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オランダにおける司法精神医療における施設内処遇の枠組み

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Academic year: 2021

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‑ 99 ‑   

令和元年度厚生労働科学研究費補助金(障害者政策総合研究事業(精神障害分野))  医療観察法の制度対象者の治療・支援体制の整備のための研究 

分担研究報告書   

司法精神医療の国際比較に関する研究   

研究分担者  五十嵐  禎人    千葉大学社会精神保健教育研究センター   

研究要旨: 

司法精神医療に関して、法制度からアウトカムまでを含む共通調査項目を策定し、イギリス、

オランダ、韓国の司法精神医療について、文献調査ならびに必要に応じて研究者・実務担当者へ の聞き取り調査を行った。また、イギリスにおける Dangerous and Severe Personality Disorder

(以下、DSPD)プログラムの経緯について調査した。 

イギリスにおける DSPD プログラムは、刑事司法と精神科医療の重複領域に存在する対応困難事 例に対して施設の高規格化によって対応しようとした試みといえ、対象者のプロフィールは異な るが、その経緯は、わが国の司法精神医療における長期在院者などの複雑事例の対応を考えるう えでも貴重な示唆を与えるものと考えられた。 

 

研 究 協 力 者 ( 順 不 同 、 敬 称 略 )    

藤 井 千 代   国 立 精 神 ・ 神 経 医 療 研 究 セ ン タ ー 精 神 保 健 研 究 所   菊 池 安 希 子   同 上  

小 池 純 子   同 上  

平 野 美 紀   香 川 大 学 法 学 部   趙   晟 容   韓 日 法 律 問 題 研 究 所   椎 名 明 大   千 葉 大 学 社 会 精 神 保 健 教 育

研 究 セ ン タ ー    

A . 研 究 目 的  

「 心 神 喪 失 等 の 状 態 で 重 大 な 他 害 行 為 を 行 っ た 者 の 医 療 及 び 観 察 等 に 関 す る 法 律

( 以 下 、医 療 観 察 法 )」が 施 行 さ れ 、令 和 元 年 7 月 15 日 で 14 年 が 経 過 し た 。 医 療 観 察 法 に よ る 医 療 に つ い て は 、 円 滑 に 医 療 観 察

法 に よ る 処 遇 を 終 了 す る 事 例 が 多 い こ と 、 地 域 処 遇 中 の 対 象 者 に よ る 再 他 害 行 為 が 少 な い こ と な ど の 事 実 か ら 、 対 象 者 の 円 滑 な 社 会 復 帰 の 促 進 と い う 医 療 観 察 法 の 目 的 が 、 少 な く と も 地 域 処 遇 に 移 行 し た 対 象 者 に つ い て は 達 成 さ れ て い る と い え る 。 そ の 一 方 で 、 入 院 期 間 の 長 期 化 傾 向 や 医 療 観 察 法 に よ る 医 療 で 得 ら れ た 知 見 の 一 般 精 神 科 医 療 へ の 還 元 な ど の 課 題 が 指 摘 さ れ て い る 。  

こ う し た 医 療 観 察 法 に よ る 医 療 の 課 題 や 今 後 の 在 り 方 を 検 討 す る う え で は 、 す で に 司 法 精 神 医 療 の 実 践 に つ い て 、 長 い 実 績 を 有 す る 諸 外 国 に お け る 司 法 精 神 医 療 の 実 態 を 把 握 し 、 わ が 国 の 司 法 精 神 医 療 の 現 状 と の 比 較 を 行 う こ と が 有 効 で あ る 。  

本 研 究 は 、 海 外 の 司 法 精 神 医 療 の 実 態 に つ い て 、 従 来 か ら 行 わ れ て き た 制 度

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( structure, process)の 比 較 だ け で な く 、 入 院 ・ 通 院 期 間 、 転 帰 ・ 予 後 、 社 会 復 帰 の 状 況 な ど の outcome や 病 棟 機 能 分 化 に 関 す る 情 報 を 収 集 し 、 他 の 分 担 研 究 班 に よ っ て 収 集 さ れ る 医 療 観 察 法 に よ る 医 療 の 実 態 に 関 す る 資 料 と あ わ せ 、 制 度 改 善 の た め の 基 礎 資 料 と な る 司 法 精 神 医 療 に 関 す る 比 較 表 を 作 成 す る こ と を 目 的 と す る 。  

 

B . 研 究 方 法  

研 究 1 ) 司 法 精 神 医 療 の 実 態 に 関 す る 調 査  

司 法 精 神 医 療 に 関 す る 比 較 表 作 成 の た め に 、 諸 外 国 に お け る 司 法 精 神 医 療 の 実 態 に 関 し て 調 査 を 行 っ た 。 一 般 精 神 科 医 療 に 関 し て 、 当 分 担 班 と 同 様 に 国 際 比 較 に 関 す る 課 題 を 担 っ て い る 厚 生 労 働 科 学 研 究 班 ( 藤 井 班 ) と も 協 議 を 行 っ た う え で 、 共 通 調 査 項 目 ( 別 紙 1 ) を 作 成 し た 。  

令 和 元 年 度 は 、 イ ギ リ ス 、 オ ラ ン ダ 、 大 韓 民 国 ( 韓 国 ) に つ い て 、 そ れ ぞ れ の 国 の 精 神 医 療 ・ 司 法 精 神 医 療 に 造 詣 の 深 い 研 究 者 に 依 頼 し て 、 共 通 調 査 項 目 に 基 づ い て 、 文 献 調 査 な ら び に 必 要 に 応 じ て 研 究 者 ・ 実 務 担 当 者 へ の 聞 き 取 り 調 査 を 行 な い 、 情 報 を 収 集 し た 。  

研 究 2 ) 司 法 精 神 医 療 に お け る 病 棟 機 能 分 化 に 関 す る 調 査  

わ が 国 の 司 法 精 神 医 療 に お け る 複 雑 事 例 へ の 対 応 策 の 1 つ と し て 、 医 療 観 察 法 病 棟 の 機 能 分 化 が 提 案 さ れ て い る 。 こ れ に 関 連 し て 、イ ギ リ ス で 実 施 さ れ た Dangerous and  Severe Personality Disorder( DSPD) プ ロ グ ラ ム に つ い て 文 献 検 索 な ら び に イ ギ リ ス 政 府 の 公 刊 物 等 に よ り 調 査 を 行 っ た 。    

C . 研 究 結 果  

研 究 1 ) 司 法 精 神 医 療 の 実 態 に 関 す る 調 査   1 ) イ ギ リ ス  

イ ギ リ ス ( よ り 正 確 に は イ ン グ ラ ン ド ) で は 、 責 任 能 力 の 判 断 基 準 は 弁 識 能 力 の 有 無 の み を 問 う マ ク ノ ー ト ン ・ ル ー ル が 使 用 さ れ て お り 、 限 定 責 任 能 力 に つ い て は 殺 人 罪 な ど に 適 用 が 限 ら れ て い る 。 司 法 精 神 医 療 へ の ダ イ バ ー ジ ョ ン に つ い て は 、 精 神 保 健 法 に 規 定 さ れ て お り 、 刑 事 司 法 手 続 き の 段 階 に 応 じ て 、 種 々 の 規 定 が あ る 。 医 療 観 察 法 に 類 似 し て い る の は 、 精 神 保 健 法

