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日本のゴルフ場における 喫煙環境と受動喫煙対策の現状と課題

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<研究資料>

日本のゴルフ場における

喫煙環境と受動喫煙対策の現状と課題

北   徹 朗 髙 𣘺 宗 良 橋 口 剛 夫 吉 原   紳

1 .は じ め に

 喫煙は,肺や心臓疾患,脳血管疾患,悪性新生 物を誘発する大きな原因であることや,喫煙者の みならず非喫煙者も健康被害を受ける可能性があ ることは既に広く知られている。

 世界保健機関(WHO)では,1995年にたばこ 規制に関する施策の必要性が議論され,1998年に は条約の作成が提案された。その後,政府間交渉 などの過程を経て,2003年 5 月21日の総会で「た ばこの規制に関する世界保健機関枠組条約」

(WHO Framework Convention on Tobacco Control:略称 WHO FCTC)を全会一致で採択 した。FCTC に日本が参加を表明したのは2004 年 6 月だったが「WHO 加盟国の40カ国以上が参 加してからの発効」という取決めになって,実際 に効力が発生したのは,2005年 2 月27日からだっ た。FCTC には,2013年 9 月現在168カ国が批准 し, 5 回の締約国会議を経て,受動喫煙防止・公 衆衛生政策のたばこ産業からの保護・たばこの警 告表示・たばこの広告と宣伝の禁止・禁煙治療な どのガイドライン・たばこ製品の不法取引廃絶に 関する議定書などが定められている1)

 日本においては,2009年 3 月に,神奈川県にお

いて日本初の「受動喫煙防止条例」が成立(2010 年 4 月施行)し,2013年 4 月には神奈川県に続い て兵庫県においても同条例が施行された。こうし た情勢もあり,日本人の成人喫煙率は近年一貫し て減少傾向にあり,日本におけるたばこの販売本 数も減少し続けている2)

 ゴルフはその殆どが歩く運動(ボールを打って いる時間は 2 ~ 3 分)であることから,「健康づ くり運動」として推奨されることが多い3)。ま た,仲間とのコミュニケーションも密であること から,生涯スポーツとしても魅力が高いと言え る。しかし,その一方で,プレー中における死亡 事故は国内外を問わず多く発生している。この背 景としては,ゴルフはプレー中やプレー間の喫煙 や飲酒が概ね許容されている稀有なスポーツであ ることも考えられる。すなわち,心臓疾患を主因 としてプレー中に死亡事故を引き起こすことが示 唆されている4)5)6)

 著者らは過去にゴルフコースラウンド中の心臓 自律神経活動の変動7)や,ラウンド中の喫煙が心 臓自律神経活動に及ぼす影響8)について検討し た。さらに,国内外のゴルフ場における死亡事故 の実態を調査し,飲酒や喫煙を伴うゴルフの危険 性を示してきた。それと同時に,著者らは2012年 よりゴルフ場における喫煙環境と受動喫煙対策に

(2)

14 体 育 研 究 第50号(2016)

ついて調査を続けてきた。今回,全国のゴルフ場 における喫煙環境および禁煙対策の実態について のデータが揃ったので報告する。

2 .方   法

 全国のゴルフ場1878コースの支配人に質問紙を 郵送した。調査期間は2013年 5 月 1 日~ 6 月30日 であり,有効回収率は20.9%(有効回収数393)

であった。

 調査項目は北田ら9)10)が実施したサービス産業 等に対する調査項目を参考にした。

3 .結果および考察

 『コース内・ラウンド中にタバコを吸える場 所』として,「各ティーグラウンド」(第 1 打を打 つ場所)が殆どのゴルフ場(89.6%)で挙げられ た(図 1 )。

 『クラブハウス内の喫煙環境』として,「「屋 内」に喫煙場所を設置」が最も多く(58.1%),

次いで「「屋外」に喫煙場所を設置」(48.7%),

「全面禁煙」(18.3%),「全面喫煙可」(14.5%)の 順に多く挙げられ,「喫煙ルーム(煙が拡散しな い)を設置」への回答率は9.9%と少なかった(図

2 )。

 『レストラン内の喫煙環境』については,全面 禁煙(40.6%)への回答が最も多かった(図 3 )。

 『ゴルフ場としてタバコ対策の基本方針を決め ているか』については,「決めている」ゴルフ場 は27.4%,「検討中」が17.0%であった。半数のゴ

図 4  ゴルフ場としてタバコ対策の基本方針を決めて いるか

5.6

17.0

50.0 27.4

0.0 50.0(%)

