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Journal of Japan Society of Energy and Resources, Vol. 37, No. 1 低温廃熱で駆動する二段吸着式冷凍機の出力特性に関する研究 Study on output characteristics of a double-stage small

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低温廃熱で駆動する二段吸着式冷凍機の出力特性に関する研究

Study on output characteristics of a double-stage small adsorption chiller

driven by low-temperature waste heat

江 﨑 丈 裕

*

・ 小 林 敬 幸

**

Takehiro Esaki Noriyuki Kobayashi

(原稿受付日 2015 年 7 月 22 日,受理日 2015 年 12 月 11 日) 1.はじめに IT分野では,ネットワーク上の情報通信やデータ管理を 一括して行うサーバーを多数搭載した施設であるデータセ ンターにおいて電力を多大に使用する.データセンター内 のエネルギー使用割合は,サーバー運用の電力消費割合に 対して,空調装置に利用する電力割合が同等の値を占めて いる.一般的に潜熱負荷が発生しない施設では,機能維持 のために15-20 0C程度の冷熱を供給することが有効である 場合が多い.しかし,センターに設置されているサーバー ラックのプロセッサ ( CPU: Central processing units ) から

排出される50 0Cレベルの廃熱を冷却するために潜熱負荷 と同等の冷却能力が必要となり,多くの電力が消費される 1).そのため,この低温廃熱を有効に除去する技術がデータ センターの省エネルギー化に大きく影響する. 既存研究で は,ヒートパイプといった相変化技術を利用し,廃熱をラ ック外に効率良く放熱する研究が行われている2). また,セ ンター内の空調給気供給を実験や気流解析により検討し, 空調負荷を低減する研究が行われている3-5) . 本研究では,熱駆動型吸着式冷凍機に着目した.吸着式 冷凍機は低温廃熱で駆動し,空調用の冷房熱を生成する機 器であるため,廃熱を除去し,冷凍機負荷の低減が期待で きる. 市販されている最新の吸着式冷凍機は, 60 0C以上の廃熱 を利用して駆動するが,45-50 0 Cの低温廃熱でも多段シス テムにすることで,冷熱を生成可能であることと報告され ている6-8).しかし,吸着式冷凍機は装置体積が大きく,こ れまで工場用のみの普及であった.データセンターでは, 廃熱回収の効率性より,各CPUサーバーラックに吸着式冷 凍機が搭載されるほうが,保守・管理時に個別で対応でき るため好ましい. データセンターへの適用には,冷凍機自体の小型化が求 められる.吸着式冷凍機は,蒸発・凝縮器,吸着器,蒸気 移動バルブで主に構成される.ラックへの搭載の課題とし ては,吸着器の最適設計および小型蒸発・凝縮器,バルブ の選定が大きな課題と考えられる. 本研究では,45 0Cでも駆動可能なFAM-Z05 (ゼオライ ト) , A-BAC (活性炭) を用いた二段式システムを選定し た.従来システムと異なり二段式システムは吸着器が2段 となるため,冷熱を生成する吸着器の設計が装置体積に大 きく影響する9).吸着材と熱交換器を一体にした吸着コアを 設計し,その出力特性を検討した.さらに,小型蒸発器, 凝 縮器の選定,バルブの簡略化に着目して検討した.得られ た検討結果より,サーバーラックに搭載可能な一体型小型 吸着式冷凍機を試作し,その試作機の駆動特性を検討した. 2.データセンターに要求される吸着式冷凍機 2.1 体格条件 データセンターでは,図1のようなサーバーラックにCPU が設置されている.本検討では,そのCPUから水冷により 得られる排温水を吸着式冷凍機の熱源として利用する.設 置してあるサーバーラック内への搭載を考えた際60-65L程 This paper describes the performance of an adsorption heat pump prototype modeled for use in data centers. Electric power is consumed to cool down central processing units (CPU) in the date centers, because the CPUs dissipate heat at approximately 50 0C. An adsorption chiller driven by the waste heat dissipated from CPUs was proposed to utilize the cooled energy in the date centers. A double-stage adsorption heat pump comprising of zeolite adsorbent FAM-Z05 and active carbon was driven using the low temperature heat.

The effect of the cooled heat output, efficiency of the adsorbent utilization and coefficient of performance in cyclic performance of the adsorption chiller is experimentally verified. The results demonstrated that the double-stage adsorption chiller with FAM-Z05 and active carbon can be driven by heat below 50 0C. A cooled heat output of 540 W and a coefficient of performance of 0.26 were observed. The efficiency of adsorbent utilization was higher than 80%. During the repetitive operations of 14 cycles, a maximum output in cooling power and adsorption fraction was maintained.

