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雑誌名 教育実践高度化専攻成果報告書抄録集 

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(1)

授業実践と省察の往還による授業力量向上に関する 研究 : 「深い学び」の実現を目指した小学校算数 科単元開発を通して

著者 渡野 広貴

雑誌名 教育実践高度化専攻成果報告書抄録集 

巻 8

ページ 79‑84

発行年 2018‑03

出版者 静岡大学大学院教育学研究科教育実践高度化専攻

URL http://doi.org/10.14945/00024849

(2)

授業実践と省察の往還による授業力量向上に関する研究

一一 「深い学び」の実現を目指した小学校算数科単元開発を通して 一一 波野 広貴

The Development of τ'eaching Abilities through Repeated Practice and Reflection:

Developing an Elementary School Mathematics Unit Focused on Deep Learning Hiroki WATANO

1

問題の所在と研究の目的

変化の激しい社会の中で子供達は未来を生き抜くカを身につけていくことが求められる。 その ような時代の中で教師は、 日々の実践を振り返り、 省察し、 専門家 としての力量を高めていかな ければならない。

中央教育審議会(201 6)は、「子供たちが「どのように学ぶか」という学びの質を重視した改善 を図っていくこと」、rr主体的・ 対話的で深い学び」の実現に向けて、 日々の授業を改善していく」

ことが必要であると述べ、「主体的・対話的で深い学び」の視点での授業の工夫・改善を行ってい くことが求められている。

しかし、 学卒院生である筆者は、 授業経験に乏しく「主体的・対話的で深い学び」どころか思 った通りの授業の展開や子どもの見取り方に多くの課題があると考えられた。 目指す授業を実現 するためには力量向上ということが喫緊の課題である。 そこで、 力量向上の視点の 1っとして多 くの研究者が注目してきたのが省察である。

ショーン( 1983)は、 専門家像を一般化された理論や技術を実践の場で厳密に適用する「技術 的合理性」に基づく「技術的熟達者」から、 状況との対話を行いながら既存の理論や技術を変化 させたり、 新たに生み出したりする「行為の中の省察」 に基づく「省察的実践家」への転換を示 した。 さらに佐藤( 1993)は、 専門職としての教師は「技術的熟達者」ではなく、 「省察的実践 家』であり、 「省察的実践家」としての成長を指摘している。 つまり教師は、 すでにある理論や 技術に頼るのではなく、 より複雑な状況の中で行為の中の省察を通して、 独自の事例についての 新しい理論を構築していく必要があることである。

また、 コルトハーへン(2001)は、「実習生が今後のキャリアにおいて直面するすべての種類 の状況に適応できるように要請することは不可能 である」とし、 特に変化の激しい社会の中で は、 より複雑な状況で適応することの必要性を述べている。 そのために、 省察の在り方を「実習 生が省察を通して自らの経験から学ぶカを獲得することは成長し続ける力を持つことになる」と し、 経験を省察していくことが物事を刷新する能力を促進し、 成長し続ける力につながると主張 する。

このように自身の実践を省察し、 新たな気づきを生み出す過程を経ることは、 中央教育審議会 (2 015)の示した「学び続ける教員像の確立」 に向けた有効な手段であると考えられる。

以上から、 実践の場で、 授業と省察を往還することには大きな意味があることが考えられるロ

省察による力量向上についての研究や初任者研修に関する研究は多くあるが、 経験の乏しい初任

者教師に対する力量向上に焦点を当てた研究は少ない。

(3)

そこで本研究では、 1人の実践者(筆者)に焦点を当て、 実際の授業における詳細な省察記録 をもとにし、 授業実践と省察の往還を通して、 実践者の授業に対する認識がどのように変化した かを考察する。 このことで、 実践者の授業における課題が浮き彫りになり、 さらにその課題を踏 まえ試行することを通して、 授業力量向上につなげていくことを目的とする。

2 研究の方法

本研究は授業実践と省察の往還による変容を考察する。 省察、 授業実践における研究の方法 を、 それぞれ方法①、 方法②として詳細を記していく。

2-1 方法① ALACTモデル

コルトハーへン(2001)は、 省察を経験から の学びとして促すことができるように、 より精激 化し教員養成のモデルとしてALACTモデル(図 1)を提唱している。 コルトハーへンは「行為と 省察が代わる代わる行われる」状態が理想的であ るとし、 ALACTモデルは経験を振り返り、 そし て行為の変化まで視野に入れたモデルとして教師 教育者が実習生のサイクルを回せるような支援を 念頭において構築されている。

このALACTモデルを省察のモデルとして扱 い、 実践者の授業力量がどのように向上したか を検討していく。

2-2 方法②・ 授業実践

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図1 ALACTモデル(コルトハーへン, 2001)

S市立S小学校第6学年の2クラスで5月から 10 月にかけて算数科で2つの単元( 分数のか け算、 速さ)の授業実践を行った。 ここでは、「分数のかけ算」における授業実践を実践I、「速 さ」における授業実践を実践Eとして扱う。