決めている 特に決めていない 検討中 無回答

図 5  健康増進法施行(2003年 5 月)後何らかの受動 喫煙対策を実施したか

10.7 4.1 3.8 8.1

無回答 その他 施行後7年以内に実施した 施行後5年以内に実施した 施行後3年以内に実施した 施行後1年以内に実施した 何もしていない

10.9 18.0

44.4

0.0 50.0(%)

図 1  ラウンド中にタバコを吸える場所0.0 50.0 100.0(%)

5.6 10.7

60.4 72.1 各ティーグラウンド 89.6

カート内 茶屋・トイレ周辺 コース内 その他

図 2  クラブハウス内の喫煙環境 5.1

9.9 14.5

18.3

48.7 58.1

0.0 20.0 40.0 60.0(%)

「屋内」に喫煙場所を設置

「屋外」に喫煙場所を設置 全面禁煙 全面喫煙可 喫煙ルーム(煙が拡散しない)を設置 その他

図 3  レストラン内の喫煙環境 17.5

2.3 6.3

33.0 40.6

0.0 50.0(%)

全面禁煙 禁煙席・喫煙席を分けている 全面喫煙可 禁煙タイムを設定 その他

(3)

15 北・髙𣘺・橋口・吉原:日本のゴルフ場における喫煙環境と受動喫煙対策の現状と課題

ルフ場支配人は「決めていない」(50.0%)と回 答した(図 4 )。

 『健康増進法施行(2003年 5 月)後何らかの受 動喫煙対策を実施したか』については,約半数が

「何もしていない」(44.4%)と回答した(図 5 )。

 『ゴルフ場内の喫煙環境規制はビジネスに影響 すると思うか』については,約40%の支配人は

「タバコ規制はビジネスに影響しない」と考えて いた(図 6 )。

 『ゴルフ場での「受動喫煙」は全ての人(顧 客・従業員・出入り業者等)の健康にとって有害 であると思うか』を尋ねたところ,68.8%の支配 人は「そう思う」(強くそう思う,そう思う,の 合計)と回答した(図 7 )。

 また,『ゴルフ場を「完全禁煙」することは従 業員の健康のために大切であると思うか』につい ても,ほぼ同程度の回答率であった(図 8 )。

図 6  ゴルフ場内の喫煙環境規制はビジネスに影響す ると思うか

29.2 12.9

0.8

33.8

無回答 全くそう思わない そう思わない どちらとも言えない そう思う 強くそう思う

18.5 4.8

0.0 40.0(%)

図 7  ゴルフ場での「受動喫煙」は全ての人(顧客・

従業員・出入り業者等)の健康にとって有害で あると思うか

5.6 0.3

0.8

24.6

無回答 全くそう思わない そう思わない どちらとも言えない そう思う 強くそう思う

54.8 14.0

0.0 30.0 60.0(%)

図 8  ゴルフ場を「完全禁煙」することは従業員の健 康のために大切であると思うか

6.1 1.0 0.8

37.8

無回答 全くそう思わない そう思わない どちらとも言えない そう思う 強くそう思う

44.4 9.9

0.0 50.0(%)

図 9  今後の禁煙対策に必要な法規制のレベル 14.7 3.3

4.6

34.5

無回答 その他 神奈川県のような都道府県による条例 諸外国のような全国レベルの禁煙法

各業界団体による自主規制 42.9

0.0 50.0(%)

図10 今後のゴルフ場が喫煙対策を進める上で必要な要素 6.3

4.9 2.2 1.2 0.8

10.6

その他 世界の禁煙化 国や NPO などからの情報提供 従業員の理解 国からの補助金 日本国内の禁煙化 メディアによる喫煙・禁煙の情報提供 業界内・同業者の動向 顧客からの禁煙を求めるニーズ

受動喫煙を禁止する条例や法的規制 25.9

17.2 16.7 14.2

0.0 30.0(%)

 『今後の禁煙対策に必要な法規制のレベル』に ついては,「各業界団体による自主規制」への回 答率が最も高く(42.9%),次いで,「諸外国の様 な全国レベルの禁煙法」(34.5%),「神奈川県の 様な都道府県による条例」(14.7%)の順に多く 挙げられ,事業者での取決めや国を挙げてのル―

ル作りの必要性が示唆された(図 9 )。

 『今後のゴルフ場が喫煙対策を進める上で必要 な要素』としては,「受動喫煙を禁止する条例や

(4)

16 体 育 研 究 第50号(2016)