*名古屋大学大学院工学研究科化学・生物工学専攻

〒464-8603 名古屋市千種区不老町 E-mail : esaki@energy.gr.jp

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度の全体体積であることが要求される.また,小型吸着式 冷凍機の体積割合は,図2のように報告されている10). その ため吸着器の体積は全体で30 L程度と予想した. 図 1 CPU サーバーラック 図 2 吸着式冷凍機の構成割合 2.2 温度条件 一般的な空調用の冷凍機では 7 0C の冷水温度 T Lが要求 されるが,データセンターでは,無人であるため潜熱負荷 がない.そのため,従来の空調温度より高く 15-18 0C で運 転可能であると予想される. また,冷却水温度として夏場 のクーリングタワーの冷却の冷却水温度を想定した 30 0C, 高温温度 THは CPU 廃熱温度の 50 0C とした. 2.3 二段式システムの駆動 温度条件より,低温熱源に対応可能な二段式システムを 検討した.吸着材の組合せとして,ゼオライト吸着材 (FAM-Z05)と球状活性炭吸着材 (A-BAC)を選定した.図 3 に FAM-Z05 と A-BAC の吸着等温線を示す. FAM-Z05 は 低相対圧で吸脱着し,A-BAC は高相対圧で吸脱着する特性 図 3 FAM-Z05 と A-BAC の吸着等温線 図 4 FAM-Z05,A-BAC 二段式システムの系統図 図 5 FAM-Z05,A-BAC 二段式システムのサイクル図 (TH=50 0 C)

Adsorber

50%

Evaporator 15% Condenser 15% Valve 5% Case 5% Other 10%

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を持つ.吸着等温線を基に作製した二段式システムの概略 図とサイクル線図を図 4, 5 に示す.本システムでは,吸着 過程後 FAM-Z05 から脱着された水蒸気は,A-BAC に移動 する吸着材移動過程を有する.脱着性能に優れた A-BAC に吸脱着することで,熱源温度が低下しても,冷熱が生成 可能になる.冷熱生成過程,吸着材間蒸気移動過程,凝縮 過程において蒸気圧力差が得られるため,システムが駆動 することがわかる. 3.一体型吸着式冷凍機の仕様設計 本章では,小型吸着式冷凍機を設計するため,吸着器, 蒸発・凝縮器,バルブの 3 点の小型化について検討した. 蒸発器は,熱交換能力が小さいと冷熱出力の低下が考え られる.そのため,実験検討により,小型蒸発器に対する 冷熱生成能力を評価した.吸着器では,吸着コアの出熱性 能を実験検討し,評価した吸着コアを基準に試作機に搭載 するコア枚数を決定した.一方,吸着式冷凍機では,水蒸 気圧力差を推進力に吸脱着が生じる.高出力を得るために は,蒸気移動を制限しない大口径のバルブが必要となる. しかし,冷凍機自体の小型化にはバルブの占有体積を小さ くしなければならない. 本研究では,リードバルブ構造に着目した.リードバル ブは,開閉型のバルブとは異なり,吸着器の圧力推移によ り開閉する板状のパッシブ型一方向弁である.図 6 に蒸発 器-吸着器間のリードバルブの構造を示す.脱着過程時には, 高温温度により,吸着器の圧力が高いためバルブが吸着器 流通孔を塞ぎ,水蒸気の移動を防ぐ.吸着過程時は,蒸発 器の圧力が吸着器より高く,圧力差によりシリコン製のバ ルブが開き水蒸気が移動する.各器間にリードバルブを設 置することで,各器を独立させている.また,圧力変動に よりバルブが開くため,一般の吸着式冷凍機での吸着器の 予冷,予熱過程は設けない.熱交換流体の切り替わり,吸 着コアが予冷,予熱中により吸着器の圧力が変化すること でバルブが開き,吸脱着が進行する. 本検討では,試作機のバルブ設計のため,流通口径面積 が冷熱出力に対する影響を定量評価し,バルブ流通孔の面 積を決定した. 図 6 リードバルブ構造の概略図 3.1 蒸発器,凝縮器の選定 吸着式冷凍機では,蒸発・凝縮器の熱交換能力が小さい とサイクル全体の速度が低下し,得られる冷熱出力が十分 に得られない.本節では,小型高出力の蒸発・凝縮器をコ ルゲートフィンチューブタイプ熱交換器より選定した.選 定した蒸発器の熱交換能力を実験評価した.図 7 に装置概 略図を示す.主な装置構成としては蒸発器用の熱交換器, 熱交換器を内蔵するケース,真空ゲートバルブ,ドライポ ンプで構成される.蒸発器用熱交換器を内蔵する真空用ケ ースには,可視化による蒸発時の現象把握を行う為にアク リル製の VS 型真空デシケーターをベースに実験用に加工 を施したものを使用した.蒸発熱交換能力を測定するため, 排 気 量 の 大 き い ド ラ イ 真 空 ポ ン プ HR90 (最 大排 気量 1860L/min,㈱ULVAC) にて蒸気を回収した.その際に得ら れる冷熱は熱交換流体により回収する.熱交換流体や冷媒 温度の測定には K 型熱電対を,圧力測定には圧力センサー DP2 (㈱SUNX) を用いた. 実験で使用した熱交換器の形状及び実験条件を表 1 に示 す.いずれもコルゲートフィンチューブタイプであり,下 面に真鍮板を取り付け冷媒である水が熱交換部に貯まる (プール状)ように加工した.A のタイプはフィンピッチ が狭く,高さ方向が小さいタイプである.B のタイプは A に比べ,フィンピッチが同様であり高さ方向が深い仕様で あり,C のタイプはフィン高さが B と同様でフィンピッチ が約 1.5 倍のものである.これら 3 タイプの熱交換器を比 較し,フィン高さおよびフィンピッチの影響を検討した. 本検討では,蒸発器用の熱交換器の流体入口温度を 15 0C に設定し,流量 Ffluidを 5.5 L/min とした.熱交換流体の温 度差が安定した状態からバルブを開き蒸気を真空ポンプで 回収した.その際に得られた熱交換流体の温度差∆Tfluidから 冷熱出力 PEVAを算出した.冷熱出力 PEVAを蒸発器熱交換器 のフィン面積 Afinで規格化した.以下に熱交換面積に対す る冷熱出力の算出式を (1) に示す. (1) 図 7 (a) 熱交換器測定部 fin Average fluid fluid fluid fluid EVA A T F Cp P     

