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障害者のきょうだいを対象としたセルフヘルプ・グ ループの役割

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(1)

障害者のきょうだいを対象としたセルフヘルプ・グ ループの役割

著者 松本 理沙

雑誌名 評論・社会科学

号 104

ページ 109‑141

発行年 2013‑03‑20

権利 同志社大学社会学会

URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000013030

(2)

要約:本研究は,障害者のきょうだいへの支援の在り方について,セルフヘルプ・グルー プの実態に着目して検討するものである。障害者のきょうだいは,親と異なり,幼少期か ら高齢期まで,障害者と生涯に渡って関わり続けることになる。筆者は,「きょうだい会」

の役割や課題について,2地区から,フォーカス・グループ・インタビューによるデータ 収集・質的分析を行った。その結果,きょうだい会の役割として,「共通の経験をもつ人と の出会い」「経験や感情の開放と共有」「情報の取得」「自分の生き方を見出すこと」「エン パワメント」が導かれた。今後の課題として,親ときょうだい間の情報収集及び情報発信,

専門機関との連携,各地域への組織化が挙げられた。

キーワード:障害者のきょうだい,セルフヘルプ・グループ,質的研究

目次

1.本研究の目的と意義

2.障害者のきょうだいを対象とした当事者団体(セルフヘルプ・グループ)の歴史及び現状 2−1.1963年〜1970年代前半

2−2.1970年代後半〜1990年代前半 2−3.1990年代前半〜1990年代後半 2−4.2000年代〜現在

3.障害者のきょうだいを対象としたセルフヘルプ・グループの役割に関する調査 3−1.調査概要

3−2.分析方法

3−3.X地区の全国きょうだいの会会員における調査結果の分析・考察

3−4.Y地区の全国きょうだいの会会員における調査結果の分析・考察

4.本調査における結論

−X・Y地区のきょうだいの会会員における調査結果の類似点・相違点を踏まえて 4−1.きょうだいの会に関わり始めたきっかけ

4−2.きょうだいの会が果たす役割

4−3.きょうだいの会が果たせない役割(限界・課題)

4−4.きょうだいの会の役割変化の有無 4−5.きょうだいの会が今後担うべき役割 5.考察

────────────

同志社大学大学院社会学研究科博士後期課程

201317日受付,2013123日掲載決定

論文

障害者のきょうだいを対象とした セルフヘルプ・グループの役割

松本理沙

109

(3)

1.本研究の目的と意義

日本において,1990年代後半以降,障害者のきょうだい(障害者を兄弟姉妹に持つ 者。以下「きょうだい」と表記する)が研究対象として注目され始めてきた。このこと は,障害当事者でもなく,親でもない,きょうだいの固有の存在に着目する必要性が,

障害者福祉領域において認識され始めたことの表れと言える(1)

広川(2012)は,近年,きょうだい問題が顕在化してきた社会的背景として,次の

2

点を挙げている。一点目は,「家族形態の変化」すなわち「核家族化の進行と共に家族 の養育機能が急速に低下していったこと」,二点目は,「近年の医学・医療体制の進歩と 整備」の結果として,「ハイリスクの新生児の救命率の向上と障害児の寿命が飛躍的に 延びたことにより,介護が親世代にとどまらずきょうだい世代にまで引き継がれる必然 性を生じるに至ったこと」である(広川

2012 : 162)。

一方,1963年には,障害者のきょうだいを対象とした先駆的な当事者団体である

「全国障害者とともに歩む兄弟姉妹の会」(以下「全国きょうだいの会」)が設立され,

親の会とは異なる,きょうだいとしての独自の活動が展開されてきた。しかし,設立当 初から現在までの約

50

年間の中で,会の活動目的や活動内容も変化している。このこ とは,障害者福祉の歴史的変遷の中で,きょうだいが抱える問題も歴史的変遷を遂げて いることを表す。

本研究では,セルフヘルプ・グループの具体的役割や今後の課題について明らかにす ることを目的としている。その理由は,先行研究において,きょうだいへの支援の必要 性や,セルフヘルプ・グループにおいてきょうだいどうしで語り合うことの意義につい ては触れられるようにはなってきたが,セルフヘルプ・グループの具体的役割や今後の 課題への言及については,不十分であると考えられるからである。また,今後の課題を 明らかにすることが,今後のきょうだい支援を考えるうえで意義があると考える。

本稿では,はじめに,障害者のきょうだいを対象とした当事者団体(あるいはセルフ ヘルプ・グループ)の歴史及び現状について,先行研究やフィールドワークの成果をも とに概観する。次に,きょうだいを対象としたセルフヘルプ・グループに関する調査の 分析結果を明らかにし,最後に考察を述べる。

2.障害者のきょうだいを対象とした当事者団体

(セルフヘルプ・グループ)の歴史及び現状

本章では,障害者のきょうだいを対象とした当事者団体(あるいはセルフヘルプ・グ

障害者のきょうだいを対象としたセルフヘルプ・グループの役割 110

(4)

ループ)の歴史及び現状について,特に「きょうだい」の当事者性の内容の変化に着目 し,前嶋・米田(2003)論文を援用して概観する。

前嶋・米田(2003)を援用する理由は,会の活動方針等の詳細が掲載されている機関 誌『つくし』の創刊号(1963年

9

月)から

231

号(2001年

12

月)までを分析したう えで,当時の「障害者本人,家族,関係者らが行ってきた運動の総体」の中の位置づけ も明確にしていることから,援用に適していると判断した。本章の年代区分は,前嶋・

米田(2003)のものを参考にしている。

また,本稿において

1963

年以前の前史は明記していない理由は次の通りである。

1963

年設立の「全国障害者とともに歩む兄弟姉妹の会」(以下「全国きょうだいの会」と表 記する)がきょうだいに関する先駆的団体であり,そもそも障害者のきょうだいに関す る研究が日本においては

1990

年代後半以降に始められてきたことにある。加えて,海 外においても,イギリスの小児科医

Holt

1958

年にきょうだい児が抱えるストレスに ついて言及したことが最初であり,具体的にきょうだいどうしの集まりの場が設けられ たのは

1965

年からだと言われている(柳澤

2007 : 14−5)。以上の背景と研究目的を照

らし合わせると,1963年から明記することが適切と考える。

また,本稿において,「当事者」の定義を「ニーズを持った人々」(上野・中西

2003 : 9)とする。

2−1.1963

年〜1970年代前半

前嶋・米田(2003)は,全国障害者とともに歩む兄弟姉妹の会における活動の変遷を 概観し,障害者施策や障害者運動の変遷等の社会の変化に伴う,会における「きょうだ いの役割認識の変化」と,親の会との活動の違いから明らかになるであろう「親ときょ うだいの立場の違い」を検討している。

