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社会資本の管理 と会計情報

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(1)

社会資本の管理 と会計情報

一英 国 にお け る財政 ・会計制度 改革 と我が国で の課題 ‑

山 本

1.はじめに

(1

)政府会計の特質

政府会計 に対する批判の多 くは,政府会計が企業会計 と異な り資金収支会計 に留まっている点に向けられている。「前近代的」な会計制度ではス トック情報 が得 られないため財政状況が把握できず,フローとス トックの有機的関連を勘 案 した財政運営ができない,また,会計責任の観点か ら受託 した公的資源の管 理に対す る情報提供が不足 していると指摘 されている。確かに会計情報の質, 特にコス ト情報に関 して政府会計が企業会計 に比 し劣 っている面 は否定で きな い。 しか しなが ら,政府会計制度の在 り方及 び情報の有用性を単純に企業会計 の論理に基づき展開す ることは慎重であ らねばな らない。先進国 とされる英国 で,地方政府会計が経常収支 と資本収支を区分 し,連結貸借対照表を作成 して ス トック情報を提供す る発生主義 に近 い ものであるのに,

Skous e n ( 1 9 9 0 )

によると予算過程で単位 コス ト情報が提供 されている比率 は約

1 5%

にす ぎない̲̲ のである。そ して,中央政府では依然 として資金収支会計が継続 してお り,企 業経営の要素を積極的に政府活動 に導入 したサ ッチャー前首相でさえ外部報告 制度 として改革の対象 にしなかった事実が存在するのである。批判の前半の財 務運営については,我が国では地方債に対す る強力な中央統制のため地方財政 の放漫化が防止 されてお り,また,中央政府 において も負債の管理 は国債整理 基金特別会計を通 じて償還の確保方策が とられてお り,経済政策の関連では新

〔 1 7 3 〕

(2)

17 4

4 2

4

SNA

によ る一般政府部門の貸借対照表が作成 されていて,マ クロ的にはフ ローとス トックの関連 は保たれている。 こうした現行会計方式の財政運営 によ り財政改革の成功を もた らした とい う点で諸外国よ り劣 っていないとい う中央 政府側の反論がなされ る。一方,後半の会計責任の観点か らの批判 は,情事折 り 用者の有権者 ・納税者の情報欲求が企業の株主 ・投資家の もの とは大 きく異な

る点 を考慮 して検討 されねばな らない。すなわち,政府 における情報利用では,

Zi mmerman ( 1 97 7 )

が説 くよ うに資本化 ・集 中化 の禁止及 び等 しい持分 の ため,有権者の受託者たる政府 に対す る監視のイ ンセ ンティブが働かず情報欲 求が低下す る側面が生 じる。実際の ところ,

Dani el s( 1 991 )

による調査結果 は一般市民が意思決定 に会計情報をほとんど利用 しない ことを示 してお り,ま

But t e rwor t h ( 1 98 9 )

らによる自治体年次報告の実態調査で も,内容の理 解困難性 もあって年次報告書を見た率 は究めて低率

(3

%)であると報告 して いる。 もっとも, この結果 は

Zi mme rman

の公共選択 アプローチによ らな く とも,情事踊り用者が当該情報 にかかる主体か ら受 けるサー ビスの種類 と裁量性

・制御可能性の程度 により分類 され るマ トリックス (下図参照)で考えれば会 計 ・財務情報の意義が企業の場合 より低 くなることで説明され るものである。

国民 は政府 に投資 して利益を得 るとい うより,税等の資源を政府に委託 して教 育,福祉,国土保全等のサー ビスの提供を受 けるものであるか らである。以上 の ことは,政府組織における意思決定で会計情報の有用性が限定 されているこ

と,換言すれば企業会計導入 による会計情報活用で資源管理が即,合理的にな く情報利用者と会計情報の需要 >

サービス 裁量可能性

財 務 A B

A:

支配株主にとっての企業

B :

一般株主にとっての企業

C :

影響力を有する者にとっての政府

D :

一般大衆にとっての政府

( 症)

:会計情報の需要はA,B,C,Dの順で減少 し,業績情報の需要は逆

(3)

社会資本の管理 と会計情報

17 5

るのではな く業績情報が重要な要素 となること,外部の資源委託者か らの監視 機能を補完す るもの として議会等の統制 システム及び管理機構 としての行政 シ

ステムの効率化が必要 になることを示 している。 したが って,政府会計の改革 論議 には山本

( 1 9 9 2 )

が指摘す るとお り,単 に国民 に対す る情報開示 とい う 会計責任 にとどま らず,会計情報 と政府内部の業績管理の関係 に焦点が当て ら れ る必要があるのである。

(2)分析の枠組み としての統治機構

ところで,外国の システムを参考 に して我が国の改革を検討 しよ うとす る場 令,各国の置かれている環境を十分勘案 しなければな らない。特に,政府会計 は,企業活動の国際的普遍性 (自由競争原理)か ら会計の国際的調和が図 られ ているの と異な り,国家主権 という政治 ・統治機構のなかでの政府の経済的活 動を対象 とす るため,背景 にある制度的要因を無視できない。会計か ら政治的 行動 にイ ンパ ク トを与える側面 もあるが,会計制度 は基本的に政府の政策 目的 の遂行手段たる性格を免れない宿命があるか らである。 ここでは,政府会計の 枠組 み として

Rt i de r( 1 9 8 9 )

の分類 (下図参照)を使用す ると,我が国の現 状 に近 いの は政治権力の掌握主体が行政府 にある (

3

列 に位置す る)各国 (仏,米,英)である。住民主権 といえる機構 に存 しているのはスイス,米国

<政府会計の分類 >

会計原則の法定化の程度 会計専門家の影響力 市 民 政治権力の掌握主体議 会 行 政 その

高い 強い スイス (州)

弱い

/

EC

低い 強い 米 (州)

カナダ

(4)

17 6

4 2

4 号

州政府等であり,知 る権利,情報公開か らのアプローチが説得力を有す るのは この第 1列のグループといえ る。逆説的に言えば,我が国の政府会計の改革を 考える場合,行政による統制要素を踏まえないと現実的な対応が困難になると いうことである。すなわち,一般市民に名実 とも権力があって初めて会計責任, 情報開示の意義が発生す るのであ り,我が国のような市民意識の成熟が未だ十 分でない状況では,かかる市民意識の向上を図 るとともに行政府の統制が受託 者の利益を反映 したものになるようなシステム (内部効率を高める工夫等)が 必要である

