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1  ヒトの画像記憶を用いた認証システムの提案

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Academic year: 2021

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Science & Technology Trends March 2006 3

  ライフサイエンス分野  TOPICS Life Science

 生物系の情報処理の原理を参考として、 新たな情報システムの設計構想の構築を趣旨として、

2006 年 1 月大阪で、Bio‐inspired Advanced Information Technology 国際会議が開催された。

 人は、すでに意味を了解し記憶している画像は、ある程度劣化させた画像からでも容易に想起し識別で きる。本会議では、この特性を利用した認証システムに関する研究が発表された。 これは、個人の記憶 している元画像を認証画像として登録し、複数の劣化画像から、認証画像の劣化画像を選択する方法で、

記号列を暗記するような現在の認証方式に比べて記憶負荷が軽減され、元画像自体を利用する方法より も覗き見攻撃に対する脆弱性が低下する。今後、画像の提示手順や効率的な表示機器などとも合わせて実 用可能性が検討される。

トピックス 1

 ヒトの画像記憶を用いた認証システムの提案

 2006 年1月に大阪で、Bio‐inspired Advanced  Information Technology に関する国際学術会議が 開かれた。開催趣旨は、生物系の情報処理の原理 を抽出し、これを参考に、新たな情報システムの 設計構想を築くことである。生物のように、柔軟 な適応力があり、自己組織化・自己複製・自己修 復などが可能で、エネルギー負荷の少ない情報シ ステムについての研究・開発の成果が発表された。

 UCLA の LIAO 博士による基調講演では、暗号 学の Hash 関数の例を引用して、生体の部分ごとの 分析的な記述を蓄積し、それを総和する方法では、

生体そのものの目的や原理には到達できないため、

計算理論を用いて、生体系のモデルを構築する方 法の利点が主張された。

 原田等は、「劣化画像から元画像は再構築が困難 であるが、元画像の意味を理解し、記憶している 人にとっては元画像を認識し易い」という原理を 利用して、情報システム利用者の認証技術につい て発表した。具体的には、利用者と他者の、画像 識別能力の差異化のため、適切な画像変換方法の 研究を開発している。

 現在、情報システムの利用者認証は、文字や数 字などの記号列が汎用されている。漏洩防止のた め、同一の認証を多種のシステムに使いまわさな い、定期的に変更する、意味のある記号列を用い ない、書き留めない、などの要請がある。多くの 人にとって、意味のない記号列を複数暗記する負 荷の大きい事が問題となっている。

 このため認証情報の記憶負荷を軽減する方法が 模索されており、その一つとして、人が得意とす る視覚認知能力を利用した、画像認証方式が提案 された。複数の画像から認証画像を選択する方法

は、記憶負荷を低減する点では、効果が認められ るが、利用時の覗き見攻撃に対する脆弱さの解消 が課題となっている。このため、利用者と覗き見 者の間で、識別能力に有意な差のある、方法が提 案された。

 生物は、対象の線・角・方向・彩度・色など個々 の感覚入力から、全体像を再構成し、対象を識別 する認知経路(ボトム・アップ経路)と平行して、

意味や記憶をもとに、抽出すべき視覚情報を選択 的に処理する認知経路(トップ・ダウン経路)が 働いている。このため、見知った対象の劣化画像は、

細部を記憶していなくても、容易かつ即座に元画 像を想起し判別できる。一方、元の画像を知らな い人間や、機械的な画像再構築方法では、劣化画 像からもとの画像を再構築することは困難である。

 実験室で 利用者 役が、4枚の認証画像を、

漸次9者択一で選択した直後に、実験手順を全て 承知の 覗き見 役の他者が、認証に成功する確 率が測定される。原画像を用いて同様の実験をし た場合、同じ条件での、100%の覗き見成功率が 予測されるのに対し、劣化画像の場合の成功率は 26%である。今後、画像の提示手順や、効率的な 表示デバイスなどと合わせて、実用可能性が検討 される。

参考: 原田篤史、漁田武雄、水野忠則、&西垣正勝  A User Authentication System Using Schema  of Visual Memory 、 BioADIT 2006、要旨集 338‐345(2006)/「画像記憶のスキーマを利用したユーザ認証システム」情報処理学 会論文誌、Vol. 46、No.8、1997‐2013(2005)

劣化画像の例

元画像は表紙左端に掲載

参照

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