製造業 DX 取組事例集
PwC 2
事例一覧
事例タイトル、企業名 ページ
株式会社今野製作所 「プロセス参照モデル」 3
沖電気工業株式会社 「バーチャル・ワンファクトリ」 6 富士通株式会社 「FTCP (Flexible Technical Computing Platform)」 8
オークマ株式会社 「IT Plaza」 13
トヨタ自動車株式会社 「工場IoT、トヨタIoT」 16 三和工機株式会社 「社内人材育成による設計力強化」 18
株式会社アイデン 「IWS」 21
株式会社IHI 「社内人材のデジタル人材としての育成」 23
株式会社ダイセル 「ダイセル式生産革新」 25
三菱電機株式会社 「e-F@ctory」 28
ヤマハ発動機株式会社 「経営目線のデジタル改革実行」 32 ビジネスエンジニアリング株式会社 「現場データの経営指標化」 34
川崎重工業株式会社 「社内PaaS」 37
オムロン株式会社 「i-BELT」 39
ダイキン工業株式会社 「工場IoTプラットフォーム」 41
※事例内容は各企業への取材に基づき作成(三菱電機株式会社のみ公開情報より作成)
PwC 3
株式会社今野製作所 「プロセス参照モデル」
(図表出典:株式会社今野製作所作成資料)
概要
➢ 株式会社今野製作所の活用した「プロセス参照モデル」は、自社の業務プロセスや、エンジニアリングプロセスにおける社内連 携体制について可視化したものである。複雑化した業務プロセス全体をフロー図化することで不足する人材や改善すべきポイ ントを明確化し、デジタル技術活用における具体的な取り組みにつなげた。
PwC 4
株式会社今野製作所 「プロセス参照モデル」
(図表出典:株式会社今野製作所作成資料)
PwC 5
背景・課題
➢ 事業のスタイルをオーダーメイド型に移行し、高付加価値化へのシフトを検討していたが、社内の各組織において、個別受注 への対応力不足、負荷集中、納期遅れなどが相次いだ。
➢ 事業規模が小さいにも関わらず、多様な生産形態(受注生産、見込生産など)が混在したまま生産していることが明らかにな り、業務プロセスが複雑化していたため、業務の整流化の必要性を感じていた。
取組内容
➢ 業務プロセスの分析ツールを活用し、自社に合ったプロセス整理をおこなって業務を可視化した。➢ 業務プロセスを最適化するため、必要なシステムツールの小規模な開発を行い、業務の改善に活用した。
工夫
➢ 自社に知見がなかったため、外部の専門家に相談し援助を受けた。また、同じような中小企業同士でサークルを作り、システ ムツールの開発に関する情報交換を行うなど、外部と積極的に交流し知見を増やしていった。
➢ 外部の援助を受けつつ自社内の人材の適性を見極めながら進めることで、主体的に改革を行う風土を醸成していった。
成果
➢ ほぼ生産現場の職人と営業だけの力で自社が成り立ってきたことが分かり、事業の高付加価値化に向けて製品設計・生産 設計への注力にシフトするきっかけとなった。
➢ 設計業務と調達業務の間、在庫管理とエンジニアリングと販売管理の間など、部署間に人力でデータを転記するプロセスがあ ることが分かり、必要なデータを自動流用する改善につながった。
➢ 自社の生産形態を含めた整理を行うことで、生産形態の特性に合わせて既存事業の位置づけを変えたり、従来着手できて いなかったビジネスを取り込むことが可能になった。
今後の課題
➢ デジタルツールによって蓄積されたデータについて、自社内の事業展開や製造プロセスの最適化、他社との連携においてどのよ うに活用していくかを検討したい。
➢ 業務プロセスが可視化されたことで、工程設計機能および製品設計機能不足の不足が明らかになったことから、それらを強化 したい。
➢ 製品設計担当者が調達や工程設計まで手掛けていることが分かり、自社にいなかった生産技術者が果たすべき役割が明確 になったことから、人材投資および生産技術を強化したい。
株式会社今野製作所 「プロセス参照モデル」
PwC 6
沖電気工業株式会社 「バーチャル・ワンファクトリー」
概要
➢ 「バーチャル・ワンファクトリー」 は、情報通信本部傘下の本庄工場(埼玉県本庄市)と沼津工場(静岡県沼津市)にお いて推進している、2つの工場を仮想的に1つの工場に融合していく取り組みである。「部門間融合」「生産融合」「試作プロセ ス融合」「IT融合」の4つからなり、これらの施策を進めることで、コスト削減だけでなく外部環境変化への対応が可能になった。
(図表出典:沖電気工業株式会社作成資料)
PwC 7
背景・課題
➢マスカスタマイゼーションへの対応必要性や社会変化による需要減に対する危機感から、工場間の横串連携を検討し始めた。
➢ 各工場で異なる製品を生産しているが、設計部門は各工場に最適化した仕様設計をしており、図面の描き方や技術標準 がそれぞれ異なるなど、共通する部品であっても共通の仕様による生産ができない状態であった。
取組内容
➢ 今まで工場ごとに分かれていた、設計部門から出される図面等などの各種設計情報を共通化した。具体的には、各工場の 生産形態の特徴や製造に対する考え方、知見等を整理・把握し、設計デ-タを各工場で受け取れるようにした。
➢ 以下の4つの点を中心に、工場間の融合を推進した。
• 「部門間融合」:生産、技術、品質の各部門で交流会を実施、効果のある施策の水平展開「良いとこ取り活動」を実 施した。
• 「生産融合」:生産状況を見える化することで、各工場の負荷状況が明らかになり、各工場の得意技能も明確になった。
これにより、生産の繁閑に合わせた工場間での生産応援が可能となった。
• 「試作プロセス融合」:大量生産品に強い工場では、試作生産を協力メーカーに依頼していたが、多品種少量生産に 強い自社工場で試作を行うことで、試作の効率化とスピードアップ、量産工程へのフィードバックも容易となり、製品開発 後の垂直立ち上げが可能になった。
• 「IT融合」:工場間で異なる生産管理システム(ERP)の統合検討を開始した。
