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チタン合金の切削性改善 Improved Titanium Alloy Machinability

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Academic year: 2021

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(1)

まえがき=チタン合金は比強度が高く,耐食性に優れる ことから,さまざまな環境下で使われている。自動車分 野で考える場合,軽量化による燃費向上は昨今の地球環 境問題の点から重要であり,各種のニーズが高まってい る。

 当社では,自動車用部品へのチタン合金の適用のため に,熱間鍛造性および切削性に優れた材料 KS-ELF(Ti- 4.5Al-2Mo-4Cr-0.5Fe-0.2C)を開発した1) 2)。最も広く用 いられている代表的チタン合金 Ti-6Al-4V との比較を図 1 に示す。同図から,600℃以下においては,Ti-6Al-4V に 比べて KS-ELF は引張強さが大きく,高い変形抵抗を示 すことが分かる。一方,700℃以上では,逆に KS-ELF の 方が Ti-6Al-4V より低い変形抵抗を示しており,高温鍛造 において KS-ELF が高い鍛造性を有しているといえる。

また,図 2に示したドリルによる切削性の評価結果か ら,Ti-6Al-4V に比べて KS-ELF は工具摩耗が小さく,良 い切削性を示している。しかしながら,自動車部品を想 定した厳しい切削条件では,KS-ELF が若干切削性に劣 る場合があることが明らかになった。  

 そこで,KS-ELF の切削性改善方法について,切削加工

法および材料設計の両面で検討したので報告する。

1.KS-ELF 材の基本的切削特性

 切削性をドリル加工で評価した場合,切りくず詰まり による折損などもあり,材料特性の純粋な評価が難し い。そこで,ここでは工具摩耗と切りくず処理性の分離 が容易な旋削加工を用いて切削性を評価した。指標とし て工具摩耗量(逃げ面摩耗量)を用いて評価した。その 結果を図 3に示す。工具摩耗量は,切削速度が 5m/min と低速の場合,材料間に差は見られない。しかし,切削 速度が高くなるにつれて,Ti-6Al-4V に比べて KS-ELF の 方が逃げ面摩耗量が大きくなり,切削性が若干低下して いることが分かった。この切削性の差は切削速度が速く なるにつれて大きくなる。

 切削速度により切削温度が敏感に影響を受けることか ら,切削温度の解析を行った。図 4に示すように,切削 チップに放電加工により穴を明け,刃先から約 1mm の 距離のところに熱電対を装着し,切削中の温度を測定し た。その結果を図 5に示す。切削温度は,切削速度が速 くなるにつれて上昇している。また,KS-ELF の切削温

神戸製鋼技報/Vol. 55 No. 3(Dec. 2005) 61

技術開発本部 材料研究所 **鉄鋼部門 加古川製鉄所 薄板部

チタン合金の切削性改善

Improved Titanium Alloy Machinability

   

The titanium alloy KS-ELF has good formability and machinability characteristics. However for car parts, the  machinability of KS-ELF is inferior to Ti-6Al-4V. In this paper a method for improving the machinability of KS- ELF, related to cutting method and material design, was studied. Results showed that drilling with a coolant  hole is better than with a non coolant hole. The machinability of KS-ELF with a coolant hole is equal to that  of Ti-6Al-4V with a non coolant hole. In addition, the study showed that the flank wear of KS-ELF decreases  as the amount of TiC precipitation decreases.

■特集:素形材  FEATURE : Material Process Technologies

(解説)

尾崎勝彦(工博)

Dr. Katsuhiko Ozaki

逸見義男 Yoshio Itsumi

村上昌吾 Shogo Murakami

小野公輔**

Kousuke Ono

大山英人**(工博)

Dr. Hideto Ooyama

図 1  KS-ELF の高温引張強さ   Tensile strength of KS-ELF

図 2  ドリルによる切削性評価結果   Evaluated results of machinability by drilling

1 200  1 000  800  600  400  200  0

Tensile strength (MPa)

KS -ELF  Ti-6Al-4V  Gr.2 Class CP

0 200 400 600 800 1 000 1 200

Strain rate  20%/min Strain rate 

0.2%/min

Temperature (℃℃)

0 5 10 15 20 25

Number of drill hole 

Average flank wear (mm)

0.25  0.20  0.15  0.10  0.05  0.00

Speed:20m/min  Feed:0.1mm/rev. 

