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ステロイド治療により高度房室ブロックが改善した

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Academic year: 2021

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ステロイド治療により高度房室ブロックが改善した 心臓サルコイドーシスの 1 例

小森山 弘和 Hirokazu KOMORIYAMA1) 小野 太祐 Taisuke ONO1)

白川 亮介 Ryosuke SHIRAKAWA2) 徳原 教 Satoshi TOKUHARA1) 齋藤 高彦 Takahiko SAITO1)

1) 北見赤十字病院 循環器内科

Department of Cardiology, Kitami Red Cross Hospital

2) 北海道大学 大学院医学研究科 循環病態内科学

Cardiovascular Medicine, Graduate School of Medicine, Hokkaido University

要旨:【症例】60歳 女性【主訴】労作時息切れ【現病歴】201110月上旬より労作時息切れが出現し、

安静にて改善していた。近医を受診したところ高度房室ブロックを認めたため当科紹介となり、精査加 療目的に1028日に当科入院となった。

【経過】皮膚サルコイドーシスの既往があり、心臓サルコイドーシスの主徴候1項目(高度房室ブロック) と副徴候2項目(心電図での右脚ブロック、造影MRIにおける心筋の遅延造影)を満たし、心臓サルコイ ドーシスと診断とした。117日に恒久的ペースメーカー植え込みを行い、12月14日にプレドニゾロ ンを30mgより内服開始し、4週間毎に5mgずつ漸減を行った。2012年36日のペースメーカーチ ェックでは房室ブロックは改善していた。

【考察】本症例は高度房室ブロックで、症状としては労作時息切れといった程度のものであり、ステロ イド治療の先行によりペースメーカー植え込みを回避できた可能性があった。ただし、ステロイドが必 ず奏功するという保証はなく、ステロイドによりペースメーカー植え込み時の感染のリスクが高まるな どの懸念もある。また、本症例は皮膚サルコイドーシスの既往があり、比較的早期に診断し得たが、心 臓サルコイドーシスの診断に苦慮する場合も多い。今後同様の症例があった場合、ペースメーカーを先 行させるかどうか、さらなる検討が必要である。

キーワード:房室ブロック 心臓サルコイドーシス

Ⅰ.序 論

房室ブロックは比較的高齢者に多くみられる 徐脈性不整脈で、その治療には恒久的ペースメー カー植え込みが必要となることが多い。加齢性変 化によるものの他、さまざまな原因により起こり うるが、心臓サルコイドーシスを鑑別に挙げる必 要がある。サルコイドーシスは全身性の非乾酪性 肉芽腫性疾患であり一般的に予後良好であるが、

心病変を合併した場合は予後不良と考えられて

いる。心病変は刺激伝導系の障害、心室性不整脈、

左室収縮不全から不整脈死、心不全死を引き起こ すが、治療として副腎皮質ステロイド薬の有効性 が示されてきている1)。今回我々は心臓サルコイ ドーシスによる房室ブロックがペースメーカー 植込み後に行ったステロイド治療により改善し た1例を経験したため報告する。

Ⅱ.症 例

(2)

患者:60歳 女性 主訴:労作時息切れ

既往歴:36 歳より高血圧症、脂質異常症にて近 医通院 45歳 子宮全摘術 54歳 皮膚サルコイ ドーシス

家族歴:特記事項なし

生活歴:喫煙習慣なし 機会飲酒

冠危険因子:高血圧症(+) 脂質異常症(+) 糖尿 病(-) 喫煙(-)

現病歴:201110月上旬より労作時息切れが出 現し、安静にて改善していた。近医を受診したと ころ高度房室ブロックを認めたため当科紹介と なり、精査加療目的に 1028日に当科入院と なった。

入 院 時 現 症 : 身 長 147cm 体 重 54kg 血 圧 130/56mmHg 心拍数40bpm・整 眼瞼結膜に貧 血なし 眼球結膜に黄疸なし 聴診上心雑音なし、

ラ音なし 顔面・下腿に結節上丘状疹散見 入院時検査所見:

血液生化学・尿検査 WBC 4.53×103/μL, Hb 12.8g/dL, Plt 301×103/μL, AST 37IU/L, ALT 55IU/L, ALP 288IU/L, ChE 383IU/L, LD 224IU/L, CK 65IU/L, γ-GTP 98IU/L, T-Bill 1.0mg/dL, AMY 92IU/L, T-Chol 185mg/dL, TG 222mg/dL, HDL-C 41mg/dL, LDL-C 100mg/dL, TP 7.2g/dL, Alb 3.8g/dL, BUN 11.1mg/dL, Cre 0.63mg/dL, UA 6.1mg/dL, Na 141mEq/L, K 4.0mEq/L, Cl 107mEq/L, Ca 9.0mg/dL, CRP 0.26mg/dL, HbA1c(JDS) 5.7%, fT3 2.51pg/mL, fT4 1.03ng/dL, TSH 1.400μIU/mL, ACE 15.5U/L, 尿所見 異常なし

12誘導心電図 (図1) HR42/分 高度房室ブロッ ク 完全右脚ブロック Ⅲ,aVF誘導で陰性T波 胸部X線写真 CTR:58.5% 肺野:清 両側肺門リ ンパ節腫脹は明らかでない