工夫
➢ 各生産拠点での、デジタル化専門の生産技術人材は、少ない。この為、プロジェクトごとに各生産拠点から人材を拠出し、自社の研究開発部門と連携し、課題解決に取り組んだ。これにより、全社的なスキルの底上げが図られた。
成果
➢ 2工場の生産高の合計規模を維持しながら効率化を進め、コスト削減だけでなく、2工場間の人材や技術の交流を活発化 した。これにより、技術等の共通化だけでなく、両拠点の強みをさらに生かした生産体制の構築ができた。
➢ 工場間の連携により、多品種少量生産の二―ズの取り込みや人手不足に対応した工場間の負荷分散等、外部環境変化 への対応が、より容易となった。
今後の課題
➢ 社内すべての工場のワンファクトリ化に向けて、更なる設計の共通化・ライブラリーの標準化、工場間の連携の推進を含めた、
モノづくり基盤の強化が、必要と考えている。この活動により、製品の特色に合致した最適な工場で、モノづくりを行うことを目 指している。
➢ エンジニアリングチェーンのデジタル化だけでなく、製品の生産データを蓄積し、生産管理と工程管理を結ぶようなサプライチェー ンのデジタル化や、社外との連携にも取り組みたい。
沖電気工業株式会社 「バーチャル・ワンファクトリー」
PwC
(図表出典:富士通株式会社作成資料)
富士通株式会社 「 ( 開発プロセスでの革新の必要性 )FTCP 」
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PwC
(図表出典:富士通株式会社作成資料)
富士通株式会社「 ( 共通 PF に各種先端ツールを搭載して開発 者に提供 )FTCP 」
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PwC
(図表出典:富士通株式会社作成資料)
概要
➢ 「仮想大部屋」とは、「FTCP」を構成する要素の1つであり、バーチャル空間上で設計部門、製造部門、品質保証部門が一 同に会し、データ共有やデザインレビューを行うことができるシステムである。過去に蓄積された製品データやクレーム情報などの ドキュメントや3D CAD図面などを使用し、すり合わせを行うことで、開発現場にも製造・保守のノウハウが蓄積され、フロント ローディングを実現することが可能となる。
➢ VR, AR技術を使い、製品データを立体視することで、モックアップ試作をしなくても臨場感のあるレビューが可能である。
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富士通株式会社「 FTCP 」 ( 仮想大部屋でリアルタイムノウハウ共有 )
背景・課題
➢ 製品開発における課題として、市場環境変化による製品の多様化およびカスタマイズ化への対応、納期の短縮化への対応、
製品の複雑化・高密度化への対応、技術継承の継続強化があった。
➢ 製造現場における課題として、日本でものを作ることへのこだわりから、ノウハウ伝承、人不足への対応があった。
➢ 全社的な課題として、調達・管理コスト削減、設計者の高齢化・サイロ化による個人差低減、災害対応によるBCP強化のた めの事業部間の連携強化が必要だった。事業部ごとに特定の製品を特定の工場で生産しており、事業部間の連携や共通 したルールは存在しなかった。
取組内容
➢ 「富士通生産方式(FJPS)」として、人に依存しないものづくりを目指す、自ら必要なツールを作る、プロセスをコンカレント化 することを富士通グループ全体の活動として推進した。
➢ 「FJPS」のうち、製品開発における課題解決のため、設計のデジタル化プラットフォームである「FTCP」を構築した。
工夫
➢ 開発期間短縮のため、AI, CADの一部などはオープンソースを活用した。
➢ 「FTCP」上のツールを継続的に活用するため、以下の取り組みを行った。
• 図面作成や製品評価検証に係るルールの整備
• 製品毎の試作回数制限や3Dデータシミュレーションを義務付けた製品開発フローの整備
• 社内プラットフォームの使用履歴の事業部毎の監査・評価、全社的な比較
成果
➢ 製品開発プロセスの手戻り減少、品質向上、納期短縮を達成した。
➢ 設計段階における不具合抽出、製造しやすい設計の追求が可能になった。
➢ 製品開発プロセスのうち、設計から製造に至る部分において、製造技術部門の業務がデジタル化され、負荷が低減された。
➢ 一部は顧客への提供を開始しており、このうち「仮想大部屋」を導入したいというニーズに対しては、使用するにはまず既存 データの整流化など使用のための準備が必要であることを説明したうえ、ローデータの統計的処理や業務のプロセス化など導 入前の支援的なサービス提供も始めている。
今後の課題
➢ 自社内向け設計基盤として構築したことが起点であるため、顧客への提供時も顧客の既存プロセスにカスタマイズしたものを 作る、という提案になりがちである。一社にとどまらない連携など、周辺環境が変化した際にも組み替えて使えるような汎用性 の高いシステム化が求められる。
➢ 製品開発件数が減ってきており、このようなプラットフォームの維持にもコストがかかるため、中長期的な検討が必要である。
富士通株式会社 「 FTCP ( 設計開発プラットフォーム ) 」
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PwC 15
背景・課題
➢ 自社主力製品であるNC工作機械の開発や当時の標準化への機運の高まり・論調を通して、個別最適ではなく全体最適を 指向して、創発の場→対話の場→システムの場→実践の場→…のサイクルにより知識創造(従業員の頭の中に隠れている 知識を掘り起こし、それを既存のデータや知見と組み合わせて問題解決のために有用な知識に昇華して、デジタル化された環 境に取り込むこと。野中幾次郎氏のSECIモデルを踏襲)を促進することが重要だという考えに至った。
取組内容