授業実践をすべてピデオカメラで撮影、 1 Cレコーダーで録音し、 毎回授業後に再度見直し課 題や感じたことを省察記録としてまとめていった。 省察記録は、 算数の教材化について、 子ども の見取り、 授業方略の3つの視点からの自己省察と観察者からの指摘をもとに作成したロ 観察者 からの指摘は、 当該校の学級担任や教職大学院の他者から受けた指摘とし記録した。 また、 児童 らの理解や学びを検討するため、 ワークシートを毎時間用意した。

授業実践では、 構想した単元を2クラスにおいて行い、 先行クラスと後行クラスを数日ずらす ことで、 先行クラスで受けた指摘や気づきをもとに改善し、 後行クラスでは改善された授業を行 うという流れで行った。 この省察のサイクルにより、 どのように授業改善が促されたかを明らか にしていく。

また、 授業実践の中で実現を目指す「深い学び」を明確にして授業に臨む必要があるため、 本

研究では、 黒海(20 16)らを参考に「既習事項や生活の中での知識を関連付け、 同じと見てつな

げることができる学び」と定義し進めていく。

(4)

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園2 実践Iの省察プロセス

(5)

第3次(第8-9時)では、 これまでの省察を踏まえた実践を行った。 第9時のまとめの授業 として行った条件に合う問 題作成の課題については、 まず条件を全体で確認し、 どう考えれば良 いかの見通しを立てることができた。 しかし、 先行クラスでは問 題を個人で作ることができない 子供も見られたため、 後行クラスでは、 グループで協力し問 題を作成することで、 どの子も問題 を作成でき、 友達の問 題を解き回るという活動に参加することができたロ これらの省察を算数の 教材化、 子供の見取り、 授業方略の視点から見ていき、 さらに分類することで6つのカテゴリー が生成された(表 1)。

表1 実践IにおけるALACTモデルに基づいた省察

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色分げをし、固と式の 子供たちが課題に迫るために式k図の対応 をわかりやすくするこkが大切である

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方 板書の工夫 させることで解決に 対応をわかりやすく示 という気づきが生まれ、色分けをし対応をわかりやすくした白極書は子供の思考

きな影響を及ぼすこと

向かえる。 した. 過程に大きな影響を及ぼす新たな気づきが生まれた。

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ぎて いる也 た.

例えば、 子供の見取りに関しては、 先行クラスでの実践( 行為)から、「全員思うように問題 を作れない。 苦手な子には難しい課題」という振り返り・気づきが起きた。 そして、「個人では なくグループで4間作るという活動にする」という選択肢の拡大が生じ、 後行クラスではグルー プで問 題作りを行い、 分担したり協力したりして活動を進めた(試行) 。 そのことで、 苦手な子 供にとっても活動に参加することができ、 より多くの子が授業のねらいに迫れたことから、 どの 子も参加できるような仕掛けの重要性を感じることができた。 このALACTモデルに基づいた2 クラスの実践の省察から、 どの子も授業に参加できるような支援の必要性という価値が授業者の 中で獲得されることになった。 他にも、 算数的活動の焦点、化の必要性や段階を踏んでの指導の必 要性、 板書は子供の思考過程に大きな影響を及ぼすことといった価値が生まれた。

これらを踏まえ、 授業者の課題が算数の教材化、 子供の見取り、 授業方略の3つの視点から浮

き彫りとなった。 1点目は、 どの子にもわかるように教材化を工夫することである。 単元の後半

では少しずつ段階を踏んで行くこと、 板書の構造化、 明確化、 指示をはっきりとさせることを意

識し、 取り組んだ。 この課題は筆者の授業観を大きく変えることになった。 2点目は、 子供の授

業の理解度、 到達度を把握しながら授業を進めることである。 3点目は、 導入の工夫、 発問など

の授業方略に関することである。 授業実践Eでは、 これらの課題を意識し、「速さ」の単元で授

業実践を行ったo

(6)

3-2 授業実践n r速さ」における結果と考察

授業実践Eは、「速さ」の単元で実践Iと同様に2クラスにおいて行った。 実践Iで見えた課題 のどの子にもわかる・ できる授業を目指すこと、 子供の理解度を把握しながら進めていくこと、

導入の工夫という3点に、 実生活と関連付けやすい単元であることから、 実生活との関連の意識 を加えた4点をねらいとして取り組んだ。

実践Iと同様に、 省察記録をまとめ、 分析し、 ALACTモデルに準拠した形でまとめたものが 表2になる。

二FT

教材化における 算 算数的要素 数の

教材

イ包 段階的指導の必要性

子 供

見 子供への手立て 取

授業 板番の工夫 方略

表2 実践EにおけるALACTモデルに基づいた省察

信腫り返り

④選択肢の拡大

@気づき 実生活に近い課題で

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自分の歩〈速さを求

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の指宵により多〈の 子供Ic発表させたいと 子が揖童相授業のね とと授業のねらいを合 らいと重ねるととが わせないkいけないE 即座にできていない

