〈教育実践研究指導センター所員・研究員寄稿〉
地域社会の形成と公民館経営
−佐世保市大野地区公民館を中心として−
猪山勝利*
田中弘**
I.研究の視点(猪山)
Ⅱ.研究調査の方法(猪山)
Ⅲ.地域社会づくりと公民館経営の課題(田中)
Ⅳ.地域社会づくりと公民館経営の展開(田中)
I.研究の視点(猪山)
本稿の目的は,社会教育施設経営研究の一環として,地域社会の形成との関連で地域公民館経 営に関する実証的研究をなすことにある。
われわれは,ここ数年地域公民館に関する共同研究を進めてきたが,その発展として地域公民 館経営に関する研究を「社会教育施設経営論」の視角からアプローチする研究プロジェクトに着
(1)
手している。その一環として,昭和61年度は研究の視点や基本課題について明らかにしたが,本 年度はその研究をふまえて,ケース・スタディによる実証研究を行うことにある。実証研究を行 うにあたって,現代公民館研究において地域社会づくりを対象とするアプローチの視点,現代地 域社会づくりの基本課題,現代地域社会づくりに対応する公民館の経営的対応に関する方法論的 視点について述べておきたい。
1.「地域・教育」論的視点
近年,教育界に「地域に根づく教育」という教育実践の方法論や総合的な「地域と教育」論が しだいに形成されはじめている。他方,地域社会論においても「地域における人づくりや人材育 成」など教育の必要性が本格的に論じられはじめている。しかし,それらのアプローチの大半は,
教育を活性化する手段として地域社会を利用する方法論であったり,逆に地域社会活性化の手段
* 長崎大学教育学部教育教室
** 佐世保市大野地区公民館主事
として教育を利用する方法論である。そのような「手段論」的アプローチでは, 目標とする教育 の現代的創造や地域社会の現代的創造は部分的なものに止まるものとならざるをえない。そのこ との基本的問題性については,別稿で論じたので,ここではわれわれの当面の研究アプローチに ついて述べておきたL。、
われわれは,地域と教育の相方の現代的創造を方法論的視角として,相手の相互関係や相互規 定・作用を明らかにするアプローチ,つまり総合的なく地域・教育〉論的アプローチ視点を導入 する。われわれが,そのようなアプローチを導入する現代的視点は 現代的な生涯学習システム の形成を公民館経営研究の視角としているからである。ところで,臨時教育審議会もその答申を 通して,
I
生涯学習体系への移行」とL、う教育改革視点を提起しそれを受けて文部行政も家庭,学校,社会を通じた教育体系の再編成の政策提言を行なっている。その視点は 近代教育の組織 化論への一定の批判を提起した点で、は再期的で、はあるが,つぎの
2
つの点でわれわれの視点とは 異っている。臨教審答申は,教育機能の部分的活性化を図るものであるが,本質的にはく社会の 学校化〉とく社会統合としての教育〉という視点を導入しており,I
部分活性化J
論および「相 互手段」論的なアプローチであると言える口それに対して,われわれの生涯学習システム論は,
I
総合的創造化」論および「相互関係・作 用」論的アプローチを提起する。すなわち,教育や地域社会の「主体形成」を基本に,相互の「総 合的再編成」論にもとづいて,相互の現代的創造を図るシステム形成論であり,それを現実化する総合的アプローチである。
2 .
現代的地域社会づくりの視点地域公民館が相互関係を結ぶ地域社会は, 1980年代の後半に入って,基本的な転換期を迎えて いる。地域社会づくりの全体的理論課題については,紙数の関係上別稿にゆずらざるを得ない が,ここでは時期区分,主体性,機能性の
3
点から,現代地域社会づくりについて簡述したし、。第
1
に,地域社会づくりは,第2
次大戦後に限定しても,現在第3
期を迎えていると言える。昭和
2 0
年,3 0
年代は,いわゆる「村落共同体(ムラ)型」地域社会づくりの段階であり,ついで 昭和4 0
年,5 0
年代は,行政主導の「行政コミュニティ型」地域社会づくりの段階であった。それ に続いて,昭和60年代は, I地区(校区)コミュニティ型」地域社会づくりの段階を迎えていると言えようo
第
2
に,I
地区コミュニティ型J
地域社会づくりは,その主体性をめぐって,2
つの点から,それまでの地域社会づくりとは異なっている。ひとつは,行政との関係であるが,それまでの地 域社会づくりは行政システムの末端に位置づけられ,行政との主体的対応をしえず,せいぜい「圧 力団体」的作用をするに止まっていた。しかし,昭和60年代に入って,イタリアの「地区住民評 議会」のような主体性をもつことが課題となり,地方行政の分権化システムとしての位置づけを もちつつある。ふたつは,それまでの地域社会づくりが,伝統的な「村落共同体型」の町内会や 部落会を地域組織化の基礎単位としていたのに対し,
I
地区コミュニティ型」の地域社会づくり‑22‑
は,校区ないし旧合併町村範囲に拡大して,行政の分権化システムの機能を果す力量を形成しつ つあるo
第
3
に,I
地区コミュニティ型」地域社会づくりは,その機能性において分化と総合化を推進 する点で,それまでの地域社会づくりとは異なっているo 従来の地域社会づくりは,地域社会の 機能が分化しておらず,単一有力者型リーダーの指示によって地域活動が展開されてきた。それ に対して,I
地区コミュニティ型」地域社会づくりでは,地域活動の諸分野が独自性をもって分 化するとともに,それらを総合化する「地域ネットワーク」化が図られるのである。とともに,地域内にある地域行政施設とも「補完」的機能ではなく 対等の「地域ネットワーク」関係およ び相互作用を果すのである。
3 .
