■ 研究論文
法人税法 と企業会計に関す る基礎的考察
Thecorporateincometaxandcorporateaccounting
神奈川大学大学院 経営学研究科 国際経営専攻 博士前期課程
宮 啓
MTYA,Takashi
■キーワー ド
租税制度、法人税、益金 および損金 、企業会計、納税義務者
1 は じめに
近代 国家 を運営す るにあたって、租税制度 は不 可欠である。 これ は、日本国憲法25条1項 に、「す べての国民 は、健康 で文化的な最低 限度 の生活 を 営む権利 を有す る」 と、規定 されてい ることか ら も明 らかで あろう。 ここでは、国家 は国民 に対 し、
最低 限度 の生活 を保障 してい ることを意味す るも の と理解で きる。 また、国家 が国民 に対 し、最低 限度 q)生活 を保障す るには、社会保険や イ ンフラ 整備 な どの公共 サ ー ビス を提供す る必要 がある。
それ には、最低 限の資金 が必要 となるか ら、 その 資金 を確保す るのが租税制度で ある。
法人税 は、2009年度 の国家予算 におけ る国税 収入 で お よそ30%の割合 を占めて お り、所得税 や消 費税 とな らび、重要 な財源で ある。 その よ う ななかで、法人税 は、 (1)課税 の対 象 とな る利 益 を求 め る際の計算項 目で あ る益金 お よび損金 と、一般 の企業会計で利益 を求 め る際の計算項 目 で ある収益 および費用 との解釈 に誤差 が あること
や、(2)法人 をいかなる立場で解釈す るか、また、
所得税や消費税、住民税 や事業税 などの他 の税金 などとの関係 か ら生 じる二重課税 の排除 などの問 題 が存在 してい る。 この複雑 な法人税 の税制 を明 らかにす ることによ り、今 日の複雑 な租税制度 を 単純でわか りやすい ものにす るための課題 が明 ら か となるのではないか と考 えた。
法人 税 を深 く研 究 す る前 に、 まず、基礎 的研 究 と して、租 税 の機 能 と種 類、意義 や系譜 につ いて大 局 的 かつ、全 体 的 に把握 して お く必要 が ある。 また、法人税 が、いかなる性格で、いかな る会計処理方法で あるのか を明 らかにす る必要 が ある。具体 的には、 まず、第2節で、租税 の全体 を理解す るために、分類 と独 自性 につ いて論 じる。
つ ぎに、第3節で、第二次世界大戦後か ら今 日ま での租税 の系譜 を、戦後期 とシャウプ勧告 と近年 の税制改革 に大別 して論 じ、 そ こか ら明 らか とな る法人税率の推移 とその背景 を体系化す る。 そ し て、第4節で、法人税 の基本事項 と して、法人税 の意義 と納税義務者 を明 らかにす る。 また、法人
140 神奈川大学大学院経営学研究科 『研究年報』 第14号 2010年3月 税法上の計算項 目である、益金 および損金 の意義
を損益法の観点か ら考察す る。 さらに、法人税法 上の会計処理の基準 について論 じ、一般の企業会 計の考 え方 との比較 し、考察 を行 う。
2
租税の分類 と独 自性
2.1 租税の分類方法租税 は、種 々の観点か ら分類 され るが、本稿で は、(1)国税 と地方税、(2)直接税 と間接税、(3) 普通税 と目的税、 とい う分類で租税の種類 を論 じ てい く。 まず、 (1)国税 と地方税 に分類す る方 法では、納税義務者 に対 して国家が賦課 または徴 収す る租税 を国税 といい、地方公共団体が賦課 ま たは徴収す る租税 を地方税 とい う。 さらに、地方 税は、道府県税 と市町村税 とに細分 され る。都道 府県税 と市町村税 にはいかなるものが あるかは、
地方税法により定めている。 ここで、国税 と地方 税 との区別に関連 して注意 を必要 とす るのは、地 方交付税 と地方譲与税で ある。 これ らの租税 は、
国が賦課 または徴収 した租税 を、各地方公共団体 の財政力の均等化 ない し強化のために交付 ない し 譲与す るもので、交付税や譲与税 などとい う名称 の租税 があるわけではない。
つ ぎに、 (2)直接税 と間接税 に分類す る方法 では、転嫁の有無 を基準 とす る区別で、一般 に税 負担の転嫁がな く、法律上の納税義務者 と担税者 が一致す ることを立法者が予定 してい る租税 を直 接税 と呼ぶ1。 また、税負担の転嫁 が あ り、納税 義務者 と担税者が一致 しないことを立法者が予定 してい る租税 を間接税 と呼ぶ2。 た とえば、法人 税や所得税、相続税や固定資産税 などは直接税に 属 し、消費税や酒税 などは間接税 に属す るとい う のが、一般 に行われている直接税 と間接税の分類 す る方法の説明で ある。 しか し、転嫁の有無 は、
