竹本泰一郎、永田 耕司
1
節 保健 ・医療 ・福祉のニーズ
(1)
長寿高齢化社会
日本の平均寿命 は
1998年で男
77.2歳、女
84.0歳 と世界で最 も長い。同時 に多 産多死か ら多産少死 をへて少産少死 にいた る人 口転換 によって人 口の高齢化 も 急速 に進展 し
、1999年の
65歳以上の老年人 口は
2000万人 を超 え総人 口の
16.7%を占めるにいたっている。人 口転換 は先進工業国で共通 してみ られ る経験法則 であるが、その速度が極 めて急速であった ことが 日本の特徴である。特 に出生 率の低下 は
1947‑49年のベ ビーブームでの人 口千対
34以後急速 に低下 し、わず か
20年後 の
1967年 には人 口千対
19.4まで減少 した。現在 で も出生率 は人 口千対
9. 4と低 く
、2020年 には死亡率 よ り低 くな り、日本 の総人 口は減少 に向か うと推 定 されている
。こうした平均寿命の延長 と少子化 によって老年人 口割合 は今後 もます ます上昇 し
2020年 に
25%を超 え
2050年 には
32%となると予想 されている ( 図1 )
。老年人 口が増加す る反面、生産年齢人 口 ( 1 5 ‑64 歳) は減少す るので、
老年の従属人 口指数 ( 老年人 口/ 生産年齢人 口)は
1999年の
24.4か ら
2050年 には
59.1へ と急上昇 してい く
。急増 してい く老年人 口を減少 しつつある生産年齢人
口が どの ように扶養 してい くかが
21世紀 における日本 の大 きな課題 である
。人 口の高齢化の進展速度 は地域 によって大 き く異なる
。地域 の人 口高齢化 は
出生率 と死亡率だけでな く、社会変動すなわち人 口の流入 と流出によって大 き
な影響 を受 ける
。若年人 口が流出す る農村部や島喚地域 では高齢化 の進展が急
速であ り、人 口が流入す る都市部では高齢化の進展 は緩やかである
。都道府県
別 にみれば老年人 口割合が最 も高いのは、島根県の
23.8%であ り最 も低 いのは
埼玉県の
11.5%である
。全県の老年人 口割合が
17.7% (1995年)である長崎県
で市町村別 に比較 して も、炭坑 の閉山によって人 口流出が大 きかった旧炭坑島
( 百万人)
1884190010 20 304050 6070 809020001020 304050 80 7080 90100
I(国立社会保障、人 口問題研究所編二人 口の動態2000)
蔓′′済‑
四 そ.の他の世帯 固 三世代世帯
□ 核家族世帯 国 単独世帯 ''
図・
2.高齢者の居住世帯類型の変化‑32‑
晩では老年人 口割合が
30%を超 え、人 口が流入す る都市部で は
14%代である
。また、同 じ都市の内部 で もいわゆる ドーナツ現象 と呼 ばれ る人 口流出によって 都市の中心部 に単独世帯割合や老年人 口割合が高い地 区が出現する。
(2)
世帯構成 とライ フサイクルの変化
①世帯構成 の変化 日本 にお ける世帯構成が核世帯や単独世帯の割合が増加 し、世帯人数の減少が進 んでいることは衆知の ことである。特 に
65歳以上の高 齢者の居住世帯では、最近 の25年間に 3世代世帯の割合が半減 し、代わって単 独世帯や夫婦 のみ世帯の割合が急増 してい る( 図
2)。人 口高齢化 と同 じように 地域差が大 き く、若年者が流出 し高齢化が進む地域では夫婦 のみ世帯や単独世 帯 の割合が高 い。同居家族 のいない単独世帯 は云 うまで もな く、夫婦 のみ世帯 ・ 核世帯で も老人 に対 す る扶養力や介護力 は低下 しているので家族外か らの、社 会的サポー トが不可欠である。
②家族 のライフサイクル 現在 の法律で は家族 は男女 の結婚 によって始 まり、