前嶋・米田は,1963年から

1970

年代前半までの全国きょうだいの会を「『家族とし て』障害者の偏見・差別をなくす活動に取り組む時期」と分析している。1960年代前 半,障害者問題が社会の中で認識され始めた時期,「全国障害者とともに歩む兄弟姉妹 の会」(当時は「全国心身障害者をもつ兄弟姉妹の会」という名称)が設立された(1963 年)。当団体は障害種別を限定していない点で珍しい団体であった。会の略称は「つく し会」とされるが,その由来は「障害者がつくしん坊のようにすくすく育ち,兄弟姉妹 は障害者につくすように」という意味である。障害者の差別や偏見が残っている時代に 障害者の成長を願って,また,きょうだいがそれを支えるという当時の考えが現れた命 名であるという(前嶋・米田

2003 : 124−5)。

設立当初,当会では,間接的に親の会やメディアを通して,入会の呼び掛けを行って きた。しかし,親の会を通しての呼び掛けは,きょうだいに伝わるまでに親自身が止め

障害者のきょうだいを対象としたセルフヘルプ・グループの役割 111

(5)

てしまったと考えられる。その理由として,親たちには,きょうだいには迷惑を掛けた くないという気持ちがあり,障害者問題に取り組むことを目的とした当会に積極的に入 会させようと考えなかったことが挙げられる。しかし,当時の会員の中には,現在同 様,同じような苦しみを持つ人と会いたい,話をしたいという思いで会に参加していた 者もいたとされる(前嶋・米田

2003 : 125)。

1970

年代に入ると,会ではきょうだい達への直接的な啓蒙を行うようになった。そ の結果,各地の施設を中心に支部ができていった。これに対し,施設を拠点にせず,都 道府県単位で支部を作った場合は,集まりがなかなか持てず,活動が停滞することが多 かったという。設立当初から会員が集まりにくかったことや都道府県単位の支部が長続 きしなかったことは,「きょうだい」という立場は,親でもなく他人でもない曖昧な位 置であることが一つの要因とされている。子の養育に義務的なものがある親に対し,き ょうだいは義務的な部分があまりなく,親のような高い意識を持ち得なかったとされて いる(前嶋・米田

2003 : 125−6)。

一方で,全国きょうだいの会は学習会を開催し,障害者の置かれている状況について 把握しながら,親達の運動に加わることを中心に活動を展開していった。また,親の会 とは別に会独自で取り組んだ活動として,障害児者の活動を支援するボランティア活動 を行ってきた。その特徴として,既存の施設行事などを利用して,障害者の生活をより 充実させるにはどうすればよいかを模索していった活動であった点が挙げられる(前嶋

・米田

2003 : 126)。

2−2.1970

年代後半〜1990年代前半

前嶋・米田は,1970年代前半から

1990

年代前半までの全国きょうだいの会を「『き ょうだいとして』障害者との関係を明確にしていく時期」と分析している。国際障害者 年の

1981

年頃,全国きょうだいの会会員の中には,40歳代,50歳代になった障害者を 兄弟姉妹に持つ会員も現れてきた。また,同年,全国きょうだいの会の今後の活動に影 響を与えた「遠藤訴訟」があった。これは,それまで同一の家屋に住んでいるきょうだ いの収入を含め,障害者の施設入所費用を決定する方法を改めさせるものであった。こ の判決は,障害者ときょうだいの関係性についての議論のきっかけになった。以後,会 の機関誌上では,親亡き後の問題に関連するテーマが多く取り上げられ,活発に議論さ れるようになったという(前嶋・米田

2003 : 126−7)。

1980

年代,入所施設から地域移行への施策の転換がなされ始めた頃,全国きょうだ いの会では施設福祉の充実を求める議論がなされた。1980年代前半は,親亡き後,障 害者の生活保障に不安がある以上,自分たちきょうだいが動かなければならないことを 前提にした,きょうだいが親代わりになる必要性を説く意見が多く聞かれた。1980年

障害者のきょうだいを対象としたセルフヘルプ・グループの役割 112

(6)

代の半ばになると,きょうだい自身の生活を大切にしていくことも必要であるとの意見 が聞かれ始めた。1980年代後半から,きょうだいは,親から自立して新しい家族を持 つことから,親亡き後のきょうだいの世代になると介助が困難であるために,生活の場 としての施設の充実を求める議論が会の中で展開された。きょうだいの本音として,事 実上,在宅か施設かしか選択肢がない中で,在宅であるならば面倒を見切れない,しか し,施設には入れたくないという矛盾した思いがあった。この問題の解消に向けては,

在宅支援の充実か,入所施設の充実が急務であった。そして,全国きょうだいの会で は,時間的にも労力的にも負担の少ないと考えられた後者の入所施設の充実に向けた取 り組みを行っていった(前嶋・米田

2003 : 127)。

一方で,全国きょうだいの会は,知的障害者の就労支援に向けた取り組みも行った。

当時,親の会などを中心に共同作業所作りの運動が展開されており,全国きょうだいの 会も運動に参加していた。ただ,会は親よりは運動から離れた位置で,親達の運動で不 足している部分を補う活動を展開するという姿勢を取ってきた。その一つの例が,作業 所製品の販売経路の拡大を目的としたことである。これは,きょうだいという立場だか らこそ,すなわち,自分達だけでは背負いきれない障害者の生活問題に直面したからこ そ,障害者の生活を家族以外の社会資源で支える工夫を模索することができたのではな いかと考えられている(前嶋・米田

2003 : 127−8)。

2−3.1990

年代前半〜1990年代後半

前嶋・米田は,1990年代から

2001

年までの全国きょうだいの会を「『きょうだい個 人として』相互の交流や支援を目指した具体的活動を模索していく時期」と分析してい る。

1995

年,全国きょうだいの会では,「全国心身障害者をもつ兄弟姉妹の会」から「全 国障害者とともに歩む兄弟姉妹の会」へと名称が変更された。これにより,きょうだい 独自の会の団体であることが明示されたとされている(前嶋・米田

