1 実態調査の概要
当教育センターでは,平成15年度から平成18年度に行った調査研究で,小・中・高等学校の発 達の段階に応じた「情報活用能力到達目標(例)」を設定し,これに基づいた情報教育の全体計 画(例)やシラバス(例)などを示してきた。
平成19・20年度に行う本研究に関して,各学校における情報教育の現状を把握し,情報教育に 関する教育課程の作成状況や,情報教育の推進を図るための情報活用能力の育成及び校内研修,
校種間連携の在り方などについて具体例を示すために実態調査を実施した。
(1) 目的
各校種の発達の段階における各学校の情報教育の現状及び教育委員会の支援状況などを把握 する。
(2) 内容
ア 情報教育に関する教育課程等の作成状況
イ 情報教育やICT活用に関する校内研修の実施状況 ウ 情報教育に関する校種間連携の実施状況
エ 情報モラルの指導状況
オ 情報活用能力到達目標(例)一覧のすべての項目に対する指導状況 (3) 方法等
対象 県内の全公立学校及び市町村教育委員会 期間 平成19年11月8日~16日
方法 Webページ入力による回答
2 実態調査の結果と考察 (1) 情報教育の実施状況
各学校における情報教育の実施状況について,調査結果から課題を明確にする。
ア 情報教育に関する教育課程等の作成状況 情報教育に関する全体計画を作成している 学校の割合は,前回調査(平成17年度)と比 較すると小・中学校で約1割,高等学校で約 3割強増加している(図3)。
教育課程等を作成する際に当教育センター が研究紀要第109号で示した情報活用能力到 達目標(例)一覧を参考にしている小学校は 約8割,中学校は約7割である(次頁図4)。
発達の段階に応じて体系的に情報教育を推 進するためには,全体計画の作成や各教科等 の指導計画にコンピュータやインターネット
などの活用場面を明記したり,情報教育が行える単元を示したりすることが重要である。
第2章 本県における情報教育の現状
図3 情報教育の全体計画の作成状況
【問】 情報教育の全体計画がありますか。
74.0 62.4 51.0 50.0 16.0
20.0
26.0 37.6 49.0 50.0 84.0
80.0
85.3 14.7
0 20 40 60 80 100
小学校 (19年度)
中学校 (19年度)
高等学校 (19年度)
特別支援学校 (19年度)
(%) ある ない
19年度 小学校
17年度 19年度 中学校
17年度 19年度 高等学校
17年度 特別支援学校
19年度
また,インターネットや携帯電話を介した 事件に巻き込まれることがないようにするた め,小学校の低学年から情報モラルについて の系統的な指導も重要となる。
本研究を通して改訂した情報活用能力到達 目標(例)及び具体的な指導例や指導上の留 意点については第3章に示しているので,各 学校で教育課程を作成する際の参考にしてい ただきたい。
イ 情報教育やICT活用に関する校内研修の実施状況 情報教育やICT活用に関する校内研修を
実施している学校の割合は,校種が上がるに つれて少なくなっている(図5)。
また,実施回数は,年1回と答えている学 校が多い(図6)。
研修内容は,小・中学校では「ICT活用 指導力を高めることを目的とした実技研修」
が多く,高等学校では「情報モラルの指導」
の割合が高くなるなど,校種による違いが多 少は見られるが,どの校種でも「ICT活用 指導力の向上」,「情報活用能力の育成」,
「情報モラルの指導」の割合が高い。「ICT 活用指導力の向上」に関しては,授業を通し た研修を行っている学校もある(次頁図7)。
情報教育を推進するためには,校内研修の 年間計画の中にその内容を取り入れることが 大切である。
文部科学省の「学校における教育の情報化 の実態等に関する調査(平成19年度)」から も,ICTを授業で活用して指導できること が本県の課題となっている。実技研修は,コ
ンピュータ等の操作スキルを向上させるのに有効であるが,授業の中でのICT活用のイ メージをもつためには,授業を通した研修を行うことが効果的である。
しかし,情報教育に関する研修を年1回以上実施することは難しいことも考えられるの で,校内研修で行なっている研究授業の中にICT活用の視点を取り入れるなどの工夫を する必要もある。
図4 情報教育の全体計画等の作成に情報活用 能力到達目標(例)を参考にしている学校の 割合
図5 校内研修の実施状況
図6 校内研修の実施回数
20.8
30.8 79.0
68.8 0.4
0.2
0 20 40 60 80 100
小学校
中学校
高等学校
(%) 参考にしている 参考にしていない 無回答
【問】 本年度の情報教育の全体計画や指導計画を作成する際,当教育セ ンターが研究紀要第109号(平成17年3月刊行)で示した情報活用能力 到達目標(例)を参考にしていますか。