1

列の環境下では市民による直接的な統制が可能であるか ら情 報開示が最 も重要な問題 になるのに対 して,第

3

列では

Zi mme r man

の説 く 特性(「合理的な無知

」 )

か ら,資源管理に関する意思決定 は行政の内部管理 シ ステムに大 きく依存す ることになる。米国の地方政府のようにプロジェク トを 実施す るかを住民投票で決定 される政治機構において初めで情報開示効果が高 まるのである。 ここで,英国の改革動向を分析す る理 由も,まさに行政府への 権力集 中とい う実態 と議院内閣制 とい う統治機構の類似性 (仏,米 は大統領制)

に着 目したためである。

I(3

)社会資本 と政府会計

政府活動の意思決定においては,上述 した通 り外部利用者の一般市民,内部 利用者の議会,行政府を問わず会計情報の有用性 は限定 されるが, この ことは ズ トック情報について も当てはまる。 というのは,ス トックを構成す る社会資 本の調達財源を確保す る事が最優先であ り,投資が実施 される年度においてフ ローたる財政収支均衡を図ることが予算の単年度主義か ら要請 されるか らであ 特 に,我が国では社会資本整備水準が欧米に比 して低かったため,整備率 を高めることに重点が置かれ,どれだけの事業量を行 うかに財政当局及び実施 部局の関心が向け られていた。そ して,高い資本投資を行 うだけの税収増が高 度成長期に確保で きたため,ス トックの管理及び計画的な整備 という認識 は希 薄であった。 しか しなが ら,国民経済が安定成長に移行 し,財政再建が課題 に なった19

80

年代か らは租税負担率の上昇を抑制す る政策 と社会保障支 出の増

(5)

社会資本 の管理 と会計情報 777

大か ら税を財源 とす る資金調達が困難 になってきた。一方, 日米協議を受 けた 公共投資基本計画の策定に関連 して生活関連施設の優先的な整備が叫ばれ,同 時に資本ス トックが部門によっては欧米並の水準に達 し,戦後投資 された社会 資本が

2 1

世紀初頭に更新期を迎えるため,その更新財源の確保方策が一部で主 張 されている。 したが って,最近にな りス トック情報 に対す る有用性,必要性 を認識 しえる環境条件が成立 しつつあると考え られる。ス トック情報の有用性 は,規範的にス トック情報が欠 けていると主張す るだけでは不十分でそれを必 要 とする需要が発生 して受 け入れ られ るものである。 こうした状況 に対応する かの如 く,一部の 自治体 (熊本県等)で は,地方 自治協会

( 1 987 )の報告書

に基づき貸借対照表を作成 して財務分析を試行す る動 きも出ている。 この試み に対 しては会計学者,公認会計士を中心、に評価 され紹介 もされているが,得 ら れたス トック情報 による分析結果 は, 日本経済新聞

( 1 987 )

によると,

a.

予算編成への活用,

b.

分か りやすい財政現状の公表,及び

C.

コス ト意識の かん養 という作成 目的にたい して,固定資産の着実な増加,負債の増加及 び積 立金の微減 というもので現行資金収支会計 と比べ特段の情報優位を示 している

とは言えない。現行で も財産及び地方債残高 は住民に公表 されることになって いるか らである (地方 自治法243

3)

会計情報 としてのス トック情報をど のように測定 し,活用す るかを提示 しない限 りせ っか くの会計制度改革の機会 も失 って しまいかねない。 しか しなが ら,資本会計 は以下で考察す るように, 上記試行 における 「成果」よりもっと 「作成 日的」に適合 した社会資本の管理 改善に資す る会計情報を一般国民及び政府内部管理者双方 に提供できるのであ

る。そこで本稿では,まず英国地方政府の資本会計の改革動向を政治的背景 も 含めて紹介 し,ついで改革案の検討を行い,そ して我が国情 に適合 した社会資 本会計 システムとその活用方策を提唱 し,最後 に将来的な課題を述べ ることに す る。

(6)

17 8

42巻 4

2.

英国地方政府 における資本会計の改革 (1)改革の背景

英国地方政府 の会計制度 の詳細 について述べ る余裕 はないが,英国で は

Rt i de r

の分類 に もある通 り伝統的にコモ ン ・ローの性格か ら,会計基準の測 定 について も一般的枠組みは法令で決定 され,具体的な会計原則,実務 は会計 実務団体 に委ね られている。 このため,地方政府 の会計 も

1 9 8 2

年地方財政法 及 び

1 9 8 3

年会計 ・監査規則で体系が定 め られ,実務 は会計実務担 当者等の団 体である

CI PFA

(勅許財政会計協会)の会計 コー ドによっているのが現状で ある。 この

CI PFA

は前身の地方 自治体財務官 ・会計人協会 の時代か ら, コ モ ン ・ローの伝統 とは対照的に自治体間での会計標準化,統一化を目指 してい た経緯があるが,保守党 に政権が変更 された

1 9 7 9

年以降,中央政府の地方 自 治体に対す る統制強化に対応 して標準化活動を活発化 してきた。その過程で発 表 された報告が資本会計の改革案である

。1 9 8 9

年の 「地方 自治体の資本会計」

では,地方政府の会計実務の うち社会資本 にかか る資本会計の実態の欠陥を批 判 し,現行実務に替わる改革案を提示 している。すなわち,イ)貸借対照表に 計上 される固定資産及び経常収支会計 に計上 される資本費用は借入金で賄われ た ものに限定 され るため,財源調達が借入以外の方法 (資本収得勘定や経常収 支勘定か らの繰 り入れ等)による場合 と比較が困難であること,ロ)取得原価 主義のため取得時期が異なる財産価額 にもとづ く資本費用をそのまま比較で き ない,‑) このためス トックの総体が十分把握で きない, とす る。 このように

CI PFA

は現行実務が資源管理 ・使用に関す る会計責任の検証 目的に適合 しな いとして,以下に説明す る時価主義の資本会計導入により比較可能性を確保 し ようとした ものとみなせ る。

ところで, この資本会計の対象 とす る資本的支出について は

,1 9 7 2

年地方 政府法で地方債の許可が原則 として個別許可か ら一括許可に移行 して以来,主

として労働党与党の地方政府 に財政拡大, レイ ト負担の増大を もた らし

, 1 9 8 0

年地方政府 ・計画 ・土地法での金額統制,

1 9 8 9

年地方政府 ・住宅法での財源

(7)