2003 : 128)。

『社会福祉基礎構造改革(中間まとめ)』では,家族が地域福祉を支えることを大前提 に進めていく方向性が打ち出された。しかし,実際に,多くの家族が障害者を入所施設 に入れた理由として,家族の介護の限界が指摘されている。全国きょうだいの会でも,

家族が障害者を支えるという大前提に対する疑問や不安が話し合われた。行政への要望 書を作成し,提出している(前嶋・米田

2003 : 129)。

一方,同時期,きょうだいに対する直接的な支援の方法も模索され始めた。具体的に は,きょうだいの悩み等の相談活動を進め,きょうだいが抱える課題が広く受け止めら れる体制作りを目標に掲げ,機関誌上で相談室を設け対処し始めたこと等が挙げられ る。2000年度には,1995年度及び

99

年度に行ったきょうだいの実態調査のアンケー

障害者のきょうだいを対象としたセルフヘルプ・グループの役割 113

(7)

ト結果を元にしたきょうだいの悩みの分析が行われ,知的障害者の自立や所得保障制度 に関する悩みのような,情報提供することで悩みや不安が解決に導かれるものと,きょ うだい本人の結婚や障害者との関わり方のような,心情的なものやどう考えたらいいか 迷っているものに分類され,それぞれの悩みへ対処していくことが決まった。

2−4.2000

年代〜現在

こうした全国きょうだいの会の活動の変遷の裏側では,スタッフ同士の価値観の違い が生じていた。様々な出来事を経たのち,1990年代当時スタッフをしていた女性が全 国きょうだいの会を退会し,1998年

3

月,きょうだいへの直接的支援に重きをおいた

「きょうだい支援の会(東京)」の運営を開始された。また,2004年

3

月,非当事者

(きょうだいの立場ではない人)との連携のために「きょうだい支援を広める会」を設 立,運営を開始された。

1990

年代に引き続き,現在も,全国きょうだいの会は,きょうだいを中心とした団 体であり,きょうだい支援・親を始めとして家族全体への支援・障害者支援を訴え,福 祉の充実を目指している。また,「障害を持つ兄弟姉妹(障害者)」の幸せをめざし,

「障害のないきょうだい」の様々な課題の解決に向け活動している。この理念から伺え ることは,当団体はきょうだいへの支援のみに特化するのではなく,障害児者への支援 にも重きをおいて活動しているということだ。

全国障害者とともに歩む兄弟姉妹の会の具体的活動は,「本部」と「支部等」で異な る。本部では,支部等や直属会員の活動を援助するとともに,国や社会への働きかけ,

研究や情報の収集,機関誌『つくし』の発行などを行っている。支部等は,会員が直接 関わるところとされ,障害を持つきょうだいと一緒にレクレーション等をしたり,会員 同志の親睦や相談,学習活動,施設見学,他の支部との交流,支部のお知らせの発行な ど,支部毎に独自の活動をしている。

一方,インターネットの普及から,セルフヘルプ・グループに拘らず,きょうだいの 当事者が独自で行う「オフ会」の開催も都市部を中心になされている。

3.障害者のきょうだいを対象とした セルフヘルプ・グループの役割に関する調査

本章では,セルフヘルプ・グループの役割について,とりわけ「全国障害者とともに 歩む兄弟姉妹の会」の中の

2

地域を対象としたインタビュー調査についてまとめる。

障害者のきょうだいを対象としたセルフヘルプ・グループの役割 114

(8)

3−1.調査概要 3−1−

(a).調査目的

調査目的は,きょうだいを対象としたセルフヘルプ・グループの役割を把握し,今後 のきょうだい支援の充実につなげることである。

3−1−

(b).調査方法

(1)調査対象者

回答者は,成人期のきょうだいで,「全国障害者とともに歩む兄弟姉妹の会」の会員 に該当する者に限定した。

成人期のきょうだいに限定した理由は,児童期という不安定な時期に調査依頼するこ とで,心理面負担を与えないようにするという倫理的配慮に基づく。

全国きょうだいの会会員に限定した理由は,調査目的において,(成人期の)きょう だいを対象としたセルフヘルプ・グループの役割を探究すると設定した以上,セルフヘ ルプ・グループに実際に関わっている会員でなければならなかったからである。

(2)調査形式

調査形式として「フォーカス・グループ・インタビュー」を採用した。この形式を採 用した理由は,以下の通りである。

そもそも,フォーカス・グループ・インタビューには「個人インタビューを凌ぐほど の明らかな実用性がある」(Hess 1968=1999)。具体的には,「相乗効果性(グループで の相互作用を通して,より広範なまとまったデータが現れる)」,「雪だるま性(ある反 応者の発言が,さらなる発言へと連鎖的反応を引き起こす)」,「刺激性(グループでの 議論そのものが話題についての刺激を生みだす)」,「安心感(グループが安らぎをもた らし,率直な反応を促進する)」,「自発性(参加者は全ての質問に答えるよう要求され ているわけではないので,彼らの反応はより自発的で純粋である)」が挙げられる。こ れらの特性は,調査目的に有効に働く。つまり,セルフヘルプ・グループの役割とし て,当事者同士(調査協力者同士)の関わりが重要視されるため,この手法が適してい るのである。

なお,調査実施場所は,X地区及び

Y

地区各会員が提供して下さった。

質問項目は,調査目的に伴い,次の

4

つに設定した。1つ目は「きょうだいの会に関 わり始めたきっかけは何ですか」。2つ目は「あなたにとって,きょうだいの会が果た してきた役割,果たせない役割(限界・課題)は何ですか」。3つ目は「関わり始めた 時から現在に掛けて,あなたにとってのきょうだいの会の役割に変化はありましたか」。

4

つ目は「きょうだいの会は,今後どのような役割を担うべきだと思いますか」であ る。更に,事前アンケート・事後アンケートも併せて依頼した。また,調査当日,各回 答者の活動歴・活動頻度・活動支部について,追加の質問を行った。

障害者のきょうだいを対象としたセルフヘルプ・グループの役割 115

(9)

(3)調査期間及び協力依頼方法

調査期間は

2010

年秋であった。調査協力を依頼したのは成人期のきょうだいで,「全 国障害者とともに歩む兄弟姉妹の会」の会員であった。

調査地域は,「全国きょうだいの会」の支部の中の,X地区(1支部)と

Y

地区(複 数支部)の

2

地域で実施した。2地域で実施した理由として,支部によって活動内容や 会員の層,歴史等に差異が見られることから,調査結果にも差異が見られることが予想 されたからである。また,この

