−J −−
461
経営システムの性格に関する一考察
−ハートの所論を中心にして−−
細 川 進
1序
われわれほ生まれたときから死ぬまで「Vスf・lム」(systems)に・よって支配 されている。すなわち,われわれは多数の何らかのレステムとつねにかかわり
システム を持っている。たとえば,われわれは人間と.して神経系,循環系等を持ってい
システム
る。われわれは教育制度,政治制度,経済制度等の−・部に・なっている。われわ
システム れは大陽系に.含まれている。あるいは,われわれは各種の動力系,通信系統
や会計制度,事務制度等を作りだし,それを利用している。このような意
(1)
味で,現代ほまさに.「レステム時代」といえるのである。かかる時代におい て−,きわめて重要な意味を持つシステムの一つが経常(体),すなわち,経営 Vステムないし管理Vステム(management systems)である。ところで,経 営が1つのシステムとして明確に.意識されるようになり,その重要性が認識さ れるように・なったこと紅ついては,穫々の理由があるが,とくに慮要な要因は
(2)
経営の全体的状況(totalsituation)の複雑性(complexity)である。まず,
(1)「新聞はわれわれの時代を「ジ′.ェ.ット時代」,「宇宙時代」あるいほ「原子力時代」とし て特徴づけようとしている。しかしながら,現代の科学的諸概念に精通してい昂人びと はおそらく「Vスflム時代」(SystemsEra)という言糞を現代をより正確に表現した ものとして選らぶであろう。」(David O Ellis and Fr edJ・Ludwig,S.ysiems Phi・
losobh.y,EnglewoodCliffs,N、J:Prentice・Hall,Inc,19β2,p.21・)
(2)「現代の経営活動の大規模化,複雑性および多様性は管理機能をきわめて難しいもの に.したが,しかし,それほ企業の成功にとってほますます必須のものになっている。現
代の巨大な企業は経営活動の敏雄化や細分化に対処するため把∴/ステム概念(SyStemS concept)を使用すべきであるというのがわれわれの主張である。システム概念は管理 者が自己の活動をより効果的に統合できるための枠組を与えるものである。.」(RicbaI−d AいJohnson,Fremond E Kast andJames E= こRosenzweig,The Theory and Management qf S.ystems,NewYork:McGraw・Hi11BookCoznpany,Inc.,1963,
ー 2 −− 算40巻 寛6弓 462
対内的にみれは,経営が成長,発展し,経営活動の専門化が進むにつれて,各 種の管理技術がそれぞれ個別的にその合理性を追求しそして発展してきた。た とえば,事務分析技術ほできるだけ正確な遂行を意図して,複雑な分析技術を 発展させている○卒るいは人事管理技術に・ついても同様である0このようにし
て,管理の諸技術ほ細分化され,高度化され,複雑になってl、る。しかも,そ のことほまサます多くの専門家たちを必要とするようになり,多くの組織単位 を生みだしている。また経営に.導入される機械・装置も,経営機械化の進展に ともなって,ますます高度化されている。次にり 経営の対外的状況紅冒を向け れば,通信,交通,流通等の革命につれて,人びとのまたは各社会の間の相互 作用が複雑になっている。あるいほ各種の利害者集団が経営に対して痙々の要 求を出し,経営との関係が交錯したものになっている。
このように・,経営の全体的状況が複雑化してくるにつれて,もほや旧来の考
(3)
え方では.処理しえないような事態が発生している。そして,それをより合理的
p.1い)
なお,この点に関しては次を参照,山本純一・「経営管理の統合」,田杉 競編『経営管 理総論』有斐閣,昭和41年,89−122京;LeonaId R.Sayles,ManagerialBehavior:
Admini sirationin Complex Organizations(New Yo工k:McGraw・HillBook Com−
pany・Inc・,1964),pl21;HerbertA・Sinon, Approachinざthe Theory of Management, in Harold Koontz,ed.,TowaYd A Uni.fied TheoY・.y qf Manage・
ment(New York:McGIaW−HillBook Company,Incい,1964),pい 84.
(3)セイルスはいわゆる伝統的な管理の理論の主張が時代おくれの「古臭い管理の神話」
(theolder management myths)であり,現代の経営の状況には妥・当しないと主張し ている。彼によれば,伝統的理論においては,たとえば
①管理者はただ1人の上位者から命令を受ける
㊥管理者ほ自分の下位者を監督しあるいほ動線づけるために自分の時間とエネルギ−の 大部分を費す
⑧管理者は結果によらて管理する
④管理者は責任に対応する権限を持って行動する
⑤スタッフは其の権限を持たない
という神話が主張されるが,それらは古い状況から管理者行動を把握しようとしたもの であって,決して現在の状況から理解されるものではない。現代の経営では
①実際にほ,管理者は他の部門の管理者の作用に反応する。管理者は「部外者」との諸 関係紅多くの時間とエネルギ・−を費す
⑧上記の必要のため,管理者と彼の部下との接触の割合は少ない
⑨現代の組織は相互紅依存するサプレステムから構成されているから,結果が明らかに
−− 3−
経営システムの性格に関する〟考察 463
に解決するものとしてシステム概念が導入されるのである。それゆえ,われわ れは,ジスデム概念にしたがって,経営を経営システムないし管理システムと して理解することが有益であろう。経営システムに関しては諸種の問題が究明 されなければならないが,本稿でほ,経営レステムの性格に・ついて,ノ、・−ト
(4)
(B.工..J.HaI・t)の所論を手がかりにして,考察を進めることに・したい。
2 フィードバック・システムとしての経営システム
経営システムは,ハ、−トに.よれば,図表1のような一過のプロセスとして理
(5) 解せられる。この経営システムの機能は「卜目的をもっとも効果的な方法で達成す
図表1
なるのを待つことは出来ない。結果は共同の産物である
④管理者は対応する責任と権限を持っていない。彼は自分がほんの少しの管理も行なわ ない多くの人びとの活動に依存している
⑨スタッフは真のカ(realpower)を持っている
というような管理者行動が理解される。このような復姓な事実を理解するため紅は,管 理者は諸関係のVステム(asystemofrelationships)のまっただ中紅いるということを,
われわれは知らなければならない。(Sayles,02・Cit.,,eSpeCiallypp 21ff・,41ffl・)
(4)B.LこJ。.Hart,D.ynamic SystemsDe・Sign:Com2an.yCo71trOljbrthe Com♪uieY Era(London:BusinessPublicationsLimited,1964)
(5)∫∂柑.,Fig.11,ph 56巾
464 難40巻 寛6号
ー.才 一
(¢)
