともに変化するが,父職と本人の職業構造の変動をコントロールし た場合に,父職と本人の職業間にはコンスタントな交互作用が存在するというものである。ここで もG2と自由度を求めることによって,このモデルの適合度が調べられる。このモデルが成立しない
場合には,飽和モデルのみが適合するモデルである。ここで②式と㈲式を比較することは興味のあることである。なぜならば,(4)式で示されるモデル
は②式で示されるモデルのパラメータをすべて含み,さらにコンスタントな父職と本人の職業の交
互作用を示すパラメータも含んでいる。したがって,(2)式と(4)式のG2の差と自由度の差を比較することによって,職業構造の変動をコントロールした場合に,父職と本人の職業間にコンスタント
な交互作用が存在しない,という帰無仮説をテストすることができる。(4)式で示されるモデルのインプリケーションを明らかにするために,(4)式を優比(odds ratio)
の形で表現することが適切であろう。たとえば,次のようにコーホートkにおける父職の対と本人
の職業の対があるとする場合に,本人の職業
@ 1 2 ヰE 1fllk f12k
2f21k f22k
優比は次のような形で示される。
(fllk/f12k) (fllk/f21k) fllk f22k
(均1k/f22k)=
if12k/f22k)『f12kf21k (5)⑤式で示される優比は,たとえば,父職が専門職である場合に,その子どもが事務職につくよりも 専門職につくという確率の変化が,父職が事務職である子どもが事務職よりも専門職につく確率の 変化に等しい,ということを意味している。㈲式で示されるモデルは,優比の値がすべてのコー
ホートで等しいということを意味している。さらに(4)式は,この優比の値が父職と本人の職業のどの ような組合せにおいても等しいことを意味している16乙優比の値がコンスタントであるということのインプリケーションは,次のようなことである。もし,われわれが最初にある時点での父職と本人 の職業の移動表を得,次の時点の移動表については父職と本人の職業の周辺分布の状態についての みの情報しかない場合でも,反復法(iterative procedure)によって,その移動表の各々のセル
の度数を知ることができる17)。われわれの分析において重要なのは,②式および㈲式によって示されるモデルであるが,周辺分
布の変化をみるために,次の二つのモデルもテストすることとする。その一つは,logFijk=u+uぞ+u§+u髭+u聾 (6)
で表わされるモデルである。モデル表記では,〔F〕〔SC〕と表わされる。このモデルによって示さ
れる仮説は,子どもの職業構造はコーホートとともに変化するが,父職の職業構造はコンスタント
であり,さらに父職と子どもの職業間には交互作用が存在しないというものである。
もう一つのモデルは,⑥式で示されるモデルとは反対に,父職はコーホートとともに変化するが,
子どもの職業はコーホートとともに変化せず,かつ父職と本人の職業間の交互作用は存在しないと
いうものであり,(7)式で示される。10gFijk=u+u¥+u号+u呈+u服 (7)
モデル表記は,〔S〕〔FC〕で表わされる。このモデルも(6)式で示されるモデルと同様に非現実的
なモデルであるが,これら二つのモデルと他のモデルとを比較することによって,新しい情報を得
るのに役立つものである。
次節では実際に日本のSSM調査で得られたデータを使用して,これらのモデルがテストされる わけであるが,ここで分析についての方法論上の問題について触れておく必要があろう。それは,
コーホート分析を行なう場合には,年齢効果,イベント効果,およびコーホート効果が混同しており,
それぞれの効果を析出することが困難なことである18乙こうした理由から,以下においては世代内 移動の分析は行なわず191父職と初職,父職と現職の世代間移動についてのみ分析を行なう。
父職と初職の世代間移動の分析においては,初職についた年齢は異なるにしても,年齢とコーポ 一トとが一致するため問題はないが,父職と現職の世代間移動の分析においては,年齢効果とコー ポート効果の混同がみられるため,方法論的には問題があるといえる。ここでは,この問題を補完 する目的で,父職と現職の世代間移動について,1955年・65年・75年の比較も行なう。
世代間移動分析1(父職x初職)
表1は,父職×初職×コーホートの三重クロス表に対して,それぞれのモデルをあてはめた場合 の結果を示したものである。ここでは職業として,専門・管理・事務・販売・熟練・半熟練・非熟
練・農業の8カテゴリーがとられ,コーホートとしては20代・30代・40代・50代以上の4カテゴリーがとられている2°乙
表中の∠は非類似指数(index of dissimilarity)21)である。∠は実際に観察された度数と期
待度数の乖離を示すものであり,別のモデルによって適切なセルに配分されるべきケースの比率を
示すものである。たとえば,パネルAに示されたモデル〔F〕〔SC〕において4の値は26.73であるが,これは全ケースの26.73%がこのモデルのもとでは不適切なセルに配分されているということを示 している。∠の値は,カテゴリーの数によって変動するため,同じ表内でのみ比較されるべきであ