地域社会づくりと公民館像地域社会の形成にかかわる公民館像は戦後公民館史において変化してきており,その今日的あ り方をめぐっては定説はないと言ってよL、。われわれも,かつて現代公民館論について問題提起 をなしたことがある。ここで、は,詳細な学説的論議を省いて,われわれなりの地域社会づくりと 関連する現代的公民館像を提起しておきたい。
地域社会づくりに対応する公民館像には大別して,
3
つのタイプが措定される。その lは,地域社会づくりと公民館の関係が分化していず,公民館が地域施設として位置づけ られる公民館である。戦後初期の「自治公民館」型はその典型であり,その今日的な再生が「コ ミュニティ・センター」型公民館であって,公民館のもつ教育性は軽視ないし,否定される。そ の公民館像は,教育性の軽視ないし否定の点で問題であるだけでなく,地域社会の主体形成にか かわる人材育成などの独自的役割を軽視することによって 地域社会の主体性を軽視することに なり,相方にとってその基本的な存在性の根幹の軽視ないし否定をもたらすものと言える。
その
2
は,第l
の型とは逆転して,相方が分化し,その関係が分離ないし遊離しているもので,公民館は地域社会とは無関係な教育施設として位置づいている型である。この型は,昭和30年代,
4 0
年代の公民館関係者の望ましい公民館像として措定され 特に都市地区に現実化した公民館タ イプである。このタイプは,今日の学校がそうであるように教育性を唯一の生存根拠として,第l
のタイプの教育性軽視のあり方を止揚しようとする点では意義をもつものであるが,地域性を 捨象するものであり,個人・クーループ学習を中心とし教育展開をなす型であるO この「市民」型 とも言える公民館は,地域社会の形成と無関係なばかりか,公民館経営において地域性や生活性 と遊離することによって,その教育展開自体が知識主義的なものが主体となり 無気力な住民の 育成を生むものとなるのである。その
3
は,その2
型のタイプの教育性分化を継承しながら,教育機関としての独自性を保持し たうえで,地域社会の形成に連関してL、く公民館タイプである。このタイプの公民館は,公民館 の教育性を主体に,その教育機能性を地域形成と関連して展開するものであり,その機能性によ って地域社会の主体性を前提とした地域形成を行うのであるoところで,このタイプには具体的関係の仕方において,さらに
3
つのパターンがある。第
1
のノミターンは,r
地域従属パターン」であり,第1
のタイプの公民館と類型した役割を果 すことが多い。その問題性も,第1
のタイプの公民館と同じく,教育性が弱体であるだけでなく,結果的には地域の主体性を形成する点が弱体である。
第
2
のノミターンは,r
地域統制パターン」であり,明治中期の学校がそうであったように,行 政施策の地域伝達的機能を地域形成作用として展開するものであり,第1
のノミターンとあらわれ 方に相違はあるが,地域の主体性を軽視してし、くノミターンである。第3のノζターンは,
r
地域対等パターン」であり,公民館の教育的独自性を主体としながら,地域の主体性に対応していくものであり,両者はその独自性を保持したうえで,積極的な連関を するのである。
以上,地域社会と公民館の関係に視点をあてて
5
つの公民館像を折出したのであるが,われ われは,3
タイプの対等パターンこそ現代公民館像であると設定する。つまり,現代的な社会教 育機関として,その独自な教育性を展開する権限を保持して,地域社会の主体性を前提に,現代 的な地域形成に対応してL、く公民館であり,地域社会も公民館とかかわることによって主体性形 成を基底に,現代的な生活形成や社会形成を行ない,新しい地域社会形成を展開するのである。4 .
地域社会づくりと公民館の機能先に指摘したように,地域社会と公民館の関係は,相互対等性を基底に,
r
協同」的関係を形 成するものであり,相方が主体性をもって相互作用を行うのである。しかし,ここでは,当面の 研究テーマにしたがって,r
地区コミュニティ型」地域社会づくりに果す公民館経営の機能を,公民館の地域社会づくりに果す基本作用の類別化として提示する。
①
基盤化作用地域調査や地域計画づくりへの援助ないし共同参加によって,地域社会づくりの課題や計画を 明らかにしていく作用のことである。
①
組織化作用組織化されていない分野の集団や組織の組織化への働きかけや地域専門リーダーの育成援助を 通して,組織化を図る作用のことである。
①
活性化作用組織化されている地域集団や組織が形式化したり,休止状態にある場合,それらの組織や活動 を活性化する作用である。
①
自立化作用組織化されている地域集団や組織が他団体や行政組織に計画・企画や実務性などを依存してい る場合,自立した運営を図るように働きかける作用である。
①
主体化作用地域集団や組織の多くが,行政によって組織化されてきた伝統をもっているため,主体性が弱
‑24‑
体な場合が多いが,自己管理のできる自主運営を図れるよう働きかけてし、く作用のことである。
①
創造化作用地域の集団や組織が活性化しているだけでなく 課題や組織性について構造的な創造を図るよ うに働きかけていく作用であるo
⑦
結合化作用地域の集団や組織が分野毎に孤立しないで,相互にヨコに連携したり,協同化したりするよう に働きかけてL、く作用である。
①
総合ネットワーク化作用地域の集団や組織が結合化のレベルを超えて,共同活動を組織化したり,新しい総合的活動や 組織化していくよう働きかけてし、く作用である。
[注]
(1 ) 猪 山 勝 利 ・ 田 中 弘 ・ 富 永 耕 造 「 社 会 教 育 施 設 経 営 に 関 す る 研 究 一 地 域 公 民 館 経 営 を 中 心 と し て ‑
J
長崎大学教育学部教育実践研究指導センタ一年報, No.1. 昭和62年。(2) 猪山勝利「地域教育の現代的視角
J
(~地域教育の論理と構造一地域教育論 I 一』所収) 長崎大学教育学部く教育・社会〉ゼミナール。1 9 8 2
年。(3 ) 文部省教育改革実施本部『教育改革の推進』ぎょうせい,昭和62年。
(4) 猪山勝利,牛津信忠編著『転換期の地域福祉」長崎県社会福祉協議会,昭和
6 0
年。 (5) 地方自治制度研究会『続コミュニティ読本』ぎょうせい,昭和50年。(6 ) イタリア
C d Q
研究会『地区住民評議会』自治体研究社,1 9 8 2
年。(7) 長崎県社会教育研究会『学習社会時代の公民館』長崎県公民館連絡協議会,
1 9 8 3
年。l l .
研究・調査の方法(猪山)1 .
