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高度なマヌーバビリティを有する 地球観測監視衛星に関する調査研究

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(1)

システム技術開発調査研究 18-R-14

高度なマヌーバビリティを有する 地球観測監視衛星に関する調査研究

報 告 書

平成 19 年 3 月

財団法人 機械システム振興協会

委託先 財団法人 無人宇宙実験システム研究開発機構

(2)

わが国経済の安定成長への推進にあたり、機械情報産業をめぐる経済的、社会的諸条件 は急速な変化を見せており、社会生活における環境、防災、都市、住宅、福祉、教育など、

直面する問題の解決を図るためには、技術開発力の強化に加えて、ますます多様化、高度化 する社会的ニーズに適応する機械情報システムの研究開発が必要であります。

このような社会情勢に対応し、各方面の要請に応えるため、財団法人機械システム振興 協会では、日本自転車振興会から機械工業振興資金の交付を受けて、機械システムの調査研 究などに関する補助事業、新機械システム普及促進補助事業を実施しております。

特に、システム開発に関する事業を効果的に推進するためには、国内外における先端技 術、あるいはシステム統合化技術に関する調査研究を先行して実施する必要がありますので、

当協会に総合システム調査開発委員会(委員長 政策研究院 リサーチフェロー 藤正 巖氏)

を設置し、同委員会のご指導のもとにシステム技術開発に関する調査研究事業を実施してお ります。

この「高度なマヌーバビリティを有する地球観測監視衛星に関する調査研究報告書」は、

上記事業の一環として、当協会が財団法人無人宇宙実験システム研究開発機構に委託して実 施した調査研究の成果であります。

今後、機械情報産業に関する諸施策が展開されていくうえで、本調査研究の成果が一つ の礎石として役立てば幸いであります。

平成19年3月

財団法人機械システム振興協会

(3)

はじめに

本報告書は、財団法人無人宇宙実験システム研究開発機構が、平成18年度事業とし て、財団法人機械システム振興協会から受託した「高度なマヌーバビリティを有する地球観 測監視衛星に関する調査研究」の実施内容をまとめたものです。

安全保障、災害監視、資源探査など観測衛星の需要は増大していますが、異なる目的に ついて必要とされる地域を観測するためには、数多い衛星を打上げて対応する必要がありま す。

しかしながら、複数の衛星の打上げには、莫大な打上げ・運用費用が必要でありリスク も増大します。また、これらの衛星の寿命終了後は宇宙のごみ(デブリ)となり、将来的に 宇宙利用に対する障害になるおそれがあります。

それらの解決策として、軌道変更用の推進装置を保持する衛星を打上げることによって 運用の自由度を増し、1機で観測ニーズに合わせて軌道を変更する運用が可能となるシステ ムの検討を実施した結果が本調査研究です。

検討にあたっては、本機構内に「高度なマヌーバビリティを有する地球観測監視衛星検 討委員会:委員長 上杉邦憲 元宇宙科学研究所 教授」を設置し、各分野の専門の委員の 皆様から熱心なご討議、ご指導をいただきました。

本調査研究の成果が関連各社にとって参考となり、機械振興の一助となれば幸いです。

平成19年3月

財団法人 無人宇宙実験システム研究開発機構

(4)

緒 言

21世紀の人類にとって喫緊の課題であるエネルギー、人口・食料、環境のいずれ の問題に対しても、解決のための貴重な情報を得る一手段として、人工衛星による地球観測 が極めて重要な役割を果たすことは論を待たない。特に資源探査、農作物・植生の観測、気 象観測などにおいて、陸域・海域を問わず、ますます高精度、高分解能且つ継続的観測が必 要であるのに加え、災害監視、安全保障などに関して観測の迅速性・即応性も要求されてい る。

財団法人無人宇宙実験システム研究開発機構(USEF)は、軌道変更用の推進装置を 持つ衛星によって上記の要求を1機の衛星で満たす、という斬新なコンセプトのシステムと して「高度なマヌーバビリティを有する地球観測監視衛星(HiMEOS)」を構想、提案 したところである。

本委員会はUSEFの委託により、USEFが実施する同衛星計画のミッション解析、

即ち地球観測衛星のニーズ調査及び分析、技術動向調査及び分析並びにシステム構想の検討 に関し、専門的見地から意見を述べ助言することを目的として設置された。委員会は、平成 18年12月、平成19年1月及び2月の3回開催され、討議を行うとともに、USEFと の密接なる連絡によりミッション解析の細部にわたる意見交換とアドバイスを行った。

本報告書は、これらの討議を経て纏められたものであり、本委員会としても、今後の我 が国の所謂安全・安心を確保し、社会生活における諸問題解決に資する機械情報システムの 一つとして、HiMEOSが高い意義を有するのみならず、技術的フィージビリティも十分 であると考えるものである。

今後、USEFが更なる具体的検討を進め、関係諸機関の支援により、HiMEOSが 実際の衛星計画へと進むことを期待したい。

平成19年3月

高度なマヌーバビリティを有する地球観測監視衛星検討委員会 委員長 上杉 邦憲

(5)

目次 序

はじめに 緒 言

1 調査研究の目的 ... 1

2 調査研究の実施体制 ... 2

3 調査研究の内容 ... 6

第 1 章 地球観測衛星ニーズ調査及び分析 ... 7

1.1 目的 ... 7

1.2 地球観測衛星に対する分野別ニーズ調査 ... 7

1.2.1 地球観測衛星に対するニーズ ... 7

1.2.2 災害監視・安全分野 ... 8

1.2.3 資源探査・エネルギー分野 ... 10

1.2.4 環境分野 ... 20

1.2.5 農業分野 ... 22

1.2.6 漁業分野 ... 22

1.2.7 林業分野 ... 23

1.2.8 都市環境分野 ... 24

1.2.9 その他分野 ... 26

1.2.10 ミッション要求のまとめ ... 27

1.3 ニーズまとめ ... 29

第 2 章 技術動向 ... 32

2.1 観測衛星 ... 32

2.1.1 観測衛星の動向 ... 32

2.1.2 まとめ ... 41

(6)