平成19年3月に提示しているため設問無し
85.9
69.5
42.9
53.3
13.6
29.7
57.1
46.7
0.5
0.8
0 20 40 60 80 100
小学校
中学校
高等学校
特別支援学校
(%) ア している イ していない 無回答
【問】 本年度,情報教育を推進するための校内研修を実施しています か。
↑ 無回答↓
【問】 実施回数をお答えください。
84.3
58.3
37.5
22.2
25.0 25.0
72.2 12.6
9.2
5.6
12.5
4.9 11.6 3.6
1.6
13.9%
0 20 40 60 80 100
小学校
中学校
高等学校
特別支援学校
(%) 年1回 年2回 年3回 その他
また,インターネット上の「掲示板」への 書込みによる誹謗中傷やいじめへなど喫緊の 課題に対応するためには,情報教育と他の研 修を関連付けた情報モラルの研修を行うこと も必要である。
例えば,人権教育や生徒指導などの校内研 修に情報モラルの視点を取り入れることで,
限られた研修回数の中で情報教育に関する研 修を行うことができる。
なお,校内研修の在り方を考える視点と実 践例については第5章で述べる。
ウ 情報教育に関する校種間連携の実施状況 学校独自で他校種と情報教育やICT活用 に関する連携の取組を行っているのは,中学 校(対小学校)の約1.5割を除くと,他の校 種では1割未満であった(図8)。
学校の置かれた地理的条件や学校規模など により,校種間の連携を図るにはいろいろな 課題も考えられるが,今回の調査から,連携 の取組を行っている学校もあることが分かっ た。
高等学校では約5割が中学校における情報 教育の実態を把握した上で普通教科「情報」
の授業を実施しており,実態把握の方法とし ては「生徒へのアンケート」が多い(図9)。
小・中・高等学校を通した体系的な情報教 育を進めるためには,校種間でお互いの情報 教育の内容を把握し,その接続に配慮して指 導することが大切である。
そこで,近隣の小・中学校同士で情報の共 有を行っている実践例や,中学校までの情報 教育の内容を把握する工夫を行っている高等 学校の実践例について第4章で述べる。
図7 校内研修の内容
図8 校種間連携の状況
図9 高等学校における中学校の情報教育の 実態把握の状況
【問】 情報教育に関する校内研修の内容をお答えください。
(複数回答可) 15.9
38.9
73.2
6.5
7.9 8.1
33.5
6.5
8.1 5.6
25.0
38.9
5.6
50.0 0.0
37.5
87.5
0.0
12.5
25.0 33.3
65.9
42.2
13.9
0 20 40 60 80 100
情報教育の全体計画や指導 計画の作成に関する研修
ICT活用指導力を高める ことを目的とした実技研修
情報モラルの指導内容や指 導法に関する研修
(%)
小学校 中学校 高等学校 特別支援学校
情報教育の全体計画や指導 計画の作成に関する研修 授業で情報活用能力を育成 する指導法に関する研修 ICT活用指導力を高める ことを目的とした実技研修
情報モラルの指導内容や 指導法に関する研修
その他
ICT活用指導力を高める ことを目的とした授業を通 した研修
【問】 学校独自で他校種と情報教育やICT活用に関しての連携や 共同の研修を行う機会を設けていますか。
8.3
15.4
91.7
84.2
92.9
96.4 1.1
3.6
6.0 0.4
0 20 40 60 80 100
小学校 (対中学校)
中学校 (対小学校)
中学校 (対高等学校)
高等学校 (対中学校)
(%) 設けている 設けていない 無回答
【問】 中学校における情報教育の実態を把握して,普通教科「情報」の 授業を行っていますか。
【問】 その方法について,お答えください。
53.6 46.4
0 20 40 60 80 100
高等学校
(%)
ア 行っている イ 行っていない
86.7 13.3
0 20 40 60 80 100
高等学校
(%)
生徒へのアンケート その他
エ 情報モラルの指導状況
ほとんどの学校において情報モラルの指導 が行われている(図10)。
指導内容は「情報社会のルールやマナー」
や「情報の安全な活用」に関することがどの 校種でも多い(図11)。
また,情報モラルの指導場面は,小学校で は総合的な学習の時間,中学校では教科(技 術・家庭),高等学校は教科(情報)で主に 行われている(図12)。
情報モラルの指導を充実させるには各校種 とも「具体的な実践事例」や「指導に用いる 教材」が必要であると回答している(図13)。
