• 検索結果がありません。

英語教育におけるイマージョン・プログラムについて の考察

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "英語教育におけるイマージョン・プログラムについて の考察"

Copied!
18
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

【研究報告】

英語教育におけるイマージョン・プログラムについて の考察

─日本及び韓国の小中学校の事例に関する検証─

新保 敦子・李  恩珠

キーワード:イマージョン・プログラム、宿泊型研修、小中学校、ワールドスクール

【要 旨】本稿の課題は、英語教育におけるイマージョン・プログラムについて、宿泊型研修を含めながら 日本及び韓国の事例をとりあげ、その実態を検証することにある。日本については東京都荒川区の公立中学 におけるワールドスクールという宿泊型研修を、また韓国については国内留学という趣旨から開設された英 語村の事例に基づきながら検討していく。

荒川区では2003年に「国際都市『あらかわ』の形成特区」として構造改革特別区域の認定を受け、構造 改革特別区域研究開発学校設置事業として、小学校の教育課程に英語科を設置した。翌2004年度からは、

区内全小学校(28校)において、第1学年から第6学年で英語の授業を実施してきた。これは、2011年から 必修化された小学校における外国語活動を先取りするものであり、公立小学校としては先進的な取り組みで あった。

さらに国際コミュニケーション能力の育成を目指して、「ワールドスクール」という小学校高学年を対象 とした4泊5日の夏期英語セミナーを2004年度から実施している(新保、2019)。中学生を対象とするワー ルドスクールも、2016年度からは秋田県の協力を得て、国際教養大学のプログラムであるEnglish Villageに 参加する形で実施されている。ワールドスクールは、区が音頭をとり公立小中学校の生徒を対象としていて 実施している点で、画期的な研修と考えることができる。

本稿では、宿泊型研修である中学生向けのワールドスクールに焦点をあてながら、研修内容、指導者、具 体的場面での指導、教育効果などについて検証し、英語教育における宿泊型研修の意義について明らかにし ていくものとする。

また、隣国の韓国に目を向ければ、英語教育には熱心に取り組んできた。本稿では、英語村という英語の イマージョン・プログラムを行う施設について、検証していくものとする。

総じて、本稿の課題は、英語のイマージョン・プログラムについて、日本及び韓国の事例を検討しながら、

その効果について考察することにある。

はじめに

本稿の課題は、英語教育におけるイマージョン・プログラムについて、宿泊型研修を含めなが ら日本及び韓国の事例をとりあげ、その実態を検証することにある。日本については東京都荒川 区の公立中学におけるワールドスクールという宿泊型研修を、また韓国については国内留学とい

(2)

う趣旨から開設された英語村の事例に基づきながら検討していく。

荒川区では2003年に「国際都市『あらかわ』の形成特区」として構造改革特別区域の認定を受 け、構造改革特別区域研究開発学校設置事業として、小学校の教育課程に英語科を設置した。翌 2004年度からは、区内全小学校(28校)において、第1学年から第6学年で英語の授業を実施し てきた。これは、2011年から必修化された小学校における外国語活動を先取りするものであり、

公立小学校としては先進的な取り組みであった。

さらに国際コミュニケーション能力の育成を目指して、「ワールドスクール」という小学校高 学年を対象とした4泊5日の夏期英語セミナーを2004年度から実施している(新保、2019)。中 学生を対象とするワールドスクールも、2016年度からは秋田県の協力を得て、国際教養大学のプ ログラムである

English Village

に参加する形で実施されている。ワールドスクールは、区が音頭 をとり公立小中学校の生徒を対象としていて実施している点で、画期的な研修と考えることがで きる。

本稿では、宿泊型研修である中学生向けのワールドスクールに焦点をあてながら、研修内容、

指導者、具体的場面での指導、教育効果などについて検証し、英語教育における宿泊型研修の意 義について明らかにしていくものとする。

データとしては①ワールドスクールにおける参加者アンケート結果(2016年度〜2017年度)、

②2017年度及び2019年度ワールドスクールにおける参与観察(2019年8月5日〜6日)、③教員、

参加生徒への事後インタビュー(2018年、2019年)、以上などから論じていく。

また、隣国の韓国に目を向ければ、英語教育には熱心に取り組んできた。本稿では、英語村と いう英語のイマージョン・プログラムを行う施設について、検証していくものとする。

総じて、本稿の課題は、英語のイマージョン・プログラムについて、日本及び韓国の事例を検 討しながら、その効果について考察することにある。

本稿の構成は、第1部で、荒川区における中学生を対象とするワールドスクール、第2部で韓 国における英語村について考察する。

第1部 荒川区におけるワールドスクール 1.英語教育調査の分析

はじめに、荒川区の中学校(第7中学、2016年度)で実施された英語に対する意識調査から、

中学生の英語学習に対する実態を検討していこう。

(1)英語に対する意識

まず「英語の授業は楽しい」の割合は、中学校1学年で「そう思う」66%、「どちらかといえ ばそう思う」30%(合計96%)で圧倒的に多数が楽しいと思っている。しかしながら、3年生 は、「そう思う」40%、「どちらかといえばそう思う」48%(合計84%)で、英語の授業が楽しい と思う割合が減少している。

(3)

また「英語は好きですか」という問いに対して、1年は、「そう思う」51%、「どちらかといえ ばそう思う」32%(合計83%)であり、英語が好きな割合が高い。それに対して3年生は、「そ う思う」36%、「どちらかといえばそう思う」39%(合計75%)であり、英語が好きな割合が減 少している。

学年による違いもあるかもしれないが、文法中心の英語教育の中で、学年が上がるに伴い、英 語が楽しくない、英語に苦手意識を持つ生徒が増えていると言えるかもしれない。

事実、「英語の授業の内容を理解していると思いますか」という質問に対して、1年は「理解 している」は35%、「どちらかと言えば理解している」50%、「どちらかと言えば理解していな い」10%である。それに対して3年は「理解している」15%、「どちらかと言えば理解している」