2.3.2 通信系の使用周波数帯 ... 50

2.4 運用管制システムの現状 ... 52

2.4.1 各国追跡ネットワーク(地上局)の現状 ... 52

2.4.2 各国衛星運用システムの現状 ... 62

2.4.3 分析とまとめ ... 68

第 3 章 システム構想検討 ... 79

3.1 構想検討の前提 ... 79

3.2 軌道検討 ... 80

3.2.1 低軌道周回軌道比較 ... 80

3.2.2 位相回帰軌道 ... 81

3.2.3 太陽同期回帰軌道 ... 88

3.3 軌道変更機能の検討 ... 92

3.3.1 軌道変更について ... 92

3.3.2 高度変更と必要なΔV ... 93

3.3.3 軌道変更頻度と実現性 ... 94

3.3.4 軌道面変更に必要なΔV ... 98

3.4 姿勢変更機能の検討 ... 99

3.4.1 姿勢変更の有効性 ... 99

3.4.2 姿勢変更方法の検討 ... 100

3.4.3 制約条件下での検討 ... 111

3.5 軌道維持方法の検討 ... 118

3.5.1 軌道維持について ... 118

3.5.2 空気密度モデル ... 118

3.5.3 空気抵抗と高度維持方法 ... 119

3.6 ミッション系の検討 ... 120

3.6.1 センサ ... 120

3.6.2 通信系 ... 124

3.7 宇宙機(バス)の検討 ... 139

3.7.1 宇宙機の要求機能整理 ... 139

3.7.2 宇宙機システム構成の検討 ... 147

3.8 運用の自動化・自律化 ... 168

3.8.1 システム機能・運用自動化の分類・洗い出し ... 168

3.8.2 運用管制 ... 175

3.8.3 自律軌道変更機能 ... 203

3.8.4 自律姿勢変更機能 ... 207

3.9 非デブリ化の検討 ... 208

(7)

3.9.1 スペースデブリ概論 ... 208

3.9.2 スペースデブリ低減に向けた動向 ... 210

3.9.3 IADCスペースデブリ低減ガイドライン ... 213

3.9.4 スペースデブリ低減施策のプロジェクト計画・設計・運用への反映 ... 217

3.10 民生技術活用 ... 225

3.10.1 民生部品・民生技術の必要性 ... 225

3.10.2 民生部品・民生技術活用上の問題点 ... 226

3.10.3 民生部品の宇宙機等への適用方法 ... 228

3.11 システム構想例 ... 229

3.11.1 全体システム概要 ... 229

3.11.2 運用概要(パターン例) ... 230

3.11.3 ミッション系 ... 234

3.11.4 宇宙機システム ... 244

3.11.5 運用管制システム ... 247

3.11.6 HiMEOSシステムシミュレーション ... 250

3.12 HiMEOSの意義について ... 252

3.12.1 コスト対効果の検討が ... 252

3.12.2 航空機の場合とのコスト比較 ... 256

4 調査研究の成果(まとめ) ... 257

5 調査研究の今後の課題及び展開 ... 258

5.1 今後の課題 ... 258

5.2 今後の展開 ... 260

[資料編] ... 261

参考資料A.1 GEOINT 2006 ... 262

参考資料A.2 ESAワークショップ ... 270

参考資料A.3 観測衛星調査結果表... 289

参考文献 ... 295

(8)

1 調査研究の目的

近年高解像度の画像を撮影し、ユーザに提供する衛星が打上げられ、サービスに供され始 めている。これは従来の資源探査衛星のように、比較的マクロな地上の情報を観測し、それに 基づき資源や気象などのマクロな解析をするというよりも、特定の場所の形状や状態を把握し、

その場所の監視やミクロな情報の取得を目的としており、またどちらかと言えば年オーダのグ ローバルな観測よりも、特定地域の高頻度で詳細な観測を目的としている。このような観測衛 星については、日本としても様々な観点からのニーズに応えるために取り組む必要があると考 えられる。

この問題意識のもとで、本調査研究は次のような特色を持つ「高度なマヌーバビリティを 有する地球観測監視衛星システム」(HiMEOS: Highly Maneuverable Earth Observation Satellite systems)について、ニーズや技術の動向調査、ニーズに応じた軌道や姿勢の変更 機能、自動自律化の検討、地上へのデータの伝送方法などの検討を行い、システムの概略の構 想を明確化するとともに、次のシステム定義フェーズに向けての課題を明確化することを目的 として実施した。

「高度なマヌーバビリティを有する地球観測監視衛星システム」の特色

・高分解能センサを搭載する。

・回帰軌道の周回を基準とするが、必要に応じ軌道マヌーバを行い、別の地表の観測が可能な 回帰軌道へ移行する。

・姿勢マヌーバをすることで、直下観測領域以外であっても必要場所のデータを次々に取得す る。

・必要に応じて軌道高度を下げ、ズームアップしてより高分解能データ(精密画像データ)の 取得を実施する。

(9)

2 調査研究の実施体制

本調査研究の実施体制は、(財)機械システム振興協会内に「総合システム調査開発委員会」

を、(財)無人宇宙実験システム研究開発機構内に「高度なマヌーバビリティを有する地球観 測監視衛星検討委員会」を設置し、本調査研究の計画、実施状況、実施結果について意見・ア ドバイスをいただきながら進めた。技術分析、評価は財団法人無人宇宙実験システム研究開発 機構で実施したが、検討に必要な情報収集は外注作業として企業に請け負わせて実施した。ま た、基本となる軌道変更機能や自律軌道維持・変更/姿勢変更機能に係わる解析、検討は、機 構の技術要求に基づき専門企業に再委託し実施した。

(財)機械システム振興協会 総合システム調査開発委員会

NEC 東芝スペースシステム株式会社:センサ及び通信方式の技 術動向調査

委託

再委託

富士通株式会社:衛星運用システムの技術動向調査

(財)無人宇宙実験システム研 究開発機構 (USEF)

三菱電機株式会社:軌道変更機能の検討及び自律軌道維持・変 更/姿勢変更機能の検討

高度なマヌーバビリティを有す る地球観測監視衛星検討委員会

外注

外注 外注

三菱総合研究所:観測衛星のニーズ、技術動向調査 外注

株式会社イメージワン:地球周回軌道のシミュレーション作業

(10)

ックを行い、成果報告書を確認する。

・無人宇宙実験システム研究開発機構は、外注先からの技術情報、再委託先からの解析、

検討結果を元に、ニーズの分析、技術動向分析、システム構想検討、全体のとりまとめ を行う。

・高度なマヌーバビリティを有する地球観測監視衛星検討委員会は、大学、企業の専門家 等で構成し、無人宇宙実験システム研究開発機構が実施する検討内容についての技術支 援、検討成果のレビューを実施する。

・再委託先の三菱電機株式会社は、基本となる軌道変更機能や自律軌道維持・変更/姿勢 変更機能に係わる解析、検討を実施する。

・外注先として、NEC 東芝スペースシステム株式会社はセンサ及び通信方式の技術動向調 査、富士通株式会社は衛星運用システムの技術動向調査、三菱総合研究所は観測衛星の ニーズ、技術動向調査、そして株式会社イメージワンは地球周回軌道のシミュレーショ ン作業を実施する。

総合システム調査開発委員会の委員名簿を以下に示す。

総 合 シ ス テ ム 調 査 開 発 委 員 会 委 員 名 簿 (順不同・敬称略)

委員長 政策研究院 藤 正 巖 リサーチフェロー

委 員 埼玉大学 太 田 公 廣 地域共同研究センター

教授

委 員 独立行政法人産業技術総合研究所 金 丸 正 剛 エレクトロニクス研究部門

副研究部門長

委 員 独立行政法人産業技術総合研究所 志 村 洋 文 産学官連携部門

コーディネータ

(11)

