NDC 54L 62
イットリウム系超伝導薄膜のバイアス電圧効果 原田 寛治 池田 洋一 板倉 博志噸
Bias Voltage of YBa2Cu307.. Superconducting Thin Films
Kanji Harada Youiti lkeda Hirosi ltakura Abstract
Superconducting thin films of Y−Ba−Cu−O on MgO(100) were fabricated using the process of RF sputterring technlque under bias voltage, and it s characteristics were measured and evaluated. The target used here was Y−Ba−Cu−O pellets. This experiment put the substrate at off−centerd position for the target. The substrate electrode was biased to protect the films from the bombardment of the charged particles. Within 10s after deposition, pure oxygen was introduced into the sputterring chamber at about 105Pa, and the substrate was quickly cooled down to room temperature within a few minutes. Thus, no special annealing was performed after film growth. The films have a Tc of about 40K using the cryostats with the mechanical compressor.
1. 緒 言 2。 薄膜の作成方法
超伝導エレクトロニクス素子は従来液体ヘリウム中で利.
用することが前提であったが、そのような限定条件下でさ え広大な応用分野において使用しうることのできる高性能 な特性を有していると考えられていた。
酸化物超伝導体の出現に伴って1)一2)、液体窒素中で動作 するジョセブソン素子やSQUID素子などの超伝導エレ クトロ素子への可能性が益々高まってきた3)一S)。高温超伝 導体の薄膜は臨界電流密度がバルクや線材に比べ、早い段 階から飛躍的に高い値を達成し、品質の良さが評価されて いる。液体窒素は、液体ヘリウムに比べ取り扱いが簡単で、
また安価であることから、今後飛躍的に応用分野の開発が 進むであろうと予想される。また単結晶膜を利用する超伝 導機構の解明や新材料の発見などの期待もあり、高温超伝 導薄膜の研究は意義あるものである。
本論文では、以前報告した焼結体ペレットをタV一一デット に用いた薄膜の作成法を発展させ9,、化学量論比Y=Ba
:Cu=112:3の超伝導体を用い、なおかっ特別な焼 きもどしをせずに、スパッタリングした薄膜を基板バイア スを工夫することにより、約40[KIで、超伝導となる薄膜 を作成する事ができたので報告する。
* 電気工学科
** 電気工学科平成3年度卒業生,現在長岡技科大学生
*** 電気工学科平成3年度卒業生,現在東洋キャリア㈱勤務 平成4年8月31日 受理
2・P1. ターゲットの作成方法
一般に酸化物超伝導体は、原料粉末を混合して成形し、
高温で焼き固める粉末冶金法と呼ばれる方法で作られてい る。この方法は単体化合物である原材料を一定のモル比に なるように混合し、900[℃]ぐらいで加熱し仮焼成す る。一回の仮焼成では完全に反応が終了してしまわないの で、これを再び粉砕混合し仮焼成を行う。この操作を数回 繰り返した後、粉末をペレヅト状に加圧成形し、950[
℃]ぐらいで加熱し、本焼成を行い酸化物超伝導体となる。
本研究ではスパヅタリング用ターゲヅトのペレットの製 作にあたり、この粉末冶金法を採用した。原材料はYBa
Cu(1:2=3,フルウチ化学,形SF−1230,po
wder)を用いた。蒸発皿に原材料を入れ、一それを電気炉(
ヤナコ製,形YFM−103)に入れ、5【℃加in]の温 度上昇速度で900[℃]で5時間仮焼成した。その後2
[℃加in]の割合で室温まで降温し、原材料が固まってい るので、乳鉢で粉砕、混合した。これをもう一度蒸発皿に 入れ同様に仮焼成を行う。この仮焼成を3回行う。
この仮焼成が終了した後に、成形する媒質として少量の エチルアルコールを加え、1インチプレス器.(BUEHL
ER USA,形S工MPLIMETII)により5分間、
