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農中総研 調査と情報

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農中総研 調査と情報

2011.9 (第26号)

再生可能エネルギーと農山漁村活性化  岡山信夫  2 

● 農林水産業 ●

EU 多年度財政枠組案にみる次期共通農業政策(CAP)

 ―予算規模の維持と改革内容の具体化―  平澤明彦  純輸入に転じた中国のトウモロコシと世界市場への影響

 ―工業用が押し上げる需要―  阮蔚(Ruan Wei) 

● 農漁協・森組 ●

農協等の取り組む小水力発電事業への期待と課題  渡部喜智  2010 年センサスにみる農業集落の活動状況

 ―懸念される農協の組織基盤への影響―  内田多喜生  12 農業経営体の経営多角化と資金需要  長谷川晃生  14

● 経済・金融 ●

米国の債務問題と当面の課題

 ―引き上げ法が成立するも具体的な赤字削減策は先送り―  木村俊文  16 カードローンを巡るノンバンクと地域銀行の動向  岡山正雄  18

ルーマニアにおける農業協同組合の振興 

  財団法人アジア農業協同組合振興機関(IDACA)教務部長 照沼 弘  20

東日本大震災による農業被害と復興の課題 

 ―宮城県亘理町・山元町の事例―  清水徹朗  22

中核的養殖漁家の震災復旧支援と復興に向けた課題

 ―三陸のカキ養殖漁家の事例から―  鴻巣 正  24

当社の定期刊行物に掲載された論文を紹介するコーナー    26

世界遺産「平泉」の思い 

  岩手県県南広域振興局 世界遺産推進課 菅原健司  28

ISSN 1882-2460

本誌において個人名による掲載文のうち意見にわたる部分は,筆者の個人見解である。

■ あぜみち ■

■ レポート ■

■ 視 点 ■

■ 寄 稿 ■

■ 最近の調査研究から ■

■ 現地ルポルタージュ ■

(2)

視 点

な役割を担っている。(詳細は石田(2011))

2 自然に溶け込む小水力発電

わが国における再生可能エネルギー生産の 老舗は小水力である。

小水力発電は1950年、国の電気導入事業(小 水力発電開発)として本格的に始められ、この 年全国で16か所の小水力発電所の開発申請が なされた(うち13か所が中国地方)

1952年には、農山漁村の未点灯世帯を解消 することを目的に、農協・土地改良区・森林 組合・漁協等の農林漁業団体を事業主体とし た農山漁村電気導入促進法が制定され、小水 力発電所の建設も急速に進んだ。

(1) 中国地方の小水力発電

中国地方の中山間地にも次々に建設された が、その発電事業を担う組織は専門農協であ る「電化農協」や土地改良区であった。

中国地方では中国小水力発電協会が組織さ れ、協会加盟の発電所はピーク時には90を数 え、現在でも発電事業者である正会員が29会 員、発電所施設は53か所、発電機の合計出力 9,102kWとなっている(23,000戸の家庭用消費電 力に相当する)。原発一基が概ね100万kWであ るから、53機合計でも原発一基の100分の1で あるが、山林に溶け込むおだやかな小水力発 電所の景観は、我々の目に焼き付いた福島第 一原発の威容かつ異様な姿とは別次元の安心 感を与えてくれる。

なお、平均売電単価は9円で、収支は厳し く、自然災害にともなう補修費等への備えに 不足をきたす懸念があるという。既存施設に よる再生可能エネルギーについても新法によ 8月2日に公表された「我が国の食と農林

漁業の再生のための中間提言」(食と農林漁業 の再生実現会議)には「農林漁業再生のための 7つの戦略」の3番目の戦略として「エネル ギー生産への農山漁村の資源の活用」が掲げ られ、「地域主導で再生可能エネルギーを供給 する取組みを推進し、農林漁業の振興と農山 漁村の活性化を一体的に進める」とされてい る。東日本大震災と福島第一原発事故を契機 にわが国のエネルギー戦略は脱(あるいは減)

原発・再生可能エネルギー推進へ舵を切り、

8月26日には再生可能エネルギー特別措置法 が成立した。本稿では小水力発電に関する中 国地方の取組経緯や青森県での検討状況を紹 介し、地域主導の再生可能エネルギー供給に 係る農林漁業協同組合組織の取組みの可能性 を展望したい。

1  ドイツで生まれた再生可能エネルギー 全量買取制度

再生可能エネルギーに関する固定価格買取 制度(FiT:Feed-in  Tariff)がドイツで定められ たのは1990年の電力供給法と2000年の再生可 能エネルギー法である。そのねらいは、脱原 発、温室効果ガス排出量削減、エネルギーセ キュリティ向上などにあるとされ、発電コス トを全額保障する制度が寄与し、2009年のド イツの総電力に占める再生可能エネルギーの 比率は16.1%に達しており、2020年の目標を 30%に引き上げた(当初は20%)。また、1986 年のチェルノブイリ原発事故を契機に脱原発 を目的としたエネルギー関連の消費者協同組 合が数多く設立されており、その活動が重要

専務取締役 岡山信夫

再生可能エネルギーと農山漁村活性化

(3)

スに見られるように、再生可能エネルギー発 電事業者に対する資金供給等への参画もある だろう(ドイツでは協同組合銀行であるフォルク スバンクがエネルギー協同組合の設立を支援し ており、フランスではクレディアグリコールが 太陽光・風力エネルギー金融でマーケットリー ダーとなることを目指している)

再生可能エネルギー供給の取組みを、協同 組合陣営の重要な課題として認識し、農山漁 村の活性化に繋げる有力な手段として積極的 に位置づけ、対応していくことが求められる。