委 員 東北大学 中 島 一 郎 未来科学技術共同研究センター

センター長

委 員 東京工業大学大学院 廣 田 薫 総合理工学研究科

教授

委 員 東京大学大学院 藤 岡 健 彦 工学系研究科

助教授

委 員 東京大学大学院 大 和 裕 幸 新領域創成科学研究科

教授

(12)

また、(財)無人宇宙実験システム研究開発機構内に置かれた「高度なマヌーバビリティ

を有する地球観測監視衛星検討委員会」の委員名簿を以下に示す。

氏 名 所 属 上杉 邦憲

(委員長)

元 宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究本部 宇宙航行システム研究系 研究主幹 教授 池本 多賀史 株式会社ニューズラボラトリー 会長

葛岡 成樹 株式会社 イメージワン 技師長

斉藤 宏文 宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究本部

宇宙情報・エネルギー工学研究系 研究主幹 教授 坂井 真一郎 宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究本部

宇宙探査工学研究系 助教授 佐鳥 新 北海道工業大学 電気電子工学科 教授

中須賀 真一 東京大学 大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻 教授 梅干野 晁 東京工業大学大学院 総合理工学研究科

環境理工学創造専攻 教授

開催した委員会の開催日と主要テーマを以下に示す。開催場所はUSEF会議室。

第 1 回:2006 年 12 月 11 日(月)委員会発足、調査研究の進め方に関する審議 第 2 回:2007 年1月 18 日(木)調査研究の中間報告に関する審議

第 3 回:2007 年 2 月 20 日(火)調査研究の最終報告案に関する審議

(13)

3 調査研究の内容

調査研究の内容は、以下の 3 項目について行った。項目毎に本節 1 章、2 章、3 章にまとめ ている。

(1)地球観測衛星ニーズ調査及び分析

災害監視、各種資源探査、環境監視、安全監視等において必要とされるミッション性能、運 用高度、運用軌道について調査及び分析を行った。

(2)技術動向

観測衛星の技術動向調査、センサ及び通信方式の技術動向調査、衛星運用システムの技術動 向調査及び分析を行った。

(3)システム構想検討

ニーズ/ミッションが変更された場合でも対応可能な高度なマヌーバビリティを有する衛星 システムを実現させるために以下の項目について検討し、システム構想検討としてまとめた。

また、地球周回軌道のシミュレーション作業も実施した。

a.軌道高度変更機能

顧客のニーズ変化に応じた軌道/高度変更機能の検討を行った。

b.自律軌道維持・変更/姿勢変更機能

自律的な軌道/姿勢の変更方法の検討を行った。

c.取得データの効率的処理/伝送技術

効率の良い衛星データ処理システム及び地上局ネットワークシステムの検討を行った。

(14)

第1章 地球観測衛星ニーズ調査及び分析 1.1 目的

地球観測衛星に関するニーズ調査を実施し、マヌーバビリティの向上に対するニーズを抽出 するとともに、調査結果を運用シナリオへ反映する。

・分野別ニーズ調査 -データ利用の現状 -今後の方向性

-マヌーバビリティの向上に対するニーズ

・エネルギーセキュリティ・電力分野の詳細ニーズ調査

・ニーズから見た地球観測衛星の利用シナリオ

1.2 地球観測衛星に対する分野別ニーズ調査 1.2.1 地球観測衛星に対するニーズ

全体として、地球観測衛星に対してどのようなニーズがあるか、またその中で今回特に関係 する観測頻度と分野との関係等について記述する。

立体視

空間分解能 スペクトル 観測頻度 入手時間 VN S T

農 業 分 野 作物品質・生産性向上(米麦作) × ×

作付け面積・出荷時期調整 ×

食糧安定確保のための戦略的情報提供

農業統計整備への支援情報 ×

林 業 分 野 森林の多面的機能保全 ×

国内森林の森林認証 ×

海外植林事業,違法伐採監視、輸入材の監視

漁 業 分 野 漁業効率化 ×

漁業資源管理 ×

漁場の水質汚染時における被害軽減 ×

資 源 分 野 石油資源・非鉄金属資源探鉱

鉱山および油田の環境保全事業

環 境 分 野 プロジェクトモニタリング・認証事業

温暖化防止・抑制における情報提供

自治体環境保全施策における支援

土壌汚染アセスメント ×

国 土 管 理 分 野 治水・道路整備事業

都市・地域整備事業

防 災 分 野 国内防災行政

海外(アジア地域)の災害被害軽減

地 図 ・G IS 作 成 国内の地形図修正 × ×

民間GISデータ整備 × ×

海外地形図作成・修正 × ×

教 育 分 野 e-Learning市場におけるコンテンツ ×

エン ターテイメ ン ト ビデオゲームにおけるコンテンツ × ×

防 衛 分 野 国内防衛分野におけるデータ整備

大分類 小分類 優 先 度 主な利用波長帯

(出典:平成 14 年度 リモートセンシング産業技術動向調査 JAROS)参考文献 1-1)

図 1.2.1-1 地球観測衛星に関するニーズ

(15)

(出典:ASPRS/NASA Ten-Year Industry Forecast)

図 1.2.1-2 地球観測衛星に対する要求(特性要求)参考文献 1-2)

(出典:ASPRS/NASA Ten-Year Industry Forecast)

図 1.2.1-3 地球観測衛星に対するニーズ(観測分野)参考文献 1-2)

以降では、災害監視・安全分野、資源探査・エネルギー分野、環境分野、農業・林業・漁業 分野、その他分野に分け、地球観測衛星データの利用の現状及び今後の方向性について述べる。

1.2.2 災害監視・安全分野

(16)

と、我が国にとって今後重要となるアジア地域は、大規模災害による被災者数及び被害額が 世界でトップクラスであり、大規模災害への対策が急務となっている。災害監視分野では、

防災・減災に資する情報提供が可能なツールとして、国内外とも衛星データの利用に対する ニーズは大きい。

一方、近年は、米国同時多発テロ(9.11)を代表例とするようなテロや、JR 西日本の鉄 道事故などの大規模事故が起こっており、安心・安全な社会を構築するためのツールとし ての衛星データ利用のニーズが高まっている。

災害監視分野でのデータ利用の現状を俯瞰すると、ASTER や ALOS データの災害利用に関 する研究開発等や、内閣府における「人工衛星等を活用した被害早期把握システム」など の実利用化に向けた多くの取り組みは行われているものの、現時点では国内災害において 衛星データが有効に利用された事例は限定される。一方、海外においては、森林火災監視、

洪水監視等において定常的に衛星データが用いられている事例がある。これらの事例にお いては、空間分解能よりも観測頻度が重視されており、MODIS、AVHRR 等の広域観測衛星の データの利用が主流となっている。

災害監視に対する衛星データの利用という面からは、災害チャータや SSTL 社主導の複数 衛星による災害監視(DMC: Disaster Monitoring Constellation)に基づく国際協調によ る災害観測が近年、促進されている。災害チャータや DMC では多国間協力の枠組みであり、