2

地域を選択した理由は,全国きょうだいの会の中で例 会が盛んに実施されている地域とみなされているからである(フィールドノーツ)。

調査協力者の抽出方法は,以前に行った別の調査の中でインタビュー調査への協力依 頼を行った際,同意して下さっていた方を中心に募った。その中で,2010年秋,X地 区は例会開催日時の一時間前,Y地区は特別に日時を設定し,その日時に協力できる 方が対象となった。実際に依頼したのは,調査実施日の

1, 2

ヵ月程度前であった。

X

地区に関しては,筆者が直接依頼した他,X地区の代表会員が,筆者と直接面識 のない会員に対して親切にも協力依頼を行って下さり,結果的に

10

名の協力者があっ た。Y地区では全員筆者が直接依頼し,7名の協力者があった。この人数は,「グルー プは

6

名から

12

名で構成されるべき」とする考えに合致した人数である(Folch-Lyon

・Trost 1981=1999)。なお,X地区では

2

名,Y地区では

6

名の方に,都合が合わない 等の理由で断られている。

(4)倫理的配慮

「一般社団法人日本社会福祉学会研究倫理指針」に基づいて行った。具体的に,個人 情報の保護,調査面接の中断が可能なこと,調査面接を中断してもいかなる不利益も被 らないこと,逐語録といった調査データを研究目的以外に使用しないことを文書及び口 頭で説明し,同意を得た。また,研究会等を通じてピアサポートを受けた。

3−2.分析方法

分析にあたり,才木(2006, 2008)によるグラウンデッド・セオリー・アプローチの 方法を参考にした。回答者各々の回答内容(文章のデータ)を切片化し(意味毎に分 け),出来上がった切片から,切片の内容を適切に表現すると思われる簡潔な名前で,

抽象度が低い概念名(「ラベル」)を付けた。その「ラベル」を元に,現象の名前を意味 する「カテゴリー」,「カテゴリー」に結びついて意味を深く説明する「サブカテゴリ ー」を抽出した。この時,「ラベル」は回答者の回答内容をほぼ反映していることにな る。この作業を地区毎,質問項目毎に行った。なお,以下の文章中,カテゴリーを

【 】,サブカテゴリを《 》で括る。また,ラベルの語尾に書かれている「(回答者)」

はあくまで発言者であり,他にも同意者がいる場合がある。

障害者のきょうだいを対象としたセルフヘルプ・グループの役割 116

(10)

3−3.X

地区のきょうだいの会会員における調査結果の分析・考察

X

地区について,現在の会は

2000

年代に発足した(初期の会は

1960

年代に発足し たが一度消滅している)。主な活動として,1, 2ヵ月に

1

回の例会のほか,1年前から 独自で小学生のきょうだいを対象とした支援活動を行っている。2010年春には

X

地区 で全国総会が開催された。なお,全国きょうだいの会は「きょうだい会」と会員から通 称されているため,カテゴリーでの表記は,その通称に倣うこととする(3−4.も同様 である)。

今回の調査における回答者は,以下の通りである。

3−3−

(a).きょうだいの会に関わり始めたきっかけ

1 X地区の全国きょうだいの会会員における回答者一覧(事前アンケートによる情報)

回答者 性別 年代

きょうだ い全体の 人数

きょうだい

構成※ 障害特性 生活形態

X 1 女性 30 2 知的障害 親と同居

X 2 女性 40 3 弟・妹 知的障害 グループホーム X 3 女性 50 3 妹・妹 知的障害・「斜視」 施設入所

X 4 男性 40 2 知的障害 親と同居

X 5 女性 50 3 姉・姉 知的障害 施設入所

X 6 女性 20 4 兄・兄・弟 知的障害・「ダウン症」施設通所・親と同居

X 7 女性 30 2 知的障害 親と同居

X 8 女性 40 4 兄・兄・妹 知的障害・発達障害

「自閉症」

施設通所・施設入所・グループホーム・

親と同居(詳細は省略)

X 9 女性 30 3 兄・弟 知的障害 施設通所

X 10 女性 30 2 知的障害 グループホーム・親と同居・自分と同居

内は,障害をもつ本人に該当する。今回,回答者との年齢差は省略した。

※「 」は,その他欄にご記入頂いた内容である。

2 X地区の全国きょうだいの会会員におけるきょうだいの会に関わり始めたきっかけ

カテゴリー サブカテゴリー ラベル

きょうだい会 を知った手段

自発的な探索 親の会による認知(X 4)

インターネットでの検索による認知(X 9)

必然的な出会い 福祉職の知人である会員からの紹介による認知(X 7)

偶然的な出会い 全国きょうだいの会の著書による認知(X 1・X 8)

福祉の職場にあった諸法人の機関誌による認知(X 2)

学校在学時のきょうだいへのインタビューによる認知(X 2)

親対象の集まりにおけるきょうだい会の紹介による認知(X 5)

ヘルパーの研修で講師だった相談役による認知(X 6)

雑誌によるきょうだい会の認知(X 10)

きょうだい会 への参加理由

自発的な理由 会の存在に対する驚き(X 1)

法律や制度に関する情報の無さ(X 3)

法律や制度に関する親からの説明不足と期待(X 3)

きょうだいが集まれる場への参加願望(X 4・X 8)

障害者のきょうだいを対象としたセルフヘルプ・グループの役割 117

(11)

【きょうだい会を知った手段】は,《自発的な探索》《必然的な出会い》《偶然的な出会 い》に分けられた。その主な特徴は,回答者自身あるいは知人が福祉関係者であるこ と,回答者自身がきょうだいに関する著書・雑誌の特集に関心があったことがある。

【きょうだい会への参加理由】として《自発的な理由》と《偶発的な理由》が挙げら れた。《自発的な理由》の自発性には強弱があり,「『こんなのがあるのかぁ』っていう 感じ」(X 1さん)という興味・関心のレベルから,「いろんな手続きのこととか,全く 親任せで,無知な状態できたんで。で,親同士がたまに,うちの弟のことで話してる会 話が分からない時があって,これじゃ駄目だなぁと思って」(X 9さん)という焦燥感 に駆られるレベルまであった。《偶発的な理由》には,きょうだい会の設立に関わった 相談役や会員,地理的待遇がみられた。