必ず しも租税の種類 によって同 じではなく、その 時々の経済状況 によって変化す るため、転嫁の有 無 を単純に区別の基準 として租税 を分渠す ること は正確であるとは言 い難いだろう。 そこで、近年 では、所得や財産 などの担税力 を直接的に表示 し
ていると考 えられ るものを対象 として課 され る租 税 を間接税 と呼ぶ ことが多い3。
そ して、 (3)普通税 と目的税 に分類 す る方法 では、用途の有無 を基準 とす る区分で、特定の用 途がな く一般経費に充て る目的で課 され る租税 を 普通税 といい、最初か ら特定の用途 に充て る目的 で課 され る租税 を目的税 とい う。一般 的に、租税 は、普通税であるのが原則であり、 目的税 は例外 的にのみ認め られている。ただ し、 目的税 と区別 すべ きものに特定財源 とい う概念 がある。 これは、
目的税 とは異 な り、税制上 は用途が特定 されてい ないが、財政上の措置 として、その税収の全部 ま たは一部が特定事業の財源 に充て ることされてい る租税の ことである。 この種の租税 は、特定事業 の財源に充て られ ることとされてい る租税 のこと である。 このよ うな租税 は、特定事業の財源 とし て充て られてい る限 り、実質的には目的税 とは異 な らない。
2.2 租税 が有する 2つの機能
金子宏[2008】によれば、租税 の機 能 は、「国 そ の他 の公共 団体 は、国民 に各種 の公共 サ ー ビス を提供 す ることをその任務 と して存在 してい る が、国家が この任務 を果たすためには、膨大 な額 の資金 を必要 とす る。租税 とは、かか る資金 の調 達 を目的 として、直接の反対給付 な しに強制的に 私人の手か ら国家の手 に移 され る富の呼称 にはか な らない4」 としている。つ まり、租税の機能には、
公共 サービスを提供す るための資金 を調達す るこ とがあると理解す ることがで きる。
もちろん、国家 は、租税 による収入以外に も国 債や印紙収入 などの収入源 を有 してい るが、今 日 における資本主義の もとでは、原則 として営利 目 的の活動 を行わない。ゆえに、国債や収入印紙 な どは原則 として営利活動 を目的 として行われ るこ とか ら、国家が 「公共サービス」 を提供す るため には、その資金 の大部分 を租税 に依存す るはかな いだろう。 そ して、国家がいかなるサービスを国 民に提供すべ きかについては、民主主義の もとで、
国民が自ら投票活動などの政治活動 を通 じて決定
され ることである。
さらに、公共サービスは大別 して2つか ら成 り 立 ってい ると考 えられ る。 まずは、「第一義的公 共サービス」 とも呼ぶ ことができるだろうもので、
国防や裁判、警察や公共事業などのように、私的 に行 うことが困難であり、国家固有の任務 と考 え られ る公共サービスである5。つ ぎに、「第二義的 公共サービス」 とも呼ぶ ことがで きるだろうもの で、公教育や公営住宅の建設などがこれに属す る と考 えられる。本来な らば、 これ らは、需要 と供 給のバ ランスの もとに、市場で提供 され るべきで ある。 しか し、国家が、最低限度の生活 を保障す るために、市場か ら提供 され る程度 をこえて国家 の手で提供す るに値す ると国民が考 えた場合には、
公共サービスとなると考 えられる。
さて、日本国憲法は、財産権 を保障する一方 (憲 法29条) で、福祉 国家の理念の もとに生存権 を 保障 してい る (憲法25条)。生存権 を保障するた めには、各種の社会保障が必要であり、それを行 う過程において、富の再分配が行われる。したがっ て、 日本国憲法は暗黙の前提 として、富の再分配 を国家の正当な機能の一部 としていると考 えるこ とができよう。
そ して、富の再分配の方法 としては、最低賃金 制や農産物価格維持制度などの個人の収入に対 し て保障す る方法がありうるが、租税 を通 じる方法 が最 も適 していると考 えられ る。なぜな らば、裕 福 な者か らより多 くの租税 を徴収 し、それを各種 の社会保障に充てる方法は、つ ぎの2つの理由か ら、最 も適切であると考 えられる。第1は、他の 方法に比較 して摩擦が少ないことである。つまり、
自由主義の もとでは国家による市場経済への干渉 の度合いが少 ないか らである。第2は、社会すべ ての人々に対 し平等に富の再分配 を行 なえること である。 よって、 この方法では、最低賃金制のよ うな特定の職業に従事す る者のみに対 してではな く、社会すべての人々に公共サービスを通 じて富 の再分配の効果 を与 えることができるのである。
そのため、近代国家では、累進課税や相続税の 場合 にみ られ るように、租税 は、富の再分配を目
的として利用 され、それを通 じて役立つ ことを期 待 されているのである。よって、租税の第2の機 能は、富の再分配を目的としていると考 えられ る