1 入院時心電図

胸部単純CT (図2 左) 前縦隔・傍大動脈リンパ

節腫脹を認める

経胸壁心エコー 左室局所壁運動低下を認めな い 心室中隔基部の菲薄化を認めない

冠動脈造影検査 有意狭窄を認めない

Gaシンチグラフィ (図3) 両側縦隔リンパ節へ の集積亢進を認める 心筋に異常集積なし

心臓造影 MRI (図 4) 左室後壁に索状の遅延造

影認める

入院後経過:皮膚サルコイドーシスの既往があり、

心臓サルコイドーシスの主徴候1 項目(高度房室 ブロック)と副徴候2項目(心電図での右脚ブロッ ク、造影MRIにおける心筋の遅延造影)を満たし、

心臓サルコイドーシスと診断した。労作時息切れ の自覚症状を伴う高度房室ブロックに対して、117日に恒久的ペースメーカー植え込みを行い、

経過良好にて1115 日に退院となった。図 5 に植え込み後の心電図を示す。植込み後は心房、

(3)

心室ペーシング波形となっていた。外来にて 1214日よりプレドニゾロン30mgの内服を開始 し、4週間毎に5mgずつ漸減を行った。2012年 36日の心電図では自己の房室伝導が回復した ことにより自己QRS波形となっており、ペーシ

ングは抑制されていた(図6)。またCTではリン パ節の縮小を認めていた(図2 右)。その後もプレ ドニゾロンを 5mg まで漸減し継続しており、

201492日時点で洞調律を維持し、心エコ ー所見も著変なく心機能低下を認めていない。

2 胸部単純CT (左:入院時 右:ステロイド治療開始5ヵ月後)

3 Gaシンチグラフィ 図4 心臓造影MRI

5 ペースメーカー植え込み後の心電図

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6 20123月の心電図

Ⅲ.考 察

本症例は自覚症状から 201110月上旬発症 と思われる高度房室ブロックであった。ペースメ ーカー植え込み後にステロイド治療を開始し 3 ヵ月後(発症5ヵ月後)には高度房室ブロックは改 善していた。

心臓サルコイドーシスの診断例で、房室ブロッ クを合併している心機能正常例(EF≧50%)での ステロイド投与群と非投与群の比較試験 2)では

投与群の 57%に房室ブロックの改善を認めた一

方、非投与群ではEFの著明な低下を認めた。心 臓サルコイドーシスのステロイド治療への反応 についてはこれまで大規模研究では明らかにさ れていないが、ステロイドにより房室ブロックが 改善した報告は本邦でも数例あり、改善までの期 間が明記されていたものでは約 2 ヵ月から 2 年 と一定ではなかった 3)4)。ステロイド内服が無効 であったがステロイドパルス療法により房室ブ ロックが改善した報告もある5)。房室ブロックが 自然消失した報告もある6)が、左室壁運動低下や 心室性不整脈が自然寛解するかは不明である。心 不全進行例では、ステロイドが線維化・瘤化を促 進することもあるため、心病変が進む前、特に心 不全を発症する前にステロイドを開始する必要 がある7)。また、心病変の合併はいつでも起こり うるため、サルコイドーシスの診断で無治療経過 観察中も、定期的に心電図、心エコーなどを継続 する必要がある8)

本症例は高度房室ブロックで、症状としては労作 時息切れといった程度のものであり、ステロイド 治療の先行によりペースメーカー植え込みを回 避できた可能性があった。ただし、ステロイドが 必ず奏功するという保証はなく、ステロイドによ りペースメーカー植え込み時の感染のリスクが 高まるなどの懸念もある。また、本症例は皮膚サ ルコイドーシスの既往があり、比較的早期に診断 し得たが、心臓サルコイドーシスの診断に苦慮す る場合も多い。今後同様の症例があった場合、ペ ースメーカーを先行させるかどうか、さらなる検 討が必要である。

文 献

1) 川名正敏:循環器病学 西村書店 2010 1018-1019

2) Kato Y, Morimoto S et al: Efficacy of corticosteroids in sarcoidosis presenting with atrioventricular block. Sarcoidosis Vasc Diffuse Lung Dis 2003; 20: 133-137.

3) Kida Y, Tomioka H, et al: A Young Male Cardiac Sarcoidosis Case with Complete Atrioventricular Block Which was Improved by Corticosteroid Therapy. JJSOG 2006;

26: 39-44.

4) 中川貴文, 日浅芳一ら ステロイド投与によ り永久ペースメーカー植え込みが回避された アダムス・ストークス発作を伴った心臓サルコ

(5)

イドーシスの1例. 心臓 Vol.42 No.4 2010 5) 宮良肇, 森下宗彦ら ステロイドパルス療法

にて完全房室ブロックが消失したサルコイド ーシスの1例.

6) 土田哲人, 長谷川徹ら ペースメーカー植込 み数年後に完全房室ブロックの自然改善を認 めた心臓サルコイドーシスの2症例. 日サ会誌 2010, 30 (1)

7) Yazaki Y, Isobe M et al: Prognostic determinants of long-term survival in Japanese patients with cardiac sarcoidosis treated with prednisone. Am. J. Cardiol. Nov 2001; 88(9); 1006-10

8) 蛯原賢司, 杉本峯晴ら 胸部検診発見7年後に 心病変を発症したサルコイドーシスの一例 日サ会誌 2000; 20: 39-43

参照

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