 <参考文献>

・ 石田正昭(2011)『ドイツ協同組合リポート 参加型民主 主義−わが村は美しく−』全国共同出版

・ 中国小水力発電協会(2002)『創立50年のあゆみ」

・ 社団法人農業土木機械化協会(2005)『小水力発電事業化 へのQ&A』

・ 青森県県土整備部公営企業課(2008)『地域密着型小水力 発電可能性調査検討事業ダイジェスト版』

(おかやま のぶお)

る買取単価と同水準への引き上げが強く望ま れる。(詳細は本誌別稿渡部喜智「農協等の取り 組む小水力発電事業への期待と課題」参照)

(2) 青森県での検討状況

青森県では、起伏に富んだ地形が生み出す 未利用の流水落差を活用した小水力発電導入 の可能性を調査、検討し、各事業者への情報 提供や技術支援を目的に、平成17〜19年度に

「地域密着型小水力発電可能性調査検討事業」

が実施されている。この調査では、自然河川 5か所、上水道水利施設4か所、農業用水利 施設10か所で小水力発電可能性を調査・検討 しており、地点ごとの最大出力や年間可能発 電電力量、概算工事費、周辺の電力需要規模、

経済性を計算している。

そのうちの一地点であるA土地改良区の幹 線 用 水 路 急 流 工 へ の 小 水 力 発 電 導 入( 出 力 316kWと想定)について現地の検討状況をヒア リングさせていただいた。最適規模発電用工 作物の概算事業費131百万円を前提に、投資回 収可能とするには助成制度による補助が最低 50%必要であり、全量買取制度の売電単価と の組み合わせで単年度収支の黒字化が可能に なると見込まれている。しかし、自然災害等 による補修費等計画外出費のリスクもあり、

実現にむけて踏み出すことには躊躇があると いう。

3 農林漁業協同組合組織の対応の可能性

「地域主導で再生可能エネルギーを供給す る取組みを推進し、農林漁業の振興と農山漁 村の活性化を一体的に進める」ことは今後の わが国のあり方にとって重要であり、その一 翼を農林漁業協同組合組織、土地改良区が担 っていくことが望ましい。

中国地方の電化農協のように発電事業の主 体となることもありうるし、ドイツやフラン

1959年に運転が開始され、現在も支障なく稼働している 吉和発電所(設置者:JA佐伯中央、最大出力450kw 広島県 廿日市市)

(4)

〈レポート〉農林水産業

3 次期CAP改革の一部を提示

14年以降のCAPについては、欧州委員会が 10年11月に、改革の選択肢を提案文書「2020 年へ向かうCAP」(以下「CAP提案」)として提 示した(平澤(2011)参照)。これに対して農相理 事会は概ね好意的であり、欧州議会農業委員 会も5月25日に欧州委員会の提案に沿った報 告を承認した。こうした流れを受けて、今般 の財政提案では、次期CAP改革の考え方につ いて整理を進め、CAP提案で示された施策の 一部をさらに具体化した。

財政提案によると、欧州委員会はCAPの改 正によって、より公平で平等な農業支持と、

農業と環境政策の連結、そして農村経済への 貢献を意図している。改革の主な要素は、よ り平等で対象を絞った直接支払いと、農村振 興政策の政策目的への適合化である。

1) 直接支払い:平準化、緑化、受給額上限 CAP財政の主要部分をなす直接支払いにつ いては、まず加盟国間における支払単価平準 化の方法として、CAP提案で示された「客観 的基準」に代えて、1ha当たりの支払水準が EU平均の90%を下回る国を対象に、その乖離 幅の3分の1を漸次引き上げる。そのための 財源は支払水準がEU平均を上回るすべての加 盟国が比例的に負担する。この方式による水 準格差の是正は明らかに限定的であるが、賃 金水準と投入費用の相違に配慮する旨の記述 があり、それによって正当化されているよう である。なお、前述の調査報告書によれば、

EU平均の一定割合を保証するのは現実的アプ ローチであり、客観的基準では平等を実現で きないという。

また、財政提案では、直接支払いの「緑化」

1 多年度財政枠組みの提案

欧州委員会は2011年6月29日に、次期EU多 年度財政枠組み(14‑20年)の提案文書「欧州 2020のための予算」(以下「財政提案」)を公表 した。名称の通り、EUの経済成長戦略である

「欧州2020」(10年6月決定)の目標達成を意図 している点が特徴である。欧州2020の優先事 項は知識・革新、持続可能性(資源効率、環境、

競争力)、高雇用による経済・社会・地域的包 摂の3点であり、これが各政策分野共通の指 針となった。以下では、この財政提案で示さ れた、EU共通農業政策(CAP)の予算および次 期CAP改革の内容について紹介する。

2 CAP予算:規模を維持

財政提案では、1420年のCAP予算は合計 3,717億ユーロ(11年価格)であり、各年の予算 水準は名目価額で13年並みを維持する(実質価 額は物価上昇により目減りする)。EU財政に占め る割合は13年の39.4%から20年の33.3%まで低 下する。CAP予算の割合を大幅に引き下げる 主張(09年のEU予算見直し草案など)もある中で、

従来通りの緩やかな低下となったことはCAP 予算の維持を主張するフランスにとって大き な成果である。報道によれば(EUrActiv, 6 July  2011)これはドイツとの妥協の結果であり、見 返りとして「結束政策」における旧東独地域へ の補助金が急減しないよう措置が追加された。

また、財政提案とともに公表された調査報 告書によると、直接支払いの「財政規律メカ ニズム

(注)

」は農業支出の拡大を防ぐ最も有効な 手段であり、存続が必要とされている。

さらに、食品安全および最困窮者への食料 援助は、CAPからほかの費目へ移された。

主任研究員 平澤明彦

EU多年度財政枠組案にみる次期共通農業政策 (CAP)

─予算規模の維持と改革内容の具体化─

(5)