調査対象地の選定上記の研究視点にもとづき,われわれは長崎県内の 1地域に研究・調査対象地を設定し,実証 研究を行なうこととした。研究対象地域を設定する際の基準は,つぎの通りであるo
第 lに,地域類型であるが,大別して都市型,都市近離型,農漁村型,離島・僻地型に類別で き,さらにそれぞれ規模や地域特性によって細分化される。今後は,それらを総合化した研究対 象地の設定が課題であるが,今回は
l
地区に限定せざるを得なかったため,都市・住宅地型に限 定した。第
2
~こ,地域社会類型であるが 第3
期の「地区コミュニティ型」の組織化や活動がすでに胎 動している地区を選定する。第
3
に,地域公民館が地域社会づくりを公民館経営の基本的課題としており,相当の地域社会 づくり作用を展開している公民館地区を選定するo第
4
に,教育行政をはじめ行政システムが,地域社会の主体性を許容し地域社会づくりに一 定の施策対応をしている地域を選定する。以上のような基準から,われわれは佐世保市大野地区を選定したが,対象地選定については筆 者がかつて岡市で先行研究を行なったことや共同研究者の勤務地であることなども研究の便宜か
II‑l
表 佐 世 保 市 公 立 公 民 館 一 覧館 名 地区面積 世 帯 数 人 口 町 内 数 町公 自治 町内 他 地 域 自 治 組 織
凶 人
中部地区公民館 7.37 9. 168 24.322 48 16 19 12 中部地区町内協議会 (花園中・旭中) 西 地 区 公 民 館 7.30 5.805 18.928 19 19 O 。 O 西地区町内連絡協議会
(光海中・赤崎小) 南 地 区 公 民 館 9.46 14.708 42.012 42 29 8 5 。(山澄中・福石中・崎辺中)南地区町内連絡協議会
中 央 公 民 館 5.21 4.581 12.153 31 13 6 12 。 中央地区町内協議会 (大久保小・八幡小・保立小) 北 地 区 公 民 館 4.51 3.545 10.370 10 6 2 2 。 北地区町内協議会
(春日小の一部) 九十九地区公民館 13.25 1. 212 4.383 8 3 。 5 O 九十九地区町内連絡協議会
(野崎中・船越小) 相浦地区公民館 23.91 8.194 25.898 40 21 2 17 。 相浦地区連合町内会
(相浦中) 黒島地区公民館 4.90 388 1. 110 8 O 。 8 O 黒盟島地区連合町内会
( 島中)
中里皆瀬地区公民館 20.89 3.602 12.344 25 19 2 4 。 中里中皆瀬地区連合町内会 ( 里中)
大野地区公民館 10.52 6.653 20.102 25 25 。 。 。 大野大地区町内公民館連合会 ( 野 中 )
柚木地区公民館 29.24 1.402 5.279 26 22 4 。 O 柚柚木地区町内公民館連合会 ( 木中)
日宇地区公民館 16.70 9.233 28.933 25 7 16 2 。 日宇地区自治連合会 (日宇中) 早岐地区公民館 20.63 8.142 27.182 58 22 33 3 。 早岐地区自治連合会
(早岐中)
三川内地区公民館 26.39 1. 515 5.369 24 24 O O O 三川内地区町内会連合会 (三川内中)
宮 地 区 公 民 館 15.61 963 3.845 10 10 O 。 O 宮地区町内連合会 ( 宮 中 )
江上地区公民館 19.14 1. 101 3.956 24 24 O O 。 江上地区町内公民館連合会 (江上小)
針尾地区公民館 15.21 816 3.213 21 21 。 。 O 針 針尾地区町内公民館連合会 ( 尾小)
凶 町内治公内民館 281
計17館 250.24 81. 028 249.399 444 281 92 70 町 会2hh 70 白 玉他 92 そ の l
計444ヶ町
nh U
つ 臼
ら考慮した。
2 .
佐世保市の地域公民館システムわれわれの研究調査の対象は,直接的には佐世保市の大野地区公民館であるが,その分析には いる前に,佐世保市の公民館システムおよび市の社会教育推進システムについて明らかにしてお
人口約
2 5
万人の県北部の中核都市佐世保市は,これまで厳しい財政状況にもかかわらず,基本 的に中学校区単位に「地区公民館」を設置してきた。II‑1
表が示すように,昭和6 2
年度建設さ れた黒島地区公民館をもって,全公立地区公民館の建設を完了した。その設置方針は,地域性を 重視して旧合併町村および中学校範域に地区館を設置する方策であり,近年,中・大都市でも公 立公民館のブロック配置が行われる傾向があるのに対比して,公民館本来の設置方策であると言 える。しかし厳しい財政状況もあり,職員配置については,専門職配置原則が完遂されておら ず,今後の課題である。きたい。
佐世保市は地域形成と公民館との関係においては,戦後一貫してユニークな方策を
II‑1
表の地域自治組織が示すように,市内4 4 4
町のうち,町内公民館数が2 8 1
ある ことが示すように,地域の基礎自治組織の63%
が町内公民館が占めている。つまり,戦後の地域 形成を町内公民館主導に推進してきたことが,佐世保市の独自な公民館政策であった。この点に おいては,戦後初期の自治公民館方式が,現在まで継承されてきたと言える。この点においては,都市型の自治体の公民館システムが 昭和
3 0
年代中ば以降「施設主義」方策主体で,自治公民館 を軽視してきたと対比して 佐世保市の地域重視姿勢が窺われる。ところで,
とってき
7
こ。しかし,その地域性重視は町内公民館育成方式であり,農村地域においてもその再検討がなさ れている状況では,新しい地域形成方策が求められる。 この状況下で,佐世保市は昭和
6 3
年度か│ 事 業 │
ζ ) 0 土也 E ζ 金 三 t
屋当主歪r f'佳道主壬主
公立公民館」
「事務局
2.体育レクリエーション活動(楽しみあう事業) 施設
機関 団体
3.まちづくり活動(結びあう事業)
4.ふるさと活動(育くみあう事業)
5.研修活動(学びあう事業)
公立公民館
中
,ll‑4 寸 =
校 保 護 司 会 民生児童委員会 体育指導員会 補 導 員 会 青少年育成会 P T A 子ども会指導者会 青 壮 年 会 婦 人
