奈良教育大学学術リポジトリNEAR
小学生の達成および社会的承認の動機
著者 杉村 健, 玉瀬 耕治, 山本 順子
雑誌名 奈良教育大学教育研究所紀要
巻 5
ページ 63‑72
発行年 1969‑02‑28
URL http://hdl.handle.net/10105/6150
小学生の達成拾よび社会的承認ρ動機
杉村 健・玉瀬耕治・山本順子 (心理学教室)
児童の学習動機の中で,むつかしくてもいっしょうけんめい勉強したいとか人よりもがんばっ ていい成績をとりたいというよう潅動機はふつう達成の動機とよばれ,障害をのりこえて1つの目 標を成就しようとする欲求であると考えられる。この動機は学習の効果を規定する重要在1つの要 因として最近注目されているものであるが(林,1967;下山,1968),その測定にはふつ
うT A Tカード庄とを用いた投影法的な技法が使用されることが多い。達成の動機を質問紙によっ てとらえようとする試みはA砒鵬姐Sa耐8㎝(1963)在どによってなされているが,このよ
うな質問紙の作成は学習指導の手がかりをつかむ上にも意義深いものと思われる。
一方,先に杉村(1967;1968)ぱ児童の学習動機について調べ,えらい人になりたいから,
新しいことを知りたいから,大人になって役に立つから,成績をよくするため庄とが小学生てば学 年を通じて共通な主たる学習動機であることを報告している。しかしここで,このような児童の自 己評定的な回答の結果を児童の動機の強さそのものと解釈できるかどうかという点で疑問が残され た。そこで杉村はさらに,児童に実施したのと同じ調査項目を用いて,現場の教師に児童の学習動 機について回答を求め両者のずれを比較した。その結果,上述の動機は先生や親に叱られるからと か,テストがあるから,宿題があるからというようないわば外から与えられる動機に比べて,いず れも両者のずれが著しがつ旭杉村はこの結果の1つの要因として社会内望ましさによる影響をあ げている。つまり,小学生の主在学習動機としてあげられた項目はそのような社会内望ましさの影 響を受けやすかったのでは庄いかということである。このような社会内望ましさが自己評定的な質 問紙に影響することはすでによく知られているが,これを個人についてあてはめてみると,ある児 童が社会的に望ましい反応を多くするということは,それだけ社会内望ましさへの欲求が強いこと を示しているといえよう。いいかえれば,社会的に望ましい反応を多くする児童は人からよく思わ れたいとか,認められたいという社会的承認の動機が強いと考える1=とができる(CrO㎜e楓
Marユ㎝e,1964)。 従って,種々の自己評定的な質問紙を実施する場合にも,あらかじめこの ような社会的承認の動機の強さを調べることができれば結果の解釈に大いに役立つであろう。本研 究では,まず達成拾よび社会的承認の動機に関する質問紙を作製し,その動機の発達的傾向,学業 成績や知能,拾よび称賛。叱責との関係を検討する。
カ 法
被験者 被験者は奈良市,大和高田市,東大阪市内の公立小学校の児童男女あわせて1394名よ りなる。別に奈良市内の小学校6年生6学級228名と4年生7学級239名のうちから,各学年ご とに男女の教を考慮して,達成の動機の高い者60名と低い者60名,また,社会的承認の動機の高 い者60名と低い者60名が選ばれ旭 それ故,同一人が両方の標本として選ばれている場合があ
る。これらの60名は,それぞれその半数が称賛され,半数が叱責をうけた。表1は発達的傾向や 知能,学業との関係を調べるのに用い,表2は称賛・叱責の研究に用いた被験者の内わけである。
一63一
表] 動機の発達的傾向在との研究に用いた被験者
男 女 合 計
2 年
243 224 467
4 年
272 220 492
6 年
228 207 435
合 計
743 651
1394
表2 称賛。叱責の実験に用いた被験者
4年 6年
男 女
男 女
賞 15 15 15 15
高 罰 14 16 13 17
達成の動機
賞 1ワ 13 17 13
低 罰 17 13 17 13
賞 13 17 1? 13
高 罰 13 17 14 16一
社の
?I動承認機
賞 23 7 18 12
低 罰 I7 13 13 17
調査項目の作製 本研究で使用した動機に関する調査項目は次の手続きで作製された。まず,達