双方の死亡 によって終わ ると規定 されている
。現在の人 口動態上 の出来事の発 生する年齢か ら家族 のライフステージをみたのが図 3である
。現在 の平均初婚 年齢 は男
28.7歳、女
26.8歳、希望児数
2.3か らみてほ とん どの夫婦が妻の
35歳 までに
1児或 いは
2児 を産 み終 える
。子供 と同居す る期間 は末子が
18歳で大学 進学 ・就職 のために親元 を去れ ば約
20年間、大学 を卒業 して結婚或 いは就職 ま
出 結 第 第 第 第 第 第 夫 夫 妻
1 2 1 2 1 2
莱 子 子 子 子 子 子
大 大 走 死 死
辛 婚 畢 生 準 生 就 学 就 学 学 卒 学
卒年 亡 亡 年齢 夫 2 8 30 3 2 36 38 52 5 4 60 76
秦 2 6 2 7 3 0 34 36 5 0 5 2 5 8 7 4 8 2
周 期 薪 婚 期 l l 育児 期 ー l 教 育期 向老期 r l 隠 遁 期 1 孤 老期 1 (2 年 )
(9年 ) ( 1 8 年 ) ( 22 年 ) (8 年 )
図
3.家族のライフサイクル
で同居す るとして
22‑25年程度である.核世帯化が進み子供 と, の同居すること は少な く卑っているので多 くの場合、夫
53‑55歳、妻
50‑53歳の ころか ら夫婦 のみ世帯 となる。結婚年齢 と平均寿命の差異 によって、夫が平均寿命
77歳で死 亡する時 に妻 は
75歳であ り女の平均寿命
84歳で死亡するまで単独世帯で
1人暮 らしを約
10年間することになる
。人 口高齢化社会 における高齢者の多 くが身体 的 ・ ∵ 社会的にも脆弱である寡婦であることに留意が必要である。更 に、現代で は結婚 と出産や育児 は必ず しも連動 した出来事ではない。世帯構成の変化 とと
もに親の扶養や介護 に関す る家族機能 も変化 してきている。 日本の伝統的社会 が変化す ることが社会的機能 としての保健 ・医療 ・福祉へのニーズを大 き(・ p し ている一因 と云 えよう
.( 3) 疾病構造の変化 と保健医療積和 ニーズ 日本の疾病流行 パ ターンは明治大正 時代では胃腸炎や肺炎など急性感染症 が主要死因であ り・ 、大正後期か ら昭和 にか けては結核 など慢性感染症が流行 した.革二次大戦後 は感染症が コン ト ロ丁ルされ脳血管疾患、心疾患、零性 新生称 ( 痛)な ど非感染性の疾患へ と 変遷 して きている。現在では死因の第
1
位 は癌、第
2位心疾患、第
3位脳血 管疾患である。 また、悪性新生物 のな かで も胃癌が減少 し肺癌が増 え、脳血 管疾患で も壮年期の脳 出血が減 り、高 齢期 の脳梗塞が増 えるなど疾患の高齢
自 然 \史
サービスの種類
健康( H c d t h )
Il ̲ 健康増進
発生準備状態(
Hypersusuc e pt a bi ht y )
Il 特異的予防
前臨床段階( p r
echicdSt a s e ) iIl 早期診断・ 早期治療
準 路 床 段 階(sutN:JinicdStzLge)
t
臨床診断
路床段階 ( c b i c d S t a g e )
l 障書防止 障害発生( D姐 t y St 8 g e )
1 リハビリテーション 死( ba d i )
保健サービス
図4
.慢性疾患の自然史における保健 ・ 化 とも云 うべ き現象が進んでいる。 医療 ・福祉のニーズ
加齢 による心身機能の低下 は生理的老化 として全ての人 に不可避的に生 じる。
同時 に、脳血管疾患や虚血性心疾患、糖尿病 などの成人病 ・老人病 に雁患する ことによっ て、老化 ( 病的老化)が急速 に加速化 され、医療 ・福祉へのニーズ を著 しく増大 させ る。図は成人病 ・老人病の自然史である。加齢や肥満或いは
‑34‑