ふ 一品
老 人 ヱA エ
町内協議会
地区生涯学習推進会 佐世保市,
II‑1
図ら新しい方式を施策化した。すなわち 「地区コミュニティ」型の地域形域方策とそれに対応す る新しい公民館対応方策である。すなわち,その方策として,地区生涯学習推進会づくりを施策 化した。。そのシステムは,公民館設置の地区毎に地区生涯学習推進会組織を構築し,その構成 団体として,地区内の社会教育関連団体と各町の連合組織を含めたものである。ここで注目すべ きは,従来の町内公民館や町内‑自治会を地区毎に再組織化し地区組織として再生させたこと である。この方式を進めるため,従来町内公民館毎に助成していた市の補助金を,地区の事業補 助金に転換したのである。これは
I
の研究視点で、述べた「地区コミュニティ」型の地域づくりで あり,それに対応する公民館システムである。佐世保市が他都市と異なるのは,いわゆる町内公 民館育成を転換するに降して,地域政策を否定するのではなく,現代的に継承発展させたことで ある。この方策は,昭和6 3
年度から施行したもので,その現実の展開はこれからの課題であるが,すでに皿以下に分析する大野地区公民館はその先駆的公民館経営を展開していたものとして注目 される。
(註)
(1 ) 猪 山 勝 利 『 地 域 社 会 づ く り と 社 会 教 育 計 画 一 社 会 教 育 総 合 調 査 報 告 書 一 』 佐 世 保 市 教育委員会,昭和
5 6
年。E 地域社会づくりと公民館経営の課題(田中)
1
地域社会づくりの課題 (1 ) 佐 世 保 市 大 野 地 区 の 概 要われわれは,ケーススタディの対象地区として,佐世保市大野地区を選んだ。その理由は,第
l
に,地域構造的見地から見る限り現代中規模都市の中で代表的住宅地域であること,第2
に, 近年,地域集団によるユニークな地域活動が展開されていること,そして第3
に,大野地区公民 館の事業が「地域社会づくり」援助を中心に展開されていることである。大野地区は,昭和
1 7
年5
月に北松浦郡大野村から佐世保市に合併し,佐世保市の中心部から見 て北部に位置しており,次のような特徴があげられる。a
.人口・2 0
,2 7 4
人(男9
,5 6 7
人・女1 0
,7 0 7
人)b .世帯数. 6 , 9 4 3 世帯
c
.地区面積・1 0 . 5 2 k m
(全市の4.2%)
d
.人口年齢別構成・O
才‑‑‑....1 4
才22.7%
,1 5
才‑ ‑ ‑ . . . . 6 4
才,67.4%
,6 5
才以上9.9%
e
.産業別従事者割合・第1
次産業3.3%
,第2
次産業24.9%
,第3
次産業7 1 .
8~ó (サラリーマ ン等の被雇用者8 1 . 4%)
f
.居住形態・持ち家52.7%
,アパート借家43.4%
,間借0.6%
,その他3.3%
g '自治組織・
2 6
の町内自治組織があり,全部が自治公民館組織となっており,公民館類似施設 を保有している。‑28‑
h .地形‑地区を東西に走る相浦川を中心に家並が続き, 1960年代から大型団地の建設も相まっ て急激に住宅地区として発展してきた。
‑歴史・約1万年前といわれる泉福寺洞窟(昭和61年3
月
7日,国指定史跡)をはじめ無数の 遺跡・史跡、が存在する等,古くから聞かれてきた地区で、ある。‑教育関係施設・高等学校
2
,中学校1
,小学校2
,各種学校1
,幼稚園4
,保育所3
,児童 センター 1,教育集会所1,公立公民館1,公民館類似施設26(2) 地域社会づくりの課題
①
住民の主体的組織づくりa
自治組織地区内26の 自 治 組 織 ( 町 内 公 民 館 と 呼 称 し て い る 。 ) は つ に , 住 民 の 自 治 組 織 の 基 本 単 位 としての機能
2
つに,組織の中の主に専門部による学習編成機能3
つに,行政の末端組織と しての機能を合せ持っている。(町内公民館長が行政協力員として市から委嘱されてし、る。)そし て,この26の自治組織の連絡協議体として「大野地区町内公民館連合会」が組織されているo 26 の自治組織は,殆どが戦前からの町内会的伝統を一部有しており 規模・住民参画・運営・事業.関係団体も多様である。
課題として,第
l
に,町内住民が自治組織運営にどこまで参画していくかである。どの町内も10 ないし20世帯前後で,ひとつの班を構成し輪番制の班長によって町内住民の意志を組織運営に反 映してし、く構造を有している。しかし回覧板等の広報手段を駆使したり,班住民の会議を実施し てみたりとし、う広報広聴調査については,これから充実してし、く分野である。第2
に,近隣自治 組織同士での活性化・結合化‑総合化をどのようにして実現していくかである。ひとつの自治組 織固有の傾向として,予算の制限や役員の人間関係,規範の相違により閉鎖傾向や孤立傾向が顕 著になってくる。そのことを,どのようにクリアーしていくかということでもある。第3に, 日 常生活圏としてのコミュニティ形成,つまり地域社会の形成・地域社会づくりを自治組織運営の 中にどう位置づけるかである。町内自治組織は地域社会づくりのための基本単位で、あることは自 明だが,前記第2の課題で記述している傾向は,この第 3の点にも及んでくる。各自治組織の連 絡協議体の中での充分なる研究協議が待たれる。b
地域集団・地域組織地区内には無数の地域集団・地域組織が存在する。「公民館経営における事業形態・事業領域 の構造」で提示した表をもとに,皿‑
1
表のように分類してみたい。以上の分類は,その地域集団・地域組織によっては複数の事業領域を手掛けているものも多数 あるが,現在取組んでいる事業領域の中から,ひとつだけを選んで分類した。
田一
1
表から明らかなように課題として次のふたつを挙けeることができる。第1
に,地域組織 の分類の中で空白となっているところを埋めることであるo つまり「地域健康づくりJI
地域レ クリェーション・スポーツづくりJI
地域生活づくりJI
地域文化づくりJI
地域産業づくりJI
平 和づくりJI
人権づくり」の事業領域において,その領域に分類されるそれぞれの地域集団聞の皿 ‑
1
表 地域集団・地域組織の分類地