49%、「どちらかと言えば理解していない」32%である。学年が上がるにつれて英語の授業の内 容を理解している割合が減少しており、3年になると「どちらかと言えば理解していない」とい う割合が3人に1人になっていることは、課題といえよう。

(4)

しかしながら、別の質問項目で、「英語を身につけることは将来役に立つと思いますか」に対 して、「そう思う」は1年生74%、3年85%である。英語を身につけることは将来役に立つと考 えている中学3年生は多いのである。

(2)これからやってみたいこと

これからやってみたいことの中では、外国の人と友達になること、海外旅行に行くことの割合 が高い。外国の人と友達になることについて、1年は「やってみたい」52%、「どちらかといえ ばやってみたい」24%(合計76%)である。また、3年は、「やってみたい」60%、「どちらかと いえばやってみたい」27%である。

海外旅行は、1年は「やってみたい」63%、「どちらかといえばやってみたい」17%(合計 80%)、3年は「やってみたい」71%、「どちらかといえばやってみたい」13%(合計84%)である。

英語を使った仕事をすること、海外で学ぶこと、という割合は、学年が上がるにつれて高くな る。英語力の向上にともない、海外に目を向ける割合が増えると考えることができる。

(5)

(3)英語学習の中で楽しいこと

英語学習の中では、英語で友達と会話すること、外国のことを学ぶことを楽しいとする割合 が高い。英語で友達と会話することが1年は、「楽しい」58%「どちらかといえば楽しい」31%

(合計89%)、3年は「楽しい」44%「どちらかといえば楽しい」43%(合計87%)である。

一方で、英語で自分の考え等をスピーチすることは、楽しいとする比率が低い。「楽しい」が 23%、3年は「楽しい」が20%に対して、「どちらかといえば楽しくない」が、1年22%、3年 31%である。

自分の考え等をスピーチすること、日本のことを英語で紹介することに対しては苦手意識が強 い。その意味で、ワールドスクールは貴重な場を提供していると言えよう。

2.中学ワールドスクール

荒川の中学生に対するワールドスクールは、秋田にある国際教養大学の内田浩樹教授が開発し

English Village

に委託して実施されている。荒川区から参加希望中学生を募り、夏休みに開催

され(2019年度は、区内の9中学から約30名が参加)、費用負担は約17

,

000円である。

プログラムとしては、2泊3日のプログラムであるが、その前に秋田での市役所訪問、市内見 学及び農業体験が一日組まれているため、中学生にとっては3泊4日のプログラムである。

English Village

の特徴としては、大学生による運営ということがある。プログラムは、全体統

括のディレクター(大学生)を中心として実施されており、5〜6人が1グループとなり、6グ ループで構成される(2019年度)。また各グループにリーダー(2人、内1人はベテラン、1人

(6)

は補助)、さらに留学生がつく。2019年度の留学生は、フィリピン、中国、台湾、韓国、カナダ、

ベトナムの出身であった。アジア地域の英語が母語ではない人(フィリピン、韓国、中国、ベト ナム)とも英語で交流することができることを体験できる内容であった。

またグループでの作業の時にも、リーダー+サブ・リーダー+留学生(以上3人)の他にディ レクター(2人)が適宜加わり、5人で1人の生徒を見てきめ細かい指導がなされていた。

また、プログラムの構成内容は、以下の通りである。

1日目:開会式、ウォームアップ、英語で説明してみよう(

Guess What

?)、ヘルスバレー ボール、50分で発音記号をマスターする

2日目:留学生へのインタビュー、プレゼンはこうやろう、グループに分かれてのプレゼン テーション準備、

3日目:プレゼンテーション準備(リハーサル)、プレゼンテーション、閉会式

3日目のプレゼンの内容は、各グループに1人いる留学生に、それぞれ各国のこと、その留学 生個人についてインタビューをし、それをまとめてプレゼンするという内容である。

生徒1人あたりの発言は、ほぼ80ワードである。人前で発表する、なおかつ英語で発表すると いうのは、中学生にとっては、かなりハードルが高いものであった。しかしディレクターやリー ダーの指導と中学生の努力によって、立派なプレゼンテーションを発表していたのには、驚かさ れた。

3.ワールドスクールの調査から ─ 学習方法・内容について

(1)プレゼンについて

① どういうプレゼンがいいのか、自分で考え気づかせる

プレゼンの指導では、まず、カピバラ、方言、筋トレ、トイレでの手洗いのプレゼンをそれぞ れ2パターン見せる(文章読み上げ

vs.

パワポ、質問なし

vs.

質問あり、視線向けない

vs.

視線向け る)。二つの内、どちらが良かったか、良かったとすればどこが良かったのか。また良くないと 思った方も、良い点はないのか、生徒に指摘させる。

② より良いプレゼンのためのスキル・トレーニング

たとえば、プレゼン時に使用するメモ(キーワードが記されている)の使い方を指導してい た。せっかちになりがちな学生に対して、手をゆっくりと叩きながら、声をゆっくりと出させる といった指導もしていた。また、プレゼンの練習のため、近くから、少し距離をおいた所、さら に離れた所に立って話をさせるというように、距離をだんだんととることで、部屋の後ろにいる 人にも声が届くようにトレーニングしていった。

③ 話の聴き方のトレーニング

プレゼンの練習だけでなく、話の聴き方のトレーニングを行っていたのが印象的であった。お もしろそうな話の時には、いかにもおもしろそう!というように声を出すという指導が行われて いた。このため、発言することに、生徒は自信を持つことができるようになった。

(7)