成の動機に関しては,Aぬ鵬ana Sa醐㎝(1963),Mur珊y(1938),醐吼池(1953)
三好(基本的欲求検査),田崎(学習法診断検査),長島ほか(適応性診断テスト)を参考にして 29項目を作製し,・また,社会的承認の動機に関しではCro㎜θa血Marユ。wθ(1964),三好
(基本的欲求検査),牛島と野村(集団T A T),長島ほか(適応性診断テヌト)を参考にして29 項目を作製した。これを4年生(39名)と6年生(33名)に実施し承認率の非常に高いもの 恰よび低いものを除外し旭そして領域を家庭と学校のみに限定して各動機20項目ずつの質問紙
とした。表3ばこれを示したものである。
表3 達成拾よび社会的承認の動機の調査項目 質問順
1 5 9
13 17 21 25 29 33 37
達成の動機(家庭)
おとうさんや券があさんにいわれなくても1人で勉強したヘ
テストの成績についておとうさんや拾かあさんがどう思うか気になる・
おとうさんや倉があさんがい在くてもまじめに勉強したい。
拾とうさんや拾かあさんにいいつけられたことぱいっしょうけんめいやりたい。
いやな手伝いでも決められたことばさいごまでやりたい。
勉強しているとき,友だちからさそわれても遊びに行きたくない。
家の手伝いをする時はさいご までやりたい。
拾とうさんや拾かあさんをよろこぱせるためにいっしょうけんめい勉強したい。
悪い成績の時,おとうさんやおかあさんぱがっかりすると思う。
拾とうさん,拾かあさんは私にいい成績をとらせたいと思っている。
一64一
質問順 達成の動機(学校)
2 なんでも友だちよりまじめにやりたへ 6 どんなことでも友だちにまけたくない。
1O 嫌い在科目でもいっしょうけんめい勉強したい。
14 少しぐらい体のぐあいの悪い時でも勉強しなくてはならないと思う。
18 勉強がむつかしくても途中でやめたくない。
22 競争などの時,さいごまでがんぱりた㎞
26 成績がよくなるようにしっかり勉強したい。
30 先生が拾られなくてもまじめに勉強した㎞
34 テストの成績について先生がどう思うか気にな&
38 先生にいわれなくても1人で勉強したい。
社会的承認の動機(家庭)
3 拾とうさんや拾かあさんがもっと自分のいうことを聞いてくれたらよいと思う。
7 恰とうさんや捨かあさんのいいつけぱかり聞かなくてもいいようになりたい。
11 家てば私の思いと拾りにさせてほしい。
15 運動会で1番になって拾とうさんや券があさんからほめられたい。
19 いい絵や作文をかいて拾とうさんや拾かあさんからほめられたい。
23 学芸会で劇の主役になって・拾とうさんや拾かあさんからほめられたい。
27 、委員(係り,当番)になって,春とうさんや拾かあさんから仕事がよくできると 思われたい。
31 しっかり勉強して捨とうさんや蜘かあさんやきょうだいからほめられたへ
35 捨とうさんや拾かあさんに口ごたえをしたくない。
39 拾とうさんや拾かあさんから子供あつかいされたく在い。
社会的承認の動機(学校)
4 先生から子供あつかいされたくな〜
8 先生に口ごたえをしたくない。
12 しっかり勉強して先生からほめられたい。
16 委員(係り,当番)になって友たちから仕事がよくできると思われたい。
20 学芸会で劇の主役になってみん在から認められたい。
24 いい絵や作文を書いて先生にほめられたい。
28 自分のしていることをもっと先生に認められたい。
32 運動会で1番になり・みんなから拍手されたい。
36 気のあわない友だちとでもなかよくやっていきたい。
40 友だちのいうことをよく聞いてあげた㎞
手続き 調査はそれぞれの学級で集団的に行なわれた。まず,「これからすることぱテストでは ありません。また,学校の成績にも関係ありませんから気軽にやってください。」といって拾いて から調査用紙を配布した。調査用紙には,学校,学年,組,氏名,性を記入するところと,誘査項 目の番号が1から40一までプリントしてある。一方,担任教師にはその学級で成績のよい者と成績 の悪い者を男女それぞれ3名ずつ選ぶようになっているプリントを手渡レ記入してもらった。
次に,「これから読むものには,皆さんの学校や家での生活についていろいろなことが書いてあ ります。例えば勉強のこと,拾手伝い,学芸会,運動会,拾とうさんや拾かあさん,先生,拾友だ 一65一