一方,きょうだい会の存在を知ったものの,【きょうだい会への参加の躊躇】をした 回答者もいた。理由は,《年齢層の違い》《価値観の違い》《タイミング》によるもので あった。《価値観の違い》については,「当時(20年位前に)読んだ本,全国きょうだ い会の本は,ちょっと,あぁ,何か皆さん優秀な方ばかりでちょっと私とは違うな,と 思ってしまって」(X 8さん)と回答されている。

また,【きょうだい会の活動動向】も,会への参加に関して影響している。X 3さん は今回の調査において最年長であったが,普段の活動においても在籍年数・年齢ともに 最年長のようである。X 3さんはかつて,妹(障害をもつ本人)が入所している施設で きょうだい会を設立し,障害をもつ本人の生活状況に関する情報発信を行った。その中 で,相談役からの誘いがあり,現在の

X

地区のきょうだい会に関わることとなった。

自発的に会員と話す機会(X 5)

きょうだい支援への興味(X 7・X 8)

子どものきょうだいに対する支援の必要性への意識(X 8)

直接会って話をする機会の欲求(X 8)

親任せで無知な自分への焦り(X 9)

地元でのシンポジウム後の参加(X 10)

偶然的な理由 地理的距離の近さ(X 2)

(きょうだい会の)相談役からの誘い(X 3)

相談役に障害をもつ本人について話をする機会と誘い(X 6)

(福祉職の知人である)会員からの紹介(X 7)

きょうだい会 への参加の躊

年齢層の違い 会員との年齢差による一時的な参加の躊躇(X 2)

価値観の違い 会員と自分との価値観の違い(X 8)

タイミング 参加のブランク(X 10)

きょうだい会 の活動動向

現 在 のX地 区 の き ょうだい会

X地区きょうだい会の活動停止状態(X 1・X 7)

X地区でのきょうだい会の再結成(X 1・X 4)

施設のきょうだい会 情報提供を行うための施設のきょうだい会の当初の結成(X 3)

障害をもつ本人の生活状況に関する情報発信(X 3)

障害者のきょうだいを対象としたセルフヘルプ・グループの役割 118

(12)

3−3−

(b).きょうだいの会が果たしてきた役割

きょうだい会が果たす役割として,大きく

5

点が見られた。カテゴリー名について は,北川・岡崎(2005)を参考にした。

【共通の経験をもつ人との出会い】では,《きょうだいとの出会い》《説明の手間が省 けること》が見られた。X 8さんは説明の手間について,「自閉症」「ダウン症」「他害」

等の言葉を例に話されている。また,X 7さんは次のように話されている。

「障害をもつきょうだいがいない人とかだと,説明するのに一から十までしゃべらなきゃい けなくて,それだけで2, 3時間掛かっちゃうわね,みたいなところとかあるけど,ここに来 れば,その,皆分かってくれるし,話も早いし。その話すことによってストレスが軽減され る,自分の,ていうところですかね。」

ここから,ストレス軽減のための本質的な話まで前置きなしで進められることが,説 明の手間が省かれることの利点として挙げられている。

【経験や感情の開放と共有】では,日常の世界ときょうだい会での話しやすさの違い について,X 3さんは次のように話されている。

3 X地区の全国きょうだいの会会員におけるきょうだいの会が果たしてきた役割

カテゴリー サブカテゴリー ラベル

共通の経験を もつ人との出 会い

きょうだいとの出会

会員は全員きょうだいであること(X 3)

仲間意識の芽生え(X 3)

説明の手間が省ける こと

当事者にしか分からない側面の説明に掛かる手間が省かれること(X 7

・X 8)

経験や感情の 開放と共有

経験や感情の開放 きょうだいとしての今までの経験の話し易さ(X 1)

児童期に切望した「きょうだい会」に出会えたことへの喜び(X 2)

きょうだいとしての今までの経験・悩みを受け止めてもらえる安心感

(X 1・X 3)

裸(素)の自分に対する会員からの受容(X 3)

障害をもつ本人について具体的に話せる場(X 4・X 9)

一般の人のように話す内容に対して境界線を設けなくて良いこと(X 8)

経験や感情の共有 きょうだい特有の根本的な思いの共有(X 5)

きょうだいの話を聞く機会(X 6)

経験に対する共感(X 10)

会に対する安心感 きょうだいの会に対する安心感・いざという時の支え(X 2・X 4・X 6)

情報の取得 情報の取得 法律・制度を勉強できる場(X 4・X 7・X 9・X 10)

法律・制度を使ってきた経験者の存在の心強さ(X 10)

経験を聴くことによる勉強(X 10)

自分の生き方 を見出すこと

自分の生き方を見出 すこと

きょうだいの言葉による好影響(X 5)

きょうだいという立場に悲観的になる状況からの脱却(X 6)

活動を通して 力を得ること

活動を通して力を得 ること

心理的問題を自分で克服する力の増強(X 8)

問題の共有による精神的安定(X 8)

自分一人で立ち向かうことへの活力の獲得(X 8)

障害者のきょうだいを対象としたセルフヘルプ・グループの役割 119

(13)

「他の人にね,『いや,実はうちのきょうだいがこういう風で,なかなか大変なんだわ』って いうと,返ってくる答えが,{感心したような口調で}『やっぱり偉いねぇ』,って,ね。そ ういうようなこととか,何でしょう。でも,ここ(他の人の前)だと,『偉いね』って言わ れると,偉い(と思われた)私は,{強調した声で}愚痴がこぼせない。頑張っちゃってる から,あの,偉いんだっていうところを崩せない。でも,ここ(きょうだいの会)にくれば 裸でいられるから,あの,その,いろんな悩みがストレートに出しても,みんな,あの,背 景一緒じゃないですか,バックホームがね。だから,あの,受け入れてもらいやすいし。」

この例のように,きょうだいは偏見を持たれることが多い。白鳥(2005)も,子ども のきょうだい支援活動の実践を踏まえて,きょうだいは良い子であるという偏見を持た れやすいこを指摘している。また,X 8さんは次のように話されている。

「最近,私は子どもの頃,あの,『兄が障害(者)で,殴られて育っているよ』とかいうのも 平気で一般の人に言えるようになったんですけど,そこまでしかやっぱり言えません。『今 でもベランダから叫ぶよ』とか,『今でも父を殴って血まみれにするよ』なんて,やっぱり,

一般の人はひくだろうなって思って言えないですね。その辺は,(きょうだい会では言える ので)楽だなぁというのが一つ。」

この例のように,一般の人(きょうだいではない人)に対し,話す内容に境界線を設 け,自分の見せ方を工夫しているきょうだいも,きょうだい会では境界線を設けずに済 み,「楽だなぁ」と感じていることが伺える。また,X 5さんはきょうだい会に入る以 前からの知人で,きょうだいの立場にある人とは,いろんなことが話せるという実体験 を持っていた。