長年 にわた る飲酒 ・喫煙 な どにより、病気の発生の リスクが高 まる疾病発生準 備状態か ら、軽 い症状が出没す る前臨床段階 をへて生活改善や薬物治療 の必要 な準臨床段階や臨床段階に進行す る
。更 に、脳卒 中による麻痔や糖尿病 による 失明、骨粗餐症 による腰痛 な どの生活行動の障害、すなわち
ADL (Abilityof DailyLiving)の低下 を起 こす こともある。心身機能の障害 には医学的 ・社会的
な リハ ビリテー ションによって社会復帰が図 られ る
。この自然史 にみるように、
高齢者の医療で は、機能障害の発生や重篤化防止 と生活機能の障害 の回復 と維 持向上 に対す る福祉サー ビス との連携が不可欠である
。更 に、 こうした病的老 化の発生や生理的老化 の進展 を防止す る保健対策が必要である。
(4)
健康寿命
平成
10年 の国民生活基礎調査 による と
6歳以上 の対 象者 ( 総数)の うち、
30.5%
が 自覚症状 を もち
、28.5%が病院 ・診療所や老人保健施設、あんま ・は りな どの施術所 に通院 している
。年齢別 にみ ると加齢 にしたが って有訴者 ・通 院者 とも高率 とな り
65歳以上の有訴者割合 は男
49.8%、女
55.4%である
。総数 では通院
32%、入院
1%、
1ヶ月以上 の就床 も
2%にす ぎないが
、65歳以上で は
64%が通 院 し、入 院
3%、
1ケ月以上 の就床
4%と高率 になってい る ( 図
5)。健康状態 によって日常生活 に影響 のある者 も、総数では
8.6%に過 ぎない
(65
歳以上) 入院
3%÷
̲≡
二一
図
5.総 数 (
6歳以上 ) と
65歳 以上 高齢者 での 通 院 ・入院 ・就床 (
1ケ 月以上)の割合
( 平成
10年国民生活基礎調査)
が
65歳以上では
20.3%、
.70歳以上では
23%と高率 となる
。影響 を受 ける日常生 活行 動 として は、外 出の
11」2%が最 も多 く、次 いで仕事 と家事 が それ ぞれ
9二7%、 日常生活動作
9.20/ .となっている.平均寿命は延長 を続 けているが、高 齢者の健康状態や生活機能 は必ず しも満足出来 る状態ではない。高齢者 におい ては単な・ る生存の延長のみでな く、生活の質
(QOL;qualityoflife)を高める こ
と1 の重要性が改めて指摘 される。
2
節保健医療 システムの現状 と課題
(1)
保健 システム
( ∋ 地域保健のシステム これ まで 日 本の地域保健 は地方 自治体や保健所 に よる行政サー ビス として展開されてき た. コレラや赤痢 な ど急性感染症の流
.行が激 しかった時代では、患者の隔離 収容を主 とした社会防衛的対策が行わ れ
、三結核 な ど慢性感染症の時代や は集
1団健診 に・ よる早期発見 と早期治療 によ̲
る第
2次予防が中心であった。現代で 流行 している生活習慣病或いは成人病
ト ‑ 住居̀ :地区一 一 十 一地域十 地球一 ・ ・ . 」 図
6.人間の生活圏
老人病 と総称 される病気の特徴 は発生 原因が若年期か らの食事 ・運動や喫煙 ・飲酒 な ど生活習慣 に由来 していること が特徴である。従 うて これ らに対する予防対策では健康診断による疾病の早期 発見 ・早期治療 よ‑ りも生活習慣の改善 と健康増準のために健康教育 ・健康相談 等 による予防活動が重要である。
保健活動の圏域 は図
・6に見 るように、個人の自己ケアか ら家族、近隣地区、
市町村、都道府県へ と拡大 してい く
。地嘩保健法 によって市町村保健センター の充実が図 られ、保健所業務セあらた母子保健法 における 3歳児健康診査や栄 養指導な ど対人保健サーt f : h スの多 くが市町村事業 となった.従来、市町村業務 であった