Depth of hole:15mm  Cutting fluid:Water insoluble oil KS-ELF 

Ti-6Al-4V

(2)

度は,Ti-6Al-4V よりも常に高い温度を示している。した がって,KS-ELF が Ti-6Al-4V よりも切削性に劣るのは,

切削温度が常に高く,工具摩耗の進行が速いためである と考えられる。

 KS-ELF と Ti-6Al-4V の切削性の差をより詳細に検討す るために,高温圧縮試験による応力歪特性を評価した。

試験形状は,直径 6mm,高さ 9mm とした。試験温度は,

室温,100,200,300,400,500,600℃とした。圧縮過程での 歪と応力の関係を求めた後,歪 0.1,0.2 のときの応力値を 室温での応力値により正規化し,温度と正規化された応 力値の関係を求めた。温度と正規化応力値の平均値の関 係を図 6に示す。Ti-6Al-4V に比べて KS-ELF は 400℃か ら 600℃にかけて応力が急激に低下している。これは,

熱間鍛造性を考慮した材料設計となっているためと考え

られる。この温度域では,Ti-6Al-4V に比べて KS-ELF は,

伸びやすく,工具と被加工材との摩擦係数も高くなるこ とが推定できる。これまでの研究では,工具と被加工材 との摩擦係数が高くなると切削性が劣化するとの報告も ある3)。おそらく切削温度域での延性が高くなった結 果,摩擦係数が大きくなり,切削抵抗も高くなったもの と考えられる。そして,工具刃先での切削温度が高くな り,工具摩耗も KS-ELF の方が速く進行するものと思わ れる。

2.内部給油による穴加工性改善

 KS-ELF の各種部品への適用を考える場合,切削性の 改善が必要となる。ここでは,切削加工技術により,切 削性を改善した例を示す。一般的に,工具摩耗が進行し た場合,切削点での材料分離能が低下し,加工面の表面 粗さを低下させることが知られている。Ti-6Al-4V に比 べて,KS-ELF は切削中の温度が高いために工具摩耗が 速く,切削性を低下させていることが分かった。ここで は,切削中の切削温度を下げるために,超硬ドリルにお いて切削点である刃先先端での冷却能力を高くできる内 部給油式ドリルを採用した。径 16.7mm のイスカル製カ ムドリルを用いて切削実験を行った。被削材は KS-ELF とした。その結果を図 7に示す。外部給油(Non coolant  hole)に比べて内部給油(With coolant hole)を採用す ることにより,同一切削条件では工具刃先での損傷が抑 制された結果,表面粗さを抑制できていることが明らか

62 KOBE STEEL ENGINEERING REPORTS/Vol. 55 No. 3(Dec. 2005)

図 3  チタン合金の各種切削速度における逃げ面摩耗幅   Effect of cutting speed on flank wear of titanium alloy

図 4  切削温度測定用工具

  Equipment for measuring cutting temperature

図 5  チタン合金切削時の切削温度測定結果

  Relation  between  cutting  speed  and  temperature  of  thermo  couple

図 6  チタン合金の圧縮応力に及ぼす温度の影響   Relation  between  temperature  and  normalized  stress  under 

compression test

図 7  内部給油式ドリルによる切削性改善結果

  Improved results of machinability by using drill with coolant  hole

100  90  80  70  60  50  40  30  20  10  0

Width of flank wear (μm)

V=100 V=50

V=20 V=10 V=5

Cutting speed (m/min)

Ti-6Al-4V  KS-ELF Tool:Type-K(H13ATip) 

Feed rate:0.1mm/rev. 

