トランジス タ正弦波発振器 の発展状況 (第1報)*
千 葉 作 富 郎**
1. ま え が き
トランジスタ正弦波発振器の発展状況について主に米英 日独仏蘭 ソの文献調査結果につい てそのあ らましを御報告す る.周波数決定回路に よって大別するとR‑C,LIC,水晶形 とな り,能動素子に よって分けると, トランジスタ,FET,ZC,となる. ここでは便宜 上, R‑C,L‑C,水晶形の順に述べ る. これ までの発展経過を概観すると,発振周波数 帯は,lola‑109Hzにわた り,低周波はR‑C形で, 高周波はL‑Cや水晶形で実現 されて お り,発振周波数変動率は電源電圧△Vc幸±30%,周囲温度△TQOC幸‑5‑+60oCの変化 に対 して,お よそ △f/fo幸±6×10‑3(R‑C形),±5×10‑4(L‑C形),士7×10‑6(水晶 形)程度である.振幅安定度については,努力が払われてお り,非直線素子 (光導電素子, サー ミスタ, ダイオー ド等)の発達にともなって比例的に向上 してきてお り,歪率特性 も比 較的良好である.能動素子 としては トランジスタ回路を主体 として, これにMOSや接合形 FETを付加せ しめた回路方式が基本 とな り, トランジスタ単体方式の論文が多 く発表 され てお り,近頃並行的にJC正弦波発振器 も発表 されている.一般に これ らの能動素子を含む 回路方式に重点がおかれている.お よそ450余件の文献中 より,それぞれの分野で特長を持 つ と思われ る例を紹介 してい く.
2. R‑C形 発 振 器 2・1概戟
R‑C形発振器は大別 してウィーンブ リッジ(1)〜附,移相形的eO,並列T形,橋絡T形胸,特 疎形R‑C細別とV,C,0色紙榊 とな り,能動素子か ら分けると, トランジスタ,FET,ZC,
となる.回路方式 としては,GCIGE‑GE‑GC形形式のウィーンブ リッジ等が多 く, その入力インピーダンスを高めるため初段にMOSや接合形FETを使 う例 も多い.主増幅 器はGE‑GE形で高利得 とし,終段にGC形を使 って低出力イ ソピーダンスとす る例が多 い.発振周波数変動率 (△f/fo‑△0/20)は,Qが小さく所要増幅度 X≧ 3と大 きいので 負帰還量が少な くな り,位相推移の変動分△Cも小さ くな らず,電源電圧△Vc幸 30%,周囲 温度△TaoC幸‑5‑+60oC,変化に対 して△f/fo幸士6×1013程度であって,△f/foに 関す る限 りあまり疏著な進歩は見 られない.筆者の経験によれば △f/fo幸±5×10‑4を得05) ている.発振周波数精度ない し推移は,士2×10‑2‑10‑8程度がふつ うである.振幅安定化に
* 昭和52年9月 電気関係学会充溢支部連合大会において発表
**電気工学科 助教授 原稿受付 昭和52年9月30日
32 長野工業高等専門学校紀要 ・妨 8号
は種 々の方式が提案 されていて,各種のAGC方式や, 光電池 (COS,Case), LED (Gq As,GaAsp),SLホ トトラン.?スタ等の光導電素子や,サー ミスタ, ダイオー ド, ツェナー
ダイオー ド等を負帰還回路に接続 した り, ランプ等を正帰還回路にお く方法等があ り,振幅 安定度 と歪率特性は比較的良好 となっている.一方JCを利用 した発振器 も近頃種 々発表 さ れているが,入力インピーダンスが高い長所はあるが,ICの周波数特性の高周波帯が劣化 してを り, また負帰還を随所にかけ られない欠点があ って,やは り詰めた基本的研究分野で は トランジスタ単体を用いる方式が数多 く発表 されている.
