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例会要旨

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Academic year: 2021

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例会要旨

2012年9月27日 於 筑波大学筑波キャンバス

長崎市における斜面地居住の現状と課題

-水の浦地区を事例に-

福島義和(専修大学)

次の三つの数字に注目して欲しい。25%,43%,88%。最初の25%は,20年後の2032年における日本の 空き家率である。つまり,4軒に1軒が空き家である。次の43%は,長崎市水の浦地区の高齢化率である。

最後の88%は,今から30年前に起こった「長崎大水害」(1982年7月23日)の犠牲者(死者・行方不明者)

のなかで,郊外の崖崩れ,土石流による犠牲者(262名)の割合である。毎年日本のどこかで繰り返される 土石流災害。想定外ではすまされない。

さて本題に入る。長崎市の既成市街地の約70%は斜面地(標高20

m

以上,勾配5度以上)であり,研究 対象の水の浦地区はその代表的な斜面市街地の一つである。水の浦地区は,多数の高齢者が災害の危険性 の高い密集木造住宅に長期に居住しており,購買や通院にもかなりの困難を伴っている。住み続けたい意 思が強いが,現実には空き家(空き地)の増加が目立ち,日本社会の近き未来を確実に映し出している。国 土交通省も,危険な密集市街地5,745

ha

を公表しており,長崎市も262haが該当している。

水の浦地区の課題は,1.生活道路や公園などの生活基盤施設の整備,2.密集老朽木造住宅の建て替え,

3.若年層の定住促進の3点である。実際にフィールドサーベイをすると,空き地・空き家,さらには空き 地に野菜を栽培している光景,また高度経済成長期に斜面地に数多く建設された密集老朽木造住宅,駐車 を完全に不可能にしている玄関前の段差(昇りや降り)などが目立つ。当然宅配便や郵便物の配達,ゴミ だしは,大変困難な作業になり,高齢者の外出機会(意欲)も減少傾向である。

水の浦地区の連合自治会長の北田氏によると,「20数年の想いが,やっと計画道路(新設,C路線)の建 設として長崎市によって昨年から着工されたことはうれしい。今後は,この計画道路に市民の生活道路を つなげ,住まいと生活道路の一体的な整備・改善が緊急である」と。他の2本の計画道路(一つは拡幅,一 つは新設)への着手は,まだ,時間を要するようだ。その理由は,ヒヤリングによれば,水の浦地区の斜面 地において上部の斜面地居住者と,三菱造船所前の国道202号線(俗称三菱道路)近くの斜面地下部の居住 者では,道路建設への要求意識に大きなギャップがある。

最後にもう一つ心配なのは,何度も北田氏が印象的に語られていたのだが,長崎市に期待している計画 道路や生活道路の建設がたとえうまく進展しても,はたして若年層の定住化に結びつくかどうかの点であ る。つまり,若年層の雇用問題が斜面地,水の浦地区には根強く残っているのである。

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2012年12月6日 於 筑波大学筑波キャンパス

農業・農村地理学の調査・研究手順

-富山県黒部川扇状地からの発想-

田林 明(筑波大学)

この報告では,農業・農村の地域調査の方法とデータの収集の仕方について,富山県黒部川扇状地にお いて1970年代に実施した報告者の農村変貌の調査を中心に検討した。事例とした入善町浦山新地区では,

1964年から1970年にかけて圃場整備事業が実施され,農村は大きく変貌した。それを的確に捉えるため に,主として農村景観と就業構造に着目した。土地区画の整備・拡大,農業用水路や農道の改善,耕地の 集団化が進み,それによって農業機械が導入され水稲作は省力化された。しかし,チューリップ球根栽培 や酪農を中止する農家が多く,農業部門は水稲作に限定されるようになった。そして,世帯主やその妻ま で,扇状地内外の企業や役所・団体に恒常的に勤務するようになった。地域調査の際に最も重要なことは,

地域の現象の基本的方向性についての的確なイメージをつかむことであり,そのためにはキーパーソンに 対する時間をかけた丁寧な聞き取りが不可欠である。キーパーソンを見つけること,その人から有効な情 報を引き出すことが,地域調査成功の鍵となる。さらに,得られた地域イメージを実証するために,聞き 取りやアンケート調査,観察をすることと,既存の地図や統計,資料,文献を集めることが必要となる。

この1970年代の黒部川扇状地の研究が,その後の報告者の研究にいかに結びつき,展開していったかを 整理した。すなわち,1980年代以降の黒部川扇状地農村のさらなる変貌の追跡や,日本の農村空間区分の 研究,水稲作やチューリップ球根栽培,自立経営農家の研究,黒部川扇状地や日本の地域構造の検討,持続 的農村や農業の担い手の検討,そして最近の農村空間の商品化や日本の地誌の研究につながっていった。

1つの地域を丁寧に継続的に見ること,あるいはそのようなフィールドをもっていることは,農業・農村 地理学を長年にわたって続け,多面的に展開していくために重要なことである。

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