6。以上の ように、租税 は、高度 に複雑化 した経 済社会において、公共サービスの資金 を調達す る とい う機能 とともに、富の再分配 とい う極 めて重 要な機能 を有 している。
2.3 租税の特色 とその他課金 との違い
国家は、租税以外 にも収入方法がい くつかあり、
それ らは祖税 とは性質が異なっている。 ここでは、
租税 とその他 の収入方法の違いについて論 じる。
租税 は、国家が公共サービスを提供す るために必 要な資本 を調達す ることを目的 としている。 した がって、公共サービスのために資金 を調達す るこ と以外の 目的で課 される金銭給付は、租税 に区分 されないのである。たとえば、罰金や科料、過料 や交通違反金 などのように違法行為に対す る刑事 上 もしくは行政上の制裁的な性質 を有す る金銭給 付 が これにあたる。 もっとも、租税のなかには、
累進的に課税 される所得税のように、富の再分配 を目的 としていた り、関税のように、国内産業の 保護 を目的としているもの もある。 しか し、それ らは公共サービスのための資金の調達 を目的 とし ている限 りにおいては、課税 としての性質 を失 う
ものではない。
これ と関連 して、租税 は、一方的かつ権力的課 徴金 の性質 をもつ 7。租税 は、国民の財産 の一部 を強制的に国家の資金 として調達す る手段である か ら、国民の財産権 を侵害す るとい う性質 を有 し ているといえるだろう。以上のことか ら、近代国 家 において、租税 の賦課や徴収 が必ず法律 を根 拠 として行わなければな らない (憲法29条) と、
されているのは、租税のこのような性質 によるも のである。 それゆえ、租税は、国家の財産収入や 事業収入のように、いわゆる経済活動に基づ く収 入 とは区別 される。
また、租税は、特別の給付に対す る反対給付の 性質 を持 たない 8。納税義務者 が納税す ることと 同時に、何 らかの形で国家 か ら提供 され る公共
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表1シャウプ税制における租税体系
区分 国税 地方税
道府県税 市町村税
直接税 所得税法人税相続税富裕税再評価税日本銀行発行税 事業税および特別所得税 市町村税
鉱区税 固定資産税
自動車税 自動車税
漁業権税 荷車税
狩猟者税 接客人税
間接税 酒税砂糖消費税揮発油税物品税骨ばい税専売益金関税 入場税 電気ガス税入湯税 遊興飲食税 広告税木材引取税
(出所)金子宏 [2008]39頁を基に筆者作成。
サービスの受益者 となることは確 かである。 しか し、それは間接的関係 に留 まる。 それゆえ、租税 は、各種 の使用料や手数料、特権料 など、直接的 な関係 を有す るもの とは区別 され る。
そして、租税 は、国民の能力に応 じて一般 的に 課 され る点 に特色 を持つ9。 これ は、特定の事業 の経費 に充 て るため、特別 の関係 がある者 か ら、
その関係 に応 じて徴収 され る負担金 とは区別 され るとい うことで ある。 なお、租税 は、一般財政に 充てられ るのが普通で あるが、 あらか じめ特定の 支出に充て ることとされてい る場合 も少 な くない。
た とえば、揮発油税10ぉよび地方道路税 による収 入が道路整備の財源に充て ることなどが挙げ られ る。これ らの租税 について も能力に応 じて一般的 に課 され る限 り、租税の性質 を失 うものではない と考 えられ る。
さ′1ごに、租税 は、金銭給付であることを原則 としてい る11。例外 的に物納 が認 め られ ることも あ る (相税41条) が、 その場合 で も、納付 され
る財産の使用価値 に着 目す るのではな く、金銭価 値 に着 目して物納 が認め られているのである。 し たがって、例外的に認め られている物納であった として も、財産 自体の使用価値 に着 目してな され る公用徴収 とは区別 され るので ある。
3
戦後から今 日までの租税制度の系譜
3.1 戦後の税制改革
第二次世界大戦直後の 日本 は、インフレがす さ ま じく、物価 が1945年 を基準 と して、1949年 ま で に約80倍 に も高騰 したので ある12。 このす さま じいインフレのなかで、戦時下 において創設 され た多 くの臨時的な租税 が廃止 された。 そ して、一 方では、戦後の荒廃 した経済情勢 に対応す るため に、財産税や戦時補償特別税 などの敗戦処理 に関 わる臨時的な租税 が創設 された。 また、戦後の占 領軍 による 「民主化」の流れのなかで、税制 にお いて もアメ リカ税制の影響 を受 けた改革が行われ
た。 まず、所得税 においては申告納税制度が採用 されたほか、課税単位 も従来の世帯単位 か ら個人 単位 に改正 された。つ ぎに、相続税 においては家 制度13の廃止 に伴 い、家督相続 とその他 の遺産相 続 とを区別 して取扱 って きた制度が廃止 された。