5[MPa]の圧力で加圧成形した。これにより重量12
〜20[g]、厚さ4〜7[mm]、直径31[mm]の
ペレット状のものが作成された。これを再び電気炉に入れ、
津山高專紀要 第30号 0992)
仮焼成と同様の焼成方法で本焼成を行いターゲットを作成
した。
2−2. 基板の選定
薄膜作成に用いられる基板は、 (1)酸化物薄膜の成長、
(2)デバイス化への配慮、などの観点から選択される。
まず(1)から考えると、膜成長は高温低酸素雰囲気中 で行われるので、そのための損傷を受けない基板材料が好 ましく、酸化物またわ非酸化性金属が使用される。さらに、
基板の格子定数が酸化物超伝導体の定数に近い場合には薄 膜は結晶軸が基板に対して配向したものになる傾向があり、
結晶形、格子定数やその膨張係数の整合性がよければエピ タキシャル膜も作成することができる。
次に(2)について考えると、熱伝導度、面積などの問 題点を克服するものでなければならない。またエレクトロ ニクス回路への応用という点からみると、Si、SiO2、
A1203、などへの成膜が行われている。
SrTiO3、MgOはY−Ba−Cu−Oとの格子の整
合性が良く、また反応性が少ない点などから当初より基板 として用いられている。LaGaO3、 LaAlO3は超伝 導薄膜用基板として開発され、最近柱目されてきたもので あり、SrTiO3と同様、ペロブスカイト構造を有し、格 子整合性も良い。しかし、シリコン基板上への成膜では、
格子定数の違いとともに、シリ.コンが膜と反応してしまう という問題がある。また、スパヅタリング中の基板温度は、
基板を加熱するとともに、プラズマ中にさらされているこ とも含め1000[℃]前後になると思われる。これらの ことを考慮し、本研究では融点が280q[℃]と比較的 高く、経済的であるMgO基板を使用することにした。ま た薄膜の成長方向を制御し、C軸配向にするために、基板 の面方位を単結晶の(100)面のものを選択した。
成する上において、荷電粒子による成長面衝撃を低減させ ることが本質的に重要である。また、スバヅタリング法の 利点としては、基板との付着力が強いことや、高い酸素分 圧下での成膜が可能なことである。しかしY系のような化 合物のスパッタリング薄膜の問題点としては、スパッタリ ングによる組成の変化が挙げられる。スパヅタリングの過 程で化合物は原子、分子に分解されることが多く、そのと き揮発性、あるいは蒸気圧の高い分子は薄膜の申に全部取 り込まれることにならず、ある組成の欠乏を生じる。この 欠点を克服し、組成の適正化をはかるのが放電ガス中に反 応性ガスを混入する反応性スパッタリングである。本研究 ではY系超伝導体の.中の酸素が揮発性が高いので反応性ス パッタリング法を採用し、アルゴンガスに酸素を加え、そ の比率は1:1にしスパッタリングガスとして使用した。
また、基板加熱をしているために、スパッタリングを終わ ると同時に膜中の酸素の離脱を防ぐために基板を酸素雰囲 気中に浸す02クェンチ法を用いた。
また装置内で薄膜が形成されるとき、基板(MgO)も 負イオンでたたかれているので、ある程度スパッタリング されている。これを最小限にとどめるために基板の放電に 対する位置関係が重要になる。基板をターゲヅトに対向の 位置におくと放電粒子が垂直に衝突し基板のスパヅタリン グが激しくなり、成長した膜が削りとられてしまう。これ を抑制するために図1に示すように基板をターゲヅトの中 心より90度ずらした斜め上に設置し、さらにバイアス電 圧を変化させ、特性への影響を調べた。
表1に薄膜の成膜条件を示す。出力は150[W】、圧力
はAr十〇2ガス(1:1)100[mTorr]、ガス流 量は4[SCCM]として行った。スパッタリング時間を 変化させ膜圧を調べると、図2のように比例関係があるこ とがわかった。尚膜厚は、塩酸を用いたウエットエッチン グによりパターニングしたものをTENCOR alpha−step200に より測定した。
2−3 薄膜の製作方法
2−4,膜特性の評価 薄膜の作成方法にはCVD法や、 PVD法が一一般的に知
られているが、本研究ではPVD法の中でも最も簡単に成 膜ができる、高周波スパッタリング法により薄膜の作成を 行った。スパヅタリング法は、一般に取り扱いが容易であ り、装置も安価であることから、最も広く用いられている 薄膜化技術の一つである。また、再現性に優れ、積層膜の 形成も容易であるという特徴を有することから、電子デバ イスの作成技術として有効な手段の一つと言うことができ る。しかし一連の酸化物超伝導体の作成においては膜組成 が複雑であるうえ、それぞれの原子の結合力が弱いた.めに、