1歳
6ヶ月児健康診査や老人保健法 による保健事業 を加 える と保健 サービスのほ とんどが市町村 レベルで行われ ることとなった。現代 における保
‑ 3■6‑
健 サー ビスの課題が個々人 のライフスタイルの改善や生活機能障害 の予防 にあ ることを考 えると、保健 サー ビス もなるべ く住民 の身近 な ところで供給 され る のが望 ましい。一方、保健医療 に関す る資源や財政基盤 には市町村間の格差が 大 きい。 また、保健行政サー ビスに対 す るニーズには地域人 口の高齢化の速度 や地理的 ・社会経済的条件 による地域差が大 きい.画一的な行政サー ビスでは な く地域特性 を生か した保健活動が必要 とされ る所以である
。これ まで地域 ・ 地 区の保健活動 として母子保健 における愛育班活動や食生活 向上のための食生 活改善活動、 メンタルヘルス としての断酒会活動等が行政主導型で行われてき
ている
。これ らを自主的な住民活動 として更 に発展 させ るためには、保健 ニー ズ と保健 サー ビスの両面で地域特性への考慮 した活動が必要であろう
。また、
従来の保健活動 の枠 を超 えた少年非行、薬物 中毒 な どの社会病理現象 に対 して も活動対象 とすべ きである といった提案 もある
。②
医療 ・福祉 との連携
保健 と医療 ・福祉 を連携 させた施設 としては老人保健法 による老人保健施設 がある
。この施設の 目的は病状が急性期 を脱 して安定状態 にあるクライア ン ト
に機能回復 による家庭復帰 を図 ることである。 そのため常勤 の医師 とともに作 業療法士
(OT)又 は理学療法士
(PT)の配置が定 め られている。なお、介護保険 法の施設 としては老人保健施設 と呼 ばれ る。
(2)
医療 システム
①
医療費保障
日本の医療 システムは国民皆保険 として全国民がなん らかの種類 の医療保険 に加入 してい ることが特徴 である
。しか し、職域保険 として政府管掌及び組合 管掌の健康保険、船員保険、共済組合 な ど多種類 の保険があ り、給付水準がそ れぞれ異 なっている。 また、地域保険 としての市町村や同業者組合等が保険者 である国民健康保険 も保険者の財政事情 によっての給付格差が存在 している。
老人保健法 による
70歳以上 の高齢者の医療費 は国及び都道府県か らの公費 と各
種社会保険か らの加入者按分 による拠出金 に財源 を求 めてお り、所得の再分配
機能 をもった社会保障的性格 を持 っている。 また、医療給付が現物支給、診療
報酬が点数制で出来高払 いであることも日本 の特徴である。 しか し、近年では
老人病床や療養型病床群では従来の出来高点数制か ら人頭割の定額制が導入 さ れている。 ,
( 参 地域医療 システム
' 医療施設 は病院 と有床或いは無床診療所に大別 される.病院 とは病床数
20以 上の施設であ り、、 有床診療所 とは
20床未満の病床 をもつ診療所であ り、無床診 療所では入院施設がない。病床の種類では一般病床 と結核病床、伝染病床
、精 神病床の区分がある.プライマ リ ・ . ケアは診療所や行われ、急性疾患の入院治 療 は主 として一般病床で行われてきた。近年では病院及び病床の機能分化が進 んでいる。老人医療 については、高齢者特に老人性疾患による入院の割合が高 い病院や病床が特例許可及び特例許可外老人病院 ・老人病床 とされている
。更 に、慢性期で症状が固定化 した患者や終末期の患者等に対 して、・ 居住性や快適 性 を重視 した療養型病床群や緩和ケア病棟群が創設 されている