ちなどのことが書いてあります。そのようなことについて,皆さんかどう思っているか,どんな気 持を持っているかということを調べたいと思います。やり方ば非常に簡単です。私が文章を読みま すから,もし答えが『ばい』のとき,または自分の気持ちと同じときには,番号をOでかこんでく ださい。もし答えが『いいえ』のとき,または自分の気持ちとちがうときにぱ番号にXをつけてく ださい。 (解答の仕方を板書する)1正直に思ったと治りに答えてください。それでは今から1番 から順に40番まで文章を続んでいきます。皆さんは私が1つの文章を読み終ったらすぐ,思った と恰りO またはxを必ずつけてください。」教示につづき,番号と項目を2度ずつぱっきりとわか りやすく読みあげた。全員が回答したことを確認してから次へすすんだ。2年生に対しては質問の 内容と回答の仕方についてよく理解させるよう留意した。
称賛。叱責との関係をみるのには次のようなやり方をした。まず,動機の測定を行なってから,
田中B式知能検査からとり出した置換問題を3分間行なった。この作業にさいしては,クラヌの中 で誰が一番いっしょうけんめいやるかを調べること,明後目成績を発表することが強調された。第
2回目の作業を始める前に,○印かx印が書いてある紙を各人にわたし,O印の者は一昨目のテス トが大変よく,間違いもなく正確にできたこと,×印の老ぱあまりできなく,間違いが多かったこ とを告げる。そして前日と同様,3分間の作業が行なわれた。
結 果 と 考 察
発達的傾向と性差 得られた資料を各項目について「ばい」と答えた場合に1点,「いいえ」と 答えた場合にO点を与えて採点した。表4ぱ学年別に2つの動機に関する領域ごとの得点の平均値 を示したものである。さらに表5はこれを男女別にし,合計点のみで示したものである。これら全 員の資料にもとづいて,合計点で2つの動機の発達的傾向と性差をしらべるため3×2の分散分析
(;岩原,1965,P.285)を行なった。その結果,まず達成の動機に関しては,学年と性の主効 果がそれぞれ互(2.1388)=50−64,王く.O1;旦(1.1388)畠5g.5g,王<。O1 でともに有意となった。つまりこの動機は学年が進むにつれて減少し どの学年でも女子の方が男 子よりも強いといえる。一般に,達成の動機は年令とともに発達するといわれているが(下山,
1968)・我々の結果はこのことと矛盾している・しかし,これば主として測定法によるちがいで ぱないかと思われる。つまり,諸否法によってあらかじめ作られた質問項目に対して答えさせる場 合と投影法的なやり方で自発的な出現量を見る場合のちがいであるかもしれない。次に社会的承認 の動機に関しでは,学年と性の主効果がそれぞれ 里(2.1388)目156,82, 王く.O1;
里(I,1388)三12.35,王<.O1ではやはり有意となった。したがって,この動機も学年が 進むにつれて減少しどの学年でも女子の方が勇子よりも強いといえよう。学年の主効果ばか在り 大きいので発達段丘皆によるちがいが著しいといえる(15.9わ11.99)。また,女子が男子に比べて 強いのは,女予の方が社会内望ましさに対して敏感で,他人が与える承認や称賛在との影響を受け やすいことを示唆してい&
パ セン4イ1レ値表の作製 表6ぱ2つの動機それぞれについて,学年別,男女別にパーセンぷ イル値を示したものである。これによって本研究で用いた質問項目を使用する場合,個人の集団内 に拾ける位置づけを知ることができる。
学業成績との関係 表7ぱ担任教師に依頼した成績に関する資料から,該当する者を抽出して2
一66一
妻4 2年,4隼,6年生の達成拾よび社会的承認の動機
達成の動機 社会的承認の動機
学年 人数
学校 家庭 合 計 学校 家庭 合 計 2 年 467 8,82 9.12 17.94(2.22) 7,46 8.48 15.94(2.47)
4年 492 8,10 8.52 16.62(2,96) 6,62 7.35 I3,97(3.52)
6年 435 ?.86 8.06 15.92(4.Oの 6,08 5.91 11.99(4.02)
()内はSD
表5 男女別平均
学年 性 人数 達成の動機 社会的承認の動機
2年
男女 243
Q24 P8.4317.49
15.60 P6.3I
差 一〇.94 一〇.71
4年
男女 272
Q20 16.12P7.23
13.81 P4.15
差 一1.I1 一〇.34