そ して、 シャウプ勧告14では、恒久 的かつ安定 的な税制の確立 を目指 し、直接税 を中心に据 えた 近代 的な税制の構築 を目的 とす るもので あった。
所得税 については、利益配当への全額課税や利子 所得の源泉選択課税15廃止 により課税 ベースを包 括的に しなが ら、税率が引 き下 げ られた。 さらに、
所得税の基礎控除などの公正 な課税 を行 うために 必要 と,なる控除制度の充実が図 られた。 また、法 人税 につ いて は、35%の単一税率 を導 入す る一 方 で、1946年 に創設 され た配 当税額控 除 に関 し て、法人は個人の集合体で あると考 える法人擬制 説の立場 をとった。 さらに、 これ を所得税 との二 重課税 を調整す る制度 として位置付 けるとともに 控除率の引上 げが行われた。その他、富裕税の導 入や相続税 と贈与税 を一本化 した累積的取得税制 度の採用、租税特別措置の縮減 が行われた。そ し て、 インフレによる名 目的価値 に課税 を行 うこと を避 けるため臨時的に資産再評価 が行われ、再評 価益 には再評価税 が課 されたのである。
この シャウプ勧告 は、 日本の租税制度が改革立 法に向か うもので あり、近代化に大 きく寄与 した といえるーだろう。 また、それは資産再評価 の提供 に も見 られ るように、現実的な要素 を多 く含んで お り、経済の安定 と成長に も貢献 した。
3.2 近年 における税制改革 とその背景
シャウプ勧告 による税制改革以来 と称 される抜 本 的な税制改革 が1987年9月お よび1988年12月 の税制改正 によ り実施 された。 これ は
、「
『公平、中立、簡素』 を基本理念 としつつ、現在の経済社 会 に適合 レ 高齢化社会や国際化 など将来 を展望 した税制の確立 などを目的 として、所得 や消費、
資産等の間でバ ランスのとれた税体系 を構築す る ことを目指 し声量 のである16」 と、 して行われたo
まず、所得税 につ いては、勤労者 を中心 とした
税負担の累増感 に対処す るため、高い累進性 を有 していた税率構造が見直 されたのである。そ して、
1987年の税制改正 により、従来の10.5%か ら70%
までの15段 階で あった税 率 が、10%か ら50%ま での5段階に改正 された。 そ して、配偶者特別控 除の創設や基礎控除、扶養控除などの人的控除の 引上 げなど、過去最高の幅で、所得税 および住民 税の減税 が行われた。 また、1987年の税制改正で、
マル優17制度 などの原則廃止 と利子所得の源泉の 分離課税が強化 された。 さらには、株式譲渡益の 原則課税化が行われ るなど資産性所得 に対す る課 税が強化 された。つ ぎに、法人税 については、従 来 の42%で あった税率 を1990年 まで に段 階的 に 37.5%に引下 げるなどの改正が行われた。
その後、1989年 の税制改正 以降 には、人 口構 成 の高齢化が急速 に加速 し進展 してい ることや、
所得水準の上昇 とともに中堅所得者層 を中心に税 負担の累増感 が強 まってい ることなどの課題が浮 彫 りになった。 よって、 これ らのような問題 に対 応 した税制の さらなる総合 的な見直 しが求 め られ て きたので ある。 そ して、 この よ うな背景 か ら、
1995年11月に税制改革 が行 われ たので あ る。 こ の改革 は
、「 ( 1 )
活力 ある福祉社会の実現 を目指 す視点に立 ち、中堅所得者層 を中心に税負担の累 進緩和 などによる負担軽減 を実施 す る。 (2)歳 出面の諸措置 を安定的に維持す るため社会の構成 員が広 く負担 を分かち合 うよ う、消費税 について 現行制度 を抜本的に改革 し税率の引上 げにより消 費課税の充実 を図 る。 (3)地方分権 の推進、地 域福祉の充実等のため、地方税源の充実 を図 ることとし、現行の消費譲与税 にかえて 「地方消費税」
(道府県税) を創設す る。 (4)年金等の物価 スラ イ ドに加 え、少子 ・高齢社会に対応す るため、当 面緊急に整備すべ き老人介護対策 と必要最小限の 少子対策 を実施。 (5)当面の経済状況 に配慮 して、
特別減税 を実施す るほか、消費税 にかかる改正 は 1998年 より実施す る18。」 を、目的 として行われた。
そ して、 このような観点か ら社会状況や経済状況 を考慮 しつつ税制の改革 が行 われた。 さらに、そ の後の1999年 にバ ブル経済崩壊後 の厳 しい経済
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情勢のなか、景気対策などの観点か ら、所得税 お よび法人税について税制改革 が行われた。 この改 正 は、 (1) 国民の意欲 を引出す こと等 を目的 と して最高税率 を引下 げること。 (2)扶養控 除額 の加算、 (3)暫定 的な景気対策 として、 中堅所 得層 に配慮 して控除額に上限 を設 けた定率減税の 構築 を目的 として行われたのである。