➢ 従来から行われていた自社のNC工作機械の設計から生産まであり方を改革するという観点から着想を得て、設計から製造 までデータを一気通貫させて行うコンカレント・エンジニアリング、変動する生産計画への柔軟な対応のための生産効率の最大 化、人の入力や操作の蓄積と再利用のためのナレッジマネジメントを1つの生産システムに統合した生産モデルを構築した。
• コンカレント・エンジニアリング:下記の順で進め、設計、生産技術、加工現場までの開発リードタイムの短縮を目指す
①3DCADを使い設計②3DCAMを使い加工プログラムを作成 ③3Dバーチャルモニタを使った動作シミュレーション
④加工現場への加工指示 ⑤NC工作機械による加工
• 生産効率の最大化:最適な生産管理により、生産計画から加工現場までの生産リードタイムの短縮を目指す
• ナレッジマネジメント:日々の活動の中で生まれる技術・技能(ノウハウ)を蓄積・共有して活用する
工夫
➢ 特にナレッジマネジメントについては、情報をどのように知の創出につなげるかを検討する中で、従来製造現場で行われてきた ワイガヤや知的生産の歴史を分析し、日本の製造業に合ったものを確立することができた。成果
➢ 3軸の考え方とITによりネットワーク化した「IT Plaza」を「ものづくりサービス」として製造業に提供した。
➢ NC加工機を「自ら考え、成長するインテリジェントNC」(THINC)というコンセプトでさらに発展させ、顧客や周辺機器メー カーなどをパートナーとし、共同でシステムやアプリケーションの開発を行うことでトータルソリューションを創造する場を提供した。
また、アメリカ製造拠点で開発を実施するためのグローバルなパートナー契約を締結した。
今後の課題
➢ デジタル化による弊害として、従来日本の製造業の強みであった課題発見力や原因分析力の低下、知の弱体化が起きてい ると考えられるため、カイゼンの状況把握のデジタル化など、デジタルと人の得意な部分を最大限活用する方法について検討 していく。
➢ 知識創造をどのようにビジネス化していくかを検討していく。
オークマ株式会社 「 IT Plaza 」
PwC 16
トヨタ自動車株式会社 「工場 IoT 」
概要
➢ トヨタ自動車株式会社の「工場IoT」は、3D CADデータなど既存のデジタル化データを一元管理でき、工場と現場などの部 署間にまたがる情報共有基盤であり、下記5点を目的として構築した。
• 「現有資産の最大有効活用」:すぐに着手できるよう、既存の設備を活用
• 「拾い切れていない現場の困りごとをAIで解決」:データ分析の効率化
• 「FA機器類からのデータ授受」:ログデータとして現有資産に保管されたデータの有効活用
• 「セキュリティ対策」:外部と接続するIoT工作機器などへの対応
• 「IE化されていない設備の標準化」:インターフェースの標準化
➢ 「工場IoT」の考え方をエンジニアリングチェーンやサプライチェーンに広げ、「開発」「市場」「工場」をデジタル化で連携することを 目的として情報共有基盤を構築中。
(図表出典:トヨタ自動車株式会社作成資料)
PwC 17
背景・課題
➢ 3D CADデータや試作時の特性データなど、個々の情報のデジタル化を行い、技術開発・生産準備に成果を上げてきた。し かし、実際の製造・お客様から得たデータの技術開発へのタイムリーなフィードバックに苦戦していた。 Industry4.0や非自動 車メーカーの台頭等の社会変化を受け、危機意識を持ち、全社的なデジタル化を検討した。
取組内容
➢ 効率や費用対効果重視の風土を鑑み、まず「工場IoT」から着手した。「工場IoT」においては、工場横断の共有プラット フォームを2~3年かけて段階的投資。製造側はデジタル技術を使ったトヨタ生産方式として、各社員が小規模なテーマを立 案し、実行し、効果を出すというボトムアップの取り組みを行い、人材の育成も併せて進めた。
工夫
➢ デジタル活用で各社員が困らないように、社内部署による組織的な教育支援、BI・AIなどの便利ツールをプラットフォーム上に 用意。
➢ デジタルを活用し安心して効果を出せるよう、予め十分なセキュリティ対策された環境を構築。
➢ データの収集や蓄積にも「必要なものを、必要な時に、必要な分だけ」というトヨタ生産方式の考え方に則るようにし、ムダなデ ジタル化をせず、費用対効果を出した。
成果
➢ 最初に生産部門と連携し、情報システム部門にて「工場IoT」のプラットフォームをセキュアに準備。各事業部・工場にてそれを 使った現場プロジェクトを立ち上げ、取組の数を増やしていくことで、トータルで費用対効果を上げた。
➢ 「工場IoT」で得られた成果を受け、エンジニアリングチェーンやサプライチェーンを含むデジタル化への適用を打ち出し、品質向 上や商品力向上、法規への対応等、付加価値向上に関わるデジタル化に着手し始めた。
今後の課題
➢ 諸外国との比較調査の結果、自動車業界の変革期とも重なり、マーケティングや販売系の強化の必要性、ハードだけでなく ソフトの価値の高まりへの対応など、デジタル化を使って新たに着手すべき課題が見えてきた。市場、工場、開発のサイクルを 回せる基盤強化をしていきたい。
➢ デジタル化とセキュリティ対策強化は同時並行で進めなければならないが、自社だけでなくサプライチェーン全体の理解と実施 が必要である。
トヨタ自動車株式会社 「工場 IoT 」
PwC 18
三和工機株式会社 「社内人材育成による設計力強化」
概要
➢ 三和工機株式会社では、自社のエンジニア人材を他企業に派遣する事業と、設計・開発の請負事業とを行っている。特に 請負事業については、様々な業界の顧客ニーズに応えるため、自社内の人材育成による設計力強化に注力している。
(図表出典:三和工機株式会社ホームページ https://www.sanwakoki.co.jp/catalog/pdf/rev.pdf)
PwC 19
三和工機株式会社 「社内人材育成による設計力強化」
(図表出典:三和工機作成資料)