Depth of cut:0.5mm  Dry 

Length of cut:100m

Thermo couple Tip

Holder

Thermo couple

KS-ELF  Ti-6Al-4V 200 

180  160  140  120  100  80  60  40  20 

00 20 40 60 80 100 120

Cutting speed (m/min)

Temperature (℃)

0 200 400 600 800

1.2  1.0  0.8  0.6  0.4  0.2  0.0

KS-ELF  Ti-6Al-4V

Normalized stress

Temperature (℃)

v=20  f=0.0525

v=22.5  f=0.07

v=24  f=0.09

Surface roughness  (μm)

Ra  Rmax.

Non-coolant hole With coolant hole KS-ELF

8  7  6  5  4  3  2  1  0

v=20  f=0.0525

(3)

になった。この結果より,KS-ELF を切削加工する場合,

切削温度をできるだけ下げる工法を採用することが重要 であると考えられる。

3.加工熱処理による被削性の改善

 KS-ELF(TiC:2.2%相当)の組織を観察した結果を図 8(a)に示す。従来の KS-ELF では TiC が多く析出して いる。TiC 粒子が多く析出している場合,アブレッシブ 粒子として工具を擦過し,工具摩耗を促進する場合があ る。そこで,加工熱処理プロセスを変更して TiC の析出 量を変化させ,TiC 析出量と工具摩耗の関係を評価した。

加工熱処理を変えた場合の TiC 析出量の変化を図 8 に示 す。この材料を用いて切削実験を行い,工具摩耗量を比 較した結果,図 9に示すように KS-ELF 改(図 8(c), TiC:0.4%相当)は,従来の KS-ELF(図 8(a))に比べ て明らかに工具摩耗量が減少し,Ti-6Al-4V 相当の工具摩 耗量を示した。したがって,加工熱処理プロセスを変更 し,TiC 析出量を制御することにより,KS-ELF の切削性 は制御可能であることが分かった。また,TiC 析出量を 0.4%程度にすれば,Ti-6Al-4V と同等の切削性を示すこ とを明らかにした。

むすび=自動車部品への適用のために開発した KS-ELF の基本的切削特性を解析し,かつ,Ti-6Al-4V と同等の切 削性を示す方法を切削加工面および材料設計面から検討 した。以下に得られた結果を示す。

1)チタン合金切削の場合,刃先近傍での切削温度が切 削性を大きく支配する。

2)刃先先端での冷却能力を高めることにより,切削性 を改善できる。

3)加工熱処理プロセスを変更し,TiC 析出量を抑制す ることにより切削性を向上でき,Ti-6Al-4V と同等の 切削性を得られる。

 今後,切削加工および材料設計両面でさらに検討を加 え,より加工性が高いチタン合金の開発と利用方法を検 討する。

参 考 文 献

 1 )  H.  Oyama  et  al.:Materials  ScienceForum,  426-432,(2003) p.713.

 2 )  小島壮一郎ほか:材料とプロセス,Vol.15(2002), p.619.

 3 )  佐野昭一ほか:昭和 56 年精機学会秋季大会学術講演論文集,

p.816.

神戸製鋼技報/Vol. 55 No. 3(Dec. 2005) 63 図 8  加工熱処理プロセスと TiC 析出量の関係

  Relationship between heat treatment process and amount of TiC precipitation

図 9  TiC 析出量の逃げ面摩耗幅に及ぼす影響   Effect of amount of TiC precipitation on flank wear (a) Heat treatment process 1

Amount  of TiC precipitation  (area rate)

(b) Heat treatment process 2 (c) Heat treatment process 3

TiC:2.2%  TiC:1.6%  TiC:0.4% 

KS-ELF 100 

90  80  70  60  50  40  30  20  10  0

Width of flank wear (μm)

Ti-6Al-4V 0.4%TiC 1.6%TiC 2.2%TiC Tool:Type−K(H13A tip) 

Feed rate:0.1mm/rev. 

Depth of cut:0.5mm  Dry 

Length of cut:100m

V=50  V=100

図 6  チタン合金の圧縮応力に及ぼす温度の影響       Relation  between  temperature  and  normalized  stress  under 

参照

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