各国が保有する高・中空間分解能の衛星の取得したデータが、被害状況把握、災害からの 復興・復旧に利用されている。

このように、アジア地域での森林火災監視、洪水監視等の定常システムでは低空間分解 能かつ広域観測の利用が主流であるが、局所的な事象に対する詳細な現象解明、被害評価 においては高・中空間分解能データの利用事例も増加してきている。

(2)今後の方向性

本分野での今後の衛星データの利用形態としては、国内では、防災行政への情報提供や 防災関連ビジネスでの情報利用・提供などが想定される。また、海外で発生した災害への 情報提供も想定され、我が国は災害チャータに加盟していることもあり、今後重要となる。

本分野では、究極的には 24 時間監視が求められるが、現実的には衛星による 24 時間監 視の達成は近々には困難である。そのため、現実的な方策としては、可能な限りの高頻度 観測と観測後のリードタイムを減らすことが目標となる。また、多様な災害に対応するた め、多様な種類の観測センサ、観測形態への要求が増加すること、テロ対策を含めた安全

(17)

保障における利用ニーズが拡大することなども予想される。

(3)マヌーバビリティ向上に対するニーズ

本分野では、高頻度観測、要求に応じた迅速なターゲット観測や観測条件の自由度の拡 大などが求められている。高いマヌーバビリティを保有する衛星へのニーズは、衛星デー タの利用分野において、最も高い分野といえる。特に災害・事故発生時等に他の衛星と連 携して観測ターゲットを絞り込み、集中的に監視を行う運用などが期待される。

1.2.3 資源探査・エネルギー分野

(1)データ利用の現状

資源探査・エネルギー分野は、我が国において最も衛星データの利用が進んだ分野の一 つであり、基礎的な研究開発から探鉱事業における実利用まで多くの実績を有している。

非鉄金属分野では、対象地域における広域の詳細な地質図、鉱物分布図等の作成のほか、

周辺地域のインフラ整備状況を評価において衛星データが用いられている。これらの作成 においては、各鉱物・岩石の有する短波長域及び熱赤外域の特徴的なスペクトルパターン を利用した識別・同定が不可欠であり、そのため適切な波長帯及びバンドを有するセンサ の利用が必要とされる。一方、石油資源開発分野においては、衛星データの利用は新規探 鉱地域の概査・精査における地質構造把握や地震探鉱の支援となるインフラ情報整備に活 用されてきた。特に、詳細な地質図及び地質構造図の作成においては、非鉄金属分野と同 様に鉱物・岩石の識別・同定が不可欠であり、そのため適切な波長帯及びバンドを有する センサの利用が必要とされる。また、近年は、資源探査による環境影響の評価及び生産終 了後の環境監視においても、衛星データの利用が広がってきている。資源・エネルギー分 野における観測対象地域は、海外が大部分であり国内ニーズは極めて少ない。国内におい ては、電力会社による発電所立地環境調査、施設管理、温排水管理を始めとする環境影響 評価におけるニーズはあるが、積極的な衛星データの利用は現状では行われていない。こ の理由の一つとして、観測頻度、空間分解能が十分でないことが挙げられる。

(2)資源・エネルギー分野に関わる課題例

近年、我が国の資源・エネルギー供給に影響を及ぼす事象・事故が多く発生している。

(18)

a.サハリン 2 による環境への影響

サハリン 2 は、サハリン州北東部沿岸に存在する石油及び天然ガス鉱区であり、英蘭シ ェルが 55%、三井物産 25%、三菱商事 20%を出資する国際プロジェクトとして 1994 年よ り事業が開始された。しかし、昨年末にロシア天然資源省が環境対策不備を理由に、事業 主体のサハリンエナジー社に出していた調査事業への許可承認を取り消す事態となった。

その後、環境破壊を批判してきたロシア政府が、ロシア企業による経営権取得を機に態度 を一転し、事業推進する方向で日欧企業との協力を確認した。しかしながら、本事業によ る環境影響に対する懸念は環境 NGO として根強く残っており、今後も同事業の実施におい て影響を及ぼすことが予想される。

同事業にて想定される主な環境影響を、以下に示す。

¾

想定される環境汚染:

—

陸上パイプラインの建設による河川への土砂流出や水質汚濁

—

パイプライン敷設による山岳地帯の地すべり

—

オオワシなどの絶滅危惧種を含む生態系への影響

—

しゅんせつ工事による海洋汚染

—

油流出事故

b.東シナ海ガス田問題

東シナ海ガス田問題は、東シナ海での日本と中国のガス田開発に関わる問題である。問 題となっている海域には中国側の調査で春暁、断橋、天外天、平湖、冷泉、龍井の 6 つの ガス田が確認されているが、春暁、断橋においてはその埋蔵地域が日中中間線の日本側海 域に掛かっているため両国間の問題になっているほか、日本政府は天外天、龍井について も資源が中間線を越えて広がっている可能性を指摘している。中国側は既に設備建設を実 施し試掘を始めており、春暁ガス田については、まもなく生産開始であるとされる。これ まで、日中政府の話し合いが続けられているが、中国の海洋調査船が事前通報せずに活動 するなど、両国の対立が深まっている。

c.マラッカ海峡など東南アジアでの海賊被害

昨年に世界で起きた海賊事件は 276 件あり、うち 122 件が東南アジアで発生したもので ある。特にマラッカ海峡は海賊のメッカであり、我が国の船舶の被害も多く報告されてい る。マラッカ海峡は、マレー半島とスマトラ島(インドネシア)を隔てる海峡であり、 南

(19)

東端で接続しているシンガポール海峡と併せて太平洋とインド洋を結ぶ主要航路の一つと なっている。海峡の全長は約 900km、幅は約 70km~250km、平均深さは約 25m であり岩礁や 浅瀬が多い。このため大型船舶の可航幅が数 km の場所もある。このことが、海賊が襲撃し やすい環境を生み出していると考えられる。

現在、海上保安庁の巡視船が、現地政府との協力により海賊哨戒にあたっているほか、

今年初めには「海賊対策室」を同庁に新設(室員 5 名)し、海賊への警戒と対策を強化して いる。

d.日本タンカーの米軍原潜との衝突

2007 年 1 月 9 日、ペルシャ湾のホルムズ海峡付近で米原子力潜水艦(6300 トン)と日本 の大型タンカー(約 30 万重量トン)が衝突した。事故の原因は明確にされていないが、潜 水艦の浮上に伴う事故と見られている。事故直後、米原潜が潜水艦であることを名乗った 以外は交信での照会を拒否したことから、航海の安全管理の面からも対応が危惧された。

なお、本事故は両船ともに接触による直接被害のみであったが、最悪時は油流失・原子力 事故も想定された。

e.パイプライン爆発事故

2005 年 12 月 26 日、ナイジェリアのラゴスにてパイプラインが爆発し死者 300 人近くの 大規模な事故が発生した。この爆発は、地元住民らがパイプラインの一部を壊して穴を開 け石油を盗んでいる最中の事故とされており、付近の住宅も巻き込み火災が発生した。ナ イジェリアでは、過去(1998 年 10 月)にもパイプライン爆発事故が発生しており、死者数 597 名、負傷者も数百名の災害となっている。他国のパイプラインにおいても、石油略奪の ほか設備の老朽化等による石油漏れが指摘されており、油流失・爆発の危険が指摘される。