。また、」般病 院及び有床診療所病床の療養型病床への転換 も進められている。特 に診療所病 床の療養型病床 としての利用は、・ 在宅医療 と組み合わせて、長年慣れ親 しんだ 地域 ・地区での長期療養が可能 となることか ら地域の老人医療の在 り方の一つ として注 目されている。 T一 方、 高度先進医療のための大学病院や国立のセンター が特定機能病院 として指定 されている。
医療の圏域 については一般 に外来 ( 通院)医療の
1次医療圏 ( プライマ リケ ア医療圏) と入院医療のための 2次医療圏、高度医療のための 3次医療圏が設 定 されている。特 に、病院病床数については、医療法によって各都道府県が設 定する地域保健医療圏 (
2次医療圏) ごとに必要数が算定され、それを越す病 床数がある地域では病院の新規開設や増床が規制 されている。 しか し、 日本の 医療制度 は 「 医師はどこで も開院できる」 という自由開業制 と 「 患者 ・ ・ クライ アン トが どこの医療機関で も自由 に受診できる」 という自由受診性 を特徴 とし てきl た.保健医療圏による病床規制や病院の機能分化力号自由開業による医師の 地域的偏在や自由受診性 による患者の特定医療施設への集中をどれだけ適正化
で きるかは今後の課題である。
( 参 保健福祉 システム との連携 ・
.高齢者の慢性退行性疾患の医療では予防のための保健サーゼス と障害に対す る福祉サービス との連携が不可欠である
。̲ ・ 図
7は医療 と福祉、保健サービスの
‑3 8 ‑
医療
( 高度先進 医療 ) 特定機能病院
†1 ( 急性期医療 )
一般病院
( 保健 サー ビス) ( 老人医療 ) S (中間施政) = ( 福祉施設ケ ア)
保健所 老人病院 老人保健施設 特別養護老人ホーム
†1 療養型病床群 ケアハウス 養護老人ホーム
†1 軽費老人ホーム
市町村保健センター t= ( プライマ リケ ア) 老人ホーム
† 1 診療所
†1
( 在宅保健サー ビス)
+( 適所サ ー ビス)
+( 在宅医療福祉 サー ビス)
訪問指導 デイケア 在宅医療 ・看護
訪問健康相談 デイサービス 在宅介護
図7
.保健 ・医療 ・福祉 への連携
連携 についての模式図である。今 日の 日本では一般病床、特 に老人病院や老人 病床 には医療上 の必要性 よ りも家族の事情や経済的理 由で入院 をつづ けている
いわゆる社会的入院の患者が多数存在 している。最近では入院 3ヶ月を限度 と して老人保健施設や老人福祉施設へ移 ることを進 めていが、医療上 のニーズが 解消 して も社会的なサポー トが必要な高齢者 に対 しては医療サー ビスよりも福 祉サー ビスの提供が進 め られ るべ きである
。(3)
福祉 システム
( ∋ 福祉行政 日本 の福祉サー ビスは 表
1にみ るような第二次大戦後 に制定 されたいわゆる福祉六法 を中心 に進 め られて きた。 この うち、生活保護法 に よる公的扶助制度 と知的障害者福祉法、
母子及び寡婦福祉法、児童福祉法、身 体障害者福祉法、老人福祉法、精神保 健及 び精神障害者福祉 に関す る法律 は 貧困以外 のハ ンデキャップをもつ人や
( 万人)
1 6 0 1 4 0
1 20
100 80 60
40
2 0
0
1965 '70 '75 '80 '85 '90 ■95'96
( 年度 )
図
8.扶助別保護人員の推移
表 1 .社 会福 祉 関連 法 ( 社 会福 祉 六 法 )
法 律 名 一 一 年 概 要
児童福祉法 身体障害者福祉法 生活保護法
精神薄弱者福祉法 老人福祉法
母子及び寡婦福祉法
1947
満
18歳 に満たないすべての乳幼児 お よび少年
、14種類 の施設、療育、育成 ・医療、健全育成
1949
人 口の高齢化、労働災害 ・交通災害 な どによる障 害の多発、更生 を援助 し保護 を行 う
1950
生存権保障、無差別平等、個別生活保障、補完性 の原理
、 7種類の扶助
1960 18