るように,人間,機械および事物の間の相互関係を確立すること」である。この 定義紅ほ,意志決定がおこなわれ,計画が樹立され,そ・れの遂行のために人
間,機械および事物が方向づけられなければならないということが意味されて いる。したがって,ここでまず問題になるのほ意志決定が執行に・移されるま での時間のずれ(timelag)である。時間のずれは,はとんどの場合,とくに
(7) (8)
システムが大きくなるほど,不可避的である(図表2参照)。現実の経営に・お いては,繊細が大きくなる紅つれて,コミュニケL−ジョン・チ・ヤンネルはい
く9)
わゆる部門化ないし組織のL垂直的分化(the division of an organization
−−−−−−●一 拍∵㌧圭h∴■Jl・−j
コミコ.ニケー・ション迎餓
】 、、…. 1 】一一分榊ために戒飢榊トーーヰl
図表 2
(6ト 〃紘,p.60小
(7)J∂gdL.,pp..40−42,62
(8)この図表はIbid.,Plate2,before p巾 3を若干修正したものである。
(9)このこと紅ついては次を参照,Henry Hい Albers,Organized ExeCut4rve Action:
Decision−making,Communibaiion,and LeadershiP(New York:John Willy &
Sons,ノInc.,,1961),pp.84−110;Dalton E.McFarland,Management:Princibles and Praciices(2nd ed。,NewYork:MacMi11an Company,1964),pp・242−254;
George R.Terry,PY・inciPles of Management(4th ed.,IIomewood,I11inois:
Rechard D.Irwin,Inc.,1964),pp.317−322
ー 5 −〝
経営システムの性格に関する−・考察
465
vertical1yinto department)の導入に,ともなってますます後雑化する(図表
(10)
3参照)。 この図表でほかつての単一・のコミ.ユニケ−−ジョン・チャンネルが4 つに.分割されている。分割されて生じた各チャンネルほそれぞれ専門的利害を 示している。専門家ないし専門部門ほ,特定の訓練や経験によって,自己の特 定の枠離すなわち「専門的変形」(professiohaldeformation)を作りだして いる。「意志決定と執行とのあいだの嘩純でまっすぐなコミュニケー・ンヨン・
ラインが分割され,専門家に.特定の専門領域についての責任・権限が与え.られ る場合には,かって.ほ簡単に.,明瞭直そしで比較的迅速に1チャンネルに.よっ
(11)
て伝達されていた目的ほJ、まや混乱し,盃を持ち,遅れている」という事態が 発生することに・な卑。専門家の目からみれば,自己の部門の目的や利害が彼に・
は重要な簡題である。したがって,意志決定に対する彼の分析や解釈に.は彼の 立場からのバイアスがかけられることほ避けられない。専門部門の見地からす れば,このバイアスほまったく当然である。しかし,これほサブシステムの見 地にすぎないのであって,トータル・システムの見地からすれぼ認めがたいも
▼ == 時の流れのノブ向
縫紘的 州のために必要な略問∴→
図表 3
uo)Cf.,Hart,OP.cit,Plate6,before p。3
(川J∂紘,p.62
466 第40巻 策6宅
u・6・−
(12)
のである。しかも,チャシネルの増加は意志決定を執行に移すに必要な時間を も増加するであろう。
他方,組織の水平的分化(the division of an organization horizontally intolevels)a)進展につれて,それほ自己の内部に階層構造(hierarchical
(1$)
structure)を作りだす。すなわち,それは自己の部門に.上位者一下位者関係
(14)
(superior−Subordinate relationship)やそれに対応するコミュニケーVヨン
(15)
連鎖を作りだすのである(図表4参照)。この場合,意志決定に関する情報ほ
コミ。.ニケL−ショγ連鎖の各層で受け取られ,したがって, その各層の人びと
= = 時の滅亡れのノノIiェj
こニキュト  ̄ ̄\、
\
ユ。ケージーヨン麺劇
..− ﹂暮 総統的
分別のために必要な時潤 一−−−−1
,図表 4 ヾ■
(12)それゆえ.,調整(courdination)という機能が発生する。これほ襖数のサプレステ■ム を全体としてのシステム紅統合するために必須のものである。なお,調整紅ついては 次を参照,ChesterI BarnaId,The Functions qf the Execuiive(Cambridge,
Massachusetts:Harvard University Press,1938),pp… 215ff
(13)Hart,Ob.cit.,pp。63,95
(14)Ibid.,pp.95,102。なお,このことについては次を参照,Joseph A… Litterer,
The Anal.ysis qf Organizations(NewYork:John Willy&Sons,Incリ,1965),
p.316;Justin G.Longenecker・,PYincibles ofManagem eniand Organizaiional BehavioY・(Columbus,Ohio:Charles E.Merri11Books,Inc.,1964),ppn166−
184;John M。Pfiffner and MarshallFe11s,The SuPervision pf Personnel:
Human Relation.sin the ManagemeniofMen(3rd ed,Englewood Clifis,N‖J : Prentice小Hall,Inc.,1964),pp.141−154
u5)Cf HaIt,0♪・Cii.,Plate3after p・】8
− 7 −
経営システムの性格に関する一湾察
467
の経験にしたがって儲釈され修正される。この情報ほ下位層の言葉に蘭訳され て,さら紀伝適される。不幸なことにほ,この利訳ほ・さらに歪を生みだす,す なわち,あるものが加えられあるいはあるものが捨てられる0 これはメッセ」−■
汐が遂行点に到達するまで続けられることに・なる。意志決定ないし計画・方針 の決定と最終的執行との間に.階層の数が多けれは多いはど,メッセー汐がコミ ユニケージヨン・チャンネルを進むに・したがって各種のバイアスがかけられ, ○
(16)
歪が多くなることほ避けられないのである。
ところで,組織の部門化や階層化が進むに・つれて,意志決定から執行までの あいだに生じる避けられない盃を修正するために,伝達や執行の結果を統卸す
ることが必要になってくる。計画の結果を出発点にまでフィードバックするこ
(17) (18)
とによって,それを初めの計画と比較することが可能である(図表5参照)0
図表 5
(16)Cf.j∂グd,pp.42−43,62,63‖ なお,コミ.ユニケ−ショソとノイズとの関係は次 を参照,EllisandLudwig,OblCit,pp 28−32;Johnsonet・al OP=Cii・・pp
77−78.
