講 演
ドイツおよび EU における 弁護士社団法の近時の動向
Neue Entwicklung im anwaltlichen Gesellschaftsrecht in BRD und EU
クリスティアン・デッケンブロック
*訳
森 勇
**訳者はしがき
ここに訳出したのは,日本弁護士連合会との共催のもと,2019年 ₃ 月12 日に,弁護士会館において行われた,日本比較法研究所主催のセミナー
「ドイツおよび
EU
における弁護士社団法の動向」における基調講演であ る。いわゆるワンストップサービスを実現するには,弁護士間のみならず異 業種間共同が不可欠であるが,わが国では,権利能力を備えた業務共同は 弁護士間のみに限られ,提供される法形式は「弁護士法人」のみである。
これに対し,英米および大陸ヨーロッパの多くの国では,異業種間共同組 織として,株式会社を含む様々な法形式が認められている。
弁護士などの自由職業者がワンストップで良質のサービスを提供するた めには,共同組織の承認が不可欠である。果たしてどのような法形式が考 えられるのか。そして,広く業務共同を認めるには,どのような環境が整 えられなくてはならないのか。議論が盛んなドイツを中心にヨーロッパの
* ケルン大学准教授 Christian Deckenbrock
Akademischer Oberrat Dr. an der Universität zu Köln
** 客員研究所員・元中央大学法科大学院教授
現況を俯瞰する本講演は,この分野におけるわが国の著しい遅れに警鐘を 鳴らすとともに,わが国が歩を進めるにあたり,検討すべきはなにかを示 唆してくれる。
最後に,本講演の翻訳にあたっては,本研究所嘱託研究員である弁護士 應本昌樹氏の多大なご支援をいただいた。この場を借りてお礼申し上げた い。
I.事実上および法律上の枠組みの展開
1878年に最初の弁護士法が制定されたとき,「単独弁護士が弁護士の理 念型とされており,大規模業務共同形態(Sozietäten)における機械的な 事務処理は,入念な弁護士の助言に対する危機とみられていた」1)。こう し た 観 念 は 驚 く ほ ど 長 く 維 持 さ れ た。 連 邦 通 常 裁 判 所(Bundesge-
richtshof=BGH) が地域をまたいだ業務共同形態(隔地間業務共同形態)
を認めた2)1989年,そして,連邦弁護士法59条
a
の新規律によりはじめて 弁護士の職業法に職業上共同に関する法律上の規律が導入された3)1994年 まで続いたのである。この時点(1994年)まで,この規定は,民法上の組合(GbR)という方 形式を用いた共同のみにしか目を向けることができなかったのであった。
弁護士は,民法上の組合という形式で,(すべての職業に従事する者が無 限責任を負う結果となる)共同での職業実践を組むか,あるいは単に事務 組織のみをシェアーする共同(合同事務所(Bürogemeinschaft))を組む かのいずれかをすることができたし,今日でもまたこれは可能である。
しかし,ここ20年の間,多くの進展があった。今日弁護士には,幅広い
1) Henssler, Anwaltsgesellschaften, NJW 1993, 2137.
2) BGH, Beschluss vom 18.9.1989 ─ AnwZ (B) 30/89, BGHZ 108, 290, 293 ff. = NJW 1989, 2890, 2891.
3) Eingefügt durch Art. 1 Nr. 24 des Gesetzes zur Neuordnung des Berufsrechts der Rechtsanwälte und der Patentanwälte vom 2.9.1994, BGBl. I S. 2278.
法形式のパレットが用意されている。そのうちで特記すべきは,特に自由 職業者向けに(1995年 ₇ 月 ₁ 日より) 用意されたパートナー社団(Part-
nergesellschaft)
4)である。職業上の過誤については,パートナー社団に加え,当該委任に従事した弁護士のみが責任を負うものの(パートナー社団 法【Gesetz über die Partnerschaftsgesellschaften Angehöriger Freier
Berufe=PartGG】 ₈ 条 ₂ 項),職業的性質のない義務(たとえば,事務所
スペースの賃貸借,コンピューターの購入)については,すべてのパート ナーが連帯責任を負う(パートナー社団法 ₈ 条 ₁ 項 ₁ 文)。2013年 ₇ 月 ₁ 日より,自由職業に従事する者,したがって弁護士もまた,パートナー社 団の魅力的な特殊形態, つまり有限職業責任パートナー社団(PartGmbB)を手にいれた
5)。そこでは,パートナー社団が最低保険金額250万ユーロとする職業賠償責任保険(Berufshaufpflichtversicherung) に社団 として加入しており(連邦弁護士法51条
a
参照),加えてパートナー社団 の名称に「有限職業責任」またはこのことが一般的にわかる略称を付加し ている場合には(パートナー社団法 ₈ 条 ₄ 項),職業実践上の過誤に起因 した損害に基づく諸義務に対するパートナー社団の責任は,社団財産に限 られる。職業上の義務違反の場合,社団構成員は,当該委任事務処理担当 者も含め,だれもそれ以上の責任を負わない。完全な責任制限が職業外の義務違反にも適用されることとなる,資本会 社における弁護士の職業実践も,近時認められた。有限責任会社に関して は,連邦弁護士法59条
c
以下で幅広く規律されている6)一方,株式会社に 4) Gesetz über Partnerschaftsgesellschaften Angehöriger Freier Berufe (Partner-schaftsgesellschaftsgesetz ─ PartGG) vom 25.7.1994, BGBl. I S. 1744.
5) Gesetz zur Einführung einer Partnerschaftsgesellschaft mit beschränkter Be- rufshaftung und zur Änderung des Berufsrechts der Rechtsanwälte, Patentanwäl- te, Steuerberater und Wirtschaftsprüfer vom 15.7.2013, (BGBl. I S. 2386)の ₁ 条 により追加。
6) Gesetz zur Änderung der Bundesrechtsanwaltsordnung, der Patentanwaltsord- nung und anderer Gesetze vom 31.8.1998, BGBl. I S. 2600 により追加。弁護士 有限会社の法律上の規律はバイエルン州最上級裁判所(BayObLG)が下した
ついては,連邦通常裁判所2005年 ₁ 月10日裁判により,弁護士の共同に対 してもその門戸が開かれた7)が,これについての法律上の規律は,今まで のところない。
加えて,弁護士の結合には,LLPを頂点として,多様な外国の組織形態 を用いることができる。すなわち,EUにおける営業の自由8)に基づき,
弁護士社団は,ドイツに所在する場合にも,外国の法形式を利用できる9)。 しかし,弁護士には,合名会社や合資会社といった人的商事会社は禁じ られている。商法典105条のコンセプトにより,この法形式により組織化 できるのは,商人的,それゆえ営業的な事業(企業)のみであり,自由職 業上の事業はこれを用いて組織化をはかることができない10)。
1994年11月24日の決定(Beschluss vom 24.11.1994 ─ 3 ZBR 115/94, NJW 1995, 199)にさかのぼる。Gesetz zur Modernisierung des GmbH-Rechts und zur Be- kämpfung von Missbräuchen (MoMiG) vom 23.10.2008 (BGBl. I S. 2026) 1条に より,2008年11月24日(有限責任の)企業社団(Unternehmergesellschaft)が 導入された以降は,最低資本金のない弁護士社団(会社【Anwalts-UG】)の設 立も可能となっている。vgl. § 5a GmbHG.
7) BGH, Beschluss vom 10.1.2005 ─ AnwZ (B) 27 u. 28/03, BGHZ 161, 376 = NJW 2005, 1568以降,その適法性は容認されている。
8) EuGH, Urteil vom 9.3.1999 ─ Rs. C-212─97, Slg. 1999, I-1459 = NJW 1999, 2027 (Centros); EuGH, Urteil vom 30.9.2003 ─ Rs. C-167/01, Slg. 2003, I-10155 = NJW 2003, 3331 (Inspire Art).
9) この点については,Kilian, in: Henssler/Streck, Handbuch Sozietätsrecht, 2.
Aufl. 2011, G Rn. 1 ff.参 照。Grunewald/Müller, Ausländische Rechtsberatungs- gesellschaften in Deutschland, NJW 2005, 465 ff.; Henssler, Die Zulassung auslän- discher Anwaltsgesellschaften in Deutschland, Festschrift für Busse, 2005, S. 127 ff.; Henssler, Die Postulationsfähigkeit ausländischer Anwaltsgesellschaften, NJW 2009, 3136 ff.; Henssler/Mansel, Die Limited Liability Partnership als Organisati- onsform anwaltlicher Berufsausübung, NJW 2007, 1393 ff.