歳以上の者 を対象、在宅 ケアを基本 に した更生 施設 と授産施設活動
1963
老人 の生 きがい対策、居宅老人福祉の重視
1964生活 の安定 と向上のための福祉的指導、各種資金
の貸 し付 け∴母子福祉施設 な どの福祉政策 注
1946年 に生活保護法 ( 旧法)が施行 された。
社会的弱者 といった対象への個別福祉 と云 えよう
。図
8は生活保護法による各 種扶助別の保護人員の推移である。生活扶助や住宅扶助 は
1985年以後急速 に減 / 一 ノ 少 しているが、医療扶助や教育扶助では減少傾向が鈍い。医療扶助の対象疾患
も従来の結核か ら‑ 老人性痴呆な どの精神障害が主体 となっでいる
。2000年か ら は介護保険の施行 に ともない介護扶助が加 えられている。‑ また、 これ までの福 祉サー ビスは行政サヤビス として行われ、行政処分 としてサ」 ビス内容が決め
られ、社会福祉協議会等が事業者 としてサービスの提供 を行 ってきた。現在の 社会福祉法の見直 しの中で利用者 によるサー ビスを選択や痴呆性老人 に対する 後見制度の制度化、苦情解決のシステムの導入な どクライアン トの立場. を重視
した改革が進められている。 〜
② 老人福祉サービス
1963年の華人福祉法の制定 により、 これ までの身体障 害者等機能不全の明 らかな場合 とl ともに加齢 に伴う一般的な状態 ( 生理的老化)
に対 しての介護 もサービスの対象 となった。
という医療 ( 老人病院) と福祉 ( 各種老人 ホーム)、在宅看護 ・ 介護 を連携する 施設 として老人保健施設が創設 されている
。1980年頃か らは在宅看護 ・介護 を 支援するもの として適所介護 ( デイサービス)、短期入所生活介護 ( ショー トス
テイ)な どが行われている
。また、高齢のクライアン トに対する福祉施策 とと
‑40‑
もに
、1989年のゴール ドプランお よび
1994年の新 ゴール ドプランによって市町 村 における地域福祉 システムの計画的整備が急速 に進 んで来ている
。在宅介護 支援セ ンターが創設や老人 ホームへの入所措置の権限の市町村への移譲等、福 祉サー ビスにおいて も市町村 の役割 は重要な もの となっている。
3
第 介護保険の創設
( 1 ) 介護保険の理念
「 加齢 に伴 って生 じる心身の変化 に起因す る疾病等 によ り、入浴、排せつ、食 事等の介護、機能訓練並びに看護及び療養上 の管理 その他医療 を要す る者等 に ついて、 自立 した 日常生活 を営む ことがで きるよう、必要な保険医療サー ビス 並びに福祉サー ビスに係わ る給付 を行 うため、国民の共 同連帯 の理念 に基づい て国民の保険医療の向上及 び福祉 の増進 を計 ることを目的 とす る
」とい う介護 保険法が制定 された。医療 サー ビス と同様 に
40歳以上の全ての者 を加入者 とし
た強制保険のかたちでスター トした ことは、社会保障的性格 よ りは受益者負担 と権利 とい う保険的性格が強いな どの点で理念的 には問題点が残 っている。
( 2) 介護保険の利点
介護保険では介護サー ビスが住民 に最 も身近 な市町村 を中心的 に運営 され る とい う利点 を有 している
。市町村が運営主体 となることにより、住民主体 の行 政が期待 で きること、市町村の判断でサー ビス内容 を柔軟 に組 み立 て られ るこ
と、給付上限 を引上 げた り、法定外のサー ビスを保険給付の対象 にす ることも で きるな ど市町村の 自主的な福祉行政 を展開で きるな どの可能性 を有 している
。更 に、介護サー ビス社会福祉法人、医療法人、民間企業、農協、生協、特定非 営利活動法人
(NPO)な どか ら提供 され ることが出来 るようになった ことも福 祉サー ビスにおける利用者 の選択性 と自由度 を大 き くす ることが期待 され る。