(17)HaI・t,妙・(査fい,ppい37−43,51−52,63−70
(18)Cf.ibi d。,Plate5after pu18
籍40巻 辣6弓
ーー・− β・−
468この比較に.よって,当初の意志決定が実行可能であることがわかれば,その場 合には.,比較,検討の結果を基礎湛.して,再び権威ある指令が発せられる。他 方,意志決定が執行不可能であったことが明らかに.なれば,管理者はその原因
を究明しなけれはならない。まず考えられることほ,管理状況の非現実的な評 価から意志決定が樹立されたということである。この場合には,意志決定を再 検討し,実行可能なもの軋修正しなければならない。さらに,意志決定ほ,不 適切な分析・解釈のために,実行不可能なこともありうる。この場合には,決 定内容を再確認し,再び執行を要請することに.なるであろう。
さて,フィー・ドバックに.さいして問題に.なるのほ測定(me・aSurement)であ
(19)
る0われわれ甲測定用兵は十分紅正確ではない。おそらく事物に関する測恵が もっとも容易であろうが,しかし,それさえもかならずしも正確ではない。事
物に.閲しでそうであるから,その他の要素に関する測定は不正確といわざるを
得ない。さらに,図表5に.ほ資材・機械・装置・労働の流れが描かれている が,これら諸要素の活動の変化は相互に関係せず,また,その速度や内部関係も ー、定ではない。たとえ.ばある作業を遂行するために機械を備え付ける期間と熟 練労働者を配置するに要する期間には相異があり,また相互に.なんらの関係も
ない。したがって, 各専門機能の活動恨内的に.もまた相互の関係に.おいても 異なっている0 つまり,正確な測牢の不可能性と異なる変化の速度(rateof
Cbange) のために,もしわれわれが意志決定を有効に執行させようとするな らば,われわれは資源の貯蔵(reservoirsbfresources;reSOurCereServOirs)七
(20)
いう要請を受け入れなければならない。この資源の貯蔵を単一・線よりもむしろ
(21)
幅のある線で示せば,経営システムは図表6のごとくなるであろう。しかし,
この場合に・も測定の問題から解放されたわけではない。かりに.システムが単純 で,測定がかなり正確に・おこなわれるならば,その場合に.は資源の貯蔵ほ,シ ステムが復姓で測定がある程度困難な場合に必要とするはど,多くを必要とし
(19)∫∂〜d小,pp.54−55,65−66 伽)′∂∠d.,p.65
C21)Cf了ibid.,Plate6before p。19
経営システムの睦格紅関する一考察
−− 9 −・
469
J l一分帆紺軋指令のために必紺帥J 、
!
図表 6
ない。それゆえ,資源の貯蔵の水準をシステムの複雑性とその変化の速度に・適 するようにすることが重要な問題である。自己の存続のために.高い変化の速度 を必要とする組織においてほ,資源の貯蔵の水準は決定的に慮要な問題である。
「資源の貯蔵があまりに少なすぎれば,変化に.適応する能力がないから,組 織ほ発展することができない。変化を予期して資源の貯蔵をあまりに多くすれ
(22)(2幻 ば,費用がかかりすぎ,組織は成長力を失しなう」ことになる。
ところで,われわれほ意志決定に.したがって経営活動がおこなわれることを 期待している。そして,それほある期間のあいだは期待通りに∴おこなわれる が,しかしながら,遅かれ早かれ,ある活動は基準から逸脱する。しかし,わ れわれはいかに努力しても偶発する事象を予測することほできない。それに
もかかわらず,経営の諸活動は連鎖して一いる(aninterlocking pattern of 但2)J∂よdい,pり 65
㈹ ハ−トが資源の貯蔵として理解する問題は行動科学的組織論に.おける組織スラック
(organization slack)の問題紅色供されるであろう。次を参照,Richard M.Cyert
andJames G.March,A BehavioY・αJTheor・.y Ofihe Firm(Englewood Cliffs,
NewJersey:Prentice・Ha11,Inc,,1963),pp 36−38;占部都美『■現代の企実行動J)
日本経営出版会,昭和42年,318−320頁。
470 箆40巻 策6弓
−J♂ −−
ac抗vity)から,予期しなかった事象がわれわれが予測していた事象に・影響を 与えることば避けられない。予測通りに.進まないという状況が発生する場合に
は,これに関する情報を迅速に入手する必要がある。そして,修正活動をとる か,あるいほ,計画からの逸脱を承認して−それに.対する新しい措置を決定しな ければならない。すなわち,出力に.関する情報のフィー・ドバックを入力と比 較,検討し,入力か出力かのいずれかを修正する必要がある。経営システム
(24)
は,図表7に示されるように,二重循環フィL・−・ドバック・システム(adouble−
(25)
loop feedback syste印)として理解されるであろう。しかも,現実の経営 システムほ1回かぎり存在するものでほない。それは連続する過程(a con・
(26) (27)
tinuousprocess)であり,循環過程(a series ofloops)である(図表8参照)。
要するに,ハ一卜ほ経営システムをフィー・ドバック・システムとして理解し
図表 7
C24)Cf..HaIt,OP.cit.,Plate7after p 34
(25)J鋸a,pハ 67.
㈱」硝■d。.,p・67
閻 Cf.∠∂摘.,Fig.12,p・68.
