実験結果を比べながら考えを広げていく
− 5年3組『大きな結晶宝石をつくろう』の実践から−
天 野 真 一
1.子どもたちと教材
6月の教材『おいしいべっこうあめをつくろう』で、あめづくりに挑戦した時のことだった。最初 は、水量が多すぎて固まらず、うまくいかない子が多かった。なんとしてもうまく固まらせたいと思っ た子どもたちは、失敗をふり返ったり、うまく固まった友達のあめと失敗して固まりきらなかった自 分のものを見比べたりしていた。中には、「計量スプーンで砂糖と水量を正確に測って試してみよう」
と考え、くり返し実験を進める子もいた。実験をくノり返す中で子どもたちは、水量や熱する時間の違 いによってものの状態が大きく変化することにおもしろさや不思議さを感じていたに違いない。そし て、水量卓熱する時間の関係からあめのでき方を予想し、つくっていた。私はその姿を見て、失敗し てもあきらめずに試していこうという子どもたちの思いの強さを感じた。
そんな子どもたちならば、よりよい方法を求めて自分と友達の実験結果とを比較し、ものの状態の 変化にふれる中で事象についての考えを広げていくと考えた。1回の実験では結論が出せないことも、
積み重ねた結果を比べ、見つめていくことで事象を解き明かしていくことができるだろう。条件や方 法の違いに着目し、自分と友達の結果とをつなぎ合わせて考えることで事象に対する見方や考えを広 げていく姿を願っていた。
そこで、温度による溶解度の違いが顕著で結晶化しやすいカリミョウバンを用い、本教材『大きな 結晶宝石をっくろう』を設定した。粉状だった試薬が大きな固まりになる不思議さや結晶のもつ美し さに惹かれた子どもたちは、より大きな結晶をつくるために水温や溶かす試薬量などの違いに着目し ながら実験を進めていく。あきらめずに挑戦していこうとする5年3組の子どもたちならば、試行錯 誤しながら大きな結晶をつくり上げていく中で、自分と友達の結果とをっなげながら事象を深く見っ め、溶ける・析出するという事象に対する考えを広げていけると考えた。
2.H男君のとらえと願い
H男君はこれまで、休み時間や放課後にペーパークラフトの飛行機づくりに興じることが多く、翼 の角度を細かく調節しながらその飛行機を少しでも遠くへ飛ばそうとくり返し試していた。何度か飛 ばすと飛行機は折れ曲がり、壊れてしまうこともあったが、彼は壊れた部分の修理をし、粘り強く試 し続けていた。そんな姿を見て私は、自分の思い通りの結果が出るまであきらめないで取り組むのが 彼らしさだと感じていた。
彼は、よりよい結果を求めようと友達の考えを自分なりに吟味し、参考にしながら考えていこうと する子でもある。『ゴールに近づけ 衝突ゲーム』では、「玉を遠くまで転がすためには、衝突する2 つの玉の重さを変えればいい」\という自分の考えと「高い所から玉を転がせば速度が上がり、ものを 転がす働きは大きくなる」という友達の考えとを結びっけながら、「玉の速度と重さによってものを 動かす働きは変化する」と、ものの動きについての考えを体系づけていった。
そんな彼に私は、思いの実現に向けてあきらめずに取り組もうとする彼らしさを発揮して実験に取 り組み、多くの実験結果を比べたからこそわかる事実を一つ一つつなぎ合わせながら事象に迫っていっ てほしいと思った。自分の結果から考えただけでは、どうして結晶ができるのか、どうしたら大きな 結晶になるのかはっきりしないだろう。そのため彼は、溶かした試薬量の違いや水温の違い、濃度の 違いなどに着目しながら自分と友達の実験方法とを吟味していく。いくつもの結果をつなげて考えた り友達の考えにふれたりすることで、彼が、水温による溶解度の変化や溶けきれなくなった試薬が再 結晶することなどに気づきながら、溶ける・析出するという事象に対する考えを広げていく姿を私は 願っていた。溶ける・析出するという事象に対する考えを広げていく中で、多くの実験結果を比べる
よさを感じたり、自分なりの方法で大きな結晶を作り上げたという満足感を味わったりすることで、
彼は、あきらめずに挑戦していこうとする自分自身の取り組み方に自信を深めることができると考え ていた。
3.大きな結晶をつくるには
(1)水が多いと結晶ができない?
