長野工業高等専門学校紀要 ・第
18号
(1987) 97濾 過 を 用 い た 家 庭 下 水 の 浄 化 法
上 條 直 秀 *
Domestic Wastwater Treatment Filter
Naohide KAMIJO
Therecentincreaseindomesticsewagewiththeadvancementoftheequalization ofahighstandardoflivinghasactuallycausedtheproblem ofwater・qualitymanage・
mentconnectedwiththeenvironmentaldeteriorationindevelopingarears.Asfaras we know,thereisthe stronger demandtoconvertalavatory intoawater closet. For the purposeof theimprovement im the quality ofwastwater,we made an experiment by the simplified plantofgranular water filters. This isthe report aboutoureffectivefilters.Weusedwastewaterinourschoolsewage disposal plant aswatersamples,riversand andactivated charcoalas丘lter medium. Accordig to ourexperiment,to remove morethan80% oftheaverage245ppm COD,ourfilter mustbecomposedofgrain size0.3to1.2mm,depth 710mm ofthe丘Iterlayer. It was also possible to remove more than 80% oftheaverage 124ppm SS by grain size0.3tot.2mm,depth450mm.InthecaseofpH andDO,required criterion was satis丘edbeforefiltering.AsforColiform groupremarkableeffectivenessoffiltration wasrecordedatthe rate of nearly90% removalby the別ter composed of 別ter medium,grainsizelessthan0.6mm,layerdepth600mm.
1. ま え が き
我が国の下水処理人 口の普及率は,6
0年度末で3
4%となっている.前報でも述べた通 り, 毎年
2兆円近い予算を投資 しているにもかかわ らず,伸び率は数パーセソ トに止 まっている 現状である.人 口集中地域の下水道は一応整備され,郡市周辺部に建設の主体が移 りつつあ ることは,今後益々投汽効率,伸び率共に純化 してい くものと思われる.公共下水道排水区 域外の地域においても,生活様式の均質化が進み,便所の水洗化指向が強キると共に,環境 問題が少なか‑ ったこれ らの地域においても,生活難排*,管理の悪い浄化槽排水等によって 水質問題が厩在化してきた. これらの地域の生活改善 と,水質悪化防止のため,台所,風 呂, 水洗便所等の家庭排水総べてを,下水処理喝の排水基準値 と同程度まで処理することと,管 理,維持に特別な技術を必要 としないこと.この
2つを主限 として,砂措過槽を用いて,衣 庭下水処理を検討 してみた.
* 土木工学科 助教授
原稿受付 昭和
62年
9月3 0日
98
上 保 直 秀
2.
処理の7ローシー ト
下水処理場で行われている一般的な処理過程は,沈砂,ス クリーン,最初沈殿,活性汚泥 汰,最終沈殿,消毒,放流. これで液部の処理は終了す る. この過程において,最初沈殿, 最終沈殿によって発生す る汚泥を処理 して,下水の処理は完了す る.一般家庭で このままの 処理方法で行って問題になるのは,運転管理 と汚泥の処理であろ う. このことか ら家庭で行 う処理においては,次の
2つの点に留意 した.①管理が容易であること.②汚泥量が増えな く,処理 し易いこと. この結果,汚泥処理,液部の処理共に波過法を用いることとし,実験 を行い検討 してみた.特に汚泥 の処理については,液部の減退効率を高めるため と,汚泥量 を増 さないために最初に除去 してしま う方法を考 えた.図‑ 1に処理 のフp‑シー トを示す.
図
‑ 1処理のフp‑シート
汚泥消化槽は,粒径
10‑30mmの滝材を厚さ
30cm,長 さ
150cm位い とす る.ここで大 き な固形物の除去を行 う. この槽は
2‑ 3ケ設置 し,
1.5‑ 2ケ月の汚泥消化期問を と ること によって再び使用可能 となる.次にプールであるが, これは家庭排水は時間的に排水量が異 なるため,次の減退槽での滝過速度を一定にす るための水量調整 タンクである. ここで水位 を上げるためにポンプが必要 となる.減退槽については
, 1人
1日
250‑4001の排水量
, 4‑ 5
人家族で
1500‑2000∫ /日 の排水処理が可能な事が必要 となる.最後に消毒により, 細 菌類の殺菌を行い,放流になる.本報文は,以上の処理過程の うち,液部の処理, このフロ
ーシー トでは,滝過槽についての実験結果である.