3.3 法人税率の推移 とその背景
これ まで、第二次大戦後期の税制改革 と近年の 税制改正 か らの租税の系譜 につ いて論 じて きた。
ここでは法人税 に焦点をあて、法人税率の推移 と
税率(%)
その背景 について図 1をもとに論 じてい く。 まず、
1980年 の増税 につ いて は、オ イル シ ョックの影 響 を受 け傾 き始めた国家財政 を再建す るための財 源 を確保す ることを目的 として、法人税の税率が 40%か ら42%へ引上 げ られた。少 し後 の1983年 には、オイル シ ョックの影響 を受けて、低迷 して いた 日本経済が回復の兆 しが見 え始 めて きた時期 である。 そのため、個人の所得税 を減額 し、国民 一人当た りの支出を増や し、個人の消費 を増や し たいとい う狙いか ら、所得税率 を引下げ、その反 動で、法人税率 を暫定的に42%か ら43.3%へ と引 上げることとなったのである。
図1法人税率の推移
1980 1983 1985 19891990 19981999
(出所)財政金融統計月報第684号を基に筆者作成。
年
その後、1989年 に は経 済 が復 調 し、企業 の業 績 が増大 し、 それ に伴 い国家 も税収入が増大 した ために、暫定的に引上 げていた法人税率 を引下 げ たので ある。 そ して、1990年 の税率 の引下 げは、
「公平 ・中立 ・簡素 を基本理念 と しつつ、現在 の 状況の経済社会 に適合 し、高齢化社会や国際化 な ど将来 を展望 した税制の確立等 を目的 として、所 得 弓肖費 ・資産等の間でバ ランスの とれた税体系 を構築す ることを 目指 した もの19」 と、 して行 わ れた。
そ して、1998年 に行 われ た税制 改正 で は、課 税べ 「スの適正化 を図 ることを目的 とし、法人税 率が37.5%か ら34.5%に引下 げることとなったの である。 その後、経済社会 の国際化 が進み、 日本 の法人税率が諸外国の法人税率 に比べて高 いこと か ら、法人が、外国に本社 を移転 して しまうので はないか、そ して、 日本 における税収入 が減少 し て しま うので は ない か、 とい う観 点 か ら、1999 年 に、法人税率 を30%20とい う国際水準並 みに引 下げることとなったのである。
4 法人税の基本事項 と益金および損金 4.1 法人税 の意義 と納税義務者
法人税 とは、法人 の所得 に対 す る租税 で ある。
日本 におけ る法人税 で は、 (1)各事業年度 の所 得 に対す る法人税、 (2) 各連 結事業年度 の連結 所得 に対 す る法 人税、 (3)退職年金等積立金 に
対す る法人税、 (4)解散 の場合 の清算所得 に対 す る法人税、の4つの法人税 か ら構成 されてい る。
このなかで最 も重要で あ り基本 とな るのは、 (1) 各事業年度の所得 に対 す る法人税 で ある。 そ して、
本稿 において対象 となる法人税 もこれ を中心 と し て論 じることとす る。
さて、法人税の納税義務者 は法人で あるが、 そ の種類 によって課税所得 の範 囲が異 な り、法人税 の種類 は、内国法人 と外 国法人 に大別 され る。 ま ず、内国法人 とは、国内に本店又 は主 た る事務所
を有 す る法人 をい う (法税2条1項3号)。 そ し て、無制限の納税義務者 として その源泉 の場所 を 国内外問わず、すべての所得 に対 して納税義務 を 負 う (法税4条1項,5条)。つ ぎに、外 国法人 とは、
内国法人以外の法人の ことをい う (法税2条1項 4号)。 そ して、制 限の あ る納税義務者 と して源 泉 の場所 を 日本国内 と してすべての所得 に対 して のみ納税義務 を負 う (法税4条 3項,9条)。
さらに、内国法人 は、① 公共法人、(釘公益法人 等、③共 同組合等、(む人格 のない社団等、(9普通 法人、 に分 け られてい る (法税2条 5号,6号,7 号,8号,9号)。 まず、①公共法人 とは、法人税法 別表 第1で掲 げ られて お り、地方公共 団体 や各種 の基金、公団、公庫 な どが該 当す る。公共法人 は、
法人税の納税義務 が完全 に免除 されてい る (法税 4条2項)。
つ ぎに、②公益法人等 とは、法人税法別表第2 に掲 げ られて お り、公益法人21や特別法 に基づ い
表2法人の種類 と具体例
法人の種類 具体例
①公共法人 公営企業金融公庫、国際協力銀行、国民生活金融公庫、首都高速道路公団、地方公共 団体、独立行政法人、 日本中央競馬会、 日本放送協会、労働福祉事業団など
(む公益法人等 学校法人、企業年金基金、健康保険組合、厚生年金基金、国民年金基金、社会福祉法人、
