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地球温暖化と新興感染症

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Academic year: 2021

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第75巻 第2号,2016

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129

地球温暖化と新興感染症

脇口 宏(高知大学学長)

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 Zika熱の流行が問題になっていますが,ブラジルの熱帯雨林伐採による人類 と「野生との遭遇」がもたらしたという向きもあり,HIVやエボラ出血熱など のように野生との遭遇が関与している新興感染症の先例もあります。また,熱 帯雨林伐採は地球の温暖化を促進し,温暖化は熱帯感染症の温帯地域侵攻や氷 河・永久凍土に封印されている微生物の復活を促し,微生物増殖によるさらな る温暖化促進に加えて「野生との遭遇」に次ぐ新興感染症発生の誘導路となる ことが危倶されます。そして,新興感染症は重症例が多く,人類存続の危機を 招くことも危惧されます。

 人類と病原微生物との戦いの歴史は,科学・医学の発展,すなわちワクチン,

抗菌薬抗ウイルス薬などの開発によって,微生物からの一方的な人類攻撃の

時代から「耐性化と新薬開発のイタチごっこ」の時代に入りました。そこに,ペットや野生動物などのzoonosis が加わりました。さらに,多くの亜型(血清型など)を持つ病原体に対するワクチンは,これまでヒト感染症と

しては傍系にあった亜型を主流派に押し上げるという,抗菌薬による菌交代症に次ぐ病原微生物交代の時代にも 入り,次なるワクチンの開発が求められます。そこに,熱帯雨林など野生テリトリーや永久凍土由来の新興感染 症が逐次加わることになるのでしょうか。

 そもそも,野生との新たな遭遇の歴史は,人口急増に対応した居住区の拡大というよりも,より豊かな生活を 求め,経済発展のための開発すなわち自然林伐採や野生テリトリーへの侵犯の繰り返しであり,人類自らが招 いたものであります。人類が地球の支配者であるかの如き錯覚と傲慢が,環境破壊や人類から隔絶されていた病 原体によるさらなる新興感染症を誘発し,人類の危機を招くことになるのではないでしょうか。同時に,地球温 暖化は,地球全体の居住地区と耕作面積の減少,ひいては食糧不足をもたらし,野生テリトリーの侵犯拡大とい う悪循環を繰り返すことになり,人類の持続可能社会の構築に大きく高い障壁となることを危惧しております。

 これ以上の温暖化は許されない状況にありますが先進国だけが産業・経済発展の恩恵を享受し,そのつけを 後進国に押しつけることは許されないことが,国際会議でも常に話題になります。かといって,後進国や発展途 上国の温室効果ガス排出が,先進国より多くても良いということでは,環境破壊を止めることはできません。先 進国が持つ環境保全技術は,一企業や一国のものではなく,地球全体の知的財産として有効活用することで,「地 球環境保全」と「経済発展」を両立させる国際協力の時代に入っているはずです。

 大気汚染,河川・海洋汚染を防ぎ,熱帯雨林を保全しながら豊かな産業・農業を推進し,野生と人類との間に 里山のような緩衝地帯を設けることが,経済発展と地球環境保全という二兎(環境・人類共生)を得かつ新興感 染症の続発も防ぐ智恵ではないでしょうか。そして,宇宙一美しく快適な星「地球」を未来の子どもたちに引き 継ぐことも,重要な小児保健活動ではないでしょうか。高知大学は環境・人類共生を目指して,教育・研究を推 進しております。

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