3.資料および実験方法
資料は,本校の生活排水処理場 ( 活性汚泥法)に流入す る下水 とした.分流式,寮生約
300人.昼間人数約
950人. 実験期間は
10月 より
1月までの
4ケ月間,資料採取時間は朝
10時
30分頃に一定 した. この時間は寮生の朝の生活排水が流入 し終 る頃である.表‑ 1に資料下水 の水質を示す.
表
‑ 1資料の指標と水質
今回の実験は,汚泥消化槽を通さずに行 ったため,原下水をそのまま資料 とした. しか し,
波過を用いた家庭下水の浄化法
義‑2頂過槽の浦材粒径と浦屑厚
A
小 Ic水槽
l・・2‑5140
l
o・3こ・ 再
̲i , ・ l
15‑25日ol
5 ‑
1012510・31.2124010・6
1.299
( 単位
mm)G 槽IH
糟
計
Ll50 J
l190実際にはフローシー トに示 した ように,汚泥消化槽を通過 した後に波過槽に入 るため,大 き な浮遊物だけあ らか じめ除去 したものを資料 とした.測定に使用 した器械は次の通 りである.
pH.MI7E.I)0・IB.COD,COD‑20E.S
S
,SEP・CS500.また大腸菌については,デスオ キシコール酸塩培地法に よった.
実験方法は,砂減退法を用いた.滝材は手近かな河川砂利を使用 した.実験に用いた減過 糟 の濯層厚 と,描材の粒径を表
‑ 2に示す.
A,B,D,H,各減槽は
,170×300×240mmの長方形表面であ り,下部流出孔は
d23mmである.
C,E,F,の各濃槽は
,d87×1300m mmの円形表面で,下部流出孔は
,d13mmである.濃過速度は, コン トロールせず 自然流 下 とした.
A,B槽はこの状態で全 く表面に滞水す ることはない.
D,E槽は,措材粒径の 大 きなものを上段 とし,狭雑物が淀屑全体に亘 るよ うに した. C槽は,同一粒径であるが, 表に示 した各淀層厚の位置か ら処理水を引 き抜けるようにした ものである.
F,G,H各槽 は減材粒径を
0.6mm以下 とし,淀層厚 と活性炭の効果を比較 してみた.
4.実験結果お よび考察
実験データを
E槽を例にして,表
‑3に示す.
pH,DO,COD,S
Sについては
,2回測定 し
,10%以内の差であれはその平均を取 った.
TIN,T・P
は
3本セ ットで測定 した.大腸菌群試験については
,1つの値いを示 してあるが, デス培地法のため,希釈倍率をすべて 4段階 として求めた値である.
pH.
今回の実験においては,波層厚,滝材粒径の大小,活性炭の有無いずれ も
pHの変 化 と無関係の値が出た.
pH値が上がった ものの最高値は,原水
7.8から
8.3まで変化 した.
逆に下がったものの最大幅は
,8.1か ら
6.9になったが,同一液槽で
4回繰 り返 し行 った とこ
ろ,再び
7.9まで変化 した.
8つの減退槽全体的に見ると,原水の
pH値の幅 より減少 し,
最高値
8.2,最低値
7.3,平均
7.64となった.一般的には,軟水地域の下水の
pH値は
,7.2位いの値を示す ようであるが,本校 の場合,便所等一部で地下水を利用 しているため,少 し
硬度の影響があるか.いずれに して も,下水処理の放流基値
5.8‑8.6の範囲内には収 まる結
果 となった.
100
DO.
溶存酸素の畳は水温や, 圧力によって異なるが,大気圧で 新鮮な水中における溶存酸素は,
30oCで7ppm, OoCで
14ppm程度をされ る.長時間流下 した下 水中には,殆んど溶存酸素は含ん でいない.長野市処理場 のデータ で も
,10月‑ 1 月頃の平均値 とし ては,1
.3ppmとなっている.本 校の処理施設に流入す る下水は, 同時期 と比較 して も相当高い値い となっている. これは,下水発生 か らの時間経過が短いため,有機 物分解のための酸素がまだ十分消 費 されてお らず,そのまま残 って いることに よるものと思われ る.
今回の実験では,滝層厚,滝材, 活性炭の有無に よる顕著な差は見 られなかった. しか し,減槽を通 す ちとによって,総べての処理水 が,原水に対 して
DOの値が上が
上 肢 直 秀
義‑3 C
槽における実験データ ( 単位 ・表
‑ 1に同 じ)
ss IT‑N IT・P
区 腸菌
平 均
l8・114・71399ll1413・56lo・4.,I.28滅 層 厚
22cmの減 退 水
平
可 7・Ol5・51148lE48(3・45Jo・
531 46滅 層 厚
47cmの
滝 過 水
平 均
l7・lF6・31 96J1913・50lo・491 26平 均
巨 9t6・61761 1013.3510.4712.9った.最高値は
, E槽を3回通 したときに5.