宗教法人、税理士会、 日本税理士会連合会、 日本赤十字社など
③協同組合等 漁業協同組合、商工組合中央金庫、消費生活協同組合、信用金庫、森林組合、水産加 工業協同組合、農業協同組合、労働金庫 など
④人格のない社団等 人格のないm 、人格のない同窓会、人格のない労働組合など (出所)筆者作成。
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て設立 された各種の非営利法人が該当す る。 また、
公益法人等は、所得の うち収益事業か ら生 じた所 得のみが課税の対象 とされ (法税7条)、普通法 人に対する税率 よりも低い税率で課税 されている (法税66条 3項)。 また、③協 同組合 等 とは、法 人税法別表第3に掲 げられてお り、農業協同組合 や信用金庫 などといった、各種の協同組合が該 当 す る。 また、協同組合等は、すべての所得に対 し て課税 され るが、普通法人に対す る税率 よりも低 い税率で課税 されている (法税66条3項)。 そ し て、④人格のない社団等 とは、法人でない社団又 は財団で代表者又は管理人の定めがあるものをい い、人格のないm や同窓会 などが該当す る。 ま た、人格 の ない社 団等 は、公益法人等 の場合 と 同様 に、所得 の うち収益事業 か ら生 じた所得 に ついてのみ課税の対象 とされ る (法税7条)。 な お、人権のない社団等の税率については普通法人 と同 じであるO さいごに、(9普通法人 とは、①か ら⑤以外の法人のことをいい、株式会社や合名会 社、合資会社 などの営利法人がこれに該当 し、い わゆる一般的に使用 されている企業のことを指 し、
また、税率は通常の税率が課 される。
4.2 損益法からみる益金および損金の意義 法人税 の課税標準21は、各事業年度23の所得 の金額 としてい る (法税21条)。 また、各事業年 度の所得の計算方法は、一般 に公正妥当と認め ら れ る会計処理24の基準 に従 って計算 され、その事 業年度 の益金 の額 か らその事業年度 の損金 の額
を控除 した金額 としている (法税22条1項,4項)。
そ して、 この計算方法は、今 日における企業会計 の損益法 を前提 に行われてい る。では、つ ぎに、
法人税額の計算 において最 も基本的かつ重要な問 題であるところの、益金 と損金 を明 らかにす る。
まず、益金 とは、法人税法22条2項 において、
「内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上 当 該事業年度の益金の額に算入すべ き金額は、別段 の定めがあるものを除き、資産の販売、有償又は 無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償によ る資産の譲受 けその他の取引で資本等取引25以外
の ものに係 る当該事業年度 の収益の額 とす る
。 」
と、規定 されている。別段の定めとしては、受取 配当等の益金不算入 (法税23条)、資産の評価益 の益金不算入等 (法税25条)、還付金等の益金不 算入 (法税26条)、 タックスヘ イブン対策税制に おける特定外国子会社等の留保金額の益金算入 (粗特66条6項)などが挙げ られる。 また、益金 は、
別段の定めがあるものを除き、資産の販売、有償 又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償 による資産の譲受けその他の取引で資産等取引以 外 の ものに係 る当該事業年度 の収益 の額 とす る (法税22条2項) と、規定 されてい る。 この場合 においては、時価相当額が適用 され ることになる。
適正所得算出説によると、 この規定は、正常な対 価で取引 を行った者 との間にかかる負担において 公平性 を維持 し、同時に法人間の競争中立性 を確 保す るために、無償取引か らも収益が生ず るもの とするとい う目的で設け られた規定であると解す べ きである26。
そ して、損金 とは、法人税法22条 3項において、
「内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当 該事業年度の損金の額 に算入すべ き金額 は、別段 の定めがあるものを除 き、次に掲げる額 とす る
。 」
と、規定 されている。なお、「次に掲 げる額」 とは、
「‑、当該事業年度の収益 に係 る売上原価、完成 工事原価 その他 これ らに準ずる原価の額、二、
に掲げるもののほか、当該事業年度の販売費、一 般管理費その他の費用 (償却費以外の費用で当該 事業年度終了の 日までに債務の確定 しない ものを 除 く。)の額、三、当該事業年度の損失の額で資 本等取引以外 の取引に係 るもの
。