り,異なる表の間では比較されるべきではない。G斉/G蕃は,基本モデルのもとで求められたG2の値を100%とした場合に,それぞれのモデル によって説明される説明力を示すものである。すなわち,ここでは基本モデルのG2の値を,分散分 析における総変動とパラレルに扱うこととする囎
ログリニア分析の場合,あるモデルが適合しているかどうかをみるために,有意水準5%(P=
0.05)をとるのが通常とられる方法であるが,ここでは16のモデルがテストされるため,有意水準 を・05/16=α003ととることとする駝すなわち,Pの値が0.003より大きい場合にはそのモデル を採用し,反対にPの値が0.003以下であれば,そのモデルを棄却することとする。
パネルAに示されたモデル〔F〕〔SC〕は,本人の職業構造はコーホートとともに変化するが,父職
表1 世代間移動分析1〔父職x初職〕(1975SSM)
N=2,604
モ デ ル G2 df P ∠ G孟/G早
A.周辺分布の変化
ユ. 〔F〕〔FC〕 1175.34 217 .000 26.73 一 2. 〔S〕〔FC〕 1276.93 217 .000 28.24 一 a 〔SC〕〔FC〕 1071.58 196 .000 25.72 100.0%
4. AI VSA3 103.76 21 .000 1.01 一
5. A2 VSA3 205.35 21 .000 2.52 一 B.全マトリックス
1. 〔FS〕〔FC〕〔SC〕 165.67 147 .139 7.67 15.5
2. A3 VS.B1 905.91 49 .000 18.05 84.5C.主対角線ブロック
1. 〔SC〕〔FC〕 302.22 164 .000 15,67 28.2
2. 〔FS〕〔FC〕〔SC〕 142.28 123 .111 9.69 13.3
a CI VS.C2 159.94 41 .000 5.98 14.9 4. BIVS.C2 23.39 24 >.5 a) 2.2一
D.三大職業分類ブロック
1. 〔SC〕〔FC〕 87.83 92 >.5 8.15 8.2
2. 〔FS〕〔FC〕〔SC〕 65.21 69 >.5 7,00 6.13, DI VS.D2 22.62 23 >.5 1.15 2.1 4. Bl VS.D2 100.46 78 .041 0.67 9.4 5. C2 VS. D 2 77.07 54 .019 2.69 7.2
F:父職 S:本人の初職 C:コーホート a)値がマイナスのため定義されず
は変化しないし,かつ父職と本人の職業の交互作用は存在しないというものである。〔S」〔FC〕は
〔F〕〔SC〕とは反対に,父職はコーホートとともに変化するが,本人の職業は変化しないというもの である。これら二つのモデルの自由度はどちらも217であるが,G2の値はモデル〔F〕〔SC〕と〔S〕
〔FC〕で,それぞれ1175.34と1276.93であり,明らかに統計的に有意であることが理解される。
したがって,これらのモデルを採用することはできない。また,それぞれのモデルにおいては,全 ケースの26.73%と2&24%が不適切なセルに配分されている。これら二つのモデルは,それぞれ
父職および本人の職業構造が不変であるということを仮定しているという点で非現実的であるが,モデル〔SC〕〔FC〕と比較することによって,別の情報を得ることができる。
モデル〔SC〕〔FC〕は,ここでの分析では基本モデルの役割をはたしている。このモデルは父職と
本人の職業構造はコーホートとともに変化するが,父職と本人の職業間に交互作用は存在しないと いうものである。このモデルの自由度は196であるのに対し,G2は1071.58であり,明らかにモデ
ルは成立していない。したがって,完全移動は父職と本人の初職の間には存在していない。このモ
デルでは全ケースの25.72%が不適切なセルに配分されていることが,4をみることによって明ら
かとなる。このモデル〔SC〕〔FC〕とモデル〔F〕〔SC〕,〔S〕〔FC〕とを比較することによって,それぞれ父職,
本人の初職の職業構造はコンスタントであるという帰無仮説がテストされる。モデル〔F〕〔FC〕とモ デル〔SC〕〔FC〕の自由度の差は,217−196=21であるのに対し, G2の差は1175.34−1071.58=
103.76であり,統計的に有意である。したがって,父職の職業構造はコンスタントであるという帰
無仮説は棄却される。同様に,モデル〔S〕〔FC〕とモデル〔SC〕〔FC〕を比較することによって,本人の初職の職業構造もコンスタントでないことが明らかにされる。ここで,父職と本人の初職の職業 構造がどのくらい大きく変動しているのかを理解するために,G2の値を自由度で除した値を求めて
みることとする24乙父職の場合にはその比率は.4.94となり,本人の初職の場合には9.78となってお り,父職も本人の初職の職業構造も大きく変動していることが明らかにされる。パネルBに示されているモデル〔FS〕〔FC〕〔SC〕は,父職も本人の初職もコーホートとともに変化す るが,父職および本人の職業の変動を除去した場合に,(4)式で示されるような意味で父職と本人の
職業間にコンスタントな交互作用が存在するというものである。このモデルでは基本モデルの結合