471
図表 8
ているといえる。それは複雑なコミ.ユ.ニケージョン・システムを持った橡合的 なVステム(acomplexsystem)であり,各部門や各階層というサブVステ ムから構成され,同時に,多くのスーパーシステム紅包摂されている全体的存 在である。
ところで,経営システムほこのように・動的であり,したがらて,諸状況の変 化に適応している0しかし,そのことはかならずしも自動的に適応がおこなわ
れていることを意味しているわけでほない◇システムの行動を最適化するため
に.は,不断のVステム設計(systems design)がおこなわれなければならな いことは明らかである。経営において変化が合理的に・あるいほ牒的的におこ なわれるように偶に.注意する必要がある。これを担当する機関がシステム部
(28)
(systemsdepartment;SyStemSandproceduIeSdepaItment)である0「シ′
ステム部の主要な職務は適切なコミ.ユ.ニケ−ション・ネットワL−・クを作りだす
(29) ことである」といえる。それゆえ,システムの設計は諸状況の変化によって白
田8)「日本の事務管理という用語は,米国におけるSyStemS and procedures部門の仕 事が主たるものと考えてよい」(古谷野英一・・南沢宣郎『事務の近代化』金原出版,昭和
37年,18京)。
(29)HaIt,0♪,Cれ,pリ107
−−Jご −一
舞40巻第6一弓472
動的におこなわれるというよりも,むしろそれに.対隠するためにシステムの中 で意識的に・おこなわれるものである。シ/ステム部あるいほその成員であるシス テムマン(a systemman)ほまさ紅「変化の機関.」\(apagent ofchange;a
(30)
Change agent)として行動するものである。「シ/ステムマンほ経常の成長や発
(31)
展のための重要な要素であるとみなされる。」ハー・トがシステムマンの育成を システムに関する重要な問題としてとりあげる理由はここにみいだされるであ ろう。われわれは次にシステムマンの育成の問題を検討しよう。
3 システムマンの役割とその育成
経営システムほ動的で常に.変化しているものであり,しかもそれほ全体とし てほ統合されて−いる。つまり,・それほ常に.ス−パーーーレステムやサブシステムと 相互作用をいとなみ,適応行動(adaptive behavior)をしている。そして,そ
の相互作用や適応行動を援助し,促進させるのがシステムマンである。それゆ え,有能なレろテムマンを育成することはシステムの存続・発展のために必須 のことである。さて,システムマンの資格や彼の育成を問題にするためにほ,
彼の果たすべき機能が明らかに.されなければならないであろう。なぜなら,ど のような人間が有能なシステムマンであるかは彼が遂行すべき機能を基準とし て判断されるからである。そこでわれわれほまずシステムマンの職務を明らか にしておこう。′システム部の職務ほ新しいシステム・手続・方法を設計するこ とである。したがって, システムマンほ償ほ〟ステムを設計しなければならな い。レステムマンの職務はVステムの設計である。Vステム設計(systems
($2)
design)は科学的方法(scientific method)にもとづいて次の主要なステップ
(30)Zbid.、,p小88小なお,変化の機関についてほ次を参照,WarrenG.Bennis,Changing O/gのJ/ヱ〃わ0〃∫:E∫叩.I・Sβ〃/毎β(−J・ぐJ∂♪/一汀Jけ(川d E〜,∂/JJ′/β〃q/〃〟別のJO′g(川上ヱ〝−
tion(New York:McGraw HillBook Company,1966.),pp.79−178;Pfiffner and F91s,′0♪小 CZ′.,pp‖128一・138
(31)HaIt,∂♪.c∠f‖,p213
82)J∂∠d.,pp∴72−88‖ 科学的方法とは問題に.対する接近の方法であり(J∂∠d.,p∴73),
473 経営システムの性格紅関する州・考察 ・−ヱ∂・−・
(83) から構成される。
(1)プロ汐エクトの立案
(2)調査のための心暫的雰翔気の創造
(3)事実の収集と観察
(4)収集されたデー・夕の分析,解釈
(5)仮説の樹立
(6)仮説の実験と検証
(7)実施案の決定
(8)実施の準備と売込
(9)新システムの実施
(1α 新システムの追跡と維持
このような職務,すなわち,システムワ−クは並はずれた人間を必要としてい るといえる。レステ∴ムワークの用具や技法はたとえ複雑でほないとしても,そ の適用にさいしてほ独特の熟練を要するであろう。しかしながら,これ紅必要 な熟練を待った人は始めからこれを見いだすことは困難である。まさ濫「シ/ス
(84)
テムマンほきわめて複雑な人間(a man of great QOmPlexity)である。」した がって,システム設計の担当機関であるシステム部を構成することほすくなく
とも人事の側面でほかなり難しい問題である。それゆえ,われわれは有能なシ ステムマンを養成する必要に.せまられるのであるが,そのためにはシステムマ
ンに.どのようなことが要求されるのかを明らかにしなければならない。
($5)
システム設計の第1のステップのプロジェクトの立案ほVステムマンの資任
俊紬な問題の処理紅秩序を与えるものである。しかし,「もしわれわれが全過程という着
想とほ無関係に各ステップを考察するならば,科学的方法ないしその技法は決して呉の 意味を持つことはできない」(′∂オ♂.,p 75)こと紅われわれほ注意しなければならない。
錮 各ステップの分割は習慣的ないし便宣的なものにすぎない(J∂さdりp・75)のであって,
ノ、・−トは論じる個所によ・って8ないし11のステップ紅分割して心る(∫∂彦♂.,e坤eCiaユ1y ppい72ff,85ff.,130ff,.,206ff.,215ff.)が,ここではハl−トの主張を使宣的に 10ステップに整理した。なおハ・−トは追跡と維持については特に論及していない。
(34)J∂よdい,p.217.