(3) 農村振興:再編と連携

農村振興政策については、予算配分の決定 方法が変更され、より客観的な地域的・経済 的基準を用いる。また、他の政策分野との連 携を強化するため、農村振興政策の財源であ る欧州農村振興農業基金(EAFRD)は、他の全 ての構造基金とともに、EUレベルの共通戦略 枠組みおよび各加盟国と欧州委員会の間のパ ートナーシップ協定に組み込まれる。協定は 欧州2020戦略の目標および加盟国の改革プロ グラムと結び付けられる。なお、第一の柱(直 接支払い)との間で財源の融通が可能となる。

現状約40ある農村振興の施策は20ほどに整 理簡素化され、また加盟国における施策の組 合せは自由になる(現状は「機軸(axis)」システ ムによる構成比の制限がある)見込みである(調 査報告書)。直接支払いの緑化によって不要と なる基礎的な環境支払いの財源は、より高度 な農業環境施策に用いることができる。

4 CAP形成の今後の日程

調査報告書では、これらの改革要素をすべ て含むシナリオ(3つ提示したうちの2番目) 望ましいとしている。これによってCAP提案 における3つの改革の選択肢(最小限、中庸、

急進的)のうち、第2の選択肢への支持を欧州 委員会が明確にしたとみてよい。

このように、次期CAP改革の内容は具体化 が進んでいる。名目予算規模を維持する一方 で、EU全体の戦略に組み込まれ、環境など公 共財的機能が強化される方向にある。欧州委 員会の最終案は10月前半に提出されるCAP改 革の各種法案で明らかとなる。法案は13年ま でに決定、14年から実施される見込みである。

 <参考文献>

・ 平澤明彦(2011)「次期EU共通農業政策(CAP)改革の選 択肢提案」『農中総研 調査と情報』3月,2〜3

(ひらさわ あきひこ)

すなわち支払いの30%を環境支払いとするこ とが義務付けられる。既存の要件であるクロ スコンプライアンス(環境規制を含む)を上回 り、法で定められ検証可能な環境への貢献に 対して支払われる。これは、これまで農村振 興が担っていた機能の一部を、直接支払いの 側でより広範に実現するものであり、既存の モジュレーション(農村振興政策への財源移転)

とはいわば逆の発想である。

環境支払いを除いた直接支払いの基本部分 については、緩やかで累進的な受給額上限を 設定する。当該経営による直接雇用を考慮す る点はCAP提案と同じである。この支払制限 による財源余剰は発生国の農村振興政策に充 当される。これは、支払制限と余剰財源の扱 いの両面で、実質的に08年のヘルスチェック 改革で導入された高額受給層(30万ユーロ/年 以上)の追加的なモジュレーション(累進モジュ レーション)を受け継ぐものといえよう。

小規模農家の簡素な直接支払い(CAP提案)

は一括した固定的なものとなる見込みである

(調査報告書)。そのほか、直接支払いの対象 を「活動している農業者」(Active  Farmer) 限る件についてはCAP提案と同様であり、具 体的内容が示されなかった。

2) 市場措置:環境変化への適応措置

市場措置については、多年度財政枠組みの 枠外に2つの政策手段を創設する。まず危機 的状況が生じた際に、農家へ迅速に支援を提 供するための緊急措置を創設する。いま一つ は、欧州グローバリゼーション基金(EGF)の 役割を拡大し、グローバリゼーションの影響 を被った農家の生活を支援して新しい市場状 況への適応を促進する。

(注)直接支払いの総額が所定の上限を超える見込み の場合、あらかじめ支払水準を一律の割合で引き 下げる仕組み。

(6)

〈レポート〉農林水産業

うわさが流れると、一転して上昇した。

一方、中国政府もトウモロコシの輸入急増 を懸念し、歯止めをかけようとしている。需 給逼迫を解消するために一定の輸入はやむを 得ないものの、輸入が急増し国内価格が下落 すれば、トウモロコシ生産農家の増産意欲が 低下し、国内生産がさらに減少し、輸入がさ らに増加するという「負の循環」に陥りかね ないからである。中国ではトウモロコシ生産 農家の数は大豆生産農家の数を大幅に上回っ ている。トウモロコシ農家の所得低下は、政 府への不満など政治的リスクを伴うだけに政 府は慎重に対応せざるをえない。

2 旺盛なトウモロコシ需要

基礎穀物3種のなかでは、トウモロコシが 90年代以降一貫して、単収と生産量の伸びが 最も高く、主食となるコメと小麦よりも増産 が進んだ。

USDAによると、09/10年度の中国のトウモ ロコシ生産量は1.58億トンで、米国に次ぐ世 界第2位の地位を維持している。問題は中国 の経済発展と所得上昇により、近年、豚を中 心とする家畜用の飼料需要と澱粉やアルコー ルなどの工業需要の伸びが高まり、需給が逼 迫してきたことである。

USDAによると、09/10年度の中国のトウモ ロコシ飼料需要は1.12億トンにのぼり、依然 として最大の用途であるが、工業需要も4,700 万トンに増大している。工業用需要は、清涼 飲料やビールに添加されるコーンスターチ、

アルコールなどが急増しており、10年は前年 比で57.2%もの急増となった。飼料用も16.7%

増と高い伸びだが、工業用の需要増が目立っ 1 純輸入国に転落した2010年

中国のトウモロコシ輸入が世界の穀物市場 を揺さぶっている。2010年に中国のトウモロ コシ輸入量は157万トン(純輸入量は145万トン)

となったが、これほどの規模の純輸入は96年 以来のことだったからである。

中国はコメ、小麦、トウモロコシの基礎穀 物3種について95%の自給を維持することを 食糧安全保障の基本線としている。逆にそれ 以外の大豆などは大きく輸入に依存している。