社会資本の管理 と会計情報 17 9

統制 と統制が強化 された背景を認識 してお く必要がある。すなわち,1

9 8 0

法で も資本支出の概念 は資産売却収入等の資本収入を財源 とするものを控除 し た純支出であった。そのため,公営住宅の売却が政策的に促進 された1

9 80

代は総支出の うち財源充当された資本収入が

4

割程度を占めて資本的支出統制 が事実上無意味にな った こと,また統制対象の資本支 出項 目

( pr es c r i be d e xpendi t ur e )

とされていなかった リース契約,外郭団体の設立 という財務手 段で統制回避行動を行 う事例が頻出 した経緯に対処 して1

9 89

年法が制定 され たのである。保守党政権の政策は,公共支出の削減による政府財政の改善であ り,また経済運営上政府支出 ・投資の総額を把握 しないと有効な統制ができな いか らである。 この点を考慮す ると

CI PFA

の財源差異等を除去 した比較可 能性の確保 は

( CI PFA

自身が認識 しているかを別にして),実質的な資本支 出統制機能を有する点で政治的イ ンパ ク トの強いものであることが理解されよ

う 。

(2)1 98 9

年改革案の概要

本概要 については既に山本

( 1 9 90 )で述べているので,要点のみ記す と,

上記現行実務の欠陥に対応 して,イ)資産使用費用を含む経済 コス トを経常収 支会計で副定す る,ロ)保有資産の価値を同定化す る,‑)納税者に対する賦 課 と経済 コス トを区分する, ものである。すなわち,イ)では,資産使用のコ

ス トを管理者に認識 させ資源管理の効率化を図るため,機会費用概念で示 され る経済 コス トに近い概念 として減価償却費 と資本チャージか らなるサービス ・ コス トを算定す る。 ここで資本チャージは資産価額に実質金利 (市場金利 一物 価上昇率)を乗 じて計算 されるが,国有企業の投資評価に用い られる割引率を 適用することとしている。 ロ)では,資産価額の概念を借入金を財源 とするも のに限定せず,保有 している資産の現在の価値 (時価)で統一的に評価するこ ととしてお り,評価方法 として純取替費用 (総取替費用一減価償却累計額)杏 原則 としている。また,1

9 80

年法で規制範囲外 にあ ったファイナンス ・リー スにより使用 している資産について も

1 98 9

年法に対応 して貸借対照表の資産,

(8)

1 80

4 2

4 号

負債 に計上 される。最後のハ)では,単年度収支均衡 という政府会計の資金調 逮 (租税賦課)原則 とサービスコス トの算定を通 じた資源管理の効率化 との調 整を図 るため,経済 コス トを算定 して,その後修正処理を行 って現行の調達 ベースに割 り戻す手続 きを考案 している。社会資本投資はその使用に伴 う効用 が資本支出時に留まるものでな く耐用年数にわたり効用を発揮す るものである ため,サー ビスコス トと効用を対応 させ,消費支出と区分 して経理す るととも に時価による資本 コス ト概念を導入することは経済的合理性を有すると考え ら れる

(3

)最終案の作成 ・公表

この改革案についてはその実行可能性等を検証す るため,地方政府等に対す る意見照会 と試行がなされた。91件の返答結果 は経済概念 と会計測定概念の統 合 とい う性格のため,改革案が広範に支持 されなかったことを示 している。代 表的意見を要約す ると次のようなものがある。

・全ての資産,特 に道路等のイ ンフラス トラクチャー(以下イ ンフラとい う) に適用す るのはあま りに 「理論的」である

・資産使用チャージが取替費用による資産価額に基づ く減価償却 と純藩価の 資本 コス トで算定 されるのは 「規範的」である。提案 は学術的の ものであ

り,信頼性にかける

・政府規制 (特 に公営住宅 は1

989

年法 による会計規定の適用を受 ける) と の整合性の確保をどうす るのか

・資産評価方法の基準 として市場価格 と機会費用のいずれを使用す るのか

8

試行 自治体の結果は,特 にイ ンフラに対 し資産使用 コス トを課す ることに 一般的な支持を与えなか った。サ‑ ビスコス トが経済 コス トとして算定 される もの とすれば,代替的用途か ら得 られ る最大利益 として定義 され る費用概念

(機会費用)に基づかねばな らないが,イ ンフラの多 くは政府活動の特性か ら 継続的なサー ビス提供義務があるため代替的な用途を有 しえないか らである。

これは,経済 と会計の統合論理の矛盾を突いた ものである。一方,会計的にも,

(9)

社会資本 の管理 と会計情報 181

インフラは適切に保守 されれば永久的にサー ビスの提供を継続できるか ら,更 新を前提に した資本会計 としてでな く修繕会計アプロ‑チによる期間対応が現 実的であると批判 された。

これ らの意見を踏 まえ

CI PFA ( 1 9 9 0 )

は当初案か ら次の点 を変更 した最 終案を公表 し,

1 9 9 4

年度か らの本格的実施を行 うこととしている。

イ)インフラについては従来通 り歴史的 (取得)原価 による評価 とし,滅価債 却 は行わない。ただ し,資本チャージ (物価上昇を割 り引かない率 :

4

%,イ

ンフラ以外 は

6

%) とアモーチクイズ (消却) は経常勘定 に課 される。

ロ)サー ビスコス トの計算方法 として,資産使用チ ャージが減価償却 と資本 チャージか らなるとい う拘束条件下でフレキシブル ・アプローチを容認す る。

‑)公営住宅については

1 9 8 9

年法の住宅経常勘定 に対す る財務規定を適用 し, 本改革案を適用 しない。また,直営労働

( DLO)

,サー ビス組織

( DSO)

ついては

1 9 8 0

年地方政府 ・計画土地法及 び

1 9 8 8

年地方政府法による利益率規 制の時価会計が優先す る。

(4)

他の財政 ・会計制度改革 との関連

政府会計の改革の場合 は,政府が一定の政策 目標を達成する為の手段的性格 を帯びるか ら, この観点を無視 した会計技術的合理性で改革を評価す る事は危 険である。地方政府の資本会計の場合 も,

CI PFA

の検討 グループに環境省 と 地方監査委員会の代表が参加 していること,

CI PFA

自身が地方財政部門の強 力な専門家集団であり,上位職位につ く場合その構成員であることが資格条件 となっている点を勘案 しなければな らない。なによりも,保守党政権が 目指す 小 さな政府実現には政府支出の削減 ・抑制が必要であり,その手段 として自治 体の行政サー ビスの効率化