(3)今後の方向性

エネルギー、鉱物資源の大部分を海外に依存しているわが国にとって、エネルギー及び鉱 物資源の安定確保は最重要課題のひとつである。今日、エネルギー・資源に関わる議論を 行う場合には、エネルギー・資源の賦存量だけでなく、社会経済、地勢、環境影響を含め た幅広い事項を勘案して総合的な評価を行うことが必要とされる。このため、衛星データ

(20)

データの利用は国内発電所の温排水管理等の限定的な利用となっているが、各電力事業会 社は毎年、多くのコストをかけて環境保全関連事業を行っていることから、衛星データの 利用によりコストの削減効果が期待出来る場合には、電力事業者による衛星データの利用 が進むと考えられる。また、近年、電力事業者は、海外電力事業へ参入する動きが高まっ ており、海外事業における事業リスク軽減のための方策が必要とされている。

なお、今後の資源・エネルギー分野における衛星観測の視点として、エネルギーセキュリテ ィの視点から考えることが重要となる。伝統的なエネルギーセキュリティの概念において は、守るべき対象は「石油」であるが、将来に向けた衛星データの活用を考えた場合には、

石油代替エネルギー(天然ガス、再生可能エネルギー等)、二次エネルギーである電力、更 にエネルギー開発・利用により影響が及ぶ自然環境・人間活動も対象となる。

エネルギーセキュリティの要素は、次の4要素に分けることが出来る。すなわち、1) 対 象:何を守るのか、2) 脅威:何から守るのか、3) 手段:何で守るのか、及び 4) 誰が何を 守るのか、である。ここで、3)は衛星データを手段とし、4)については我が国を対照とし た場合には、1)と 2)については以下が対象となるであろう。

1) 対象:何を守るのか

—

石油

z

石油探査~精製~輸送~備蓄~利用までの一連のプロセスでのリス ク回避

—

石油代替エネルギー

z

主な対象エネルギー

z

原子力、天然ガス、バイオマスを含む

z

石油と同様に、探査~精製~輸送~備蓄~利用までの一連のプロセス でのリスク回避が対象(バイオマスの場合は、生産地管理も対象:農 業分野の発想)

—

電力(二次エネルギー)

z

輸送~発電所~送電網~利用施設までの一連のプロセスでのリスク 回避

z

原子力、火力(石炭、石油、天然ガス)、水力を含む

z

バイオマス、太陽光、風力、地熱等も対象

—

環境(地域環境・地球環境)

(21)

z

将来の資源・エネルギー利用における環境的な制約への対応

z

環境保全に係る国際的な規制強化

z

地域環境:ヒートアイランド、水質・水温変化、土壌汚染、海洋汚染 等

z

地球環境:酸性雨、温室効果ガス、水循環、土地利用等

2) 脅威:何から守るのか

—

事故・故障等の過失

z

施設事故による直接的被害

z

施設被害に伴う周辺地域~地球規模の間接的被害

—

自然災害

z

関連施設への直接的被害

z

施設被害に伴う周辺地域~地球規模の間接的被害

—

テロ等による外部からの攻撃

z

外部組織・個人の侵入

z

施設破壊による直接的被害

z

施設被害に伴う周辺地域~地球規模の間接的被害(テロの主目的)

—

地政的な脅威

z

エネルギー供給・輸送関連地域における紛争の勃発

z

輸送路における海賊・盗難等の発生

—

長期的なエネルギー利用による影響

z

長期にわたるエネルギー利用・施設運用による周辺環境の劣化

z

地球規模の環境変動

(4)マヌーバビリティ向上に対するニーズ

鉱物資源探査での利用は、一般には同一性能センサの場合は 1 回の計測でよいため、マヌー バビリティ向上へのニーズは高くない。一方で、温排水管理を始めとする環境影響評価におい ては、高頻度観測(毎日~数日)、異なる時間による観測が求められる。また、発電所等の施設 管理においても、山間部の水力発電所、送電設備等のアクセスが困難な施設、高度な安全性が

(22)

また、電力関係者へのヒアリング結果に基づく、マヌーバビリティ向上に対するニーズを以 下に整理する。

¾

定常モニタリングに関するニーズ

—

発電施設自体のモニタリング

z

ダムの積雪状況の監視及び水力発電所の揚水の濁度監視に関しての ニーズあり

z

ダムの積雪状況の監視は、現在、晴天時にヘリコプターにより実施し ており 1,500 万円/月程度かかっている

z

濁度計測については、バイパスの経路を設置して実施することで既に 対応している発電所も多い

z

送電設備(送電線、鉄塔)のモニタリング、変電所のモニタリング

z

積雪量、雪中塩分濃度、送電線の切断、接近樹木の調査、送電線の温

度等の把握についてのニーズあり

—

周辺環境のモニタリング

z

前述の周辺環境影響評価や温排水などのモニタリングについてのニ ーズあり

z

温排水のモニタリングは最大で 8km×2km 程度の範囲

z

現在は船による観測等でモニタリングしているが事故やサメ等の問 題がある

z

環境アセス等ではすぐに利用できる状況ではない(指針・法規制の問 題)

¾

突発事態のモニタリングに関するニーズ

地震等の災害への対応は大きなニーズがある(被害早期把握など)。

海外の事象の観測では、CDM事業の進行状況の確認等に関するニーズはある。また、地図の 整備されていない途上国で、地図として衛星データを利用するニーズはある。

国としてのエネルギーセキュリティという点では、米国、中国の状況等をモニタリングでき ることは良いと思われる。

電力事業者にとってのニーズとしては想定しにくい。

海外での事故等の情報を直接、画像として入手したとしても、調達先の判断材料として利用 することは想定しにくい。

(23)

* CDM;クリーン開発メカニズム

(5)マヌーバビリティ向上により期待される観測対象

以下では、国内施設を対象として、マヌーバビリティの向上により期待できる観測対象の 事例として、環境影響評価と施設管理に関して整理を行う。

a.環境影響評価

発電所に関するアセスメントについては、一般ルールについては環境影響評価法において 規定し、発電所固有の手続きについては電気事業法に規定している。環境影響評価法におけ るアセスメントの対象事業は、発電所を含む 13 事業である。そのうち規模が大きいものを 第一種事業、これに準ずる大きさの手続きを行うか否かを個別に判断する第二種事業を定め ている。また、地方公共団体において独自の環境アセスメント制度が存在しており、法の対 象外の事業(廃棄物処理施設等)について環境アセスメントの義務付けもされている。