2・2ウィーンブ リッジ形発振器(1)〜的
図1(1)は実際回路例である. Ql(GC)で入力インピーダンスを高め 02(GE)‑03(GE)で 高利得とし,CIRIC2R2を介 して正帰還を施 して発振周波数を決定す るとともに,出力をQ5 (GC)でィ./ピーダンス変換 し DID2で整流 し 06(GE)‑Q7(GC)で直流増幅 して, ライ ト バルブ (GE344)にお よそ 8Vを印加すると,ホ トセル (CL603)は図2に示す ようにお よ そ5.5Kg之で非直線的に作動 してRxで負帰還回路を形成 して 振幅を 安定化 している.QI
(GC)は緩衝増幅器である.10Hz〜500KHz帯で発振する.
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図 1 ウィーンブリッジ発振回路 図2 光電池抵抗と出力電圧u二), バルブ電圧(下)特性
図 3叫ま初段に T'lM OSFET(GS)を置いて入力インピーダンスを高めるとともに T'8 (GE)とおよそ66dbの増幅を行ない T'4(GC)でインピーダンス変換 し低出力イソピーダ
ソスとし, CIRIC2R2を介 して正帰還を,サー ミスタ (STCR24)を介 して負帰還を施 して ブ リッジを形成 している.出力電圧1.4Vr.m.S.,歪率0.15%(25Hz〜25KHz),発振周波 数変動率は,電源電圧△Vc‑±5%,周囲温度△Ta‑士10oC,の変化に対 して△f//o幸2
×10‑2でおよそ10Hz〜100KHz帯で発振する.T'2(GB)T'5(GC)は定電流化 作 用 を な す.
トランジスタ正弦波発振器の発展状況 (第 1報) 33
図4 RIC 形発振回路
図4(3)はT,2(GE)‑TrB(GE)で高利得 とLTy4(GC)でイソピーダンス変換 し,CIRIC2R2 を介 して正帰還をかけるとともに,サ ー ミスタ (Re)と T'1(GC)‑Ty2(GB)で負帰還回路 を形成 して振幅を安定化 し,歪率は良好で高調波成分は 10‑3‑10‑4(10Hz〜108Hz)である.
図5(5)はR‑C回路網 と25HV4増幅器で発振部を, 緩衝増幅器A2BubTerと可変抵抗減 衰器で出力調整を,電力増幅器25MP2と出力 トランスで電力増幅部を構成 している.
図6で Tr201M OSFET (GS)は初段入力インピーダンスを高めるため Tr202(GE)とダ ー リン トソ接続 とし,次段の トーテンポール増幅器でインピーダンス変換 と増幅を兼ねさせ
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図5 R‑C形発振器のブロックダイアグラム
てお よそ50dbの利得 とな し,サー ミスタを介 して負帰還を施 して,出力はお よそ3Vr.m.S.
歪率お よそ1%, 周波数精度1%,20Hz〜200KHz帯で発振す る. 図7の電力増幅部は, T,401(GE)‑T,402(GC)‑T,404(GE)で高利得化 L‑,T,403,T,404の トーテンポール増幅器 のエ ミッタか ら R406を通 り初段エ ミッタ抵抗R 405に負帰還を施 してい る.
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図6 KIC形発振回路 図7 電 力 増 幅 器
図8山)はfLA741を増幅部 とし,CIRRC2を通 り正帰還をかけて可変抵抗Rで発振周波数 を可変 とし, ツェナーダイオー ド(CRl,CR2)で低い周波数の振幅制御をなす とともに負 帰還を施 してを り, ランプに より高い周波数の振幅制御をなす.図90カはFLA741を増幅部 と しC2R2CIRlを通 って正帰還をかけて発振周波数を選択 し,発光 ダイオー ド(LEDl,LE D2)で振幅制限をなす とともに負帰還回路を形成 し,R4,Raで負帰還量を調節 して発振 レ ベルを制御す る.出力20Vp.p.,400Hz,歪率1%である.