10) BGH, Urteil vom 18.7.2011 ─ AnwZ (Brfg) 18/10, NJW 2011, 3036 Rn. 4 ff.この 裁判に対する憲法抗告は, 棄却されている(BVerfG [2. Kammer des Ersten Senats], Beschluss vom 6.12.2011 ─ 1 BvR 2280/11NJW 2012, 993)。このテーマ に関しては,Henssler, NZG 2011, 1121 ff.; Henssler/Markworth, Anforderungen
実際にも,ここ20年の間に制度的枠組みは著しく変化した。統計上把握 できるのは,パートナー社団(有限職業責任)と有限会社そして株式会社 のみであるとしても,─そしてまた,ここでも把握できるのは各社団の 数だけであり, 当該法形式において活動する弁護士の数ではないが
─11),今日では合計165,000名弱の弁護士のうち90,000名が職業実践共同 体(Berufsausübungsgemeinschaften)において活動していると考えられ ている12)。特に注目すべきは,近時のパートナー社団(4,797社団)およ びここでは特にその特殊形態である有限職業責任パートナー社団(1,983 社団)が経験したその繁盛ぶりである。この人的社団法上の法形式には,
税法上の利点があり13),弁護士有限会社(884社)14),弁護士株式会社(24 社)および
LLP(155団体)
15)を明らかに凌駕している。潮目は個人的な 職業実践から共同的なそれへとその流れを移している16)。an eine Freiberufler-GmbH & Co. KG, NZG 2015, 1 ff.; Westermann, Zur Zulas- sung der GmbH & Co. KG (auch: UG & Co. KG) als Berufsausübungsgesell- schaft von Rechtsanwälten, NZG 2019, 1 ff.も参照。
11) 2008年 ₁ 月 ₁ 日付け連邦弁護士会の会員統計(Große Mitgliederstatistik der BRAK)。https://www.brak.de/w/files/04_fuer_journalisten/statistiken/2018/
mg-2018.pdf
12) Kilian, Management von Haftungsrisiken in Anwaltskanzleien, 2014, S. 51.の 数値参照。
13) この点については,Henssler/Streck, Handbuch Sozietätsrecht, 2. Aufl. 2018, A Rn. 66 ff.; Henssler, PartGG, 3. Aufl. 2018, Einführung Rn. 17 ff.参照。
14) これに加え,弁護士企業社団(Unternehmersgesellschscaft)の法形式での 職業実践社団がある。
15) Kilian/Dreske, Statistisches Jahrbuch der Anwaltschaft, 2017/2018, 2018, S.
141 (Tab. 4.3.2).
16) Henssler, in: Henssler/Streck, Handbuch Sozietätsrecht, 2. Aufl. 2011, A Rn. 6 がすでに指摘している。
II.弁護士職業法による異業種間職業実践共同体の障害
近時マルティン・ヘンスラー(Martin Henssler)教授は,「弁護士社団 に関連する職業法は……未完同然である」,そう断言した17)。特によくな いことには,ここ25年の間,立法者は弁護士社団法の全面的改革を成し遂 げることができず,いまだに個別問題の処理を繰り返すにとどまってい る。それゆえ,連邦弁護士法においては,同法59条
a
が,民法上の組合ま たはパートナー社団の形式での共同をあつかう唯一の規律であるのに対 し,弁護士有限会社が連邦弁護士法59条c
以下において明らかに過剰に規 制されているのは,一見して奇異である。ひるがえって,株式会社または 利用できる外国の法形式を用いた共同の職業実践は,まったく規律されて いない。適用される法律の質は,個人的な職業実践から共同的なそれへと 向かっている顕著な流れを示している現実の展開にも,ついてゆけてはい なかった。以下に詳しく紹介する連邦通常裁判所(後述 ₁ .)および連邦憲法裁判 所(後述 ₂ .)の二つの基本的裁判は,この点で最近注目を集め,弁護士 の社団法における改革の必要性を特に明らかにした。さらなる改革の必要 性は,もはや時勢にかなっていない単独弁護士志向の職業法から生じてい る(後述 ₃ .)。
1 .第 1 の弱点:社員範囲の制限(連邦弁護士法59条 a)
a)現状および改革の試みの挫折
連邦弁護士法59条
a
の業務共同形態規定の本質的な内容は,社員の範囲17) Henssler, DAV-Diskussionsvorschlag zum anwaltlichen Gesellschaftsrecht, An- wBl Online 2018, 564, 567; vgl. auch Römermann, Das Tor steht offen: Das BVerfG erlaubt weitergehende interprofessionelle Zusammenarbeit von Rechts- anwälten und Patentanwälten ─ mit erheblichen Auswirkungen auf andere, NZG 2014, 481, 485.
を,弁護士および弁理士,税理士ならびに公認会計士に固定することにあ る。弁護士と共同する職業に従事する者は「同様に……守秘義務およびこ れに対応する供述拒否権と押収禁止とに服すること」が確保されなければ ならず,「そうしたことは,自らの職業団体による監督,すなわち同様の 義務を負う同業者による監督に服する上記の職業においては,保証され る」とされる18)。したがって,建築士のような他の自由職業に従事する者 は,連邦弁護士法59条
a
の文言によると,弁護士業務共同形態の社員とな ることは認められず,それゆえ,たとえば建築法を志向する業務共同形態 においては,こうした職業グループの専門知識を利用することができな い19)。弁護士が参加するネットワークにかかるこうした制限は,連邦弁護 士法59条a 3項により,合同事務所にまでおよぶ
20)。こうした制限は,近 年激しく攻撃されてきた。確かに,2008年に発効したリーガルサービス法 の改革の枠内においては,業務共同形態を構成できる職業の範囲を拡張す る法政策上の努力は,当面法律上規定されるにはいたらなかった。当初提 出されていた連邦弁護士法59条a 4項の法案は,弁護士に,弁護士の職業
と抵触しないすべての職業,すなわち,(その職業法上同様の制限のない)その他の自由職業に従事する者や,さらには特定の営業者ともその業務を 行うことを認めるものであった。この共同できる範囲の拡張は,刑法上の 守秘義務(刑法典203条)および各職業法に適合した共同を確保する義務 をともなうものとされた。しかし,この法案が可決されることはなかっ た。法務委員会の見解によれば,「弁護士内における顕著な意見の相違が
18) BT-Drucks. 12/4993, S. 34.
19) 連邦弁護士法59条aは,弁護士がその従事者と職業実践共同体を組んでよい 職業を制限列挙したものと理解されており,したがってこれを拡大解釈するこ と は で き な い。vgl. BVerfG, Beschluss vom 12.1.2016 ─ 1 BvL 6/13, BVerfGE 141, 82 Rn. 42 = NJW 2016, 700 sowie BGH, Beschluss vom 29.9.2003 ─ AnwZ (B) 24/00, NJW 2003, 3548, 3549; BGH, Vorlagebeschluss vom 16.5.2013 ─ II ZB 7/11, NJW 2013, 2674 Rn. 28 ff.
20) こ の 点 に つ い て は,Deckenbrock, Sozietät und Bürogemeinschaft ─ berufs- rechtlich gebotene Gleichbehandlung?, NJW 2008, 3529 ff.参照。
あることをかんがみると,この新規律は,当面は見送ったうえ,今回の立 法手続きではなく,きたる連邦弁護士法改正において行われるべきもので ある」21)ということであった。
b)連邦弁護士法59条 a
の違憲性に関する連邦憲法裁判所の裁判しかし,法務委員会が2007年に予告し,その枠内で弁護士業務共同形態 の社員問題が解決されるはずであった弁護士法改正案は,今日まで日の目 をみないままであった。ドイツの職業法においてよくみられたように22), 立法者ではなく,連邦憲法裁判所が事態に変化をもたらした。実に注目す べき2016年 ₁ 月12日の裁判によれば,連邦弁護士法59条
a 1項に基づく業
務共同形態の禁止は,それが,パートナー社団の枠組みをもって,医師ま たは薬剤師と共同した職業実践にあたることを弁護士に対し禁止するもの である限度で,職業の自由という基本権(基本法12条)に違反する23)。確 かに,連邦憲法裁判所第 ₁ 法廷がその出発点において強調したのは,「異 業種間共同では,依頼者の守秘の利益は,守秘義務が自由職業間において 必ずしも同様に厳格ではなく,それぞれ異なった面に向けられていること21) BT-Drucks. 16/6634, S. 1, 54.