【情報の取得】について,X 4さんは,弟(障害をもつ本人)のエピソードを元に,

次のように話されている。

「弟が,実は一般就労,実は知的障害で一般就労してたんですけど,去年ちょっと仕事を,

あの,職場でいじめにあって,それが原因でやめてしまって。今も仕事見つかっていない状 態なんですけども。例えばそういう悩みとかでも,ここでは話せる。あの,やっぱし,あ の,ホッとするかと。落ち着く場かな,いう風に思います。で,あの,例えばそういう時 に,あの,じゃあ,例えば,えー,『もし働いてない時には障害年金とか取る手続きした方 がいいよ』とか,あの,えー,『自立支援法の障害区分の手続きした方がいいよ』とか。私 の場合は結構そういう使える制度のこととかも,あの全国総会の時とかに,他のきょうだい の人に聞いたりして,あの,結構勉強になったところもあるので,やっぱりそういったとこ ろでも,いざという時の支えにもなってきているのかなと,いう風に思います。」

このように,具体的な悩みの解決策を会員から提示してもらったことで,きょうだい 会を「いざという時の支え」と認識する回答者もいる。また,今後何かあった時のため

障害者のきょうだいを対象としたセルフヘルプ・グループの役割 120

(14)

に情報収集しているという回答者も見られた。

他にも,【自分の生き方を見出すこと】【活動を通して力を得ること】が見られた。

3−3−

(c).きょうだいの会が果たせない役割(限界・課題)

・X地区の会員における,きょうだい会が果たせない役割(限界・課題)

果たせない役割(限界・課題)として,大きく

3

点見られた。

【会員に関する課題】については,《会員自身の課題》と《会員同士の課題》が見られ た。

【きょうだい会の運営に関する課題】には,《会員自身と運営内容の関係に関する課 題》と《会員同士と運営内容の課題》,《会における課題》が見られた。会員との年齢差 に関して,X 3さんは次のように話されている。

「私なんかもう後見人やってますし,そういう悩みがあったとしても,皆さんまだ,えっと,

ね,後見人が何だるかとか,そういうことまで行ってない。年代が違い過ぎるもんですか ら。私50代でしょ。皆さんまだ,ね,30代とか,直接にあの,(障害をもつ)きょうだい達 に支援をしている方ではないので。そういうような,例えばあの,後見人についてのいろん な悩みだとか,それから,あの,情報だとかいうことを知りたいなと思っても,そういうこ とはまだやれない。」

【会の外において支援が行き届いていない状況】について,X 2さんは次のように話 されている。

4 X地区の全国きょうだいの会会員におけるきょうだいの会が果たせない役割(限界・課題)

カテゴリー サブカテゴリー ラベル

会員に関する 課題

会員自身の課題 最後は自分が乗り越える問題であること(X 1・X 7・X 10)

きょうだい会での活動を隠すことへの罪悪感(X 4)

話したいタイミングと活動日とのずれ(X 7)

家族で乗り越える問題(X 9)

自分自身の精神面の補強(X 9)

会員同士の課題 障害をもつ本人の障害の程度による会員との温度差(X 4)

きょうだいが抱える問題の固有性による共有の限界(X 8)

きょうだい会 の運営に関す る課題

会員自身と運営内容 の関係に関する課題

まだ直接的に役立っていないこと(X 2)

親の高齢化に伴う介護問題に関する勉強への希望(X 4)

今後に向けての制度の勉強への希望(X 4)

自分の役割の不明瞭さ/流れに任せている状態(X 5)

会員同士と運営内容 の課題

会員との年齢差による実現不可能な事象の存在(X 3)

もたれ合いになることへの自重(X 8)

会における課題 きょうだいの会の目的が不明瞭であること(X 3)

きょうだい会の活動に関する一般の人への理解の働き掛け(X 4)

会の外におい て支援が行き 届いていない 状況

会の外において支援 が行き届いていない 状況

福祉現場において目にする大変な状況にあるきょうだいに会を紹介でき ないことへの歯痒さ(X 2)

障害者のきょうだいを対象としたセルフヘルプ・グループの役割 121

(15)

「自分も福祉職なので,実際にいろんな人を見て,いろんな家族を見ていると,やっぱりこ う,今は,なかなか聞くこと,直接的に聞くことはできないだろうけど,きっと,こう,大 変だろうなって思うような,こう,ね,若いきょうだいの見える方もいるんですけど。なか なかそこには私自身が直接的にこう,何かこうもっと(きょうだい会を)紹介とかして,話 したいなと思うところもあるけど,そこができていないので,歯痒いとかいうのがあるんで すけど。」

このように,支援を必要としているきょうだいに,支援が行き届かない現状というも のがあった。他にも,軽犯罪を犯すことがある障害者のきょうだいは,きょうだい会に 顔を出しにくいという意見もある。

3−3−

(d).きょうだいの会の役割変化の有無

5 X地区の全国きょうだいの会会員におけるきょうだいの会の役割変化の有無

カテゴリー サブカテゴリー ラベル

変化なし きょうだい会におけ る一定の役割

気持ちの共有への変化なし(X 1)

きょうだいとしての話の理解度への変化なし(X 1)

役割変化なし(X 2)

きょうだいの会という存在の価値(X 3)

仲間がいることへの安心感(X 3)

相談役の存在による安心感(X 3)

安心できるという役割への変化なし(X 4)

自身の状況 様々な初体験を積み重ねている状態(X 5)

変化あり きょうだい会の当初 の活動とのギャップ

(印象・目的の変化)

話をするという当初の目的と,子どものきょうだい支援活動に占める割 合の増加によるギャップ(X 4)

情報の共有や取得という第一印象と,子どものきょうだいを助けてあげ られることによるギャップ(X 6)

リフレッシュしたいという入会目的と,サポートされる側からする側へ の変化というギャップ(X 7)

緩い会という当初の印象と,実際の活動内容とのギャップ(X 10)

きょうだい会におけ る自身の変化

同じ立場のきょうだいを助けることが自分にとっても大きな救い(X 3)

相談に乗ってあげられることの嬉しさ(X 3)

自分を高めることになること(X 3)

X地区のき

ょうだい会の 今後の方向性

子どものきょうだい 支援活動に関する方 向性

子どものきょうだい支援活動における他団体との連携の検討(X 1・X 4

・X 8)