(2)チームワーク重視

個々人のプレゼンとともに、

English Village

では、チームワークを徹底して重視していた。ク ラスや同じ班の結束力を高め、集団の力を活用しながら、間違っても大丈夫といったチャレンジ を可能にする雰囲気づくりを行っていたことは特筆に値する。

たとえば、プレゼンの時に、あがっても対応できるように、次のプレゼン予定の人が控え、言 葉が出てこない時には、ウイスパーで教えるようにあらかじめ訓練がなされていた。

また、プレゼンの時に、自分の発表だけに注意を向けがちであるが、グループの他の発表者の 時も整列し、その人のプレゼンが興味深そうというように聴くという指導がなされていた。

こうしたチームワークの形成のために、食事の時に全員がくつろげる雰囲気づくりがなされ、

全員が会話に加われるようにリーダーが気配りをしていた。また、グループでのプレゼンテー ションの相談の時に、一部の生徒の発言が先行した場合、他の人の意見を聴くように、リーダー が促すなどの配慮があった。

こうしたチームワークの重視は、全体の前で発言しない日本人学生(間違えることや目立つこ とへのためらい)への配慮がなされていて、日本人に適合的なプログラムとも言える。他のグ ループのプレゼンに対して質問をする場合でも、一度、グループで相談をして何を質問するか決 め、全員で一斉に英語で質問する方法をとっていた。

そのため、ためらうことなく英語で積極的に質問ができる。日本人学生を発言させる優れた手 法と思われた。

また、

English Village

の目標設定として、グループプレゼンを行い、グループプレゼンの優秀

賞へ向けての努力がなされている。これは生徒だけでなく、リーダーや留学生にとっても、共通 の目標となっており、成果をあげるために、練習を積み重ねる仕組み作りがなされている。その 結果、2泊3日という短期間であるが、生徒の表情が豊かになり、ジェスチャーも大きくなり、

英語が身体化されていることに驚かされた。

4.参加生徒のアンケート及びインタビュー結果から

English Village

に初めて参加した2016年度の生徒(30名参加)のアンケート結果を紹介したい。

「英語学習に対するモティべーションがあがった」に関して、「おおいにそう思う」96

.

7%であり、

ほとんどの学生が英語学習に関してモティべーションがあがり、「また参加したい」という学生 も96

.

7%に達している。事実、リーダーの中には、

English Village

に参加して、大変に楽しかっ たので、リーダーになりたいということで、秋田国際教養大学を受験して学生になったという者 もいた。それだけ、このプログラムは優れた内容であると思われる。

また、「最終プレゼンテーションを行って達成感があった」に関して、「おおいにそう思う」の比 率は、93

.

3%に達している。ほとんど多くが、達成感を得ていることは特筆すべきことであろう。

一方で、

presentation skills

について「今後、プレゼンテーションを作る上で参考になった」と

いう質問項目で、「大いにそう思う」の比率が83

.

3%であるのに対して、「今後の英語学習の参考 になったものはありますか」という質問項目に関して「まったくそうは思わない」という比率が 100%に達している。文法中心の学校の授業には役に立たないという意味と思われるが、この点、

(8)

English Village

で学んだ経験を、学校での英語学習にどのように生かすかは、大きな課題である ように思われる。

また、参加中学生へ、参加した半年後にインタビユー調査を実施した。その中では、英語学習 が楽しかった、また英語学習だけではなく、グループワークや、一緒の食事が楽しかった、と いう意見があった。事実、チームビルディングのために、ヘルシー・バレーボールがプログラ ムの中に組まれている。また、生徒は、学校では間違ったことを言うと、笑われるが、

English

Village

では、間違ったことを言ってもいいという雰囲気があった、だからこそ積極的に発言でき

たという。

その他、「授業で、こんなに楽しかったのは初めてということはないけれど、久し振りだった」

「自信がついた。9月に学校に戻ってきて、いろいろと発言するようになった」「(英語で言うと きに)難しい言葉で言おうとするのではなく、簡単な言葉で言い換えればいいと思うようになっ た」という意見があった。

以上のように、参加生徒から高く評価されている

English Village

は大きな成果をあげている。

日常の英語学習との連携が、今後の課題として指摘できよう。

第2部 韓国社会における英語村の実態 1.英語村発展の背景

韓国における学歴社会及び教育熱は世界的に周知のことがらである。特に英語能力は、就職及 び進学のための最も重要な指標として韓国の教育熱を主導してきた。

そもそも韓国における早期教育及び英語熱は、1990年代の金泳三大統領のグローバル化政策か ら始まったと言える。このグローバル化政策は、日中韓において同時にブームになっていたが、

慎重に準備を行う日本や、高度成長期にあった中国に比べて、変化に敏速な韓国社会の方がより 早く国民的なブームになったのである(朝鮮ビズ、2016)。

韓国で英語学習は、「早期留学」や「英語幼稚園」による発音及び会話を中心に行われてきた。

しかし、1997年度から英語は小学校の3年生から正規科目として規定されると同時に、本格的な 教育熱の中核科目となった。それに加え李明博政権はエリート主義に基づいた「英語公用化政 策」に、より積極的に取り組んできた(2008年度)。当時、教育関係者は、「アメリカに行くと

「オレンジ」じゃなく「オーリンジ」である、「オレンジ」じゃ通じない」と主張し、発音を中心 とした「イマージョン英語」の必要性を強調したのである(

ohmynews,

2008)。そのため全国に ネーティブ英語塾が急増し始め、不安を感じた親を中心に、韓国語を覚える前に英語を覚えさせ るのに必死になった。この英語公用化政策の骨子(〈表1〉参照)をみると、小・中・高校にお いて、英語時間数及び英語専門講師が大幅に増加したことがわかる。

