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監査制度に関する改正の実効性

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1. はじめに

監査とは, 十分な会計知識を持った公認会計士が企業の作成する財務諸表 が適正であるか監査し, 意見を表明することによってその信頼性を明らかに し, 財務諸表を利用する利害関係者に資するものである。 わが国では商法特 例法監査や証券取引法監査に代表される法令等に基づく監査や任意監査, 国際的な監査が公認会計士により行なわれている。 このような監査業務以外 に, 公認会計士は会計全般のアドバイス, 税務相談, 経営に関するコンサル ティングなどを行なっている。

一般的なイメージとして, 監査人が適正意見を表明した財務諸表は企業の 状況について適正に表示しており, 何ら不正は存在せず, 企業のゴーイング・

コンサーンについても問題がないように思われる。 しかし, 監査人が適正意 見を表明したにもかかわらず, その直後に破綻した企業もある。 例えば, 日 本住宅金融, 山一證券, 三田工業である。 その後明らかになったことだが, 日本住宅金融の場合, 1993年3月期の延滞債権は融資残高の45%超であり,

監査制度に関する改正の実効性

有 岡 律 子

福岡大学経済学部

資本金5億円以上または負債総額200億円以上の株式会社が対象であり, 6千 社余りが監査を受ける。

証券取引所に株式上場している会社あるいは上場申請会社, 株主が500名以上

の会社, 証券業協会に株式を登録している会社あるいは登録申請する会社が対

象であり, 4千数百社が監査を受ける。

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山一證券のケースでは簿外負債が存在した。 また, 三田工業では粉飾が行な われていた。 このように企業の倒産後, 債務超過や簿外負債の存在, 不正な どが明らかになることで監査に対する疑いが高まり監査人が訴えられること もあり, 監査業務のあり方や監査人と企業の関係のあり方について議論が高 まっている。 たとえ監査人が不正に関与しておらず財務諸表作成が企業の責 任であっても, 監査人の考える監査像と社会が期待する監査像に食い違いが ある, いわゆる 「期待ギャップ」 の問題がクローズ・アップされてきている。

こういった会計, 監査制度への不信感の高まりは, 日本より制度への信頼 感が強いと思われていたアメリカにおいても見られる。 例えば, 2001年末に 破綻したエネルギー大手のエンロン社の場合, 同社の簿外債務, 不正会計処 理を担当監査法人が見逃していたが, 同監査法人がコンサルティング業務も 行なっていたことから監査人の独立性, 監査業務のあり方が問題となった。

また, 2002年7月に破綻した通信大手のワールドコム社の粉飾決算について 担当監査法人の会計士は不正を発見できなかった旨主張しているが, ここで も監査法人がコンサルティング業務も行なっていたことから監査の実効性が 問題となっている。

このようななかで, 日本では監査の実効性を高めて 「期待ギャップ」 を埋 めるべく, 2002年1月に内閣府金融庁企業会計審議会が 「監査基準の改定に 関する意見書」 を承認し, 「監査基準」 を改訂した。 これは2003年3月決算 に係る財務諸表の監査から適用されるもので, ゴーイング・コンサーンの前 提に関して重要な疑義を抱かせることがある場合にはその旨と内容, 影響な どを記すことなどの内容を含んでいる。 さらに, 第156回国会で成立した

「公認会計士法の一部を改正する法律案」 (2003年3月提出, 5月成立) は平 成16年4月1日から施行されるもので, ①公認会計士の使命, 職責の明確化,

②公認会計士等の独立性確保, ③監査法人等に対する監視, 監督体制の強化,

④公認会計士試験制度の見直し等を定めている。

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本稿では, こういったわが国の監査制度に関する一連の改正を監査人の利 潤, 監査人の努力へのインセンティブとの関係で分析していく。 監査人の利 潤は