の15.5%が説明されるべき結合として残されており,全ケースの7.67%しか不適切なセルに配分されていないことが明らかとなる。このモデルの自由度は147であるのに対し,G2は165.67であり,
P=0.139となり,明らかにこのモデルを採用することができる。すなわち,本稿の目的である,職 業構造の変動を除去した場合の世代間移動のパターンは同じである,という仮説は一応支持された
ことになる。このことをさらに明らかにするために,モデル〔SC〕〔FC〕と(FS〕〔FC〕〔SC〕とを比較
してみることとする。この二つのモデルを比較する際に立てられる帰無仮説は,父職と本人の職業
間にコンスタントな交互作用は存在しない,というものである。ここで自由度は49であるのに対し,G2は905.91であるから明らかに統計的に有意であり,この帰無仮説は棄却される。つまり,父職と 本人の初職の間には,コンスタントな交互作用が存在しているのである。また,このモデルでは基
本モデルの結合の84.5%が説明され,全ケースの工8.05%が適切なセルに再配分されていることからも明らかなように,父職と本人の職業間のコンスタントな交互作用は世代間移動において重要な 要因であることが理解される。しかしながら,移動表全体においてこうしたことがいえたとしても 移動表を分割した場合,すなわちそれぞれのモデルをもっと狭く限定した場合に,同じ事実が確認 できるかどうか明らかではない。したがって,われわれは以下の分析において,移動表を分割した 場合でも,同じ事実が確認できるかどうかを解明することとする。まず初めに,主対角線上のすべ てのセルをブロック(無視)した場合についてみよう2曾すなわち,主対角線上のすべてのセルが実
測度数をとるような制約を課した場合についてみてみよう。パネルCは,主対角線上のセルをブロックした場合の結果をそれぞれ示したものである。主対角
線上のセル以外に対して,モデル〔SC〕〔FC〕を適用した場合に,このモデルは明らかに適合していないことが理解される。しかしながら,このモデルとモデルA3を比較した場合,主対角線上のセル
が基本モデルの結合の72%を説明していることが明らかとなる。ついでモデル〔FS〕〔FC〕〔SC〕についてみると,基本モデルの結合の13.3%が説明されるべき結合として残され,全ケースの約10%
が不適切なセルに配分されているが,自由度が123であるのに対し,G2は142.28であり,このモデ
ルは成立している。すなわち,主対角線上のセル以外においても,父職と本人の職業のコンスタン
トな交互作用が存在しているのである。
主対角線上のセル以外においても,父職と本人の職業間にコンスタントな交互作用が存在するこ とを確認するために,パネルBの場合と同様に,モデルC1とC2を比較してみた。その結果,自由 度が41であるのに対し,G2は159.94であり,統計的に有意であり.父職と本人の職業間にコン スタントな交互作用が存在していることが確認される。さらにモデルB1とC2を比較することは
興味のあることである。モデルB1とC2の差は,後者のモデルにおいて主対角線上のセルの度数は実測度数をとるような制約が課せられていることである。したがって,この二つのモデルを比較 することによって,コンスタントな職業世襲のパターンが存在している,という帰無仮説をテスト することができる。これら二つのモデルを比較した場合のG2の値は23。39であり,自由度は24で あるから,P>0.5となり,明らかにモデルは成立する。すなわち,コンスタントな職業世襲が主
対角線上のセルに存在しているのである。ブロックするセルを主対角線上のセルのみではなく,さらに拡大して三大職業分類をブロックし てみた場合の結果についてみてみよう。ここでは三大職業分類として,ノンマニュアル(専門・管
理・事務・販売),マニュアル(熟練・半熟練・非熟練)および農業のセルがブロックされている。表1のパネルDに,その結果が示されている。そこから,どのような所見を得ることができるであ ろうか。ここでは三大職業内のセルは,実測度数と等しくなるような制約が課せられている。
まず第1に明らかにされるのは,モデル〔SC〕〔FC〕が成立していることである。このモデルの自
由度は92であるのに対し,G2は87.83であり,明らかにこのモデルを採用することができる。ま 牟このモデルにおいては,基本モデルの結合の8.2%のみが説明されるべき結合として残されてい るにすぎない。ところでグードマンは,移動表のあるセルをブロックした場合に完全移動が成立す る場合を,準完全移動(quasi−perfect mobility)とよんでいるが261ここでは準完全移動が成 立しているのである。このモデルが成立することは,ノンマニュアル・マニュアル・農業の境界を 越えた移動がランダムに発生していることを意味し,職業移動の機会が平等であることを意味して いる。無論,こうした準完全移動が成立するかどうかは,どのセルをブロックするかによる。たと えば,上層ノンマニュアル(専門・管理),下層ノンマニュアル(事務・販売),マニュアル(熟
練・半熟練・非熟練・農業)のセルをブロックした場合には準完全移動は成立せず27:モデル〔FS〕〔FC〕〔SC〕のみが成立している。