子どものきょうだい支援活動における,仕事(福祉職)とプライベート

(きょうだいの会)の分離への希望(X 1)

子どものきょうだい支援活動と自身の問題解決との葛藤(X 3・X 8)

子どものきょうだい支援への意義と時間との葛藤(X 4)

きょうだい会の本来 の活動に関する方向

大きなイベントと例会活動との両立の困難(X 7)

制度の勉強会の実施の検討(X 4)

飲み会等リラックスできる場の増加の検討(X 3・X 4)

他の支部との交流の検討(X 4)

ホームページによる新たな可能性(X 9)

変化への迷い 居心地の良さから変化させることへの迷い(X 2)

X地区のき

ょうだい会の 特徴

X地 区 の き ょ う だ い会の特徴

X地区のきょうだい会のアットホームな雰囲気の良さ(X 2)

目的がないと潰れるという前例(X 3)

話を聞いてもらえることが助けられること(X 3)

障害者のきょうだいを対象としたセルフヘルプ・グループの役割 122

(16)

【変化あり】【変化なし】双方の回答が見られた。

【変化なし】について,きょうだい会が果たす役割で見られた【共通の経験をもつ人 との出会い】【経験や感情の開放と共有】といった要素に対し,変化がみられないとい うことであった。

一方,【変化あり】については,X地区が独自に行っている子どものきょうだい支援 活動が影響していることが伺えた。子どものきょうだい支援活動に時間を費やすこと で,話をすること(X 4さん),情報の共有や取得(X 6さん),リフレッシュといった 当初の目的(X 7さん)等が,子どものきょうだい支援活動により置き換わったという ことである。

そこから,【X地区のきょうだい会の今後の方向性】を検討する雰囲気が伺われた。

子どものきょうだい支援活動について,その意義は認識しつつも,自身の問題解決との 兼ね合いで葛藤する姿が伺えた(X 3さん・X 4さん・X 8さん等)。また,他の団体と の連携についても検討された(X 1さん・X 4さん)。更に,全国総会等の大きなイベン トがその地区で開催されると,準備に追われるため,例会活動がままならないこともあ る(X 7さん)。また,例会活動の他にも,かつて行っていた法律・制度の勉強会や,

飲み会,他の支部との交流等も検討されていた(X 3さん・X 4さん・X 7さん)。その 中で,今の状態で居心地がいいため,変化させることへの迷いも見られた(X 2さん)。

3−3−

(e).きょうだいの会が今後担うべき役割

ガス抜きできる唯一の場(X 3)

皆が助ける側の立場(X 3)

6 X地区の全国きょうだいの会会員におけるきょうだいの会が今後担うべき役割

カテゴリー サブカテゴリー ラベル

X地区のき

ょうだい会の 今後の方向性

今後も継続していく べき方向性

皆と話ができること(X 1・X 10)

皆と話をする活動以外への緩やかさ(X 1)

居心地のいいところでの活動(X 1)

今の状態の継続(X 2)

今後変化させるべき 方向性

「担うべき」ものの無さ(X 1)

親ときょうだいの考え方のずれを改善する方法を探る場(X 3)

親による「きょうだい」という立場の承認(X 3)

親からの情報収集(X 3)

きょうだい会からの情報発信(X 3)

「障害者を守るパートナー」になるための力を発揮する場(X 3)

子どものきょうだい支援より自分を助けることへの比重の増強(X 3)

要求される方向の多様性(X 4)

親の介護についての勉強欲求(X 4)

今後の方向性への悩み(X 4)

きょうだい会をまだ知らない人にも気軽に来てもらえるような活動(X 4・X 7)

障害者への理解促進をきょうだい会で行うことへの疑問(X 6)

障害者のきょうだいを対象としたセルフヘルプ・グループの役割 123

(17)

【X地区のきょうだい会の今後の方向性】について,《今後も継続していくべき方向 性》と《今後変化させるべき方向性》が挙げられた。

X 3

さんは,「私の親の世代」(想定

70

代以上)という前提付きだが,きょうだい会 の今後の方向性について要約的に次のように話されている。

「ただ一つ,言えるのは,親達にきょうだいの存在をちゃんと認めさせるっていうのが,あ の,それがしたい。(中略)きょうだいだって,親じゃないんだけど,でも,これから障害 のきょうだいに関わっていくのは私達っていうのは見えてるんですよね。(中略)その時に,

えっと代理の親になるのか,きょうだいとして関わってくのかっていう,大きな道が,こ う,分かれちゃってるんですよ。で,親は,その代理の親として,『私の代わりのことは

(きょうだいに)やって欲しい』(と求めてくる)。でも,きょうだいはきょうだいの関わり 方があるじゃないですか。そういうことを探る場に,このきょうだいの会を,一つ,してい ってもらいたいなっていう。その,じゃないと,えーと,親の望むようにいってると,いつ

社会への理解の働き掛け(X 6)

認知症者の介護者の集まりの例に倣う(X 8)

きょうだいへの風当たりが変化することへの希望的観測(X 8)

きょうだいの会の多様性の良さ(X 8・X 10)

緩い雰囲気の必要性/やりたいことに波がある(X 8)

親との話し合いの場(X 9)

今後の方向性の未検

考えていない(X 2・X 5)

X地区のき

ょうだい会の 現状

きょうだい会の現状 親の会ほどの力の無さ(X 2)

将来の見通しを立てるために大事な場(X 3)

年代によるきょうだい会の必要性(X 3)

子どものきょうだいだけでなく自分を助けるのも会の役割(X 3)

共有できる(X 5)

会員の状況 福祉職の人(きょうだい)の存在(X 3)

会員はきょうだいに限るという認識(X 3・X 4・X 7等)

自発性の尊重(X 4)

きょうだい 親ときょうだいの関

親ほどの義務感の無さ(X 2)

きょうだいに生じる障害をもつ本人と関わる義務(X 3)

障害をもつ本人との現実の関わり(X 3)

「代理の親」か「きょうだい」かの分かれ目(X 3)

親の思いに従うことへの懸念(X 3)

障害をもつ本人を施設に入れることに対する親の負い目と楽になること の両面性(X 3)

情報をくれない親/きょうだいによる自力での情報収集(X 3)

きょうだいと親の考え方のギャップ(X 9)

会に参加しないきょ うだい

話し合いの拒否(X 2)

興味なし(X 8)