(35)J凝dい,ppり 73−74
一−Jイ ー
貨40巻 寛6弓474
で遂行することもあるしあるいほ.管理者のイ土レアデイブ紅よって−おこなわれ
(36)
ることもあるが,こめ場合紅㌢ステムマンに.要求されるのほ日常の活動にとら われない能力,広い視野から状況をとらえる能力,あるいほコンサルタントた る能力である。次に,調査が受け入れられるような心理的雰囲気(psycbo−
logicalclimate)を作ることが必要であるが,これははとんどテストすることが 不可能なしかもシステムマンに.ほ必須なきわめて微妙なアートである。調査し
皐うとする職場の中に.調査に.協力する雰囲気があるか否かを感じとる能力や適 切な雰囲気を作りだす能力がなければ,彼はシステム設計者として成功する見
(37) 込みはないであろう。さらに,レステ∴ムマンほできるだけ状況に.関するデータ
(38)(39) や情報を収集し,それを分析,評価しなければならないから,彼ほデータや情
報を収集する技術を1つ1つ正確に習得することがなによりも重要セある。そ して,収集した情報の意義を正しく評価する能力を身紅つゆなければならな い。また,このような仕事ぼ単調で困難なことが多いから,ある人にとってほ いやな仕事であるかも知れない。したがって,彼に.ほ忍耐力,注意力,粘りが 必要である。データや情報の分析が終れほ,システムマンほそれから1つの見 通しを立て,実施案を作らなければならないであろう。この場合の彼の仕事ほ 最初の課題を詳細な調査・研究にもとづいて,広い視野から検討し,しかも固 有の問題点を見失しなわないような能力が必要である。いわば「彼は森と木葉
(40)
を同時紅見ようとする困難な仕事をしている」といって■も言い過ぎでほないで あろう。彼ほすぐれた洞察力を持たなければならない。さらに,彼は創造力を
/
伽)ハートはシステム・プロ汐ふクトが始められる原因として次の4をあげている(∫∂柑.,
ppい126−127)。
①緊急問題の発生
②トップ・マネジメントの命令
⑨ラインの管理者の要求
④システム部ないしシステムマンの創意
(37)ル紘,p.215.
(38)J∂∠♂.,pp.135ff.,141ff.
郎)′∂よd.,p.137.
粗α ∫∂嶽.,p..▼216
475
経営レステムの性格に関する一−・考察 −・J5 −(41) 必要とする。問題点の理解と現在の状況とから判断して,彼はシステムがその
資源を効果的に利用でき・そして自己の存続の可能性を増加するような行動のコ ー・スを決定しなければならない。新しい行動のコースかきまれば,それが実施 されるよう紅,それを売り込まなければならない。他の部門の管理者に,同僚 に.,あるいは,システム部の管理者に.売り込まなければならない。そして,と
くに重要なのほそれを執行する人びとに対する売り込みである。この場合,彼 ほ.アイデアを売り込み,それを受け入れさせ,実行に.移つさせる説得力が必要 である。そして実施するに.さいしてほ,とく紅,それを実施紅移つす場合に発生 するかも知れない障害やシステムの各部分の反響を予測し,それ鱒・対する対策 を立てる能力を持たねぼならない。最後に.,実施●された新システムの追跡と維 持に.関してこほ不断の注意力や忍耐力を必要とするであろう。
システムマンの職務ほこのようにきわめて複雑で困難なものである。システ ムマン紀要請される資質ほレステム設計のステップを十分に遂行できるもので なけれはならない。ハートによれば,システムワークのこ.のような特徴からし
て,システムマンに.は少なくとも次の4つの性格がそなわって1、なければなら
(42ノ
ない。すなわち,Vスflムマyほカウンセラ〜(a counsellor),分析者(an analyst),創造者(a creatoI・)および説得者(a persuader)でなければなら ないのである。
システムマンは,カクンセラ−としてほ,あるときに.ほ管理者への助言者
(anadviser・)であり,あるときに.は現場作業者の悩みに同情的なリスナ・−,(a sympatheticlistener)である。助言者としての彼は権威ある知識,誠実さ,
自信,貴任感を持たなければならない。リスナ・−としての彼には忍・耐力,如才な
さ,援助カ,同情心が必要である。なお,彼の使用する言葉や彼の持つ考え方は
(4$)
作美者から管理者に.いたるあらゆる人びとめ行動に影響を与えるから,彼はカ
㈱・抽呵,p・127一・なおハ一卜ほyステムマンは創造的思考(Cfeative址inking)を活 用すべきであると主張している(J∂よd…,ppい192−203)○
(42)乃≠d.,pp..217−219.
(凋 「シ′ステムマンほ彼の活動が状況を変えているということを自覚すべきである」
(J∂好.,p.216)。
−㌧裕一 箆40巻 発6号 476 クンセラーとしての職務を軽々しく行使すべきでほないであろう。
分析者としてのシステムマン紅は2つの意味がある,すなわち,有能な技術 者(an able technician)および其の分析者(a true analyst)としての性格
(44) (4占)
である。彼はデータの収集や分析のために.もっとも適切な調査方法や用具を選 択し,使用できる有能な技術者でなけれほならない。しかし,ときには,彼ほ凛 の分析者であるためにたんなる技術者以上のものでなければならない。すなわ ら,彼は分析的アプローチを身紅つけ,秩序や完全さを追求すべきである。彼 は偏見を排除し,デー・タの妥当性を評価することができなけれほならない。とく に,部分の徹底的な研究によるのみでほ全体の特徴をみきわめることは不可能
(46) であることを彼ほ認識しなげればならないであろう。
このように.システムマンに.はカウンセリングの能力や分析力が必須である が,それだけでほ十分ではない。彼は創造者ないし革新者(aninnovator)でなけ ればならない。彼は慣習や現行の制度紅制約されないで,−・般紅受容されてい る行動様式を打ち破る勇気を持たねばならないであろう。彼ほ特異な状況のも とでは−・般的な行動や考え方を,\そして,−・般的な状況のもとでほ特殊な行動や 考え方をする必要がある。彼は現在の仕事の方法紅不満を持ち,そこから新し
い方法を発見する手がかりを見つけるべきである。すなわち,真の創造的なy ステムマンは自分の中紅変化への動因を持っており,そして,変化の機関とし て機能しなければならない。しかしながら,他方では.,変化のための変化を生 みだして鱒ならない。変化のための変化ほ∴建設的でほなく,あるいほ,長期的 紅みれば為に.満足のいくものでほない。
㈱ 調査方法には資料法,面接法,質問書法およびその組み合せがある(『新事務能率ハ ンドブック』産業能率短期大学,昭和40年,207−208貢)。
脚 収集内容を記録する図表は種々の観点から分類されるが,ハ−トは次の4種紅分類し ている(Hart,0♪・Cii…,pp。143ff小)。
①人事関係図表(personnelrelationship chart)
④物的関係図表(physicalrelationship chart)
⑨流れ図表(movement chart;flow chart)
④計盈(しない統計)図表(quaDtitative(Or Statistical)char・t).