ログリニア・モデルにおいては,より低次のモデルが成立する場合には,より高次のモデルは必 ず成立する。パネルDにおいても,〔FS〕〔FC〕〔SC〕が成立している。準完全移動が成立するとい
うことによって,モデル〔SC〕〔FC〕と〔FS〕〔FC〕〔SC〕の比較の結果も,これまでの分析結果とは
異なる。これら二つのモデル間のG2の差は22.62であるのに対し,自由度の差は23であるから,三 大職業分類以外のセルにおいては父職と本人の職業の間にコンスタントな交互作用は存在しない,
という帰無仮説は支持される。すなわち,世代間移動はまったくランダムに発生していることが確
認されるのである。ブロックされたノンマニュアル・マニュアル・農業内においては,どのような移動パターンがみ られるであろうか。ここでは二つのテストをすることが可能である。モデルB1とD2を比較する ことによって,ノンマニュアル・マニュアル・農業内において,父職と本人の職業間にコンスタン
トな交互作用が存在する,という帰無仮説がテストされる。B1とD2を比較した結果では,基本モ
デルの結合の9.4%が説明され,自由度が68であるのに対し,G2は100.46となるため,父職と本 人の職業間にコンスタントな交互作用が存在しているという帰無仮説は支持される。モデルC2と
D2を比較してみよう。モデルC2では主対角線上のセルがブロックされているのに対し,モデル
D2では三大職業がブロックされている。したがって,この二つのモデルを比較することによって
立てられる帰無仮説は,三大職業内のセルではあるが,主対角線上のセルを含まないセルにおいて,父職と本人の職業の間にコンスタントな交互作用が存在するというものである。この二つのモデル 間の自由度の差は54であるのに対し,G2の差は77.07と,5%水準では有意であるが,われわれの 定義した有意水準(P=0.003)でみた場合には統計的に有意ではなく,この帰無仮説を採用する ことができる。すなわち,三大職業内ではあるが主対角線以外のセルにおいても,父職と本人の職
業の間にコンスタントな交互作用が存在するのである。ここで,これまでの分析結果について要約しておくことが適切であろう。第1に,父職および本 人の初職の職業構造がコーホートとともに大きく変動していることが明らかにされた。第2に,移 動表全体をみた場合,父職と本人の初職間にコンスタントな交互作用が存在していることが明らか
にされた。このことは,主対角線上のセルをブロックした場合でもあてはまる。第3に,ノンマニ ユアル・マニュアル・農業のセルをブロックした場合には,準完全移動が成立することが明らかに された。第4に,ブロックされた主対角線上のセルおよびノンマニュアル・マニュアル・農業のセ ルについてみると,そこでは父職と本人の初職のコンスタントな交互作用が存在していることが明
らかにされた。
次節では,父職×現職xコーホートについての分析を加えてみることとする。
世代間移動分析II(父職×現職)
父職と本人の現職をコーホート別に比較する際に問題とされるのは,年齢効果とコーホート効果 とを分離することができないことである。すなわち,父職×現職の移動表をコーホート別にとった 場合,年齢の高い層の現職は年齢の低い層よりも高くなるのが普通であるが,それが年齢によるも のなのか,コーホートによるものなのかは区別できない。現在の移動表分析においては年齢効果と コーホート効果を分離する方法はないため,以下の分析では年齢効果とコーホート効果が混同され
ているということを念頭において,結果をみてみることとする。表2は,父職×現職×コーホートの三重クロス表に対して,それぞれのモデルをあてはめた場合
の結果を示したものである。表1と表2の差は,SがWに変っていることのみであり,分析のロジックは表1の場合と同様である。
モデル〔F〕〔WC〕は,現職はコーホートとともに変化するが,父職はコーホートとともに変化せ ず,かつ父職と現職の間には交互作用は存在しない,というものである。このモデルの自由度は,
217であるのに対しG2は939.49となっており,明らかに統計的に有意であり,このモデルは成立
しない。モデル〔W〕〔FC〕は,モデル〔F〕〔WC〕とは反対であるが,このモデルも成立していない。モデル〔WC〕〔FC〕は,ここでの分析においても基本モデルとしての役割をはたす。このモデル
のもとでは全ケースの23.03%が不適切なセルに配分されている。このモデルの自由度は196であ
表2 世代間移動分析H〔父職×現職〕(1975SSM)
N=2,515
モ デ ル G2 df P ∠ G畳/G早 A.周辺分布の変化
1. 〔F〕〔WC〕 939.49 217 .000 24.18 一
2. 〔W〕〔FC〕 1144.62 217 .000 26.18 一 3. 〔WC〕〔FC〕 847.83 196 .000 23.03 100.0%4. AI VS.A3 91.66 21 .000 1,15 一 5. A2 VS. A3 296.79 21 .000 3.15 一
B.全マトリックス
1. 〔FW〕〔FC〕〔WC〕 176.61 147 .048 8.49 20.8
2. A3 VS. B 1 671.22 49 .000 14.54 79.2C.主対角線ブロック
1. 〔WC〕〔FC〕 300.42 164 .000 15.70 35.4
