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『経営意思決定のための管理工学モデルの考察』 “AStudy on Management Engineering Models

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(1)

『経営意思決定のための管理工学モデルの考察』

AStudy on Management Engineering Models    for Managerial Decisions Making.

吉 永 雄 毅

  (経営経済学)

1.まえがき

 現代の高度情報化社会と国際化社会とコンピューター化社会において,さら に高齢化社会並びに人材不足の社会において,経営意思決定がどのような重大 な意義と役割とを有しているかを考察し,その上で,その経営意思決定のため に管理工学ないし管理工学モデルがいかに有効に活用されうるかを考察してみ

たいと思う。

 経営意思決定が正確にして迅速に遂行されるために管理工学ないし管理工学 モデルは必須不可欠な重要な貢献を果たしていることは周知のところであって

異存のないところであろう。

 現在の高度情報化社会,国際化社会,そして高齢化社会においては,企業経 営上での人材不足が重大なる関心事であって,人材不足ないし人手不足のため に企業倒産の危険にさらされているケースも数多く見られるのである。

 そこで,人工知能の開発,産業用ロボットの開発,そしてより進歩したとこ ろの高度コンピューターの研究と開発とによって,人材不足や人手不足を多少 なりともカバーしなければ,今後の企業経営は存亡の危機にさらされていると

言っても過言ではあるまいと考える。

 企業経営の諸資源(management resources)は人間(people),資金(money),

(2)

136       吉 永 雄 毅

資材(materials),情報(information),そして技術(technology)であるから,

これらの諸要素に対して企業経営者は重大なる関心を持たなければならないの

である。

 人的資源の代替的資源としては進歩したところのコンピューター,人工知能,

並びに産業用ロボットであるが,現状においてみる限りでは,それらは人間に

とって代わる経営資源としては未だ不十分である。

 産業用ロボットを活用したところのマルチウェルダーによる溶接作業,ある いは塗装作業等において産業用ロボットが導入されて,人間労働を代行して偉

力を発揮していることも周知の事柄であろう。

 また,発達したコンピューターが人工知能を活用して人間の知的労働や管理 的労働を代行しているようなケースも考えられるが,やはりまだまだ人間との 協働作業かあるいは人間の頭脳労働の補完的作業を遂行しているケースが数多

いのではないであろうかと推察している。

 約25年以前の昭和40年代においても,コンピューターを「学習する機械」と して考えて,人工知能を持った工場労働者,即ち,人工のロボットをスチー ル・ワーカーとして「無人工場」の出現とか「サイバネティック工場」の出現

とかが声高くクローズアップされたのであるが,それらも現在のところ研究中

の段階である。

 ところで,本稿でのテーマは『経営意思決定のための管理工学モデルの考 察』であるから,迅速で科学的な意思決定のために有用な管理工学モデルを考

察してみたいと思う。

 さて,経営意思決定論(managerial decision making theory)は現代経営学の

重大なる新研究領域であるから,現代経営学との関連を考察してみなければな

らない。そして,管理工学モデルが経営意思決定の諸問題,特に経営問題,会 計問題,マーケティング問題,商業問題,そして経済問題の解決のためにいか

に有効な貢献を果たしているかを数値モデルを用いて考察しよう。

 なお,現在においては,各種の学問が学際的研究方法あるいはマルチディシ

プリナリィ・アプローチを活用しているので,各種の学問が活用されなければ

(3)

ならないのである。

n.経営意思決定論と現代経営学

 まず,経営意思決定論(managerial decision maklng theory)の本質と意義を

考察して,斯学と現代経営学との関連を考究してみることにしたい。

 経営意思決定論は「経営」を研究対象としていて経営に関する意思決定論で

あることには異論がない。

 その経営とは,現代経営学においては「経営体」とその経営体の「運営の機

能」とを包括している広範囲な専門用語である。

 そしてこの「経営体」とは組織体としての経営を意味するものであるから,

それには企業,学校,自治体,政府,病院,教会,そして軍隊等が包含される のであって企業経営,学校経営,政府経営,自治体経営,教会経営,そして軍

隊経営等々の経営意思決定論が研究され考察されることとなるのである(〔46〕

pp.3〜12)。

 したがって,経営意思決定論は各種の組織体についての経営意思決定の理論

であることを銘記すべきである。

 しかしながら,経営意思決定論は企業に関する意思決定論を中心として発達 してきたものであるから,本稿では企業における意思決定の理論を中心に考察

して研究したいと思う。

 そこで,企業における意思決定論はバーナード(C.1.Barnard)の近代管理 論の研究に関しての「組織内における人間行動の意思決定」の理論において,

その発端を見い出すことが可能である(〔46〕p.39)。

 彼は,経営者の職能は組織の形成と維持の職能であるとの観点から,管理論

を組織論と合体しているのである。

 彼の近代管理論は組織行動,即ち組織内での人間行動を分析対象としていて,

そのために行動科学(behavioral science)や意思決定論(decision making

theory)を活用するところに特質があると言えるのである(〔46〕p.39)。

(4)

138       吉 永 雄 毅

 バーナード(C.1.Barnard)は記述科学の立場から,行動科学的研究方法や 意思決定論的研究方法を採用して,経営管理学における近代管理論を確立して

きたものであって,それらの理論は彼の著書, The Functions of the Execu−

tive (1938)によって理解できるのである。

 企業における経営意思決定論について考える場合に,バーナード(C.1.Bar−

nard)は「記述的意思決定論」の創始者として高評価されてきており,経済学

におけるケインズ革命にも相当するという見解さえもある(〔35〕p.52)。

 この意思決定論は記述的意思決定論であるから記述科学的アプローチを採用

しているのである。

 しかしながら,現代の意思決定論は規範科学(normative science)としての

研究方法による意思決定論が中心的研究領域であって主流であるといっても過

言ではないであろう。

 つまり,高度情報化時代における意思決定論は規範科学的アプローチに基づ

く科学的な意思決定論でなければならないと考えるのである。

 斯様な科学的意思決定の発展は科学的管理法(the Scientific Management)

の父であり,アメリカ経営管理学の創始者として今日までも高評価されてきて

いるテイラー(F.W. Taylor)を中心としたテイラー・システム(Taylor sys−

tem)に依拠するところ大であるといえよう。

 別言すれば,経営意思決定論は国際化社会であり高度情報化社会においては 勘や経営や目の子算法などによる意思決定ではなくて,むしろ現代の経営意思 決定論は規範科学としての科学的方法に基づくところの意思決定論であること