図10(6)は極超低周波 ウィーンブ 1)ッジ形R‑ C発振器でお よそ10‑5‑101Hz帯の周波数を 発振 させ ることがで きる.Rの極めて大 きな値 (例えば101052)に対 してCの漏洩抵抗や端
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図8 ウィーンブリッジ発振器 図9 ウィ〜7'1)ッジ発振器
子問の絶縁,増幅器の入力抵抗な どを十分大 きくしなければな らないので,MOSFET(GS) を初段に使い, 低歪率発振 させるために2段 目GE形 トランジスタでREに よる大 きな負怜 還作用を利用 し,動作特性を直線化 し軟発振を生 じ易 くさせ,その動作点をある程度調整す ることに よって良好動作特性を得ている, 周波数変動率は△Vc‑24V±10%の変化に対 し て0.03%以内で周囲温度△Ta‑25oC±10oCの変化に対 して振幅 と周波数変動率は± 2%
お よび0.1%であ る. ただ周囲温度を上げ ると発振停止の傾向があるので, GS‑GEのバ イアス安定化を施す必要があろ う. 図11(7)はAlにMC1456C6,A2にFLA741Cを使 って主 増幅部 とし16MS2,10FLFを通 って正帰還をかけ ダイオー ドを通 って負帰還を施 して振幅制 御をな しお よそ0.001Hzを発振す る.Alの入力抵抗は有限なのでR値 としてほ 16MSlが 限界である.
図12叫ま振幅制御素子 としてZC化が容易なバイポーラ トランジスタを用いる方法で, 発 振出力はダイオー ドに より整流された後,基準直流電圧 と比較 され る,積分器出力には基準
Tt:3SAlS CR;先拐周波放決定素子 TI:2SC458 RTけ ‑ ミスタ ZDIZDl:RDTA
図10 極超低周波R‑C形発振回路 図11 超低周波RIC形発振回路
長野工業高等専門学校紀要 ・節 8号
電圧 と設定発振出力電圧 との直流誤差が生 じ この誤
出力 差が制御 トランジスタのベースを駆動 して振幅の安定
ru(50K) E,eEト)
cl‑C2‑0.01iLF.Rl;=R2=33kQ Q‑2SC369,opamp‑LLA741C
図12 R‑C形発振回路
化が計 られ る.出力電圧10Vr.m.S歪率0.4% ∫‑440 Hzの特性を得てい る.
2・3特殊形R‑C発振器伯一朗
図13叫ま鎖状能動回路に よるR‑C発振器回路で, 差動入力形演算増幅器に よる電圧ホ ロワを用い, FE Tは電圧制御の可変抵抗素子 として振幅安定化のため に使用 してい る.周波数を1KHzとし,振 巾調整用の 可変抵抗器に より出力電圧を変えた ときの歪率はお よ そ0・1%で,あ る程度周波数が可変で歪率の少ない簡易形発振器であ る・ 図14叫ま変形二重 橋絡形R‑C回路網 の電圧伝送系数の実数部 より所要幅幅度がお よそ0.97とな るので,G C形の電圧利得はお よそ0.99なので,a‑1/CRJ有 , で容易に発振す る.△Vc幸±5%
の変化に対 して△f/fo幸 ±1.5×10 2,歪率お よそ2%である.
図13 特殊形R‑C発振回路 図14特殊形R‑C発振回路
図15榊はM OSFETと′くイポーラ トランジスタよりな る移相形R‑C発振器で,RICI R2C2R8C3とQl,Q2とで正帰還回路を形成 L RLで利得を調整す る.エ ミッタホ ロワの低 インピーダンスより出力 してゲー トは高入力抵抗 とな ってお り, ゲー ト マイアスは Rl‑R2
‑R8より与えている.
図16叫ま,は しご形周波数選択回路を用いるR‑C発振器であ る.一般にR‑C形発振器 では連結 された2個の可変容量 の中の1個 の容量 の2つの端子がいずれ も大地か ら浮いてい るために, この容量に人体が近 づ くときは,発振周波数ない しは出力電圧が変動す る,いわ ゆ るボデー効果を生 じる場合があ る. この発振器は可変素子は2個でいずれ も1端子を接地 状態で使用で きる.Ql(GS), Ql′(GS)で差動増幅器をな しその利得はお よそ Odbで,02 (GE)QS(GE)は主増幅部でお よそ 38dbであ り, 04(GC)‑Q5(GC)は ダー リン トン接続 と
して低出力インピーダンスとし, RCRC を通 って正帰還を施 して発振周波数を選択 し,サ ー ミスタを通 って負帰還を施 している. 発振周波数帯は20Hz〜200KHzで振幅変動率はお よそ2%で歪率はお よそ0.85%であ り,・抵抗可変の場合 も同様特性であ る. 発振同様数変 動率はお よそ△f/fo幸2×10‑3である.