2. 〔FW〕〔κ〕〔WC〕 142.70 123 .108 9.34 16.8
3. Cl VS. C2 157.72 41 .000 6.36 18.6 4. Bl VS. C2 33.91 24 .084 _a) 4.0 D.三大職業分類ブロック1. 〔WC〕〔FC〕 99.60 92 >.5 8.24 11.7
2. 〔FW〕〔FC〕〔WC〕 81.01 69 .154 7.12 9.6
3. DI VS. D2 18.59 23 >.5 1.12 2.2 4. BI VS. D2 95.60 78 .084 1.37 11.3 5. C2 VS. D2 61.69 54 .224 2.22 7.2F:父職 W:本人の現職 C:コーホート a)値がマイマスのため定義されず
るのに対し,G2は847.83であるため,モデルは明らかに成立していない。モデル〔F〕〔WC〕およ び〔W〕〔FC〕とモデル〔WC〕〔FC〕を比較することによって,それぞれ父職および現職の職業構造
がコンスタントであるという帰無仮説をテストしてみよう。その結果,自由度は21であるのに対し,父職の場合のG2は91.66,現職の場合のG2は296.79となり,父職および現職の職業構造はコンス タントであるという帰無仮説は棄却される。G2の値と自由度の比率をみてみると,父職については
4.36,現職については14.13となっており,それぞれ父職および現職の職業構造が大きく変動して いることが理解される。モデル〔FW〕〔FC〕〔WC〕についてみてみよう。もしこのモデルが成立すれば、職業構造の変動
を除去した場合に,父職と現職の間にコンスタントな交互作用が存在していることが明らかにされ
る。このモデルの自由度は147であるのに対しG2は176.61であるから, P=0.048となりこのモ
デルは成立する。このモデルでは基本モデルの結合の80%が説明され,全ケースの8.49%のみが
不適切なセルに配分されているにすぎない。父職と現職の間にコンスタントな交互作用が存在して
いるということをさらに明らかにするために,モデルA3とB1を比較してみよう。これら二つの
モデルを比較することによって,父職と現職の間にはコンスタントな交互作用は存在しない,とい う帰無仮説がテストされる。このテストでは,自由度が49であるのに対しG2は671.22であるから,
統計的に有意であり帰無仮説は棄却される。
主対角線上のセルをブロックした場合についてみてみよう。主対角線上のセル以外に対してモデ
ル〔WC〕〔FC〕を適用してみると,自由度が164であるのに対しG2は300.42であり,このモデルは成立しない。モデルA3とこのモデルを比較することによって,主対角線上のセルが基本モデルの結 合の65%を説明していることが明らかにされる。ついで,モデル〔FW〕〔FC〕〔WC〕についてみる と,自由度が123であるのに対しG2は142.70であり,統計的に有意でなく,このモデルが成立して いることが明らかにされる。このモデルにおいては基本モデルの結合の83%が説明され,全ケース の9.34%が不適切なセルに配分されているにすぎない。すなわち,主対角線上のセル以外におい ても,父職と現職のコンスタントな交互作用が存在するのである。
モデルC1とC2を比較することによって,主対角線上のセル以外においてコンスタントな交互作 用は存在しない,という帰無仮説がテストされるが,自由度は41でありG2は157.72であるから,明
らかにこの帰無仮説は棄却される。モデルB1とC2を比較することによって,コンスタントな職業世 襲が存在するかどうかを調べてみよう。これら二つのモデルを比較した場合のG2の差は33.91であ
り,自由度の差は24であるから,P=0.084となり,コンスタントな職業世襲の存在が明らかにさ
れる。
ブロックするセルを主対角線上のセルのみに限定せず,ノンマニュアル・マニュアル・農業の三 大職業にまで拡大した場合に,どのような結果が得られるであろうか。三大職業のセルをブロック
し,それ以外のセルに対してモデル〔WC〕〔FC〕を適用してみた場合,自由度が92であるのに対し,
G2は99.60となり,統計的に有意でなく準完全移動が成立していることが明らかにされる。このモ デルでは,基本モデルの結合の88%が説明され,全ケースの8.24%のみが不適切なセルに配分さ
れているにすぎない。このことは,ノンマニュアル・マニュアル・農業の境界を越えた移動がランダムに発生していることを意味している。準完全移動が成立するのは,ノンマニュアル・
マニュアル・農業をブロックした場合のみではなく,上層ノンマニュアル・下層ノンマニュアル・
マニュアルのセルをブロックした場合にも成立する289モデル〔WC〕〔FC〕が成立すればモデル
〔FW〕〔FC〕〔WC〕は必ず成立する。
モデルB1とD2を比較することによって,ブロックされた三大職業内において父職と現職のコン スタントな交互作用が存在するという帰無仮説をテストしてみよう。ここでは自由度の差は78であ るのに対し,G2の差は95.60であるからP=0.084となり,この帰無仮説を受け入れることができ る。今度はモデルC2とD2を比較してみよう。この二つのモデルを比較することによって,三大職 業内ではあるが主対角線上のセル以外において父職と現職の間にコンスタントな交互作用が存在し