22) 以下Ⅱ.₂ .であげる,隣接異業種有限会社における過半数要件は憲法違反だ とした連邦憲法裁判所(BverfG)の裁判(BVerfG, Beschluss vom 14.1.2014 ─ 1 BvR 2998/11, 1 BvR 236/12, BVerfGE 135, 90 = NJW 2014, 613)のほか,特に 次 の 裁 判 例 を 参 照。BVerfG, Beschluss vom 14.7.1987 ─ 1 BvR 537/81 u.a., BVerfGE 76, 171 = NJW 1988, 191; BVerfG, Beschluss vom 14.7.1987 ─ 1 BvR 362/79, BVerfGE 76, 196 = NJW 1988, 194 (かつての弁護士倫理要綱を違憲とし たもの); BVerfG, Urteil vom 13.12.2000 ─ 1 BvR 335/97, BVerfGE 103, 1 = NJW 2001, 353 (上級地方裁判所のみの認可を違憲としたもの); BVerfGE 108, 150 =
NJW 2003, 2520 (相反利益代理禁止を業務共同形態全体に一律におよぼすこと
は 違 憲 と し た も の), BVerfG, Beschluss vom 12.12.2006 ─ 1 BvR 2576/04, BVerfGE 117, 163 = NJW 2007, 979 (成功報酬の全面禁止は違憲としたもの). 23) BVerfG, Beschluss vom 12.1.2016 ─ 1 BvL 6/13, BVerfGE 141, 82 = NJW 2016,
700.これに関しては,BGH, Vorlagebeschluss vom 16.5.2013 ─ II ZB 7/11, NJW 2013, 2674 uおよびBGH, Beschluss vom 12.4.2016 ─ II ZB 7/11, BGH Z 210, 48
= NJW 2016, 2263 もまた参照。
で,かなり強く危険にさらされ」かねないことであった。「弁護士の他の 職業との共同から生じる依頼者利益のこの特別の危険を考慮すれば,立法 者は,秘匿性が十分に保障されているとは評価できない,そうした職業を 共同執行から排除することを原則的には妨げられない」とされる24)。それ にもかかわらず,医師および薬剤師は─弁護士が容易に共同を許されて いる弁理士,税理士および公認会計士と異ならず─いずれにせよ刑法お よび職業法において保障されている守秘義務に服するから,医師および薬 剤師を,事務所を構成できる職業の範囲から排除することは,通常,依頼 者の秘匿の利益を保障するために必要ではない25)。その他の点において も,弁護士と薬剤師のための業務共同形態禁止は正当化されない。このこ とに関し考慮されるべきは,医師および薬剤師では,同じく職業団体を組 織している職業が問題となっているということである26)。さらに,医師お よび薬剤師との共同によって弁護士の独立性が侵害されることはない27)。 なぜなら,その依頼者との関係は,第一義的には各自による,かつまた自 己責任のもとでの役務の提供によって特徴づけられるのであるからであ る。最後に,相反する利益代理の危険は,完全な結合禁止によってではな く,個別事案での活動禁止などにより対処することができる28)。」と判示 したのであった。
c)連邦憲法裁判所の裁判の影響
こうした明確な表現にかかわらず,限定的な主文のため,連邦憲法裁判
24) BVerfG, Beschluss vom 12.1.2016 ─ 1 BvL 6/13, BVerfGE 141, 82 Rn. 56 = NJW 2016, 700.
25) BVerfG, Beschluss vom 12.1.2016 ─ 1 BvL 6/13, BVerfGE 141, 82 Rn. 57 ff. = NJW 2016, 700.
26) Vgl. BVerfG, Beschluss vom 12.1.2016 ─ 1 BvL 6/13, BVerfGE 141, 82 Rn. 84 = NJW 2016, 700.
27) BVerfG, Beschluss vom 12.1.2016 ─ 1 BvL 6/13, BVerfGE 141, 82 Rn. 82 ff. = NJW 2016, 700.
28) BVerfG, Beschluss vom 12.1.2016 ─ 1 BvL 6/13, BVerfGE 141, 82 Rn. 90 ff. = NJW 2016, 700.
所の決定は,その直接の効果が,弁護士が医師および薬剤師との間でパー トナー社団の枠組みで共同する事案にしかおよばないという問題29)に実務 は直面している。その他では,弁護士会も,裁判所も,規範を遵守しなけ ればならない。規定に則り議会の手続きをへて成立した法規範を退ける権 利は,連邦憲法裁判所のみにあるから,基本法100条に基づき,その判断 を仰ぐために新たに連邦憲法裁判所へ送付をするしか方法はない30)。 この関係で,2018年 ₁ 月28日に下されたより顕著に限定的な連邦通常裁 判所の裁判が注目に値する。同判決によれば,弁護士は引き続き,弁護士 ではないメディエーターや後見を業とする者(Berufsbetreuern)と業務 共同形態を組むことが許されないことはもとより,合同事務所も許されな いものとされる31)。連邦通常裁判所弁護士部は,メディエーターや後見を 業とする者の場合,守秘義務の点では,同等の保護水準にはないとみた。
確かに,メディエーターも法律上の守秘義務に服するものとされる(メデ ィエーター法 ₄ 条)。しかし,メディエーターの守秘義務の遵守は,職業 団体による,あるいは職業裁判上の処分を受ける可能性をもってする監督 の枠組みにおいて職業法上保障されているわけでもなければ,そしてま た,特に刑事罰によっても保障されてはいない。メディエーションは,業 としての後見と同様,守秘義務の刑罰構成要件(刑法典203条 ₁ 項)中に
29) 一般的な理解によれば,この連邦憲法裁判所の裁判は,パートナー社団以外 の法形式にもおよぼすことができるものである。vgl. Henssler/Deckenbrock, Die vorsichtige Öffnung des Kreises der sozietätsfähigen Berufe, AnwBl 2016, 211, 213 f.; Henssler/Trottmann, Berufsrechtliche Besonderheiten bei der inter- professionellen Partnerschaftsgesellschaft mit beschränkter Berufshaftung, NZG 2017, 241, 242; Kleine-Cosack, Anwaltsspezifisches Sozietätsrecht vor dem „Aus“, AnwBl 2016, 311, 314.
30) BVerfG, Beschluss vom 29.11 1967 ─ 1 BvL 16/63, BVerfGE 22, 373, 378 = NJW 1968, 99参照。
31) BGH, Urteil vom 29.1.2018 ─ AnwZ (Brfg) 32/17, NJW 2018, 1095 Deckenbrock, BRAK-Mitt. 2018, 93注釈付き。
列挙されている職業ではない32)。
しかし,注意すべきは,この連邦通常裁判所の裁判は,2017年11月 ₉ 日 に発効した,守秘義務を負う者の職業実践に第三者が関与する場合の秘密 の保護の新規律のための法律33)の影響については,せいぜいのところつい でにあつかわざるをえなかったことである。この改革により,弁護士と共 同するすべての職業に従事する者も,守秘義務の犯罪構成要件(刑法典 203条 ₁ 項)および刑事法上の証言拒絶権の保護領域(刑事訴訟法53条,
53条
a)に組み込まれるにいたった。つまり,立法者の明確な意思によれ
ば,刑事訴訟法53条
a
の意味における「契約関係」という概念は,「社団 契約に基づく共同社員の職業上の協力をも包含する……。したがって,共 同の職業実践の枠組みにおいて,すなわちパートナーまたは共同社員など として,職業上の秘密を保持する者と共同する者で,自らは必ずしも一次 的な証言拒絶権を持たない者も,……刑事訴訟法53条a
の保護領域に該当 する」34)。同様のことが,─刑法典203条 ₄ 項における,一部文言は異な るが,─守秘義務にもあてはまる。立法者が明確に強調しているのは,「ここに包含される者の範囲は同一である」35)ということである。したがっ て,今日,秘密保護を考慮することで,弁護士と他の職業に属する者との 間の業務共同形態を禁止することは,当該職業グループがそもそも刑法典 203条 ₁ 項の犯罪構成要件にあげられていない場合であっても,もはや正 当化しえないし,合同事務所の禁止はなおさらである36)。なぜなら,守秘
32) BGH, Urteil vom 29.1.2018 ─ AnwZ (Brfg) 32/17, NJW 2018, 1095 Rn. 22 ff.
33) Vom 30.10.2017 (BGBl. I 2017, S. 3618).
34) BT-Drucks. 18/12940, S. 11.