実際、その時期から韓国教育のホットスポットとも言えるソウルの「江南地域」では、6か月 以前の幼児クラスの英語塾さえ登場し人気となった(李恩珠、2018)。当時の韓国教育技術科学 部の調査によると、1

,

000名の親を対象にしたアンケート調査で、710名が小学校における英語教 育時数を拡大することに賛成し、教師の51%以上が賛成した結果となった。

学歴主義の根強い韓国社会において、早期教育は、「学力」のためではなく、なによりも名門

(9)

大学へ入学するためである。特に月20万円の「英語幼稚園」の繁栄は、韓国社会における格差の 象徴となった。例えば、2018年度「育児政策研究所」が、1

,

119世帯を対象にした調査によると、

公立幼稚園費が平均5万2千ウォン(約5千円)、私立幼稚園費が平均27万3千ウォン(約3万 円)に比べて、英語幼稚園費は平均75万ウォン(約7万5千円)であると報告している。つまり 親の財力によりスタートラインが異なるという、社会的不平等に拍車をかけてきたと言える(世 界日報、2019)。

こうした英語熱によって、地方自治体が競って大型英語村の設置を選挙の公約として掲げるよ うになった。当時、民間英語村に加えて、地方自治体運営の英語村22か所を含め、全国で50か所 以上の英語村が設置され、発展するようになった。これらの英語村は当初は、「国内留学」とし て大変人気があり、利用率が高かった。しかし、現在、財政及び運営の問題から地方自治体の負 担が増えるようになり、また、その用途がグロバリゼーション時代に相応しく変わり始めてい る。つまり、これまでは入試制度中心で、個人の努力や能力で賄ってきた英語教育が、教育改革 が進められる中で、入試の多様化や高校標準化などにより変化しているのである。

そこで、本章では、日本より急速にグローバル化が進められてきた韓国社会における英語村に おける英語学習の成果及び課題について検討を行う。

研究方法としては、韓国社会における英語村の実態を、①大型の英語村、②地域密着型の英語 村、③官民連携型の英語村にわけての紹介し、保護者や生徒に対するインタビュー調査にもとづ いて分析を行う。

〈表1〉2008年度の英語公用化政策の内容 年 度 推進内容

2009年 英語専門教師 6,500名採用 2010年 英語専門教師1次配置(6,500名)

小3、4年生 英語授業 週3時間に拡充 中3、高1の英語授業の「英語原語」により実施 2011年 英語専門教師 1次配置(6,500名)

小5、6年生 英語授業 週3時間に拡充 中2、高2 英語授業の「英語原語」により実施

2012年 修学能力試験(大学入試)の英語科目を「国家英語評価試験」に代替

(聞き取り・読み)

英語専門教師 3次配置(5,500名)

小3〜高3まで、全学年の英語授業の「英語原語」により実施 資料:国民日報(2008. 2. 27)を参考に作成(英語科目のみ編集)。

2.先行研究の検討

韓国社会における英語教育に関する研究は、「効率的なカリキュラム」、「早期留学」、「教育熱」

に関する内容が主流である。そしてアメリカなど、英語圏への留学が圧倒的に多い韓国社会にお ける「国内の英語学習」に関する研究は、かなり認知度が低く、公立学校内の課題に限られて いるといえる。その中で、金ソンギョンは、「小学生の英語村の短期体験が多文化受容に及ぼす

(10)

影響」において、2〜3泊程度の英語村への体験は、英語の実力には可視的な効果が少ないが、

「多文化受容」の点で大きな効果が見られると論じた(金ソンギョン、2018)。また、ジュヒャン アは、「英語村体験が小学生の英語学習における好感度、自信感、学習動機に及ぼす影響」にお いて、英語村に定期的に参加している生徒は、英語教科時間に集中度や関心が高くなっているこ とを検証している(ジュヒャンア、2017)。つまり、「英語村」に関する研究は、「多文化」及び

「英語の体験」に焦点を当てるのが主流であった。

その一方、仁川地域の英語村の成果について研究した輩ウンジュは、540名の生徒や親に対す る、英語村満足度について調査した結果を以下のように分析した。540名中、「英語に対する好感 度」、「学習面の効果」、「英語文化体験」の面において、すべての項目で、90%以上が「満足」し ているし、改善点については、「合宿時の安全」、「レベルの細分化」などに過ぎず、英語村の維 持の必要性を強調している(輩ウンジュ、2015)。この地域は、比較的に教育熱の低い地域とし て、親や生徒が学習面での成果をも評価しているという。

韓国社会における英語村は、人気のある民間塾のプログラムに比べると、「体験中心」である ことから、教育熱の高い都心部では、未だに利用率が低いという現状である。そこで、時代状況 の変化及び多様な入試制度の改革によって、衰退している「英語村」に対する改善要求が高く なってきた。例えば、ソウル市の報告書「ソウル英語村の機能転換の必要性及び運営方案に関す る研究」をみると、小・中・高校生のみの「英語学習」の利用では限界があるため、「多文化時 代」へ向けて、用途を変えていく必要性を強調している(ソウル市、2015)。

そのため現在、大型の宿泊式の英語村から、地域密着型の小規模の英語村が市単位で設置され つつある。特に、急激な少子高齢化の問題に直面している韓国社会において、公立学校の統廃合 が増加しており、空き教室などを利用して英語村化を進める地方自治体も出現している。

また、英語科目の成績を大切にする韓国の親のニーズが高いため、学習の面では、官民連携型 の英語村は費用が高いにもかかわらず利用者が増加しつつある。

3.韓国の英語村の実態

冒頭にも述べたように、海外現地への留学が日常化している韓国社会において、英語村の人気 は徐々に下がっているのが現状である。例えば、2012年度の「地方自治体における英語村の運営 実態や今後の課題」によると、地方自治体運営で10か所以上が運営難などから、利用対象の拡大 のために、「文化体験センター」、「国際化センター」、「人材養成センター」などへと、変化して いると指摘されている(韓国日報、2017)。しかしながらその一方、貧困層の児童及び多文化家 庭など、私教育を受けられない家庭には、良い影響を及ぼしているという評価もある。

英語村の人気はそもそも京畿道地域から始まった。京畿道知事はその公約として、京畿道の

「安山」地域を皮切りに、英語村の建設を進めた。地方自治体運営の英語村は2016年現在、全国 に20か所が運営されている。この安山キャンプは2004年当時、4週間の「夏休み集中キャンプ」

の200名の募集に対して5

,

887名が応募し、応募倍率は36

.