ている,という帰無仮説がテストされる。これら二つのモデル間の自由度の差は54であるのに対し,G2の差は61.69であるから,この帰無仮説は支持される。
以上の父職と現職の世代間移動の分析結果は,父職と初職の世代間移動の結果と同じで
ある。すなわち,移動表全体および主対角線上のセルをブロックした場合に,父職と現職の間にコ
ンスタントな交互作用がみられるが,三大職業をブロックした場合には準完全移動が成立するとい
うものである。したがって,われわれはここにおいて世代間移動について,職業構造の変動を除去
した場合,移動のパターンはほぼコンスタントであるという結論を導き出してよいかもしれない。しかしながら,前述したように父職と現職が問題にされる場合には,年齢効果とコーホート効果が 混同されているため,こうした結論を導き出すのにはなお慎重でなければならない。では,年齢効 果とコーホート効果を概念的に分離するためにはどのような方法が考えられるであろうか。一つの
方法は異なる時点になされた移動表をもとにして分析することである。幸運にもわが国においては,1955年・65年・75年においてSSM調査が実施されており,各時点での父職と現職の移動表が存 在している。したがって,次節では55年・65年・75年の移動表を使用した分析を試みる2曽
世代間移動分析皿(1955年・65年・75年SSM)
ここで使用される分析のロジックについて説明しよう。父職と現職の移動表をコーホート別に比 較した場合には,年齢効果とコーホート効果とが混同してしまう。ところが,もし異なる時点での 移動表が存在していれば年齢効果を無視することは可能となる。すなわち,異なる時点であっても 調査対象者が同じ年齢幅をもつのであれば,年齢効果を無視することは可能となる。この点,1955
年・65年・75年のSSM調査では,20−69才の成人男性が対象とされているため,年齢効果を除去する目的にうまくかなっている。また,55年・65年・75年の世代間移動表を比較するというこ との重要性は,つぎのようなことである。日本においては1955年から75年にかけて,産業化の第 1局面から第2局面,第2局面から第3局面へと短期間の内に移行したということが明らかにされ ている301つまり,55年から75年にかけての産業構造および職業構造の変動は非常に激しかったと
いえる31乙 したがって,55年・65年・75年の移動表をもとにした分析においても,職業構造の変動を除去した場合に,世代間移動のパターンはコンスタントであるということが明らかにされれば,
ハウザー・フェザーマン命題がより厳密に確認されたことになる。
表3は,55年・65年・75年の世代間移動表に対して,それぞれのモデルをあてはめた結果を示し
たものである。表3と表2の差は,表2のCが表3ではTになっていることのみであり,結果の解釈は表1・表2の場合とまったく同じである。
パネルAに示された分析結果についてみてみよう。モデル〔F〕〔WT〕,〔W〕〔FT〕は自由度より
もG2がはるかに大きく,明らかに成立していない。基本モデルである〔WT〕〔FT〕も明らかに成立 していない。このモデルでは全ケースの24.59%が不適切なセルに配分されている。モデル〔F〕
〔WT〕,〔W〕〔FT〕とモデル〔WT〕〔FT〕を比較することによって,父職と現職の職業構造も時間と ともに大きく変化していることが理解される。
パネルBについてみてみよう。モデル〔FW〕〔FT〕〔WT〕のG2は112.84であるのに対し,自由度 は98であるからP=0。145となって,このモデルは成立する。55年・65年・75年の世代間移動表を もとにした分析においても,職業構造の変動を除去した場合,父職と現職の間にコンスタントな交 互作用が存在しているのである。このモデルでは基本モデルの結合の95%が説明され,全ケースの
5%のみが不適切なセルに配分されているにすぎない。
パネルCは主対角線上のセルをブロックした場合の結果を示したものである。ここでも,モデル
表3 世代間移動分析皿〔父職x現職〕(1955年。65年・75年SSM)
N=6,129
モ デ ル G2 df P 4 G葺/G亭 A.周辺分布の変化
1. 〔F〕〔WT〕 2515.90 161 .000 25.21 2. 〔WP〕〔FT〕 2804.44 161 .000 26.06
3. 〔WT〕〔FT〕 2382、03 147 .000 24.59 100.0%
4. AI VS A3 133.87 14 .000 0.62 5. A2 VS. A3 422.41 14 .000 1.47
B.全マトリックス
1. 〔FW〕〔町〕〔WT〕 112.84 98 .145 4.51 4.7 2. A3 VS. B1 2269.19 49 .000 20.08 95.3
C 主対角線ブロック
1. 〔WT〕〔FT〕 389.21 123 .000 12.05 16.3
2. 〔FW〕〔皿〕〔WT〕 88.86 82 .287 5.41 3.7
3. CI VS. C2 300.35 41 .000 6.64 12.6 4. BI VS. C2 23.98 16 .087 −a) 1.0D.三大職業分類ブロック