わい\峡Lる\与つに事で入カ1業\~Eカ領\H岐\\
b 組分¥織類町 ¥ 公民館ク'ループ・サークル地 地域グループサークル域 集 地 域 団 体団 地域組織a 基礎的事業 公
5
館活動推進 議 会 b 地域環境づく コスモス会 防犯組合 神友社奉賛交会 安消防10分団 町内公民館連
り事業 交安通 指 導 員 の 会 通 全 協 会 えロ弘之エz為
通安全母の会 婦人防火クラブ 跡
勤労者協議会 水道局大野分会 史 保存会
地域健康づく 薬草クラブよもぎ会 断酒 生協北部 2 り zAzh
地域レクリェ 3B体 操 ク ラ ブ 卓 球 ク ラ 猟木友会 ねむの 老人クラブ連合会 ーション・ス ブ ちびっ子空手クラブ 山の会
ポーツづくり 健康体好操会クラブ 社交研 タン ス同 社 交 舞 踏 究 会 クィック
地域生活づく 料理クラブ 友の会大野最寄 町内公民館連合学会婦校 人部会 農協婦 人部委会大野生活 ふれあい市 実 行 員 会
地域福祉づく なずな会 L 、ずみ会 民生児童委員協議会 C
活 地域教育づく 蛍雪学習会 ボーイスカウ 松年原 2組消防少 実践倫理主正会 子年ども劇導野場北フロ 青少年議建会全育 ト ガールスカウト 読み クラブ音楽隊 ック スポーツ少 団大指 者協校議会
聞かせの会
子友ども会連絡小警学協察議校補補員会育導導協 中学 育
動 校会育友大会野 会協議 日小青学少
年第教育センタ 友員員会会 春保会護司年会協
的 8部 会 教 職 議 海洋少
団大野地区会 OKソフトボール 事
z2zh
地域文化づく
詩 吟7グループ 葉茶道生術ゴ:iEクラ 県 北 寒 蘭 会 北 神社総代会 業 ブ 謡三医ヨ宅曲クラブ クラ えびねz会dzb、郷土
ブ 道 ク ラ ブ 園 ク ラ 史研究 ブ手あ刺みグラブ 花ク ラブ し ゅ う ク ラ ブ 藤 手 芸 ク ラ ブ 俳 句 ク ラ ブ 地域産業づく 工作クラブ木友会(*1)
工農協振支興部会長大会野農商協工振青年興部青食大年堂野部商 り 石盛焼愛好会(*2)
池野商工振興会 大野料飲ヱ三玉〉 組合
平和づくり 遺族会
人権づくり
地域総合活動 青壮年連絡協議会 実公民委館まつり
づくり 行 員 会
*
1 高齢者や婦人をメンパーとし,竹細工,木細工,わら細工などの製品を作り,将来,専用の木工所を設け,販売可能な製品づくりを目指している。よって「地域文化づくりJ[""地域生活づくり」よりも「地域産業づく り」をねらいとする公民館グループとして分類した。
* 2
大野地区の焼物として最近起こった「石盛焼」を習得し発展させる公民館グループである。単に趣味のグルー プにとどまらず,将来,大野地区の名物として,土産物として,また大野の民話「じんねむどん」とドッキン グすること等により,独持の販売可能な製品づくりを目指す。よって「地域産業づくり」の公民館グループと して分類した。‑30
ー情報交換,連絡調整を行ない各地域集団の活動の発展を促進する「地域組織」が未組織である。
ここで地域集団は独自の目標にそって事業活動を展開する事業実施体であり,地域組織はそれぞ れの地域集団の目標達成や事業実施を活性化・自立化・創造化・結合化・総合化する連絡調整体 であることを確認しておきたい。第
2
に,1
基礎的事業J 1
地域環境づくり事業J 1 ;
活動的事業」まですべての事業領域にかかわっていく「組織体」が未組織である。これまで「公民館活動推進 協議会」が,この部分の役割を若干果たしてきたが,この会は「公民館運営審議会」に近いもの で,むしろ公立公民館の経営に強くかかわる役割を有するo そこで市内
1 7
の公民館区をそれぞれ ひとつの地域社会としてとらえ,それぞれに「地区生涯学習推進会」が組織されようとしている。この会こそ,ここでいう「組織体」に近いものとして今後注目に値する。
①
活動a
自治組織地区内
2 6
の自治組織は,環境整備,衛生,高齢者や身障者などに対する福祉,農業や商業を中 心とした産業,防火防犯,交通安全,伝統的伝承的文化,生活文化,芸術文化,スポーツ, レク リェーション,青少年対策,納税や行政関係資料配布・行政の各種調査協力等の行政協力等々,住民の生活全般にかかわる活動を展開している。その中でも最近ユニークな活動を展開する町内 も出現しており,それは町内住民の手作りによる「朝市」であったり,町内住民自由投稿による
「季刊紙」発行であったり,町内住民総参加による「文化祭・体育祭」であったり,地区内
1 2
に も及ぶ神社のおまつりを町内青壮年による町内住民の現代的親睦行事につくりかえていった「夏 まつり」であったり,大野地区公民館で学んだことの「伝達講習会」であったり大変多彩である。さて猪山勝利は,公民館経営「現代化」論の先行研究として位置付けた「高野学派」からの論 理継承をもとに公民館経営領域の構造として仮説的議案を提示してL、る。この提示を自治組織の 活動現状分析に応用し,課題を明らかにしてみたい。
第
1
~こ,1
住民参画」領域からの課題として,自治組織運営全般にわたり問われる点である。現実には自治組織役員だけで活動が展開され,一般住民は無関心というケースが多いが,住民の 自治能力向上さらに主体性確立とも深く連関する領域であるだけに,どのように「住民参画」を すすめていくか大きな課題である。
第
2
に,1
目標・計画」領域からの課題として,親睦・連帯を中心に目標設定・計画づくりが すすめられることは基本的なことであるが,地域のさまざまな現代的状況に対応できる,つまり 高齢社会への対応,青少年育成や青少年対策への対応,婦人就労や婦人の自立への対応等を含め た目標・計画づくりが必要となっている。第
3
に,1
実施」領域にかかわるものとして,まず「活動」そのものについては, 日常活動の 活発化,行事活動と日常活動の関連性強化,交流・親睦活動だけでなく課題解決活動や自己啓発 活動の活発化,さらに子ども会・老人クラブ・青壮年会・趣味のグループ等の諸団体・グループ の育成強化をはかる必要がある。最近では自治組織のみで事業を展開するのでなく,諸団体・グ ループとの共催事業を実施する傾向がみられるが 世代間交流や事業の質の向上等からみて注目に値する。
次に「規範・規定」分野においては,