35) BT-Drucks. 18/12940, S. 9.
36) Henssler, in: Henssler/Prütting, BRAO, 5. Aufl. 2019, § 59a Rn. 31; Deckenbrock, BGH, Urteil vom 29.1.2018 ─ AnwZ (Brfg) 32/17の注釈, BRAK-Mitt. 2018, 93, 94;
Deckenbrock, Anwaltliche Verschwiegenheit und berufliche Zusammenarbeit, An- wBl Online 2019, 321, 323 ff.; Kilian/Glindemann, Verfassungswidrigkeit des § 59a BRAO: Sozietätsfähigkeit ohne Schranken?, BRAK-Mitt. 2016, 102, 105; Uwer, Die interprofessionelle Berufsausübung von Rechtsanwälten, AnwBl Online 2019,
の規律の改革により,他の職業に従事する者は,いずれにせよ,弁護士と の共同の枠組みにおいて,守秘義務を負うからである。つまりは,今とな っては,職業上の共同の枠組みにおいて秘密情報を受け取るすべての社員 は,これを秘匿しなければならず,そしてまた刑事訴訟において証言拒絶 権を援用することができるからである。
2 .第 2 の弱点:有限会社における多数要件(連邦弁護士法59条e,59条f)
職業上のネットワークを組織することは,特に有限会社の法形式の場 合,職業法が定めるさらなる諸要件によって困難となっている。これは特 に様々なところで求められている,弁護士が多数を占めなくてはならない という要件(多数要件)にあてはまる。すなわち,業務執行者や支配人に おいては,社員となっている弁護士が多数を占めなければならない(連邦 弁護士法59条
e 2項 ₁ 文,59条 f 1項)。異業種間共同についてみると,税
理士(税理士法50条)37),公認会計士(公認会計士法28条)38)および弁理士(弁理士法52条
e,52条 f)に関しては,その職業法に少なくとも同内容の
20, 24.ただし,弁護士ではない社員が刑法203条および刑事訴訟法53条および
53条aに組み込まれることをより明確に規定することも考えられる。この点に ついては,Henssler, DAV-Diskussionsvorschlag zum anwaltlichen Gesellschafts- recht, AnwBl Online 2018, 564, 577 f.も参照。
37) 税理士法32条 ₃ 項 ₂ 文は,税理士の責任のもとで業務の執行がなされている
(Führng)ことを税理士法人として承認することの要件としている。確かに経 営会議(Leitungsgremien)と社員の過半数を税理士が占めることは求められ てはいないが,半数を下回ってはならないとされている(税理士法50条 ₂ 項 ₄ 号)。資本の過半数を占めることは規定されていない(税理士法50条a1項)。
38) 公認会計士社団としての承認についても,公認会計士の責任のもとで業務執 行がなされていることの証明を要件としている(公認会計士法 ₁ 条 ₃ 項 ₂ 文)。
公認会計士社団においては,公認会計士がその経営機関において過半数を占め ている。資本会社では,公認会計士ないしは会計監査人そして監査社団が社団 持分の過半数を持たなくてはならない(公認会計士法28条 ₄ 項 ₃ 号)。業務共 同ができる他の職業に従事する社員中,社団での活動が求められるのは,最低 半数で足りる(公認会計士法28条 ₄ 項 ₁ 号a)。
制限があるという事情が加わって,より困難となっている。そのため,そ もそも複数の専門職にまたがって認可を受けることは,社員および業務執 行者が複数の資格を持っている場合,すなわち,弁護士でありかつ弁理士 でもあるといった場合に限られる39)。したがって,こうした結果はそもそ もパラドックスに陥っている。なぜなら,実際に各職業法間にずれがある 場合には,このような複数の職業資格保持者は解決しえないジレンマに陥 ってしまうからである40)。果たして,弁護士として目下の判断にあたるの か,それとも弁理士としてなのか,ということである。
もっとも,2014年の初頭,連邦憲法裁判所は弁護士・弁理士有限会社の 事案につき,そのような二重にかぶってくる多数要件を,不当な職業の自 由(基本法12条)への侵害ととらえた41)。「社員レベルでのある職業グル
39) この点に関しては,Henssler, Die interprofessionelle Zusammenarbeit des An- walts mit anderen Berufen, AnwBl 2009, 670, 676 ff.; Ost, Neue Gestaltungsfrei- heit für interprofessionelles Zusammenwirken in Wirtschaftsprüfungs- und Steu- erberatungsgesellschaften nach der Entscheidung des BVerfG vom 14.1.2014, DStR 2015, 442, 443 参照。
40) Henssler, in: Henssler/Prütting, BRAO, 5. Aufl. 2019, § 59e Rn. 32.
41) BVerfG, Beschluss vom 14.1.2014 ─ 1 BvR 2998/11, 1 BvR 236/12, BVerfGE
135, 90 = NJW 2014, 613.この決定は,文献においてはほぼ一致して賛同をえて
い る。vgl. Deckenbrock, in: Mittwoch/Klappstein/Botthof u.a., Jahrbuch Junger Zivilrechtswissenschaftler 2015, Netzwerke im Privatrecht, 2016, S. 119, 130 ff.;
Bormann, in: Gaier/Wolf/Göcken, Anwaltliches Berufsrecht, 2. Aufl. 2014, § 59e BRAO Rn. 20; Römermann, Das Tor steht offen: Das BVerfG erlaubt weitergehen- de interprofessionelle Zusammenarbeit von Rechtsanwälten und Patentanwälten
─ mit erheblichen Auswirkungen auf andere, NZG 2014, 481 ff.; Glindemann, An- walts-GmbH und das Bundesverfassungsgericht: Ende der Diskriminierung?, An- wBl 2014, 214 ff.; Henssler, Verfassungswidrigkeit des Ausschlusses der Doppel- zulassung als Rechtsanwalts- und Patentanwalts-GmbH, EWiR 2014, 203, 204;
Kämmerer, BVerfG, Beschluss vom 14.1.2014 ─ 1 BvR 2998/11, 1 BvR 236/12kの 注釈, DStR 2014, 670f.; Kleine-Cosack, Verfassungswidrige Mehrheitserfordernis- se der Rechtsanwalts-GmbH, AnwBl 2014, 221 ff.; Ost, Neue Gestaltungsfreiheit für interprofessionelles Zusammenwirken in Wirtschaftsprüfungs- und Steuerbe-
ープの支配を規定することで,職業法の遵守および特に職業上の独立性が もっともよく保障されるわけではない。この種の硬直した,職業上の共同 の可能性の包括的で予防的な制限に比して,より緩やかでむしろ効果的で すらある手段は,個別事案ごとそしてまた個々の職業に従事する者に切り 結ぶことである」と判示したのであった42)。連邦憲法裁判所の見解によれ ば,他の職業に従事する者が支配的な異業種間職業実践共同体に参加する 弁護士の,弁護士としての独立性の保護は,すでに連邦弁護士法43条
a 1
項によって保障されている。すなわち,「この規範は,広範かつ隙間なく,法的・事実的,そして組織的(内部的)かつまた外部へ向けて作用するよ うなかたちでの,法律に定められた独立性に対する危険をもたらし,ある いはこうした危険をともなう構造の社団の形成を禁じている43)。加えて,
職業法は,連邦弁護士法59条
f 4項 ₂ 文が,個別の弁護士の職業上の活動
に対する社員の影響力を禁じ,その禁止が,違反に対する制裁により守ら れており,さらにはまた,それにもかかわらずなされた指示は無効であ り,したがって守る必要のないものだとすることで,職業に従事する者の 独立性を保護している」とする44)。連邦弁護士法43条a 1項もそしてまた
連邦弁護士法59条f 4項 ₂ 文も,個別事案における具体的な違反に切り結
んでいるから,問題とされている社団法上の絶対的制限よりも職業に従事ratungsgesellschaften nach der Entscheidung des BVerfG vom 14.1.2014, DStR 2015, 442 ff.; Singer, Konsequenzen der Entscheidung des BVerfG vom 14.1.2014 für das Berufsrecht der Rechtsanwälte und Steuerberater, DStR-Beih. 2015, 11 ff.批 判 的 な の は わ ず か にStüer, BVerfG, Beschluss vom 14.1.2014 ─ 1 BvR 2998/11, 1 BvR 236/12の注釈,DVBl. 2014, 442 ff.のみである。
42) BVerfG, Beschluss vom 14.1.2014 ─ 1 BvR 2998/11, 1 BvR 236/12, BVerfGE 135, 90 Rn. 79 ff. = NJW 2014, 613.