中国の昨年の大豆輸入量は5,480万トンであ り、国内生産量を数倍上回るとともに、世界 の大豆貿易量の約6割を中国一国が輸入した ことになる。つまり、中国は大豆の自給を放 棄し、基礎穀物3種の95%自給維持に集中す る選択をしたのである。

しかし、ここにきてトウモロコシ需給に異 変が起こりつつある。97〜09年の13年間に中 国は純輸出を維持していたが、その純輸出量 は次第に減少し、10年にはついに純輸入国に 転落した。これによって、中国がこれから恒 常的なトウモロコシ純輸入国となり、大豆と 同様にトウモロコシの輸入量も急増するのか、

世界が懸念している。中国国内にも「穀物95

%自給」という 防衛線 が崩れていくので はないかとの不安が台頭している。

世界が懸念しているのは、中国の需要量が 大きいため、その需要量の数%程度の輸入で も世界の穀物市場に大きな影響を与えかねな いからである。たとえば、11年6月30日、米 国農務省が、今秋の米国のトウモロコシが豊 作になるとの予測を発表すると、トウモロコ シ価格が急落したが、その後中国から約50万 トンのトウモロコシ輸入の成約があったとの

主任研究員 阮蔚(Ruan Wei)

純輸入に転じた中国のトウモロコシと世界市場への影響

─工業用が押し上げる需要─

(7)

が起きれば、農家の増産意欲は刺激される。

政府の生産支援策の強化などもあって、中国 のトウモロコシ生産は今後も増大するだろう。

ただし、制約要因も多いため、増産のスピー ドは需要増加に追い付かない可能性が高く、

不足分は輸入に頼らざるを得ない。

問題はトウモロコシも大豆のように輸入量 が一直線に急増し、自給率が急低下しないか、

ということだ。結論的に言えば、中国のトウ モロコシ輸入は中長期的に緩やかに増加して いくものの、同時に自給率は高い水準で維持 できるだろう。上述したように、トウモロコ シ生産農家の数はまだ多く、政府が適切な増 産刺激策をとれば、増産は十分に可能だから である。

仮に、20年に中国が1,000万トンのトウモロ コシを輸入したとしても、トウモロコシ総消 費量の5%にすぎず、自給率は依然として95

%もある。UADAの予測では、中国の20年の トウモロコシ輸入量は800万トンである。日本 は毎年、コンスタントに約1,600万トンのトウ モロコシを輸入しており、中国の将来の輸入 量よりはるかに多い。

トウモロコシの世界貿易量は現在約9,300万 トンであり、20/21年度になると、1億1,320 万トンまで増大するとUSDAは予測している。

その時点で、中国の輸入量が1,000万トンにな ったとしても、世界貿易量の8.8%にすぎない。

影響は限定的であろう。さらに中国の輸入が 日本のように安定的かつ継続的になれば、農 家や市場は中国の輸入を織り込み、世界のト ウモロコシ価格をかく乱するようなことにな らないだろう。中国の輸入で、トウモロコシ 価格が下支えされれば、米国やブラジル、ア ルゼンチンなどの農家のトウモロコシ増産の インセンティブは高くなり、世界の貿易量も 拡大していく可能性がある。

(ルアン ウエイ)

ている。

これにより、トウモロコシ消費に占める工 業需要は00/01年度の23.5%から09/10年度に は29.6%へと上昇した。中国では、家畜と工 業がトウモロコシを奪い合う状況が起きてい るのだ。

3 工業需要の増大を懸命に抑える中国政府 畜産・工業需要間の争奪が原因となって、

10年からトウモロコシ価格が高騰、これが飼 料価格の高騰の原因の一つとなり、豚肉価格 が10年下期から急騰した。中国の食卓に大き なウェイトを占める豚肉価格の高騰は消費者 物価指数(CPI)を押し上げ、11年7月には前年 同月比6.5%の上昇と3年ぶりの高い水準とな った。

10年に中国はトウモロコシそのものを輸入 しただけではなく、エタノール生産用に使った トウモロコシの絞り粕であるDDGSを約316万 トンも米国などから輸入し、飼料原料にした。

それでも価格上昇を抑えられなかったため、

中国政府は工業需要をトウモロコシ消費の26

%以下に抑えるよう指示している。トウモロ コシを原料とするエタノールの生産を制限す る措置は08年にすでに実施したが、10年にさ らに澱粉やアルコールなどトウモロコシ加工 品の輸出還付税の引下げや廃止などで、輸出 を抑え、工業需要の圧縮に全力をあげている。

4 輸入量の増加と高い自給率の維持

そうした工業需要を抑える措置がある程度 効果を発揮し、11年に入って、トウモロコシ 価格の上昇は一服している。ただ、中国経済 の成長に伴って、飼料需要も工業需要も増加 を続けるのは確実である。USDAの予測では、

20年に中国のトウモロコシ需要は約2億トン に達し、現在より約4,600万トン増える。

需給逼迫によってトウモロコシ価格の上昇

(8)

あろう。しかし、水路・水管の敷設や発電所 設置のための工事による環境負荷がほとんど 無いとともに、関連施設や機械のメインテナ ンス・改修を適切に行うことにより、長期稼 働も可能となる(注1)。現在稼働中の水力発電所の 中には、明治期に建設され運転開始以来100年 を超すものも散見される。

稼働期間(ライフサイクル)中に投入される エネルギーに対する発電によるエネルギー創 出 の 倍 率 を 表 す「 エ ネ ル ギ ー 収 支 比:EPR

(Energy Payback Ratio)」から見ると、燃料投 入が無く、かつ長期稼働が可能な水力発電の EPRは、再生可能エネルギーの中でも格段に 高い。EPRの試算は様々だが、(独立行政法人)

産業技術総合研究所は火力や原子力は1未満 であるのに対し、水力発電では50とEPRの優 位性を試算している。また、欧州小水力発電 協会(ESHA:The European Small Hydropower  Association)の説明では、再生可能エネルギー の中でも小水力発電の優位性が示されている