を強調しなければならないのである(〔46〕pp.37〜40,〔47〕pp.78〜85)。

 斯様な科学的方法(scientific method)に基づく学問研究の発端は企業の経営 意思決定に関する限りテイラー(F.W. Taylor)のテイラー・システムの研究に 求められるのである。

 斯様な諸事情を考察するために現代経営学(modern business administration,

or modern business management)について考察してみることは極めて有意義 であるとともに必要不可欠のことと言えるのである。

(5)

 現代の経営学は「経営」を研究対象としているものであって,その専門用語 としての経営は「経営体」とそしてその経営体の「運営の機能」との2義を包

括している広範な専門用語である。

 そして,この経営体とは組織としての経営であるから,各種の組織体がある ものであって,それには企業,学校,病院,政府,自治体,教会,および軍隊

などが考えられるのである。

 斯様な経営体をどのように運営するかという「運営の機能」をも経営という 用語は包含しているのであり,managingをも含意している。

 それ故に,現代経営学は企業経営学,学校経営学,病院経営学,政府経営学,

自治体経営学,教会経営学,軍隊経営学などに関する一般的な原理ないし原則

(general principles)を研究するものである。

 つまり,現代経営学の一般経営学は上述の如き特殊経営学を包括したもので あるが,その中でも特に企業経営学を主たる研究対象として発展してきたので

ある(〔46〕pp.12,〔47〕p.25)。

 ところで,経営意思決定論は斯様な現代経営学の1つの新しい重大な研究領

域であることを次に考察してみたい。

 現代の経営学の一般理論(general theory)に関して,経営管理論はマネジメ ント・セオリー・ジャングル(management theory jungle)の様湘を呈してい

て混乱状況にあるとクーンツ(H.Koontz)は指摘しているのである(〔46〕

pp.25〜28)。

 H.Koontzは経営学ないし経営管理論の研究に対するアプローチの差異に よって,①経営管理過程学派(The Management Process School),②経験学派

(The Empirical School),③人間行動学派(The Human Behavior School),④ 社会体系学派(The Social System School),⑤意思決定論学派(The Decision Theory school);そして⑥数理学派(The Mathematical School),の6学派に

分類している。そこで,ここでは経営意思決定論に最も関連のある意思決定論

学派について考察してみたい。  

 この学派は意思決定(decision making)に対する合理的アプローチを中心に

(6)

140      吉 永 雄 毅

研究するのである。この意思決定とは可能な諸代替案の中から1つの行動コー ス,つまり考え方(理念)を選択することである。近時ではこの学派の内容は 意思決定の研究,意思決定者やその集団の研究,意思決定過程の研究などの領

域まで取り扱うのである。

 そして,企業において惹起される全事柄を研究対象とする人もあれば,意思 決定者の心理学的,社会学的局面までも包含せしめている人もあると指摘して

いるのである(〔46〕p.28)。

 この学派は意思決定という観点を中心として,人間活動の全領域の研究をも

志向する広範囲な傾向をもつ。この派の代表的な人はL.W, Miller, M. K.

Starr,そしてH. Raiffaなどであるといい,生産管理論でも著名人である。

 なお,意思決定に関してノーベル賞受賞者としても有名なサイモン(H.A.

Simon)は次の如く指摘しているのである(〔12〕p.55,〔5〕p.351)。

 企業組織では,問題解決活動は意思決定(decision making)と呼ばれること

が多い。意思決定は経営管理すること(managing)と同意語であると考えられ

ることもある(〔47〕p.103)。

 経営の過程,即ち,意思決定の過程(decision−making process)は次の諸局

面によって構成されているとH.A. Simon教授は指摘している(〔12〕pp.40

〜41, 〔5〕 p.433)。

 意思決定過程の第1局面は情報活動(intelligence activity)と呼ばれ,環境を 探求し決定を必要とする条件を探すことである。

意思決定過程の第2局面は設計活動(design activity)と呼ばれ,可能な行為の コースの諸代替案を発見し開発し分析することである。

 意思決定過程の第3局面は選択活動(choice activity)と呼ばれ利用可能な行

動コースの諸代替案の中から1つの特定コースを選択することである。

 意思決定過程の第4局面は再検討活動(review activity)と呼ばれ,過去の選 択を再検討して評価することである。

 以上はH.A. Simonが意思決定過程として提唱したものであるが,これら

の諸過程はJ.Deweyが問題解決に対して指摘した諸ステップ,即ち,①何が

(7)

問題であるか,②どんな代替案(alternatives)があるか,そして③どの代替案 が最善(best)であるかという3段階と密接な関連を有しているといえよう

(〔5〕 p.433)ご

 次に,H. K・ontzの学派分類としての⑥数理学派について考察してみたい。

数理学派(The Mathematical School)はマネジメントを数学モデルおよび過程

の体系として理解する人々である。この学派の有名なものは経営科学者(man−

agement scientist)ないしオペレーションズ・リサーチャーであろうとH.

Koontzはいうのである(〔46〕p.29)。

 数理学派は経営や計画活動や意思決定なども,それらが論理的過程であるも のは全てが数学的記号と数学的関係で表現可能であると考える。けだし,数学 的アプローチはどんな研究領域にとっても威力を発揮していることは疑問の余 地はないであろう。数学は複雑な現象を解明し,単純化するための強力な用具

(tool)であると考えることができる。しかしながら,数学を独立した経営理論 の学派と考えるのは,数学を物理学や医学や工学における1学派として考える

よりもさらに困難であるとH.Koontzはいうのである(〔46〕pp.28〜29)。

 さて,既述の如く,経営意思決定論は経営に関する意思決定論であるが,本 稿では科学的方法による意思決定論の活用と研究であるから,H. Koontzによ

る意思決定論学派は数理学派に密接な関連をもつものと言えるのである。

 そして,この意思決定論は現代経営学の重大な研究分野であって,しかも新 しい研究領域である。H.A.Simonが企業組織では,意思決定は経営管理する ことと同意語であるという指摘をまつまでもないことであろう。

 ところで,高度情報化時代においてはコンピューターが威力を発揮している

ものであるから経営情報システムズ(management information systems;MIS)