43) BVerfG, Beschluss vom 14.1.2014 ─ 1 BvR 2998/11, 1 BvR 236/12, BVerfGE 135, 90 Rn. 82 = NJW 2014, 613.
44) BVerfG, Beschluss vom 14.1.2014 ─ 1 BvR 2998/11, 1 BvR 236/12, BVerfGE 135, 90 Rn. 83 = NJW 2014, 613.
する者にとっては負担が少ない45)。
連邦弁護士法59条
e 2項 ₁ 文がこれに加えてその目的としている弁護士
の資格要件の確保は,連邦憲法裁判所の見解によれば,異業種間職業実践 共同体による法的処理をその内容とする役務の提供は,社団の構造如何に かかわらず,連邦弁護士法 ₄ 条に法律上規定された要件を満たす者,すな わち弁護士として認可された十分な資質を備えた者だけが行うことができ るとされていることによって保障されている。このように事務処理にあた る者を「職業に従事する者に限定していることにかんがみれば,連邦弁護 士法59条e 2項 ₁ 文による社団を構成する職業グループの社団内における
影響力および判断権限のかなり強い確保は不要である」とする46)。 この連邦憲法裁判所の裁判もまた,異業種間有限会社における多数要件 を定める規範を全面的に無効とするものではない。この裁判が直接の影響 をもたらすのは,現実に判断の対象となった事案,すなわち弁護士と弁理 士との共同に対してのみである。しかし,この多数要件が他の事案におい ても維持されなくなることが予想される。そういうことで,バーデン=ヴ ュルテンベルク弁護士法院(Anwaltsgerichtshof)は,つい最近,2018年 10月19日の決定により,弁護士と税理士との共同の場合においても,社団 では弁護士が税理士との関係で社員持分および議決権の多数を持ち,そし て社団の執行上の責任を引き受けるとともに業務執行者の多数を占めなく てはならないとの要件は,もはや正当化することができないとの見解を表 明したところである47)。要するに,弁護士法院からの事件送付を受け,連 邦憲法裁判所は間もなく改めて有限会社における多数要件と向き合わなけ ればならないことになる。45) BVerfG, Beschluss vom 14.1.2014 ─ 1 BvR 2998/11, 1 BvR 236/12, BVerfGE 135, 90 Rn. 86 = NJW 2014, 613.
46) BVerfG, Beschluss vom 14.1.2014 ─ 1 BvR 2998/11, 1 BvR 236/12, BverfGE 135, 90 Rn. 88 f. = NJW 2014, 613.
47) AGH Baden-Württemberg, Beschluss vom 19.10.2018 - AGH 13/2018 II, BeckRS 2018, 32753 Deckenbrock, BRAK-Mitt. 2019, 44 f. (Deckenbrockの注釈付き).
いずれにせよ注目すべきは,人的社団(民法上の組合およびパートナー 社団)の法形式における社団に関しては,職業法は連邦弁護士法59条
a
に おいて,単に社員たりうる職業上の資格に関して要件を定めているだけで あって,多数要件はこれを定めていないということである。社団の代理機 関または執行役員(Führungspersonal)の構成についても,同じく規定は ない。公認会計士や税理士が多数を占める民法上の組合またはパートナー 社団の法形式における結合に弁護士が参加しても問題はない。換言すれ ば,弁護士は,こうした法形式では,助言を職業とする他の者を優位に立 たせることが許され,そうしたからといって,公益上の配慮が危機にさら されることはない,そういうことになるはずである48)。3 .第 3 の弱点:もはや時勢に合わない職業法の単独弁護士への志向性 第 ₃ の弱点は,職業法の単独弁護士への志向性にかかわる。直近の連邦 弁護士法大改正の年にあたる1994年には,弁護士が参加した共同による職 業実践のための唯一考えられる法形式は,民法上の組合のみであった。当 時,いまだ民法上の組合は権利能力があるとされていなかったから,立法 者が,職業上の共同にさほど関心を払わず,本質的にはすでに言及した連 邦弁護士法59条
a
の規律に止ったことは驚くに値しない。しかし,そうこ48) この点に関しては,連邦通常裁判所はパートナー社団で活動している者につ き,「弁護士ではないパートナーによる業務執行あるいは弁護士ではないパー トナーが持分の過半数を持つことに対する対応は,すでに連邦弁護士法59条d および59条eの規定により, その対応がなされている。」 と判示しているが
(Vorlagebeschluss vom 16.5.2013 ─ II ZB 7/11, NJW 2013, 2674 Rn. 70),そもそ もこれは誤りである。この点については,Deckenbrock, Das allgemeine Berufs- recht der Berufsausübungsgemeinschaft, AnwBl 2014, 118, 127; Glindemann, An- walts-GmbH und das Bundesverfassungsgericht: Ende der Diskriminierung?, An- w B l 2 0 1 4 , 2 1 4 , 2 1 5 F n . 1 1 ; R ö m e r m a n n , B Ve r f G - Vo r l a g e z u r Verfassungswidrigkeit des Verbots beruflicher Zusammenschlüsse von Anwälten mit Ärzten und Apothekern, EWiR 13, 481, 482参照。この点でより正鵠をえて いるのは,BGH NJW 2012, 461 Rn. 22.
うしているうちに,連邦通常裁判所は民法上の組合49)に対する見方を完全 に変更し,民法典705条以下の解釈を改めた。2001年に民法上の組合の権 利能力が承認されたことにより50),業務共同形態とその依頼者との関係に とっての起点は変更され,今日ではもはや,弁護士契約は社団の構成員と の間ではなく,もっぱら職業実践共同体自体との間に成立する51)。連邦通 常裁判所の判例の方向が改められて以降,共同での職業実践のための多く の法形式の登場と,これにともなう職業上の共同へと向かっている潮流に 照らしてもまた,法政策上の対応を喫緊にとる必要が生じている。この点 については,以下で若干触れるに止めざるをえない。
よろしくないのは,まずもって,職業実践共同体自体は職業法上の責任 を負わないということである。反対に,弁護士裁判所の処分は,職業上の 義務違反の責めを負う弁護士に対してのみ,課せられる(連邦弁護士法 113条 ₁ 項)。これに対し,立法者は職業実践共同体自体に対する弁護士裁 判所の処分を定めていない52)。そのため,制裁は常に職業実践共同体自体 49) 民法上の組合が弁護士の職業実践のための法形式として今なお好まれている ことについては,Kilian, Die GbR: Unverwüstliche Rechtsform für Berufsaus- übungsgesellschaften?, AnwBl 2015, 45 ff.参照。
50) 基礎となっているのはBGH, Urteil vom 29.1.2001 ─ II ZR 331/00, BGHZ 146, 341, 343 ff. = NJW 2001, 1056 ff.である。
51) BGH, Versäumnisurteil vom 26.1.2006 - IX ZR 225/04, NJW-RR 2006, 1071 Rn.
9; BGH, Urteil vom 26.6.2008 ─ IX ZR 145/05, NJW-RR 2008, 1594 Rn. 10; BGH, Urteil vom 5.2.2009 ─ IX ZR 18/07, NJW 2009, 1597 Rn. 10; BGH, Urteil vom.