(第1表)。小水力発電は環境にやさしい電源 と言える。

また、発電コスト的にも中国地方5県の農 協等が運営する小水力発電所は決して高くな い。このことは後述する。

1 小水力発電への注目の高まりとその意義 本稿では、中国地方5県の農協系統等が長 年にわたり取り組んできた小水力発電につい て報告したい。

東日本大震災とそれに伴う福島第一原発の 事故により、我々の生活と生産にかかわる基 本要素である水、食料、エネルギーをめぐる 状況は、転換を迫られることとなった。エネ ルギー、特に電力について言えば、原子力を ベースに置く大規模発電の供給体制の推進は 不可能となった。すなわち、原発の安全性や 健康への不安が強まった今、民主的選択とし て原発推進の政策をとることが中長期的にも 困難になったことは明らかである。また、コ スト面からも安全性確保や放射性廃棄物処理 などを含め計算すると、原子力発電の総コス トが他の電源に比べ安価であるという前提も 完全に崩れた。以上から、国産の再生可能エ ネルギーによる分散的発電の可能性を検証し、

政策的に後押しして行くことが必要となって いる。

そのような再生可能エネルギーの活用を進 める大きな流れのもとで、水力発電、とりわ け発電量は小規模だが環境負荷の小さい「小 水力発電」への注目も高まっている。

小水力発電の規模の統一的定義は国内外に おいて無い。2003年4月施行の「電気事業者 による新エネルギー等の利用に関する特別措 置法(RPS法:Renewable Portfolio Standard)」上 は、発電量1,000kW以下をいう。また、後述 の「農山漁村電気導入促進法」では同2,000kW 以下が対象になる。

小水力発電は発電量の小ささに対し、初期 投資がそれなりに大きいという受け止め方が

〈レポート〉農漁協・森組

理事研究員 渡部喜智

農協等の取り組む小水力発電事業への期待と課題

第1表 再生可能エネルギーのEPR比較 第1表 (欧州小水力発電協会の推定)

資料  ESHA「The Role of Small Hydropower in the EU-27」

(2010.4)より筆者作成 プラント種類 小水力発電 大規模水力発電 太陽光発電 太陽熱 風力発電

80〜100 100〜200

3〜5 20〜50 10〜30 EPR値

(9)

9,102kWと1万kWに迫る大きさを維持してい る。関係者が幾多の労苦を積み重ね守ってき た小水力発電の発電量は、一定の規模を有し ている。

3 農協と地域との連携による維持・管理 筆者が見学した中国小水力発電協会・会員 のJA佐伯中央(広島県西部の廿日市市と大竹市 が 管 内 )は、 所 山 発 電 所( 認 可 発 電 能 力:

205kW)、吉和発電所(同:450kW)の二つを運 営している(写真1、2)

いずれも、河川の水を落差が得られる所ま で水路により導き落下させ、そのまま利用す る「水路・流れ込み」方式の発電所である。

所山発電所は、基準水量が0.23㎥/秒ながら水 管の最上部から水車の取り込み口までの落差 は約118mもある。また、太田川上流にある吉 和発電所は、基準水量が1.33㎥/秒と豊富であ る。いずれも秋には取水量が若干落ちるもの の、年間を通じた稼働状況は小水力発電所の 平均的な想定よりも良いという。なお、JAが 水利権の許可を受け、必要な漁業権補償も行 っている。また、中国電力は発電所近くで電 力買取を行う施設整備を行い、配電コストが 圧縮されていることも特記されよう。

同JAでは総務部が所管部署となり、保全管 理にあたっている。河川からの取水やその水 の導水および発電設備の運転状況など、日常 的管理は地元に住む保安員や電気主任技術者 の方の勤務によるところが大きいが、JAの発 電所担当も定期的に巡回し状況に目を配って いる。また、JA職員が年2回草刈り作業を行 い、発電所周辺の整備を行っている。

4 小水力発電に関する3つの課題

広島県農協中央会やJA佐伯中央からの要望 等の聞き取りを踏まえ、小水力発電事業をめ ぐる3つの課題・問題点について、述べたい。

2 農協が半世紀以上取り組む小水力発電 中国地方の農協系統の小水力発電事業への かかわりは、昭和27(1952)年の「農山漁村電 気導入促進法」制定にさかのぼる。同法は「発 電水力が未開発のまま存する農山漁村につき 電気を導入し、農山漁村における農林漁業の 生産力の増大と農山漁家の生活文化の向上を 図る」ことを目的とするが、戦後復興から経 済発展への坂を上り始めたとはいえ、日本全 体が電力不足の状態にあった当時、未開発の 電源を開発し国産エネルギーを拡充すること は急務であった。

これに基づき、中国地方5県では「電化農 協」という専門農協や土地改良区などが小水 力発電事業を開始し、時を同じくして「中国 小水力発電協会」も組織した。昭和20年代末 から昭和30年代末にかけ小水力発電所の設置 が相次いで行われ、協会加盟の発電所は昭和 30年代末のピーク時には90を数えた。

同協会には、電化農協が運営する発電所が 現在も残るが、農協組織の変遷等を経て農協 が運営を引き継いだものが多い。そのほか、

土地改良区、市町村、第3セクターの電力公 社 が 同 協 会 の 会 員 と な っ て い る。 昭 和42

(1967)年からは広島通産局から移管を受け、

広島県農協中央会が同協会の事務局になり、

売電先の中国電力との折衝や会員間の情報交 換、研修および小水力電力発電への政策的支 援のための諸活動などを進めてきた。

老朽化や施設破損の一方、更新投資負担と の兼ね合いからやむなく、発電施設の廃止に 至った小水力発電所もあるが、10年度末にお いても、発電事業者である正会員が29、発電 所施設は53箇所であり、発電機の合計出力は