これ までの福祉措置制度 は行政サー ビス として提供 され、利用者が提供者 を選 択す ることは制度的 には保証 されていなかった。 しか し介護保険で は利用者 も 事業者 を選択 し、契約 を結ぶ当事者 としてサー ビスを利用す ることとなった。
こうした介護サー ビス市場 の登場 によ り、サー ビス供給量の増加 と質の向上が
期待 され る
.また、介護保険 によるサー ビス と保険給付外のサー ビスを組 み合
わせて利用 した り事業者 によっては割引 き価格でサービスを提供することもで きるなど自由度が増 した・ ことも大きな利点である。
(3)
介護保険の問題点
①市町村間にサー ビスや保険料の格差の大 きいI とが 問題点, tしてまずあげ られ る。例 えばヘルパー数が介護保険スター ト時点で も目標 に達 していない地 域や在宅介護セ ンターの設置が進んでいない地域 も多中った。保険料 も、国が 試算 した毎月の介護保険料 は2 500円であったが各 自治体が介護サー ビス費用や 老人 ホームの措置費、老人保険医療 に占める介護的給付 などをも̀ とに試算 した 平均保険料 は国の試算 より2 000円以上 も高 くな り・ Jなかには800 0円を超す地域 もある。一 介護保険に・ よっ て地域の実情 に応 じた運営がで きる半面、隣の町 と「 払 うお金、・ 受 けるサー ビスが違 う
」可能性 も出てきてい る。・ 更 に、今 後受給者数 が急増す るか もしれない とい う懸念 もみられているdそれは介護保険の導入で、
「 国の措置」だった介護が 「 保険料 を負担 した上での権利
」拡変わ り、介護ニー ズの掘 り起こ しが進 むこ. tによって受給者が予想 を大 きく上回る可能性 も出て:
ぎている
。②介護保険導入後の問題点 と† して介護認定の混乱 と介護度が低 く認定 された高 齢者への対応があげられる
。介護認定 は、 まず調査員が個別訪問 し、一 生活動作 能力や問題行動 など85 項 目 ( 全国⊥・ 律) Jを調査、 ・コンピュータ ー処理する‑( 一 次判定)ムその後、保健、医療、福祉専門家 による. 認定審査会で、一次判定 と訪 問調査時の特記事項∴かか り▲ つけ医の意見書 をもとに 「自立 ( 棄却) 」か ら 「 要 支援
」.「 要介護の五段階」まで を判断す る‑ . こ, の二次判定が最終結果 となる. こ の コンピュータ「判定 には、痴呆などの評価が低 く出た り. 等、' 医学的に見て疑 問 を抱かせ るケ' ‑ス も指摘 されている. また、現状 は調査員のレベルはさまざ まで二次判定 にかけられる時間はわずかで、正確 ′ ・公平な認定 には課題が まだ
多い. t
③特別養護老人ホ」ムや老人保健施設等の施設 も介護保険か ら支払われる報酬 で運営 きれるので介護ニャズの減少が入所者の要介護度 によって報酬減 となる
こ. とがある O ‑ ' 例 えば、層 た きりの人が介護で歩 けるようになった場合、介革度 が下がって報酬 は減 る占, スタッフによるケアの・ ≠ 成功〟が評価 されない という
ことになる。 また介護度が低い老人 は報酬が低いので在宅サ「ビス中心 とな. り
‑ 42‑
施設の受入れが減 るな どの問題 が生 じてい る
。( 4) 介護保険の将来
介護保険の発足 を契機 として、地域 の中で共 に支 え合 お うとす る機運が育 ま れた り、広域 的な介護保険の運営な ど、地方 自治のあ り方の上で も大 きな影響
を与 えている
。少子高齢社会の介護 とい う大 きなテーマ を通 じて、社会全体の あ り方 に もい くつかの効果 をもた らしてい る。また介護保険 は、「 地方 自治の試 金石」 と言われ るように保険料 の徴収や介護サー ビスの提供が市町村の裁量 に 委ね られている