( val uef ormoney)が挙げ られている。そ して,

効率化を評価 し,統制す るには各 自治体を相互 に比較できるサー ビスコス ト情 報を必要 とす るか ら,

CI PFA

の統一的な基準 による測定データ作成 は重要な 政策的意義を有す る。資源管理に関す る会計責任 という住民 と政府 との水平的 関係を重視 し,住民による監視をコス ト情報等の開示及び居住用資産 レイ トに

(10)

1 82

第42巻 4

代わる人頭税 (全員均等額納付)の導入 (廃止が決定 したが)により強化 しよ うとした形式 と同時に,かか る情報 による中央政府の地方政府に対す る垂直的 統制を強化す る実質を制度改革の正否を別に して認識 してお くべ きだろう。

一方,中央政府 において も,

CI PFA

の資本会計改革 とはぼ同様な会計制 度改革が公的医療制度である

NHS

(国民医療サー ビス)において行われてい

。1 9 91

4

月か ら適用 された新 システムは,病院サー ビスにつ いて時価評 価に基づ く減価償却費 と資本 コス ト (金利

6

%)か らなる資本チャージを課す ことになっている。そ して資本会計の導入理由は,現行実務が我が国の政府会 計 (一般会計) と同様

イ)資本収支が資金収支会計であるため (経常収支は発生主義)当期投資がす べて当期の支出とされ,貸借対照表に保有資産が含 まれない不完全な もので ス トック情報を欠 き,資本的資産の計画的な整備,更新が出来ない

ロ)資本的資産が借 り入れでな く中央政府か らの交付資金で調達 されるため,

無料の財」 とみなされる

‑)保有資産の情報が物量単位の もの (病院ベ ッド数等)に限定 され,資産の 取得時期及び質の要素が反映されない代理指標であ り適切な判断を行えない という欠陥を有す るため, これを克服す るもの とされている。 しか し, こうし た会計制度の改革趣 旨に対 して,

DHS

(厚生省)のワーキ ングペーパー

( 1 9 8 9)

は資本チャージシステムの 目的を,

a)

私的医療サー ビスとの競争を促進 す るため企業会計適用の民間部門 と公的部門のコス ト比較を容易にす ること,

b) NHS

の管理者 に資本 コス トを認識 させ資本を効率的に使用 させ るイ ンセ ンティブを提供す ること, と述べている。すなわち,ス トック情報を活用 した 計画的投資 という会計的 「前進」は政策 目的か ら見事 に捨象 されているのであ り,そ こには医療市場における競争環境 (公私病院間及び内部市場 としての公 的病院間)の整備が重視 されているのである。時価主義の適用 自身,私的病院 が比較的新 しい施設を有す るため,歴史的原価主義によると資本 コス トが償却 済み資産を有す る公的病院に比 し形式的に大 きくなる事態を「修正」し,また, 設置時期等が異なる公的病院間を共通の尺度で比較可能にさせ る色彩が強 く感

(11)

社会資本の管理 と会計情報 18 3

じられるのである。

この ことは,民営化 されなか った国有企業 に対 して,(民間企業で強制適用 が見送 られた)時価主義会計が

Byat tRe port( 1 9 86 )

により合理化 され,逮 用されているのにも見 られ る。例えば,

Laps l ey ( 1 9 90 )

によると,郵便公社

( Pos tOf f i c e)

は特定建物を更新費用で,その他の建物,土地を一般市場価 格で評価 してお り,石炭公社

( Br i t i s hCoa

l) は補足会計情報 として,専門 家評価 に基づ く時価主義会計を適用 し,また,英国国鉄

( Br i t i s hRai

l) は

1 96 3

年以前の構築物を除いて時価評価 (ただ し業務用土地 は資産評価零)に よる損益計算を実施 しているとい う新保守主義の規制緩和政策 によるな ら ば,民間企業で も行える事業を国有企業を通 じて政府が行 うには,経済的コス トで算定される投資利益率が一定の割引率以上である必要があるか らである 経済的コス トは前述のように機会費用で測定されるものであるか ら,資産評価

は現在価値で示 されねばな らないのは当然の論理的帰結 となる。 ここにおいて も時価主義の資本会計がス トックの管理及び調達 という側面 と異なり,経済政 策達成手段 として用い られている側面が現れているのである。

3.

資本会計の意義 と改革案 (1)資本会計の目的 と機能

前述 したように

CI PFA

の資本会計改革の 目的は,資源管理の改善 とい う 会計責任向上 にあ り,そのなかで も資産使用 コス トを勘案 したサー ビスコス ト の測定を重視 している。 この点で伝統的な会計理論における資本会計の意義 と 際だ った差異を示 している。企業会計における資本会計は,

a)

株式会社組織 の進展 による所有 と経営の分離 に伴い発生 した資本維持概念 (経営者が株主か ら払い込まれた資本を維持す る責務)に基づ く更新資金の確保 と

b)

資産の効 用が発揮 され る期間費用 としての取得原価配分の

2

つの意義を有す るとされ る か らである。

CI PFA

は, この うち

b)

に関連す るサー ビスコス トの算定を 会計責任 と結び付けようとす るものである。比較可能なサービスコス トとい う

(12)

1 8 4

4 2

4 号

点で共通の時価に基づ く資産使用 コス トは,取得時期の価格 に基づ く歴史的原 価主義による資本 コス トより有用性が高いことは確かである。 しか しなが ら, 時価主義で算定 され るコス トが会計責任を検証す るのに妥当か否かはかな り疑 問である。なぜな らば,サー ビスコス トの決定要因には,イ)取得時点 (物価 変動), ロ)財源調達方法,‑)資産規模 ・容量及び提供サー ビスの種類,ニ) 投資計画,実施の適否,ホ)ス トックの質,へ) コス トの計算方法, ト)所在 す る地理的条件等があ り, この うち

CI PFA

改革案で対応可能なのはイ), ロ),へ)の

3

要素にす ぎないのである これ ら

3

要素が管理者で統制不能で あるとして同 じ基準 (時価評価,定額法償却,資本 コス ト

6

%)に割 り戻 した としても,残 りの

4

要素,特に‑)の規模の経済性及び範囲の経済性にかかる もの並びに ト)地理的条件の差 はコス ト比較で無視できない ものである。資源 管理の効率性 は一般 に単位 コス トで評価され るが,会計責任が管理者の統制の 及ばない要素について追求 されるな らば本来の意義を失 って しまうのは自明の 理である。民営化直前の水道公社 について環境省が単位 コス トで管理の効率性 を評価 しようとしたが, システムの規模の物理的地形的条件の差を考慮 しない と して水道公社 と政府 間の意見 は一致 しなか った(公社 内の時系列比較 に留 まった)事態