拒絶感(X 7・X 8)

自分の中で消化(X 1)

問題を抱えないきょうだいの存在(X 7)

美しい姿でしか描かれないテレビのきょうだい像(X 8)

障害者のきょうだいを対象としたセルフヘルプ・グループの役割 124

(18)

か崖っぷちから落ちるような気がする。で,だからあの,親にもきょうだいっていうもの を,その,親の代理のものじゃなくって,一個の人間としてちゃんと認めて。それで,あ の,(きょうだい会の)仲間に,いろんな(情報について),親の側からの情報も欲しいし,

きょうだいからも情報発信していかなくちゃいけないし。そういう,あの,親子関係じゃな くて,あの,パートナーみたいな,障害者を守るパートナーみたいなものに,こう,私はし ていきたいんですよ。その時に,大きな力を発揮するのがきょうだいの会。(中略)小学生 のきょうだい達を助けるのも,一つの役割なんだけど,自分達を,自分を助けるのもきょう だいの会の役割だと思うんで,そっちの方に,こうだんだん,比重を置いていきたいなって 私は思っております。」

ここから,きょうだいは親にとっての「代理の親」という位置付けで捉えられている 場合があることが伺える。そうではなく,「障害者を守るパートナー」であるべきだと 位置付けられていることが分かる。

また,緩やかな雰囲気を維持することの必要性も指摘されている。会員に対しては,

自発性を尊重したいとされる(X 4さん)。

きょうだい会について,まだ知らない人にも気軽に来てもらいたいと考えられる(Y

4

さん・Y 7さん)一方で,会を必要としないきょうだいも存在することが明らかとな った。

X 2「あえて,こういう集まりに来るのがいやって人も,いますよね。わざわざ意見言いた くないとかね。うちの妹,障害のない妹もいるけど,もう絶対そういうとこには,行きたい とは言わないし。うーん。」

筆者「妹さんは何で行きたくないって言わはるんですか?あの,差し支えなければ。」

X 2「あぁ,はい。いや,別に,何か,特にそうやってみんなで話し合ったりとか,したく ないっていうか,うーん。」

筆者「なるほど。したくない方って何でしたくないんでしょうか?」

X 8「私の妹もそうです。絶対来ない。」

筆者「ただ単に興味がないのか拒絶しているのか,どちらですか?」

X 8「両方あると思います。こういうことに関して話したくもないっていう。妹の場合は,

拒絶感も強いみたいですね。(妹にとっての兄は)私よりかなり年上な感じで。うちのお兄 ちゃんはボーン,妹が生まれた時,お兄ちゃんは暴れまわる悪魔のような存在で,私達のよ うに仲のいい時代がないんですね。そんなとこだと思いますね。」

X 1「過ぎたことだし,みたいな。自分で消化するってのも,うん。」

X 7「(障害をもつ)きょうだいのことに触れたくない人も,いないことはないよね。」

一同「あぁ。」

X 7「しかも,なんていうんだろう,その,全く逆で,全然問題にも何にも思ってない,人 もいるよね,きっと。別に,何もつまずいてないし,(障害をもつ)きょうだいが普通にい て,『だから何?』ぐらいの(考え方の)人も結構いるし,だからきょうだいの会も必要な いし,みたいな人もいる。分からないですよ,その人によってね。」

障害者のきょうだいを対象としたセルフヘルプ・グループの役割 125

(19)

3−4.Y

地区のきょうだいの会会員における調査結果の分析・考察

Y

地区は,1960年代から

80

年代の間に発足した。この地域は全国きょうだいの会の 中でも特に活発に活動を行う地域とされており,その領域は近隣の

3

都道府県に広が る。1ヵ月に

1, 2

回程度,Y地区内のどこかで例会等の活動が実施されている他,Y地 区内の

1

都道府県では,年

1

回,一泊二日で会員が集まる交流会を実施している。会員 はきょうだいの他,障害をもつ方や,少数だが福祉職員にも及ぶ。また,会員のきょう だいの,障害をもつきょうだいや親が参加することもある(フィールドノーツ)。なお,

文中における

Ya・Yb・Yc・Yd

は,Y地区の中の地域名を指す。

今回の調査における回答者は以下の通りである。

3−4−

(a).きょうだいの会に関わり始めたきっかけ

7 Y地区の全国きょうだいの会会員における回答者一覧(事前アンケートによる情報)

回答者 性別 年代

きょうだ い全体の 人数

きょうだい

構成※ 障害特性 生活形態

Y 1 男性 40 2 知的障害・肢体不自由 施設入所

Y 2 男性 50 2 知的障害 他界

Y 3 女性 40 3 姉・弟 知的障害 グループホーム Y 4 女性 30 2 発達障害「自閉症」 親と同居 Y 5 男性 60 4 弟・弟・弟 知的障害3人・肢体不

自由2人・視覚障害1

施設入所1人・他界1人・「特別養護老 人ホーム入所待ち中」1人 (現在は施 設)

Y 6 男性 60 2 知的障害 施設入所

Y 7 男性 50 5 兄・兄・兄

・弟

発達障害・分からない「友達のアパートに居候」

内は,障害をもつ本人に該当する.今回,回答者との年齢差は省略した

※「 」はその他欄にご記入頂いた内容である.

8 Y地区の全国きょうだいの会会員におけるきょうだいの会に関わり始めたきっかけ

カテゴリー サブカテゴリー ラベル

きょうだい会 を知った手段

自発的な探索 全国きょうだいの会の著書による認知(Y 3)

必然的な出会い 親からの強引な誘い(Y 2)

施設での誘い(Y 5)

施設のきょうだい会会員等からの呼び掛け(Y 6)

偶然的な出会い きょうだい会会長の講演による認知(Y 1)

きょうだいに関するテレビドラマ/ドラマの原作者のホームページによ る認知(Y 4)

以前から知り合いだった会員ときょうだいについて話したこと(Y 7)

きょうだい会 に参加した理

自発的な理由 講演後の会員からの誘い(Y 1)

父親の死亡(Y 3)

母一人が障害をもつ本人の世話を担うという危機的状況(Y 2)

障害をもつ本人の職場でのいじめ(Y 4)

両親の動きの無さ/解決策の知恵の拝借目的(Y 4)

障害をもつ本人を受け入れられない父親との関係の見直し(Y 4)

偶然的な理由 親からの強引な誘い(Y 2)

障害者のきょうだいを対象としたセルフヘルプ・グループの役割 126

参照

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