8ppmか ら
8.9ppmとなった.また最 も変化の 中の大 きかった ものは, C 槽で0
.15ppmか ら
6.7ppmまで増加 した.原水の
DOが小さいも の程変化の幅は大 きくなる.いずれの滝過槽でも数回減退槽を通 していると
,6.3‑8.9ppmの間に殆んどが入 ってしまった.また,エアレーションの効果を見るために,淀過す る前の 原水に,1
5分間, 2 時間の2 種規の時間別のエアレ‑ショソを行 った.
2種類共
4回行った 結果は,1
5分エアレーションで,4
.5ppmか ら
8.2‑8.8ppmにな り
,2時間のエアレ‑ショ
ソでは, 3 回が
8.5‑8.9ppmとな り
, 1回は
9.6ppmとなった. これは家庭下水のような, 下水発生か ら短時間の うちに処理する. ような場合は,エアレーション時間はごく短い時間で 充分 といえる.
COD.
本来な らば下水の水質指標 としては
,BODを用いるべ きであるが, この分解作用 は,数 ヶ月に亘って行われるものであるが,実際には
5日間の値を取 ることが標準 となっている.
BODと
CODの関係は一概に論ずることはできないが,ある一定の排水については, その排水に限って両者の相関は見 られ る.そ こで,今回の実験は滝過槽の基礎データを得 る
ことを 目的 としているため,短時間で測定可能な
CODに よった.実験結果を図
‑ 2に示す。
H,G,C,F
各槽における除去効果が高い ことが認め られ る. これはいずれ も,減材粒径
が1
.2mm以下のものである.H,G減退槽についてみると,減材の粒径はどち らも
0.6mm以下であるが,活性炭を滝層厚 と考えると,その効果は殆んで現われていない.同じ滝材で
F槽の効果が悪い ように見えるが,活性炭層が27cmもあるためであ り, この結果だけか ら
濡過を用いた家庭下水の浄化法
大 脳 出 版 考 iJd 紺
池田厚 くcn)50 100 も直樹鮮(川)50 100 もRT:.・ll・J (C山)50 100
図
‑ 2滴過槽における
COD,SS,大腸菌の除去率
判断す ると
,CODの除去には活性炭はない方が良いことになる.本実験で
80%以上の除去 率を期待す るためには,滝材粒径
0・6mm以下で,波層厚
15cm以上が必要であ り,最大粒 径
1・2mmまで使用す ることにすれば
,70cm以上 の波層厚が必要 とい うことになった. 普 た,滅層厚を大 きくす るより,滝材粒径を小さくす る事による効果の方が大 きいこともはっ きりした.
SS
・家庭下水の
SSは,一般郡市下水 よりかな り低い値を示す.長野市 の事業統計年表 に よると,都市下水道の処理場‑の流入下水に対 して,殆 んどが家庭下水である団地処理場へ の流入下水の
SSは,約
80%である∴水環境示標に よれ
は73%となっている.本突放せ使用 した原水の
SSは,
衣‑ 1に示 した ように,最高で
144ppm,最低で
83ppmとなってお り幅 は小 さい・そ して, この値ほほは団地内処理場‑の流入下水 と同程度である.図
‑ 2に滅過 に よる
SS除去率を示す・今回の突放は波過速度を コソ トロール しなかiたので,波過作用 はフルイ効果のみ と考えられる・従 って滝材粒径の小さな物が, より効果的であることは, 結果にもはっき り現われている
・A槽のように
1.2mm以下が全 くないもの
,D槽 のように
0・6‑1・2mmが
3cmしかない波過槽では
1m以上 の淀層厚に対 しても
40%の除去率であるO これに対 して,滝材の粒径が
1・2mm以下になると,その効果は顕著に現われて くる.
E槽 について見ると
,0・6‑1・2mmが
20cmもあるのに効果が悪いのは
,0.6mm以下が全 くな いためか,粒径が他の滝槽 と異な り,逆になっているためか と思われる.下水道法第
6粂放 流下水の水質基準値
70ppm以下に下げるためには,原下水の約
65%を除去 しな くてほな ら ないが,減材の粒径が
0.6mmを境 として,それ以下な らば可能であることがわか る.