〔 DayandKl ei n ( 1 987 )参照〕 はコス ト比較 によるアプローチ

の限界を示 している さらに,資本 コス トを認識 させ るとい う点について も, 既に調達済み資産の使用 コス トを現在の管理者に関連せ しめることにな り問題 が残 る。以上の点を勘案す ると,

CI PFA

の改革案 は会計責任の向上,検証に 資す るというよ り,地方政府の行政サー ビス水準をアウ トプ ッ トとコス トの関 連で把握する基礎情報を提供す る意義か ら評価されるべ きといえる。

(2

)政府会計における資本維持概念

そうであるな らば,伝統的会計理論における資本的資産の計画的投資,更新 にかか る資本維持 は

CI PFA

の資本会計でどのよ うな意味を もっ ことになる のであろうか。

CI PFA

は,当初案で企業会計における (実質)資本維持概念 を政府会計に適用すべきかについては意見を留保 している。政府においては,

(13)

社会資本 の管理 と会計情報 185

一般住民が顧客でかっ所有者であり,同時に代議制民主主義より経営者で も ある」 として,企業におけるように所有者である株主の持分を維持す るという 経営者責務の概念を適用す ることに消極的なようである。 しか しなが ら,政府

は行政サービスの継続的供給義務を負 う経済主体であるか ら,資本的資産の効 用維持を必要 とす る。

したが って, ここでは政府サービスの継続的供給 とい う観点か らどのような 概念が妥当かを簡単なモデルで検討 してみることにす る

。Jone s( 1 9 8 2 )

によ る資本維持概念の分類を手がか りにす ると,資本維持概念には

a)当初の株主

払込資金を維持す る名 目資本維持

,b)

経営能力を維持す る実態資本維持

,C)

歴史的原価 によ る資本

‑ 0

を維持す る歴史 的ゼ ロ資本維持

( hi s t or i cc os t c api t ali smai nt ai ne datz e r o )

及び

d)

更新費用による資本

‑0

を維持す

る時価ゼ ロ資本維持

( r e pl ac e me ntc os tc api t ali smai nt ai ne datz e r o)

4

種類あり,政府会計 はゼロ資本維持であるとされている。政府会計におけ る資本維持概念には議論が多いところであるが,政府組織において株主持分に 対応する概念を必要 としない,すなわち,国民か らの納税等 は払い戻 し及び配 当を期待 しないとい う考えにたっな らば

Jone s

の見解 は妥当であろ う 実際 の ところ,

a)

,

b)

,の見解を採 る論者の根拠 は更新資金の確保にあるが,政 府の非 自律的活動 (納税義務による資源の提供)は,一定の条件下で更新資金 の留保を資産使用期間に行わな くとも資本維持を可能にす ることを以下の資金 収支モデルで示す ことがで きる。

簡略化のため財政期間を新規投資期 (

0

),償還期 (

1

)及び更新期

(2)

分 け,追加的な社会資本投資がない もの とし,各期の社会資本投資を

Ⅰ‑aG

(G

:政府支 出,

a :

投資比率),その財源内訳を公債

(1 ‑α)

,税

α

,潤 費支 出を

C‑c G (

C :消費支 出比率),公債費を

R

,税収を

T‑t Y ( Y

:国 民所得,

t:

租税負担率),公債金収入を L,利子率を r,年平均物価上昇率

p

,政府経常経費増加率 (年平均)を β,国民所得 (実質)年平均増加率を

n

とすると,各期の租税負担率 は次のようになる (ただ し,社会資本の建設 コ ス ト上昇率は物価上昇率に等 しいと仮定 している)

(14)

1 86

4 2

4 号

0

期の租税負担率

( t o) ‑Go( co+α o* ao) / Yo

1期の租税負担率

(t

l) ‑Go/ Yo*

((

1 +

β1

) cO+

(

1 ‑α0)

(

1 +r) aO)

/(

1 +pl +n

l)

2

期の租税負担率

( t 2) ‑Go/ Yo*(α2* a

O(

1 +p2)2 +co( 1 +β 2)2 ) /( 1 +p2+n2) 2 )

したが って,政府経常支出増加が物価上昇相当であるとす ると

( p2‑β2

), 実質国民所得の増大がな くとも

( n2‑ 0)

t 2‑t O‑Go

/(

1十p2+n2)2 YO 〔α2

(

1+p2)2 ‑α0

(

1 +p2+n2)2 ) +co

t(

1 +β2

)

2

‑(

1 +p2+n2)2 )

であるか ら,更新期の社会資本 に対す る公債依存度

(1 ‑α2)

が新規更新期 の公債依存度

(1 ‑α0)

と同 じである限 り税負担 は不変 となる。 この ことは 経済成長 (実質)率がゼロ

( n‑ 2‑ 0)

であって も物価上昇 に見合 う税収増加 があれば,更新資金の積立等の留保措置を必要 とせず,財政的には安定す るこ

とを示 している。

(3

)時価主義 による資本会計の意義

それでは,

CI PFA

で代表 され る時価主義による資本会計の意義はないので あろうか.

NHS

での資本会計導入 目的 との関連でいえば,会計責任への活用 には問題があることを既に述べたが,経営者 に資源管理効率化のイ ンセ ンティ ブを与える点において も問題がある。すなわち,

NHS

の改革 に対す る批判 も あるよ うに,過去 に調達 された資産 につ いて資産使用 コス トを認識す ること は,その処分不可能性 (経営者にとって資本 コス トが高いとして効率化を図る ことは当該サー ビスか ら撤退 し,民間に任せ ることを意味す る場合 もある。 こ の ことが正に政策 目的なのであるが)及び財務業績 によ らない一律の利子率設 定において必ず しも経営努力 と連動 しない欠点を有す る。 こうした点を勘案す ると,公的組織の活動効率化のための内部市場整備 に対す る基礎情報 としては 一定の役割があるものの,資本会計のデータを企業会計における会計責任や業 績評価 と同 じレベルで使用す ることは妥当ではない (全 く価値が無いわけでは

(15)