8:1を記録した。このキャンプに参加 した10名中、9名が「再度参加したい」としており、その理由については、「外国キャンプに類 似したプログラム」と答えている(東亜日報、2004)。

(11)

こうした中で、京畿道の城南市は、「革新都市」及び「小学校の英語教育強化」への支援を積 極的に進める地方自治体として、「地域密着型」の英語体験センターを設置し運営している。

また、代表的な官民連携型「ソウル・イングリッシュ・ビレッジ」は、民間塾を運営した経験 のある

YBM

社が委託して運営していることから、学習の面で民間塾並みの優れたプログラムの 運営から、学生や会社員からも評価されるような官民型へと変貌している。

そこで、以下では、ソウル市教育庁傘下の「グローバル文化言語センター」(宿泊型)、京畿道 城南市教育庁傘下の「地域密着型の

CHONGSOL

英語体験センター」、ソウル市の官民連携型の

「ソウル・イングリッシュ・ビレッジ」を事例として紹介し、分析を行う。

(1)宿泊型の英語村:ソウル市教育庁の「グローバル文化言語センター」

京畿道の「加平」地域の青少年修練館内に所在している「グローバル文化言語体験センター」

は、食事代のみ払えば、誰でも予約して利用できる英語村である。そのプログラムの内容は以 下の通りである(〈表2〉、[写真1]〜[写真4]参照)。その内容を見ると、高齢者のための会 話、文化体験などがあり、「英語学習」に限らないことがわかる。

関係者は、「時代が変わり、(学生向きの)塾のようなプログラムでは、利用率を上げることに 限界があり、生涯学習及びグロバルゼーション時代に相応しい施設に変わりつつある。また、ア メリカなどの現地への留学が増加することにより全国的に衰退してしまい、学生よりは当地域の 住民の利用が増加している。また、教育熱心な地域の学校からは全く利用がなく、地方の学校か らの利用が増えている」と語っている(インタビューから)。

〈表2〉ソウル市教育庁学生教育院の英語村プログラム

プログラム 利用対象 運営時期 回数 募集人数 年間人数 備 考

世界へ 小5 3−11月 24 100 7,300 1泊2泊3泊

未来へ 中1 4−6、

10月 3 100 800 1泊2日 2泊3日

グロバルドリムサーチ 中1 1−2月、

7−8月 4 100 1,600 3泊4日 小 グロバクスクール 小4−6 3−11月 15 100 1,500 日帰り 中グロバクスクール 中1 4−11月 12 100 1,200 日帰り ファンファンイングリッシュ

(夏冬休みキャンプ) 小5−6 1、8月 2 80 480 2泊3日 英語と遊ぼう

(訪問英語体験) 小5 1−2月、

5、12月 16 120 2,400 日帰り 家族と一緒に世界へキャンプ 小5の家族 2、7月 2 60 360 2泊3日 グロバル文化体験キャンプ

(世界市民キャンプ) 小4−6

多文化学生クラス 5、7、

10、12月 4 80 1,280 3泊4日 ハローイングリッシュ

(生涯学習) 生涯学習館の高齢者 6月 2 80 160 日帰り

(学級内でのトレーニング)対抗遊び 小6、中1 8月 4 75 300 1泊2日 トークトークイングリッシュ

(親向け英語キャンプ) 小4の親 10月 1 100 100 日帰り 加平サンタ村キャンプ 小4−6

支援対象家族 12月 1 100 400 3泊4日 資料:ソウル市教育庁傘下「グローバル文化言語体験教育院」http://sensec.sen.go.kr/を参考に作成

(12)

(2)地域密着型:城南市庁傘下の「CHONGSOL 英語体験センター」

アメリカなどへの留学が増加してきた韓国社会において、国内の私設の英語村は運営難に直面 している。というのは、未だに入試のための英語が大切な韓国社会において、高額の民間塾が歓 迎されているからである。しかしながら、入試選考の多様化や教育の質的な平等政策により、公 立小・中学校において、英語の時間に地域密着型の英語村を定期的に利用する公立学校が増える ようになった。つまり韓国社会における英語村の現状は、高額の「国内留学」というイメージか ら、無料でいつでも利用できる「英語体験センター」へと変わりつつあると言える。その中で、

英語教育改革に注力している代表的な京畿道の城南市地域密着型の英語村、「

CHONGSOL

英語 体験センター」の内容を分析する。

CHONGSOL

英語体験センター」は、城南市庁及び城南市教育庁傘下の施設であり、都心の

公立小学校内に設置されている。当センターの運営目標は、イマージョンプログラムを通じて、

①流暢な英会話、②グローバル人材の育成、③教育の平等、を掲げている。利用対象は、当該市 内の公立学校で、2−3か月に一回訪問するほか、冬・休みプログラム及び放課後は、個人でい つでも利用できる。プログラムの内容を〈表3〉にまとめ、プログラムの写真を以下の[写真 5]〜[写真8]で紹介した。

[写真1]英語と遊ぼうⅠ [写真2]英語と遊ぼうⅡ

[写真3]ハローイングリッシュ(生涯学習) [写真4]グローバル文化体験キャンプ

(13)