の研究が経営学研究上で重要となっている。

 経営問題や会計問題やマーケティング問題,等々の数量化の強調と巨大な数

量の情報を処理し貯蔵することの可能なコンピューターの発達とが情報を収集

し,処理し,そして伝送することを統合するところのコンピューター・ベー

ス・システムスの創設へと導いたのである(〔5〕p.95)。

(8)

142       吉 永 雄 毅

 コンピューター・ベースの情報システムズの早期の発達段階では,その意思 決定問題は企業組織のオペレイティング・レベルでの業務問題であって意思決 定問題は限定されている構造的決定であった。それらの問題はルーティンワー

ク(routine work)が殆んどであった。

 そして,次第に中間管理職レベル(middle−management−level)の問題へと研

究対象を拡大して,やがて最高経営者レベル問題(top−management−level

problems)の研究へと発展してきているのである。

 次に,経営意思決定のための管理工学について考える。

皿.経営意思決定のための管理工学

 ここで,管理工学(management engineering)の本質を考察して,その管理 工学が経営意思決定のためにどのような意義と役割とを有するかを考究してみ

たいのである。

 管理工学は管理を研究対象とする学問であることに異論がないところである。

その管理(management)は計画(plan),実行(do),そして評価(see)のサイク

ルを遂行している活動であって,マネジメント・サイクル(management cy−

cle)論が経営管理論において提唱されてきたのである(〔46〕p.35)。

 管理(management)に関する研究は経営管理論(management theory)や生産 管理論(production management)や原価管理論(cost management)等々の学問

においていろいろと研究されてきているのであるから別書を参照していただき

たいのである(〔46〕p.37,91,〔47〕p.181,〔24〕p.3〜15)。

 そこで,管理工学(management engineering)を科学的な経営意思決定のた めの学問であるとの観点から考察することによって,管理工学の意味を限定し

て考究してみなければならないと考えるのである。

 まず,工学(engineering)は応用科学としての工学(日本語での)とか,テ

クノロジィ(technology)の応用とかという,自然科学の狭く限られた分野の

みを指すものではないといわれる(〔54〕pp.3〜4)。

(9)

 そのエンジニアリングはtechnologyとその応用を包含したところの生産技

術から商業や工業の経営管理技術や,はては家庭における生活手法などにまで

もおよぶ広範囲な領域を指すものである(〔54〕pp.3〜4)。

 それ故に,このエンジニアリングに在来の日本の学術用語の「工学」を直訳 的に適用してみると不自然な専門用語を造語してしまうことになると田中斉元

明治大学院教授が指摘されていることを注意しなければならないのである

(〔54〕 pp.3〜4)o

 さらに,科学(science)が実利を超えた真理探究の活動に対して,工学(en−

gineering)は生活の実利的欲求に基づいている。…………工学は科学的法則に より裏付けられた応用技術の集積体系であり,科学的方法により技術の発展を 目指すものである。このような観点からみれば,工学は物理的科学に対応する

分野だけ限られるものではない,と指摘していられる(〔54〕p.4)。

 工学(engineering)という概念は,一般的に,伝統的な学問領域にとらわれ ることなく,実践につらなる目標をもって諸科学を統合し,技術化し組織化し ようとする,新たな学問内容を盛るのに最も適している,と田中斉教授は指摘

されている(〔54〕p.5)。

 斬新な工学の概念の拡大とか新概念の樹立のために,management en−

gineeringを「管理工学」と直訳することは概念や用語の混乱を惹起すること

になることを注意すべきであると指摘されている(〔54〕p.6)。

 もしも,未成熟な訳語を直訳的に持ち出してきて,新しい概念の規定を盛る ことは学問上純粋的に妥当性が持てるかどうか疑問であると,指摘されている

のである(〔54〕p.5)。

 したがって,経営学やマーケティング学の専門用語を考えてみると,「マー

ケティング(marketing)」や「オペレーションズ・リサーチ(operations

research)」や「サイバネティックス(cybernetics)」や「オートメーション

(automation)」や「マネジリアル・エコノミックス(managerial economics)」

等の学問の日本語訳がないのであって,英語の用語を日本的英語で呼称してい

る現状である(〔46〕pp.173〜175, p.193, p.265)。

(10)

144       吉 永 雄 毅

 また,生産管理論(production management)も経営生産に関する管理論であ

るが,それが企業経営のオペレーションをも包括しているところの専門用語と

して考察しなければならないのであるから,近年においてはProduction−

Operations Management(P/OM)という呼称を用いているのである(〔2〕

pp.1〜9,〔5〕p.94, p.631)(後述のとおり)。

 次に,Websterの「新国際辞典」によれば,エンジニアリング(engineer−

ing)は,本来では,機械管理の技術(art)である。近代的にして,かつ拡大さ

れた意義においては,それは自然物の属性および自然力の源泉を,建築物,機       ク

械,および製造品において,人間に有用なようにする技術(art)であり科学

(science)である。…………エンジニアリングはまた1つの産業,あるいは1

つの企業を組織し経営する技法(前者はindustrial engineering,後者はadmi−

nistrative engineering),並びに商品交換の技法(commercial engineering)に適 用されると,解説しているのである(Webster s New international Dictionary,

1934,p.848)。

 なお,Edwin R. A. Seligmanの百科事典によれば,エンジニアリング(en−

gineering)は,法則の探求を通じての発見,並びに機械およびその他の装置の 設計,建設,保全,操作を通じて,それらの法則を活用する原理および方法の 定式化などを包含する総括的な用語である。………後になって,それが拡張さ

れてサービス(用役)やそのような装置の経済的諸問題を包含するようになり,

現代ではその内容がより拡大されて,人間の便益のために人間団体行動のシス テムさえをも包含したところの機構の探求やその原理の公式化やその設計等を 包含する組織を操縦(エンジニア)することを指称するようになった。………

…帰納的科学,或いはより明確に言えば,エンジニアリングの基本原理を最初

に工場管理(shop management)に応用した人はテイラー(F. W. Taylor)で あった,と解説しているという(〔54〕p.6)。

 以上の如くに,エンジニアリングは,半身を自然科学の領域からはみ出して,

その本質の工学とは別の新しい社会科学(social sciences)の概念を身につけた

生産技術学という側面をあわせ持つ用語として,国際的にも通用するように

(11)