6年 男 228?207
15.09 P6.84
11.57 P2.44
差 一1.75 一〇、87
表6−1 達成の動機のハーセソクイル値
学年 2年 4年 6年
性 男 女 男 女 男 女
人数 243 224 272 220 228 207
1%i■θ 8.4 12.1 5.9 9.1 4,5 9.I
5 1I.8 15.2 9.6 11.3 7.9 12.3
1O 13.2 16.O 1O.7 13,2 11.1 13.3
20 15.3 17.O 13.2 15.1 12.7 14.4
30 16.3 17,4 14.6 16.O 14.O 15,3
40 17.O 17.8 15.5 16.8 14.8 16.2
50 17.6 18.2 1613 I7.4 15.7 16.7
60 18.2 18.6 17.1 17.9 1614 17.3 70 18.7 19.O 17.7 18.3 17,1 17.9
80 19.2 19.3 18.3 18.8 17,7 18.5
90 19.6 19.7 18.9 19.4 18.7 19.O
95 19.8 19.8 19,4 19.7 19.3 19.5
99 19.9 I9.9 19.9 19.9 19.9 19.9
一67一
表6−2 社会的承認の動機のパーセン4イル値
学 年 2 年 4 年 6 年
性 男 女 男 女 男 女
人 数 243 224 272 220 228 207
1%iユθ 7.1 8.3 4.6 4.6 3,O 4.O
5 1O.O 11.8 7,3 6.O 4.3 6.O
1O 116. 13.2 8.5 8.6 5.5 6.9
20 13.3 14.3 1O.5 11.3 6.9 8.4
30 14,2 15.1 11.8 12.7 8.2 9.5
40 14.9 15.5 12.9 13.6 9.5 1O.6
50 15.4 16.O 13.6 14.3 11.3 11.7
60 15.8 16.5 14.5 I5.O 12.7 13.4
70 16.4 16.9 15,3 I5.8 13.9 14.4
80 17.8 17.6 1o.1 I6.5 15.3 15.5
90 18.4 18.5 17.5 17.4 16.7 17.1
95 19.1 19.1 18.3 18.2 17.8 18.3
99 19.8 19.8 19.6 19.3 18.7 19.3
表7 成績別平均
学 年 成績 社会的承認の動機
■o
2 年
上位
コ位
人数 I達成の動機80 18.6482 17.54
15.58 P6.04
差 1,1O 一〇.46
4 年 上位1 84
コ位i・・ 16.58P6.OO
14.04 P4.52
差 O.58 一〇.48
6 年
上位
コ位
78
V8 16.01P6.17 11.59P2.58
差 一〇.16 一〇、99
成績別平均
つの動機と成績との関係を示したものである。ここで人数が不ぞろいになっているのぱ,教師によ って選ばれた被験者が欠席していた場合と,全項目に回答していなかっ走者があったためである。
3×2の分散分析の結果,達成の動機てば学年と成績の主効果がそれぞれF(2,476)昌28.61 エ<.O1;旦(1,476)呈4.54,エ<.05で有意となった。また交互作用がF(2,476)
目2.36で有意水準に近い(F昌2.99で5%水準〕ので,この動機は低学年てば成績のよい者の方 が強く。高学年てば成績によるちがいがなくなる傾向があるといえよう。一方,社会的承認の動機 については学年と成績の主効果がそれぞれ旦(2,476)呂50ワ8・王く.O1;旦(1,476)=
4.50,P<.05でやはり有意であったが,交互作用は有意ではなかった。表6で見ると,この 結果は成績の悪い者の方が成績のよい者よりもこの動機が強いことを示している。
知能との関係次に,2つの動機と知能との関係をしらべるため,得点が80パーセン4イ1レ以
一68一
上の者と20ハーセンタイ・レ以下の者を選出レそれぞれの動機の上位群拾よび下位群とし地表 8はこれらの被験者の知能指数を示したものである。
妻8 達成拾よび社会的承認の動機と知能
達成の動機 社会的承認の動機
学年 性
上 位 下 位 上 位 下 位
2 年
男女 110.62(57)
P0631(63)
102,23(41)
P03.90(41)
1O1.36(43)