( Mental Health Act) 37 条 に 規 定 さ れ る 病 院 命 令 ( hospital order) で あ り 、 公 共 へ の 危 険 の 高 い 事 例 に は 、41 条 に 規 定 さ れ る 拘 束 命 令( restriction order)が 付 さ れ る 。 い ず れ も 、 精 神 科 医 の 治 療 の 必 要 性 に 関 す る 意 見 を も と に 裁 判 所 が 決 定 す る 。  

司 法 精 神 医 療 の 病 棟 に つ い て は 、Maximum  Security、 Medium Security、 Low Security の 3 段 階 に 分 か れ て い る 。 ま た 、 地 域 の Clinic で 通 院 医 療 を 担 っ て い る 。  

入 院 後 の 処 遇 に つ い て は 、 基 本 的 に は 精 神 保 健 法 に よ る 他 の 非 自 発 的 入 院 と 共 通 し て い る 。 治 療 等 に 関 す る ガ イ ド ラ イ ン と し て は 、Code of Practice が 公 刊 さ れ て お り 、 こ れ に 基 づ い て 処 遇 が 行 わ れ る 。 治 療 に 関 す る 監 査 の 仕 組 み と し て 、 入 院 の 要 否 に 関 し て は 、 司 法 権 に 属 す る 精 神 保 健 審 判 所

( Mental Health Review Tribunal) が 審 査 を 行 な う 。 病 院 で の 治 療 や 処 遇 に 関 す る モ ニ タ リ ン グ 機 関 と し て 、 Care  Quality  Commission( 以 下 、 CQC) が あ る 。 CQC は 、 病 院 へ の 監 査 を 行 な い 、 水 準 に 達 し な い 施 設 に は 業 務 停 止 命 令 を 出 す 権 限 を 持 つ 。 2017 年 に は 、1,165 回 の 監 査 を 行 い 、6,049 回 の 改 善 命 令 を 発 し た 。 内 容 の 最 多 は 告 知 に 関 す る も の で あ っ た 。 非 同 意 治 療 の う ち 3 ヶ 月 以 上 の 抗 精 神 病 薬 の 投 与 や 電 気 け い れ ん 療 法 に つ い て は CQC の 管 轄 す る Second  Opinion Appointed Doctors( SOADs) が 個 別 の 患 者 に 面 接 し た う え で 、 治 療 方 針 に つ

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‑ 101 ‑  い て 評 価 す る 。2017 年 に は 2,319 件 の 審 査

請 求 が 受 理 さ れ 、14,503 回 の 面 接 が 行 わ れ 、 27% で 治 療 方 針 が 変 更 さ れ て い た 。  

2 ) オ ラ ン ダ  

オ ラ ン ダ 刑 法 39 条 は「 精 神 の 病 的 障 害 あ る い は 発 達 障 害 に よ り 行 為 を 行 っ た 者 は 罰 し な い 」 と 規 定 し て お り 、 責 任 無 能 力 者 と 認 定 さ れ た 者 は 、 処 罰 さ れ な い 。 限 定 責 任 能 力 概 念 に つ い て は 、 明 示 の 規 定 は な い も の の 実 務 上 は 存 在 し て い る が 、 刑 の 減 軽 の 規 定 は な い 。 限 定 責 任 能 力 に つ い て は 、 さ ら に 3 段 階 に 分 け ら れ て お り 、 実 務 上 、 責 任 能 力 の 判 定 は 、 5 段 階 と な る 。  

精 神 鑑 定 専 門 の 鑑 定 留 置 施 設 と し て ピ ー タ ー ・ バ ー ン ・ セ ン ト ラ ム ( Pieter  Baan  Centrum)が あ り 、精 神 科 医 を 始 め と し た 多 職 種 チ ー ム に よ り 、 約 7 週 間 で 、 精 神 鑑 定 書 が 作 成 さ れ て い る 。  

責 任 無 能 力 者 と 認 定 さ れ た 者 で 、 自 己 、 他 人 、 あ る い は 社 会 ま た は 財 産 の 一 般 的 安 全 に 対 し て 危 険 を 呈 す る 時 は 、 裁 判 官 は 1 年 間 の 精 神 科 病 院 収 容 処 分 が 付 す こ と が で き る 。 こ の 場 合 、 対 象 者 は 刑 事 手 続 き か ら 離 れ 、 精 神 科 病 院 収 容 法 ( Wet Bijzondere  Opnemingen  in  Psychiatrische  Ziekenhuizen) の 規 定 に よ り 処 遇 さ れ る 。 精 神 科 病 院 収 容 法 19 条 に よ れ ば 、裁 判 所 は 入 院 命 令 を さ ら に 1 年 間 延 長 す る こ と が で き 、 継 続 的 に 5 年 間 入 院 さ せ て い る と き に は 、 そ の 後 は 2 年 毎 に 延 長 す る こ と が で き る 。  

精 神 科 病 院 収 容 法 と は 別 に 、 TBS  (terbeschikkingstelling)処 分 と 呼 ば れ る 刑 事 処 分 が あ る 。TBS 処 分 と は 、4 年 以 上 の 自 由 刑 を 最 高 刑 と し て 有 す る 犯 罪 ( た と え ば 、 強 盗 ・ 強 制 性 交 ・ 殺 人 等 ) や 特 定 の 重 大 犯 罪( 飲 酒 運 転 に よ る 重 大 な 傷 害 の 惹 起 、 脅 迫 等 ) を 行 っ た 精 神 障 害 者 に 対 し て 、 特 に 公 共 の 安 全 を 確 保 す る 必 要 が あ る 場 合 に 、

当 該 本 人 の 人 格 、 当 該 犯 罪 の 重 大 性 ま た は 過 去 の 重 大 犯 罪 に 関 し て の 有 罪 判 決 の 頻 度 等 を 考 慮 に 入 れ て 、 刑 事 裁 判 所 が 決 定 ・ 命 令 す る 処 分 で あ る 。 限 定 責 任 能 力 者 が 主 た る 対 象 で あ る が 、 保 安 上 の 必 要 性 と い う 要 件 が 重 要 視 さ れ る た め 、 事 例 と し て は 少 な い も の の 責 任 無 能 力 者 に 科 さ れ る こ と も あ る 。 TBS 処 分 の 特 徴 と し て は 、( 1) 処 分 の 決 定 や 終 了 は 刑 事 裁 判 所 に よ る 判 断 で あ る が 、 治 療 内 容 な ど は 医 療 者 に 委 ね ら れ て い る 、( 2) 刑 罰 で は な い の で 通 常 の 刑 と は 関 係 な く 、 社 会 へ の 安 全 を 重 視 し て 処 分 を 付 す こ と が で き る 、( 3) 処 分 を 受 け た 者 の 8 割 近 く は パ ー ソ ナ リ テ ィ 障 害 者 で あ る こ と 、

( 4)処 遇 の 目 的 は 社 会 復 帰 と さ れ て い る が 、 同 時 に 、 社 会 の 安 全 を 守 る と い う こ と も 重 要 視 さ れ て い る こ と 、( 5) 治 療 や 社 会 復 帰 な ど に 関 し て は 、 膨 大 な 予 算 と 豊 富 な ス タ ッ フ が 充 実 し た ケ ア を 行 っ て い る こ と 、 な ど が あ げ ら れ る 。  