最初に私がつくった結晶とカリミョウバンの試薬を提示すると、
H男君は興味深そうに2つを見比べ、結晶が宝石の原石のようだ と感じたのか触って固さを確かめていた。水とカリミョウバンの 試薬を使って結晶をつくったことを知らせると、彼は自分でもつ
くってみたいと目を輝かせた。試薬を水に溶かせば結晶ができる だろうと予想した彼は、水50mlに薬さじ(大さじ1杯で約1.2g)
3杯分の試薬を入れ、ビーカーを目の高さまで持ち上げ、試薬が 溶けきっているのかどうかを確かめながら、かき混ぜ続けた。そ の姿を見た私は、結晶をつくるには試薬をしっかり溶かしきるこ
とが大切だと彼が考えていると思った。
2日後に試薬を溶かしたビーカーを見た彼は、結晶ができてい
ないことがわかると残念そうな表情をうかべ、なぜ結晶ができな <教師が提示した結晶>
かったのかについて考え始めた。そして、彼は、50mlの水に試薬を15杯入れた友達の実験で、直径 1mほどの小さな結晶がエナメル線についているのを見ると、自分の実験は水が多すぎたので固まり にくかったのではないかと考えた。
(2)溶かしきったものを冷やす? 温めて水量を減らす?
どんな方法で再実験をするか確かめ合うと、H男君は水量を減らして溶かしきると固まりやすくな ると予想していた。また、雪の結晶は温度が低いとできることを思い出し、冷やせば結晶ができるの ではないかとも予想していた。そこで彼は、水30mlに試薬を5杯溶かして、冷蔵庫で冷やす方法を 最初に試した。
水を減らし、試薬を5杯入れてかき混ぜ始めた彼だが、5分間かき混ぜても試薬は全部溶けきらな い。彼はできる限り溶かそうと再び混ぜ続けたが、溶け残りに変化は見られなかった。これ以上は溶 けないと判断した彼は、冷蔵庫で溶液を冷やすことにした。そして、私に「別の方法でも試してみた い。水を蒸発させる」と話しかけてきた。きっと「溶液の水を減らすことで固まりやすくなる」とい う彼の考えを蒸発させることで試してみようと思ったのであろう。私は彼の言葉を聞き、この実験を 行えば、水温が上がると溶ける試薬量が多くなることを見出していけると考えた。そこで、私は、い ろいろな実験をして確かめてみようとする彼を支えるために、実験器具を用意し、残りの時間に試す ことができるようにした。彼は前の実験と.同じように30mlの水をビーカーに入れ、試薬を入れて熟 し始めた。水温が上がると、試薬は水の時よりも簡単に溶けた。その様子から、彼はも三と多くの試 薬が溶けるのではないかと考え、試薬を加え続けていった。最終的に10杯の試薬が溶けきったのを見 た彼は、水温を上げると多量の試薬がすぐに溶けてしまうことに驚いていた。
<H男君のノートから>
温めるとすぐにカリミョウバンは溶ける。温めた方が結晶はできると思う
水温を上げたことで溶ける試薬量が多くなったことをノートに記録する彼は、これならば結晶がで きると考えていた。私はそんな彼が、自分の実験結果だけでなく、友達の結果を比べていくことでど うしたら大きな結晶になるかを見っめていってほしいと思い、一週間後、お互いの実験方法と結果を 出し合うようにした。
4.実験結果をもとに結晶のでき方を見っめていく
<H男君の実験方法と結果>
実験1:水30mlに試薬を5杯入れる。冷蔵庫で冷やす →エナメル線に結晶はつかない 実験2:水30mlに試薬を10杯入れる。熱する。常温で冷やす →1.5gの結晶がつく
<友達の実験方法と結果>
(Q子)水50mlに試薬を30杯入れる。
(W子)水30mlに試薬を5杯入れる。
(S男)水50mlに試薬を15杯入れる。
(K男)水100mlに試薬を30杯入れる。
(F子)水50mlに試薬を20杯入れる。
(J子)水120mlに試薬を70杯入れる。
冷蔵庫で冷やす 常温で冷やす
熱する。常温で冷やす 熱する。常温で冷やす 熟する。冷蔵庫で冷やす
熱する。常温で冷やす
」すエナメル線に結晶はつかない
→エナメル線に結晶はつかない
→直径4mmの結晶がつく
→7gの結晶がっく
→8.5gの結晶がつく