P05.45(58)
105.64(37)
P06.80(28)
全体 108.36 103.07 103.71 106.14 4 年
男女 105.96(68)
P09J3(78)
104.67(49)
h07.50(41)
I04.83(54)
P12.81(59)
109.36(42)
P13−07(35)
全体 107.65 105.96 109.OO 111.05
6 年
男女 105.48(?③ P02109(55)
102.44(31)
P1O.44(31)
1OO,13(52)
P02.04(47)
108.33(30)
P07.44(32)
全体 104.02 10644 1O1.04 107.87
()内ば人数 知能指数は便宜上それぞれの学校で実施されているものを用いたので田所式,学研式,京大N Xの
3種類が含まれている。また,偏差値で示されている場合は次式により指数に換算した。I Q呂 3
(I S S−50)Xラ十I O O これらの値について・それぞれの動機ごとに動機の水準・学年拾よ び性を含む分散分析を行なっ地その結果,まず達成の動機てば主効果はいずれも有意でなく,動 機の水準と学年(F日3.64,む≡2,616,1Pく.05),動機の水準と性(Fミ5.42,砒≡
1,616,:P〈.05)の交互作用が有意となった。すなわち,動機と学年の交互作用は達成の動 機が強い者はそれの弱い者よりも低学年では知能が高く,逆に高学年ではむしろ知能が低いことを 示している。この結果は先の成績との関係とほぼ対応している。したがって,低学年てば成績のよ い者や知能の高い者の方がそれの悪い または低い者よりも達成の動機が強く,高学年でばそのちが いがあまりなくなると結論されよう。また,動機と性の有意在交互作用から,男子てば上位群と下 位群の問で知能の差が著しいが(それぞれ107.12と103.27),女子でぱそ〃至と両者間にちか いがない(同順に10625と107.OO)ことが示唆される。知能や学業成績と達成の動機について は林ら(1962)も研究して拾り,彼らば中学生で一定の関係は見られなかったと報告している。
しかし我々の結果とは測定法も異なるので直接比較することはできないかもしれなへ 次に,社会的承認の動機については,3つの主効果がともに有意となった。動機の水準,学年,
性の順にそれぞれ里(1,505);6.99,王<.O1;里(2,505)=5.61,王<.O15 F(1,505)目3.91,Pく.05。しかし,達成の動機の場合とぱことなり交互作用はすべて有 意にならなかった。これらの結果は成績との関係とよく一致している。したがって,社会的承認の 動機の強い者は,それの弱い者よりも知能が低く,成績が悪いといえよう。これば知能の低い者や 成績の悪い老が,教師や級友,あるいは親などからあまり認められていないので,逆に認められた いという欲求が強いためでぱ在いかと考えられる。
2つの動機の相関 達成の動機と社会的承認の動機の相互関係をみるため,便宜上,本調査対象 一6g一
校のうちの2校のみの資料を用いて,2つの動機の得点の相関係数を算出した。表9はこの結果を 示したものである。表で明らかなように,2年と6年てば2つの動機の間にかなり高い相関が見ら れたが4年てば相関が低かっ地
表9 達成の動機と社会的承認の動機の相関
学年 2 年 4 年 6 年
性 男 女 男 女 男 女
人 数
?関
145
D394
144
D353
162
D185
118
DI68
131
D538
112
D何1
七一 3.05 4.49 2.38 1.84 7.24 4.73
2 *} {ホ 書 * }*
5%水準 *ホ I%水準
称賛・叱責との関係 表10ぱ4年生と6年生について,置換問題の成績を示したものである。
この値は第2日目の作業量から第1日目のそれを引いた増加量であって,大きいほど2日目の成績 が向上したことを示す。
表10 置換問題の成績(2日目一1日目の平均)
4 年 6 年
男 女 男 女
賞 20.1 19.7 23,4 30.2
達成の動機 古同低
罰賞罰 I6,2 18,7 Q2,2 24,3 P7,4 24.5
3415 26.I Q1,8 33,3 Q8,2 21.4
賞 15,9 31.5 36,2 29.1 高
罰 22,2 21.O 35,1 26.3
社認
?フI動