トランジスタ正弦波発振器の発展状況 (第 1報) 2・4 V.C.Oe9‑朗(Voltage
ControlledOscillator,電圧 制御発振器)
γ.C.0.は定電圧源で周波数決 定回路素子を駆動 して発振周波数 を変化 させるものである. 図17物 は主増幅部 より減衰器を通 りCI RIC2R雪を通 って正帰還をかけサ
ー ミスタ(T)を通 り負帰還を施 し て振幅を安定化す る. ダイオー ド
Rl,R2の順方向抵抗(rE‑26血/
IE(mA))を制御電圧で可変 とし, 印加電圧 0‑7.5Vで′幸227Hz〜 27KHz変化させている. 出力お よそ3Vr.m.S.,歪率お よそ22db
以下で周囲温度△Ta‑0‑+70oC
変化に対 して 振幅変動率△〃/〝幸 10%,△f/fo寺±5%である.図 18に見 るように 制御電圧 0‑7.5 V間で発振周波数誤差は士100Hz 以内である.
図19句は直流電圧に より発振周 波数を変化す るγ.C.0.の原形で
r‑mRlの代 りに トランジスタコ レクタ抵抗を用いたのが図20であ り,接合形FETドレ‑ソ抵抗を 利用 したのが図21である.発振周 波数は,aI2‑1/(CIRIC2R2‑(1+
m)mC12R12), で表わされ る. 図 20で Ql(GE)の コレクタ抵抗が
R3‑R4‑3.3Kflと並列に入 って いて,ベース入力電圧が 0のとき はQlが遮断 とな りコt/クタ抵抗 は極めて高 くなるので高い周波数 を発振す る.ベース入力電圧が正 のときはQlは飽和 とな りコレク タ抵抗はかな り低 くなるので低い 周波数を発振する.図21でゲー ト 入力が鋸歯状波のとき,ゲー ト入
+VCC
図15 移相形R‑C発振回路
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〟pC34A 2SC601×2 2SC6012SC503■+1
Q闇 甑エ‑1g R5V 一 QS 出エ力
図16 R‑C形発振回路
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図17 V.C.0.
図18周波数誤差特性
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力電圧が低い ときは ドレイン抵抗は小さい ので,比較的低い周波数を発振 し, ゲー ト 電圧が高い正電圧になると ドレイン抵抗は 大 きくなるので比較的高い周波数を発振す
る.
図22叫よQl(GC)一02(GB)‑Q3(GC)で インピーダンス変換 と増幅を 兼 ね さ せ,
RIC2R2で正帰還をかけ,CIRIC2R2で発振 周波数を決定す る.06(GE)‑Ql(GE)‑
Q7(GC)で直流増幅部を形成 し,入力電EEを お よそ β4倍 してC1‑ 2000♪Fを通って負帰 還を施 してを り, ミラー効果に より,利得変 化△Aに より△Cl幸β4×2000♪Fだけ変化 して発振周波数を変化 させることができる.
3. あ と が き
トランジスタR‑C形正弦波発振器は ウィ ーンブ リッジ形を主流 とし,移相形,橋絡T 形,並列T形,特殊形,V.C.0.等があ り, 増幅部入力インピーダンスを大 き くす るため にFETやGC形をおき,出力イソピーダソ
トランジスタ正弦波発振器の発展状況 (第1報) 39 スを低 くす るためにGC形が用い られている.R‑C形は本質的に所要増幅度 (X≧3)が大 きく,Qが小さいので発振周波数変動率を良好にす るには鳴音安定度を考慮 した範囲内で主 増幅器の利得を大 き くして,直交流の負帰還をできるだけ多 く施 して,実効的にOを大 きく
し,位相推移の変動△βを小さくす ることが必要である.歪率や振幅安定度は非直線素子が 種 々開発 されつつあるし,色 々なAGC回路方式が考え られ るので良好特性 とな りつ つ あ る.JC化に当っては,入力インピーダンスが大 きいが,周波数特性の高周波領域が劣化 し てを り,かつ随所に負帰還をかけ られない欠点があるので, これ らの改良が期待 さ れ て い る. 、J′
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