I
館則J I
見舞金支給規定」など成文化されたもののほか,慣習・慣例・しきたり等の不文律があり,むしろ後者によって自治組織の運営がなされる傾向が ある。町内によって相違が見られるものの,新旧住民の構成比やどちらがリーダーシップをとる かによって随分違いが出てくるものの,この分野での違いが活動そのものに及ぼす影響は大変大 きい。
次に「経営組織」分野では,役員体制や専門部制度がその活動の方向を決する。役員が知名士 であったり有力者であったりとし、う傾向はなく,きわめて民主的に決められている。しかし役員 のなり手が無いということは深刻な悩みであり 今後指導者の発掘・養成・定着は課題のひとつ と言える。また,いくつもの専門部が組織され,さまざまな活動が展開されているものの,各専 門部自体の強化をはかることにより活動が豊かになる。つまり専門部の精選と専門部員の確保が 課題である。先行事例として、漬田詔哉が紹介した佐世保市西大和町がある。
次に「研究・研修
J I
施設・設備J I
事務・財務J I
対外関係」分野については,各自治組織の 連絡協議体,行政,公立公民館と関連する部分が大きいのでここでは割愛する。第
4
に,I
評価」領域があるが,各自治組織とも「反省会J I
アンケート調査J I
広報紙への意 見掲載j等によって評価を試みている。しかし活動を発展させていくための本格的評価について は,これからの課題でもあるob
公民館グループ・サークル大野地区公民館には国一
1
表が示すように,3 4
の公民館グループ・サークル(男2 1 6
名,女4 6 3
名,合計6 7 9
名)が存在するD 地域社会づくりの活動についての課題として「活動の地域化」が 挙げられる。地域化とは,単に講師によって導かれる学習過程をマスターしていくことにとどま らず,学習課題や学習内容,学習方法を地域課題と結合したり,地域の自然,地域の歴史,地域 の生活,地域の文化,地域の産業,地域の教育,地域の福祉と連関させ, クーループ・サークル自 体が地域づくりの主体者となっていくことを意味するのである。ク、、ループ・サークルはともすれ ば,塾化・閉鎖化・孤立化・マンネリ化しやすい傾向を苧んでいるが,I
活動を地域化」するこ とにより活動そのものを活性化し発展させる等グループ・サークル自体へのメリットは,はかり 知れないものがある。大野地区公民館のグループサークルには,このような先行グループ・サー クルがし、くつか存在する。「健康体操クラブ」は地域の老人クラブの健康体操指導を,I
料理クラ ブ」は高齢単身男性の料理指導を手掛け,I
工作クラブ・木友会」は子ども達への竹細工指導を 担当し,I
薬草クラブ・よもぎ会J
は母と子の自然教室を試みた。「美術クラブ」は地域の史跡を 描き,大野の民話「じんねむどん」の大型人形を作成した。自ら学んだことを何らかの形で地域 に還元するというレベルでの地域づくり参加ではあるが,地域の自然・歴史・文化・教育・福祉 と確実に結付き「活動を地域化」しつつあるのであるo 今後,これら先行グループ・サークルに 続き多彩な活動が期待されると同時に,地域団体との結合化・共働化を試みることにより地域課 題と取組み,地域づくりの主体者として発展していくことに注目しておきたい。‑32‑
C 地域グループ・サークル
地区内には, III ‑ 1表が示すように 9の地域ク事ループ・サークノレが存在するD これはわれわれ が知る限りのもので一部に過ぎない。ソフトボールチームなどスポーツクーループまで入れると膨 大なものとなる。地域をコスモスの花でいっぱいにしようという「コスモス会」町内独居老人と
月 1
回の ふれあい会食"を中心に独居老人との交流を深めようとしている「し、ずみ会」を除い ては趣味や実益に関するグループ・サークルが大半で、ある。同好の人々をもって出発したもので あるだけに,前記の公民館グ ループ・サークル以上に閉鎖化・孤立化しやすい。「活動の地域化」が望まれるが地域化以前にまず開放化していくことが課題となっている。今後,前述(2)ー①の事 業領域別における地域組織の組織化を待って,その組織が果たす役割に期待したい。
d
地域団体皿 ‑ 1
表に示すように3 9
の地域団体がある。3 9
の中には各自治組織単位の子ども会,老人クラ ブ,青壮年会は含まれていなL、。地域団体は結成の当初からその地域団体の目標とするところは「地域づくり」であったと言える。まさしく地域団体なりの活動を活発に展開し続けて今日に及 んでいる。これからは地域団体の行政依存傾向 若干の独善傾向,活動のマンネリ化傾向をどの ようにして克服していくかが課題である。さらに地域住民の多様化・複雑化に対応出来ない状況 も散見されるのでこの点については、ひとつの地域団体のみの活動ではとても対応出来ず,地域 団体聞の,さらに公民館グループ・サークル,地域グループ・サークルとの結合化そして総合化 が試行されなければならず,活動の共働が生ずることを期待したいし
( 2 ) ‑
①に述べたように事 業領域別の「地域組織」の中でこのようなことが可能になることに注目したし、。e
地域組織これまで何回となく「地域組織」について述べてきたので,その必要性は言い尽くした。現在,
大野地区には,
I
基礎的事業」領域については「大野地区公民館活動推進協議会j,I
地域環境づ くり事業」領域については「大野地区町内公民館連合会j,I
活動的事業」の中の「地域福祉づく り」については「大野地区福祉対策推進協議会j,I
地域教育づくり」については「大野中学校区 青少年建全育成協議会j,I
地域総合活動づくり」については「大野地区公民館まつり実行委員会」が「地域組織」として機能しているo この中の「大野地区福祉対策推進協議会」については,福 祉に関しては民生児童委員の領分であると考えられていたことを,町内公民館長.老人クラプ会 長.婦人部長そしてボランテイアク
食なと‑の諸活動を生み出している。今後,
I
地域組織」が,その機能を充分に発揮するために情 報収集や研究を日常化する必要がある。これまで地域社会づくりの課題について,
I
自治組織jI
公民館グループ・サークルjI
地域グ ループ・サークルjI
地域団体jI