表 1.2.3-1 に、発電所を対象とした環境影響評価の評価項目を示す。また、以下に衛星デ ータによる貢献が期待される評価項目の抽出結果を示す。

¾

水温

—

水温の水平及び鉛直分布調査の調査期間及び時期は原則1年間とし、季節 毎に1回行う。(施設運用時は定常的な監視)

¾

水の汚れ・富栄養化

—

原則1年間とし季節毎に1回行う。(施設運用時は定常的な監視)

¾

動植物・生態系

—

地形改変及び樹木の伐採等の有無

—

発電所新設及びリプレース、あるいは地形改変等にかかわらず、事業者と して地域の自然環境の状況を把握することが、陸生動植物、生態系を評価 する上で重要

¾

廃棄物

—

発生する廃棄物の監視

(24)

表 1.2.3-1 発電所を対象とした環境影響評価項目

太枠:衛星データの利用が期待される対象

b.施設管理

我が国には、石油・天然ガス備蓄基地、発電所、変電所から送電網まで多岐にわたるエ ネルギー関連施設が設置されている。これらの設備は、電力安定供給、安全性確保のため の様々な方策が採られており、我が国のエネルギー安定供給を実現している。しかしなが ら、これらの設備の安定した運用のためには、定期的な点検・モニタリング結果に基づく 適正な管理が不可欠である。また、人災・天災を含む突発的な災害、テロ行為等による攻 撃に対しては絶えず備えが必要であり、定常監視のためのツールとしての観測衛星への潜 在的な需要はあると考えられる。

以下では、我が国にあるエネルギー関連設備のうち、原子力発電所と備蓄基地を事例と して、観測ニーズの特徴をとりまとめる。

(25)

ア.原子力発電所

我が国の原子力発電所は合計 52 基(出力 4,574.2 万 kW)であり、その多くは太平洋又 は日本海に面した沿岸地域に集中している(参照:図 1.2.3-1)。原子力発電所の環境 影響評価においては、a)に示した環境影響評価法に基づくモニタリング項目のほか、独 自のモニタリング項目が指定されている。ただし、これらの観測項目は、施設及び周辺 環境における「放射線・放射能測定」に関わる事項であり、直接的には観測対象とはな らない。具体的な放射線・放射能測定の対象は、a)空間γ線量率、b)大気中放射性物 質濃度、c)飲料水、葉菜、原乳雨水、土壌、植物、農作物、源水(河川、浄水場)魚介 類(河川又は海洋に放出がある場合)である。なお、放射能による直接・間接的な影響 による施設・周辺環境の変化が捉えられる場合は有効となる可能性もある。

(26)

イ. 備蓄基地

我が国の石油備蓄は、民間備蓄と国家備蓄の両方式で石油備蓄が行われている。前者は、

民間企業が石油流通の施設に在庫を持つ方法で、原油と石油製品を石油タンクなどに備蓄 している。後者は、国が備蓄基地を建設し原油の形で封印保管するもので、経済産業大臣 の指示のあるときのみ出し入れを行う。2006 年 11 月現在の備蓄量は民間が国内消費量の 85 日分、国が 92 日分である。一方、LP ガスの民間備蓄については、約 56 日分(2005 年 2 月末現在)を備蓄しているが、国家備蓄については 2010 年度に 150 万トンを達成すること を目標として、全国 5 ヶ所で国家備蓄基地の建設が進められている。

これら備蓄基地の大部分は輸送との関係から沿岸域に位置しており、原子力発電所と同 様の傾向となっている。

図 1.2.3-2 に石油と LP ガスの国家備蓄基地の位置図を示す。

図 1.2.3-2 国家備蓄石油の備蓄地点(左)と LP ガス国家備蓄計画(右)

(6)ニーズから見た利用シナリオの検討

資源・エネルギー分野では、従来から衛星データが利用されている探鉱・資源探査において はマヌーバビリティ向上に対するニーズが低い。しかしながら、資源探査、エネルギー利用に

(27)

伴う環境影響評価、関連設備管理においては、適切なタイミングにてユーザニーズを満たす品 質のデータを提供することが可能であれば、事業の効率化を促進するとともに衛星データの利 用拡大にも繋がるであろう。

以下では、国内のエネルギー関連施設を優先的な監視対象とした場合における、HiMEOS の観測シナリオの検討を行った。なお、ここでエネルギー関連設備とは、発電所、資源備蓄設 備、送電網、その他のエネルギー・電力関連設備である。また、海外拠点・設備に関しては、

突発事象の発生時に観測可能な体制を想定した。

本前提に基づく、観測シナリオの概念を図 1.2.3-3 に示す。

図 1.2.3-3 HiMEOS の観測シナリオ概念 1.2.4 環境分野

(1)データ利用の現状

環境分野では、主に研究者主導で多くの衛星データ利用の研究開発及び実利用が推進さ れてきている。研究テーマとしては、オゾン層破壊、地球温暖化、酸性雨、大気汚染、海 洋汚染、熱帯雨林減少、砂漠化、生物多様性減少など多岐にわたる。これらのテーマは全 て地球規模の課題であり、広域観測が可能な衛星データの果たせる役割は大きい。具体的 な衛星による観測項目としては、陸域観測では、土地利用・土地被覆、地表面温度、植生 環境、大気観測ではオゾン・エアロゾル等の大気成分、海洋観測では、海面温度、海面高 度、海色等である。

重要観測対象を 高頻度観測

新たな 重要観測対象

・高頻度観測

・低高度精密観測

高度変更 軌道変更 軌道 マヌーバ

定常時 突発 緊急時

姿勢マヌーバ / 高分解能センサの活用による観測領域確保 重要観測対象を

高頻度観測

新たな 重要観測対象

・高頻度観測

・低高度精密観測

高度変更 軌道変更 軌道 マヌーバ

定常時 突発 緊急時

姿勢マヌーバ / 高分解能センサの活用による観測領域確保

(28)

部で事業化されている。産業廃棄物は年間 40 万トンにも達すると推計されており、今後も ニーズは高いことが予想される。環境アセスメントでは、研究段階のものが多いが、工場 等からの温排水モニタリング、土壌汚染アセスメント、ヒートアイランドの評価等の分野 で利用検討が進んでいる。

温暖化関連等の地球規模の変動監視においては、NOAA/AVHRR 等の低空間分解能衛星の利 用が主流である。一方、環境アセスメント等の地域レベルの変動の監視では、Landsat/TM、

SPOT/HRV 等の中空間分解能のデータが主に利用されている。廃棄物監視等の都市レベルの 観測においては、米国商用衛星の 1m クラスの高空間分解能衛星の利用も行われている。こ のように必要となる精度に応じた衛星データのすみわけが行われている。

なお、本分野の特徴として、特に地球規模の環境変動の把握には長期的なモニタリング が不可欠であることから、同一衛星・センサによる継続的なデータ取得が必要となること が挙げられる。