通常のスパッタリング法では良好な特性を持った高温超伝 導薄膜を得ることは極めて難しい。現在、スパッタリング 法において指摘されている問題点の一つに、荷電粒子によ る膜の成長面衝撃があるte)。荷電粒子としては、スパッタ リング中にターゲットから放出されるイオン、γ電子等が
作成したYBa2Cu307−xYY膜のY, BaおよびCuの
組成比は E PMA(Electron Probe Mcro Analysis)によ り測定した。すなわちY−Lα,Ba−Lα, Cu−Kα 線の強度を計測した。ただしMgO基板を用いた場合、 Y
−Lα線と基板のMg−Kα線の波長がほぼ等しいため、
重なって検出される。このため測定した組成に関してはB aを基準として比率を計算した。
また、膜の結晶構造、表面形状をそれぞれX線回折、S
EMにより測定した。さらに、膜の超伝導特性を評価する
ために四端子法により抵抗率の温度依存性の測定を行った。
イッFリウム系超伝導薄膜のバイアス電圧効果 原田・池田・板倉
Table 1. Sputtering conditions タv一ゲヅト
ターゲットの直径 基板
スパッタリングガス ガス流量
ガス圧 電源出力
スパヅタリング時間
YBa2Cu307.x焼結体 1インチ
Mgo(loe)
Ar+02 Ar:02=1:1 4 [SCCM]
50NIOO [mTorr]
150−v200[W]
40一一 150 [min]
Table 2. Five sputtering cOndition, Latties constant and film composition with different bias voltage.
5
4 3 2 1
︵≦︶の路Zビリ壬卜Σ﹂に
o
o o
番 号 バイアス電圧 格子定数 組 成 比
(V> (n臨) (Y;Ba:Cu)
920121 一60 1,178 1.91:2。00:2。84
920123 一30 1,178 1.94:2.00:3.02
911213 0 1,163 1.82:2.00:3.20
911225 +30 1,175 1.81:2.00:3.30
911226 +60 1,174 2.40:2.00:3.23
o ed一 mo
SruT[EwtNG ME(mln)
Fig.2 Sputtering versus film thickness・
3e 実験結果及び考察 3−1 バイアス電圧と表面形状
180
表2に示すような作成条件について膜表面の形状の変化 について測定を行った。
条件に対応す1る表面SEM写真を図3(a)〜(e)にそれぞ れ示す。スケールは(a)〜(e)すべて同じである。図3(a)、
(e)に示すようにバイアス電圧が高いと表面の凹凸大きく、
図3(b)、(c)、(d)のようにバイアス電圧が低いと凹凸が小 さくなっていることがわかる。
このことは基板電位が入射するスパッタリング粒子のエ ネルギーに大きな影響を与えていることを示す。
7ff dEil[ ]
si
M90(100)s
TNtgEI一,GET.fcst31:,KG
CA丁HODE.
A
v
3−2 結晶性
表2に示すような作成条件で作成した膜のX線回折パタ ーンを図4に示す。同旨に示すようにYBa2Cu307.×構 造の(001)ピークのみ観測され、得られた膜は。軸が 基板に対し垂直に優先配向したYBaaCu307−x単一相で あることが分かる。また、c軸長については、測定結果よ り最も反射強度の強かった38。付近の(005)配向に ついて計算を行った結果。=1.165〜1.180n田であった。
Fig.1 Electrode and substrate geometry of the Rf−
spttttering. This substrate configuration avoids the bombardment of high−energy charged particles.
3−3 膜組成
表2に示すような作成条件で作成した膜の膜組成を表2 に示す。膜組成は作成条件にはほとんど依存せず、EPM Aの誤差範囲内(10%以内)でほぼストイキオメトリツ
クな組成が実現されていることが分かる。
津山高専紀要 第30号 (1992)
(a) 911226 .60V (b) 911225 +30V
Sptt/it
{c) 911213 OV (d) 910123 一30V
懸二郷麟語
.塾皇.;一. .竃
(e) stolm 一60v
Fig.3 SEM images under five different cnditions shown in Table 2.
(
.コ.σ︶ ︾ト一uり重en/1.226(.60V)
om225(+30V)
en1213 C OV)
gen23(一sov)
enOT21{一60V}
20 2S 30
2e (degree)
35 40
to
0 5
285匡\︹じに
9101Z3(一30V)
鯉13((N)