なった。この端緒となったのはテイラー・システム(Taylor system)であって,

この概念の拡大と産業への導入に対する主体性はテイラーの科学的管理法(the

Scientific Management)であるといえる(〔54〕p.6)。

 斯様にして考察してみると,アメリカの学風は実用主義(pragmatism)であ るといわれているように実行ないし実践(practice)こそが第1義であって,定 義の規定などは末端のことであろうと指摘されている(〔54〕p.7,〔46〕

pp.13〜15)。

 ここで,考えてみるに,アメリカ経営学は経営管理学(business administra−

tion, or business management)の特質を有するものであって実践経営学として 評価されてきたのであって,その発端はテイラー(F.W. Taylor)の生産管理論

の研究を端緒とする工場管理法(shop management)(1903年)並びに科学的

管理の諸原則(The Principles of Scientific Management)(1911年)を包括し たところのテイラーの科学的管理法,即ち,テイラー・システム(Taylor sys−

tem)に求められるのである(〔47〕p.12, pp.28〜34)。

 それ故に,われわれは,「管理の概念」「管理工学」,そして「科学的な意思 決定論」等々について考察するためには,まず最初にテイラーの科学的管理法

について研究して考究しなければならないのである。

 経営意思決定(managerial decision making)のための管理工学(management

engineering)は既述の如くに管理(management)に関する工学であるから「管 理」と「工学」との専門用語の概念と意義とをいろいろと考究しなければなら

ないのである。

 この経営意思決定論は現代経営学の中心的研究領域であり,経営者の第1義 的職能は経営意思決定の遂行であることは多言を用しないであろう。

 そして,現代の国際化と,高度情報化社会においてコンピューターを活用し て迅速な意思決定を遂行するには管理工学並びに管理工学モデルの活用は必須 不可欠の重大用件であると言っても過言ではないのである。

 しかのみならず,科学的な意思決定のためには,コンピューター科学の発展

とコンピューターの発達が最重要ではあるが,それらとともに,経営問題や

(12)

、146       吉永雄毅

マーケティング問題や商業問題や会計問題や経済問題,等々を定量的に定式化 して数学的モデルで表現してそれをコンピューターを活用して的確な意思決定

を遂行しなければならないのである。

 発達したコンピューターや人工知能が限りなく人間に近づいて,人間の頭脳 労働,即ち知的労働を遂行するにはまだまだ長時間を必要とするものであって,

管理工学モデルによる問題解決のための数量的モデルの研究と開発とは人間の

偉大なる英知に負うところが大である。

 次に,経営問題,マーケティング問題,会計問題,商業問題,並びに経済問 題等々に関する管理工学諸モデルを考察してみたい。

】V.経営意思決定のための管理工学モデル

 ここで,経営意思決定のための管理工学モデルを経営問題,マーケティング 問題,会計問題並びに管理会計問題,等々に関して考察してみることにしたい。

4.1マーケティング科学に関する諸モデル

 マーケティングに関する市場調査の管理モデルをMyers−Samhのモデルに ついて考察してみたい(James H・Myers and A・Coskun Samli, Manage−

ment Control of Marketing Research, Journal of Marketing Research, vol 6

(Aug,1969)pp.267〜77)。

 彼は情報の価値を測定するのに,①単純貯蓄法,②現価法,③ベイジアン分 析,④原価一便益アプローチなどの管理工学的技法を用いている。

 また,市場調査プロジェクトの統制に関して,①チェック・リスト,②論理 的流れ分析,③ガント・チャート(Gantt, chart),④パートネットワーク

(PERT network)を用いている。

 そのパート(PERT)はProgram Evaluation and Review Techniqueの略称

で,1958年にポラリスのプロジェクト管理のために開発されたもので生産管理

論で重用されている。

(13)

 先見的企業は企業調査活動にPERTを利用しているが,マーケティング調

査にも利用可能であって,調査時間短縮や調査費用節約のために有効活用でき

ることを数値モデルで示している。

 パート・ネットワーク(PERT network)を作成するには所与のプロジェクト の完成のための各個の課業が明確にされなければならない。ネットワークはイ ・

ベント(event)とアクティビティ(activity;作業)で組立てられる。図4.1で,

○印はイベントを,円内の数字はイベントの特定な系列を示す。アクティビ ティはあるイベントから次のイベントへ前進するのに必要な時間を示し,この 例では各イベントの達成に対する所要時間を表わす。

図4・1パートネットワーク

;二:』、T、一,.7 T・一・1・・T・−24・7T・−32・・T・−45・・ T,一。

         TL=18.8  TL=28.8  TL=34.8  TL=45.O          TE=13.9  TE=23.9   TE=29.9  TE=40.1          Ts=4.9  Ts=44.9  Ts= 4.9  Ts= 4.9

  是:;:; 璽、。㊥一、⑱、一、α、⑩、−5

  Tsデ0・2         5−10−15  4−6−8   6−10−15   3−5−7

一 ⑳亮f㍗一1、.7㍗一247㍗一3a7㍗一45。 ‡二18:9

    TE=9.7     Ts=O   Ts=:O   Ts=O   Ts=0

   T・一・ ⑩一一一⑧⑩⑭ 3−5−7

      tε=12    t¢=6.5    tθ=lL2       6−12−8  3−6−12  7−11−16

 一般的には,三つの推定時間値が利用される,即ち,楽観値(optimistic

value),最確値,(most likely value),悲観値(pessimistic value)である。

 これらの推定値は作業の不確実性と標準化されてないタスクに関連して確率

的性質を反映している。

(14)

148       吉 永 雄 毅

 市場調査問題を取り扱ったパートを示すが,このプロジェクトは買物習慣

(shopping habit),態度(attitude),好み(like)等について情報収集するために

五百家族以上と三百人の市街買物客と二百会社とに対して個人的にインタ ビューして作成されている。パートの各イベントは次の事柄を表わす。

 イベント番号,アクティビティ記述

10:完全なプロジェクト設計の提供     100:買物客インタビューの結果の作表 20:提供されたプロジェクト設計の受入   110:企業インタビュー結果の分析 30:質問票作成;企業,消費者そして買物客 120:消費者インタビュー結果の分析 40:質問票の予備検査       130:買物客インタビュー結果の分析 50:実地踏査一一企業インタビュー     140:企業部門に関する報告書準備 60: 〃  一消費者インタビュー    150:消費者部門に関する報告書準備 70: 〃  一買物客インタビュー−  160:買物客部門に関する報告書準備 80:企業インタビューの結果の作表     170:包括的報告書の準備