TBS 処 分 は 刑 事 司 法 の 枠 組 み 内 で 運 用 さ れ 、TBS 施 設 は 行 刑 施 設 の 一 部 で あ る 。TBS 施 設 は 2019 年 9 月 2 日 現 在 、オ ラ ン ダ 全 国 11 施 設 あ り 、セ キ ュ リ テ ィ ー に よ る 分 類 が あ る 。  

TBS 施 設 で は 、「 他 人 の 安 全 ま た は 社 会 も し く は 財 産 の 一 般 的 安 全 に 対 す る 当 該 本 人 の 危 険 性 を 減 少 さ せ る こ と に よ っ て 、 本 人 の 社 会 復 帰 が 平 穏 に 行 わ れ る こ と を 目 的 と し た 措 置 」 と し て 治 療 が 行 わ れ る が 、 こ れ ら の 治 療 に は 本 人 の 同 意 が 必 要 と さ れ る 。 そ の た め 、 対 象 者 の 治 療 へ の 動 機 付 け は 、 重 要 な 課 題 と さ れ る 。  

治 療 に 関 す る 助 言 や 他 の TBS 施 設 へ の 移 送 の 可 能 性 の 検 討 、 収 容 後 6 年 が 経 過 し た 場 合 に は 、 鑑 定 の 専 門 施 設 で あ る ピ ー タ ー ・ バ ー ン ・ セ ン ト ラ ム で 鑑 定 が 行 わ れ る こ と が あ る 。 改 善 の 可 能 性 が な い と 判 断 さ れ た 場 合 で も 保 安 上 必 要 な 場 合 に は TBS 施

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‑ 102 ‑  設 へ の 収 容 が 継 続 さ れ る 。  

な お 、 詳 細 に つ い て は 、 平 野 に よ る 報 告

( 別 紙 2) を 参 照 さ れ た い 。   3 ) 韓 国  

韓 国 刑 法 で は 、「 心 神 障 害 に よ っ て 事 物 を 弁 別 す る 能 力 が な い か 、 あ る い は 意 思 を 決 定 す る 能 力 が な い 者 の 行 為 は 、 罰 し な い 。」

( 10 条 1 項 )、「 心 神 障 害 に よ っ て 前 項 の 能 力 が 耗 弱 す る 者 の 行 為 は 、 そ の 刑 を 減 軽 す る こ と が で き る 。」( 10 条 2 項 )と 規 定 し て お り 、 責 任 能 力 者 は 処 罰 さ れ ず 、 限 定 責 任 能 力 者 の 刑 は 減 軽 さ れ る 。  

司 法 精 神 医 療 に つ い て は 、 治 療 監 護 法 に 規 定 さ れ る 治 療 監 護 処 分 と し て 行 わ れ て い る 。 治 療 監 護 処 分 の 対 象 は 、 禁 錮 以 上 の 刑 に 当 た る 犯 罪 を 行 な い 、 治 療 監 護 法 に よ る 治 療 の 必 要 性 が あ り 、再 犯 の 危 険 性 が あ る 、

( 1)精 神 障 害 者( 心 神 喪 失 者 ま た は 心 神 耗 弱 者 )、( 2) 薬 物 ・ ア ル コ ー ル 中 毒 者 、( 3)

精 神 ・ 性 的 障 害 者 と な っ て お り 、( 2)( 3)

に つ い て は 責 任 能 力 の 減 退 は 必 要 と さ れ て い な い 。 検 察 官 の 請 求 に よ り 裁 判 所 が 処 分 の 決 定 を 行 な う が 、 刑 と 併 科 さ れ る こ と が あ る 。  

入 院 は 、 治 療 監 護 所 ま た は 国 立 指 定 法 務 病 院 で あ り 、 治 療 監 護 所 で は 、 検 査 病 棟 ・ 女 性 病 棟 ・ 一 般 病 棟 ・ 薬 物 治 療 リ ハ ビ リ 病 棟 ・ 人 性 病 棟 と い う よ う に 対 象 者 の 治 療 と 処 遇 に 合 わ せ た 病 棟 機 能 分 化 が 行 わ れ て い る 。  

地 域 に お け る 司 法 精 神 医 療 は 、 治 療 命 令 制 度 と 保 護 観 察 制 度 に よ っ て 行 わ れ て い る 。 治 療 命 令 制 度 は 、2015 年 の 法 改 正 で 新 設 さ れ た も の で 、 対 象 は 、 心 神 耗 弱 者 と ア ル コ ー ル ・ 薬 物 中 毒 者 に 限 定 さ れ て お り 、 裁 判 所 が 、 刑 の 宣 告 猶 予 ま た は 執 行 猶 予 を 下 す と き 、 職 権 で 、 治 療 期 間 を 定 め て 、 通 院 治 療 を 命 じ る も の で あ る 。  

な お 、詳 細 に つ い て は 、趙 に よ る 報 告( 別

紙 3) を 参 照 さ れ た い 。    

研 究 2 ) 司 法 精 神 医 療 に お け る 病 棟 機 能 分 化 に 関 す る 調 査  

DSPD ユ ニ ッ ト と は 、重 度 の パ ー ソ ナ リ テ ィ 障 害 を も ち 、 他 害 リ ス ク が 高 い 人 々 を 犯 罪 行 為 の 有 無 に 関 わ ら ず 、 強 制 的 に 期 限 の 上 限 を 定 め ず に 入 院 さ せ る た め に 構 想 さ れ た 高 規 格 ユ ニ ッ ト で あ る 。DSPD プ ロ グ ラ ム 実 施 の 背 景 、開 始 ま で の 経 緯 、DSPD プ ロ グ ラ ム の 概 要 、評 価 研 究 、DSPD プ ロ グ ラ ム の 終 了 経 緯 、 触 法 行 為 の あ る 重 度 パ ー ソ ナ リ テ ィ 障 害 患 者 へ の 現 在 の 対 応 、 に つ い て 調 査 し た 。 な お 、 詳 細 に つ い て は 、 菊 池 に よ る 報 告 ( 別 紙 4) を 参 照 さ れ た い 。  

 

D . 考 察  

司 法 精 神 医 療 の あ り 方 は 、 国 に よ っ て 異 な り 、 法 制 度 や 医 療 の 供 給 体 制 に よ っ て 、 ど の よ う な 精 神 障 害 者 を 司 法 精 神 医 療 の 対 象 と す る の か に つ い て も 大 き な 差 違 が あ る 。 国 際 比 較 を 行 う 場 合 に 、 こ う し た シ ス テ ム の 相 違 を 考 慮 せ ず に 単 純 な 数 字 の 比 較 を 行 う こ と に は あ ま り 意 義 は な い と い え よ う 。  