(2)今後の方向性

環境分野における今後の衛星データの利用方法としては、データ利用の現状と同様に温 暖化関連、廃棄物監視、環境アセスメントの 3 つが主流となると予想される。

温暖化関連では、大きくは京都議定書対応等による国内外の森林モニタリングのニーズ の増加への対応があるが、最近では、森林以外にも湿地・農地等へ観測対象が拡大してい る。廃棄物監視では、現在一部事業化されている廃棄物監視での利用での監視網の強化に 資する情報提供があるが、それ以外にも我が国で確立した廃棄物管理手法の海外(特にア ジア地域)展開も想定される。環境アセスメント的な利用方法としては、定常的な監視シ ステム・手法における衛星データの適用拡大が想定される。

(3)マヌーバビリティ向上に対するニーズ

温暖化関連等の自然環境モニタリングでは、適切なタイミングにおけるデータ取得が必 要な場面もあるものの、基本的には長期間にわたる継続観測の要求が最も高い。一方、廃 棄物監視、環境アセスメントにおいては、可能な限りリアルタイム観測が求められ、特に 廃棄物監視については、対象地のターゲット観測が必要であり、マヌーバビリティ向上に 対するニーズは高いといえる。

(29)

1.2.5 農業分野

(1)データ利用の現状

農業分野における衛星データ利用の歴史は長く、公的研究機関において国内外の耕作地 を対象とした研究が数多く実施されてきている。最近では、比較的農地面積の大きい北海 道を中心として農作物(米、小麦等)のモニタリング事業が活発化している。一方、欧米 では、我が国と比して広大な農地があることから、衛星データの実利用例は多く、精密農 業サービス、農業統計情報整備などでの利用例が存在する。

農業分野における衛星データの利用方法としては、品質(米の旨み等)向上、生産性向 上、収量予測等に基づく作付け・出荷時期調整等の付加価値向上のための情報の提供、欧 米での実利用例がある農業統計整備への支援情報の提供などがある。

(2)今後の方向性

農業分野の今後の方向性としては、これまでの利用方法に加え、既存の手法の海外展開 及びサトウキビ、トウモロコシ、油脂植物といった、バイオマス燃料として利用可能な農 産物の資源としての評価が挙げられる。特に後者のバイオマス燃料の資源評価技術は、2030 年を見据えたバイオマス・ニッポン総合戦略として、バイオマス由来液体燃料の本格導入、

アジア諸国におけるバイオマスエネルギー導入への積極的関与及びこれら諸国への関連技 術の移転の積極的推進等が閣議決定されていることなどから、今後重要性が高まると予想 される。

(3)マヌーバビリティ向上に対するニーズ

農業分野において、衛星データに対してもっとも重視される事項としては、適切なタイ ミングにおけるデータ取得となる。例えば、稲作の場合には、夏季 4 ヶ月間に少なくとも 二回データを取得する必要がある。また、小麦の場合は、収穫時期の 2 週間以内のデータ 取得が必要とされる。マヌーバビリティを有する衛星はこれらのニーズに応えられる可能 性を有している。

1.2.6 漁業分野

(1)データ利用の現状

(30)

主に利用されている衛星データは、MODIS あるいは AVHRR による海面温度情報及び SeaWiFS 等による海色情報であり、中空間分解能及び高空間分解能データの利用は限定的で ある。この理由としては、詳細さよりも頻度が優先されること、空間分解能だけでなく水 温、海色といったスペクトル情報も必要としていることなどが挙げられる。

(2)今後の方向性

今後の方向性としては、引き続き漁場探知に資する情報の迅速な提供のほかに、漁場・

沿岸の汚染時における被害予測、早急な被害評価といった被害軽減のための利用も想定さ れる。

(3)マヌーバビリティ向上に対するニーズ

現在、(社)漁業情報サービスセンターや岩手県の水産技術センターなどでサービス化 されているものでは、毎日衛星データを取得・処理し、可能な限り迅速にデータ/情報を 提供している形態となっている。漁業は基本的に毎日実施されるものであることから、本 サービスなどで衛星データ利用において最も重視される事項としては、漁場に着く前まで の迅速な最新情報提供となる。本利用においては、マヌーバビリティ向上に対するニーズ はそれほど高くない。一方、漁場・沿岸汚染等の突発的な事態への対応に対しては、マヌ ーバビリティ向上に対するニーズは高いといえる。

1.2.7 林業分野

(1)データ利用の現状

林業分野では、京都議定書へ対応した森林吸収源対策、地球規模での環境保全、違法伐 採対策などが求められている。

衛星データの林業分野での利用は特に海外植林事業において一般的となりつつある。具 体的には、海外植林事業における適地選定及び管理に関わる支援情報の提供であり、国内 では航空写真の利用が主流ではあるものの、海外では主として Landsat/TM、SPOT によるデ ータ整備が進められている。その他では、多面的機能保全における土地被覆情報、森林認 証・ラベリング制度におけるモニタリング情報、違法伐採・輸入材の監視への支援情報等 での利用もある。

(2)今後の方向性

今後の方向性としては、現状の利用方法である、植林事業への支援情報(植林地の選定・

(31)

管理等)の提供、土地被覆情報、モニタリング情報、違法伐採・輸入材監視等に加え、農 業分野でも述べた森林のバイオマス燃料としての資源評価としての利用などが想定される。

(3)マヌーバビリティ向上に対するニーズ

本分野では環境分野と同様に、長期間かつ継続的な観測が望まれているため、マヌーバ ビリティ向上に対するニーズは高くない。

1.2.8 都市環境分野

(1)データ利用の現状

都市環境分野では、土地被覆分類図、緑比率分布図及び熱分布図の作成において従来か らリモートセンシングデータが用いられている。都市環境の評価においては、マクロ~ミ クロまで様々なスケールにおける視点が求められる。しかし、数十メートル程度の空間分 解能の衛星データでは、都市全体をマクロに評価することしか出来ないため、多くの研究 においては、高空間分解能の情報が取得可能な航空機データが主に用いられてきた。しか し、近年の高空間分解能衛星センサの運用により、高精度な土地被覆分類図、緑比率分布 図の作成が衛星データによっても可能となった。

一方、都市の熱環境解析は、我が国において大きな社会問題となっているヒートアイラ ンド現象の評価において不可欠であるが、衛星搭載型の熱赤外センサデータの空間分解能 は 60m~90m 程度であり、未だに空間分解能が十分ではない。また、航空機データは取得機 会・条件が限られることなどから、定常的な利用データとして用いることは難しく、シミ ュレーションモデルの検証用としての利用に限られているのが実情である。

(2)今後の方向性

我が国のヒートアイランド現象は、東京や大阪などの大都市圏だけでなく、仙台や広島 といった政令指令都市においても報告されており、更に小規模の都市においても起きてい ると推測される。また、経済発展が著しいアジア地域においても、ヒートアイランド現象 が報告されており、国際的な問題となっている。このように、各都市にて顕在化している ヒートアイランド現象を把握し対策を考える上では、面的な観測を繰り返し行うことが可 能なリモートセンシング技術が果たせる役割は大きい。しかしながら、現時点では、特に

(32)