社会資本 の管理 と会計情報

187

ないが) といえ る。つま り,時価 によるサー ビスコス ト算定 は経済 コス トと会 計的 コス トの関係を明 らかに し,資産使用 コス トを経営者及 びサー ビス受益者

に知 らせ る情報価値 に留 まるのであ る。

したが って,資本会計 に積極 的意義があ るとすれば,伝統的会計理論 の もう 一つの 目的であ る資本維持 に求 め られ ることにな る

。Jones

は物価水準が変 動す る状況下で

C)の歴史的資本 ‑ 0

によると政府の取得資産を使用す る期間 の納税者間で負担 の公平が失われ るか ら,使用期間の納税者負担が公平 にな る

d)の時価資本 ‑ 0

が適切であるとす る。すなわち,財政学 の 「利用時支払原 則」(

pay‑as‑us epri nc i pl e)を適用 し,更新投資期の納税者 と新規投資期

の納税者問の負担公平でな く,歴史的原価 による場合 に生 じる初期納税者負担 の過重負担を避 け資産使用期 間中の負担を公平 にす る手段 として,すなわち, 償還総額 は歴史的原価 と同額 とし,その期 間配分 に時価主義を使用す ることに 資本会計の意義を説 くのである (下図参照)0

t1 t2 t3 t4 t5 t6 t7 t 8 t9 t1 0

均等償還

20 20 20 20 20 20 20 20 20 20 200

前提条件 :全額借入

( 200)で調達,償還期間 : 1 0

年 ,物価上昇率7%

確か に,

CI PFA

自身サー ビスコス トの算定を資源調達 にかか る税賦課計算 と分離 している。時価主義 による資産使用チ ャー ジを資産使用期 間の経常収支 に課す ことは,金利 を除いて も物価上昇分 だけ現世代が多 く負担す ることにな り,Ant

hony ( 1 984 )が述べ るよ うに 「時価主義 で費用が測定 され るな らば

(現世代の)納税者 は次の世代が使用す る基本 的施設 の コス トを支払 うことを 要求 され‑‑‑ (この)次の世代の設備のためによ り多めの コス トを負担すべ きとい う主張を不公平 とみなすで あろ う」 。 その意 味で

Jones

の論理 は評価 されてよいが,資本調達 は前述 の とお り,例示のよ うな借入金で全て賄 われて いる訳 ではない。財源 に資産売却 による資本収得があれば,現世代 と次世代間

(16)

1 88

4 2

4

ではもちろん資産使用期間中で も売却時 とそれ以外の時点 とで税負担の公平 は 確保 されない。世代間負担の公平 については

GASI

i

( 1 9 8 7 )

に関連 して我が 国で も論議が盛んであるが,「公平」の定義 によって種 々の概念が存在す るし, なによりもコス トを平等に各時点の納税者に課す とい う原則 自体,公共経済学 か らの批判がある。例えば,牛嶋

( 1 9 8 8 )

は社会資本の投資期の納税者 は投 資の意思決定に関与出来 るという点において供用期の納税者よりも多 く負担 し て もよいとしているし,計画決定の要素を無視 して も多 くの場合,社会資本の 効用は時間の経過 とともに減少す ると考え られるか ら, コス トを基準に した公 平原則で税の賦課を決定すべ きかは問題が少な くないと思われる。

このように考え ると,政府会計 における資本維持 とは

Jones

の説 く負担の 公平でな く,現在使用されている資産を耐用年経過時において も継続的に国民 共通の基礎的公共財 として維持 してい くことに求め られるべ きであろう この ことは,上記モデルで得 られた更新資金確保 に特段の財政的 ・会計的措置を (一定条件下で)必要 としない結果 と一見矛盾す る印象を与えるが,資産のス トック管理 は財源調達,予算 と連動 した計画的実施が実行 されて初めて意義を 有す るのである。すなわち,財源的には政府経常支出 (正確 には経常支出及び 建設投資 コス ト)が物価水準の範囲内であれば資源調達面で問題 はないのであ るが,更新が適時,適切 に実施 され るには,イ)更新すべ き時期,量及び費用, ロ)維持修繕の水準に関す る情報が必要であるか らである。充当資金が確保 さ れて も有効 に使用 されなければ (例えば必要性が低い社会資本の新規投資や経 常支出に振 り向け られる可能性がある)社会資本サー ビス水準の維持 は出来な いのである。そ して,モデルで仮定 した条件が満たされず,物価水準を超えて 経常支出が増大する場合 (β>p+n)には,更新投資を実施するには公債依存 度を高める等の方策を講 じなければな らない。 もとより,国民貯蓄率の低下等 により租税負担率の増大及び公債消化が困難な場合には,経常支出を抑制す る か更新投資を削減す るか とい う高度の政策的判断を要す るが, この場合 にも更 新延期による国民経済に与える影響や将来に繰 り延べ した場合の投資 コス トの 増大等の会計情報が不可欠である。それゆえ,上記イ)の 目的には現行の財産

(17)

社会資本の管理と会計情報

189

台帳の情報では不足 してお り,資産価格及び (経済的)残存耐用年数のデータ が不可欠である。また, ロ)に関 してはサービス水準の維持 とい う点で資本ス トックに対す るメイ ンテナ ンスとしての維持修繕状況を把握するためフローの 維持修繕費 とス トックの資産 を比較す る必要 が ある。時価主義 の資本会計

( Jones

d)

概念 による資本維持) は,政府のサー ビス提供義務 に必要 な 資産管理に関する情報を時価 という共通尺度で提供 しえる点に価値を有するの である。 この点で熊本県の試行のようにフローとス ト、ツクが有機的関連を有す るものの実質価値で異なる要素が混在す る歴史的原価主義に対 して優位性を持 つのである。

4.

社会資本会計の在 り方

(1

)英国 との差異

これ までの検討で

CI PFA

の資本会計の意義 は,会計責任検証 (主 として 資源管理の効率化)のコス ト情報 というよりも継続的にサービスを提供するた めの資産管理,資本維持 (ゼ ロ資本)に応用的価値を有す ると考えるべ きこと が明 らかになった。 しか しなが ら,政府会計の比較研究の場合には,前述の通

り制度等の環境条件の差異を踏まえねばな らない。社会資本会計の場合 にも同 様であ り,我が国 と英国では社会資本を取 り巻 く環境 に次のようTil違いが存荏 す ることを認識 してお く必要がある。

a.