。このように介護保険では首長の姿勢、市町村の力量が問われ
ている
。多 くの国民 に関係がある新 しい制度であるため、施行 はされた ものの、
課題 は残 されてお り、その普及 と定着 を図 るとともに、 より良い ものに育 てて い くことが必要である。介護サー ビスの質 の確保等 について有識者 と率直 に意 見 を交換 し、国民か らの声 も聞 きなが ら、今後の施策及 び制度運営 に反映 させ
るように図ってい くことが大切 である
。4第
地域の保健 ・医療 ・福祉 システムの連携
現代の保健医療の 目的 は単 なる生存期間の延長ではな く、生活機能の保全 ・ 向上や生活の質 を高 めることにある。福祉 も生活困窮や障害 に対す る救済措置 のみでな く生活の質 を保障す る予防福祉の活動が中心 となって行 くことが期待 され る。人間の生活 は家庭や地域 を中心 に営 まれ るので、地域 レベルで保健 ・ 医療 ・福祉の システムの連携 をいかにはか るかが住民の健康 ・生活 の保障 に不 可欠である
。( 1 ) 地域活動の圏域
保健活動が住民の生活場所である地域 を中心 に展開 して きた ことはい うまで
もない。近年では福祉 において もクライア ン ト中心か ら地域福祉へ、医療 にお
いて も病院中心か ら地域医療への発展が進 め られている
。ここでの地域 とは単
なる地理的範噂ではな く、 そ こに住 む人々が似通 った生活様式や価値観 をもっ
ている地域社会 ( コ ミュニティ)であるとの理解が必要である
。人間の生活圏
は家族、近隣 ( 地 区)、部落、市町村、都道府県、国 と拡大 してい く
。患者或 い
はクライアン トに対す る私的或 いはボランタ リなケアはまず家族、近隣 といっ
たプライマ リ ・グループによって提供 され る。市 町村や都道府県 と圏域が拡大 してい くにつれて、行政の行 う公的サー ビスが中心 となってい く
。前述 したよ うに公的な保健 サー ビスや福祉サー ビスは市町村 を中心 に展開 されている。医 療サ. ‑ビスとの連携 について も郡市医師会のメ ンバーによる市町村 の保健事莱 や介護保険への参加 も活発化 して きている。国民健康保険や介護保険の保険者 も市町村 であることを考 えると、保健 ・福祉の公的なサー ビスの連携の中心 は 市町村であるといえよう
。しか し、政令市や中核市 を別 として、個々の市町村 で完結 した保健医療福祉サー ビスのシステム を構築す るのはしばしば困難であ り、 、 い くつかの市町村 にわたる広域的な圏域設定が必要 な場合 も多い。 福祉サー ビス圏 と地域保健医療圏 を整合 させた地域保健福祉計画 を設定 している都道府 県 もある。
(2)
一 地域活動の組織づ くり
地域での継続的な保健 ・医療 ・福祉活動のための組織 としては公的病院な ど の公的機関 と専門的民間組織 ・機関 とともに地域 の住民組織があげ られ る。保 健、医療、福祉 のそれぞれの個別 システムで こうした三者の連携 システムを点 検 ・整備 す る とともに、地域 レベルで個々人 の保健 ・医療 ・福祉ニーズが充足 され うるような総合 システムを作 ることが必要である。特 に日本で は保健サー ビスについては地域保健 は厚生省、産業保健 は労働省、学校保健 は文部省 と対 象 によって. 異 な る行政 システムが存在 して きた.生涯 にわた る保健 医療福祉 サ丁 ビスの充実 を図 ってい くためには保健サー ビスや医療保険或いは年金等 に おける統合整備が検討 されな くてはな らない.
参考文献
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