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意思決定からみたギャンブル行動 上市秀雄

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Academic year: 2021

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「心理学ワールド」第41号,pp22-23,2008掲載

「小特集  ギャンブルの心理学」 

意思決定からみたギャンブル行動 

上市秀雄 

ギャンブルの意思決定プロセス 

  世の中にはギャンブルをする人もいれば,宝く じも買わない人がいる。このような違いを規定す る要因は,パーソナリティのような比較的安定し た傾向性(例: Five Factor Modelなど),認知・

感情要因(リスク認知,ベネフィット認知,能力 評価,後悔予期など),結果に対する金銭的・心 理的評価(損益額,楽しさ,後悔など)に大きく 分けられる。そしてこれら要因間の関連性は循環 している(図1)。つまりパーソナリティが認知・

感情要因に影響し,ギャンブル行動を規定する。

そして得られた結果に対する金銭的・心理的評価 が,再び認知・感情要因にフィードバックし,次 回以降の行動に影響していくと考えられる(上市, 2003)。ギャンブルには宝くじのように運だけで 決まるものもあるが,ここではパチンコやパチス ロのように知識やスキルを必要とするギャンブ ルについて述べる。

ハイリスクのギャンブルをなぜしてしまうのか    ギャンブルはベネフィットを得るための行動 であるので,リスクよりも,ベネフィットの大き さの影響を受けやすい。ビデオゲームを用いて繰 り返しパチンコをさせた実験では,ベネフィット 認知はリスク‐ベネフィットが異なる機種の選 択行動に最初から影響を及ぼしたのに対し,リス ク認知が選択行動に影響したのは3回目からで あった(Ueichi & Kusumi, 1999)。つまり人は実 際に何度か経験しないと,リスクが大きいからと いって,ハイリスクを避けるとはかぎらないので ある。そのためベネフィットを重視しハイリスク のギャンブルをした人は,リスクの大きさが選択 行動に影響を及ぼしはじめる前に,リスクに慣れ,

感受性(恐怖感,抵抗感など)も下がる。さらに

ハイリスクのギャンブルはリターンも大きくな るので,ベネフィットの大きさがより強く強調さ れ,ハイリスクなギャンブルを続けると考えられ る。

  さらに次回の選択行動は,結果に対する評価か らの影響をうける。勝敗にかかわらず,ギャンブ ル後の満足度(楽しかったなど)が高い人ほど,

自分の能力を以前よりも高く評価し,自分の判断

(機種選択や打ち続けるかどうかの判断など)が 正しかったと思う人は,次回ギャンブルをすると きに楽しさやお金を得ることを,より強く求める。

そのためローリスクよりも,ハイリスクのギャン ブルを選ぶ傾向がより高くなる(図1)。

  このようにして人々は,徐々にあるいは急激に,

ハイリスクのギャンブルを好むようになるもの と考えられる。

負けているのになぜ止めないのか 

  あるパチンコ台で打ち続け大きく負けていて,

「もう止めたほうがよいのではないか」と思って いながら止められず,さらに負債を大きくするこ とがある。これは第一に,サンクコスト(ある案 に投資した後で他の案に変更したとき,その投資 資金のうち回収できなくなってしまう部分のこ と)を避けたいためと考えられる。止めてしまう とそこで損失が確定してしまうし,自分の失敗

(止め時の判断ミス,負けた悔しさなど)を認め なくてはならなくなる。第二に,人は行動をして 失敗したときよりも,行動せずにあるいは途中で 止めてしまって失敗したときの方が後悔を強く 感じる。そしてその後悔を最小化する行動を選択 する傾向があるためである(上市・楠見, 2004)。

打ち続けて結局大負けしてしまった場合に感じ る後悔よりも,ある台を打ち続けることを止めた

(2)

ら,その後にその台を打った人に大当たりされた ときに感じる「打ち続ければよかった」という後 悔の方が大きく,その後悔を避けようとする。第 三に,人は低い確率で起こる現象を,実際よりも 高く評価する傾向がある。そのため今の負けを取 り戻す可能性を,実際よりも高く評価している可 能性がある。加えてギャンブルをしている人であ れば大負け状態から奇跡的に回復した経験があ る。これらのため,資金を回収するどころか負け がかさむ可能性が高いとわかっていながら,打ち 続けて負債を大きくしまうものと考えられる。

最後に 

  すべての人がハイリスクギャンブルを好むわ けではないし,負けるとわかっていながら打ち続 けるわけではない。自分の行動に対して後悔を感 じている人は,リスクを自分では制御できないと 考えるため,ハイリスクからローリスクへ,そし てギャンブルを避ける行動に変化する可能性も 示唆されている(上市,1999)。ギャンブルは簡 単にローリスクからハイリスクへエスカレート するものであるので,手軽な娯楽としてパチンコ やパチスロを楽しむためには,常に自分の行動を 適切に省みることが必要といえるだろう。

文献 

上市秀雄(2003).個人的リスク志向・回避行動 の個人差を規定する要因の分析,風間書房.

Ueichi, H., & Kusumi, T.(1999).Change of decision-making processes in repeated     risk-taking behavior in a complex dynamic situation,

P oceedings of the 2nd International C nference on Cognitive Science and the 16th Annual Meeting of the Japanese Cognitive Science Society Joint Conference

, 946-949.

r o

上市秀雄・楠見孝(2004).後悔の時間的変化と 対処方法:意思決定スタイルと行動選択との関連 性,心理学研究,74(6),487−495.

Profile--- うえいち  ひでお

筑波大学大学院システム情報工学研究科講師。

1999 年東京工業大学大学院社会理工学研究科博 士課程修了。博士(学術)。2001年東京工業大学 大学院社会理工学研究科助手を経て,03より現職 専門は,意思決定,認知心理学。

主な著書は,「個人的リスク志向・回避行動の個人 差を規定する要因の分析」(風間書房)など。

能力評価 制御可能

状況認知 選択肢認知 外向性

情緒不安定

誠実性 調和性 開放性

パーソナリティ

後悔評価

認知・感情要因

客観的

主観的 結果評価要因

正当性 原因帰属

満足度

結果 ギャンブル

行動 重要度 ベネフィット

リスク認知

行動選択 後悔予期

ギャンブル中 の行動

能力評価 制御可能

状況認知 選択肢認知 外向性

情緒不安定

誠実性 調和性 開放性

パーソナリティ

後悔評価

認知・感情要因

客観的

主観的 結果評価要因

正当性 原因帰属

満足度

結果 ギャンブル

行動 重要度 ベネフィット

リスク認知

行動選択 後悔予期

ギャンブル中 の行動

能力評価 制御可能

状況認知 選択肢認知 外向性

情緒不安定

誠実性 調和性 開放性

パーソナリティ

後悔評価

認知・感情要因

客観的

主観的 結果評価要因

正当性 原因帰属

満足度

結果 ギャンブル

行動 重要度 ベネフィット

リスク認知

行動選択 後悔予期

ギャンブル中 の行動

図1  ギャンブル行動の意思決定プロセス概念図(上市,2003改変)

参照

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