10.5.2012 ─ IX ZR 125/10, BGHZ 193, 193 Rn. 15 = NJW 2012, 2435.かつての法状 態については,BGH, Urteil vom 6.7.1971 - VI ZR 94/69, BGHZ 56, 355, 357 ff. = NJW 1971, 1801, 1802参照。
52) Nitschke, in: Peres/Senft, Sozietätsrecht, 3. Aufl. 2015, § 41 Rn. 5 f.; Schultz, Rechtsfähigkeit der Rechtsanwaltssozietät zwischen Anspruch und Wirklichkeit, Festschrift für Hirsch, 2008, S. 525, 537; Henssler, Brauchen wir ein zusätzliches sozietätsspezifisches Berufsrecht?, AnwBl 2014, 762, 765; Glindemann, Anwalts- GmbH und das Bundesverfassungsgericht: Ende der Diskriminierung? AnwBl 2014, 214, Posegga, Die Haftung der Mitglieder einer interprofessionellen Sozie- tät aus Rechtsanwälten und Steuerberatern, DStR 2009, 2391, 2395; Posegga, Die
において活動する弁護士に対してしか課することができないのである。し たがって,職業法上の責任を負うべき者と契約当事者とが分離することに なる。このことから,どの職業に従事する者に,どの程度「業務共同形態 の職業法違反」につき具体的に職業法上の責任を負わせることができるの かを確定しようとすると,直ちに困難に直面する。たとえば,誰が職業法 上の定め(連邦弁護士法43条
b
参照)に抵触する広告の管理につき責任 を個人として負うのか,あるいは利益相反管理システムが十分に確立して いない結果,許されない委任を受けた責任を誰が負うのか? 弁護士は,自らが責任を負わない不十分な内部組織を引き合いに出して,その責任を 免れることができることになる。職業実践共同体自体の規模の拡大にとも ない,実情に即した責任の分配は,まったく不可能ではないとしても,ま すます困難となっている。それゆえ,時宜にかなうのは,職業法上の制裁 も職業実践共同体自体に負わせることである。このような社団への制裁を 認めても,これにより単独弁護士の個人的責任が認められなくなるわけで はない。すなわち,ケースごと,組織の責任に帰すべき事案ではなく,個 人的なエラーに帰すべき事案では,個々の職業に従事する者に,その過誤 について個人責任を負わせることが正当な場合もありうる53)。
改革の必要は,さらに多くの個別問題にもある。そこで検討しなければ ならないのは,弁護士有限会社(連邦弁護士法59 c条 ₁ 項,59条
g)だけ
が認可手続きに服し,その他の法形式の職業上の結合がこれに服さないの は,どの範囲で正当なのかである54)。社団の弁論能力(すなわち,裁判所Haftung der Mitglieder einer freiberuflichen Sozietät, DStR 2013, 547, 548.
53) すでに指摘されているところである。Deckenbrock, in: Mittwoch/Klappstein/
Botthof u.a., Jahrbuch Junger Zivilrechtswissenschaftler 2015, Netzwerke im Pri- vatrecht, 2016, S. 119, 136 ff.お よ びTrottmann, Sozietätsspezifisches Berufs- recht ─ Vorschläge zur Neuordnung des anwaltlichen Gesellschaftsrechts, 2018, S. 91 ff.ならびにHenssler, DAV-Diskussionsvorschlag zum anwaltlichen Gesell- schaftsrecht, AnwBl Online 2018, 564, 585 ff.参照。
54) こ の 点 の 詳 細 は,Deckenbrock, in: Mittwoch/Klappstein/Botthof u.a., Jahr- buch Junger Zivilrechtswissenschaftler 2015, Netzwerke im Privatrecht, 2016, S.
で弁論する能力)につき,弁護士有限会社(連邦弁護士法59条
l
)および パートナー社団(パートナー社団法 ₇ 条 ₄ 項)に関する規律がある一方,民法上の組合や
LLP
の法形式を用いた弁護士の業務共同形態の弁論能力 は明らかになっていない55)。しかし,特によくないのは,オンラインで利 用できる弁護士登録簿(連邦弁護士法31条)56)に記録されるのは単独弁護 士のみであり,職業実践共同体は記録されていないということである。確 かに,職業実践共同体についての弁護士名簿を備えるとすれば,一定の管 理コストがともなうことになる。しかし,そうした拡充がもたらす利益 は,明らかにこれを上回る。すなわち,権利保護を求める市民からする と,登録簿が新たに編成されれば,情報の可能性が広がり,完全な透明性 がもたらされる。したがって,どの弁護士が当該社団に所属しているかと いう,問題となる可能性がある責任あるいは利益相反の判断にとって特に 重要な情報をいつでも知ることができる。こうすれば,民法上の組合の法 形式を用いて組織化された職業実践共同体に関し,民法上の組合に公示性 が欠けることから生じる弱点が克服されることになろう57)。III.展望:弁護士社団法の根本に立ち入った改革
これまでみてきたところから,弁護士の職業実践共同体に関しては,整 合的な法律上の規律体系自体が欠けているということがわかった。ことは 反対で,立法者の全体的コンセプトがなにか,その端緒すら不明である。
弁護士有限会社が職業法上許されることをこと細かに規律している,あま 119, 140 ff. (参照資料付き)参照。
55) こ の 点 の 詳 細 は,Deckenbrock, in: Mittwoch/Klappstein/Botthof u.a., Jahr- buch Junger Zivilrechtswissenschaftler 2015, Netzwerke im Privatrecht, 2016, S.
119, 142 ff. (参照資料付き)参照。
56) https://www.bea-brak.de/bravsearch/search.brak
57) こ の 点 の 詳 細 は,Deckenbrock, in: Mittwoch/Klappstein/Botthof u.a., Jahr- buch Junger Zivilrechtswissenschaftler 2015, Netzwerke im Privatrecht, 2016, S.
119, 144 ff(参照資料付き)参照。
りに詳細にすぎる連邦弁護士法59条
c
以下に対峙するのは,(業務共同可 能な人的範囲を規律する)連邦弁護士法59条a
をもってする,人的社団と して組織された弁護士の職業実践共同体に関する一つの不完全でかつまた 一般的な規律のみである。近時,民法上の組合に権利能力が認められた が,立法者は,今日にいたるまで,これを弁護士社団法再検討の契機とし てはこなかった。弁護士株式会社に関する規定は,それが判例により認め られてからほぼ15年たった現在でも,まったく設けられていない。同じく 外国の法形式で組織された事務処についても,連邦弁護士法には何の規定 も置かれていない。1 .マーティン・ヘンスラー教授の立法提案
近時,連邦政府もまた,職業実践共同体法には改革の必要があることを 認めた58)。所管する連邦司法・消費者保護省が,本年のまだ早いうちに,
弁護士社団法の将来に関する最初の具体的な意見を表明してくれることが 待たれている。必要な準備にあたっては,連邦司法・消費者保護省は,ケ ルン大学弁護士法研究所の業務執行ディレクターであるマーティン・ヘン スラー教授が,ドイツ弁護士協会の依頼を受けて起草した「弁護士職業実 践共同体に関する職業法の改革のための法律草案」にその拠り所を求める ことができる59)。
ヘンスラー教授は,自身が起草した草案において,まず,弁護士の組織 自由を擁護する。「職業従事者がどの社団形式を選ぶについて,あれこれ 口出すことがあってはならない。」というわけである。ヘンスラー教授の 見解によれば,弁護士の自由職業としての活動(連邦弁護士法 ₂ 条 ₁ 項)
は,何ら社団法上の特別扱いを求めるものではない。この際ヘンスラー教
58) BT-Drucks. 19/3014, S. 2.
59) Henssler, DAV-Diskussionsvorschlag zum anwaltlichen Gesellschaftsrecht, An- wBl Online 2018, 564 ff.この点については,Römermann, Reform des anwaltli- chen Gesellschaftsrechts: Endlich Bewegung?, NZG 2018, 1041 ff.の評価参照。
授は,有限合資会社は認められるとする60)。これに加え,彼の草案は,弁 護士認可を受ける義務,認可手続,社団の弁論能力,職業上の義務を負う というその地位,そしてまた保険加入義務に関する明快かつ社団の法形式 にとらわれない規律をその内容としている61)。ヘンスラー教授は,業務共 同形態固有の職業上の義務違反にあっては,社団自体も分限法上の責任
(懲戒)を負うとする62)。これに加え,弁護士登録簿を職業実践共同体登 録簿へと拡張していくこと63),そしてまた,合同事務所を法的に定義する ことを提案している64)。さらにヘンスラー教授の草案によれば,異業種間 共同は,実により多くの職業グループに対し開かれることになる。明示的 にあげられている建築士,技術者,認証を受けたメディエーター,相談を 業とする国民経済学・経営学を修めた者(経営コンサルタント),鑑定を 主たる業とする者とならんで,社員となれる範囲を,社団法に基づく結合 が,弁護士の独立性,守秘義務,相反利益代理の禁止を脅かす可能性のな いことが一見して明白であれば,広く弁護士の職業とは抵触しない職業に 従事する者すべてに拡張されるべしとする。
2 .外部資本禁止の将来
とりわけ対立し激しく議論されているテーマが,外部資本禁止の問題で ある。ドイツ職業法においては,実際にともに働いていることが要件とさ れている。つまり,連邦弁護士法59条
a 1項 ₁ 文によって,業務共同がで
60) Henssler, DAV-Diskussionsvorschlag zum anwaltlichen Gesellschaftsrecht, An- wBl Online 2018, 564, 575.
61) Henssler, DAV-Diskussionsvorschlag zum anwaltlichen Gesellschaftsrecht, An- wBl Online 2018, 564, 577, 582 ff.