として定義できる。 監査報酬に関する先行研究として, (1980) に 始まる監査報酬金額の決定要因を分析したもの, 監査報酬が監査人の独立性, 監査の質等に及ぼす影響を分析したものなど多数存在するが, わが国では監 査契約に関する公表データがなく, アンケートへの回答という形で収集した データ等を示した加藤他 (2003) などがあるにすぎない。 監査報酬, 監査人 の利潤が監査の質に影響するか否かの実証分析はデータの制約上, 今後の研 究課題とせざるを得ないが, 報酬が限られているもとでは監査人の利潤確保 の観点から監査等に必要な情報の収集可能量は制限され, 監査の質が下落す る可能性がある。 この意味で各種の改正を監査人の利潤との関係で考えてい くことは重要であると思われる。 第2節は公認会計士法の改正の具体的内容 と監査人の利潤との関係に関する分析であり, 第3節は監査基準改訂により 高まった監査人の責任をとりあげ, 監査人の努力水準との関係や監査人の利 潤との関係について分析する。 第4節は結論である。

なお, 本稿では監査として利害関係者への影響の大きさに鑑み, 特に商法 特例法監査や証券取引法監査を念頭に置く。 また, このような監査は加藤他 (2003) によればアンケートへの回答から大手監査法人 (いわゆるビッグ4) が8割を請け負い, 15%を中小監査法人, 残りを個人事務所などが請け負っ ていることから, 監査人として特に大手監査法人を念頭に置くものとする。

利潤=監査業務や非監査業務による報酬−それらの業務に関するコスト等

加藤他 (2003) 153 154

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2. 公認会計士法の改正

2003年5月に成立した 「公認会計士法の一部を改正する法律案」 は監査人 の独立性確保のため, 監査証明業務とコンサルティングなどの非監査証明業 務の同時提供を禁止すること, 監査関与社員等の原則7年での交替制を導入 することを定めた。 監査法人等に対する監視, 監督体制の強化としては監査 法人の内部体制や審査体制について日本公認会計士教会が指導, 監督する旨 定め, それを行政によりモニターし, 監査法人等の業務運営の適正性を監視 するための立入検査権の導入を定めた。 公認会計士試験制度の見直しとして は一定水準の能力をもった監査と会計の専門家を多数確保するべく, 試験体 系を簡素化し, 一定条件を満たす実務経験者が資格を得やすいようにするこ とを定めた。 以下では, 各項目について監査人の利潤との関係で検討して いく。

2.1 監査人の独立性確保

まず, 監査業務と非監査業務の併業禁止であるが, 大手監査法人の収入源 はこれまで開示されてこなかった。 しかし, 米国における大手監査法人の 収入源をみると非監査業務が7割近くを占めており, わが国でも前述の加藤 他 (2003) によれば5割近くとなっており, 特に会計制度の変更が相次ぐも とでその割合は高まってきている。 このような非監査業務からの報酬の高さ により監査の判断を左右されないよう併業禁止が定められたわけであるが, これは監査の質を高めることになるのだろうか。

わが国の上場企業1社あたりの監査報酬は約2000万円で米国に比べて非常

連結計算書類などに関する変更を盛り込んだ平成14年改正商法により平成15年

4月1日から営業報告書に監査人に対する報酬額と非監査報酬額とを合わせて

開示することになった。

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に小さいといわれている。 改正により標準監査報酬制度が撤廃され監査報酬 は自由化されることになったが, 監査報酬が増加するかは不明である。 会計 制度の変更により監査業務が拡大し監査に要する情報収集コスト等が増加し ているにもかかわらず監査報酬が増加せず, さらに収入の大きな割合を占め る非監査業務の併業が禁止されれば, 監査人の利潤は減少する。 1つの会社 に対して, 監査業務と非監査業務の両方を提供することは当該会社に関する 情報収集コストを小さくできるが, 併業禁止によりそのメリットが失われる ことにもなる。 法定監査がある程度の規模の監査法人により組織的に行なわ れることを考えると, 監査法人の人件費などは大きな固定費的な性格を持っ ている。 利潤確保のためには, 可変的な情報収集コスト等を下げざるを得ず, 監査に必要な情報が十分に収集できない結果, 監査の質が低下する可能性 が高まる。

