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受験期の高校生の心理的課題に対する

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Academic year: 2021

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『就実大学大学院教育学研究科紀要 2021(第 6 号)』 抜刷 就実大学大学院教育学研究科 2021年 3 月10日 発行

大 西 由 美

受験期の高校生の心理的課題に対する

「PBISカルテ方式」を用いた支援についての 探索的検討

An exploratory study of psychological support for high school students preparing for entrance examination through the “PBIS using personal

sheets”

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受験期の高校生の心理的課題に対する

PBIS

カルテ方式」を用いた支援についての探索的検討

教育学研究科教育学専攻 教育臨床心理学コース 3618002 大西由美

Ⅰ.問題と目的

教師にとって受験期は進路指導に重点が傾きやすく,生徒への心理的支援は関心事であ りながら必ずしも十分なされていない現状がある。その打開策として,受験期の高校生を 担任する立場から独自に,Positive Behavior Interventions and Supports(ポジティブな行 動介入と支援:PBIS)を応用し,自己省察と他者や環境への視点の保持,そして担任との 対話ができる工夫を付加した「PBISカルテ方式」を考案し実践した。本研究はこの実践を 探索的に検討評価し,実践の意義と課題及び留意点を明らかにすることを目的とする。

Ⅱ.方 法

2017年度に筆者が担任するA中等教育学校 6 年生(高校 3 年生相当)の 1 学級47名(男 30,女17)を対象として実践した。第 1 期間( 1 学期)は全員参加を原則とし,第 2 期間

( 2 学期)の継続は自由とした。実践中 3 時点の質問紙調査で生徒による目標行動達成度 自己評価( 7 件法)と行動の記述および実践への評価(自由記述)を得た。卒業後の質問 紙調査で生徒による実践への評価(自由記述)を得た。卒業後の同僚教師による評価をイ ンタビュー調査により得た。自己評価の値は統計的に,自由記述はKJ法に準じた方法に より,インタビュー内容はSCATにより質的に分析した。

Ⅲ.結 果

⑴実践中の生徒による評価 第 2 期間も活動を継続した長期群(11名)と,第 1 期間で活 動を終了した者のうち 3 時点の評価のいずれかの評価を欠く17名を除いた短期群(19名)

の目標行動達成度自己評価の変化に群による有意差はなかった。長期群の一部の項目にお いては自己評価上昇者数が多かった。行動の記述内容はより具体的に変化していった。ま た,自由記述の分析から<自分の気持ちや意識の肯定的な変化>や<生活に張りができた>

<気持ちがリセットできた><周囲を肯定的に見ることができた><先生とつながる安心 感がよい>など15のラベルが生成された。

⑵卒業後の生徒による評価 16名の回答から実践の意義や自己の変化等について<心を整 理することができる><心に余裕が生まれる><自分自身のやる気につながる><人を見 る目が豊かになった>など13のラベルが生成された。また,自己省察力の向上や環境への 意識変化に関する 5 件の肯定的な記述が得られた。

⑶卒業後の同僚教師による評価 実践の意義・課題・留意点等について「肯定的な認知に よる精神的な安定の促進」「同じことの反復が安定をもたらす仕組み」「協力的で他者に寛 容な学級の雰囲気」「教師との良好な人間関係が基盤」「学校の雰囲気に合う内容」「参加 しやすくする工夫」「意欲を引き出す感じの関わり方」などを構成概念とする 7 項目の理 論記述が導かれた。

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Ⅳ.考 察

⑴実践中の生徒による評価より 本実践は長く続けるほど達成度自己評価が上がるという ものではなかった。しかし,定期的に省察を繰り返す活動を通じて,日常にリズムが生ま れ,視野を広く保ちながら落ち着いて受験期を過ごせるようになっている面がうかがえる。

また,担任とつながる安心感を得ることも,心の安定に資している。これらの面に意義や 必要性を感じた生徒が長期群となっていたと考える。

⑵卒業後の生徒による評価より 本実践は,生徒に落ち着いて自己省察し,環境や仲間の 大切さを改めて認識できる機会を提供した。他者や環境とのつながりの中で生活している 自分を認識できることが,心の余裕や前向きに生活する意欲を生んでいた。その結果ゆと りある大学生活を送る自信や,人を見る目の豊かさにもつながり,卒業後に心理的課題を 抱える危険性を予防できている面があると考えられる。

⑶卒業後の同僚教師による評価より 本実践は,受験期の高校生に前向きな発想を促し,

肯定的な見方考え方を育てるもので,振り返りの反復によって安定性を保つものであった。

また,学級にまとまりをもたらし,協力的で他者に寛容な雰囲気を醸成した。一方,参加 に消極的な生徒は存在するため,それらを含めて実践を広げる工夫が必要である。反面,

自主性の尊重も大切であり,実践者はこの矛盾と自己の持ち味を踏まえ,柔軟に指導・支 援を行う必要があることが示唆された。

Ⅴ.総合的考察

本実践は,実践と振り返りの繰り返しが安定をもたらすもので,個々の生徒の自己省察 力を高める契機となり,学級集団の受容的で相互支援的な雰囲気づくりに役立ち,多様な 個を包含する学級を受け持つ担任の細やかな生徒理解と支援の後押しをしたといえるだろ う。個と集団の両面から直接的にまた間接的に,受験期の高校生の心理的課題を支援し緩 和する方向に働いたことが第一の意義である。そして,生徒個々の変化がその後の生活に もよい影響をもたらしていると評価されたことが第二の意義である。ただし,効果のある 実践とするためには実践者の持ち味を活かし,対象者の実態やニーズを見立てて柔軟に工 夫する必要がある。信頼関係を基盤に,学校や学級の風土になじむ,受容的かつ指導的な 関わりを通して緩やかに集団を率いていく指導者の柔軟性が大切であると考える。また,

見立てのための心理専門職との協働の促進,受験生に対する予防的支援の必要性について の認識の広がり等,課題は残る。それらを踏まえて,受験期の高校生の多様な個と集団の ありようを勘案しつつ,受験期に陥りやすい心理的課題への支援を考える際,日常の学校 生活の安定を図り,仲間や教師とのつながりを意識させる「PBISカルテ方式」を使った個 と集団への働きかけを,教師が取り得る選択肢の一つとして提示したい。

Ⅵ.今後の課題

本実践は効果検証を意図した明確な実験デザインではなく,結果を必ずしも一般化でき ない。より多角的な評価を得て意義や課題を検討していく必要がある。また, 1 , 2 年生 や学校全体への実践拡大による予防的効果の向上が期待できる。

指導教員:石原みちる

参照

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