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図 7 (b) 実験装置図 表 1 蒸発器用熱交換器の仕様及び実験条件 フィン熱交換面積当たりの冷熱出力の実験結果を図 8 に 示す.また,図 9 に体積当たりの冷熱回収量の推移を示す. 最も冷熱出力が高い結果となったのは A タイプであり, 次いで C,B という結果であった.B と C の比較より,フ ィンピッチが広いほうが性能に優れるという事が確認され, フィン高さの高い B・C タイプに対してフィン高さの低い A の方が,性能に優れた結果となった.結果より,蒸発能 力には,熱交換面積の増大,及びフィン高さの影響が大き いことがわかる.これは,水が蒸発し拡散移動をしていく 際,蒸気拡散抵抗の影響が大きいためと考えられる.最も 体積当たりの 冷熱出力の高い A タイプの熱交換器を蒸発 器とした.A タイプの熱交換器では 300sec あたり 1.31 kW/L の熱交換能力が得られた.また,本実験では,水が蒸発す る際の突沸が生じることが分かった.そのため,蒸発器表 面から蒸発を伴わずミストとなり,蒸発器外に放出され, 吸着材がミストを直接吸着する事になり冷熱出力低下,熱 収支の不均衡を招く可能性がある.そこで,蒸発器の表面 に蒸気移動抵抗はほぼ影響しない 88μm 目開きの SUS メ ッシュを付加することにより,突沸を防止した. 凝縮器の熱交換器では,蒸発器と同様に A タイプの熱交 換器を選定した.凝縮能力は,二段式システムにおける A-BAC の脱着過程を想定した温度条件で評価した.具体的 には高温温度 50 0 C での A-BAC 脱着平衡圧力を平衡線図よ り算出し,その蒸気圧とほぼ同等の水蒸気を熱交換器に供 給し,凝縮熱を熱交換流体で回収し,温度差より凝縮出力 を算出し,フィン面積,熱交換体積で比較した. 実験条件と実験結果を表 2 に示す.結果より, 300sec あ たり 2.07kW/L の凝縮熱交換能力が得られた.設計する小 型吸着式冷凍機は,A タイプの熱交換器を吸着コアの性能 に応じて蒸発,凝縮器の体積を決定する. 図 8 冷熱出力に対するフィンタイプの影響 図 9 体積当たりの冷熱回収量に対するフィンタイプの影響 表 2 凝縮器用熱交換器評価の実験条件および実験結果