90:消費者インタビューの結果の作表    180:最終的報告書の提出

 以上のような各イベントの基準に基づいてネットワークが図4.1に展開され た。過去の経験的基盤の上に,楽観的時間,最確的時間,悲観的時間が各アク ティビティに対して推定された(単位,日)。各アクティビティに対する期待

時間(expected time)は次のパートの公式によって算出される。即ち,

       α十4吻十b       TE=

       6

       ここで τE=期待時間

      α=楽観的時間       卿=最確的時間       b=悲観的時間。

 各期待時間の総和は最早期待時間は五十作業日ということを算出した。クリ

ティカル・パス(critical path)はこのプロジェクトを完成させるための代替的

一連の系列の経路の中で最長のものであるが,最長経路は10 30 40 60 90

(15)

一⑩一⑲一⑩一⑧で,これをクリティカル・パスと決定される。調査の時間

短縮はこのパスの作業時間でのみ遂行される。

 この最長経路の作業完成が遅延すると,全体の完成時間がそれだけ遅延する。

さらに,期待時間の計算のためには各最遅許容時間(latest allowable time;

TL)を決定することが必要である。クリティカル・パスに関連している各イ

ベントについてはTLとTEは常に等しいが,クリティカル・パス以外のイベ

ントについてはTLとTEは常に等しいとはいえない。

 一般的には,TLとTEとの差がスラック・タイム(slack time:TS)であ

って,TSはプロジェクトの完成を遅らせずに遂行できる範囲内での各イベン トの時間的伸縮性を示している。もし管理者がスラック・タイムによるアイド

ルを除去できればコストを最小化することができる。

 各イベントに対するTL, TE, TSの計算値を示している。パートの使用の 意義は確率的計算を扱えるということであり,管理工学モデルである。

 不確実性(uncertainty)を伴う作業,即ちプロジェクト全体の目的達成の確 率は次のパートの式Zで計算されうる。つまり

  乃一乃 z=  σΣσ2

ここでπ=計画達成時間,  乃=最早許容時間,

   Σσ2=選好経路のアクティビティの分散の和,

   σΣσ2=分散の和の標準偏差,

   そして 〆一(b一α 6)㌔

 なお,若干の問題点も考慮されている。

 さらに,全体調査計画の統制とガイダンスに関して次のものを提唱している。

その1は諮問委員会であってマーケティング調査努力を評価し統制する良き手

段であるという。その2はマーケティング調査の監査機関である。その3は予

算統制であって・それは調査統制の費用的次元の制約条件となることをJ.H

(16)

150      吉 永雄 毅

MyersとA. C. Samliが提唱したのである。

 次に,消費者の購買行動の研究によって,自社ブランドの製品の6カ.月後あ るいは1力年先等の市場占有率(market share)を予測している管理工学モデ

ルを考察したい。

 まず,商標選択を一次定常マルコフ・プロセス(Markov process)として考

察しているR.B. Maffeiのモデルについて考える。

Maffei, Richard B. Brand Preferences and Simple Markov Process ,0. R. vol

8(March〜April,1960), pp.210〜218.

        表4.1商標選択の推移確率       次のような五つのブ        期間2ブランド        ランドが競争している       マーケティング状況

      (marketing situation)

期間1      を考える。ある製品に

ブランド

      ついての五つのブラン        ドを1,2,3,4,

       5として, o時におけ  るブランド・シェア(brand share)をSゴ(r。)とする。そうすると,

   51( 。)+S,(τ。)+S3(∫。)+S、( 。)+55( 。)=1.00…・・……・・…・………①

1 si(to) 1  2   3  4   5 合計

0.30 O.10 O.15 O.35 O.10

0.70  0.18  0.07  0.01  0.04 O.11  0.68  0.15  0.03  0.03 O.06  0.09  0.63  0.17  0.05 O.03  0.04  0.12  0.71  0.10 O.04  0.06  0.15  0.11  0.64

1.00 P.00 P.00 P.00 P.00

合計

1.00

 ここで推移確率が一定とすると,τ。+、時のそれぞれのブランド・シェア&

(r。+、)は次のようになる。

S1(fη+1)=0.7051(オヵ)十〇.11S2( η)十〇.06S3(τπ)十〇.035i4( η)十〇.0455(ん)

S2(τπ+1)=0.18S1(τη)十〇.6852(τη)十〇.09S3(∫η)十〇.0454(『〃)十〇.06S5(『η)

S3(τη+1)=0.0751(τヵ)十〇.15S2(オπ)十〇.6353(ん)十〇.125i4(rヵ)十〇.1555(τη)

S4(∫η+1) =0.01Sl(『η)十〇.03S2(『η)十〇。17S3( η)十〇.71S4(ん)十〇.11S5(『η)

S5(τη+1)=0.04S1(∫η)十〇.03S2( η)十〇.05S3(τη)十〇.10S4( η)十〇.64S5(τη)

・・…

A

この②式から,定常状態におけるブランド・シェアを予測可能であり,確率

(17)

モデルである。

4.2 管理会計論に関する諸モデル

 管理会計論(management accounting)に関する管理工学諸モデルを考察して みよう。

 (A)単純線形回帰モデルによるコスト推定法

 工場のある生産部門の現在から遡及した過去6力年間の総変動費用(X2)並び

に労務費(ち)の観測データが表4.2の如くであったとしよう。

 これらのデータ(資料)に基づいて労務費の総変動費用に占める割合,定数

項(a)の値,総変動費用と労務費との相関関係などの事柄について回帰分析と最

小2乗法で考察したい。

表4.2 年間の総変動費用と労務費      (」V=6)

年  度

1

2

3 4

5 6

総変動費用品(千万円) 30

35

45

50 55

60

労務費M(千万円)

25

28

32 36

38 45

     A

п@定 値γ、 24.32 27.38 33.49 36.55 39.60 42.66         A

c差平方和(yi一γ1)2

0.4624 0.3844 2.2201 0.3025 2,560 5,476

 Σ}]=204   ち・=34  Σγi2ニ7,198

Σ】(2}7=9,760

Σ』(2=275

ΣX22=13,275  ×2=45.833

 これらのデータに関して,晃を独立変数としちを従属変数として式①の推

定の単純線形回帰方程式が成り立つものと仮定し,この回帰式を推定しいろい

ろな経営管理論並びに管理会計論上の意義を考察しよう。最小2乗法による回

(18)