次に, 監査人の交替制導入であるが, 従来, 日本では企業の監査を特定の 監査人が長年にわたって行なっているケースが多かった。 監査は対象企業に ついての深い理解, 時系列の比較による分析等を要求する。 特定の監査人が 長年監査に従事し知識が蓄積されることで情報収集コストが小さくなり, 時 系列の比較を容易にさせることで結果として監査の質を高めることができる。

一方で, 当該監査人の行動がモニターしにくく, 監査がいわゆる 「馴れ合い」

となり弊害がもたらされることがあったことから, 今回の改正により原則7 年での交替が定められたが, この交替制導入により, 知識の蓄積による監査 費用の低下という便益が低下することが予想される。 監査法人内での交替で あればその程度は相対的に小さいが, 監査法人自体の変更になるとその影響 は相対的に大きい。 また, 監査法人自体の変更は理論的には監査契約の維

監査の質とは監査人が監査により企業の財務諸表を適正に評価している程度を いう。

監査報酬の値引きがないことを実証する研究も存在する。

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持または獲得のための監査報酬値引きを促す。 このように, 監査人の交替は 監査法人の収入を減少させ, 費用を増加させることで利潤を減少させる結果, 監査の質の低下をもたらすという可能性がある。 交替による馴れ合い防止に よる厚生の増加と監査の質低下による厚生の減少の大小を比較し, 交替の年 数を適正な水準に定めることが必要となるであろう。

2.2 監査法人への監視体制の強化

監査法人は内部体制や審査体制の充実を図るために, 従来以上に人員を割 いて対応せざるをえず, 当局の立入検査にあたっては資料作成等も必要となっ てくる。 監査法人の雇用者数が利潤確保のためさほど増加しないもとでは, 監査等に専念できる人員が限られることになり, その結果, 監査の質が低下 する恐れもある。

2.3 試験制度の見直し

会計士法改正により公認会計士の増員が図られている。 現在わが国には1 万5千人の会計士がいるが, 金融庁は5万人へと増加させる方針を打ち出し, 会計大学院設置などに好意的なようである。 2003年秋に発表された会計士2 次試験合格者数は1200名あまりと史上最高であった。 現在, 試験合格者 (会 計士補) の大半は大手監査法人に就職して監査業務等の実務を経験したうえ で3次試験を受験し, 会計士となる。 しかし, 監査法人にとって監査報酬等 が上方に硬直的であるもとでは利潤確保のために採用を抑制せざるを得ず, その結果, 就職先が決まらぬ合格者が2割弱ほどとなっている。 5万人とい う水準が適正水準であるかの検討もないままに, アメリカに33万人の会計士 がいることを理由に日本での会計士増員を唱えているように見受けられるが, 米国の場合, 会計士の業務範囲は広く, 必要とされる場面も多い。 各国の事 情, 制度の違いを考慮せずに単純に監査人の増加を計画することは以下の2

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つの意味で問題である。

監査市場において監査需要曲線は法定監査等の性格から垂直に近い形状で あると考えられる。 一方, 監査供給曲線は緩やかな右上がりの形状とするも とで, 試験制度の変更による監査人の増加は図1に示すように供給曲線を右 方にシフトさせ, 監査報酬が大幅に低下し, 結果として監査の質が落ちる可 能性がある。 監査報酬の自由化は報酬低下に拍車をかけるかもしれない。 監 査の質を維持するべく監査報酬に関して最低価格規制を実施するようなケー スでは図2にあるように監査人の超過供給を発生させ, 監査の割り当てが問 題となる。

3. 監査基準の改訂

2002年1月の 「監査基準」 の改訂は2003年3月決算に係る財務諸表の監査 から適用されるもので, 監査の目的の明示, リスクアプローチに沿った実施 基準の整理, 監査意見形成の判断基準の明示, ゴーイング・コンサーンの前 提に関して重要な疑義を抱かせることがある場合にはその旨と内容, 影響な どを記すことなどの内容を含んでいる