(注1宮城・三居沢発電所(運転開始:1888年)、京 都・蹴上発電所(同:1891年)、栃木・日光第二発 電所(同:1893年)などが古く、運転開始以来120 年程度を経過している。

(10)

る。加えて、近年は集中豪雨の発生頻度の増 加など気候変動の影響から、施設の補修コス トが増大する傾向が見られるという。

一方、菅首相が退陣条件の一つとしていた

「電気事業者による再生可能エネルギー電気の 調達に関する特別措置法」、いわゆる再生可能 エネルギー固定価格買取法が、野党修正案を 受け入れ成立したが、既存の小水力発電所は 同法の固定価格買取(想定される価格は15〜20 円/kWh)の対象外(注2)である。これは同法の法案 策定過程から考えても、決定的な欠陥と言え る。中国小水力発電協会・会員の売電価格は、

引き続き広島県農協中央会が窓口となる相対 の折衝により決まることになるが、現状の平 均売電価格と同法で想定する固定買取価格の 最低レベル:15円/kWhとの差は約6円の大 きさである。仮に6円引き上げられれば、同 協会・会員の売電収入は10年度実績を踏まえ ると、全体で3億5千万円程度増加すると試 算される。

現在稼働している小水力発電所は発電コス トや環境負荷などの優位性を持ち、将来的に も維持・活用していく意義は大きい。そのた めには既存の小水力発電所についても何らか の形で同法の適用対象とするなどにより、売 電単価を引き上げる措置を是非とも望みたい。

(1) 売電単価の問題

電力料金が抑制されてきたなかで、小水力 発電の売電単価も長期間にわたり抑えられて きた。前述の中国小水力発電協会・会員の中 国電力への平均売電単価は、二度のオイルシ ョック後に大きく引き上げられ、その後も緩 やかな上昇基調を保った。しかし、93〜94年 度をピークに頭打ちとなり、特に過去10年ほ どの間はジリ安の下落傾向を余儀なくされた。

個別発電所でかなりの差異があるが、09〜10 年度は平均9.01円/kWhとなっている。諸経費 が上がる経営環境のもとで、厳しい単価設定 で推移したと言えよう(第1図)

逆に言えば、小水力発電とはいえ、その売 電価格は他の電源と比べても必ずしも高いと は言えない。経済産業省等が資料で提示して きた新規小水力発電のコストに比べれば、3 分の1以下という低さであり、大規模な火力 や水力の発電コストに勝るとも劣らない。先 にEPRの点から効率性の高いことを述べたが、

現在残っている小水力発電所は発電コストの 面からも十分に効率的であると言えよう。

しかし、施設の改修を的確に行いながら、

発電所経営を継続的に行って行くための収益 を確保するために、現状の売電単価は十分な ものではない。現状のままでは、必要な改修 等を実施できず、廃止に至ることも危惧され

写真2 小水力発電担当のJA佐伯中央・栩木係長 写真1 118mの落差を持つ所山発電所

    (山の上部から下がっているものが水管)

(11)

散的に発電する「創電」を行い、そこで作ら れた電力を地域で農林水産物等一次産品加工 に使い付加価値をつけるという形で、地域資 源の活用、地域の活性化をはかるうえでも有 効な手段である。新旧を問わず、小水力発電 の維持・推進のため、国等による助成のさら なる拡充が期待される。

(3) 認可発電能力の引上げ

流水量が豊富な出水期を中心に、発電機等 の能力的には認可発電能力を上回る発電がで きるという。しかし、認可発電能力の引上げ については、発電所への取水量を規制する水 利権の関係がネックとなり、なかなか認めて もらえないという。小水力発電所で取水し発 電後放水することによる、水量や水質の変化 などの他の河川利用者へ影響は、極めて少な いと想定される。したがって、電力不足が長 期化すると見込まれるなか、関係当局には一 定の水準までの認可発電能力引上げを前向 き・柔軟に検討してもらいたい。

5 適切な政策対応と強固な支援体制が重要 資源エネルギー庁(「再生可能エネルギー導入 ポテンシャル調査報告書」11年5月)は、中山間 地域を中心に我が国には出力1,000/kW未満で 合計527万kWの小水力発電の潜在可能性があ ると推定している。

しかし、小水力発電所とはいえ、新規に建 設するためには権利調整、補償などの問題が 見込まれる。したがって、現在稼働中の小水 力発電を先ずは有効活用することが喫緊の課 題であり、適切な政策対応が望まれる。

その上で、小水力発電所の新規建設やいっ たん廃止された発電所再稼働についても、自 治体、農協や土地改良区など関係者が前向き に動き出せる強固な支援体制づくりをするこ とが重要となろう。

(わたなべ のぶとも)

(2)  農協等が行う小水力発電事業への政策的 助成の強化

小水力発電に関する国による助成について は、農林水産省、経済産業省、環境省、総務 省に制度がある。農林水産省の助成制度では、

土地改良区が実施主体となり農業用水路を活 用した小水力発電の場合は、国営事業3分の 2、県営事業で2分の1の補助が受けられる など、手厚い助成制度があった。これに対し、

農協が発電所設置者である場合、国等の助成 はかつて無かったが、広島県農協中央会など の運動が実り、農山漁村活性化プロジェクト 支援交付金のなかで農産物加工施設など共同 利用施設に利用するとの考え方に沿って、よ うやく補助対象となった。前述のJA佐伯中央 の両発電所も補助を受け補修を行うことがで きたという。

小水力発電は、国産の再生可能エネルギー を活用するという観点から、エネルギー政策 的にも重要性を増した。それに加え、地域分

消費者物価:電力料金(右目盛り)

売電単価

資料  中国小水力発電協会(事務局:広島県農協中央会)資料より筆者 作成

第1図 中国小水力発電協会の売電単価推移

10 9 8 7 6 5 4 3

240 220 200 180 160 140 120 100

(円/kWh) (70年度=100)