法的規制」(25.9%)が最も多く,次いで「顧客 からの禁煙を求めるニーズ」(17.2%),「業界内・

同業者の動向」(16.7%),「メディアによる喫煙・

禁煙の情報提供」(14.2%),「日本国内の禁煙化」

(10.6%),「国からの補助金」(6.3%),「従業員の 理解」(4.9%),「国や NPO などからの情報提供」

(2.2%),「世界の禁煙化」(1.2%),「その他」

(0.8%)であった(図10)。

ま と め

 今回の調査結果からゴルフ場における喫煙環境 と対策の実施状況に関する基礎資料が得られた。

 主な結果として,

・ 殆どのゴルフ場でラウンド中に喫煙可能であ る。

・ 約半数のゴルフ場で喫煙対策の基本方針が決 められていない。

・ 喫煙規制がビジネスに悪影響を及ぼすと考え るのは23.3%に過ぎない。

・ 受動喫煙を禁止する条例や法的規制が望まれ ている。

ことなどが明らかとなった。過去に著者らが報告 した,九州11)や首都圏12)のゴルフ場に対する分析 結果と比較しても,地域差などは認められなかっ た。

 今回の調査では,喫煙に関する法規制のレベル として「諸外国のような全国レベルの禁煙法」

(34.5%)への回答率が最も高かった。北田らの 報告9)でも同様の傾向であり,サービス産業全体 において喫煙を抑制する対策が求められているの かもしれない。

 2016年のリオデジャネイロオリンピックからゴ ルフは正式種目になる。2020年には東京でのオリ ンピック開催が決定した。招致活動当時から,受 動喫煙防止法が未整備の日本の遅れが指摘されて いた。実際,近年のオリンピック開催都市では,

多くの場合招致活動時には受動喫煙防止法が制定 されており13),日本におけるゴルフ場およびゴル ファーにおいても,オリンピック正式種目に恥じ

ないスタイルを示すことが早急に求められている。

付記: 本研究の実施にあたり,2013年度日本禁煙学会 調査研究事業助成の一部が充てられた。

参考文献・参考資料

1 )外務省ウェブサイト:たばこの規制に関する世界 保 健 機 関 枠 組 条 約(http://www.mofa.go.jp/mofaj/

gaiko/who/fctc.html)2015年 9 月23日確認

2 )松沢成文(2013)JT,財務省,たばこ利権 日本 最後の巨大利権の闇,ワニブックス,pp. 18-34 3 )北徹朗(2011)8.ゴルフ,メタボリックシンド

ロームに効果的な運動・スポーツ,ナップ

4 )Kross BC, Burmeister LF, Ogilvie LK, et al(1996)

Proportionate mortality study of golf course superintendents, Am J Ind Med. 29, pp. 501-506 5 )吉原紳・北徹朗ら(2011)ゴルフの安全対策-ゴ

ルフ場へのアンケート調査による事故(傷害・障害)

の実態と予防対策についての検討,臨床スポーツ医 学28,pp. 92-104

6 )北徹朗・吉原紳ほか(2010)北米のゴルフ場にお ける事故発生状況とリスクマネジメントに関する調 査,臨床スポーツ医学 27,pp. 1396-1399

7 )髙橋宗良・北徹朗(2011)ゴルフ・ラウンド中の 心拍変動について,ゴルフの科学24,pp. 62-63 8 )高橋宗良・北徹朗ほか(2013)ゴルフ・ラウンド

中の喫煙が心臓自律神経活動に及ぼす影響,ゴルフ の科学26,pp. 48-49

9 )北田雅子・秦温信ほか(2010)日本国内の宿泊産 業における受動喫煙対策の現状と課題,禁煙会誌 2010;5,pp. 33-43

10)北田雅子・秦温信ほか(2012)日本国内の主要外 食チェーン企業における喫煙対策の現状と課題,禁 煙会誌2012;7,pp. 8-16

11)Kita T, Takahashi M, Hashiguchi T, Yoshihara S

(2013)Current Situation of Smoking Environment and Measure against Passive Smoking in Golf Course in the Kyushu Distinct, The 10th APACT Conference Program and Abstract Book, p. 206 12)北徹朗・高橋宗良・橋口剛夫・吉原紳(2014)首

都圏近郊ゴルフ場における喫煙環境と受動喫煙対策,

日本健康医療学会第 7 回総会・学術総会プログラム 抄録集,p. 109

13)日本禁煙学会ウェブサイト:オリンピックと禁煙

(http://www.nosmoke55.jp/action/olympic.html)

参照

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