地域組織」の活動の現状分析を試みつつ明らかにしてきた。そ こで「地域課題」を事業領域別に これまで述べてきたことを除き少し触れておきたい。まず住民の多様化・複雑化に伴い,また住民層の多様化‑複雑化に伴い例えばある地域・ある 町内にとっては深刻な課題であっても,他町にとっては緊急度がないため「地域課題」としてコ
‑33
ンセンサスを得にくいという傾向がある。しかし小さい課題であろうと(個のレベルの生活課題 は別として)課題として解決を求める住民層が存在するということは地域課題として否定しない 立場をとりたい。
「基礎的事業」領域においては「課題の把握」をどこでどのように調整していくのか,まだは っきりしていない。地域組織として位置付けた「大野地区公民館活動推進協議会」の中でも,こ の点について試みはあったものの完全ではなし、。次に「地域情報づくり・地域情報提供」は総合 的なもの,部分的・限定的なもの,問題提起的なもの,方法,どの点を見てもこれからの課題で ある。次に地域集団のリーダーに比べると先導的リーダー・イニシェーションリーダーが少なく,
これからの育成が課題である。この領域では,住民の地域連帯感の希薄化等と言われてきたが,
以上述べたように 地域課題とし、う共通意識の欠如があり,この課題を解決すべく情報が不足し ており,解決の方向に導くリーダーが少ないと換言することが出来るo
「地域環境づくり事業」領域においては,大野の自然や歴史をきちんと保存していくことであ るが,その前に自然や歴史を地域住民がよく認識することである。次に生活・文化環境づくりと して下水道の整備,運動広場の確保,遊び場の確保が急がれているし,社会環境づくりとしての 特別養護老人ホーム等の公共施設誘致や商庖庖舗の集中大型化等が希望事項として挙げられてい る。次に高齢者や婦人が余暇を利用して陶芸や木工等に専念できる,地域の生産環境創造として 位置付け出来る施設づくりが待たれている。以上のように大野地区では,自然と歴史を活かし創 造的で活力ある環境づくりがこれからの課題として浮かびあがっているのである。なお公民館体 育室の建設が確実となり,今後新たな活動の展開が期待できる。
「活動的事業」領域においては,食生活の安全確保,合成洗剤追放,スポーツ・レクリェーシ ョン活動の普及,簡単に誰もが出来るスポーツ・レクリェーションの創造,地区運動会の実施,
資源再利用活動,冠婚葬祭の簡素化,郷土料理の創造,独居老人の連帯組織づくり,独居老人友 愛訪問活動の強化,独居老人生活相談窓口の設置,身障者ふれあい広場の実施,地域福祉活動へ の子どもの参加,地域の教育力の向上,学校と地域の連携強化,子育て相談窓口の設置,中学生
‑高校生の地域参加,ふるさと民話「じんねむどん」の研究・保存・継承・ふるさと伝説「大智 庵城物語」の研究・保存・継承,新しい大野文化の創造,一体感を高める大野の歌と踊りの創造,
商庖経営発想、の転換 大野の土産物づくり石盛焼の発展 木工製品竹製品の研究創造,ふるさと 型観光の開発,平和学習・平和実践の実施,人権学習の実施,地区イベントの研究と創造等々,
どれも着実に取組んでいかねばならない課題である。
2
地域社会づくりと公民館経営の課題前述
l
ー(2)一②で試みたように,ここでも猪山勝利の公民館経営領域構造の仮説的議案に従い 多少の現状分析をする中で課題を明らかにしたい。第 1に,
r
住民参画」領域については, [""大野地区公民館活動推進協議会J
[""大野地区町内公民 館連合会J r
大野地区町内公民館連合会婦人部会J
[""大野中学校区青少年健全育成協議会J
[""大野‑34‑
地区子ども会連絡協議会
J I
大野地区青壮年連絡協議会」を初め各種の地域集団・地域組織を通 じて地域のまた住民の実状なり意見なりが公民館に寄せられてくる。このことをもとに「大野地 区公民館活動推進協議会」等に公民館から問題提起をし,場合によってはプロジェクトチームを 編成し研究協議を深めてL、く形態をこれまで試行してきた。しかし「大野地区公民館活動推進協 議会」は地域形成についてよりも公民館経営そのものに対し研究協議する組織であり,I
大野地 区町内公民館連合会」は自治組織の連絡調整体であり「地域環境づくり」を主に取扱う地域組織 体に過ぎなかったのである。前述1 ‑ ( 2 ) ‑
①のように事業領域別の地域組織づくりと基礎的事業・地域環境づくり事業・活動的事業のすべてにかかわる地域組織づくりの組織化を援助すること が課題となっている。また前述の「大野地区生涯学習推進会」への指導助言も大きな課題となっ ている。もちろん住民参画は 住民の自治能力向上と主体性の確立をねらいとするものととらえ ているので,以上のような地域集団・地域組織を通してのみ求めるのではなく学級・講座や日常 の相談業務を通しても住民参画は実現されなければならない。
第
2
に,I
目標・計画」領域については,その実現がまったくこれからの課題である。ここで は地域社会づくりの目標や計画づくりに対して公民館はその援助の域を出てはし、けないのであっ て,援助なり指導助言なり出来る職員の専門性の確立が急務である。第
3
に,I
実施」領域については,公民館として基礎的・部分的に係わることが前提であり,事業の実施の際は必ず集団・組織との共催形態をとり,または援助に徹してきたことも報告して おきたい。事業の中で指導者養成については かなりの蓄積があるものの評価が充分でないこと を課題としたいし,情報提供の質量ともに今後の課題である。また施設の提供については,直接 の営利行為を除いては殆ど開放出来ているが,全市の公立公民館との均衡という観点から目的外 使用として対処しているものもいくつかある。今後,目的使用の判断基準を更に協議していく必 要があるo
次に規範・規定に関しては 条例・規則が存在するが地域社会づくり援助についての明文がな く,ある程度の成文化が課題として挙げられる。勿論,不文律のものの影響が大きいので,住民 と職員,職員と他館職員,施設職員と行政職員との間で,
I
公民館とは何か,公民館の役割はど うか。」とL、う議論を実践をふまえて深めなければならなL。、次に経営組織に関しては,最大の課題であり,職員数と職員の能力について現在最低条件のも とでの経営であるだけに数と質の改善が何よりもの緊急課題である。また職員の専門性を制度と して確立していく点も,地域社会づくり援助にとっては緊急度の高い課題である。