152       吉 永 雄 毅 帰式では撹乱項の仮定を含む(〔45〕p.123)。

P1=α+b12晃・………・・……一………・…・……・………・・………①

 この式①はx、に対するKの線形回帰方程式でその正規方程式は式②の連立

方程式である:

叢;;慧三三…::二1:1;}一………一一吻

ここでN=観測データ数,

    ΣK=従属変数の値の和,

    ΣX2=独立変数の値の和,

   Σγi為=X2と陥との積和,

    Σ】日=X2の平方和,

     r、=回帰方程式におけるちの推定値,

     b12=X2からKを推定するときのX2の回帰係数,

     α=回帰母数(定数項),

したがって,推定の単純線形回帰式は③として得られる。

ア1ニ5.988+0.6112×2………・・………・………・…③

 この推定式はわれわれにいろいろな事柄を提供してくれる。

 定数項αは総変動費のなかで労務費以外の材料費や変動的製造間接費等が5.

988(千万円)を必要なことを示唆せぬ。回帰係数,b、2=0.6112は労務費が 総変動費の約61%の割合で比例的変化をすることを示唆している。但し,①が 成立するXとγとの範囲がある。

 斯様に,経営管理者や原価管理責任者は来るべき次年度,3年後などの総変 動費や労務費を推定し予測可能で,それらの費用を考慮した商品価格決定や人

件費や設備投資の経済性などの予測が可能となる。

 次に式③に関して統計理論に依拠したいろいろな事柄を考察しよう。

(19)

 推定の標準誤差(standard error of the estimate)は最小2乗回帰線に関する 標準偏差で,回帰線によるX2からの猛の推定の正確さを示す測度となる。式

③に関して,推定の標準誤差S,は式④で与えられる。

   &一Σ1寿≡2吾)2−1当一・・6886………・…………④

 次に,決定係数(coefficient of determinatign)は為とちとが線形式でどれ

ほど関連づけられているかの測度で有用なもノのであり,決定係数を〆で示す と式⑤で求められる。また,決定係数は回帰線の計算に用いられたデータ(観 測値)に対する回帰線の適合度を表現する測度ともいえる。しかしながら,決 定係数はX2と遁との共変動の関係を確定するが両者の因果関係の存在の有無

を決定するものではない(〔38〕p.59)。変数間に高い相関関係があっても因果 関係の存在を確定できないケースもあり,「無意味な相関関係」,「見せかけの 相関関係」といわれる(〔46〕p.316)。

 上記のデータについて計算すると式⑤となる。

   〆一・一塁i覧≡豊}i−・一{Σ(K一γ1)ツΣ(野一(▽)(Σち)・}

    一・一[(7,、98}と214)(34)]≒・・965………・………・・⑤

 次に,相関係数(coefficient of correlation)は独立変数と従属変数の相関関

係の程度を表わす測度である。相関係数はγで示され式⑥として求められ,決

定係数の平方根の正値である。

   _  Σ(X2−X2)(ち一γ、)

  γ一     Σ(X2−X2)2・(Σ(yi−y、)2

   =   6(9・760)一(275)(204)   ≒0.978._____...⑥

     6(13,275)一(275)2・ 6(7,198)一(204)2

この相関係数γが0.978ということは推定値のX2とKが非常に関係があると いうことである。X2とちとが無相関のときに夕=0で,完全相関のときにγ

=1.00となる。

 次に回帰係数bl2と回帰母数αとの標準誤差Sb、、とS、を求めてみよう(〔24〕

(20)

154       吉 永 雄 毅

P.91)。

  S、。一 &一一 工6些6

      Σ(X2−Xl)2  ΣX22−(X2)(ΣX2)

    ニ   1・6886   =0.065191………・・…….⑦

      13,275−(45.833)(275)

 そして,

&一 [+Σ((X2)2×2−X2)、一・晒17+罐劃協≒3㎜・…⑧

 次に,上述のモデルではX2とHとの間に線形関係が認められると仮定して

論述してきたのであるがこの仮定が成立するか否かを検定してみなければなら ない。もしも,ちと】(2との間にいかなる線形関係も存在しないのならばbl2

=0となる。

 このような関連の有意性についてテストするために帰無仮説b12=0を検定

すべきであり,そのために 検定(τtest)が活用される。なお,斯様な有意性 検定では 検定もF検定も同じ結果となる(〔19〕p.122,〔24〕p.94)。

 帰無仮説を検定するために式⑨のτ値を計算しなければならない。

輪一b x二゜一撒晶≒9緬7……・…………・……・・………・・…⑨  自由度可=4のとき信頼度95%でのτ値は α。25=2.776であるから,帰無

仮説b12=0が棄却されて対立仮説bl2≒0が採択される。ちとX2の間には線 形関係があるということを信頼度95%では結論できる。

 同様にして,

   ん一鯖゜−i:灘≒・・9528………・……・・………・…・…⑩

 この場合にはτ。値が小さいので帰無仮説α=0を棄却できない。

 次に,回帰係数b、2の信頼区間(confidence interval)は式⑪と⑫で得られる。

 信頼度95%のときのb、2に関する95%信頼区間は⑪を使って⑫と求められる。

b、2± (、一。)/2・Sb12=b、2±τ。.。25・Sb12………・……・…・………・…・……・……・⑪

(21)

したがつて,

0.6112±(2.776)(0.06519)=0.6112±0.180967

すなわち,

  0・43023<b・2<0・79217………・…・…・・………・……・………⑫ 同様にして,αに関する95%信頼区間は次のようになる(〔19〕p.22)。

  α± α・25・S・=5.9878±(2.776)(3.0664)=5.9878±8.51233………⑬ すなわち,

   一2・5245<α<14・500…・・…・………・………・・…………・⑭

 (B)非線形回帰モデルによるコストと利益の推定法

 従属変数γが1個の独立変数Xの2次回帰方程式で表わされる非線形回帰分

析(nonlinear regression analysis)についてコストと利益の推定法を研究したい。

 ある製品の総利益(total profit)のγが製品の生産数量Xの2次回帰方程式① の如く表現されている総利益関数のモデルを考える。

   γ=α+bX+cx2…・…・………・………・・…・・……・①

 表4.3はγとXに関する現実の過去的観測値で,これらについて原価と利益

の推定法を考察する。

       表4.3 製品の生産数量と総利益

生産量X(ロット) 2

3

4 5 6 7

8

総利益γ(百万円)