Heat exchanger type A B C

Heat exchange volume [L] 0.63 1.26 0.85

Heat exchange fin surface [m2-fin] 0.67 1.34 1.10

Fin pitch [mm] 0.85 0.85 1.28

Fin height [mm] 19 38 38

Evaporator fluid inlet temperature [0C] 15

Evaporator fluid flow [L/min] 5.5

Heat exchanger type A

Heat exchange volume [L] 0.8

Heat exchange fin surface [m2-fin] 0.93 Condenser fluid inlet temperature [0C] 30

Vapor pressure [kPa] 7.4

Condenser heat output [W/m2-fin] 1780 Volumetric condenser output [kJ/L-CON] 620 @300 sec

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3.2 吸着コアの性能およびバルブ口径の影響 本研究では,二段式の吸着器を用いるため,吸着コア の体積が重要になる.また, FAM-Z05 コアの脱着では A-BAC コアが水蒸気を吸着し,脱着が促進される.そのた め冷熱を生成する FAM-Z05 吸着材の重量およびコア体積 当たりの冷熱出力が一体型吸着式冷凍機のサイクルに影響 を与えると考えた.一般の吸着式冷凍機では,吸脱着過程 終了後にバルブを閉じて,吸着器の予冷,予熱過程を設け る.しかし,小型吸着式冷凍機は,図 6 に示すようなリー ドバルブによる吸脱着操作である.そのため, 本試験では, リードバルブによる吸脱着操作を模擬した実験装置を作成 し,冷熱出力に対するバルブ口径の影響を評価した.実験 では,吸着コアは銅製コルゲート型の熱交換器に FAM-Z05 を塗布したタイプを使用した.本熱交換器のモジュール部 は横 120×縦 240×高さ 25 mm,(体積 0.8 L), 流路間隔は 8 mm であり,フィンピッチは 1 mm である.FAM-Z05 コル ゲートフィンに厚み 100μm で塗布し,コア一基の吸着材 重量は 190g である. 実験装置の概略図を図 10 に示す.前節で検討した蒸発器 及び,吸着コアを設置した吸着器,流通孔を備えたプラス チック製ボードで構成される.水蒸気はボードの流通孔を 通過して,吸着器へ移動する.流通孔は 3.0, 0.03 cm2 (直径 2, 0.2 cm 相当)の断面積があり,冷熱出力に対する孔径の影 響を評価した.実験装置には冷水温度 18 0C,冷却水温度 30 0C,熱源温度 50 0C を想定した恒温槽を設置し,温度制 御された熱交換流体を各器に 1.5L/min 供給した.各器の熱 交換流体の出入口に白金測温抵抗体と流量計を取り付けて おり,熱交換流体の温度,流量を連続測定可能とした.ま た,吸着器の流体切り替え弁を備えており任意の時間で流 体を切り替えることが可能である. 以下に冷熱出力を示す式を示す. 図 10 実験装置の概略図 (2) 図 11 に冷熱出力に対する流通孔面積の影響を示す.冷熱 生成過程における 0 sec は流体切り替えのタイミングであ る.3.0 cm2の条件では, 冷熱出力が 300sec あたり 125W 得 られた.また,0.03 cm2の条件より冷熱出力が大きく向上 した.これは,流通孔の断面積の増大により,吸着器へ流 入する水蒸気移動量も増大する. 冷熱出力を十分に得られ る水蒸気量を供給できるためである. 本検討より,小型吸着式冷凍機の冷熱出力が最大得られ る流通孔面積を 3.0 cm2とした. 図11 冷熱出力に対する流通孔面積影響 4.試作機の駆動特性 以上の検討より,小型吸着式冷凍機を設計し,サーバー ラック内に搭載可能な試作機を製作した.装置の外観図を 図 12,13 に示す.本試作機は,図 4 で示した機器構成であ り,蒸発器に前章で検討した熱交換器を設置し,凝縮器も 蒸発器と同形式の熱交換器を設置した.蒸発器と凝縮器の 熱交換器体積は,0.8 L のものを使用した.さらに,蒸発器 に冷媒を独立して注水できるような構造とした.各器はリ ードバルブを介して接続されており,流通孔の断面積は 3cm2とした.また,FAM-Z05 吸着コアを 8 基,A-BAC コ アを 4 基搭載し,片面側のハーフサイクルで FAM-Z05 吸着 コアを 4 基,A-BAC コアを 2 基利用して駆動する.A-BAC コアは前章で検討した FAM-Z05 コアと同様の熱交換器と し,コルゲートフィンの隙間に活性炭粒子を充填し,熱交 換器外に漏れないように SUS メッシュで覆ったものを使 用した.A-BAC コア一基当たり活性炭吸着材 200g 充填し ており,吸着等温線より活性炭での吸着量は,搭載した FAM-Z05 吸脱着着量より十分多い.本検討での温度条件で は A-BAC コアは十分に吸脱着速度が速いことがわかって いる.そのため,本試作機は,FAM-Z05 吸着速度より冷熱 出力は 300sec あたり 500W 得られる小型吸着式冷凍機だと 予測される.また試作機の総体積はサーバーラックに搭載 60 , Average EVA fluid fluid fluid EVA T F Cp P    