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図1 監査市場の需給曲線と 監査報酬の低下

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図2 監査人の超過供給と割当

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これにより, このようなリスク情報の開示がない企業が破綻したとき監査 人は株主から訴えられる可能性が高まった。 破綻したエンロン社の監査を請 け負っていた監査法人アンダーセンは責任を問われ, 廃業を余儀なくされて いる。 このような監査人の責任の高まりは2つの意味で監査の質を左右する ものと考えられる。 ひとつは監査人の監査へのインセンティブに関するもの であり, この場合, いかに監査人の監査へのインセンティブを高め, 良質な 監査を提供させていくかが問題となる。 もうひとつは監査に関する情報収集 量に関するものである。 責任の高まりに応じて情報収集量を拡大せざるをえ ず, その結果監査人の利潤が低下することによる影響を考慮しなければなら ない。

以下では, まず, 監査人が企業の財務諸表について正しく監査意見を表明 している場合 (良質な監査) と意見表明が正しくない場合 (悪質な監査) の ペナルティ等の大きさをいかに決めれば監査人の監査努力を高めることがで きるのか検討する。 次に, 意見表明が正しくない場合 (悪質な監査) のペナ ルティの大きさが情報収集量にいかなる影響を与えるか検討する。

3.1 監査人の責任と監査へのインセンティブ

監査の品質は単純化のため良質 ( ) と悪質 ( ) の2つを仮定する。 監 査業務を行なうために, 監査人は過去の粉飾事例の研究, 業界や市場動向な どの情報収集, 幅広い部署からの情報収集などを行なうがその努力水準 ( ) に違いがある。 ここでは高い努力 ( ) と低い努力 ( ) の2つを仮定する。

それぞれの努力に関するコストは , であり, が成立している。

監査人は監査の品質によるコスト も負担し, が成立し ている。 例えば監査の質が悪い場合のペナルティが である。 監査人の努

これに伴って 「中間監査基準の改訂に関する意見書」 が2002年12月に出された。

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力水準が高くても低くても監査対象の企業の実態を正しく表す (高品質の監 査サービスを提供する) ことが可能であるが, その確率は努力水準が高いと き , 低いとき であり, とする。 表1には監査人の努力水準 と監査の質の組み合わせとその確率が示されている。

監査人は危険中立的であり, 期待利潤の最大化を目的としている。 監査人 の利潤は

で表わされるものとする。 は監査やその他の業務による報酬であり, 一 定とする。 は監査人の努力水準で , の値をとる。 は監査 の品質によるコストである。 努力水準が高いときと低いときの期待利潤はそ れぞれ

で表わされる。 監査人が良質な監査を提供する確率が高くなるように高い努 力水準を選択させるための誘因条件は より,

となる。 監査人が監査人としてではなく他の仕事に従事することで得られる 金額を とすると, 参加条件は より

表1 監査人の努力水準と監査の質

監査の質 監査の質 努力水準

努力水準

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となる。 , より, である。 ここで,

が満たされているものとする。

, , より, 監査人に高い努力水準を選択させるためには監査 の品質によるコスト , を図3の斜線で示す範囲に定めなければならな い。 図3より, 監査人が良質な監査を提供する場合には監査人に褒賞を与え る可能性 ( ), 良質な監査を提供しているにもかかわらず悪質な監査 のペナルティの大きさとの関係で となる可能性が示されている。

監査は限られた時間で効率的に行なわなければならないため, 監査人が高 い努力水準を選択していても監査対象の企業の実態を正しく表わすことがで きない (質の悪い監査) 可能性がある ( )。 良質な監査への褒賞がな

図3 の範囲

c

g

w H R p - -

0 c

b

1 2 H L

p

-

-

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いもとで監査人の責任を重くみて過度なペナルティを課する ( を大きく する) と監査人に監査への参加意欲を失わせ監査が提供されなくなる可能性 があることに注意しながらペナルティの大きさを決定しなければならない。