62) Henssler, DAV-Diskussionsvorschlag zum anwaltlichen Gesellschaftsrecht, An- wBl Online 2018, 564, 585 ff.
63) Henssler, DAV-Diskussionsvorschlag zum anwaltlichen Gesellschaftsrecht, An- wBl Online 2018, 564, 574.
64) Henssler, DAV-Diskussionsvorschlag zum anwaltlichen Gesellschaftsrecht, An- wBl Online 2018, 564, 577.
きるとされる者は,「共同の職業実践のためにのみ」結合できる65)。パー トナー社団法 ₁ 条 ₁ 項 ₁ 文によると,パートナー社団の目的は,「その職 業の実践のため」のパートナーの結合とされている66)。弁護士有限会社の 社員に関して定められている,実際にともに働いていることという要件は より明確である。社員は,連邦弁護士法59条
e
1項 ₁ 文により,社団にお いて「その職業活動をしていなければならない」67)。もっとも,現実の職 業活動が特にインテンシブであることは必要ないし,実務ではコントロー ルはできそうもない。「最低の職業活動」で足りるとされている68)。たと えば,マーケティング担当あるいは内部的な業務執行担当(いわゆる,マ ネージングパートナー)といった役割で足りるとされる。一人のパートナ ーが高齢あるいは健康上の理由から,社団からはかなり身を引き,依頼の 処理に時折協力するだけであっても,職業法違反とはならない69)。 実際に,ともに働いているという要件からは同時に,弁護士の職業実践 共同体へのいわゆる「外部の資本参加」禁止が導かれる。その主たる関心 が利回りの達成にあって,しばしば必要とされる資格を持たずそのため職 業法上の種々の拘束に服さない者を取り込むことは,投資家の利益を依頼 者の利益に優先させようという誘惑に駆り立てられることになる,社団で 活動する自由職業者の独立性に対する脅威と受け止められている。そのた め,業務共同ができる適格を有する職業に従事する者であっても,匿名の65) Kilian/Koch, Anwaltliches Berufsrecht, 2. Aufl. 2018, B Rn. 1061, B Rn. 845;
Henssler, Die Kapitalbeteiligung an Anwaltsgesellschaften, BRAK-Mitt. 2007, 186, 187参照。ただし,Michalski/Römermann, in: Henssler/Streck, Handbuch Sozi- etätsrecht, 2. Aufl. 2011, B Rn. 16 ff.は批判的である。
66) BT-Drucks. 12/6152, S. 7, 9.これについては,Henssler, PartGG, 3. Aufl. 2018,
§ 1 Rn. 232 ff.参照。
67) BT-Drucks. 13/9820, S. 14.
68) BT-Drucks. 13/9820, S. 14.
69) Kilian/Koch, Anwaltliches Berufsrecht, 2. Aufl. 2018, B Rn. 1062; Henssler, in:
Henssler/Prütting, BRAO, 5. Aufl. 2019, § 59e Rn. 19;同, Die Kapitalbeteiligung an Anwaltsgesellschaften, BRAK-Mitt. 2007, 186, 187.
参加, 下請け型参加(unterbeteiligung), 出資的貸し付け(Partiarische
Darlehen), 利益・ 損失分担約束, 用益権の設定および信託は許されな
い70)。今までのところ,外部資本の禁止というドグマを軟化させる目的を持っ た試みは,すべてうまくいっていない71)。反対に,立法者は,2015年,団 体内弁護士に関する法の改正に際し,外部の経済的利益の影響によって弁 護士の独立性が脅かされることは避けなくてはならないということを,再 度記録に残しているところである72)。
ヘンスラー教授もまた,先にあげた近時の提案において,原則としては 外部資本を認めないことに賛成している。もっとも,社員が業務を共同で きる適格を備えた職業に従事する者の場合には,その者自身がそこで活動 していなくとも,職業実践共同体に参加してよいとする。ただし,同教授 の提案によれば,そうした者に許されるのは,合計で議決権と社団資本の
₄ 分の ₁ までの参加にどどまる(教授の連邦弁護士法草案59条
b 2項)。
これに加え,社団で活動していない社員は,リーガルサービス提供依頼を 受けるか断るかを決める際には議決権を持たないとする73)。こうした提案 は,一方では,弁護士の独立性が侵される危険を排除し,同時に,たとえ ば以前弁護士であった者に引き続き社団に参加できる道を開こうとするも のである。さらに,死亡した社員の相続人のため,その相続人が弁護士と は相容れない職業に従事していない場合に限り,緩和するのをよしとして いる74)。
70) BT-Drucks. 13/9820, S. 15 (zur Anwalts-GmbH); Henssler, in: Henssler/Prüt- ting, BRAO, 5. Aufl. 2019, § 59e Rn. 34.
71) 特には, 独占委員会の第16主要意見(das Sechzehnte Hauptgutachten der Monopolkommission 2004/2005, BT-Drucks. 16/2460, S. 411 f. (Rn. 1121 ff.))参 照。
72) BT-Drucks. 18/5201, S. 30.
73) Henssler, DAV-Diskussionsvorschlag zum anwaltlichen Gesellschaftsrecht, An- wBl Online 2018, 564, 571.
74) Henssler, DAV-Diskussionsvorschlag zum anwaltlichen Gesellschaftsrecht, An-
確かに連邦政府は─弁護士社団の独立性確保のため,原則外部資本の 参加禁止を維持するとしつつ─,「たとえば,もはや仕事をするのをや めた当該職業に従事する者といった限られた場合には,独立性と職業上の 義務の維持が確保されることを前提に,緩和できるかを検討する」として はいる75)。しかし,従前の厳格なかたちでの外部資本の禁止を維持する確 率の方がより高い。たとえば,ヘンスラー教授に改正提案の作成を依頼し たドイツ弁護士協会は,近時,活動していない社員の参加に関する教授の 提案をよしとはしなかったのであった76)。
3 .ヨーロッパ諸国の状況
a)イギリスとウエールズ
ということで,2007年のリーガルサービス法(Legal Services Act 2007)
により可能となり,2012にはじめて所管監督官庁からライセンスを受けた イギリス・ ウェールズ由来の新たなビジネス組織(Alternative Business
Structures=ABS:以下【ABS】という)は,ドイツにおいてはその未来は
まったくないという前提に立たなくてはならない。ABSとは,全部また は一部が─たとえば保険会社とか商事企業─といった弁護士ではない 社員の所有となっている,リーガルサービス提供をその目的としている社 団をさす。ただ,ABSは,それ自体が独自の法形式(社団形式)ではな い。むしろこの概念は,法形式如何にかかわらないもので,ただ単に,弁 護士ではない者が業務執行役になっているとともに10%を超える社団の持 分を保有している,あるいは,そのいずれかの場合をさすだけである77)。 wBl Online 2018, 564, 578 f.まずもっては,Henssler, Die Kapitalbeteiligung an Anwaltsgesellschaften, BRAK-Mitt. 2007, 186, 190; Henssler, Brauchen wir ein zu- sätzliches sozietätsspezifisches Berufsrecht?, AnwBl 2014, 762, 767参照。75) BT-Drucks. 19/3014, S. 3.
76) AnwBl DAV-Vorschlag zur großen BRAO-Reform (DAV-Stellungnahme Nr.
8/2019), Online 2019, 257, 272.
77) ABSの詳細については,Hellwig, Deutsches Berufsrecht als Bollwerk gegen englische ABS?, AnwBl 2012, 876 ff.; Kilian, Alternative Business Structures ante
この点注意すべきは,ヨーロッパにおいては,今までのところ
ABS
は 浸透していない。反対に,多くのヨーロッパの国々では,むしろ厳格に規 制されている。時間の関係から,オーストリーとフランスだけをみていく にとどめよう。b)オーストリー
オーストリーでは,─ドイツと違い─近親者(社団に属する弁護士 の特に配偶者・子供),あるいは登録を取り消した弁護士がその時点で社 員であり,あるいはその事務処を社団が引き継いだ元弁護士だった者は,
社員となれる(弁護士法21条
c1号)となってはいる。このような開放が
あることで,実際にともに働いているという条件は,オーストリーでは絶 対的なものではないということである。もう一つの特徴は,オーストリー の弁護士マーケットをドイツと対をなす関係から開放した,2013年の職業 法 改 正 の た め の 法 律(Berufsrechts-Änderungsgesetzes 2013=BRÄG2013)
78)が施行されて以降,弁護士には,有限合資会社(GmbH& Co.KG)の法形式を用いて業務共同ができる道が開かれた点である79)。
これらの特徴は,非常にリベラルにみえるかもしれないが,税理士そし て公認会計士/信託受託者が,弁護士の業務共同形態の社員になれる者を 列挙している弁護士法21条
e
1号中には見受けられないことに直面してみportas?. NJW 2014, 1766 ff.; Passmore, What is happening to the regulation of the legal market in England and Wales?, AnwBl 2014, 140 ff.; Weberstaedt, Englische Alternative Business Structures in Deutschland, AnwBl 2014, 899 ff.参照。
78) Vom 31.7.2013, BGBl. I 159/2013.