今 回 調 査 の 対 象 と し た 国 の な か で は 、 責 任 無 能 力 者 を 対 象 と す る オ ラ ン ダ の 精 神 科 病 院 収 容 法 に よ る 入 院 処 分 の 対 象 者 や 韓 国 の 治 療 監 護 法 に お け る 精 神 障 害 者 は 、 わ が 国 の 医 療 観 察 法 と 比 較 的 類 似 し た 人 を 対 象 と し て い る も の と 思 わ れ る 。こ れ に 対 し て 、 イ ギ リ ス の DSPD プ ロ グ ラ ム や オ ラ ン ダ の TBS 処 分 は パ ー ソ ナ リ テ ィ 障 害 の 診 断 を 受 け た 人 を 主 な 対 象 と し て お り 、 パ ー ソ ナ リ テ ィ 障 害 が 主 診 断 と さ れ る 人 が ほ と ん ど い な い わ が 国 の 医 療 観 察 法 と は 対 象 者 の プ ロ フ ィ ー ル は 大 き く 異 な っ て い る 。 し か し 、 わ が 国 の 医 療 観 察 法 に よ る 医 療 に お い て も 、 近 年 、 医 療 観 察 法 入 院 処 遇 に お け る 超 長 期 入 院 者 及 び 長 期 / 頻 回 行 動 制 限 実 施 者 な ど

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‑ 103 ‑  の い わ ゆ る 複 雑 事 例 に 対 す る 対 応 の 重 要 性

が 指 摘 さ れ て お り 、 特 に 対 象 者 と 担 当 多 職 種 チ ー ム( Multi‑Disciplinary Team:以 下 、 MDT)と の 治 療 同 盟 が 破 綻 し て い る 事 例 に つ い て は 、 重 複 障 害 コ ン サ ル テ ー シ ョ ン の 実 施 、 他 の 指 定 入 院 医 療 機 関 へ の 転 院 や 新 た な 高 規 格 ユ ニ ッ ト の 設 置 が 提 案 さ れ て い る

( 村 杉 ,2019)。こ う し た 複 雑 事 例 に 対 す る 対 応 を 考 え る う え で は 、 対 象 者 の プ ロ フ ィ ー ル は 異 な る と は い え 、 オ ラ ン ダ の TBS 処 分 や DSPD プ ロ グ ラ ム の 経 緯 は 、貴 重 な 示 唆 を 与 え る も の と い え よ う 。 以 下 、 こ う し た 提 案 に 関 連 し た 事 項 に 関 し て 、 研 究 結 果 を も と に 考 察 す る 。  

オ ラ ン ダ の TBS 処 分 で は 、 治 療 に 関 す る 助 言 や 他 の TBS 施 設 へ の 移 送 の 可 能 性 の 検 討 の た め に 、 ま た 、 収 容 後 6 年 が 経 過 し た 長 期 事 例 の 処 遇 に 関 し て 、 専 門 施 設 で あ る ピ ー タ ー ・ バ ー ン ・ セ ン ト ラ ム で 鑑 定 が 行 わ れ て い る 。 治 療 者 か ら 独 立 し た 第 三 者 的 な 立 場 の 専 門 機 関 に お い て 鑑 定 を 行 な い 、 治 療 や 処 遇 方 法 の 見 直 し を 行 う と い う 制 度 は 、 複 雑 事 例 に 対 す る 転 院 を 制 度 的 に 位 置 づ け る う え で は 、 参 考 に な る 方 法 と い え よ う 。 た と え ば 、 複 雑 事 例 の 転 院 を 検 討 す る さ い に は 、 第 三 者 的 立 場 の 精 神 保 健 判 定 医 に よ る 評 価 を 行 い 、 事 例 の 複 雑 性 や 転 院 に よ る 治 療 可 能 性 に つ い て の 専 門 的 な 意 見 を 徴 す る こ と を 制 度 化 す る こ と な ど も 考 え ら れ よ う 。  

DSPD プ ロ グ ラ ム に つ い て は 、精 神 医 学 的 根 拠 に 欠 け る 診 断 基 準 が 使 用 さ れ た こ と 、 新 た な 治 療 法 の 開 発 に つ な が る 無 作 為 化 比 較 試 験 が 行 わ れ な か っ た こ と 、 高 規 格 化 病 棟 の み で 治 療 を 試 み た が 治 療 の 受 け 入 れ も 提 供 も 不 十 分 で 、 地 域 生 活 へ の ケ ア ・ パ ス ウ ェ イ が 整 備 さ れ ず 、 全 体 と し て の 費 用 対 効 果 が 悪 か っ た こ と が 批 判 さ れ て い る 。 一 方 で パ ー ソ ナ リ テ ィ 障 害 の 治 療 法 へ の 関 心

を 高 め た こ と や 、 多 く の 職 員 に ト レ ー ニ ン グ が 提 供 さ れ た こ と 、 第 三 者 評 価 に よ る 客 観 的 評 価 を 取 り 入 れ た こ と は 肯 定 的 側 面 と さ れ て い る 。 し か し こ れ ら 肯 定 的 側 面 は DSPD プ ロ グ ラ ム の 試 行 な し で も 実 現 可 能 な も の で あ っ た 。  

対 象 者 の プ ロ フ ィ ー ル が 異 な る と は い え 、 社 会 実 験 と も い え る DSPD プ ロ グ ラ ム の 経 緯 か ら は 、 司 法 と 精 神 科 医 療 の 重 複 領 域 に お け る 対 応 困 難 者 専 用 の 高 規 格 化 病 棟 に 意 味 が あ る と す れ ば 、( 1) 精 神 医 学 的 に 妥 当 な 対 応 困 難 者 の 定 義 が 存 在 す る こ と 、( 2)

対 応 困 難 者 に 対 す る 治 療 法 が 存 在 し て い る こ と 、( 3)退 院 基 準 が 明 確 で あ る こ と 、( 4)

退 院 後 の 地 域 移 行 を サ ポ ー ト す る シ ス テ ム が 存 在 す る こ と 、( 5) 第 三 者 評 価 が 入 る こ と 、 が 重 要 で あ る こ と が 示 唆 さ れ る 。 医 療 観 察 法 の 場 合 、 退 院 基 準 は 明 確 で あ り 、 い わ ゆ る 複 雑 事 例 の 「 定 義 」「 治 療 法 」「 地 域 移 行 」 が 課 題 と な る 。  

医 療 観 察 法 の 複 雑 事 例 は 、 先 行 研 究 に よ れ ば 、便 宜 的 に「 治 療 が 極 め て 困 難 」「 退 院 が 困 難 」「 入 院 期 間 が 6 年 超 」「 頻 回 隔 離 」

「 長 期 隔 離 」「 拘 束 事 例 」「 再 入 院 事 例 」「 再 処 遇 事 例 」と さ れ て い る( 村 杉 ,2019)。こ の こ と が 示 し て い る の は 複 雑 事 例 に は 多 様 性 が あ り 、 精 神 医 学 的 に 妥 当 で 一 律 的 に 適 用 で き る 定 義 を 設 け る こ と が 困 難 で あ る こ と を 示 し て い る 。 こ の 多 様 性 は ほ と ん ど が サ イ コ パ ス 基 準 を 満 た し て い た DSPD 対 象 者 よ り も は る か に 大 き い と 思 わ れ る 。 MDT チ ー ム の 組 み 換 え や 転 地 療 養 的 な 転 院 に も 反 応 し な い 複 雑 事 例 を 各 地 か ら 集 め て 高 規 格 化 病 棟 に 入 院 さ せ た と し て も 、 治 療 抵 抗 性 は 変 わ ら ず 、 帰 住 予 定 地 か ら 離 れ る こ と に よ り 、 退 院 調 整 が 一 層 困 難 に な る 可 能 性 の 方 が 高 い 。  