PwC 20
背景・課題
➢ 日本の製造業においては、製造から設計側へのフィードバックの減少とそれに伴う設計力の低下、個別最適化された設計仕 様など、設計力、エンジニアリング力の低下が顕著である。
➢ 顧客であるメーカーの生産技術者不足やベテラン技術者の退職もあり、即戦力が求められている。
取組内容
➢ 自社のエンジニア人材を他企業に派遣する事業と、設計・開発の請負事業とを行い、自社の持つエンジニアリングチェーン上 の業務への知見、ノウハウを提供している。
工夫
➢ 派遣先企業に対しては、顧客の各業界・企業における設計ツールやルールが標準化されておらず、個別対応が必要であるこ とから、様々なツールやそれを使いこなせる人材をそろえることで、きめ細かい対応を行った。
➢ 自社の人材育成については「原理原則と照らし合わせること」を重視しており、品質やコストなどの全体最適を考えながら質の 高いものを提供できるアドバイザーを輩出できるようにするとともに、自社内のベテラン技術者が技能伝承を行うなど、情報や 技能の属人化を防ぐための取組を進めている。
成果
➢ 顧客メーカーが直面している短納期化、グローバル化などの変化に合わせ、ツールや人材を柔軟に対応させることで、様々な 業界や企業の顧客ニーズを満たすことができている。今後の課題
➢ 自社の提供価値については、図面レスを目指すなど、デジタル化による高付加価値化対応を進めていく必要があるが、投資 対効果を見極めながら判断したい。
三和工機株式会社 「社内人材育成による設計力強化」
PwC 21
株式会社アイデン 「 IWS 」
(図表出典:株式会社アイデンホームページ http://www.ai-den.jp/iws/)
概要
➢ 「IWS」はiDEN Wiring Solutionの略であり、回路図面と配線の図面のデータを融合して配線図データを作成するシステ ムであり、従来は紙図面として見ていた情報が製造現場のモニター上にデジタル図面として表示され、同時に仕様や作業指 示などの情報を得ることができるものである。
PwC 22
背景・課題
➢ 自社の主力事業である制御盤製造の特徴として、配線作業が一点一様であり、製造担当者(職人)の知見に依存してし まうということがあった。
➢ 工程内での分業ができておらず、最初から最後まで一人の作業者が生産することもあり、作業進捗・工程管理は製造担当 者任せになっていた。
➢ 作業者には経験・スキルが必要で、人材育成に時間を要していたため、作業の簡素化・単作業化を検討していた。
取組内容
➢ CADベンダーと連携し、工程ごとに必要な作業を標準化・可視化できるデジタル化ツール(IWS)を開発・導入した。工夫
➢ 機械化できる部分を機械化し、ベテランの製造担当者はより付加価値の高い業務に専従する、というすみ分けを実施したこ とで、製造担当者の理解を得た。
➢ システムエンジニアを設計専門の担当者として採用し、それをきっかけとした社内人材育成を実施した。
成果
➢ 製造担当者が担っていた工程設計部分をあらかじめ設計し、データ化することにより、フロントローディングを実現した。
➢ デジタル図面データを使用し、一部作業の機械化を行ったことで生産性が向上した。
➢ 必要な作業が明確化されたことで、技能習熟度に応じた柔軟な分業体制の構築および各製造担当者の進捗管理が可能 となった。
➢ 作業量が明確化されたことで、材料の必要量の事前把握が可能となった。
➢ 作業が標準化されたことで、日本の制御盤メーカーがほとんど進出しておらず、現地技術者も少ない新規海外拠点への進出 と市場参入が可能となった。
今後の課題
➢ デジタル化ツールの進化に合わせた人材獲得・育成が必要である。
➢ IWSの更なる機能拡充により、エンジニアリングチェーン側の強化、生産性向上をしていきたい。
株式会社アイデン 「 IWS 」
PwC 23
株式会社 IHI 「社内人材のデジタル人材としての育成」
概要
➢ 株式会社IHIでは、社内で多様な製品を製造していることから、部門ごとに個別最適が進んでいた業務プロセスを共通化し、
プロセスごとの連携が行えるように改革を実施。
➢ デジタル変革に携わる人材を社内公募で集めたり、毎年100人程度にデジタルスキルの研修を受けさせたりするなど、社内人 材をデジタル人材化するための育成に注力している。
(図表出典:株式会社IHIウェブサイト資料 https://www.ihi.co.jp/ihi/technology/ict_policy/)
PwC 24
背景・課題
➢ 事業が多岐にわたっており、それぞれのSBUにてIoTなどの個別のデジタル化を行ってきた。それらのデータをどのようにつなげ、
活用するのかを検討する中で、個別最適化された事業間の横通しを図る組織として高度情報マネジメント統括本部が設置 された。
取組内容
➢ デジタル変革に携わる人材を社内公募を行うなど、営業・現場など様々な部門出身者、様々な製品カテゴリーのビジネスユ ニット出身者が集まり、組織に多様性が生まれた。
➢ 事業部門を対象としたデジタル人材育成プログラムとして、製品/ サービス開発、ものづくり生産技術の実際のプロジェクトと連 動した2つのコース(デザイン思考、PoCを通じ、お客様価値を生み出すことがゴール)、AI/ データ分析技術(講義→自 分の業務データで実技→試験で社内認定取得、という流れで実施)の計3コースを自社で内製し、継続的取り組みとして 実施している。
工夫
➢ 自社製品や技術を知っている人材にデータの扱いを教えたほうが良いという考えから、中途採用ではなく既存人材の育成をメ インとし、社外の専門家とも意思疎通ができるレベルを目指している。
成果
➢ 幅広いスキルや業務知識を有した人材が集まった結果、コーポレート部門が単体で推進するよりも多様なアイデアが生まれや すく、良い風土醸成がなされた。
今後の課題
➢ 製品カテゴリーごとに最適な管理ができるよう、DXの目的やツール選定を進めたい。