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可能である 63L であり,吸着器が占める体積は 32 L である. 設計した試作機の駆動特性を検討した. 図12 小型試作機の概略図 図13 小型試作機の外観 4.1 実験条件 実験の温度条件を,冷水温度, 冷却水温度, 高温温度を 18,30,50 0C とした.また,試作機は試作機の駆動特性を評 価するため,片面側ハーフサイクルのバッチ試験で実験し た.つまり,蒸発器,凝縮器,FAM-Z05 コア 4 基と A-BAC コア 2 基を用いて実験し,各器には恒温槽からの熱交換流 体を流通させた.流体の温度は,白金測温抵抗体で測定し, 各流体温度の出入口の温度差が生じなくなる時間を平衡時 間とした. 吸着器では流体切り替え弁も備えており,平衡 時間で流体を切り替えることが可能である.本試作機では, リードバルブにより各器を接続している.そのため,従来 の吸着式冷凍機での予冷,予熱時間が存在せず,流体の切 り替えにより吸着,脱着時間が切り替わる.各器各器への 熱交換流体の流量は, 6.0 L/min である. そのため,

FAM-Z05 コアでは 1 基当たり 1.5 L/min,A-BAC コアでは,

3L/min の流量である. 本実験では,試作機の冷熱出力 QEVA,吸着材利用率η, COP の 3 項目を検討した.さらに吸脱着サイクルに対する 冷熱出力,吸着材利用率の変化を検討した.冷熱出力では, 試作機の蒸発器に流通した熱交換流体から得られた温度差 より算出した.吸着材利用率は,蒸発器より得られた積算 熱交換量 QHEXを充填した吸着材重量から得られる理論熱 量∆HADS,DESで除して算出した.理論熱量は,サイクル線図 より FAM-Z05 の脱着平衡圧力が A-BAC の吸着平衡圧力と 等しくなる条件を算出し,吸着等温線より FAM-Z05 の吸脱 着量を算出し,吸着熱を計算した.また,COP は,得られ た冷熱量を FAM-Z05,A-BAC コアの脱着過程時に投入した 熱量で除して算出した.以下に積算交換熱量 QHEX,吸着材 利用率η,COP を算出する式を示す.

     t average fluid fluid fluid fluid HEX Cp F T dt Q 0

(3) 100     W H Q DES , ADS HEX

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(5) 4.2 実験結果および考察 図 14 に実際に冷凍機を駆動した時の蒸発器,1 段目 FAM-Z05 吸着器,2 段目 A-BAC 吸着器,凝縮器における 熱交換流体の出口温度の時間履歴の一例を示す.吸着器の 流体切り替えを行った際に FAM-Z05 コアの熱交換器,吸着 材が冷却されることで,吸着が促進され,蒸発器から冷熱 が生成されているのがわかる.また,A-BAC コアでは,加 熱されることで冷媒が脱着するため,凝縮器の出口温度が 上昇した.さらに流体温度が 1200sec で流体温度が定常に なったため 1200sec を平衡時間とした.その後,吸着器の 流体を再度切り替えると,FAM-Z05 コアは加熱され,冷媒 が脱着し,A-BAC コアへ移動することで FAM-Z05 コアが 再生する. 得られた冷熱出力と吸着材利用率の時間履歴を図 15 に 示す.冷熱出力は,時間当たりの得られた冷熱量を平均し た出力を示す.サイクル時間を短くすることで得られる冷 熱出力は増大し,300sec で 510W 得られた.これは,前章 で得られた吸着コアの冷熱出力から設計した 500 W とほぼ 同等の出力が得られた.吸着材利用率は時間が経過するこ とで増大し,900sec で 80%以上得られ,吸着材が十分に利 用されていることがわかる. 本試作機で得られたサイクルタイムに対する COP の変 化を図 16 に示す.1 サイクルでのサイクルタイムを長くと ることで得られる COP は増大する.平衡時間における COP は 0.26 得られた.得られる COP は小さな値であるが,50 0 C BAC A , DES Z FAM , DES EVA Q Q Q COP     05