→18gの結晶がつく
自分の2つの実験結果と友達のとを比べながら、彼は水温を上げて試薬を溶かしきった方が大きな 結晶ができるという考えを強めていった。そんな彼はJ子さんの大きな結晶を見た時、「おお、参考 にしなきゃ」とつぶやいた。彼は、なぜJ子さんの実験では大きな結晶ができたのかを自分なりに考 え、次の実験に生かそうとしていた。一方、水ではなく、湯を使うことにも秘密があるのではないか
とも考えていた。私は、溶かしきることが大切だと考えている彼が、自分と友達の実験からわかる一 つ一つの事実と溶かしきることが大切だという自分の考えとをっなぎ合わせ、多量の湯に多量の試薬 を溶かしきり、濃度を高めると大きな結晶ができることや溶けていた試薬が析出する理由を見出して いってほしいと思った。
そこで、次の時間、湯に溶かすとどうして大きな結晶がで きるのかについて話し合った。彼は最初、水温を上げたこと で溶けているカリミョウバンに化学的な変化が起こり、別の 物質になって固まったのではないかと予想していた。友達か らは「ビーカーの底に溶け残ったものが結晶になる」という 意見も出された。その時、彼は自分の2つの実験(溶け残り の試薬があった水での実験と湯に試薬を10杯浴かしきった実 験)を例に挙げながら「溶けていたものが結晶になっセェナ メル線につく」のだと反論していった。しかし、彼は、溶け ていた試薬が析出してく、る理由について悩んでおり、別の物
<話し合いの様子> 質になって固まるという自分の予想に自信がない様子だった。
私は、水温を上げると溶ける試薬量が多くなることを見出した彼に、水温変化や濃度変化に着目し ながら、析出するという事象について見っめていってほしいと思った。水温が下がると起きる事象、
つまり、溶けていたカリミョウバンの一部が溶けきれなくなり、濃度も下がることに気づいていける と考えたからだ。溶けきれなくなるカツミョウバンの存在に気づいた彼は、再結晶する理由を見出し、
析出す、るという事象に対しての考えを広げていけると私は考えた。私は、彼が水温変化にも目を向け ていけるよう、試薬を溶かした後に溶液を常温の場所に置いたのか、冷蔵庫で冷やしたのかを確かめ ながら話し合いを進めた。彼は、同じ試薬量で冷やし方を変えた友達の実験から、冷やし方の違いに よって結晶の大きさが変化すると気づいたが、水温が下がるとカリミョウバンが溶けきれなくなるこ とには気づいていなかった。話し合いを続ける中で彼は、F子さんから出された意見から濃度の違い に目を向けていった。
C (F子)私の実験[湯50ml、試薬20杯、冷蔵庫で冷やす、8.5gの結晶]の方が、K男君の 実験[湯100ml、試薬30杯、常温で冷やす、7gの結晶]より大きな結晶ができた。試薬が 多ければいいとはいえない
C 水の量が違うから倍にして考えなきゃいけない
溶かしきった試薬量がK男君の実験よりF子さんの方が少ないのに、F子さんのエナメル線につい た結晶の方が大きかったことは彼にとって意外だった。その理由を考えた彼は、湯の量が違うことに 着目し、溶かした試薬が少ないF子さんの実験がK男君の実験よりも濃度が高くなっていることに気 づき、濃度を高めることで大きな結晶ができるのではないかと考えていった。そんな彼は、J子さん の「溶けきれなくなったものが固まる」という意見とM男君の「冷えて固まる」という二つの意見を 聞き、はっとした表情をした。この意見を聞き、溶液の濃度が濃くなっていると大きな結晶ができる ことと水温の変化によって溶ける試薬量に違いがあることを思い起こし、水温が下がったことで溶け ていたカリミョウバンの一部が溶けきらなくなることに納得していった。そして彼は、水温が下がっ たことにより起こる溶解度の変化を考えながら、「お湯に溶かさないと結晶は大きくならない。溶け
きることは大切だと思う」と発言していった。