80 130 170 190 210 200 180

     A

п@定 値γ

78.57 131.43 170.00 194.29 204.29 200.00 181.43

       A

c差平方和(γ一γ)2

2.0407 2.0409 0.0000 18,368 32,655 0.0000

2.03957

(22)

156       吉 永 雄 毅

データ数N=7  ΣX=35

 Σγ=1,160

ΣX2=203 ΣX3=1,295

ΣX4ニ8,771

Σγ2=204,800 ΣXγ=6,280 ΣX2γ=37,840

 求める推定の2次回帰方程式は式②として得られた。

   γ=−70.000+88.571X−7.143×2……・……・・……・…………・・……・・②

 それぞれのXの観測データ値を代入すると総利益γの推定値γが表4.3のよ

うに得られる。

 次に,推定式に関していろいろと考察してみたいのであるが,上述のように

連立方程式が複雑化してくればその解は行列代数学(matrix algebra)を活用す るのが有益である。

 次のようにして行列Bで回帰母数が計算される(〔46〕pp.322〜323)。

   Bニ(X X)−1(X γ)

    −1遇i:≡i螂一一一 

 上記の2次回帰方程式によるXからのyの推定の標準誤差S,.∬は次式で得

られる(〔21〕p.155)。

   亀・。一(留2一漂i−57量44−3・7797…・…・……・④

 次に相関指数(index of correlation)は線形回帰分析の場合の相関係数に類似 の測度であり式⑤で求められる。

   物・・一ト『昔…………・・…・………・・…………・……・………・⑤

(23)

ここで,り .。=Xからのγの推定の相関指数        島=γの標準偏差

       Sいエ=Xからのγの推定の標準誤差,

亀一Σ(r−}7)2一誓一(馴2

  −2°4;8°°一(1・}6°)2−.醒豆≒42.378

したがって,

   ・…一・一鵠6−・・996・・………・…………・・…………・……・…⑥

 つまり,Xに対するγの2次回帰方程式においてはXとγとの相関関係が

非常に高いので,総利益は生産量と高い相関関係を持つといえる。

 (C)重相関分析による売上高と販売並びに管理費の予測

 重相関分析は1つの従属変数と2個以上の独立変数の組との間の相関関係を

分析することを意味し,多元相関分析ともいう(〔24〕p.668)。

 多元回帰分析(multiple regression analysis)の一般式は式①で表現される。

酩二α+b・品+b2×2+……+b。X。・……・………・…・………・……・……①

 ここで,互は従属変数で多元回帰方程式の推定値を示し,X。 S(κ=1,2,

…,η)は独立変数を意味し,b。〃Sは各尤の係数でそれぞれの悉の1単位の

変化に対応するγの変化の値を示し,αは定数項でX=0のときのちの値で

ある(〔22〕p.92,〔24〕p.668)。

 次の例題は,多元線形回帰分析(multiple linear regression analysis)を表現

しているので,マネジメント論並びに管理会計論の観点から考察してみたい

(〔27〕 p.650, 〔32〕 pp.229〜231)o

 ある企業が製品X2,2(3,瓦の3種類を生産しているとしてそれに関する売

上高(単位:千ドル)と販売並びに管理費X、とが表4.4の如くであるモデルに

(24)

158       吉 永 雄 毅 ついて考察してみよう。

表4.4 製品の売上高と販売並びに管理費

期   間 1 2 3

4

5 6 7

8

9

10

合  計

i千ドル)

製品・X2 2,000 1,940 1,950 1,860 1,820 1,860 1,880 1,850 1,810 1,770

ΣX2

@=18,740

売手上ド高と

製品・x3 400 430

380

460 390 440 420 380 390 290

ΣX3

@ =3,980

製品・X4 600 610 630 620 640 580

570

580 580

610

ΣX4

@ =6,020

販売並びに管理費x、 450 445 445 438 433 437 438 434 430 425

ΣXl

@ =4,375

      {

п@ 定  値X1449.91 444.98 445.21 438.09 432.90 436.64 437.87 434.17 430.48 424.79

ΣXl

≠S,375.04

 Σ品2=1,914,577(千ドル)

 Σ溺二35,163,600  Σ瑠=1,603,600  Σ避=3,629,200 ΣXIX2=8,203,500 ΣXIX3=1,742,910

  ΣXIX4=2,633,970   ΣX2×3=7,470,800   ΣX2×4=11,282,800   ΣX3×4=2,394,600

Σ(X−X1)2=513.85 Σ(Xl−X1)2=0.47728

 販売並びに管理費品((単位:千ドル))が3つの独立変数晃,X3, X4の従属

変数で式②の多元線形回帰方程式で示される推定回帰式を持つと仮定する。

品=α+b、234遊+bl3.24為+bl4.23×4…………・…・・………・…………②

この重回帰方程式の正規方程式は最小2乗法から式③となる。

ΣX1 =砺  十bl2.34ΣX2 十b、3.24ΣX3 +b14.23Σ品  …(3.1)

Σ面遊=αΣ逓+b、2.34ΣX多 +b、324Σ晃X3+b14.23ΣX2×4…(3.2)

ΣXiX3=αΣX3+b、2.34ΣX2×3+bl3.24Σ瑠 +b14.23ΣX3面…(3.3)

ΣXIX4=αΣX4+b、234ΣX2×4+b、3,24Σ為X4+b14.23ΣXZ…(3.4)

……

B

(25)

 式②の回帰パラメータα,b、23、, b13.24, b14.23を求めるためには③の連立方程

式を4個のパラメータについて解けばよい。

 ゆえに,求める多元回帰方程式は式④のように得られたのである。

   X1=228.77+0.09844X、+0.02472X、+0.02397X、………一④  この式は,製品を全く生産しなくても販売並びに管理費X1が228.77(千ド

ル)だけ必要であることを示唆しないが,固定的費用を示唆する。

 次に,④式による推定の標準誤差s.は式⑤で与えられるが,これは茜の推

定値がどの程度信頼できるかの測度を表わす(可は自由度を示す)。

&一

睡b名)2一Σ縛)2−1醗一・282・39………⑤

 次に,④に関して重決定係数(the coefficient・f multiple determinati・n)は R了.234の記号で表示され⑥で与えられる(〔19〕p.104,p.111)。