次に人間関係に関しては,様々な要因がある。まず公民館施設の中に市役所支所があることか ら,支所職員,兼務館長,専任公民館主事,非常勤社会教育指導員,嘱託管理人,地元選出県議 会議員・市議会議員,イニシェーションリーダー,集団・組織リーダー,学級生,多様な住民と 大変複雑である。しいて言えば,兼務館長は一般行政の超ベテランであり,非常勤社会教育指導 員は学校教育の超ベテランである。地域社会づくり援助の中で若干の理念なり理論なり方法のく し、違いから来る緊張関係はあるものの,地域社会づくり援助の本質を求めあうことにより,闘し、
あわせ合うことにより克服できるものである。ただ絶えず対地域‑対住民というダイナミックな 作用が展開するわけであるから 効率的‑機能的な人間関係をキープしておくことは重要な課題 である。
次に研究‑研修に関しては,職員の専門性を高めるためには欠くことの出来ないことである。
かといってその機会は不十分であり自己研究の機会を自ら創っていくことが必要不可欠である。
次に施設・設備に関しては,特に地域社会づくり援助の分野では多くの施設・設備が必要であ る。テント・机・椅子・パネル・電気設備・放送設備・体育設備・印刷機器・食器・大鍋・タコ 焼器‑綿菓子器に至るまで限りがなし、。市の予算には限度がある関係から大野地区ではその購入 の大半を地区からの寄附に頼っている。問題はその管理運用と保管である。大野地区では貸出し 提供などは公民館職員の仕事としているが「大野地区公民館活動推進協議会」の管理下に置いて いるo 保管については,これまた大きな問題であり,保管用倉庫建設は急を要している。
次に事務・財務に関しては,公民館主事は教育職ではなく事務職としてしか配置されていない のが現状である。しかし公民館主事として機能していくためには,徹底した事務の効率化をはか ることが課題である。さらに財務に関しては,ここ数年,財政逼迫によって予算は減少傾向にあ り,従って義務的要素の強い管理経費よりも事業費にしわょせが来ている。現在,事業費の割合 は
1
1.4%
である。少なくとも「地方交付税の単位費用積算基礎」に見合うだけの予算確保が課題 となっているo次に対外関係に関しては,学校・保健所・社会福祉協議会・郵便局など多くの機関との関係が 存在する。今後これら専門の機関との定例の連絡会開催が課題となっている。さらに同じ公立公 民館同士の関係も問われているが,事業の共催や共同の研究などへの取組みが,これからの課題 であるo
第
4
に,I
評価」領域については,全くこれからの課題であるが, 目標設定が出来ない限り評 価というのは難しいとL、う側面もある。(注)
(1 ) 猪山勝利・富永耕造・田中弘「社会教育施設経営に関する研究」教育実践研究指導センター 年報
N o . 1
・1 9 8 6
年 .P27
0(2 ) 猪山勝利他・前掲書.
P22.
(3 ) 長崎県社会教育研究会『学習社会時代の公民館』長崎県公民館連絡協議会,
1 9 8 3
年,P256
。W 地域社会づくりと公民館経営の展開(田中)
1
概 観a
昭和49年 7月'"'‑'50年 9月「公民館活動啓蒙化以前の時代」
昭和49年 7月開館から約 1年間は,外庭・駐車場等の施設設備の充実に力を注いでいる。事業
‑36‑
として「家庭教育学級」や「書道
J r
料理J r
和裁J r
舞踊」等の趣味・生活技術的なものを始め ている。b 昭和 5 0
年1 0 月 ‑ ‑ . . . . , 5 4
年3 月
「公民館活動啓蒙化の時代」
5 0
年4
月,常勤専任主事の配置とともに,広報紙発行や多彩な事業実施,各種の団体・クールー プ活動への施設開放が本格化していった。C
昭和 5 4
年4 月 ‑ ‑ . . . . , 5 9
年3月
「公民館活動教育機関指向化の時代」
薬草や山野草についての学習を高齢者教室・婦人学級・一般成人講座などの学習機会を通じて 深めたり,
r
漬物づくり講習会J r
幹事さん大学J r
かくし芸講習会J r
豆腐づくり講習会」など盛 んに実施したのもこの時期である。さらに「公民館まつり」の企画・準備‑実施を通じて「町内 公民館連合会」等の地域集団‑地域組織との共働化が始まったのもこの時期である。d 昭和 5 9
年4 月 現在
「公民館経営地域社会形成援助指向化の時代」
「まちづくり講演会
J r
まちづくりについて考えるつどし、」等の実施,r
公民館クゃループJ
の地 域化実践,各種「指導者養成研修会」における地域社会形成のテーマ設定,地域集団・地域組織 との共働化強化により,地域社会形成援助が公民館の役割の中核に据えられつつあるし,今日む しろ指向化から本格化の域に達しつつあると言える。2
組織づくりわれわれは,先に「公民館経営における事業形態・事業領域の構造」を提示した。それによる と公民館の事業領域の基礎的事業の中に「先導的リーダーの組織化や育成
J r
集団・組織の組織 化や育成」を挙げている。これには公民館事業の具体例として「指導者養成J r
集団・組織の連 絡調整J r
集団・組織からの相談対応J r
資料提供」がある。ここではこれらを総称して「組織づくり」としておきたし、。
まず「指導者養成」について,
r
講演会の実施J r
講習会研修会の実施J r
事業実施などを通じ ての公民館経営への参画J r
地域社会づくりへの参画」がある。1つに,
r
講演会の実施」については,r
公民館のあるべき姿を考える講演会」や「まちづくり 講演会」を定期的に実施することにより,意識の向上をねらってきた。この種の事業は参加制限 をせず,地区住民であれば誰でも参加出来るようにしてきたし,公民館活動の啓蒙にも役立ってき f
こ。2
つに「講習会研修会の実施」については「町内公民館役職員研修会J r
公民館活動推進協議 会会員研修会J r
公民館グループリーダー研修会J r
地域福祉実践研究会J r
老人クラブ役員研修 会J r
子ども会指導者研修会」を展開してきた。これらは準備の段階から関係住民の参画を得て,内容‑方法を充分に検討して実施することに努めてきた。検討段階での住民参画が先導的リーダ