粗6)′∂≠dり pい 80
経営システムの性格に関する・一考察
−J7−
477
ところで,システム設割に必要なデータや情報の収集のために,彼はライン
、・1Tl
の職員に自分自身を売り込み,受容を獲得しなければならない。この受容ほ作 業者の階層でのみならず,管理者のすべての階層で必要である。そして,新し いシステムの設討ができれは,それを実施してもらうように.売り込まなければ
(48) ならない。披ほ管理システムの成員に,システムが有効に機鰭するような行動
様式を教え,説得して,それを遂行させなけれはならない。プロジェクトの始 めから終りまで,彼ほまさに説得着であり,セー・ルスマンである。
このように「ミ/ステムマンに要求される資質ほきわめて多岐にわたってい
(49)
る。」つまり,レステ∵ムマンは複雑な性格を持っているから,彼には種々の要
く80)
件(requirements)が要求されるのである。しかし,とき把は要求される要件
(51)
に.矛盾があることがある。したがって, 1人の個人でこれらの要件を完全に満 たすことは不可能である。それゆえ,システムマンの選考匿はとくに注意が必 要なのである。不適格なものが採用されても,結局は彼はシステムマンとして 十分に働きえず,したがって,仕事上の満足ほ得られないであろう。しかも,
このこと咋経営システムにも非能率と混乱をもたらし,そのために経営の成 長,発展を阻害するであろう。それゆえ,システムマンの選考はきわめて重要 な問琴である。次にシステムマンの選考の問題に考察を進めよう○
さて,システムマンの選考の基本的なプロセスは応募者に蘭するデータの収
(52)(53) 集,個人との接触および評価である。基本的なデータの収集の第1段階は就職
㈲.抽吼,pp.111−112
(爛」肋d.,pp,・140,206ff.
(49)∫みよd巾,pp・219,223 甜」撒−♂.,pp.219−221.
(51)Jゐ摘.,p.118
醐 ピゴ−スによれば選考の主要な手練ほ,①予備面接,⑧採用申込書,⑨前歴調査,④ 身体検査,⑧テストである(PaulPigoISandCharlesAlMyers,PersonnelAdm−
inisわ′at;on:A Poiniqf、Yiew and A Meihod,5th ed.,New YoIk:McGraw・・Hill Book Company,王nc.and Tokyo:Ⅹ∂gaklユSha,1965,pp,,36ト372)。
脚 集められるぺきデータはたとえば ①訓練,経験および」般的背景,食知力および知 能水準,⑧身体状況,④精神的・情緒的特性である(MichaelJ Jucius,fセrsonnel
Managcmcni,3rd ed′.,Homewood,Illinois:Richard DいIrwin,Inc。,1955,p・
145)。
−∫β− 算40巻 算6弓 478
申込書ないし採用申込書(an application blank or form)の検討である。就 職申込書ほ選考のためのもっとも−・般的な用具であり,これによって収集され たデータはこれに続く選考過程で必要であり,その基礎になる。ここでは,学 業成績,家庭環境,健康状態,個人の経歴等が訝らべられる。第2の段階は各
種のテストである。とくに心理テストが長く利用される。「テストは,応募者 の行動を抽出検査すること紅よって,特定の個人の資質をより鮮明に.そしてよ
(54)
り正確に評価しようとするものである。.」しかし,テストは絶対的なものでは ない。それほ役紅立つが,どのような目的に対しても絶対的に正しく適切では ありえない。デス=はせいぜい応募者の全人格のはんの−・部分を明らか紅する だけセある。テストほ選考の一手段として理解されるべきである。「テストは 選考手続の1っであって,他の手続にかわるものではないことが認められなけ
ればならない0テストは,もっとも精巧なテスト・プログラムのも辛でさえ,
選考手続の−・部分紅すぎない。テストは選考問題に.たいして完全な解答を与え
(55) るものというよりも,むしろ選考の方策ないし用具と考えられるべきである。」
したがって,テストがおこなわれたとしても,それだけでほすぐれた選考がお こなわれるとほ限らない。しかし,それだからといって−,テストを実施しなく ても,すぐれた選考がおこなわれるというわけでほ.ない。テストは選考の一・手 段として有効に利用されるぺきである。
申込書やテストの結果を検討して,将来のシステムマンとして見込みがある と思われる人に対しては,選考過程の次のステップ,すなわち,面接(inte工・
View)がおこなわれる。面接は面接者が応募者との対話を通じて彼の人格や行 動を直接に・評価しようとするものである。「面接の目的は職務の要請に.照らし
く56)
て応募者を推しはかり,そして−,適切であるかどうかを決定することである。」
(54)Dale Yorder,PeYISOnnelManagemeniand ZndustrialRelaiions(4th ed.,Eng・
lewood Cliffs,NewJersey:Prenice・Hall,Inc.,1956),pp‖ 247 個 ∫∂オd,pい 269n
(56)George Strauss and Leonard R… Sayles,Personnel:The Human Problems pf
Management(2nd ed.,Englewood Cliffs,NewJersey:Prentice・・Fa11,Inc。,
1966),pp.465−466.
479 経営システムの性格に関する一考察
−−J9−
面接は成功すれは応募者の行動を試めすこ.とができる。しかし,たとえうまく いっても,面接は完全な技術ではない。また,面接術を完全に・習得することほ 困難である。面接者は応募者に対して偏見をいだいたり,えり好魂する傾向が あるから,これに十分注意しなければならない。また,たんなる印象に.よって 判断することを避け,分析的・綜合的な評価をすべきである。
就職申込書,デス十や面接によって個々の応募者について必要なデータが集 められれば,最後は彼がシステムマンとして−適切であるか否かを綜合的に評価 することが必要である。しかしながら,システムマンに.要求される資質はきわめ
て複経で多岐にわたって−いるから,「すべての会社あるいぼ.あらゆるレスデム 部に適するような唯一Lの選考基準ほない。.」したがって,この基準は「ミ/ステ ムワークがおこなわれる階層,システムワークがおこなわれる心理的雰囲気や ジステ∴ムワークが値面する組織の複雑性」などを考慮して決定きれるのであ
(57)
る。そして,この選考基準を満たすものがシステムマンとして採用されること 紅なる。
さて,将来のシステムマンとして適格であると判定されて,システム部に・配 置されるあるいはされた人びとに対して,有能なシステムマンに.なるように育
(58)
成,訓練することが重要な課題である。システムワL−クほ経常的な訓練活動を 必要とする分野のⅠっである0ヤ、つでも新しい概念,新しい機晩古い技術の 新しい適用,新しい要求がおこなわれている。したがって,そこでほ不断の訓練
(59)
と再訓練が必要である。シ′ステム部の管理者は新入者のための訓級プログラム のみならず,すべてこのシステムマンが最新の知識や技能を習得することができ
(80)
るようなプログラムをたてなければならない。シ′ステムマンの能力ほ問題紅関
(57)Ellis M Derby, Selecting and Training Systens Men, in Victor Lazzaro,
edい,S.ystemlS and ProceduYIeS(Englewood・Cliffs,NewJersey:Prentice・Hall,
Inc.,1959),p..447 聞IHaH,0♪い C査才り,pp・・224−226
(5g)ハ一t・はとくに新入者の訓練の重要性を強調して次のように述べている。「新入者の 最初の訓練はシステムワークの分野でほきわめて重要である。それにほ2っの目的があ る。第1ほパ・−ソナリティを啓発することであり,寛2ほ情報や技能を持たせることで ある」(J∂≠♂..,p.224)。
榊」情動 p..196.