繊÷蒸IP・一…一…一⑲

       1,914,564−⊥(4,375)・

Rム= P卿77−

(4375)・=ll}:ll=°975 …・⑦

 次に重相関係数1〜L23、は重決定係数の平方根として式⑧で求められる。

  Rl.234ニ㎡6.975≒0.987………・…………一…・…⑧

 この値からぷと独立変数との重相関は非常に高いといえる。

 4.3 経営管理論に関する管理工学モデル  (A)労務費の推定のための学習曲線回帰モデル

 学習曲線回帰モデル(learning curve regression model)は労務費(labor cost)

の導出においてもみられる(〔23〕p.669,〔22〕p.291,〔24〕p.654)。

(26)

160       吉永雄毅

γ=αXb・・………・・………・・………・・…・………・①

 ここで,γ=単位産出高当たりのコストまたは時間の平均値

α=最初の1単位(または1バッチ)の生産のために所要なコストまたは時間 X=生産された単位またはバッチの累積数量

b=学習効果(指数)=2の対数で割られた学習率の対数

γ=学習率,b=log 7/log 2,1一γ=進歩率

学習の程度が高くなると出来高が増大するので低コスト化する。

〔例題〕 次の労働時間の観測データを用いて,(1)学習曲線の推定回帰式②を 求めよ(κとbを求める)。

γ=1αb……・…・…・………・一・……・・…………・………・…② 表4.5 労働時間の観測値と解(N=5)

週  1  2  3  4  5

各週の総生 Y量 (1)

累積単位数

@  (2)

直接労働

厲寢ヤ (3)

累積直接労 ュ時間 (4)

累積の平均直接

J働時間/単位(5)

100単位

100 2,050時間 2,050時間 20.50時間

100

200 1,478

   一

R,528 17.64

200 400 2,536 6,064 15.16

400 800 4,352 10,416 13.02

800 1,600 7,504 17,920 11.20

〔解答〕 単位生産量当たり労働時間平均値をγ,最初の1単位当たりの所要 時間を五,累積生産単位数をX,学習効果をbとして②の学習曲線回帰モデル

を推定する。②を線形対数式③に変形して,その正規方程式④を得る。

?=Kx・………・……・…………・・……・……・………・…・・………・・⑳ 109γ=logK+b(logX)……・・…………・…・…・………・…・・………③

:ll㌫㌶三㌶㍍1三;:1劉一④

(27)

正規方程式④をbとlog1(に関して解くと式(5.1)と(5.2)を得る。

 b=〔」V・Σ(logX)(lo9γ)一(Σ10gX)(Σ109γ)〕/〔ノV・Σ(logX)2

   −(ΣlogX)2〕=〔5(15.16160)一(13.01030)(5.902781)〕/((4.530944)

  =(−0.98802)/(4.530944)=−0.218233・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… (5.1)

 lo9、。K=〔Σ(10gX)2・Σ(lo9γ)一Σ(logX)1Σ(logX)(IQg r)}〕/

   〔1V・Σ(10gX)2−(Σ10gX)2〕=〔(34.75977)(5.902781)〕

      一(13.01030)(15.16163)〕/〔5(34.75977)一(13.01030)2〕

     =(7.921955)/(4.530944)=1.748412 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… (5.2)

  ∴  1(=101 748412=56.02888・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… ◆・・・・・・・・・・・・・… (5.3)

したがって,求める学習曲線回帰式は⑥となる。

  γ=56.02888X−°・218233°…・………・……・…・……・………・………⑥

また,回帰線はlogγとlogXの平均値の座標を通るので式⑦でもlog Kを求め

得る。

lo910κ=(lo9γ)−b(logX)=1.180556−(−0.218233)(2.602060)

   =1.748412…………・………・……・……・………⑦        表4.6 労働時間の推定資料

x

10910X

10910}三 (logX)(109D

(109、。X),

1 100

20.50

2.000000 1.311754 2.623508 4.00000

2 200 17.64

2.3010330 1.246499 2.868231 5.294739

3 400 15.16

2.602060 1.180699 3.072250 6.770716

4 800 13.02

2.903090 1.114611 3.23516 8.427932

5

1,600 11.20

3.204120 1.049218 3.361821 10.266385

合計 3,100 77.52

13.01030 5.902781 15.16163 34.75977

(28)

162      吉永雄毅 V.結語として

 以上において,経営意思決定論と管理工学モデルというタイトルの下にいろ いろと考察してきたのである。経営意思決定論も現代経営学の新研究領域であ り重要な分野であることを強調しなければならない。また,管理工学もコン

ピューター化時代ないし高度情報化時代において経営学研究上だけでなくて,

会計学,商業学,マーケティング学,そして経済学,等々において益々その重

要度が高くなってきているのである。

 科学的な意思決定のために,管理工学並びに管理工学モデルの研究は必須不 可欠の事柄であることを強調しておきたい。経営情報論のためにも,さらに管 理工学,経営工学,行動科学,経営学,計量経済学,マネジリアル・エコノ

ミックス等を研究したいのである。   平成3年12月26日稿

〔注〕 参考文献(順不同)

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〔2〕 Elwood S. Buffa, Modern Production/Operations Management ,7th ed., John

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〔3〕W.W. Haynes, J. L. Massie, Management−Analysis, Concepts and Cases ,   Maruzen,1971.

〔4〕 R.A. Johnson, F. E. Kast, J. E. Rosenzweig, The Theory and Management of   Systems ,2nd ed,. Kogakusha,1967.

〔5〕 F.E. Kast, J. E. Rosenzweig, Organization and Management , McGraw−Hill   Inc.1985.

〔・6〕 R.1.Levin, C. A. Kirkpatrick, D. S. Rubin, Quantitative Approach to Manage−

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〔7〕J.W. Mixon, Jr.&. N. D. Uri, Managerial Economics , Macmillan Publishing

  Co., New York,1985.

〔8〕J.LLiggs Productions Systems−Pla㎜ing, Analysis and Controi , John Wiley

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〔9〕 G.Gordon,1. Pressman,&S. Cohn, Quantitative Decision Making for   Business 3rd ed., Prentice−Hall Inc.1990.

参照

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