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肺癌の個別化治療のための肺生検からの遺伝子学的多様性解析

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Academic year: 2021

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(1)

─ ─39 辻野一郎 他 日本大学医学部総合医学研究所紀要

Vol.1 (2013) pp.39-40

1)日本大学医学部呼吸器内科学分野 2)日本大学医学部病理学分野 辻野一郎:[email protected]

非扁平上皮非小細胞肺癌と診断し得た110例 (年齢 68±9.7歳,男女比78:32,喫煙91例,病期ⅢB-Ⅳ 期86例)のパラフィン生検組織とした。pERK蛋白 発現は免疫組織化学によりallredスコアで評価し た。遺伝子変異解析は,生検切片よりレーザーマイ クロダイセクション法4)で回収した腫瘍細胞を用い てQuenching Probe法5),リアルタイムRT-PCR法 で行い,SPSS version 20 (IBM)を用い統計解析を 行った。

3. 結果

pERK蛋白発現は110例中84例(75.9%)に陽性で 発現強度には差を認めた。pERK発現強度と遺伝子異 常の関係を検討した結果,EGFR変異例はpERK 低 スコア群に,KRAS変異例,BRAF変異例は中〜高ス コア群に見られる傾向が示された(図1)。pERK発現 スコアと患者の生存期間中央値を比較すると陰性,

低,中,高スコア群で各々480日,450日,210日,

180日と逆相関の傾向を示し,生存分析でもpERK中

〜高スコア群で予後不良の傾向が示された(図2)。

1. はじめに

近年,癌細胞の増殖シグナルに関与するチロシン キナーゼ(TK)を恒常的に活性化するドライバー遺

伝子変異1) が次々に発見され,治療標的分子となっ

ている。肺癌では上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)

遺伝子変異2)あるいはanaplastic lymphoma kinase

(ALK)融合遺伝子3)が代表的であるが,その対象 患者の割合は多くはない。化学療法の奏功性も個人 差は大きく,個別化治療のための新たな指標の探索 は急務である。本研究では,RAS-RAF-MAP kinase の活性化の指標としてERKのリン酸化に着目し,

その強度とEGFシグナリング関連遺伝子変異との 関係,さらに治療および予後との関係を進行非小細 胞肺癌症例について明らかにすることを目的とし て,経気管支鏡的肺生検検体におけるpERKの蛋白 発現と肺癌との関係が知られるドライバー変異の有 無を検討した。

2. 対象及び方法

対象は2009年から2010年に呼吸器内科を受診し

辻野一郎1),高橋典明1),中西陽子2)

要旨

増殖シグナル伝達経路の様々な遺伝子変異は,ドライバー変異として非小細胞肺癌(NSCLC)の 進展に深く関与していることから,治療標的分子として着目されているが,個々の遺伝子変異が癌 の悪性度や治療感受性に及ぼす影響については未だ不明である。そこで我々は,NSCLC進行例の経 気管支鏡的肺生検を対象として腫瘍細胞の遺伝子変異解析を行い,増殖シグナル活性の指標となる リン酸化(p)ERKの発現強度と比較した。この結果,pERKの核内発現強度は,ドライバー変異の種 類によって異なることが明らかとなり,予後と相関,治療奏功性と逆相関の傾向を示した。以上よ

りpERKはNSCLCの予後ならびに治療抵抗性予測因子として有用と考える。

肺癌の個別化治療のための肺生検からの遺伝子学的多様性解析

Analysis of the genetic polymorphism from lung biopsy to decide personalized therapy

Ichiro TSUJINO

1)

Noriaki TAKAHASHI

1)

Yoko NAKANISHI

2)

創立50周年記念研究奨励金(共同研究)研究報告

(2)

肺癌の個別化治療のための肺生検からの遺伝子学的多様性解析

─ ─40 pERK発現強度と標準化学療法の奏効率との関係 は,pERK陰 性, 低, 中 ス コ ア 群 で 各 々90.9%,

73.6%,50.0%であり,スコアに応じて奏効率が低 下した。

4. 考察

正常ではERKは増殖刺激によりリン酸化される

が,ドライバー変異によりERKが恒常的に活性化 されシグナル伝達に関与する場合,免疫組織化学に より腫瘍の核染色像が高度に見られることが示され

た。特にKRAS変異群はpERKが高発現で予後不良 であったことから,pERK染色はKRAS変異例スク リーニングへの応用が期待される。現在,肺癌の保 険診療ではEGFRおよびKRAS遺伝子検査の同時算 定は認められず,TKI導入をめぐる保険診療上の問 題の一つである。今回検討したpERK発現レベルは,

ドライバー変異を示唆する上,治療耐性予測因子と もなり得ることから,日常測定可能な肺癌個別化治 療の新たな指標として有用と考える。

5. 結語

進行非小細胞肺癌においてpERK発現強度はの癌 のドライバー変異の種類で異なり,治療効果や予後 と関係するため個別化治療の指標として有用であ る。

文献

 1) Pao W, Girard N. New driver mutations in non-small- cell lung cancer. Lancet Oncol. 2011;12:175-180.

 2) Pao W, Miller VA. J. Epidermal growth factor recep- tor mutations, small-molecule kinase inhibitors, and non-small-cell lung cancer: current knowledge and future directions. J Clin Oncol. 2005;23:2556-2568.

 3) Soda M, Choi YL, Enomoto M, et al. Identification of the transforming EML4-ALK fusion gene in non- small-cell lung cancer. Nature 2007; 448: 561-6.

 4) Nakanishi Y, Shimizu T, Tsujino I, et al. Semi-nested real-time reverse transcription polymerase chain re- action methods for the successful quantitation of cy- tokeratin mRNA expression levels for the subtyping of non-small-cell lung carcinoma using paraffin-em- bedded and microdissected lung biopsy specimens.

Acta Histochem Cytochem. 2013;46:85-96.

 5) Ureshino N, Aragane N, Nakamura T, et al. A fully in- tegrated and automated detection system for single nucleotide polymorphisms of UGT1A1 and CYP2C19.

Oncol Res. 2011;19:111-4.

図1 Phospho ERK1/2発現レベルと遺伝子背景

図2 Phospho ERK1/2の発現レベルと予後

図 2   Phospho ERK1/2 の発現レベルと予後

参照

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