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ヒト脳オルガノイドの道徳的地位に関する基礎的検討

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Academic year: 2021

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ヒト脳オルガノイドの道徳的地位に関する基礎的検討

太田 紘史(

Koji Ota

) 新潟大学人文学部

このワークショップでは、近年急速な発展を遂げているヒト脳オルガノイド技術に関連 する倫理的問題について、哲学的観点からの検討を行う。とりわけ、ヒト脳オルガノイド がどのような道徳的地位を有しうるのか、またそうした道徳的地位はどのような条件や特 徴に由来するのかという原理的な問題を主題としてとりあげる機会にしたい。

これらの問題に関連する一つのトピックは、意識である。現在のヒト脳オルガノイドは、

どのような種類であれ意識を有するような発達段階には到達していない。しかしその急激 な技術的発展を考慮に入れれば、将来的に何らかの種類の意識形成の相関項がヒト脳オル ガノイドにおいて示される可能性は排除できない。実際これまでの多数の倫理学的検討に おいて、ヒト脳オルガノイドが意識を形成するくらいに機能的および構造的に複雑化する 可能性が取り上げられるともに、そうした可能性がどのような倫理的問題をもたらすのが 論じられてきた。関連するもう一つのトピックは、キメラ化である。キメラ化と道徳的地 位に関する生命倫理学的研究はすでに十分な蓄積を持っているが、そうした知見がヒト脳 オルガノイドの異種混合的利用に関してどのような含意を持つのかはいまだ十分に検討さ れていない。今回のワークショップでは、これまでの研究動向を踏まえつつ、ヒト脳オル ガノイドの境界的存在者としての道徳的特徴の明確化に資するような検討を施したい。

我々はこうした目的のもと、以下の通り2件の提題と2件の特定質問を行う。

第一の提題者である太田紘史(新潟大学)は、ヒト脳オルガノイドが意識を持つ場合に それがどのような仕方で道徳的地位を獲得しうるのかについて検討する。そのためにまず、

意識の内在的価値に関する哲学的諸説とそのヒト脳オルガノイド倫理への適用に関する既 存の研究について批判的に検討する。この検討では、これらの諸説によってヒト脳オルガ ノイドにまつわる倫理的懸念を説明できる範囲は限られていると論じられる。そのうえで、

意識の内在的価値と道徳的地位の接点についてどのような代案が可能かについて検討され る。この提題に対して、鈴木貴之(東京大学)が特定質問を行う予定である。

第二の提題者である高江可奈子(慶応大学)は、ヒト脳オルガノイドを動物の脳に移植 するという異種移植に焦点を当て、その倫理的・哲学的問題を異種キメラの観点から考察 する。異種キメラの議論は生命倫理学で論じられてきているので、まずはその議論の中心 的論点である「人間化」の議論(動物が人間により近い存在になるという懸念)を取り上 げ、批判的に検討する。次に、「能力アプローチ」(能力に基づく道徳的地位)の議論を取 り上げ、「人間化」議論の問題を回避してはいるものの、異種キメラの倫理的問題を論じる 議論枠組みとしては不十分であることを示す。そして、それぞれの問題を通して見えてく る課題を明らかにすることで、ヒト脳オルガノイド移植の倫理研究を進めていく上での課 題と倫理的問題となりうる論点を提示する。この提題に対して、田中泉吏(慶應大学)が 特定質問を行う予定である。

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