」 と、規定 され ている。 なお、「別段の定め」 としては、資産の 評価損 (法税33条)、役貝の給与等 (法税34条)、寄附金 (法税37条)などが挙げ られ る。
4.3 法人税における会計処理の基準
先に述べたように、法人税の課税標準は、一般 に公正妥当と認め られ る会計処理の基準に従 って 計算 され る (法税22条4項)。 これは、税務会計 において も原則 として企業会計に準拠 して行われ
るべ きであることを意味 してお り、 この ことを企 業会計準拠主義 とい う。 これは、法人税法が、会 計の三重構造 を前提 としていると言 えよう27。
会計の三重構造 について、 (1)法人税法22条 4項 における 「益金 の額及び損金の額 は一般 に公 正妥当 と認 め られ る会計処理の基準 に従 って計算 され るもの とす る。」 とい う規定 と、 (2)会社法 431条 における 「株式会社 の会計 は、一般 に公正 妥当 と認め られ る企業会計の慣行 に従 うもの とす る。」とい う規定 と、(3)会社法614条における 「持 分会社の会計 は、一般 に公正妥当 と認め られ る企 業会計の慣行に従 うもの とす る
。
」 とい う規定 と、(4)法人税法74条1項 における確定 申告の規 定 の文中にある「‑ (中略)‑確定 した決算 に基づ き」
とい う文言、 これ ら4つ を総合 して検討す るとし ている。 これ らか ら考察す ると、企業所得の計算 において企業会計が根底 にあり、 そ して、企業会 計 を基礎 として会社法の会計規定があるといえる。
さらに、その うえに税務会計があるといえる。 こ れ を会計の三重構造 とい うことがで き28、法人税 は、それ を前提 としていると理解す ることがで き るだろう。
以上のことか ら、一般 に公正妥当と認め られ る 会計処理の基準の中心 となってい るのは、企業会 計であることがわかる。つ ま り、法人税法におい て も、一般 に公正妥当と認め られ る会計処理 を基 礎 として課税標準 を計算 していることは明 らかだ ろう。 そ して、その指針 といえるのは企業会計原 則であ り、 さらには、中小企業の会計 に関す る指 針29、会社法 および金融商品取引法 な どであると 言 えよ う。 しか し、 これ らについては注意 しなけ ればな らないことがある。 それは、企業会計原則 の内容や確立 した会計慣行が、必ず しも公正妥当 とは限 らないことである。 なぜ な ら、企業会計原 則 は、基本的な事項 に限 られてい るため、その解 釈 は個人 によって多少の誤差 が生 じて しまい、応 用的な会計処理につ いて異 なった金額 となる可能 性 が存在す るのである。 そ して、最終的になにが 公正妥 当な会計処理の基準で あるかを判定す るの は、国税庁や国税不服審判所の任務であり、最終
的には裁判所 なので ある。 くわえて、 これ らに関 す る通達や裁例 などは、企業会計の内容 を補足す る機能 を果 た してお り、税務会計が逆に企業会計 に影響 を与 えてい るともい えよ う30。 また、 これ らの ことを学問的または理論的に追及 してい くの が会計学 または租税法学の任務 なので あ り31、両 者 は密接 な関係 にあるといえるだろう。
5 おわ りに
租税制度 は、公共サービスを提供す るのに必要 となる資本 を調達す ることを目的 としてい る。国 家がその役割 を果たすためには、膨大 な額の資金 を必要 とす るが、租税制度 こそがその資金 を調達 す るための手段 なので ある。 また、租税制度 は、
日本国憲法の もとに富の再分配機能 を有 してい る ことが明 らか となった。そ して、租税の系譜 を明 らかにす ることによ り、今 日における租税 がいか なる背景や 目的 を有 し今 日の租税制度 に至 ったか が明 らか となった。 そこか ら、重要 な財源の一つ である法人税の系譜 をその背景 とともに体系化 し た。
さらに、法人税の基本事項 をまとめることによ り研究課題が明 らか となった。 それは、法人税の 税額計算 を行 う際に、一般 の企業会計基準 を原則 としなが らも、企業会計の会計処理 とは、必ず し も一致 しないことである。つ まり、企業会計上の 収益 および費用 と、法人税法上の益金 および損金 とではその解釈上 に若干の誤差 が生 じてい る。 そ こで、今後の課題 としては、 まず、本稿で明 らか となっていない、基本事項以外の事項 につ いて研 究 を行い、そこか ら、基本事項 を含めた法人税法 の全体像 を明 らか にす る。 また、人税 法22条2 項の別段の定めに規定 されてい る各項 目に焦点 を 当て、各項 目の益金 および損金 の解釈 につ いて、
一般の企業会計 との比較や解釈上の問題点 を明 ら かに したい。
148 神奈川大学大学院経営学研究科 『研究年報』 第14号 2010年3月
注
1 金子宏【2008]12頁.