整備 ・ス トック水準 :周知の通 り我が国は社会資本整備の歴史が浅いた め,整備水準 は今なお低い水準にある。英国 と比較す ると,下水道普及率は英

9 5 %

(ただ し, この数値 は下水管接続率 とも言 うべ きもので下水処理率では

80%)

に対 し約

4 4%

であ り,道路舗装率 は英国

1 0 0%

に対 し

7 0%

,大河川整 備率

( 3 0‑4 0

年 に

1

度程度の降水量対応)はテ‑ムズ

川1 00%

に対 し

6 0%

とな っ ている。 この ことは,我が国において更新投資 としてでな く新規投資 としての 社会資本を今後 とも整備 してい く必要があることを示 している。

b.

投資の時間的集中 :英国を初め欧米諸国では比較的長期間をかけて社会資

(18)

190

4 2

4 号

本の整備が行われてきたのに対 し,我が国では第二次大戦の被災 もあって社会 資本ス トックの約

3/ 4

が この20年間で形成されてきたことが特筆 されるべ き である。 このことは,耐用年数が到来す る

21

世紀初頭 に一斉に更新投資を必要 とす ることを意味す るか ら,新規投資による整備推進の達成には想像以上の巨 額な資金を要す ることになる。下表 は一般政府及び公的企業にかかる粗資産額

( 1 980

年基準価格)及 び一般政府 にかか る純資産額

( 1 985

年基準価格)の推 移を示 した ものである。

<公的部門の社会資本ス トックの推移 > 単位

: l o 備 ( ): %

年度(莱) (一般政府+公的企業)粗資産額 一般政府純固定資産額

1 97 0 8 3 6 0 67( 2 7 . 5 ) 51 4 3 5( 2 2 .1

)

1 9 7 5 1 5 5 8 5 4 5( 51 . 2 ) 9 3 6 4 2( 4 0 . 3 ) 1 9 8 0 2 6 0 47 4 8( 8 5 .6 ) 1 5 0 8 1 8( 6 4 .9 ) 1 9 8 2 3 0 4 3 1 5 5( 1 0 0 . 0 ) 1 6 7 1 7 3( 7 2 .0 )

注 :粗資産額は経済企画庁

( 1 9 8 6 )の推計値であり,「般政府純固定資産額は

国民経済計算年報による。

C.

政府財政に占める位置 :社会資本整備水準が低いとい うことはそれだけ政 府財政において大 きな支 出項 目となっていることであり,GNPに対す る公的 総固定資本形成の比率 (%) は英国 と我が国 とでは,それぞれ1

97 0

年及び1

988

年で4.7対8.6及び

2.4

対6

.8

となっている。また,GNPの差異を除 くため政府 財政に限定す ると,一般政府総資本形成の政府支出に対す る比率は最近の

1 0

間で英国3.2‑5.5%に対 し我が国は

28 .5‑3 2.0%

とな っていて我が国の政府 部門における社会投資水準が大 きい ことがわかる。なお,地方政府において も 英国の資本支出 (総額) と我が国の投資的経費をそれぞれ支出合計に占める比 率でみ ると

,1 989

年度で英国9.8%に対 し我が国は32.8%となっているこの ことは,英国以上 に我が国で社会資本が財政 ・会計において重要な地位にある ことを示 している。

(19)

社会資本の管理と会計情報

191

d.

質的要素 :生活関連施設の質的要素が欧米 に劣 るもの として住宅がよ く例 に挙げ られる。 この背景 には国民文化の違いもあるように思われ るが,確かに 英国では第二次大戦以前 に建築 された住宅が約半数で特定の事務用建物 には税 法上減価償却が認め られない ものもあるぐらいで,我が国で過去

2 3

年以内に建 築 された住宅が約

7

割である (昭和

6 3

年住宅調査)の とは顕著な差を呈 してい る。 これは住宅 に限 らず鉄道で も同様で,中

( 1 990 )

によると

1 8 40

年代の 橋梁が現在で も高速運転 に供 されているという この ことは,英国では社会資 本のメイ ンテナ ンスの比重が高いことを意味す る換言すれば,支出効果が長 期間に及ぶ投資か ら支出時点の単年度 に限定 され る経常支出に比重が移行す る ことになり,それだけ財務統制 ・管理は容易になるわけである

( CI PFA

が資 本維持,資産管理への活用を積極的に提示せず過去の投資資本に対す る使用 コ

ス ト認識を重視 したの もこの要素が作用 しているのか もしれない) 実際,維 持修繕費の建設投資に対す る割合 は建設経済研究所

( 1 9 89 )

によると,

1 9 88

年で英国

37 .8%

に対 し我が国は

9 .2%

である

e.

人 口統計 :社会資本整備に関 して今 日関心が高まっているのは日米協議 に よる公共投資

1 0

カ年計画の

430

兆 円という額の大 きさもあるが,野 口

( 1 9 90 )

が指摘す るように,貯蓄率が低下 し,貯蓄投資差額が縮小す るため公債発行が 困難 になる高齢化の ピーク

( 2 025

年頃)前 に公債 を増発 し公共投資を増加 さ せ ることがマクロ政策的に合理的であるか らである。今後

20

年間で必要な社会 資本整備を行わないと水準を欧米並 に引き上げる機会を当分失 うというもので ある。確かに高齢化 は社会福祉経費の増大の他,租税負担や公債発行に関連す る財源調達 に も影響を与え るものであ り,

OECD ( 1 9 88 )

によると

1 9 50

年か

2 0 40

年 までの

9 0

年間で

6 5

才以上人 口比率 は英国が

1 0 .7%

か ら

20 . 4%

(

2

倍)に対 し我が国は

5. 2%

か ら

22 .7%

(

4

倍)に増加 (社会保障支出は

1 9 8 0

年基準で英国

1 0%

増,我が国

40%

増)す ると予想 されている。 この ことは,高 齢化が福祉予算の財源調達に留 まらず並行 して実施 される社会資本整備にかか る投資予算の確保及 び配分決定にも影響を与えることを示唆 してお り,計画拍 投資によるサー ビス継続 を確保す る技術的措置の必要性 を意味す るものであ

(20)

42

4 号

(2

)ス トック情報 としての資本会計

以上の差異 は我が国の資本会計 において,更新投資及 び急激 に増大す るス トックに対す る維持修繕を計画的に実施す るシステムの確立 と社会保障支出増 大に伴 う財源確保 に貢献す る必要性を示 している. また