480
策40巻 寛6号
ー20−
(61)
する理論的知識や習得している技術に依存している。しかし,さらに・重要なの はその知識や技術を適肝する能力である。
したがって,訓練とほシステムマンに・理論と応用を教えることである。ミ/ス テムに.おける訓練の目的ほ管理の諸問題に知識と応用力のある,思考するシス テムマンを養成することである。換言すれぼ,システムマンの訓練の目的ほ.明 確紅思考する能力を養成することである。訓練は,たとえ技術がすべての状況 を−・般的に満足すると.しても,それを盲目的紅使用するのではなくて,特定の 状況に.適切な技術を選定すべきであるということを,システムマンに.理解させ なければならない。たとえば,ストソプクォ・ツチのような測定用具の利用が場 合に.よってほ許されないことがある。なぜなら,調査の対象となる人びとを非 常に神経質にすることがあるからである。ミ/ステムワークで使用される技術ほ 技術それ自体の価値よりも,むしろそれが適用される場の心理的雰囲気やシス テムワーークの目的によって決定されることが多いのである。したがって,われ われは同じ目的・結果を達成するため紅,1っではなくて,多数の技術を自己 のレパ−トリ−の中に持つ必要があることをレステムマンに理解させなけれぼ ならない。つまり,システムマンの訓練の目的ほ彼に.たんに諸技術を教えるこ とよりも,むしろ彼の思考過程を鼓舞することである。換言すれば,独創的な
(62)
解決を生みだす能力やその解決策を売り込む能力を持たせることである。
このような訓練には多くの方法があるが,システムマンの訓顔ほ多くの場合
(63)
職場で(on tbe.job)おこなわれる。多くの会社ほいまだシステムマンの知識 飢)ハートはシステムマンが習得しなければならない知識や技術を多数例示しているが,
たとえば,システムー・般理論、ヒェ∴−・リスディックな問題解決法,ゲームの理論,ビ汐 ネスゲーム,クリティカル・パス・メソッド,OR,VA,精神測定,グル−プ・ダイナ・
ミックスなとがあげられている(∫∂よdり,Fig..46,p〃225)。
㈹ 「訓練とは従業員の福祉や会社の成長のために竃献する知識や技能や態度に関してす べて従業員を経統的,体系的に啓発することである」(EaIiPianty,WiHiam McCord
and Carlos E土ferson,TY ainni−ng Emblo.yeeSand Managers,New York:Th6 Ronald Press Company,1948,p 24)。
(63)Ch L Littlefield and Frank Rachel,Office and AdminisiYative Management:
S.ysiemSAnal.ysi−5,Data Processingノand qffice ServiceS(2nd ed..,Englewood Cliffs,N。J。:Prentice・Hall,Inc。,1964),p517い
なお,職場訓練(0.TT)に.は次のような長所や短所がある(RicbaId Pり Calboon,
経営システムの性格に.関する−・考察
481 ー2ノ ー
(64)
や技能の啓発を目的とする訓練部門を設置していないからである。、システム部 管理者は自己の下位の管理者や監督者紅訓練のためにかなりの時間をさくよう
に要請すべきである。そして,下位の管理者や監督者は新しいシステムマンの 訓練がもっとも重要な仕事であることを認める必要がある云 しかしながら,シ ステムマンほ特定の訓練期間を通じて:特殊な技術や思考方法を教.え.られるぺ
(郎)
きであるという考え方がある。すなわち,システムワークは復姓で困難である から,職場訓練だけでなく,職場列訓練が必要である。この期問にほ人事部や システム部が強いオリエソテ−ジョンを与え,短期間のうち把効果的な訓練を おこなおうとするものである。もし新しいシステムマンが専門家の指導のもと に計画されたコースを進めば,短期間のあいだに・,種々の事例に膚面し,それ
(6$)
に.対応できるようになるであろう。
肋naging Per・SOnnel,New York:Harpar&Row,Publishers,Inc… and Tokyo:
John WeatheIhill,1nc.,,1963,p210)
長所綱①従業員朋自分の仕事と他の仕事との関係を知ることができる
②習得と実行とのあいだにほ中断がない
⑨訓練室という相対的に静止んた,背痛のない環境から現実の作業場へ・移る場合に生 じるようた動揺はおこらない
④遂行ないし達成したという意識が,たとえはとんど成果がなくても,よりはやく感 じられる。
短所−①生産設備が抱束される
⑧被訓練者の生産の質盟がおとる
⑧現場の状況によっては,達成したという意識よりもプラストレー・ジョンを引きおと すかも知れない
④技能を集中的に学ぶことが困難である。
闘 しかも「不幸に.して公けの教育機関に・おいてもレステム設計者のためにもうけられた 綜合的な訓練コ−スはない。必要な技能はある種の工科大学でおしえられているが,し かし,これらのコ−スほ(独立したもの七はなくて)他のコ−・スの一部に食まれている
に.すぎない」(HaI・t,0♪.c査ォりp一・225)。
65)Derby,in Lazzaro,ed.,OP‖CitlI,ppl451−452
脚 職場外訓練(OfトTT)には次のような長所や短所がある(Edwin Bり Flippo,肋
nagement:ABehavioralA♪Proach,Boston:A11yn and Bacon,Inc。,1966,pp
276−277)。
長所−①熟練した指導員が指隠する
㊥日常の仕事を中断しないで訓練に集中できる
⑨訓練を受けることによって,その人の地位が向上する
④仕事上では直接関係のない人びとと接触することができる
貨40巻 第6号 482
− ごヱ ーー
