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観光文化研究所所報第 10 号発行によせて

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Academic year: 2021

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観光文化研究所所報 第 1 0 号発行 によせて

観光文化研究所所長 小

本所報は今号で第

1 0

号 となる

。2 0 0 2

年の観光文化研究所設立よ り十年が経過 して云 はば節 目の号を迎えた。 この十年の間にも観光に就いては内外で様々な変化かあった。

それを取 り巻 く外的条件、即 ち政治、経済、気象、そ してテロ、暴動などのネガティ ブな事件の勃発などが大 きな影響を及ぼ したことは言 うまで もないが、観光の内容、取 り分 け人々の行動形態 も変化 してきた。 ここで 「観光」の意義や我が国での変化を概 観 し、併せて当研究所の歩みやこれか らの役割を再確認 してお くことも必要であろう。

2 0 0 2

年観光文化研究所発足 に伴い所報を毎年発行することな り

、2 0 0 3

3

月の創刊 号以来、略々毎年

3

月に発行 され、号を重ねてきた。 その間、研究所設立の目的であ る 「観光文化についての調査研究を行 うとともにひろく地域文化の現状を把握 し、

観光文化の振興に寄与す る研究な らびに活動を実践す ること」に沿 って、本学内外で 様々な活動が為 されてきたD観光 に直接焦点を当てた ものか ら、「観光」を媒介 に し てよ り広 く社会や文化を考察す るというもの、更に、地域の観光事業振興に寄与す る ものなど多岐に亘 っている。 この所報にも地域研究を始め多彩な論文が掲載されてい る。それ らが人 々の観光や文化 に対する考え方や見方を滴養することに役立 ったこと を信 じて疑わない。

処で、創刊号には、観光旅行に対するニーチェの有名な所感が引用されているoニー チェ自身は旅をする人であったが、観光旅行 に就 いては痛烈に批判 し、否定的であった。

併 し時代は移 る。現代はニーチェの時代 よりはるかに世界各国 ・地域の相互依存、連 環連鎖性が進み、互いに他国を無視 して存在 し得ない関係に在 る。個人 として も多様 多彩な価値観が容認 されている。元来、国、地域、個人を問わず、相互の紐帯を築 く

‑ 1‑

(2)

ためには相互理解が欠かせない。その相互理解の基を成す、それは矢張 り百聞は一見 に如かず、であろう。観光の意義のおおもとはそこにある。

蓋 し、観光を語ることは異文化を語ることであり一一異国間は勿論、同 じ日本であっ て も土地、土地に固有の文化がある‑ 、異文化を語 る為 には自らの文化、ふ るさと に対する理解 と愛情が不可欠である。一方、 自らを知 ることに於いて他を研究 しその 比較に於いて自らへの理解が進むということも言えるであろう。国際人 という立場で 外国人 と付き合 うには先づ母国のことを語れることが第一要件である。それ らを含め て、旅、就中、観光 というものへの人 々の関わ り方 も当然変化 した し、その変化 も今 ではニーチェにさえ充分 に理解 して もらえるものであろうと私 には思える。

昭和

3 0

年代半ば、高度成長のさなかに余暇の必要性がいわれるようになった。

レジャーブームという言葉が世に胎灸す るようにな り、 日本人の余暇の過 ごし方が 見直 される書っかけにな った。観光の為の旅行 も大いに奨励 された ものである。併 し 海外旅行が 日本人にとって、語学などの壁はあるにせよ、様々な制約、制限か ら解放

されて自由になったのは昭和

4 0

年代後半か らといって も差 し支えない。その頃までは 外貨事情 も与 って商用によるものです ら完全自由ではなかった.一方で、高度成長の ただ中では 「暇」ということ、暇な状態を罪悪視する風潮 もあり、それが、現在はワー クライフバ ランスや

QOL

が考慮 され、寧ろそれが確かな価値観になりつつあるのを 思 うと隔世の感がある。それに伴い、余暇の過 ごし方 も大きな変化を遂 げた。観光旅 行のスタイル も個性的、ユニークさが求め られ、集団、所謂パ ック旅行から個人の旅 行へ と変化 しているのも流れ として 自然である。

この十年間だけで も日本 自体は国より、海外 との関係に於いても更 に変化 している。

国策 としての観光事業の重要性 も一層認識 され、交通手段の進封 こ加えてソフ ト面で も官民で組紙作 りや支援策が講 じられてきた。真の

Gl o ba l i z a t i o n

、国際化を促進す る為 にも当然のことである。併 し、諸施策の効果が充分か というとまだまだ心許ない。

特にアウ トバウン ドのみならずインバウン ド、即 ち我が国に観光客をもっと招致す る ことが切望 されるが

、2 5 0 0

万人の外国人観光客を呼び込む目標 に対 して現状はその

3

分の 1に留まっている。 日本人が海外へ観光に赴 くのが年間

1 6 0 0

万人であるのに対 し て もその半分に過 ぎない。我が国を もっと良 く知 って もらう必要がある。

‑ 2‑

(3)

ここで東 日本大震災に触れないわけにはいかない。震災直後か ら海外の多 くのボラ ンティアが我が国を助けにきて くれた。災害は杓に大きな不幸であるが、人間の本性 の善なることを確認 し、世界の人 々と分かち合いができたことは救いであ り、希望を 捨てずに済むこととなった。

我が長野県 は観光立県を標梯 している。実際、 自然の景観を始め観光資源 に事欠か ない。併 し、 ツー リス トの立場で考えると折角の観光資蹄を生か し切れていないとの 思いがある。ハー ド、 ソフ ト両面での改善の余地は大 きく、そのために地元の教育 ・ 研究機関としての本学が貢献できることは多々あると考 える。その為 にも観光文化研 究所の責務は大きく、次の十年に向けての更なる発展に大いに期待す る所以で もある。

顧みれば我が国には古来、旅を語 る紀行文が数多存在 し、それは又、優れた観光 に 関する著作で もある。往時、人々の移動、旅には様 々な制約があった。又、危険を伴 うものであった。旅先を漂いなが ら、故郷 とその人 々を思 う心情は当に切々たるもの があ り、現代の我 々にもその思いはス トレー トに伝わる。それこそ時代を超えて、で ある。

末尾に最近読了 した本か ら引用を して、第10号の発行を記念 したい。それは比較文 明学の泰斗梅樽忠夫の残 した膨大な資料を整理編纂 した書物であ り、その編者の解説 である。

空間の移動は、 しば しば時間軸の移動をともな う。歴史のない場所はない。だか ら、大いに移動する人は、大いに考えることができる」

‑3‑

参照

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