ウ機 低 賞罰 19.7 2213 21,5 22.4
24,7 15.2 20,7 27.6
各細胞の人数が異なるので,重みをかけ危い平均による高低X称賛・叱責X性の分散分析を各学年 の動機ごとに行なっ地その主な結果は次のと拾りである。 (1)4年生の社会的承認の動機てば,
高低×性の交互作用が里(1,1I2)目4.23,王く 05,称賛・叱責X性の交互作用が旦(1,112)
目7−67,里く.O1で有意になった。前者は,称賛と叱責をこみにしたときに高動機群てば男子が 19,1,女子が26.3となって,女子の成績が有意によいが,低動機群てば性差がないことを示してい る。後者の交互作用は,称賛された男子ば17.8で女子ば26.9となって女予の成績が有意によくなっ ているが,叱責されたときには性差がないことを示している。特に,高動機群の女子は称賛によって 著しく向上することがわかる。 (214年生の達成の動機については,主効果,交互作用すべて有意 でなかった。 13〕 6年生の社会的承認の動機てば動機の主効果が有意であり(F田6.93,砒国
1,I12,星<.O1),全体として承認の動機が高い老の方が2回目の作業に拾いてよりよい成績を 示している。これは称賛あるいは叱責が承認の動機を活動的にしたものと考えられる。 (4) 6年生
一70一
の達成の動機てば称賛・叱責X性の交互作用がF(1,112)=8.96,P<.O lで有意であった。
これば称賛されたときは女子(31.8)が男子(22.6)よりもよい成績を示し,叱責されたとき は男子(3I.4)が女子(23.8)よりもよいことを示している。
以上のように,動機の強さと称賛・叱責との関係については予想された結果が得られなかった。
われわれは,動機の強い者に対しでは称賛と叱責がより分化的に作用するのではないかと考えたの であるが,たとえば,6年生に拾いでは,社会的承認の動機が高い者は,称賛。叱責の何れによっ ても成績が向上している。このことば,少なくともこの動機については,称賛も叱責もともに動機 の強い者に対して有効に作用することを示唆している。今後,このような問題についてより厳密な 研究が必要であろう。
要 約
小学生の達成拾よび社会的承認の動機を発達的にしらべ,学業成績,矢口髭右よび姓との関係を明 らかにするため,2年,4年,6年生の男女あわせて1394人を対象に40項目よりなる質問を実 施しその回答を分析した。その結果,達成の動機は,(a)学年が進むにつれて減少し,どの学年 でも女子の方が男子よりも強く, (b)低学年では成績のよい者や知能の高い老の方がそれの悪い または低い者よりも強いが,高学年でぱそのちがいがなかった。また,社会的承認の動機は, (a)
学年が進むにつれて減少し,どの学年でも女子の方が男子よりも高く,(b)どの学年でも成績の 悪い者や知能の低い者の方が,それのよいまたは高い者よりも強かった。別に,4年生と6年生で
2つの動機と称賛。叱責との関係が調べられ,2,3の結果が得られた。
引 用 文 献
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E dward8, 八 工1. 1954 瓦d珊ards Pθrsona1 PFefe renoe s cbθduユ高 ]M anuaユ. Nθw Y ork:
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下山剛 1968学習と動機づけ(一)学習動機の諸要因 児童心理 22.1786■1803 杉村健1967小学校4年生と6年生の学習動機奈良教育大学教育研究所紀要 第3号,45−52.
杉村 健 1968小学生の学習動機 奈良教育大学教育研究所紀要 第4号,29−34
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(付記)本研究にあたり,伏見小学校,東市小学校,飛鳥小学校,高田小学校,枚岡西小学校の校 長先生はじめ諸先生方に加世話になり まし旭 また,資料の蒐集と整理には藤田正,仲村次郎の両 君をはじめ,心理学専攻生諸君のご協力を得 ました。記して厚く感謝し重す。
(注) 本研究の執筆者のうち,山本順子は心理学教室卒業生である。
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