星データ利用は急速に進むと予想される。

以下に、都市環境分野において利用されるプロダクトの作成に必要となるデータの要求 条件を示す。

表 1.2.8-1 都市環境分野におけるデータ要求条件

プロダクト 必要な精度 取得・更新頻度

土地被覆分類図 1m~数十 cm オーダの範囲に最適値があ ると考えられる。

(空間分解能の低下に伴い、ミクセルと して観測される画素比率は高くなるが、

画像値の分散は小さくなる。)

年一回程度

もしくは季節毎(TBD)

熱分布図 原則として、土地被覆分類図と同程度の 空間分解能が必要となる。しかし、高頻 度観測が可能であれば、5~10m 程度の 空間分解能でも革新的な利用が可能と なる。

都市においては壁面の温度分布が重要 であり、斜め観測、マルチアングル観測 に対するニーズも高い。

毎日観測

一日内の複数回観測

(昼、日没後からの複数 回観測)

出典:日本リモートセンシング学会「ヒートアイランド」ワークショップ資料参考文献 1-4)

ヒアリング結果より

(3)マヌーバビリティ向上に対するニーズ

本分野では、特に熱環境解析を目的として、高頻度の熱赤外データ取得に対するニーズが高 い。特に、これまでにない高空間分解能(5m~10m)の熱赤外センサを搭載し、高度なマヌーバ ビリティによる同一地点のマルチアングル観測を実現することにより、本分野における衛星デ ータの利用が飛躍的に増加することが期待される。また、異なる時間帯の観測に関してもニー ズが高いことから、太陽非同期軌道の採用も有効である。なお、可視・近赤外センサについて も、高分解能の熱赤外センサとデータの同時取得を行うことにより、緑比状況、土地被覆状況 を考慮した高精度な都市環境の解析に有効なデータとなる。

(33)

1.2.9 その他分野

ここでは、その他の分野として、IT 分野とサービス業の 2 つを取り上げ、マヌーバビリティ の向上に対するニーズについて分析する。

(1)データ利用の現状

IT 分野での衛星データの利用では、Google Earth に代表されるアースビューア(全球規 模の空間情報サービス)が急激に普及・発展している。Google Earth 以外にも World Wind, Virtual Earth, ArcGIS Explorer などの複数のサービスが乱立しており、競争の時代へ突 入したといえる。

一方、サービス業では、報道、観光、不動産等のサービス産業における利用が促進され ている。例えば、事件・事故現場の衛星データの報道での利用や、不動産における物件情 報紹介のベースマップとしての衛星データの利用などがある。

IT 分野、サービス業での利用のいずれも写真的な利用が主であり、多波長を有するデー タは特に必要とされていない。

(2)今後の方向性

今後は、衛星データ利用のパーソナル化によるユーザ要求の多様化に、各サービスがい かに応えていくかが更なる発展の鍵となる。例えば、IT 分野のアースビューアでは、乱立 するサービスの中でユーザを取り込むために、他との差別化を図った高付加価値サービス の展開が予想される。また、報道での、災害場所の最新画像の表示や観光での、観光地・

行楽地の最新情報の 1 つとしての衛星データの利用なども想定される。すなわち、各個人 レベルのユーザ要求に応じた衛星データ取得・表示等が実現されていくことが予想される。

(3)マヌーバビリティ向上に対するニーズ

ユーザ要求の多様化に対して、観測自由度の高い、高マヌーバビリティ衛星への期待は 大きい。しかし、個人レベルでのユーザ要求の多様化に対応することを想定することは、

現時点ではあまり現実的でないと思われる。

(34)

1.2.10 ミッション要求のまとめ

以下では、前項までに整理した各分野におけるニーズ調査の結果より、本ミッションに対す る要求を整理する。

(1)マヌーバビリティ向上の効果

ユーザの立場からみたマヌーバビリティ向上の効果は、以下に分類することが出来る。

表 1.2.10-1 マヌーバビリティ向上の効果

効果 達成方法

観測頻度の向上 ポインティングとの組み合わせによる同一地点観 測の高頻度化

時期による観測対象地域の変更 FORMOSAT-2 型軌道(回帰日数 1 日)における全球 観測の実現

緊急時等における観測の即時性 特定地点の観測に適した軌道設定 直下視観測の増加(ポインティングを

用いないターゲット観測)

画像の倒れこみの軽減、観測条件の均一性確保

空間分解能の可変化

(光学センサのみ)

軌道高度の変更による高分解能化・広域観測化

周回軌道での動画観測 アジリティ確保による一定時間において同一地点 を連続観測する姿勢制御

(2)センサ機能・性能

必要とされるセンサ機能・性能は、同一の利用分野内においても対象とするターゲット や利用目的に応じて様々である。このため、全ての利用目的に対して必要十分なセンサ機 能・性能を設定することは難しい。このため、本ミッションでは、既存・計画中の観測衛 星の活用により目的が達成可能な利用分野は主となる観測対象とはせず、高度なマヌーバ ビリティを実現することにより初めて可能となる利用形態に重点を置き、搭載センサの機 能・性能を設定することが望ましい。

(35)

(3)各利用分野における利用可能性

以下に、利用分野ごとのマヌーバビリティに対する要求を整理する。

表 1.2.10-2 マヌーバビリティに対する要求

利用分野 マヌーバビリティ向上への期待 想定センサ 災害監視・安全 特に災害・事故発生時等に他の衛星と連携し

て観測ターゲットを絞り込み、集中的に監視 を行う運用

VNIR:高分解能 TIR:高分解能 資源探査・

エネルギー

資源探査を目的としたニーズは低いが、環境 影響評価と施設管理に関しては有望

VNIR:高分解能 TIR:高分解能 ハイパースペクトル 環境 基本的には長期間にわたる継続観測の要求

が最も高い。一方、廃棄物監視、環境アセス メントにおいては、可能な限りリアルタイム 観測が求められる

VNIR:高~中分解能 TIR:高~中分解能 ハイパースペクトル 農業 農作物の生育に合わせた適切なタイミング

での観測ニーズ(例えば、稲作の場合には、

夏季 4 ヶ月間に少なくとも二回データを取 得する必要)。

VNIR:高~中分解能 ハイパースペクトル

漁業 漁場・沿岸汚染等の突発的な事態への対応 VNIR:高~中分解能 TIR:高~中分解能 林業 林野火災等の災害を除き、長期間かつ継続的

な観測が望まれているため、マヌーバビリテ ィ向上に対するニーズは高くない。

TIR:高~中分解能

(林野火災時)

都市環境 特に熱環境解析を目的として、高頻度の熱赤 外データ取得に対して高いニーズ

高精度な緑比状況、土地被覆状況の把握によ り都市環境の解析に有効なデータとなる

VNIR:高分解能 TIR:高分解能

その他 ユーザ要求の多様化に対して、観測自由度の 高い、高度なマヌーバビリティ衛星へ期待

VNIR:高分解能

VNIR:可視近赤外センサ、 TIR:遠赤外センサ

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