話し合いの後、3回目の結晶づくりを行った。彼は、化学的な変化でなく、水温が下がることで溶 けきれなくなったカリミョウバンが結晶になることを考え、水温が下がった時に溶けきれなくなるカ リミョウバンの量を増やそうとした。彼は、300mlの水を沸騰させ、試薬をできるかぎり多く溶かし て濃度を高める方法で実験を行った。この実験で前回の結晶の4倍程大きい結晶ができたことに彼は 満足そうな表情をうかべた。実験の結果から彼は、水温が下がったことで溶けきれなくなったカリミョ ウバンが析出するということを確かめ、濃度を高めるために湯の中にできるだけ多く試薬を入れ、溶 かしきることが大切なのだと自分の考えを確かなものにしていった。
私は、3回の実験を通して溶けきれなくなったカリミ畠ウバンが結晶となることに気づいていると 考えていた。しかし、水が蒸発していけば結晶ができるという友達の意見に対して彼は疑問を投げか けた。
C (N子)水を蒸発させて少なくすれば、結晶ができる C カリミョウバンも一緒に飛んでいってしまわないの?
彼は、カリミョウバンが小さくなって溶けているので、水と一 緒に蒸発してしまうのではないかと考えていた。私は、カリミョ ウバンはそのまま溶液中に残ることに気づけば、水が蒸発するこ とでも再結晶が起こることを見出し、溶ける・析出するという事 象に対しての考えをさらに広げていけると思った。そこで、彼の
疑問を取り上げて話し合った。 <H男君がつくった結晶>
C (J子)塩は、海水を土にまいて、水を蒸発させて作る。塩も蒸発してしまったら塩はとれ ない。カリミョウバンも蒸発しない
C 塩も蒸発してしまうんじゃないの?
C (E男)大きな窯に入れて、熟して水を蒸発させて作っていた C なるほど、降参
水が蒸発した時にもカリミョウバンが溶けきれなくなることに気づいた彼は、今までの実験結果か らわかった事実とつなぎ合わせて考え、溶けていたカリミョウバシが溶けきれなくなった時に再結晶 が起こることに納得していった。「降参」とっぶやいたものの、その明るい表情から、溶ける・析出 するという事象に対しての考えをより確かにできたことを私は感じた。
追究の最後に、彼はノートに「水では溶けきれなくても、熱するとカリミョウバンがものすごいス ピードで溶けた。結晶はきれいだったし、だんだん大きな結晶ができてうれしい」と記した。実験結 果を比べたり友達の考えを参考にしたりしながら溶ける・析出するという事象を見っめ、自分なりに 試行錯誤し、大きな結晶をっくり上げたことで、彼はよりよいものを求めくあきらめないで取り組も
うとする自分の取り組み方に自信をもっことができたと考えている。
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5年3組『大きな結晶宝石をつくろう』 追究のあらまし
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(F子さんとK男君の 結果との比較から)
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C:熟した時に溶ける。絶対、溶け ちやったとい う こ とはない。青 い切れる
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C:なるほど。降参
化リ溶ンと納変カ︑バこを
のたとウる方温つとヨすき水なこミ晶で
︒くるり絵のるなすカ再晶
げれ出たり結拳き析つよ︑
をけがなにて
るいれ結 すごきな 熟すはき もの晶大 ても結ん くは︒だい なンるんし れバけだれ
手溶ンく発け子トきウ溶︐う 両てバさ蒸つ様−けヨでして でつウ小のびlたノ溶ミドたき
顔よヨて水絵し
笑にミけがを得
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でカビだが 水とスい点
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確
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先けい子 のづ多く 線近が置
/レ に 子 に