インターネットや携帯電話の利用から,児 童生徒が被害者や加害者になる問題が増加し ている。このことから,情報モラルや情報セ キュリティに関する指導は,小学校低学年か ら系統的に行い,情報社会における正しい判 断や望ましい態度を育てるとともに,情報社 会で安全に生活するために,危険回避方法の 理解やセキュリティの知識・技術・健康への 意識等を育てる必要がある。
今回の情報活用能力到達目標(例)の改訂
では,情報社会に参画する態度に関する到達目標について,小学校低学年から日常モラル との関連に考慮して新たに設定した。これらの指導は特定の教科で行うだけでなく,学校 全体で体系的に取り組むことが大切である。
また,情報教育の指導計画の中だけでなく,各教科や総合的な学習の時間,道徳などの 指導計画への位置付け,生徒指導等と関連付けた児童生徒への指導など,あらゆる場面で 繰り返し指導を行う必要がある。
図10 情報モラルの指導の状況
図11 情報モラルの指導内容
図12 情報モラルの指導場面 図13 情報モラルの指導に必要な資料等
【問】 本年度,情報モラルの指導にどのように取り組んでいますか。
59.1
26.7
20.2
0.0
12.1
39.8
31.0
20.0
26.7
33.1
44.0
66.7
4.8
13.3 2.1
0.4
0 20 40 60 80 100
小学校
中学校
高等学校
特別支援学校
(%) 情報教育の指導計画を作成して指導 各教科等の指導計画に位置付けて指導
必要に応じて指導 指導していない
【問】 情報モラルの指導内容をお答えください。(複数回答可)
0.0
81.6
94.4
64.3
6.7
29.5
84.2 93.4 62.0
1.9
54.1
94.0
2.4
90.5 89.3 76.2
53.3 60.0
86.7 33.3
0 20 40 60 80 100
情報社会での責任
ルールやマナー
情報の安全な活用
情報セキュリティ
その他
(%)
小学校 中学校 高等学校 特別支援学校
【問】 情報モラルの指導を充実するためには何が必要ですか。
(複数回答可)
49.6
66.3
1.9
78.2
53.4
2.6
31.0
75.0
46.4
42.9
3.6
40.0
86.7
53.3
73.3
0.0
77.9
47.9 41.4
60.5
0 20 40 60 80 100
指導計画例
具体的な 実践事例
指導に用 いる教材
指導する 時間や機会
その他
(%) 小学校 中学校 高等学校 特別支援学校
【問】 どの場面で情報モラルの指導をしているかをお答えください。
(複数回答可)
93.7
5.3
94.0
16.2
23.3
45.5
4.5 0.0
6.0
22.6 40.0
6.7
20.0
40.0
80.0 17.7
7.0
31.3
20.2
85.7
0 20 40 60 80 100
各教科
道徳
特別活動
総合的な 学習の時間
その他
(%) 小学校 中学校 高等学校 特別支援
(2) 「情報活用能力の育成」に関する指導状況
ここでは,研究紀要第109・111号で示した情報活用能力到達目標(例)に対する実際の指導 状況の調査結果について述べる。なお,小学校では到達目標(例)に対して低・中・高学年の どの段階で主に指導しているか,中・高等学校については,卒業までに指導しているかの割合 を示している。到達目標(例)一覧については,24・25頁を参照していただきたい。
ア 情報活用の実践力(「A-5 マウスとキーボードの操作」)に関する指導状況
この項目については,それぞれの到達目標(例)に対して,該当の段階までにおおむね ねすべての学校で指導が行われていた。このことから到達目標(例)の設定として妥当で あると考えている。しかし,小学校高学年の到達目標(例)については,中学年までに約 7割が指導していることから,高学年及び中学年の到達目標(例)の見直しが必要である
(図14)。なお,マウス操作については,小学校低学年のみの設定であったので,他の段 階にも到達目標(例)を設定することにした(12頁「A-5」参照)。
イ 情報活用の実践力(「A-9 電子メールの操作」)に関する指導状況
この項目については,他の項目と比べて指導している割合が少ない(図15)。
電子メールの送受信について扱うことは相手を意識した情報伝達の指導を行うことに有 効である。また,小学校中学年でも,情報収集の手段として電子メールを活用している状 況もあることから,到達目標(例)を設定することにした(14頁「A-9」参照)。
図14 「マウスとキーボードの操作」に関する到達目標(例)と実際の指導状況
図15 「電子メールの操作」に関する到達目標(例)と実際の指導状況
84.0 22.0
6.0
99.0 87.0
14.0 74.0
64.0 29.0
13.0
4.0
1.0 1.0 1.0 1.0
0 20 40 60 80 100
小学校 低学年 小学校 中学年 小学校 高学年 中学校 高等学校
(%)
各発達の段階の到達目標(例)に対する実際の指導状況