年度70 72 74 76 78 80 82 84 86 88 90 92 94 96 98 00 02 04 06 08 10 消費者物価:電力料金(右目盛)

売電単価(左目盛)

(注2経済産業省が09年11月に設置し10年8月にま とめた「再生可能エネルギーの全量買取に関する プロジェクトチーム」の提言では、再生可能エネ ルギーの「既設設備についても稼働に著しい影響 を生じさせないという観点から、価格等に差をつ けて買い取る等、何らかの措置を講ずる」とした が、同法には既存設備への配慮について明記され ていない。

(12)

州・沖縄を除くすべての地域で過去1年間に

「寄り合い」を開催した農業集落が減少すると ともに、開催した農業集落数の割合もすべて の地域で低下した。「寄り合い」の開催状況か らは農業集落の活動が全国的に縮小傾向にあ ることがよみとれる。

さらに、議題別に「寄り合い」を行った農 業集落数を00年センサスと比較したものが第 1図である。10年の「寄り合い」の議題は「農 業集落行事の計画推進」が約106.7千集落で最 も多く、以下「環境美化・自然環境の保全」

約99.5千集落、「農道・農業用用排水路・ため 池の管理」約91.9千集落が続く。ここで「農 業集落行事の計画推進」「農道・農業用用排水 路・ため池の管理」を議題とした農業集落数 は、00年センサスを大きく下回り、地域の農 業生産基盤の保全や地域の文化活動等におけ る集落活動の低下が懸念される結果となって いる。

なお、「環境美化・自然環境の保全」を議題 とした農業集落のみ増加している。この背景 には、この間、農政において集落が受け皿と なる「中山間地域等直接支払制度」(00年度)

「農地・水・環境保全向上対策」(07年度)等の 制度導入があったことがあげられる。

1 はじめに 農業集落

(注1)

は農村社会において農作業や農業 用水の利用等を中心に、家と家が地縁的血縁 的に結び付いた基礎的な単位として農業生産 活動や地域活動を担い、また、農協の組織・

事業面でも重要な役割を果たしてきた。しか し、足元では構成員の減少や高齢化等により その活動の脆弱化が懸念されている。以下で は農業集落の活動状況を2010年センサスより 概観する。

2 「寄り合い」の開催状況とその議題

まず、農業集落の活動状況を「寄り合い」

の開催状況からみたものが第1表である。「寄 り合い」とは「原則として地域社会または地 域の農業生産に関わる事項について、農業集 落の人達が協議を行うため開く会合」で農業 集落の最も基礎的な活動といえる。

2010年センサスでは「寄り合い」を開催し た農業集落数が00年に比べ4千集落減少し、

対象集落数に占める割合は92.5%と00年に比 べ約6ポイント低下した。地域別にみると九

〈レポート〉農漁協・森組

主任研究員 内田多喜生

2010 年センサスにみる農業集落の活動状況

─懸念される農協の組織基盤への影響─

全国 北海道 都府県 東北 北陸 関東・東山 東海 近畿 中国 四国 九州・沖縄

128.8 6.2 122.5 16.8 10.5 22.6 10.6 10.1 18.0 10.1 23.8

第1表 「寄り合い」を行った農業集落数

寄り合いを行った

農業集落数 (b−a)

2010年

133.0 6.5 126.6 16.8 10.6 24.7 11.9 11.2 18.1 10.2 23.2

△ 5.9

△ 10.2

△ 5.7

△ 4.0

△ 4.0

△ 6.5

△ 7.7

△ 4.7

△ 6.3

△ 7.0

△ 5.2 2000年

資料 農林水産省「世界農林業センサス」(2000年、2010年)

(注)1 2010年は、全域が市街化区域に含まれる農業集落の値は含 まれていない。

  2 2000年は、農家数4戸以下等の農業集落の値は含まれてい ない。

92.5 87.1 92.8 95.0 95.0 91.9 91.1 93.6 91.0 90.9 93.9

寄り合いを行った 農業集落数割合 10年(a)

98.4 97.2 98.5 98.9 99.0 98.3 98.8 98.3 97.3 97.9 99.2 00年(b)

(単位 千集落、%、ポイント)

資料 第1表に同じ 140

120 100 80 60 40 20 0

(千集落)

第1図 「寄り合い」議題別農業集落数の比較

農業集落行事

(祭り・イベント等)

の計画・推進 116.9

106.7 98.5 99.5 97.6 91.9 2010年 2000年

農道・農業用 用排水路・た め池の管理

(00年調査はた め池含まず)

環境美化・自然 環境の保全

(13)

「集落組織」が大きく減少する傾向がみられて いる。定義上2つの組織は重なっている部分 があるため当然のことであるが、農業集落に おいて、集落構成員の減少や高齢化で構成員 の組織化が難しくなるような状況になると、

農協の「集落組織」の維持も困難になるとい うことであろう。

4 おわりに

「寄り合い」の議題にみられるように、地域 の農業・文化活動や農政等の受け皿として農 業集落は依然重要な役割を果たしているが、

その活動の維持は「実行組合」の減少にみら れるように容易ではない。

集落活動の縮小は、地域農業及び地域社会 の維持活性化、また農村環境の保全維持にと っても大きな障害となるとみられ、前述の集 落が受け皿となる施策強化をはじめ、JAをは じめ、行政・農業団体等関連機関が連携して 集落活動の活性化のための取組みを進めてい く必要があるとみられる。

(うちだ たきお)

3 実行組合の有無と農協の集落組織

次に、「実行組合」がある農業集落の動向か ら活動状況をみることとしたい。「実行組合

(注2)