79) この改正については,Sedlacek, Die Ausübung der Rechtsanwaltschaft ist zu- künftig auch in der Rechtsform der GmbH & Co KG möglich, SWK 2013, 1115 ff.;
Pinetz/Burtscher, Die GmbH & Co KG als neue Rechtsform für Rechtsanwälte, GES 2014, 4 ff. いうまでもなく特に考慮すべきは,オーストリー法は,ドイツ 法とは異なり, 商人概念なるものに別れを告げ, 近時事業法典(Unterneh- mensgesetzbuch)を制定するにいたった。その結果,自由職業としての弁護 士の職業と,合資会社という法形式が,そもそも排斥し合うということはなく なった。
ると,その興奮も覚めよう。したがって,オーストリーでは異業種間にお ける職業実践共同体は認められていないわけである80)。さらにドイツに後 れをとっているのが,(オーストリー)弁護士法21条
c 8号 ₁ 文である。こ
れによると,オーストリーでは,弁護士は別の職業上の結合に加わっては ならないとされている。ドイツでは10年以上前に撤廃された,いわゆる星 座型業務共同形態の禁止がいまだに続いている81)。c)フランス
フランスでは,1990年における自由職業資本会社(sociétés dʼexercice
libéral, SEL)の導入以来,確かに一定の範囲で,資本参加が認められてい
る。ホールディング組織(sociétés de participations financières de profes-sions libérales, SPFPL)もずっと以前からある
82)。もっとも,2016年の法 律は,法律職(特に弁護士,公証人)間の相互参加の可能性を明確なかた ちで拡張し,フランスでは現在,好きなようにその組み合わせができる(たとえば,持分すべてが公証人に帰属している弁護士社団)83)。2017年以 降,弁護士,裁判所競売人,執行官,公証人,裁判所が指定する管財人,
弁理士および法定監査権のない公認会計士と税理士の中間的存在である会
80) この点の詳細については,Deckenbrock, in: Mittwoch/Klappstein/Botthof u.a., Jahrbuch Junger Zivilrechtswissenschaftler 2015, Netzwerke im Privatrecht, 2016, S. 119, 148 ff. sowie Reiner, Die Rechtsanwaltsgesellschaft: Gesellschafts- recht, Berufsrecht und empirische Befunde, 2016, S. 98 ff.; Rüffler/Müller, Inter- disziplinäre Rechtsanwaltsgesellschaften?: Zulässigkeit und Sinnhaftigkeit, 2016, S. 1 ff.; Murko, Rechtsanwaltsgesellschaften im Spannungsfeld zwischen Gesell- schaftsrecht und Standesrecht, Festschrift für Benn-Ibler, 2011, S. 257, 263 ff.;
Gogl, Die Zulässigkeit multidisziplinärer Sozietäten von Rechtsanwälten und Wirtschaftstreuhändern, GeS 2004, 372 ff.参照。
81) BT-Drucks. 16/3655, S. 82 f.こ れ に つ い て は,Henssler/Deckenbrock, Neue Regeln für den deutschen Rechtsberatungsmarkt, DB 2008, 41, 46 f.参照。
82) Glindemann, Personengesellschaften zur Ausübung freier Berufe. Eine verglei- chende Untersuchung des deutschen und französischen Rechts, 2019, S. 140.
83) Glindemann, Personengesellschaften zur Ausübung freier Berufe. Eine verglei- chende Untersuchung des deutschen und französischen Rechts, 2019, S. 163 ff.
計書類鑑定人(experts-comptables)の間での異業種間職業実践社団(soci-
étés pluri-professionnelles dʼexercice, SPE)が承認された。もっとも,社
員となれるのは,これら職業に従事する者,またはそのメンバーがこれら 職業に従事しており,かつまた自身当該社団で活動している者からなる法 人のみである。当該職業にかかわりのない者,あるいはその社団で活動し ていない者が資本参加することは,引き続き認められていない84)。IV.総括と展望─社団法の大きな改正はなるのか?
この場で今までに述べてきたことから,おそらく,弁護士社団法の改正 は急務だということが明らかになったと思われる。この20年間に,弁護士 がネットワークを利用して活動するのを妨げている,パッチワークの絨毯 ともいうべきものができあがってしまっている。一方では,あまりにも詳 細かつ古々しく,さらには違憲だとされる規律がみられ,他方では,大き な欠陥の存在とそしてまた職業法上の規律が欠けていることは,忌まわし い有様を描き出している。したがって,喫緊なのは,法形式に関係なく適 用される規定が可決されることを目指した,弁護士社団法の根本的な改正 である。今会期中に,連邦弁護士法の根本的な改正が本当になされる可能 性はある。そのために,関心のある人には読むことをおすすめしたい,マ ーティン・ヘンスラー教授が起草した改正草案のほか,注目すべき諸提案 がなされている。
もっともここ数年においては,改革が必要なのは弁護士社団法だけでは なく,ドイツの人的社団そのもの自体も全面的に古くさく,矛盾がみられ
84) SPEに 関 し て は,Glindemann, Personengesellschaften zur Ausübung freier Berufe. Eine vergleichende Untersuchung des deutschen und französischen Rechts, 2019, S. 141 ff.; Weil, Interprofessionelle Sozietäten jetzt auch in Frank- reich, BRAK-Mitt. 2016, 120 f.; Rotscheidt, Interprofessionelle Sozietät, Legal Tech und Steuern ─ was passiert in der Welt?, AnwBl 2017, 840参照。
るし欠陥があるという認識がますます強くなってきている85)。最も明白な のは,民法上の組合を規律する民法典705条以下に関してみうけられる立 法者の素っ気のなさであり,それは,判例にみられる今日における認識を 継ぎ足す形でコピーすることすら一切せず,したがって,法的明確性の要 請に照らすなら,もはや受け入れがたいものである86)。議論すべきはま た,今の時代に営業的な事業(Gewerbebetrieb)と自由職業を別個にあつ かうことはいまだなお妥当なのか,あるいは,その将来は,─オースト リーのモデルに従って─むしろ企業法典(Unternehmensgesetzbuch)
にあるのではないのかということである87)。確かに,パートナー社団は,
自由職業にとり,こうした禁止との一定のバランスを保つものにはなる。
しかしこの社団は,全面的な責任制限を可能とするものではない。現在の 有限責任パートナー社団という特別の形式にもこれはまたあてはまる。こ の社団は,職業外の責任については今までどおり全員が責任を負う。した がって,最近,現在の職業上の責任に関する有限パートナー社団を全面的 な有限責任パートナー社団に広げてほしいという要望が繰り返しなされて いることは,別に驚くことではない88)。間近に迫ったブレグジットによ り,広範にわたる責任制限を受ける形でイギリス法の
LLP
の組織形態を これまでとってきた弁護士社団に,LLPと同じような法形式が選択肢とし85) Henssler, Brauchen wir ein zusätzliches sozietätsspezifisches Berufsrecht?, An-
wBl 2014, 762 は,ドイツの人的社団法は「嘆かわしい状況」にあると指摘し
ている。
86) 新たな規律がとりうる端緒については,K. Schmidt, Neuregelung des Rechts der Personengesellschaften?, ZHR 177 (2013), 712 ff.; Röder, Reformüberlegun- gen zum Recht der GbR, AcP 215 (2015), 450 ff.参照。
87) 主体と結びつけた商法に未来はないことについては, すでにHenssler, Ge- werbe, Kaufmann und Unternehmen, ZHR 161 (1997), 13 ff.が指摘している。も っとも連邦政府は,1998年の商法改正以来,営業を営む者すべてを内包する証 人概念を放棄する必要はないと考えている。vgl. BT-Drucks. 19/3014, S. 3.
88) この点については,Kilian, Bedarf für eine PartG „mit beschränkter Haftung“ ─ PartG 4.0?, AnwBl 2019, 98 f.参照。