〈表3〉 CHONGSOL 英語体験センターのプロ

区 分 プログラムの内容 共通プログラム

一日プログラム バス支援・学校のクラス単位で申込 興味のあるゾーンで授業を行う

Morning Program:

Sports Camp Science Camp Musical Camp

Summer/Winter Camp:英会話 英語読書プログラム:

ホームページにおける e-book学習

放課後プログラム 会話初級・中級・高級に分けて週3回放課後実施 夏・冬休みプログラム 8レベルに分けて休み間2週間、集中的に会話・ドラマ・イマ―ジョン学習 水曜日の授業連携プロ

グラム 英語及び多文化体験

遠隔プログラム 小5年生を対象にオーストラリアとの遠隔授業

(テレビ電話)、現在は市内の小学生のみ

資料:「CHONGSOL英語体験センター」(http://ceec.or.kr/main/ko/index.html)を参考に作成

(3)官民連携型 ─ ソウル・イングリッシュ・ビレッジ

財政の問題や英語に対するニーズが高い韓国における英語村が展開して10年を迎えた現在、都 心においては、民間会社へ委託した施設の利用率が高くなりつつある。ソウル市の委託から、

YMM

エデュが運営している英語村、ソウル・イングリッシュ・ビレッジが代表的である。そ のプログラムは以下の通りである(〈表4〉、[写真9][写真10]参照)。地方自治体運営の英語 村が短期間という限界があるため、民間塾のプログラムを取り入れ、「英語実力のアップ」に適 合したプログラムが運営されていることから評価が高くなっている。小・中・高校生はもちろ ん、成人の英会話などを補うプログラムなどがあるほか、特に公立中学校との連携でキャリア教

[写真5]科学 [写真6]文化

[写真7]スポーツ [写真8]映画

(14)

育における文化体験及び英語学習ができる総合施設である。民間英語塾を50年間運営した

YBM

社の運営で、利用率が高くなっている。特に夏冬休みには一か月間、集中コースを取り入れ、教 科成績及び英会話の授業を行っていることから、利用料は3千円から、高額のものでは15万円に までとなっている。この施設は、海外からの体験者が多く、多文化体験の面でも評価されている。

〈表4〉ソウル・イングリッシュ・ビレッジのプログラム

区 分 プログラムの内容 費 用

定期プリグラム

日帰りプログラム 1〜2泊2〜3泊 3〜4泊4〜5泊

3,000円 7,000円 9,000円 9,000円 15,000円

特別プログラム

休みプログラム 中・高校プログラム 放課後プログラム 成人英会話プログラム

新入生アイスブレーキングプログラム リーダーシッププログラム

進路適性プログラム 職業探求プログラム 創意・人性プログラム

Mentoring・自己学習プログラム

国際連合プログラム

20,000円〜150,000円 4,000円

20,000円 10,000円

30,000〜50,000円

資料:ソウル・イングリッシュ・ビレッジ(http://suyu.sev.go.kr/program/expense.asp

4.アンケート及びインタビュー調査による分析

(1)アンケート調査の結果

韓国の公立小学校の親80名を対象にしたアンケート調査の結果からすると、「希望する子女の 学歴」について、73名以上が「4年制大卒以上」を挙げている。また、小学校の時期が「学習習 慣がつく大切な時期である」と答えていた。そして小学生時期の塾の種類については、過半数が

「英語塾」を挙げており、「学校の英語に対する不安」について、「教師の能力」を38名が、「ネー ティブ教師の不足」を28名が挙げており、学校の教科内容のレベルが塾よりも低い点を指摘して いた(小林敦子他、2019)。そこで定期的に英語村に訪問している生徒及び親に対するアンケー

[写真9]ビレッジの全景 [写真10]出入国審査の体験ゾーン

(15)

ト調査を行った。

英語村を利用した経験のある親10名や生徒20名(小6 10名・小3 10名)、小3年生の生徒 10名は、「英語が好きか」という問いに1名のみ、肯定しており、9名は、「とても嫌い」答えて いる。その理由については、「先生が英語で話すと全然分からない」と答えていた。彼らに英語 村の利用後の変化ついて聞いたところ、8名が「外国人が珍しくなくなった」と答えているし、

「会話」、「発音」に対しては、「やや満足」を挙げている反面、「楽しい」、「外国人に会える」と いう答えには、「満足」、「とても満足」を挙げていた。

小6の生徒の中では、早期留学の経験がある2名は、「英語が楽しい」と答えているが、英語 村に対する満足度は、「つまらない」と答えていた。しかし留学の経験のない8名は、「英語村 は楽しい」と答えている。その理由については、「外国人に会える」、「授業しないで一日中遊べ る」、「好きなスポーツをしながら英語を学べる」など多様な答えをしている。早期教育を受けた 調査協力者2は、「塾で英語の勉強をして、休みのたびにアメリカの親戚に訪問し一か月間短期 留学をしていたが、英語村に行くと外国人がいるから、最近はアメリカに行かない」と答えてい る。この生徒について、教師の調査協力者11は、「アメリカへの留学は、会話や読解にはいいが、

韓国の学校の成績は未だに文法や語彙が中心である。塾での文法の教育やや英語村での会話の練 習をうまく両立すると効果が高いことを親が解っている」と証言している。

また親10名全員が、「学校単位の英語村への利用」に対する満足度に、「とても満足」と答えて いる。その理由は、「実力のため」というよりは、「体験のため」を挙げている。また「小学生に は、勉強より多様な体験をしてほしい。それが英語文法のみだともったいない」と答えている。