は「農業生産活動における最も基礎的な農家 集団」で多くが「寄り合い」の議題の活動を 担い、「寄り合い」だけにとどまる集落よりも 活動が活発とみられる。また「実行組合」は 農協の基礎組織を兼ねる場合も多く、農協の 組織基盤の変化をみる上でも参考になる。

第2表は10年と00年の「実行組合」がある 集落数を比較したものである。「実行組合」が ある農業集落数は101.4千集落と00年に比べ5.5 千集落減少し、これはこの間の「寄り合い」

を行った集落減少数を1.3千集落上回る。また

「実行組合」のある集落数割合も00年の79%か ら73%へと6.2ポイント低下し、これも「寄り 合い」を実施した集落割合の低下幅を5.8ポイ ントを上回る。このように「実行組合」があ る農業集落は「寄り合い」を行った農業集落 に比べ、さらに活動の縮小がみられている。

ここで「実行組合」は農協の基礎組織とも 重なることが多いことから、総合農協統計表 における農協の「集落組織(注3)」との関係を、「実 行組合」のある農業集落数割合と農協の「集 落組織」数の変化からみたものが第2図であ る。同図からは「実行組合」のある農業集落 割合が低い地域ほど、農協の組織活動を担う

(注1センサスでの農業集落とは「市区町村の区域 の一部において、農業上形成されている地域社会 のことである。農業集落は、もともと自然発生的 な地域社会であって、家と家とが地縁的血縁的に 結びつき、各種の集団や社会関係を形成してきた 社会生活の基礎的な単位」である。また、10年セ ンサスでは全域が市街化区域に含まれる農業集落 が調査対象外となる一方、農家数4戸以下等の農 業集落が対象とされた。

(注2具体的には、生産組合、農事実行組合、農家 組合、農協支部など様々な名称で呼ばれているが、

その名称のいかんにかかわらず、総合的な機能を もつ農業生産者の集団をいう。

(注3「集落組織」とは、農家が生産生活面で共同 し合っている集落単位の農家集団で、集落(農事)

実行組合・農家組合・農業改良組合等の名称で呼 ばれているものをいう。

2010年(a)

 00 (b)

(a−b)  

第2表 「実行組合」の有無・「寄り合い」の 実施別農業集落数

実行組合が ある 101.4 106.9

△ 5.5

寄り合いを 行った 128.8 133.0

△ 4.2

72.8 79.1

△ 6.2

92.5 98.4

△ 5.8 資料 第1表に同じ

対総農業集落数割合 実行組合が

ある

寄り合いを 行った

(単位 千集落、%、ポイント)

資料  農林水産省「世界農林業センサス」(2010)『総合農協統計表』

第2図 農協の集落組織数変化と実行組合割合

95 90 85 80 75 70 65 60

90 85 80 75 70 65 60 55 50 45 40

指数(98年=100) (%)

都府県 東北 北陸 関東東山 東海 近畿 中国 四国 九州沖縄

集落組織数(08年)

実行組合あり集落数/農業集落数(10年、右目盛)

(14)

経営体へと減少している。

一方で経営を多角化する経営体数は増加し ており、全農業経営体数に占める直接販売に 取り組む経営体数の割合は16.3%から19.6%

へ、農産物加工は1.2%から2.0%へとそれぞれ 上昇している。農産物加工、消費者への直接 販売の順に経営体の増加数が多く、多角化が 進んだ背景の一つには、産地直売所数が増加 したことによって、販売先が拡大したことが 挙げられる(注1)

3 今後の取組意向

農林水産省が農業者を対象に実施した経営 の多角化の現状と今後の意向に関するアンケ ート調査(注2)によると、調査項目のうち既に取り 組んでいる割合は直接販売(52.2%)、農産物加 (16.3%)、観光農園(3.4%)の順に高く、組織 形態別には非法人よりも法人の方が高い

(第1表)

今後、取り組みたいものは直接販売(30.9

%)と農産物加工(30.3%)の割合が同程度で、

次いで観光農園(10.1%)が続いている。組 織形態別には、直接販売、農産物加工に取 り組みたいとする割合は、非法人のなかで も法人化意向のある農業者で36.4%、42.1

%と高くなっている(同表)。また農業者の 年齢別にみると、40歳未満で農産物加工

(48.2%)に今後取り組みたいとする割合が 高い。

1 はじめに

農業経営体の消費者への直接販売や農産物 加工等の経営の多角化には、個別経営体の所 得向上はもとより、地域の雇用創出を通じ、

地域全体の所得向上や地域活性化につながる ことが期待されている。国は農商工連携の取 組みを通じて農業経営体の加工・販売の一体 化等の6次産業化を支援していることから、

今後は取組みが進むものとみられる。

以下では、農業経営体の経営多角化の現状 と今後の取組意向さらに資金需要の特徴につ いて紹介することにしたい。

2 経営多角化が進展

経営多角化の状況をみたのが第1図である。

農業センサスによると、2005年から10年にか けて、農業経営体は200.9万経営体から167.9万

〈レポート〉農漁協・森組

主事研究員 長谷川晃生

農業経営体の経営多角化と資金需要

資料 農林水産省「農林業センサス」

(注)1 ( )のデータは、経営体数全体に占める割合。

  2 「海外への輸出」は2011年センサスからの項目。

35 30 25 20 15 10 5 0

(万経営体)

第1図  経営を多角化している農業経営体数

消費者に直接販売 農産物の加工 観光農園 貸農園・体験農園等 農家民宿 農家レストラン 海外への輸出

326,703経営体(16.3%)

329,122

(19.6)

23,913

(1.2) 7,579

(0.4) 4,023

(0.2) 1,492

(0.1) 826

(0.0)

34,172

(2.0) 8,768

(0.5) 5,840

(0.3) 2,006

(0.1)

1,248

(0.1) 445

(0.0)

2010年(農業経営体167.9万)

2005年(農業経営体200.9万)

参照

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