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化とどの子にもの視点 すい。 どの子にとっ

て も有効な支援 から有効な方略である

後行実践における申'援り返り 申'気づき

身近な課題は、子供の意歌だけではなく、理解にもつながっている.身近なもの と提えることでイメージができたり、簡単Ic捉えたりできるー算教の教材化にお いて 実生活kの聞連を意慢して い〈こkは「裸い学!1Jに向付た捜業づくりに欠 かせない視点であるE

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実踏を遇巴て�ライ"や写真を用いるととで効果的であるととを実感できた.視 覚佑の有刺生を強く感じるようになった,

得られた価値 実生活との関連

単元全体を考えた単元構想

子供の発言の見取り

視覚化の効果

1点目は、 算数の授業づくりの上で実生活との関連付けの有効性を感じ、 実践することができ た点である。 単元を通じて実生活との関連を意識し、 構想、 実践を行ってきた。 授業実践E第8 時では活用に当たる授業を、 実践の数日前に子供達が経験した修学旅行を教材化し、 東京の観光 マップからコースを作成するという課題で行った。 子供の ワークシートからは「速さの学習がよ りわかるようになった」や「速さって便利だと感じた」という速さの理解や有用性の実感に関す る記述が多くあり、 実生活や経験と関連付けながら考えることで知識の再整理が起き、 深い理解 が促されることがうかがえた。 そこから、 実生活との関連は「深い学び」の実現につながるもの であることの認識と、 算数教材と実生活を関連させる授業を効果的に実行できたことから授業力 量の向上を図ることができたと考察できる。 「深い学び」に向けた算数の授業づくりについて実 践と省察を通して考えることができた。

また、 2点目に子供の発言の拾い方についてである。 得意な子を意図的指名したことで多くの 子供が混乱してしまうという場面が見られた。 教材研究において混乱を防ぎ、 理解につなげるた めには、 子供達のどのような発言・解答を拾い全体共有していくかを考えることが必要である。

さらに、 それを考えることで授業者側にとっても本時のねらいを焦点化できると考えられる。 押

さえたいところを子供の言葉であらかじめ考えておくことの必要性を感じ、 実行に移ることがで

きた。 他に、 スライドや写真をスクリーンに映し、 視覚的に教材を示すことの効果の実感や単元

全体の流れを考えた単元構想の必要性なども考えることができ、 自分自身の新たな気づき、 認識

の変容となった。

(7)

4

総合考察

図3は、 本研究において実践者である筆者の授業力量向上の過程を示したものである。 算数の 教材化については、 実践Iの算数的活動の必要性についての省察から、 実践Eでは教材化の上で 実生活とより関連させることが必要であるという省察になっている。 これは「深い学び」を目指 すには、 より実生活に近い身近な事象を数学化し教材として扱うことが重要であることについて であり、 実践Iから実践Eを経て教材化についての省察が深まっている。 また、 子供の見取りに 関しても、 実践Iではどの子も参加できるような支援という省察だが、 実践Eでは、 予め拾う発 言を決めることが、 混乱を防ぎ、 どの子にもの視点になることに加え、 授業者として授業のねら いが焦点化できるということまで広げることができ、 深い省察になっている。 いずれも2つの単 元で授業実践を行うことで省察がより深くなっていき、 授業に対する見方が広がっている。 これ は授業力量が向上したと考えることができる。

実践を行う前後で見ると、 実践前は、「主体的・ 対話的で深い学び」 の実現を目指すために子 供達に深く考えさせたいとの思いから、 考えさせることに意識が集中し、 うまく進めることがで きなかったが、 実践と省察を繰り返すことで、 授業における重要な要素を考えることができ、 授 業に対する認識が深まった。 これらの要因としては、 ALACTモデルに基づく省察を行なったこ とで気づきと試行を循環させることができたことと、 毎時間他者に観察してもらい、 授業を客観 的な視点から省察したことも気づきを生まれやすくしたことが考えられる。 授業実践と省察を往 還していくことが授業力量向上に効果的であることを実証的に示すことができた。

授 業

実 践

省 察

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・スライドを使った導入や視覚化による標題担示の効果について -鮎ACTモデル1::畠づいた省療を行うこtで新たな気づきが生まれ、11.カ量の向ょにつながっている.

-他者の存在の太脅さ.経験豊富な先生1.:授業を見ていただ曹指摘を得ることで新たな気づきが生まれやすい.

図3 本研究における筆者の捜業力量の向上経過

5

主要参考文献

F ・ コルトハーへン(2 001), (邦訳)武田信子・今泉友里・鈴木悠太・山辺恵理子(2010)W教

師教育学一理論と実践をつなぐリアリスティック・アプローチ-�, 学文社

参照

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