複 雑 事 例 が 複 雑 と さ れ る 理 由 が 多 岐 に わ た る 以 上 、 全 員 を 取 り 込 め る よ う な 治 療 法

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‑ 104 ‑  の 開 発 は 困 難 で あ り 、 ケ ー ス フ ォ ー ミ ュ レ

ー シ ョ ン を 繰 り 返 し な が ら 、 個 別 の 工 夫 を 重 ね る 以 外 に 手 立 て は な い 。 高 規 格 化 病 棟 で そ れ を 行 う と す れ ば 、 病 棟 ス タ ッ フ が 担 当 す る ケ ー ス の 全 例 が 複 雑 事 例 で 占 め ら れ る こ と に な り 、 ス タ ッ フ の 負 担 が 相 当 に 高 く な る と 思 わ れ る 。 し か も 、 時 間 を か け 、 治 療 的 試 み を 続 け て も 改 善 が み ら れ る 保 証 は な い 。  

ど の よ う な 努 力 を し て も 複 雑 事 例 と な る 事 例 が 少 な い な が ら 一 定 数 い る の は 、 精 神 科 医 療 の 現 実 で あ る 。 む し ろ 、 総 数 で は な く 年 間 発 生 率 が 一 定 以 上 に な ら な い よ う に 全 国 的 な モ ニ タ リ ン グ を し た り 、 複 雑 事 例 と そ れ 以 外 の 対 象 者 で 在 院 期 間 の 統 計 の 取 り 方 を 分 け て 推 移 を モ ニ タ リ ン グ し た り す る な ど の 方 策 が 制 度 の 健 全 運 用 の た め に は 重 要 で あ ろ う 。 ま た 、 そ う し た モ ニ タ リ ン グ に お い て は 、 大 学 等 、 第 三 者 に よ る 評 価 も 併 せ て 入 れ る こ と が 有 用 で あ ろ う 。 治 療 者 の み が と れ る 情 報 が あ る 一 方 で 、 治 療 関 係 の 中 で は バ イ ア ス を 排 し て と る こ と が で き な い 情 報 ( 例 : 被 治 療 経 験 に 関 わ る Patient reported indicators な ど ) も あ り 、 制 度 運 用 の 評 価 の た め に は 必 要 と 考 え ら れ る か ら で あ る 。  

DSPD プ ロ グ ラ ム の 経 緯 が 示 唆 す る の は 、 い わ ゆ る 複 雑 事 例 へ の 対 応 と し て 、 専 門 性 の 高 い 処 遇 施 設( い わ ゆ る「 箱 も の 」)を 整 備 す る こ と の 限 界 で あ る 。 対 象 者 の 状 態 が い か に 改 善 し た と し て も 、 対 象 者 を 受 け 入 れ て く れ る 指 定 通 院 医 療 機 関 や 居 住 施 設 が な け れ ば 、 入 院 期 間 の 長 期 化 な ど に よ り 、 そ の 対 象 者 は 複 雑 事 例 で あ り 続 け る 。 対 象 者 が 複 雑 事 例 と な っ た 理 由 に 応 じ て 、 そ れ に 対 応 で き る 医 療 現 場 や 社 会 資 源 を 地 域 に 増 や し て い く 努 力 を 続 け る 必 要 が あ る と い え よ う 。  

 

E . 結 論  

司 法 精 神 医 療 に 関 し て 、 法 制 度 か ら ア ウ ト カ ム ま で を 含 む 共 通 調 査 項 目 を 策 定 し 、 イ ギ リ ス 、 オ ラ ン ダ 、 韓 国 の 司 法 精 神 医 療 に つ い て 、 文 献 調 査 な ら び に 必 要 に 応 じ て 研 究 者 ・ 実 務 担 当 者 へ の 聞 き 取 り 調 査 を 行 っ た 。ま た 、イ ギ リ ス に お け る DSPD プ ロ グ ラ ム の 経 緯 に つ い て 調 査 し た 。  

イ ギ リ ス に お け る DSPD プ ロ グ ラ ム は 、刑 事 司 法 と 精 神 科 医 療 の 重 複 領 域 に 存 在 す る 対 応 困 難 事 例 に 対 し て 施 設 の 高 規 格 化 に よ っ て 対 応 し よ う と し た 試 み と い え 、 対 象 者 の プ ロ フ ィ ー ル は 異 な る と は い え 、 そ の 経 緯 は 、 わ が 国 の 司 法 精 神 医 療 に お け る 長 期 在 院 者 な ど の 複 雑 事 例 の 対 応 を 考 え る う え で も 貴 重 な 示 唆 を 与 え る も の と 考 え ら れ た 。   

F . 健 康 危 険 情 報     な し  

 

G . 研 究 発 表   1. 論 文 発 表    

1) 五 十 嵐 禎 人 : 反 社 会 性 パ ー ソ ナ リ テ ィ

障 害 . 精 神 科 ; 2019 ; 35 ( Suppl.1 ):

467‑471 

2) 五 十 嵐 禎 人:司 法 精 神 医 療 に お け る「 病

識 」.精 神 医 学 ,2019;61(12):1459‑1467   

2. 学 会 発 表  

1) 東 本 愛 香 , 新 津 富 央 , 西 中 宏 吏 , 椎 名

明 大 ,  清 水 栄 司 , 伊 豫 雅 臣 ,  五 十 嵐 禎 人 :  司 法 精 神 保 健 に お け る リ ス ク ・ ア セ ス メ ン ト の 普 及 へ の 取 り 組 み . 第 15 回 日 本 司 法 精 神 医 学 会 大 会 ,  花 巻 ,  2019.6.8 

2) 西 中 宏 吏 , 東 本 愛 香 , 五 十 嵐 禎 人 :  更

生 保 護 施 設 に お け る 出 所 受 刑 者 の 問 題 行 動 に 関 わ る リ ス ク 要 因 と 保 護 要 因 − リ ス ク ア セ ス メ ン ト・ツ ー ル の 活 用 − . 

(7)

‑ 105 ‑  第 15 回 日 本 司 法 精 神 医 学 会 大 会 , 花 巻 ,  2019.6.8 

3) 菊 池 安 希 子 ,橋 本 理 恵 子 ,岡 野 茉 利 子 ,

相 田 早 織 , 藤 井 千 代 : 精 神 保 健 観 察 か ら 一 般 精 神 科 医 療 へ の 移 行 パ タ ー ン の 研 究 .第 15 回 日 本 司 法 精 神 医 学 会 大 会 , 岩 手 , 2019.6.8. 

4) 五 十 嵐 禎 人 :  裁 判 員 裁 判 を 契 機 と し た

刑 事 責 任 能 力 鑑 定 の 変 化 . 第 115 回 日 本 精 神 神 経 学 会 学 術 総 会 ,  新 潟 ,  2019.6.21 

5) Kikuchi  A:  Changes  Observed  in 

Mentally Disordered Offenders During  Forensic Probation in Japan.The 36th  International  Congress  on  Law  and  Mental  Health,  University  of  International  Studies  of  Rome  (UNINT), Rome, 2019.7.26. 