2 金子宏[2008112頁.
3 金子宏【2008】12頁.
4 金子宏[2008]1貢.
5 金子宏【200812貢.
6 金子宏[2008】4頁.
7 金子宏【200819貢.
8 金子宏[2008】8頁.
9 金子宏【2008]9頁.
10ガソ リンなどの燃料 となる油 に関す る租税で ある。
11金子宏[2008】9頁.
12日本税理士会連合会編[1979】.
13 1898年 の旧民法 によ り規 定 され た家族 制度 であ り、親族 関係 を有す る者の うち、 さらに 狭い範囲の者 を、戸主 と家族 として一つの家 に属 させ、戸主 に家の統率権限 を与 えていた 制度である。
14 シャウプ勧告 は、連合国軍最高司令官の要請 に よ り1947年 に来 日した カール ・シャウプ 博士 を中心 とす る使節団により作成 され、同 年9月15日に 日本税制 の全面 的改革案 と し て発表 された ものである。
15個人の所得の源泉がどの程度で あるかを国家 が決定す る。
16政府税制調査会【1988】.
17マル優税制 とは、元本350万 円までの適用金 融商品の利息 を非課税 とす る措置の ことをい う。 なお、 マル優 税 制 の対 象者 は、1988年 よ り、障害者等に該 当す る者 (身体障害者手 帳の交付 を受けている者、遺族基礎年金受給 者である被保険者の妻、寡婦年金受給者 など)
に限定 されている。
18財務省【1995]. 19財務省【1999】.
20 ここでの法人税率 とは単に、国税 としての法 人税率のみ を表示 しているのであって、実際 に、法人税額 を計算す る際には、住民税や事
業税 などの地方税 を含 めた法廷実効税率が用 い られ てい る。 なお、2009年 におけ る税 率 は40.86%で ある。
21ここでい う公益法人 とは、従来の公益法人 を 指す もの とす る。 なお、2008年12月1日以降 は、従来の公益法人 は廃止 され、一般社団法 人及び一般財団法人、公益社団法人及び公益 財団法人が創設 されている。 これ らの公益法 人の法人税法上の取扱いについては、第4章 で述べている。
22課税標準 とは税金 の納付額 を計算す る際に、
税額の基礎 とな り、 これに、税制 を乗 じるこ とにより、税額 を求 める基礎 となる計算項 目 である。
23法人税法における事業年度 とは、会計期間で 法令で定め るもの、又は法人の定款、寄附行 為、規則、規約 その他 これ らに準ず るもの (定 款等) に定めるもの をい う。法令又は定款等 に会計期間の定めがない場合 には、事項の規 定により納税地の所轄税務署長に届 け出た会 計期間又 は所轄税務署長が指定 した会計期間 等 を事業年度 とす る。ただ し、 これ らの期間 が1年 を超 える場合 は、 その機 関 をその開始 の 日以後1年 ご とに区分 した各期 間 をい う
(法税13条)。
24企業計算規則 によると1条 に企業会計は一般 に公正妥当 と認め られた会計処理 を行わなけ ればな らない と規定 されている。
25資本等取引 とは、法人の資本金等の額の増加 又 は減少 を生ず る取引、及び法人が行 う利益 又 は剰余金 の分配 (資産流 動化法115条1項 の中間配当を含む) をい う (法税22条5項)0 26金子宏【2008】251頁.
27金子宏【2008】252頁.
28金子宏[2008]256‑257頁.
29中小企業の会計 に関す る指針 とは、 日本税理 士会連合会、 日本公認会計士協会、 日本商工 会議所、企業会計基準委員会の4団体で作成
した指針である。
30金子宏[2008]258頁.
31金子宏【2008】258頁.
参考文献
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