一方、英語文法の早期教育をしてきた親は、「体験だけでどれくらい英語が身につくかはわから ない。英語は塾で学ばなければならない」と強調している。

(2)インタビュー調査の結果

小学校の親や生徒、教師や職員を対象にインタビュー調査を行った結果を、〈表5〉〈表6〉に まとめた。

調査協力者7の生徒は小学校6年生であるが、英語村や学校の英語図書館のみで英語の成績が 上位であることを強調している。また公立小学校の英語教師である調査協力者12は、「今後学 校の評価及び入試制度の多様化政策に伴い、学校及び公立英語センターのみでも英語学習の効果 は十分である。むしろ低学年時に英語幼稚園出身の生徒は、友達関係に悩み、成績が下がる問題 が現実的に多くなっている」と強調している。つまり塾における詰め込み式の学習よりは、イ マージョン英語として楽しみながら身につける英語の成果が見られていると考えられる。

また職員である調査協力者13は、「こどもたちの白人教師と東南アジア人教師への対応には差 別が見られる。今のプログラムのみでは、「英語」だけが重視されている。今後、意識の問題を 含めた高い質の多文化教育プログラムが必要である」と主張している。都心の英語村の職員であ る調査協力者14は、「城南市は中産層が多い地域であり、塾の学習を補う体験ができる場として 英語村を活用する公立学校の利用率が高い。しかし地方の小都市においては、英語村が英語学習 のメインである。したがって、地方における地域密着型の英語村は拡大する必要がある」と指摘 している。

(16)

〈表5〉英語村の利用者に対するインタビュー

区 分 対 象 内  容

塾・英語村両立 する対象

生 徒 調査協力者1:授業しないで参加するから楽しい。

調査協力者2:レベルが高いと楽しい

外国人から学ぶから楽しい、塾でも機会がないから。

親 調査協力者3:主に塾に頼るからどれくらい効果があるのか分からない。

調査協力者4:遊びに行くだけであろう。

文化体験としてネーティブ教師に会えるからいい機会だと思う。

学校・英語村の み利用する対象

生 徒

調査協力者5:外国人に会って貴重な経験ができた。

調査協力者6:英語を話すことが、恥ずかしくなくなった。

道で外国人にあっても珍しく思わなくなった。

たまに行くだけだから忘れる。

調査協力者7:塾に全く通っていないが、英語村のプログラムを利用するだ けでも学校の成績は上位である。

調査協力者8:もっと近いところに無料の英語村ができるといいと思う。

調査協力者9:小学校では塾に通う必要がないものの、学校でこのような機 会が毎週あってほしい。

調査協力者10:お金がないから英語ができないと言えなくなる時代になった。

〈表6〉教師及び英語村の職員に対するインタビュー

区 分 対 象 内  容

教 師 公立小学校の 教師

調査協力者11(小3年の担任教師):

塾に通わない生徒には大変いい経験である。

体験としてはいいが学期中、二回のみでは効果があるかわからない。

早期教育で英語が上手な生徒はしゃべらない。むしろ英語をこれまで知 らなくても楽しく体験する生徒が多い。

調査協力者12(小3年の英語専任教師):

学校の成績の評価が多様化しているので塾に通う生徒より学校のプログ ラムに真面目に参加する生徒の成績が良くなっている。

英語村の職員

宿泊型の職員

地域密着型の 職員

調査協力者13:

無料で、英語はもちろん多文化を体験することで反応がいいと思う。

しかし地方自治体の運営なのでかなり厳しい状況にある、都心の場合未 だに塾に頼る生徒が多い。

ネーティブ教師とのトラブルがあって改善する必要がある。

意識の改善も必要である。小学生が一般に「白人」教師を好むのは問題 である。定期的ではないので、「学習」よりは、「体験」に過ぎない。

調査協力者14:

英語図書館・休みのプログラムを積極的に利用する生徒はかなり効果を 上げている。ネーティブ教師の経歴及び人柄の検討が難しい。

城南市においては教育に関心が高い地域などではむしろ利用率が低い。

地方において地域密着型の英語センターが増えなければならない。

5.終わりに

韓国社会は、加熱した教育熱による格差社会の形成及び青少年問題が続出する社会的な副作用 に長年悩んできた。青少年の自殺率は世界一位であり、その理由は 「成績」や「入試」と関連

(17)

がある。その筆頭に英語があり、「早期留学」及び「私教育熱」を主導してきたといえる。

その一方、韓国における経済的な急成長は、英語の力にあることも否定できない。例えば、日 本社会の場合、英語に関する仕事においては、「国際部」などに限り英語を駆使することが一般 的である。しかし韓国社会では、全社会的に英語を強調し、大企業だけでなく、あらゆる分野で の英語を駆使できる人の存在が経済的発展の原動力であった、という評価も存在する。それは経 済力に限らず文化の面からも評価され、現在の世界的な「韓流ブーム」も言語、つまり英語の力 にあるといわれている。今まで私教育への依存も多かったが、「人材」を養成する意味では進展 があったと言える。

本章の分析からすると、韓国の英語村は民間塾レベルの高額プログラムへのニーズが未だに高 いし、それらも首都圏に集中している。そのため公立の英語村は、入試に直結する科目でもあ り、民間塾との差別化という課題を抱えたままである。

しかし青少年問題や少子化の問題に直面している近年間、韓国政府は、教育改革に積極的に取 り組んできた。イマ―ジョン英語を公立学校内で実施し、学校や家庭の近くに英語村が設置され るなど、私教育費が徐々に低減するようになった(李恩珠、2019)。つまり、「私教育熱」によっ て象徴されてきた韓国の教育が、「公教育の質的な平等」へと変化しつつある。

そして私教育熱を牽引してきた英語学習はいつでも英語村で補うことができるようになってい る。また英語は競って勉強する科目から、グローバル化時代に相応しいコミュニケーション手段 へと意識の変化が、親や教師から始まっていることが分かった。