➢ 設計や製造現場における技能伝承についての問題意識は高く、ツールを使いこなして後進への伝承の流れができている部門 もあるが、個別最適化しているため、設計思想の標準化や製品カテゴリ―内での人材の流動化に取り組みたい。
株式会社 IHI 「社内人材のデジタル人材としての育成」
PwC 25
株式会社ダイセル 「ダイセル式生産革新」
概要
➢ 「ダイセル式生産革新」は、以下4つの段階を経て推進される生産革新の手法である。
• 共通の切り口で現行業務の在り方を点検の上、全体像を把握してマスタープランを策定する。
• 業務のムダやロスを排除し、製造担当者の負荷軽減・安定化を行う。また、言語や図面の統一を行う。
• 製造担当者の意思決定プロセスの標準化手法として、オペレーションを 「安全」「安定」「品質」「コスト」の要素ごとに監視
→判断→操作の流れで明らかにし、原理原則と照らし合わせて現場ノウハウを検証し、裏付けが取れたものをデータベース として整理する「総合オペラビリティスタディ」を実施する。
• 後戻りしない仕組みとして、データベースをシステム化する。
(図表出典:株式会社ダイセル作成資料)
PwC 26
株式会社ダイセル 「ダイセル式生産革新」(総合オペラビリ ティスタディ)
概要
➢ プラントのオペレーション(非定常時、定常時、緊急時)のうち、定常時にオペレーターが行う意思決定プロセスを体系的網 羅的に整理し、意思決定方法の顕在化、すなわち 「頭の中のミエル化・標準化」 に取り組んだものである。
➢ 現場のオペレーション知見を技術スタッフがヒアリングし、その上で科学的原理に則り適切かどうかを検討し、適合したものをオ ペレーション上の「ノウハウ」として、データベース化していった。
➢ 総合オペラビリティスタディ結果の一部をオペレーションシステムと連携し、オペレーションの簡素化・効率化を実現した。また、モ ノづくりに関わるメンバーが作業日報など日々の情報を確認し、データベースを見直し新たなものを登録する、というサイクルを 20年来続けている。
(図表出典:株式会社ダイセル作成資料)
PwC 27
背景・課題
➢ 各工場は歴史的な出自が異なっており、各々で生産性向上等に取り組んでいたが、個別最適化されていたことから、グルー プ全体のシナジーが生まれていなかった。また、各工場内においても、工程が分断されて個別最適化されており、工場全体の 製造プロセスを最適化する視点が欠けていた。
➢ プロセス型産業であるにも関わらず人が介在する業務が多数あったことから、設備や材料起因の工程不具合を直す等、ある べき姿から離れた状態を人が正しているのではないかという考えに至った。
取組内容
➢ 下記のステップで展開した。
• 共通の切り口で現行業務の在り方を点検の上、全体像を把握してマスタープランを策定する。
• 業務のムダやロスを排除し、製造担当者の負荷軽減・安定化を行う。また、言語や図面の統一を行う。
• 製造担当者の意思決定プロセスの標準化手法として、オペレーションを 「安全」「量」「品質」「コスト」の要素ごとに監視→
判断→操作の流れで明らかにし、原理原則と照らし合わせて現場ノウハウを検証し、裏付けが取れたものをデータベースと して整理する「総合オペラビリティスタディ」を実施する。
• 後戻りしない仕組みとして、データベースをシステム化する。
工夫
➢ オペレーション精度を向上させる目的から、要因と結果の関係性を明らかにしておき「ブラックボックス化させないこと」を重視して いる。
➢ データベースは恒久的なものではなく外部環境の変化に合わせて変わるものであるという前提で作成したことで、20年経過後 も陳腐化せずシステムが維持されている。
成果
➢ 製造プロセスにおける品質向上、安全性強化、コスト削減、標準化を確立し、「ダイセル式生産革新」として仕組み化した。
他の製造業企業へのライセンス供与を行い、広く普及・活用されるようになった。
➢ 製造プロセスを確立したことで、要求品質の高いグローバル企業等、新規顧客の開拓につながった。
➢ 「生産革新(プロダクションイノベーション)」で固定費を削減、「プロセスイノベーション」で変動費を削減、その後「プロダクトイ ノベーション」で利益を創出、というステップで経営戦略を立てることで、製品競争力を維持する原動力になっている。
今後の課題
➢ 研究開発部門、技術部門、エンジニアリング部門の連携強化、社外とのオープンイノベーションの推進等により、「プロダクトイ ノベーション」を進め、新規事業による利益創出を目指したい。
➢ ダイセル方式を社外を含めた自社製品のサプライチェーン全体に展開していくことで、品質・コストに良い影響を与え、全体最 適化し、ゆくゆくは日本のモノづくりの競争力強化につなげたい。
株式会社ダイセル 「ダイセル式生産革新」
PwC 28
三菱電機株式会社 「 e-F@ctory 」
概要
➢ 「e-F@ctory」は工場内で生産情報とITを連携させる仕組みで、工場設備IoTで製造現場起点の情報を取得しエッジコン ピューティングで処理することで、生産現場に近い場所でリアルタイムにデータを分析・活用することができる。また、ITシステム
(クラウド)と連携することで、エンジニアリングチェーンとサプライチェーンを俯瞰した分析も行うことができ、ものづくり全体として の生産性向上やコスト改善を目指している。
(図表出典:三菱電機株式会社ホームページ https://www.mitsubishielectric.co.jp/fa/sols/efactory/index.html)
PwC 29
三菱電機株式会社 「 e-F@ctory 」
(図表出典:三菱電機株式会社作成資料)
PwC 30
三菱電機株式会社 「 e-F@ctory 」
(図表出典:三菱電機株式会社作成資料)
PwC 31
背景・課題
➢ 自社の主力製品の一つが工場現場の自働化のための機器(FA機器)であり、各機器を連携させることで工場内に埋もれ ているデータの価値を見出し、コスト削減や品質向上につながるとの考えに至った。