(7)

の廃熱を有効に利用可能である二段式システムの有用性は 示せたと考えられる. サイクル試験の結果を図 17 に示す.最大の冷熱出力と吸 着材利用率の履歴を示す.6 回までは冷熱出力,吸着材利 用率はほぼ同等の値で推移した.7 回目では,冷熱出力, 吸着材利用率,ともに低下した.これは,凝縮器の冷媒が, 蒸発器に移動する量が少なく,蒸発器の水が少ないためだ と考えられる.そこで,8 回目に冷媒を追加投入した.そ ののちの 9 回目以降でのサイクルは冷媒を追加投入する前 と同等の冷熱出力,吸着材利用率が得られたため,本試作 機が,安定的に駆動できることが実証された. 図 14 各器における熱交換流体の出口温度の経時変化 図 15 冷熱出力および吸着材利用率の経時変化 図 16 COP の経時変化 図 17 冷熱出力と吸着材利用率に対する繰り返しの影響 5.結言 本研究では,データセンターに適用可能な一体型吸着式 冷凍機を開発し,サーバーラックに搭載可能な試作機を設 計した.その設計した試作機の駆動特性を評価し,得られ た知見を以下に挙げる. (1) 蒸発器,吸着コア,蒸気移動バルブの要素検討より, サーバーラックに搭載可能であり,500W 以上の冷熱 出力が得られる小型吸着式冷凍機を試作した. (2) 小型吸着式冷凍機の試作機では,ハーフサイクルで最 大の冷熱出力は設計とほぼ同等の 540W 得られ,COP は 0.26 を得られた. (3) 試作機では,10 回以上のサイクル駆動試験により,冷 熱出力,FAM-Z05 吸着コアの吸着材利用率の変化から 安定してサイクル運転可能であることがわかった.

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Nomenclature A 熱交換面積 m2 COP 成績係数 - Cp 比熱 kJ・kg-1・℃-1 F 流量 kg・s-1 P 出力 W Q 熱量 kJ T 温度 ℃ t 時間 s W 吸着材重量 kg ρ 密度 kg・m-3 η 吸着材利用率 - ∆H 理論吸着熱 kJ・kg-1 添字 A-BAC 活性炭 ADS 吸着過程 Average 平均 DES 脱着過程 EVA 蒸発器 FAM-Z05 FAM-Z05 fin フィン fluid 流体 参考文献

1) Neil Rasmussen, Electrical Efficiency Measurement for Data Centers, APC, pp.1-19.

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8) M.Z.I. Khan, K.C.A. Alam, B.B. Saha, A.Akisawa, T.Kashiwagi : Study on a re-heat two-stage adsorption chiller – The influence of thermal capacitance ratio, overall thermal conductance ratio and adsorbent mass on system performance, Applied Thermal Engineering, Vol.27, No.10, (2007), pp.1677-1685. 9) 角谷忠義, 小林敬幸, 武井文雄, 吉田宏章, 真鍋敏夫, 安曽徳康, 低温排熱で稼動する異種吸着材を用いた小 型二段式吸着式冷凍機の設計, 2009 年度冷凍空調学会 年次大会 C132, (2009), pp.544-544. 10) 井上誠司,井上哲,小林敬幸,自動車用吸着式冷凍機 の小型吸着器仕様に関する研究,日本機械学会論文集 B 編, Vol.72, No.716, (2006), pp.127-134.

図 7 (b)  実験装置図  表 1  蒸発器用熱交換器の仕様及び実験条件  フィン熱交換面積当たりの冷熱出力の実験結果を図 8 に 示す.また,図 9 に体積当たりの冷熱回収量の推移を示す.    最も冷熱出力が高い結果となったのは A タイプであり, 次いで C,B という結果であった.B と C の比較より,フ ィンピッチが広いほうが性能に優れるという事が確認され, フィン高さの高い B・C タイプに対してフィン高さの低い A の方が,性能に優れた結果となった.結果より,蒸発能 力には,熱交換面積の

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