指導している
指導していない
低学年で指導している 中学年で指導している
高学年で指導している
指導していない
各発達の段階の到達目標(例)
マウスを用いて,簡単な絵をかくことができる。
キーボード操作により,かな入力やローマ字入力で簡単な 単語を入力することができる。
キーボード操作により,かな入力やローマ字入力で簡単な 文章を入力することができる。
キーボード操作により,かな入力やローマ字入力で作文や レポートを書くことができる。
キーボードの機能(ショートカットキーやファンクションキー)を使い分け,
タッチタイピングで作文やレポートを作成することができる。
小学校低学年 小学校中学年 小学校高学年 高等学校
中学校
各発達の段階の到達目標(例)
手引きを用いて,電子メールの送受信をすることができる。
電子メールの送受信をすることができる。
添付ファイルや署名を付けた電子メールを送ったり,To, CC,BCCを使い分けたりすることができる。
小学校低学年 小学校中学年 小学校高学年 高等学校
中学校
学習指導要領や教科書等に高学年の 内容が示されており,指導すること も考えられる。
学習指導要領や教科書等に高学年の 内容が示されており,指導すること も考えられる。
56.0 35.0
6.0 39.0 55
44 65
0.0
0 20 40 60 80 100
小学校 低学年 小学校 中学年 小学校 高学年 中学校 高等学校
(%)
各発達の段階の到達目標(例)に対する実際の指導状況
指導している 指導していない
低学年で指導している
中学年で指導している 高学年で指導している 指導していない
ウ 情報の科学的な理解(「B-5 コンピュータ活用」)に関する指導状況
この項目については,それぞれの到達目標(例)に対して,該当の段階までに7割以上 の学校で指導が行われており,到達目標(例)の設定として妥当であると考える(図16)。
しかし,小学校高学年の到達目標(例)については,中学年で約3.5割の学校がすでに指 導していることから,中学年までの到達目標(例)を設定することにした(17頁「B-5」
参照)。
エ 情報社会に参画する態度(「C-1 情報発信」)に関する指導状況
この項目については,それぞれの到達目標(例)に対して,該当の段階までに指導が行 われており,到達目標(例)の設定として妥当であると考える(図17)。
小学校高学年の到達目標(例)については,高学年までにほとんどの学校で指導が行わ れているが,中学年までに約5割の学校がすでに指導していることから,低・中学年から の指導も可能であると考えている。
「情報社会に参画する態度」の育成に関しては,日常生活での基本的ルールやマナーの 指導が大切と考えており,総合的な学習の時間及び各教科,道徳,特別活動等のすべての 教育活動の中で指導が行われるように小学校低学年から到達目標(例)を設定した。
中学校の到達目標(例)については,「発信する情報」の内容を示し,指導内容を明確 にした(20頁「C-1」参照)。
図16 「コンピュータ活用」に関する到達目標(例)と実際の指導状況
図17 「情報発信」に関する到達目標(例)と実際の指導状況
各発達の段階の到達目標(例)
相手の気持ちを考えて,情報を発信しようとする。
自分の発信した情報を見直し,より分かりやすい情報を 発信しようとする。
重要な情報を発信する際には,暗号化したり,別の手段 を用いたりしようとする。
小学校低学年 小学校中学年 小学校高学年 高等学校
中学校
各発達の段階の到達目標(例)
問題を解決する際に,課題に応じてコンピュータの活用 が有効であることを実感することができる。
コンピュータを用いることの長所・短所を具体的に述べる ことができる。
コンピュータによる情報処理の特徴を人間とコンピュー タの情報処理を対比させ,説明することができる。
小学校低学年 小学校中学年 小学校 高学年 高等学校
中学校
学習指導要領や教科書等に高学年の 内容が示されており,指導すること も考えられる。
95.0 67.0
35.0 60.0
33.0
0.0
5.0
5.0
0 20 40 60 80 100
小学校 低学年 小学校 中学年 小学校 高学年 中学校 高等学校
(%)
各発達の段階の到達目標(例)に対する実際の指導状況
指導している 指導していない
低学年で指導している
中学年で指導している 高学年で指導している
指導して いない
14.0
79.0 61.0
35.0 46.0
21.0 39.0
5.0
0 20 40 60 80 100
小学校 低学年 小学校 中学年 小学校 高学年 中学校 高等学校
(%)
各発達の段階の到達目標(例)に対する実際の指導状況
指導している 指導していない
低学年で指導している
中学年で指導している 高学年で指導している
指導していない