今後、英語に集中していた言語教育は中国語をはじめ日本語やロシア語などへ拡大する必要が あろう。社会的な不平等を主導してきた英語教育が、これからは公的な支援の拡大から、階層及 び文化交流の学習主体として変化すべきなのではなかろうか。

一方、日本社会において英語教育は、「イマージョン・プログラム」へ向けての営みが開始し つつある。誰でも話せる意思疎通手段として、英語村に対する関心や支援も増加している。

しかし、社会福祉の限界及び少子高齢化に直面している日本社会においても、異文化受容及び 外国語の能力は時代的な課題として避けられない状況にある。敢えて述べるならば、現在の国際 的なトラブルは、閉鎖性、特にアジアに対する無関心から起因しているようにも思われる。その ため、英語だけではなく、アジア語などへの関心から現在の日本が抱える課題が解けるのではな かろうか。経済的な大国としてアジアをリードしてきた国として、またその市民意識、道徳性の 高さが世界的にもモデル的な存在であった日本に期待したい。

1 2019年6月8日、国際部の担当者とのインタビュー内容に基づく。

2 貧困層はすべて無料。

3 2018年10月18日、訪問した教師に対するインタビュー内容に基づく。

4 

YMM

エデュは、大阪イングリッシュビレッジ(

OEV

)を、

YMM

ジャパンとして運営している。

5 2018年10月〜2019年7月まで、英語村を利用した小学校の親10名・生徒10名・教師2名・職員2 名に対するインタビュー内容に基づく。

(18)

6 この学校は公立小学校なので会話や聞き取りの成績は比較的に含まれない。

参考文献 書籍・論文

李恩珠(2018)「韓国中産層女性の教育熱及び生活の質に関する研究」『学父母研究』5(2)、107

-

122頁 李恩珠(2019)「学力低下予防のための公教育改善策研究─革新学校及びゆとり教育の比較研究」『韓

国日本教育学研究』24(1) 37

-

60頁

教育科学技術部(2008)「小学校の英語教育課程の改定告知案」

金ソンギョン(2015)「小学生の英語村の短期体験が多文化収容に及ぼす影響」京仁教育大学大学院、

修士論文

小林敦子他 早稲田大学教育総合研究所監修(2019)『東アジア地域における小学校英語教育─ 日・

中・韓の国際比較─』学文社

ジュヒャンア(2017)「英語村体験が小学生の英語学習における好感度、自信、学習動期に及ぼす影響」

朝鮮大学大学院、修士論文

新保敦子(2019)「小学校英語教育における宿泊型研修に関する一考察」『早稲田大学大学院教育学研 究科紀要』29、91

-

104頁

ソウル特別市(2015)「機能転換の必要性及び革新運営方案に関する研究」ソウル市 趙ジンヒ(2007)『全国地方自治体の入試私教育競争実態』進歩教育研究所

輩ウンジュ(2015)『仁川英語村運営成果に関する研究』仁川発展研究院新聞 韓国日報(2017

.

1

.

15)「英語村がなくなる」

https://news.v.daum.net/v/

20170115200351573(検索日:2019

.

6

.

19)

国民日報(2008

.

2

.

27)「李明博政府─教育も競争力

英語公教育の強化─私教育費急増」

https://news.v.daum.net/v/

20080227195707749(検索日:2019

.

6

.

19)

京郷新聞(2019

.

5

.

6)「強制される英語イマージョン式教育は子供に違和感を与える」21面 京郷新聞(2019

.

3

.

13)「私教育費月29万ウォンの最高額更新.富裕層や貧困層間の差、5倍」10面 東亜日報(2004

.

12

.

22)「公教育補案─私教育節減の英語村競争」33面

世界日報(2019

.

1

.

31)現実版「

SKY

キャッスル 親の資産により幼稚園から分かれる」

http://www.segye.com/newsView/

20190130005957(検索日:2019

.

6

.

1)

朝鮮ビズ(2016

.

10

.

3).

YBM

代表、「大阪英語村の熱い反応」

http://biz.chosun.com/site/data/html_dir/

2016

/

09

/

30

/

2016093002530

.html

(検索日:2019

.

9

.

5)

Ohmynews

(2008

.

3

.

3).「オーリンジ政権から病んでいる子ども達」

https://news.v.daum.net/v/

20080303173310318

?f=o

(検索日:2019

.

9

.

2)

ホームページ・その他

ソウル市教育庁傘下グロバル文化言語体験教育院ホームページ

http://sensec.sen.go.kr/

(検索日:2019

.

6

.

21)

ソウル・イングリッシュ・ビレッジ 

http://suyu.sev.go.kr/program/expense.asp

(検索日:2019

.

9

.

20)

統計庁(2018)「2017年度の小・中・高の私教育費結果報道資料」

http://kostat.go.kr/portal/korea/index.action

(検索日:2019

.

8

.

20)

CHONGSOL

英語体験センターのホームページ 

http://ceec.or.kr/main/ko/index.html

(検索日:2019

.

6

.

20)

OSAKA ENGLISH VILLAGE

https://englishvillage.co.jp/about/

(検索日:2019

.

9

.

20)

参照

関連したドキュメント

長野県飯田OIDE長 長野県 公立 長野県教育委員会 姫高等学校 岐阜県 公立 岐阜県教育委員会.. 岡山県 公立

・学校教育法においては、上記の規定を踏まえ、義務教育の目標(第 21 条) 、小学 校の目的(第 29 条)及び目標(第 30 条)

副校長の配置については、全体を統括する校長1名、小学校の教育課程(前期課

 英語の関学の伝統を継承するのが「子どもと英 語」です。初等教育における英語教育に対応でき

小学校学習指導要領総則第1の3において、「学校における体育・健康に関する指導は、児

社会教育は、 1949 (昭和 24