➢ ネットワーク技術の発展により、機器同士の接続が可能なインフラが整ってきた。
取組内容
➢ 「e-F@ctory」 の実現のため、下記の基本技術の開発を行った。
• FA-IT連携技術:生産現場データとITシステムの接続や処理の技術
• 制御技術:自動化に必要なロボット技術やセンサー機器を統括制御し、生産現場から必要なデータを収集する技術
• 産業用ネットワーク技術:生産現場で大量データを高速通信したり、効率的に収集したりする技術
➢ 「e-F@ctory」の実証を行う自社モデル工場を増やし、洗い出した課題に対して機器やサービスの改良を重ね、ソリューション として社外に提供するようになった。
工夫
➢ 欧米流のシステム導入と異なり、でそれぞれに合ったソリューションを提供している。
➢ IoT化指標の検討:工場へのIoT機器導入の課題として、IoT化の目的や手順が不明瞭であることや、IoT機器導入前に 効果が把握できていないことがあり、それらはIoT化に対し明瞭な指標がないためであるとの考えから、IoT化指標を作成し、
顧客の生産現場の状況や悩みを把握した上でソリューションを導入している。
成果
➢ 「e-F@ctory Alliance」の発足:スマートファクトリーに必要な技術領域はソフト、ハードともに広範囲に渡るため、三菱電 機のFA機器分野と、ソフトウェアや機器類を提供するパートナー企業を連携するパートナープログラムである「e-F@ctory Alliance」を発足させた。これにより、生産現場の情報だけでなく、CADデータなどエンジニアリングチェーンのデータとの連携も 可能になった。
➢ 「Edgecrossコンソーシアム」への参画:e-F@ctoryはエッジコンピューティングを核としたシステムであり、既に工場内に導入 されている様々な機器や通信規格の違いを超えてつながり、データの収集と活用をしやすくする必要があった。そこで
「Edgecrossコンソーシアム」に参画し、エッジコンピューティング領域のオープンソフトウェアプラットフォームを構築に携わったこと で、互換性のあるサービス展開が可能になった。
今後の課題
➢FA機器やエッジコンピューティングにかかるデータ負荷を低減させるため、ビッグデータ分析やディープラーニングなどのAI技術を 搭載させたり、生産現場情報を設計にフィードバックするためにデジタルツイン構築との連携を強化するなどしており、それらを活 用してさらなるDXの推進を目指したい。
三菱電機株式会社 「 e-F@ctory 」
PwC 32
ヤマハ発動機株式会社 「経営目線のデジタル改革実行」
概要
➢ ヤマハ発動機株式会社では自社の売上拡大を最終ゴールとして、デジタル技術を使った改革をするため、経営目線で「既存 のビジネスの効率化」「未来のビジネスの創出」に取り組んでいる。
➢ 海外生産比率、海外売上高比率が高いことから、国内だけでなくグローバルにおける全体最適の視点を持った戦略的アプ ローチにより改革を実行している。
➢ 「デジタルマーケティング」「コネクテッド」「スマートファクトリー」「データ分析」の4つのテーマで年間数十個PoCを実施しビジネス 創出のためのテーマ創出と効果の確認を実施した。
➢ 今後は、デジタル技術によるマーケティング力強化、デジタル改革のリーダーとなるべき人材育成に注力していく。
(図表出典:ヤマハ発動機作成資料)
今後の課題
➢ 会計、調達、販売物流、生産などのシステムについてもグローバルで統合し、デジタル技術を使うための基盤を整備していく。
➢ デジタル技術を使い、ニーズを把握し商品開発に結び付けるためのマーケティングと、既存の商品の魅力を向上させるための マーケティングの2つに注力していく。市場データを蓄積・分析し、商品企画にフィードバックすることで消費者への価値提供につ なげ、売上拡大につなげる。
➢ エンジニアリングチェーンのデジタル化については、MBSEによる開発期間・コストの短縮などを目標に継続していく。
➢ デジタルを変革に結び付けられるリーダーの育成を継続する。また、社内組織構造がデジタル改革を実行する上での弊害に なっている部分があるため、人事制度改革を進めていく。
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背景・課題
➢ 従来、問題点の改善を地道に行い売上拡大を目指すアプローチを続けていたが、経営目線の戦略的アプローチが欠けていた。
➢ エンジニアリングチェーン・サプライチェーンそれぞれを担う製造システム・基幹システムやツール類をIT子会社で長年内製してき たが、工場や支店の海外展開が拡大する中、それぞれの拠点においても独自システムが作られるなど個別最適化されており、
非効率なやり取りがなされていた。
➢ 自社商品に対するニーズの把握やターゲットに合わせた商品の展開が不足しており、「消費者にとって価値のあるものづくり」か ら離れてしまっていた。
取組内容
➢ 戦略的アプローチによる売上拡大や予知型経営の実現を目指すため、合宿や1on1ミーティングにより経営陣の意識改革を 実施し、トップダウンでグローバル事業所全体に向けて発信した。
➢ 「既存のビジネスの効率化」「未来のビジネスの創出」を目的とし、マーケティングや生産部門など様々なバックグラウンドの人材 を集め「デジタル戦略部」を立ち上げた。その中で「デジタルマーケティング」「コネクテッド」「スマートファクトリー」「データ分析」の4 つのテーマで年間数十個のPoCによる検証を実施、センサーによる生産データ収集と分析、ナレッジのデータ化等を行った。
➢ 各拠点でばらばらだった基幹システムについてさらに、外部パートナーと連携し、どのようなデータをどこでどのように収集・階層化 し、どう活用するのかといったデータのライフサイクルマネジメントについての検討も行っている。
工夫