1. 〔WT〕〔FT〕 73.66 69 .334 4.93 3.1 2. 〔FW〕〔π〕〔WT〕 41.15 46 >.5 3.86 1.7 3. DI VS. D2 32.51 23 .089 1.07 1.4 4. BI VS. D2 71.69 52 .033 0.65 3.0 5. C2 VS. D2 47.71 36 .090 1.55 r 2.0
F:父職 W:本人の現職 T:調査の時点 a)値がマイナスのため定義されず
〔WT〕〔町〕は明らかに成立していない。モデル〔FW〕〔FT〕〔WT〕は自由度が82であり,G2は88.86
であるから明らかに成立している。このモデルでは基本モデルの結合の96%が説明され,全ケース の5.41%が不適切なセルに配分されているにすぎない。すなわち,主対角線上のセル以外において
も,父職と現職のコンスタントな交互作用が存在するのである。パネルDは,ノンマニュアル・マニュアル・農業の三大職業をブロックした場合を示したもので ある。ここでも準完全移動を示すモデル〔WT〕〔FT〕が,自由度が69であるのに対しG2は73.66 であり,成立している。ブロックするセルを,上層ノンマニュアル・下層ノンマニュアル・マニュ
アルとした場合でも,準完全移動が成立する3碧モデルB1とD2,モデルC2とD2を比較することによって,それぞれ三大職業内のセル,三大職業内ではあるが主対角上以外のセルにおいて,父職
と現職の間にコンスタントな交互作用が存在するということが明らかにされる。この55年・65年・75年の世代間移動表をもとにした分析においても,前節で得られた結論と同じ
結論が得られた。ここでの分析の目的は,年齢効果を除去した場合のコーホート効果について明ら
要約と結論
本稿の目的は,ハウザー・フェザーマンによって立てられた命題が日本についてもあてはまるか どうかを検討することであった。検証の目的のために,75年SSM調査で得られた父職×初職xコ
・一
│ート,父職x現職×コーホート,および55年・65年・75年の世代間移動表が使用された。それ
らのデータを分析した結果,次のようなことが明らかにされた。(1)どの分析においても,父職および本人の初職・現職の職業構造が大きく変化している。
② そうした職業構造の変動を除去した場合に,移動表全体,および主対角線上のセル以外におい て,父職と本人の職業(初職であれ現職であれ)の間にコンスタントな交互作用が存在している ことが解明された。すなわち,戦後日本の職業構造は大きく変化したが,そうした職業構造の変 動を除去した場合のパターンには変化がみられないのである。
③ しかしながら,ノンマニュアル・マニュアル・農業をブロックした場合には,どの分析におい ても,準完全移動が成立していることが明らかにされた。この事実は,日本の場合にのみ認めら れる事実であるかどうかは明らかではないが,日本の場合には,職業達成の機会は開かれている
ということは確認された。
したがって,われわれはハウザー・フェーザーマン命題が日本についてもあてはまるということ を,おおむね確認することができる。職業構造の変動を除去した場合に,父職と本人の職業の間に コンスタントな移動のパターンがみられるということは,社会移動の国際比較研究における問題を
一つ解決したことになる。すなわち,どのような発展段階にある社会でも,そこでの純粋移動のパ 醜
ターンは同じなのであるから,社会移動の比較研究ではこのことに注意を向ける必要はなく,むし ろ産業化の程度によって強制移動のパターンにどのような変化が現われるのかの解明にむかえばよ
いこととなる。注
1)この点については,安田三郎『社会移動の研究』(東京大学出版会,1971)p59を参照せよ。
2)たとえば,安田三郎やR・ブードンなどはこの立場に立つ。安田三郎前掲書p.60.Raymond Bbudon,
ル勉疏emα孟 cα3 S諺rωc加rθs(ゾ80c観1協oわε 孟y,(Elsevier,1973), Amsterdom. p.17.
3)Seymour M. Lipset, and R. Belldix,80c αLMob Z 妙 π血d粥εr αZ 80c e亡ッ.(Univ. of California,1959), Berkeley.鈴木広訳『産業社会の構造』(サイマル出版会,1969)p.62.
4)Jones, F. Lancaster., Social mobility and industrial society:athesis reexamined. 80e o一 Zog cαZ Q㍑α7せθ7凌y,10(1969), pp.292−305.
5)富永健一・直井優「社会移動の比較分析一東京とシカゴ(上)」r現代社会学』1巻2号,1974を参照
せよ。
6)Treiman, Donald J., Industrialization and social stratification. In Edward O. Laumann
(Ed.), SbcεαZ 8レα¢雛cα¢ oη Reseαrchαπd餓eo靴y/br疏e 1970 s.(Bobbs−Merri11,1970),
Indianapolis.
7)たとえば,富永健一編r日本の階層構造』(東京大学出版会,1979)pp.60−63.