CI PFA

の最終案で 除外 されたイ ンフラについて こそ時価主義による資本会計を適用すべ きという ことになる。なぜな らば,英国でインフラにつ き減価償却 しないこととされた のは,我が国 と異なり,ほぼ施設整備が完了 し,経常的な維持修繕で資産価値 が保持 されている現状があるのである

事実民営化 された水道会社である

Th amesWat e r( 1 9 9

1) は,イ ンフラにつ きネ ッ トワークとして継続 的に維持

され ることが要請 されていて無限の経済的耐用年数を有す るという理 由で,更 新支出を経常費用 として処理 し 減価償却を行 っていないのである。そ して, 前述 した通 り社会資本投資は国民経済 に大 きな比重 を持つ ことか ら経済政策 (総需要管理)の観点で支出規模が裁量的に決定 され る傾向が従来か ら強い( 表参照)ため,増大す るス トック管理がより重要になるか らである。

国民経済と政府投資の関係 (伸び率) 単 位 :%

1 981 1 985 1 9 86 19 87 1 9 88 1 989 1 990

国民総支 出

5.9 6.0 4.1 5.0 5.4 6.4 5. 2

政府支 出

5. 3 △0. 2 5. 3 3 .7 3.2 5.7 2.5

政府固定資本形成

2.8 △5.7 5.5 7 .1 2.5 4.4 1 .5

社会保 障関係費

7.6 2.7 2.7 2.6 2.9 4.9 6.6

公共事業 関係費

0.0 △2. 3 △2.3 △2.3 0.0 1 .9 0.3

消費者物価指数

4.0 1 .9 0.0 0.5 0 .7 2.7 1 .6

この ことは前述 した通 り消費支出項 目が物価水準以上に増加する危険性が今 後の高齢化社会で高まり,公共投資が増税回避あるいは財源調達の制約か ら政

(21)

社会資本 の管理 と会計情報 19 3

策的に抑制 される危険性を提示 している。サ ッチ ャー前首相の公共支出「削減」

政策が具体的にどのような支出項 目を通 じて実行 されたかを分析 してみると,

OECD ( 1 9 9 0 )

で解説 されているように,削減 は自助努力による国の活性化 というポ リシーを貫徹 したのではな く,資本的支出に対 して向けられたのであ る。

HMSO ( 1 9 9 0 a)

によると,社会保障支 出は

1 9 7 8

年度か ら

1 9 8 9

年度 まで に実質

3 6 %

も増加 している (大量失業の影響 もあるが)のに対 し,公的投資は 国有企業の民営化の要素を差 し引いて も低下 (一般政府 の固定資産形成の対

GDP

比 は

1 9 8 0

年度の

2 . 4%

か ら

1 9 8 9

年度では

1 . 6 %)

してお り,維持管理の質

1 9 8 0

年代 は低下 したことが

HMSO ( 1 9 9 0b)

で報告 されている (幹線道路 の欠陥指数 は

1 9 7 9

年度の

9 6

か ら

1 9 8 8

年度 には

1 1 0

に悪化 し,未修繕延 長 は

2 4 0

マイルに達 している)0

したが って,社会資本に対 し 「荒廃す る米国」 と称 される状態に我が国がな らないためには,前述 したように更新投資に必要な資金を明示 し,同時に一定 品質の継続的サービス提供 とい う観点か ら資産管理状況を示す こととが必要で ある。 ところで,ある時点の資本ス トック

( Kt )

は耐用年数をm,投資を

( I t )

とす ると,次式

( PI

法)で定義 されるか ら,資本維持 には第

1

式 より更新 に 達 した資産につ き現在価格表示の過去の投資額 と同額が資金 として必要な こと が,また,第

2

式よりこの更新投資額 は供用中の累積投資 (現在価値)の平均 額に等 しいことがわか る。

KG, t ‑

∑Ii

‑KG, t ‑1 +

It一m 粗資本ス トック KN,t‑KN,1+It‑(

1/m )

∑It 純資本ス トック

そ して, この ことは社会資本について資産価値を取得原価でな く時価 または不 変価格で,か

つ CI PFA

の純額でな く総額で表示す る事が適切であ ることを 示 している。総額表示の粗ス トックとしての資産価額か ら算定 され る減価償却

(1

/m∑Ii) と当期更新費 (It)を比較す ることによ り,必要な更新が確 保 されているかを検証で きるか らである。ところで,予算 はその時点の時価 ( 冒)で作成 され,また新

SNA

に基づ く国民所得計算の国民貸借対照表 も時価 で計算 されているか ら, これ ら制度 との連続性を勘案す ると価格表示 は時価が

(22)

194

4 2

4

望ま しいと考え られ る。一方,時価 としては上式 よ り更新費用が,減価償却方 法 としては定額法が適切であるといえ る。なお,

CI PFA

では資産評価方法 と

して上記

PI

法でな く物量単位のス トックか ら貨幣価値 に換算す る

PS

法 を例 示 しているが,わが国で は投資実績データが利用可能 なため,

PI

法が妥 当で

ある。

また,供用中の資産管理 に関 しては,経済企画庁の調査結果 にもあるよ うに 維持修繕費の水準 は粗資本 ス トックと一定の関係を有す るか ら,毎期の維持修 繕費 として当該社会資本を適切なサー ビス水準に維持す るだけの資金が充当さ れているかを総額表示の資産価格 と比較参照 して検証す ることが有益である。

そ して,定額法償却では粗資本 ス トックと毎期の減価償却費 は線形関係 にある か ら, フローの減価償却費 と維持修繕費 との比較 によって維持修繕水準を把握 す ることがで きる。特 に維持更新の遅れは米国会計検査院

( GAO)

報告 に も あるように,適時に維持更新が行われ る場合の約

4

倍 もの経費を要す る不経済 を もた らし,また,維持修繕 は財源縮小時に圧縮 され易いため,上記会計情報 は重要である。なお,我が国道路事業 につ き維持修繕の水準を把握す る手段 と

して上記維持修繕費 と粗資本 ス トックの対比の有効性 と道路事業費 に占める維

9 8 7 6 5 4 3 2 1 2 9

2 2 2 2 2

2

2 2 2 ー

1.9

75 1 .97 7 1 .9 7 9 1 . 9 81 1 . 9 8 3 1 .9 85 1 .9 87

年慶

一 維持管理費/粗資本 ・道路投資

/GNP

‑ 維持管理費/延長

推持管理と道路投資水準との関係

1975‑1 987 年

参照

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