➢ 自社内のソフトエンジニア人材に対し、データ分析のトレーニングを実施し、事業の目的に対し適切な分析手法を考えられる 人材へと育成した。現場でのデータ収集から分析までスピード感をもって取り組み成果を出してもらうことで、その後各拠点で 技術とツールを活用し、課題を見つけて解くサイクルが出来上がった。成果
➢ デジタルツールの導入により、エンジニアリングチェーンの省人化、効率化を実施した。➢ 新設組織にてデジタル技術を使ったPoCを年間数十個実施し、不良率低減等の効果を上げた。
ヤマハ発動機株式会社 「経営目線のデジタル改革実行」
PwC
36
背景・課題
➢ 日本の製造業では、カイゼンによるボトムアップ施策の延長として製造現場のIoT化を実施している例が多い。一方、DXは製 造に加え設計が関わるため、設計と製造両方の知見が必要だったり、コスト削減効果が不透明だったりと受容されづらい。
➢ 大規模なシステムツールの導入はトップダウンで行われているが、設計と製造両方の業務の知見を兼ね備えた導入ベンダーは 少なく、実態に即していなかったり、導入後の投資対効果の確認や追加投資の検討がおろそかになりがちで、現場のアナログ な付随作業が残存しがちである。
➢ 経営者は年度ごとの売り上げや利益といった会計期間内の目標値にとらわれがちで、製品1つ1つの投資回収などの会計期 間を越えた原価管理に対する意識が薄い傾向にある。また、設計部門と製造部門などの部門間だけでなく、経営層と現場 層の分断が起きている。
取組内容
➢ 日本の製造業に合ったきめ細かいソリューションを提供することで、製造現場のIoT化、業務領域のデジタル化、データのフィー ドバックによるエンジニアリンチェーン強化に着手した。
➢ 経営層と現場層(設計、製造)を原価を仲立ちとして連携させることで、全体最適化を提案した。
工夫
➢ IoTの現場データやPLM(製品ライフサイクルマネジメント)の製品データと基幹システムの原価データなどを相互に連携させ、
経営指標を生成してトップダウンの意思決定を強化するとともに、活動指標を現場に浸透させて全体最適につながる改善や 改革を促すことで、デジタル技術を活用したビジネスモデル変革を目指した。
➢ 生産・販売・原価管理といった基幹業務を、PLMを中心とするエンジニアリングチェーン、そして製造現場と相互連携させること で、製品の企画・設計・生産・販売・保守に至るまでのプロセスをITで一元的に管理し、データ駆動経営を具現化させる。
成果
➢ 原価構成のシミュレーション機能を活用して、開発初期段階や製品のラインナップ変更時に、精度の高い原価企画を実現で きる。さらに、想定販売量や利益、設備稼働率、設備の投資回収状況などを割り出し、製品ごとの投資回収進捗や見通し を管理することが可能となり、早い段階で経営判断へつなげられる。
今後の課題
➢ エンジニアリングチェーンの中で原価管理を実現したい。具体的には、設計領域(3D CAD, BOM)と会計領域を融合させ、
設計者が検討中の仕様が原価にどのように反映されるのかが直ぐにわかることで、エンジニアリングチェーンのフロントローディング が強化されるツールを検討している。
ビジネスエンジニアリング株式会社
「現場データの経営指標化」
PwC 38
背景・課題
➢ 従来、カンパニーごとに個別最適化されたPLM(製品ライフサイクル管理)システムを導入していたが、種々のシステムを併 用しておりグループ連携施策が困難であった。
➢ 外部ベンダーへの依存が高まっており、新市場開拓・新製品開発の際に必要なIT開発などに際して、各ベンダーへの支払い 費用が嵩んだり意思決定が遅くなるなど、ITがビジネスを阻害していた。
➢ 全体最適化を目指すため、コーポレートIT部門が主体となって全社共通のシステムを導入する流れとなった。
取組内容
➢ システムの運用をコーポレートが請け負い、利用料をユーザー単位で配賦して徴収する全社PLMプラットフォーム「社内PaaS
(Platform as a Service)」を展開した。
➢ 導入時は小規模展開、順次対象を広げていき、既存システムの老朽化に伴うリプレースで新たにシステムを導入していくという ステップで段階的に導入を進めている。
➢ 同PLM運用基盤の構築により、カンパニーごとに生じる多様なカスタマイズニーズの、社内開発による迅速な充足を目指した。
工夫
➢ PLMシステムの導入要否やカスタマイズについては各カンパニーに一任し、自由度を持たせたことで、各カンパニーの課題に合っ た運用が可能になった。
➢ システム選定にあたっては、複合企業特有の多様な業務に対応できること、同社製品のライフサイクルの長さに対応した使用 寿命であること、自社内でシステムの追加修正ができること、といった点に配慮した。
成果
➢ 基盤を統一したことで、横展開がしやすくなった。
➢ 設計部門の部品手配等の付帯作業や、カンパニーIT部門のベンダー管理等の業務が減り、各部門が付加価値向上業務 に注力できるようになった。
➢ 3DCADデータをPLM上で管理する際に、カンパニーがPLMシステムを一から構築した場合との比較において、80%近いコス ト削減を実現した。
今後の課題
➢ 全社PLMの導入を契機に既存業務プロセスの見直し・整流化を実施し、スマイルカーブの両端へ経営資源を移行していく。
➢ マーケティングやアフターサービスなど市場との接点を持つ部署と設計との情報連携を促すことで、市場要求とマッチしたものを 効率良く作る仕組みを整えていく。
➢ AI開発が得意なパートナーとの連携やベンチャー投資等も視野に入れることで、オープンイノベーションを進める。
川崎重工業株式会社 「社内 PaaS 」
PwC 39
オムロン株式会社 「 i-BELT 」
概要
➢ FA機器等のメーカーとして培った工程設計や生産についてのノウハウを活かし、「生産管理」「品質管理」「設備効率」「エネル ギー」の4つの切り口における現場データ活用サービス「i-BELT」を提供している。