 

H . 知 的 財 産 権 の 出 願 ・ 登 録 状 況   1. 特 許 取 得  

な し    

2. 実 用 新 案 登 録   な し  

 

3. そ の 他   な し    

参 考 文 献  

村 杉 謙 次 : 多 様 で 複 雑 な 事 例 の 個 別 調 査 及 び 治 療・処 遇 に 関 す る 研 究 .平 成 30 年 度 厚 生 労 働 科 学 研 究 費 補 助 金 ( 障 害 者 政 策 総 合 研 究 事 業( 精 神 障 害 分 野 ))医 療 観 察 法 の 制 度 対 象 者 の 治 療 ・ 支 援 体 制 の 整 備 の た め の 研 究 ( 研 究 代 表 者 : 平 林 直 次 ) 分 担 研 究 報 告 書 .  

                                                                         

(8)

‑ 106 ‑  別紙1

<共通調査項目>

ア.法制度に関して

責任能力に関する法規定はどのようなものか。

規定している法律や条文はどのようなものか。

限定責任能力に関する規定はあるか。

責任能力の具体的な判定基準はどのようなものか。

生物学的手法、心理学的手法、混合的手法のいずれか

弁識能力(認知基準)、制御能力(意思基準)は要件か

イ.入院による司法精神医療

入院に関する法手続き

根拠法

入院の決定権者

入院手続において参照される専門家意見 

入院の判断基準

司法精神医療の対象となるのは、責任能力の減退を認められた人だけか、

それ以外の人も対象となることがあるのか。

病棟機能分化の有無と状況

機能分化はあるか、あるとすれば、その基準はなにか。

セキュリティレベルによるものか。

疾患による専門分化(知的障害用、パーソナリティ障害用など)か。

疾患による専門分化なし。

上記以外の基準によるものか。

治療の監査について

治療者から独立した機関による監査はあるのか。

ありの場合は、どのような機関(裁判所、司法省等)が監査を行うのか。

(9)

‑ 107 ‑ 

退院請求は可能か。

可能な場合は、審査機関はどのような組織でどのような方法・基準で審査を 行うのか。

入院期間や入院の更新に制限(上限)はあるのか。

ありの場合には、具体的にはどのような内容なのか。

退院に関する法手続き

根拠法

退院の決定権者

退院手続で参照される専門家意見 

退院の判断基準

ウ.地域における司法精神医療

司法精神医療の入院施設から退院した患者の地域での治療を行う専門的施設はあるか。

ありの場合には、その根拠はどのようなものか(法律に規定されているのか)

司法精神医療と一般の精神科医療との関係はどのようなものか

通 院 中の 患者 に対 して強 制 的な 医療 措置 をとる こ とを 可能 とす る法制 度 (例 :

Community Treatment Order)はあるか

ありの場合は、

法的根拠、判断基準、決定権者

期間、更新の有無や上限

義務づけられる治療内容はどのようなものか。(例:通院だけか、服薬や 注射等も対象か)

運用に関するガイドライン等はあるか。

運用実態に関する統計はあるか。

地域における支援の担い手はどのような人か 地域における支援の調整役はどのような人か

エ.司法精神医療における治療について

司法精神医療における治療に関するガイドラインはあるか、あるとすれば、その具体 的な内容はどのようなものか。(入手可能であれば、ガイドライン現物も)

ガイドラインはどこが作成しているのか。

司法精神医療のみで使用されるのか。

ガイドラインは入院のみか、地域処遇についてもあるのか。

(10)

‑ 108 ‑ 

治療の目標はどのようなものか。再犯予防以外の目標はあるのか。

入院の場合、治療の進捗状況のモニタリングはどのような方法で行っているのか。

主治医が行うのか、治療チームを構成する多職種の会議で行うのか、治療チ ームとは独立した立場の人も参加する会議で行うのか、外部の専門家も参加 する会議で行うのか。

リスクアセスメント・ツールは使用されるのか。

ありの場合は、具体的な使用ツール名

リスク以外に治療の進捗状況をモニタリングするためのツールは使用されて いるのか。

オ.司法精神医療に関するアウトカムとデータ*

政府統計や公的研究で公表されている司法精神医療に関するアウトカムはどのような ものか。

司法精神医療の病床数はどのくらいか、人口比ではどのくらいか

司法精神医療の入院者はどのような人か

人口統計学的データ

診断

在院期間

病棟スタッフはどのような人か

どのような職種の人がいるのか。

入院の費用を負担するのは誰か

入院費用はいくらくらいか 

*データについては、入手可能な範囲で収集する。

*情報についてはできるだけ出典を示してください。また、参照できる文献や報告書につ いては、出典をお示しいただき、入手可能な場合には実物を添付してください。

 

(11)

‑ 109 ‑  別紙2

オランダにおける司法精神医療における施設内処遇の枠組み

  香川大学  法学部  平野  美紀

1.法制度に関して

1.1.責任能力の規定と精神科病院収容処分とTBS処分

オランダでは、我が国と同様、責任能力が欠如する者については処罰されない(オラン ダ刑法391)。また実務上、限定責任能力という概念が存在し、後述のように責任能力鑑 定では生物学的手法と心理的学的手法との混合的手法が用いられる。責任能力あり、責任 能力なし、の中間に、3段階の限定責任能力として限定責任能力基準があるが、限定責任能 力を規定した条文は、刑法には存在せず、減軽規定はない。

責任無能力者に対しては、裁判官は1年間の精神科病院収容処分を付すことができる(オ ランダ刑法37 12)。この場合、対象者は刑事手続きから離れ、もっぱら精神科病院 収容法(Wet Bijzondere Opnemingen in Psychiatrische Ziekenhuizen)の規定による取り扱い を受けることになる。精神科病院収容法19条によれば、裁判所は入院命令をさらに1年間 延長することができ、継続的に5年間入院させているときには、その後は2年毎に延長す ることができる。

さ ら に 、 特 定 の 重 大 犯 罪 を 行 っ た 、 社 会 に 危 険 の あ る 者 に つ い て は 、TBS (terbeschikkingstelling) 3処分と呼ばれる刑事処分がある。TBS 処分と呼ばれる刑事処分 は、日本には存在しない、行為者本人の危険性に着目するもので、刑罰のような刑の均衡

1 【オランダ刑法39条】Niet strafbaar is hij die een feit begaat, dat hem wegens de

gebrekkige ontwikkeling of ziekelijke stoornis van zijn geestvermogens niet kan worden toegerekend.精神の病的障害あるいは発達障害により行為を行った者は罰しない。

2 【オランダ刑法371項】De rechter kan gelasten dat degene aan wie een strafbaar feit wegens de gebrekkige ontwikkeling of ziekelijke stoornis van zijn geestvermogens niet kan worden toegerekend, in een psychiatrisch ziekenhuis zal worden geplaatst voor een termijn van een jaar, doch alleen indien hij gevaarlijk is voor zichzelf, voor anderen, of voor de algemene veiligheid van personen of goederen. 責任無能力者が、自己、他人、ある いは社会または財産の一般的安全に対して危険を呈する時は、裁判官は1年間の精神科病院収 容処分が付すことができる。