8)Robert M. Hauser and David L. Featherman,跣θ乃ocθss q〆Sレα6静cαホ oπ.(Academic Press,1977), New York. p.15.
9)Ibid., pp.12−14.
10)Hauser, Robert M, et aL, Temporal change in occupational mobility:6vidence for men in
the United States. 湾mθr cαπSbc oio8 cαZ Rω eω,40(1975),279−297. David L. Featherman
and Robert M. Hauser, qρpo材ω漉ッα屈(洗αη8e。、(Academic Press,1978), New York. pp.63−97.ユ1)McRoberts, Hugh A, and Kevin Selbee., Trends in occupational mobility in Canada and
the United States:AComparison. 湾mθr eαη80cめ30g cαZ Eθひ eω,46(1981),406−421.
12)Hope, Keith., Trends in the openness of British society in the present century. in Robe枕
V.Robinson and Donald J. Treiman(Eds.), Re8θαrcゐ πSbdαZ Sレαε諺cαε oη,απdハ拓06 Z琵)ノ.(JAI Press,1981), Greenwich.
13)ログリニア分析については次の文献を参照せよ。Leo A. Goodman,・4πα砂2 ㎎(画αi α伽θ/(hム e807εcαZ Dαεα.(Abt,1978), Cambridge. Stephen E. Fienberg,7先e Aπα砂8捻qプ(》088一
ααssのθdαじホegor cαZ.Dα α.(MIT Press,1977), Cambridge. G. Nige1. Gilbert, Mode護Z ㎎
So6 ¢y.(George Allen&Unwin,1981), London.14)この点については,Davis, J.A。, Hierarchical models for significance tests in multivariate contingency tables. In H.L. Costner(Ed.),80c∫oZo8εcαZ M窃んodoiog)ノ19734.(Jossey一
Bass,1974), Indianapolis.
15)Yvonne M.M. Bishop., Stephen E. Fienberg, and Paul W. Holland, Dεscre¢θMi協融r α飽
.AπαZッs語.(MIT Press,1975), Cambridge. pp」26−127.
16)1×mのクロス表の場合の優比の数は,1(1−1)/2×m(m−1)/2=lm(1−1)(m−1)/
4となる。
17)この点については,Moste11er, Frederick., Association and estimation in contingency tables.
」飢mαZ(ゾ仇θ!Lη毒θr cαπ&砿観記αZ。Assodαε oπ,63(1968),1−28.を参照。
18)こうした問題点については,Mason, Karen O. et a1., Some methodological issues in coho#
analysis of archival data. Amεr cαπ80c oZo8 cαZ Rεひ詑ω,38(1973),242−258. Baltes, P.
B.,et al., Cohort effects in developmental psychology. in John R. Nesselroade, and Pau1 B.Baltes (Eds.), Lo㎎ 勧{∫ 乃αZ Resθαrcゐ π εんε S勧(乏y (ゾ &んαび or απd D2ひεioprπθπ
(Academic Press,1979), New York.を参照。なお本稿では,イベント効果の析出は不可能である。
19)実際に世代内移動についても分析を行なったが,世代間移動の場合とほぼ似た結果が得られた。
20)ここでは50代・60代のサンプル数が少ないため1つにまとめられている。
21)非類似指数は,期待度数が実測度数より大きい場合に,.駅Fijk一瑞k)/ΣFilkと定義される。ここ でFijkは期待度数, fijkは実測度数である。
22)この考えは,グードマンによって展開されている。Goodmah, Leo A., The analysis of multi一 dimensional contingency tables:stepwise procedures and direct estimation methods for
building models for multiple classifications. 距c加omθεrεcs,13(1971),33−61.
お)Goodman,Leo A., How to ransack social mobility tables and other kind of cross−classification
tables. AmθrεcαπJbMrπα∫q〆8bc oZogッ,75(1969),1−40.特にこの論文のp.10参照。24)この考えもグードマンによって展開されている。Goodman, Leo A., Ageneral model for the analysis
of surveys. Amεr cαπJbμrπαZ q/80c oZo8y,77(1972),1035−1086.
25)この点については,西田春彦「度数データの分析一世代間mover−stayerモデルの場合」『大阪大学人間 科学部紀要』6,1980を参照せよ。
26)Goodmal1, Leo A。, On the measurement of social mobility:an index of status persistence.
ノ4mer cαπSbc oZo8記αZ Reひ eω,34 (1969),831−850.
27)この場合自由度は100であるのに対し,G2は151.76で統計的に有意である。
28)この場合自由度は100であり,G2は103.45であるから準完全移動が成立している。
29)以下の分析で使用される各時点での移動表は,富永健一編,前掲書,p.53のものである。
30)この点については,富永健一編,前掲書,pp.33−36を参照せよ。
31)産業間移動を扱ったものとしては,間々田孝夫「産業間社会移動の分析」r金沢大学文学部論集行動科学 科篇』2,1982がある。
32)この場合の自由度は75であるのに対し,G2は87.40であり,モデルは成立する。