要するに・,レステ∵ム設計の分野に.おいては,教育や訓練は決して終ることが ないのである。技術の発展ほ常に.おこなわれているし,システムにおいてほ.新 しい考えが常に.作りだされている。したがって,システムマンは常に学習して いなけれほならないであろう。すくなくとも,システムマンほ定期的に.自己の 知識を最新のものにする機会を利用すべきである。常に学習し啓発しようとい
う寡聞気がシステムマンの周囲にあることが必要である。換言すれば,システ ムマンは常に.養成されていなければならない。「この仕事(訓練)は,ますま す競争がはげしくなる社会に・おいて,企業の将来の成功を左右するものであ
る。・…もしわれわれがまいに・ち発展する技術の変化を完全吟・利用しようと思 うならば,われわれは兵剣紅現在の企業の実践のすべてを疑問視し,研究しよ うとする機敏な探究心を持った若いシステムマンの養成に取り掛からなければ
(67)
ならない。」
4 経営システムの均衡
以上に.おいて,われわれはハ−卜の経営システムに関する主張を考察してき た。経営システムほその目的を達成するために・は資材・機械器具・装置・労働 を結合させ,それらに.重複や間隙が生じないように調超し,あるいほ,それら に加えられるバイアスを監視・訂月並し,そして−,執行の状態を常にフィードバ
ックして,計画が効果的k遂行されるように.するシステムである。この意味に
おいて,経営システムはまさに・フィー・ドバック・システムに.はかならない。
さて,われわれはシステムが各種のスーパ…システムに.包摂されているとと
短所−①訓練の状況が人為的である。そのために学習意欲がにぶる
④訓練室での学習と職場での実際とを結びつけるのが困難である
④訓練室で指導員によって教えられることと職場で管理者紅よって指示されることと の問鱒矛盾があることがある
④訓練のために特別の費用がかかる。
旧Ⅵ HaI■t,〃♪.c〟.,p.226‖
483 経営システムの性格に関する−・考察 一一之ヲー
(68)
もに,多数のサブシステムから構成されていることに注意しなければならな い。われわれがすでに.考察したハートの主張するフィ・−ドバック・システムと
しての経営システムに.もサブシステムが存在する。すなわち,まず第1に.は機
(69)
能的見方によれば,図表5に.おいて明らかなように,それは意志決定,計画,
組織化,執行および統制というサブシステムから構成されている。このブィ−
ドバック・システムをサプレステムが明確に.なるように.図表化すれば,図表9 のごとくあらわされるであろう。この関係は基本的紅ほ図表10のごとく示され る。すなわち,システムAの出力がシステムBの入力と同質であるならば,両 者を結合してシステムCを作ることができる。こ.の場合,システムCの入力ほ
システムAのそれと同じ性質のものであり,∵レステムCの出力はシステムBの それと同じ性質のものである。システムAとBはシステムCのサブシステムで
図表 9
TE]→[∃「
\\− 迎統結朗当のシステムCノ
図表10
郎)「システムはサブシステムという人口から構成されている,そして,ス−パーンステ ムーその環境−−の側部分として存在する」(J∂g♂い,p・12)。
佑切 機能的見方についてほ次を参照,山城 章『実践経営学』同文館,昭和35年,39−59 真。
484 寛40巻 鰭6号
ー 2メ ー
あり,逆に.Cほ.AとBのス−パーVステムである。ミ/ステムCほ連続結合型V
(70)
ステム(series−COmbination of systems)である。このことを図表9にたちかえ って考察すれば,ある状況のもとで入力に応じて「意志決雇」がおこなわれ る。ノこの意志決定の結果が出力となり,それが「計画」の入力となる。そこで 種々の状況が考察されて具体的な計画がたてられ,それが計画の出力となる0
この計画の出力が次に.は「組織化」の入力となる。討画の内容と状況に・もとず いて,具体的な組織化がおこなわれる。そして−,組織化の出力ほ一方でほ「執 行」の入力となり,継続的な執行がおこなわれるとともに・,他方でほ「統制
1」の入力となる。現実の執行の出力は1っには外部のシステムの入力とな り,罪2に.は「統制2」の入力となる。統制ほコミュニケー・ジョン・チ・ヤンネ ルにおける歪(noise Qrdistortion)や執行の状況を考察して,出力を作りだ
し,それが再び計画の入力となるとともに,新しい意志決定の入力となるので ある。このように,フィ−ドパック・システムとしての経営レ・ステムは第1に は意志決定,計画,組織化,執行および統制というサブシステムから構成されて いる。これほいわゆる「管理過程」(management process)として一理解され
(71)
るものである。
経営システムのサブシステムは欝2に・は職能分化の見地から把捉される。こ
(72)
れに関してほ−・方では要素的見方からサプレスデムを明らかにすることがで きる。これはとくに周表3以降に・おいて明らかなようにリハ」−トにおいては,部 門化ないし組織の垂直的分化として理解されている。彼ほ,便宜上と思われる が,資材,機械器具,装置および労働の4サプレスデムをあげている。これを図
(70)EllisandLudwig,OP Ci−tい,pp 9−11andFig 1l2,pl10∩
仔1)いわゆる管理過程学派はこのような管理過程を管理の基本的な問題として解明しよう としている。たとえば次を参照,W・・H小 Newman and ClElSummer.,Jr..,The
Processqf■Management:Conce♪t,Behavior,and Praciice(Ehglewood Cliffs,
N.J。:Prentice・・Ha11,Inc。,1961);Willam M‖ Fox,The Management Process:
AnIntegrated FunctionalAppY・OaCh(Homewood,Ill∴Richard Dl・Irwin,Inc.,
1963);山城 章『経営学原理』白桃書房,昭和41年;桜井信行『現代経営学−一過程 論的分析−.』東洋経済新報杜,昭和42年。
㈹ 要素的見方についてほ次を参照,山城 茸『実践経営学』別−26貢。