T・N,T・P
・長野市のデータでは,総窒素は平均 で
29.1ppm総 リソほ平均値
6.5ppmと
なっている・団地内処理では,それぞれ
21ppm,3.5ppmとなる.本実験の原下水は, こ
102
上 肢 直 秀
の値 よりもなお一段低い値 となった.寮生が居 るといっても,一般家庭での生活形態 とはか な り違 うため と思われる.実験の結果は,いずれの沌過槽を通 しても殆んど変化は見 られず, また,小幅なが ら,上が った もの,下がった もの とまちまちであった.露層厚,滝材粒径 と の関係は言及できない.砂滅過法では
,N,P共に除去す ることはできなか った.
大腸菌.今回の実験では,原下水中に含まれる大腸菌群数に非常なば らつ き が あ った.
義‑ 1. 一般 の都市下水でも,大腸菌に関しては大部差があ り,多い ときには
lml中何十 倍 ケにもな り,少ない ときには何十万 ケのオーダーであ る.平均値で数千万 ケとなっている。
本実験値は,最高で
129万 ケとなっている.泥過法のみで,放流水基準値
3000ケに達するに は容易ではない. しか し,除去率は滝層深さと,波材粒径に よる違いがはっき りと現われて いる.図
‑ 2.C槽 の粒径
0.3‑1.2mmで,露層厚
71cmのとき除去率
97.7%に達 した.
(
義‑3)除去率は高いが,絶対数が大 きい為,なお
2万
9千 ケが残 ることにな り,消毒効 果に期待せざるを得ない.
除去率のグラフは,いずれ も節点か ら左側の勾配が,右 より急になっている. これは
1つ の露層を繰 り返 し波過 した結果を表わ したものであるが,初回に櫨過 した除去率に比べ, 2 回
, 3回 と減退を繰 り返 えすにつれ,除去率が落 ちてい くことを意味 している. この ことか
ら,減退槽は
1m位いを波層厚の限度 として,多段的に設けた方が良い と思われ る. また, 滝過速度の問題であるが
, 1日当 りの排水量を
20008と仮定 す ると,減退表面積
1500cm之(50×30cm)
として
13m/日 となる.本実験では
,C糟 の滝過速度が
16m/日 であった. し か し, この装置は,減過表面積
238cm2(68.7cm)に対 して,流出孔 (
1.3cm)が
1ヶ所 し かなかった.従 って滅層の閉塞に よる波過速度の減少 と,流出孔の拡大による滝過速度の増 大 により, この槽におけ る波過速度の維持は可能 と思われる.勿論露層閉塞による削 り取 り は行 う.
以上,実験値で見る限 り,下水処理区域外での水洗化に共な う合併処理を,砂減退を主体 とした処理槽を用いて行 うことは,水質的には十分可能であるとの見通 しは付いた.本実験 は,前処理 として,汚洗消化槽を通過 した下水であることを前提 としているため,波過槽に 流入す る水質は,今回の実険で用いた下水 よ りも,大部良質 となるはずである.各指標を除 去率で考察 したのもこのためである.汚泥消化槽については,現在実験中であるが, これは, 汚泥消化を嫌気分解でな く,好気性分解を利用 しようとす るものである.そ うすれば,処理 装置は小型にな り,管理 もし易 くなるものと考えている.
5.あ と が き
生活系排水処理の意義, 目的は, トイレの水洗化を達成 しつつ,雑排水の処理を同時に行 うことである. この 目的 のために公共下水道がある. しか し,水洗化に対する強い要望は, 公共下水道の建設 まで待 てない現状である.雑排水の処理は各地で独 自のものが使用 されて い るが,管理が不十分なため, トラブルの原因 ともなっている.文化的な生活の代名詞 とも なっている トイレの水洗化 と,水環境改善のため,下流住民に不安を与 えない,安心 して処 理水を放流できるように したいものである.
最後に,本研究の実験に協力 していただいた,卒業生の小林幸子,中原秀樹,布山豊三の
各氏には感謝の意を表 します.
泊過を用いた家庭下水の浄化法
参 考 文 献
1)
合田 位 :水環境指標 思考祉
2)
岩井重久地 :生活系排水処理ガイ ドブ ック 理工新社
3)長野市 上下水道事業統計年報 昭和
55年度
4)徳平 浮 :衛生工学 森北出版
5)
上保直秀 :下水処理方法 の現状 と将来 長野高専紀要第
17号
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