3 TBSとは、オランダ語でいうTer beschikkingstellingの略であり、日本語に直訳すると 監置となる。TBS処分は英文ではhospital order、entrustment orderと翻訳され、日本語 で社会治療処分と訳されていることもあるが(たとえば、ペーター・タック(山下邦也・

田中圭二訳)「オランダ刑法における社会治療処分」香川法学213=4号(2002)295頁以 下。)、オランダ国内では「TBS」と省略されているため、本稿ではあえて訳さずにその ままTBSとする。

(12)

‑ 110 ‑ 

が考慮されず、比例原則が適用されない4。TBS処分とは、4年以上の自由刑を最高刑とし て有する犯罪(例えば、強盗・強制性交・殺人等)や特定の重大犯罪(飲酒運転による重 大な傷害の惹起、脅迫等)を行った精神障害者に対して、特に公共の安全を確保する必要 がある場合に、当該本人の人格、当該犯罪の重大性または過去の重大犯罪に関しての有罪 判決の頻度等を考慮に入れて、刑事裁判所が決定・命令する処分である(刑法第37a5)。

4 なお、オランダはTBS処分のほか、累犯者に科せられるISD処分など、さまざまな刑 事処分を有する。 

5  (本報告の条文の翻訳は仮訳として筆者が行ったものである。)【オランダ刑法第 37a 条】

De verdachte bij wie tijdens het begaan van het feit gebrekkige ontwikkeling of ziekelijke stoornis van de geestvermogens bestond, kan op last van de rechter ter beschikking worden gesteld indien: 行為時に精神の病的障害あるいは発達障害のあった 者に対して、以下の場合に裁判官は TBS 処分を科することができる。 

1°. het door hem begane feit een misdrijf is waarop naar de wettelijke omschrijving een gevangenisstraf van vier jaren of meer is gesteld dan wel behoort tot een der misdrijven omschreven in de artikelen 132,285, eerste lid, 285b, en 395 van het Wetboek van Strafrecht, 175, tweede lid, onderdeel b, of derde lid in verbinding met het eerste lid, onderdeel b, van de Wegenverkeerswet 1994, en 11, tweede lid, van de Opiumwet, en刑法第132条、第285条、

285b条第 1 項、第395条、1994年道路交通法の第175条第2b若しくは第3項第1

b、またはあへん法第11条第2項に規定される4年以上の自由刑が規定されている罪の

場合。 

. de veiligheid van anderen, dan wel de algemene veiligheid van personen of goederen het opleggen van die maatregel eist.他人の安全、または人や財物の一般的な安全のために、

本処分が必要な場合。 

2 Bij toepassing van het vorige lid kan de rechter afzien van het opleggen van straf, ook indien hij bevindt dat het feit wel aan de verdachte kan worden toegerekend. 前項を適用するにあた り、裁判官は、犯罪事実の有無にかかわらず刑罰免除を言い渡すことができる。 

3 Het tweede en derde lid van artikel 37 zijn van overeenkomstige toepassing.第37条第2 および第 3 項が適用される。 

4 Bij het geven van een last als bedoeld in het eerste lid neemt de rechter de inhoud van de overige adviezen en rapporten die over de persoonlijkheid van de verdachte zijn uitgebracht, alsmede de ernst van het begane feit of de veelvuldigheid van voorafgegane veroordelingen wegens misdrijf in aanmerking.第 1 項の処分を言い渡す場合、裁判所は、当該本人の人格、

(13)

‑ 111 ‑ 

TBS処分は前述のように刑罰ではないため、自由刑との併科が可能であり、TBS処分と刑 罰とが併科される場合、その刑罰の長さは、刑罰のみが科される場合の刑罰よりも短い。

また、刑罰と併科された場合、通常は刑罰が先に執行され、通常は刑期の3分の 1 経過後、

処分に移行する。これは、刑法15条の規定により、通常の自由刑において、刑期が2年以 上の場合には、刑期の 3 分の 1が経過すると、保護観察付等の条件付きで釈放されるから である6。 

保安上の必要性という要件が重要視されるため第 37a 条の要件、すなわち、重大な犯罪 であり、公共の保安上の理由がある、という要件が満たされれば、限定責任能力の場合だ けではなく、事例としては少ないが、責任無能力の場合にも科せられることがある。

TBS処分には、条件付きで社会内で処遇される条件付きTBS処分のほか、自由を剥奪さ れる、監護付TBS 処分がある。条件付TBS処分は、裁判所が再犯の危険性の程度が社会 的に容認されうる、と判断した場合や、本人が協力的である場合、 TBS施設への収容はさ れず、遵守事項を付されて、通常の精神病院への入院や通院治療を受けるという処分であ る(刑法第387)。具体的には、精神科の治療を受け指示された薬を服用する、などである。

当該犯罪の重大性または過去の重大犯罪に関しての有罪判決の頻度に関して種々のアドバ イスと報告書を考慮に入れる。 

6  【15条第1項】De veroordeelde tot vrijheidsstraf van meer dan een jaar en ten hoogste twee jaren, wordt voorwaardelijk in vrijheid gesteld wanneer de vrijheidsbeneming ten minste een jaar heeft geduurd en van het alsdan nog ten uitvoer te leggen gedeelte van de straf

eenderde gedeelte is ondergaan.1 年以上 2 年以下の自由刑を宣告された被告人は、少なくて も 1 年間の自由を剥奪され、かつ刑期の 3 分の 1 が経過したとき、条件付きで仮に釈放さ れる。 

【第15条第2項】De veroordeelde tot tijdelijke gevangenisstraf van meer dan twee jaren wordt voorwaardelijk in vrijheid gesteld wanneer hij tweederde gedeelte daarvan heeft ondergaan. 2 年以上の自由刑を宣告された場合には、その 3 分の 2 が経過した後、条件付きで仮に釈放 される。

7 【第38条第 1 項】Indien de rechter niet een bevel als bedoeld in artikel 37b geeft, stelt hij ter bescherming van de veiligheid van anderen dan wel de algemene veiligheid van personen of goederen voorwaarden betreffende het gedrag van de ter beschikking gestelde. De rechter geeft tevens een in de uitspraak aangewezen instelling, die aan bepaalde, bij of krachtens algemene maatregel van bestuur te stellen, eisen voldoet opdracht de ter beschikking gestelde bij de naleving van de voorwaarden hulp en steun

te verlenen. 裁判所は、第 37b 項にいう処分を発しない場合、他者の安全または個人または

(14)

‑ 112 ‑ 

かつての外来処分では、条件に違反した場合の罰則が存在しなかったが、条件付TBS処分 では、遵守事項に違反した場合、または、他人の安全または社会もしくは財産の一般的安 全の必要がある場合、検察官の請求によって、裁判所は閉鎖施設での監護付処分の執行を 命じることができる(刑法第38c条)。処分の形態の変更であってもTBS処分の開始につ いての最終決定権は裁判所にあるが、保護観察所(Stichting Reclassering Nederland)が遵 守事項の遵守を監督することになる8