➢ 顧客企業内では実施が難しい、トップダウンで推進する部分(取組む目的や経営指標の提示)と、ボトムアップで推進する 部分(効果が見え、効率化を実感できる取組)の連携強化を支援している。具体的には、顧客企業内部の様々な技術 や知見の棚卸をし、コア技術を明確化したのち、データの流れや業務プロセスを可視化し、デジタル化によりその企業の価値が 向上する部分に対してデータ化や最適化を提案する。課題共有→診断→導入→継続強化というステップでサービスを展開 している。
➢ 顧客との「共創」型ビジネスである「i-BELT」サービスの展開によって、生産現場データを活用してリードタイム短縮や歩留まり 向上、稼働ロス低減、エネルギー効率向上などを実現し、日本企業のデジタル化推進に貢献している。
(図表出典:オムロン株式会社作成資料)
PwC 40
背景・課題
➢ オムロンにおけるエンジニアリングチェーンでは、日本で開発・設計した後、工程設計以降をグローバルで行うことがあるため、
データというよりも運用の確立、ものづくりや設計思想のカルチャーの融合が重要で、その後、標準化に向けたデータの流れを 考える必要があった。
➢ 日本企業のデジタル化を阻む要因として、日本企業のヒエラルキー的な特徴による現場と各部署との断絶や、分業化による 総合的な知識・技術を兼ね備えた人材の不足、社内外とのコミュニケーション・情報連携不足、対グローバルでの競争力の 低下などが挙げられる。
➢ デジタル化の恩恵を受けるうえで肝となる、データの現状把握→可視化→課題・ゴール設定→業務設計という仕組みを構築 できる企業、またはそういった事が分かる人材がいる企業が、日本に少なくなってきている。
取組内容
➢ 現場データ活用サービスである「i-BELT」を、 「生産管理」「品質管理」「設備効率」「エネルギー」 の4つの切り口で展開し、
ツールだけでなく、トップダウン(経営指標、取組む目的)とボトムアップ(目標の共有、効果の見える化と実感)の連携強 化プロセスの支援サービスを、以下のステップで顧客へ提供している。
①顧客企業内部の様々な技術や知見の棚卸して現状把握をし、何をデジタル化することが最も有意義なのかを見極める。
②データの流れやプロセスを可視化し、構造化をする。
③顧客の既存の資産(データ・設備)を活用して価値が最大化できる部分に対して、データ化や最適化を提案する。
工夫
➢ 自社の取組を日本のデジタル化促進へと繋げるために、モノ(プラットフォーム)ではなくコト(運用の可視化、課題の発 見)の販売に着目し、「暗黙知を表出させ、どういったデータにするか」といったナレッジマネジメントをサービスとして展開している。
➢ 自社がグローバルなものづくりを行っていることもあり、全体最適の視点の重要性を感じていることから、既存のツールの導入で はなく、製造プロセスの構造化や目指す状態の明確化に時間をかけ、デジタル化・グローバルスタンダード化しやすい状態の構 築を重視している。
成果
➢ 「i-BELT」の活用により、製造現場において作業効率の安定化、工具の摩耗量の削減、加工時間の削減などを実現した。➢ 「i-BELT」の他社への展開により、暗黙知の形式化と現場モチベーションを向上させることで日本企業のデジタル化の推進に 貢献した。
今後の課題
➢ 中核となる人材(働き手・教え手)を育成し、ナレッジを伝承させていく。➢ 国として、ペーパーレス化などをはじめとしたデータ化の基盤を整えていく。
オムロン株式会社 「 i-BELT 」
PwC 42
背景・課題
➢ 従来より、生産ラインの工夫等、多品種混合生産や需要変動に柔軟に対応できるような生産体制を構築していたが、市場 環境変化のスピードが上がってきたこと等から、「マス・カスタマイゼーション」を念頭に置いたモノづくりを行い、製造コストの低価 格化と製品差別化による競争力強化を図ることとした。
➢ 「マス・カスタマイゼーション」として、サプライチェ―ンの最適化(生産の効率化、ニーズに対応した生産計画・在庫管理)、エ ンジニアリングチェーンの最適化(要求分析・システム設計・コンポーネント設計)、情報領域の深化(データ連携やモデリン グ・分析とサプライチェーンやエンジニアリングチェーンへのフィードバック)を構想した。その実現に向け、従来の生産体制をIoT 活用により革新させ、エンジニアリングチェーンとサプライチェーンにおけるすべての情報をネットワークでつないだ「デジタル・ファクト リー」を構築した。
取組内容
•大阪・堺に新工場(デジタル・ファクトリー)を設立し、工場内のIoT活用として、①製造現場データの発掘 ②データの収集 と統合 ③データの見える化と分析 ④顧客への価値提供(工場運営の高度化と効率化の同時実現)のサイクルを回すこ とを構想した。そのうち②の実現のため、工場のすべての設備をネットワークでつなぎ、情報収集の標準化を進めるための情報 基盤である「工場IoTプラットフォーム」を整備した。
工夫
➢ 生産データをリアルタイムで可視化・分析し、スピーディに生産現場の課題解決を行うため、工場内に「工場IoTプロジェクトセ ンター」を設置、メンバーが集まりデータに基づいた議論や判断を行っている。
➢ 「工場IoTプラットフォーム」を各海外拠点とも連携し、各拠点でアプリ開発を可能とするなどオープン化を進めることで、グロー バルでの利活用を行っている。
成果
➢ 生産状態を見える化し、生産計画を最適化することで、ロスを低減させた。
➢ 予測技術の確立や人の判断基準のモデル化、人やモノの動きのデジタル化、工場のデジタルツイン構築(生産シミュレーショ ン)などを通して、予知・予測が可能になった。
今後の課題
➢ 営業・サービス部門から寄せられる市場要求と、生産現場で生産しやすくコストメリットもある仕様とを連携させたアプリの活用 を進めたい。
➢ グローバルなサプライチェーンの変動に柔軟に対応するため、特に調達分野やBOMにおいて、人が介在して情報をつないでい る箇所の洗い出しなどを行い、デジタル化・標準化したい。