3.2 監査人の責任と情報収集量の関係

3 1では監査人の責任を監査人のインセンティブとの関係で分析したが, 次に情報収集量との関係を考える。 監査人は監査にあたり種々の情報を入手 するが, 入手した情報が監査に必要でないこともあるし, 必要な情報を入手 していないこともある。 入手した情報が必要でない場合 (以下①とする) の コストは情報入手コスト である。 これに対して必要な情報を監査人が入 手しない場合 (以下②とする), そのコスト は情報を入手していればか からなかったであろう損失であり, 結果的に良質でない監査を提供すること によるペナルティと考えられ, 監査人の責任が高まるほど大きくなる。 情報 必要量を , 情報入手量を とすると, ①は の状態であり, その発生 確 率 と な る 。 ② の 発 生 確 率 は の と き な の で となる。 これより①における期待コストは , ②における期待コス トは となる。 情報を追加的に入手するか否かは2つの期待コス トの大小関係によって決まる。 例えば, ①の期待コストが②の期待コストを 上回るならば情報を入手しないほうが好ましいことになる。 2つの期待コス トが等しいときこれ以上は情報を入手しなくてもよい限界の状態になり, 最 適情報入手量が決まる。 即ち, が決まった値をとるもとで

を満たすように最適情報入手量 が決定される。 監査人の責任が 高まるとき, 即ち が増加するとき が増加するので は増加す ることになる。 一般に, 監査が行なわれてから監査人の責任が実際に問われ るまでは時間がかかり, その間, 監査人の会計上の利潤にペナルティの分は

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含まれないことから, 最適情報入手量の増大は監査に伴う費用を増大させ監 査人の利潤を減少させることになり, 監査人は一定水準の利潤が確保できず に, 監査市場から退出する可能性がある。 監査の提供が社会的に望ましいな らばペナルティの大きさを適正な水準に定めなければならない。

4. 結論

わが国では監査への関心の高まりとともに監査基準や公認会計士法などが 改正されているが, その改正の効果を深く検討することなくまず制度の確立 がありきの感がある。 本稿では, 各種の改正ポイントについて監査人の利潤 やインセンティブとの関係で分析し, その効果を検討している。

第2節では, 公認会計士法の改正が監査人の利潤に与える影響を検討して いる。 監査人の独立性確保のために定められた監査業務と非監査業務の併業 禁止は監査人の収入を低下させ, 交替制の導入は監査報酬の値引き競争によ る収入の低下, 蓄積知識の譲渡の困難さによる費用面での増加という形で, 監査人の利潤を減少させる。 その結果, 監査に必要な情報等を十分に収集す ることができず, 監査の質の低下をもたらす可能性があることを示した。 監 査法人への監視体制の強化も同様である。 また, 監査人の増加は監査報酬の 低下, 監査市場における超過供給の発生と割当の問題をもたらす可能性があ ることを示している。

第3節では, 監査基準改訂による監査人の責任の高まりについて3 1で監 査人のインセンティブとの関係を, 3 2で最適情報入手量との関係を分析し た。 3 1では監査対象の企業の実態を正しく表わすことができない場合のペ ナルティの大きさに限度があること, 企業の実態を正しく表わすことができ た場合に報奨金を与えてもよい可能性などを示している。 また, 3 2では監 査人の責任が高まるほど情報収集量は増加し, 監査人の利潤が低下し, 監査

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が提供されない可能性を指摘し, 適正な水準のペナルティの決定を示唆して いる。

わが国では監査契約に関する公表データがなかったため, 2節における監 査人の利潤の減少と監査の質の低下との関係を実証していない。 しかし, 平 成14年改正商法により平成15年4月1日から営業報告書に監査人に対する報 酬額と非監査報酬額とを併せて開示することになったため, データの蓄積を 待って監査報酬と監査の質の関係についての分析を試みたい。 また, 自由化 された監査報酬の決定要因等の分析も今後行なうことにしたい。

参考文献

(1997) (1980)

18 1 161 190 加藤恭彦編著(2003), 監査のコスト・パフォーマンス 同文舘 齊藤静樹 (1988), 企業会計 東京大学出版会

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3月号 18 23

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