監護付TBS処分の場合、閉鎖施設で執行され、他人の安全または社会もしくは財産の一

財産の一般的な安全を保護するために、当該本人の行為に関して条件を付する。裁判所は、

判決で指定された特定の要件を満たす機関に、本人が遵守事項を遵守できるよう支援と援 助を提供するよう指示する。 

2 Indien bij de uitspraak tevens een vrijheidsstraf wordt opgelegd, kan deze in het in het eerste lid van dit artikel bedoelde geval ten hoogste op drie jaar worden bepaald. 由刑が付されている場合には最長 3 年までの刑を科すことができる。 

3Een voorwaarde als bedoeld in het eerste lid kan de rechter slechts stellen, indien de ter beschikking gestelde zich bereid heeft verklaard tot naleving van de voorwaarde.  判官は当該本人が遵守すると述べた場合にのみ第 1 項を宣告することができる。 

4 Bij algemene maatregel van bestuur kunnen nadere regels worden gesteld omtrent de procedure van terbeschikkingstelling met voorwaarden. 条件付 TBS 処分の条件について の詳細は別途規則で定めるものとする。 

【第38c条】De rechter kan, op vordering van het openbaar ministerie, indien een gestelde voorwaarde niet wordt nageleefd of anderszins het belang van de veiligheid van anderen dan wel de algemene veiligheid van personen of goederen zulks eist bevelen dat de ter beschikking gestelde alsnog van overheidswege zal worden verpleegd.

裁判所は、検察官の申立てに応じて、規定された条件が遵守されない場合、または他者の 安全または人または財産の一般的な安全の重要性について要請される場合、監護付TBS 分とすることができる。

8 オランダ保護観察所の役割については、平野美紀「オランダにおける社会内処遇制度:再 犯防止対策の一つとして」法と精神医療32号(2019年)。保護観察所は、資金は司法省に よって賄われているものの、独立した組織である。特に特徴的な点は、保護観察官が、被 疑者段階からかかわり、司法機関への社会調査書を作成したり、当人の個人的な悩みにつ いて相談に乗ったり、そのあとも継続して公判や施設での処遇の際にも当人の社会復帰と 社会復帰後の調整のためにかかわる点である。施設収容中の帰休等にもかかわる。

(15)

‑ 113 ‑ 

般的安全が要求するときに科される(刑法第37b9)。もちろん、社会復帰を目的とした 治療が行われるが、本来の目的は、当人の再犯の重大な危険から社会を保護することであ る。処分は、裁判所が定める 1 年間あるいは 2 年間という限定された期間を宣告され、1 年間、あるいは2年間の延長を宣告することがある。処分の全期間は4年間であると規定 されているものの、保安上の必要があればその期間に限定されない(刑法第38e10)。そ のため、終身的に収容される可能性もある。また収容期間が 6 年間を超えると、長期棟に 収容される。

  TBS 処分の目的は、対象となる精神障害者に対して治療を与えて社会復帰を実現させる

9  【第 37b条】De rechter kan bevelen dat de ter beschikking gestelde van overheidswege wordt verpleegd, indien de veiligheid van anderen dan wel de algemene veiligheid van personen of

goederen de verpleging eist. 裁判所は、他者の安全または人や財産の一般的な安全に必要な

場合、TBS処分を付すことができる。

2 Indien de rechter naast de maatregel van terbeschikkingstelling met bevel tot

verpleging van overheidswege een gevangenisstraf heeft opgelegd kan de rechter in zijn uitspraak een advies opnemen omtrent het tijdstip waarop de terbeschikkingstelling met verpleging van overheidswege dient aan te vangen.

裁判所は監護付きTBS処分に加えて自由刑を科した場合TBS処分に関して開始しなければなら ない時期に関する助言を述べることができる。

10  【38e 条】De totale duur van de maatregel van terbeschikkingstelling met bevel tot verpleging van overheidswege gaat een periode van vier jaar niet te boven, tenzij de terbeschikkingstelling met bevel tot verpleging van overheidswege is opgelegd ter zake van een misdrijf dat gericht is tegen of gevaar veroorzaakt voor de onaantastbaarheid van het lichaam van een of meer personen.監護付き TBS 処分の合計期間は、1 人以上の身 体の不可侵性への犯罪のおそれや危険を侵さない限り、4 年を超えない。

2 Behoudens de gevallen waarin een bevel als bedoeld in artikel 37b of artikel 38c is gegeven, gaat de totale duur van de maatregel van terbeschikkingstelling een periode van negen jaar niet te boven. 37b条または第38c条でいう命令を除き、TBS処分の合計期 間は9年間を超えない。

3 Indien de totale duur van de terbeschikkingstelling niet in tijd is beperkt, kan de termijn van de terbeschikkingstelling telkens worden verlengd, wanneer de veiligheid van anderen, dan wel de algemene veiligheid van personen die verlenging eist.TBS処分 期間は、他人の安全または人の一般的な安全がその延長を必要とするときはいつでも延長され 得る。

(16)

‑ 114 ‑ 

と同時に、社会の安全を確保することであり、従って、社会に危険を及ぼすおそれのある 者については、その危険性が存続する限り対象となる。この場合、オランダでは、危険性 の判断としてHKT30とよばれるオランダ式のアセスメントのほか、さまざまなアセスメン トツールが並行的に使用される。

これらをまとめると、TBS処分の特徴は以下の点にある。

(1)  限定責任能力者および責任無能力の場合に科せられる点、

(2)  処分の決定や終了などに対しては刑事裁判所による判断が下される一方、治療内 容などは医療者に委ねられている点、

(3)  刑罰ではないので通常の刑とは関係なく、社会への安全を重視して処分を付すこ とができる点、

(4)  処分を受けた者の8割近くは人格障害者である点、

(5)  処遇の目的は社会復帰と同時に、社会の安全を守るため、ということが前面に出 されている面

(6)  治療や社会復帰などに関しては、膨大な予算と豊富なスタッフが充実したケアを 行っている点、

以上の6点である。

1.2.TBS処分の経緯

  そもそも、オランダにおける触法精神障害者処遇に関する歴史は古く、1928年以来、TBS の前身であるTBR(Ter beschikkingstelling van de regering)制度によって、施設に収容 することを定めていた 。しかし、TBR処分は収容期間の上限規定がないため長期間の治療 拘禁を強いる結果となり、同種の犯罪を行った責任能力を有する受刑者が有期刑を定めら れているのに対して権利が保障されていないことなどから批判が高まり、198891 よりTBS処分がTBR処分に代わって新たに導入された11。さらにその後、収容人員の増加 などの現状に対処すべく発足したフォッケンス(Fokkens)委員会の提言をもとに、1997 11日よりTBSに関する監護法(Beginselenwet verpleging ter beschikkingstelling gestelden)が施行されるに至った。 

1997年度の改正によるTBS処分の最大の変革は、それまでのTBS外来処分・TBS入院 処分に代わって、TBS処分に、条件付TBS処分と、監護付TBS処分(TBS met verpleging)

とを創設した点である。

1.3.処分の流れ

オランダでもわが国と同じように、起訴便宜主義が採用され、検察官の裁量が広く認め られているものの、重大犯罪については原則的に起訴することになっており、有罪率は約

11 平野美紀「オランダにおける精神障害犯罪者の処遇」法と精神医療 12 号(1998)115 頁以下 参照。 

参照

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