産業医科大学医学部放射線衛生学講座 大津山彰 、岡 龍史、法村俊之 放射線生物研究 ( )
遺伝子ハプロ不全の発がん過程への関与
1.はじめに
遺伝子については膨大な研究が様々な培養細胞、実験動物において、また様々なストレス
…一連の放射線被曝は言うに及ばず、化学物質や温熱、果ては飢餓や無重力への暴露 …に よって活性化されることが見出され、さらに下流の種々の遺伝子群を発現させ、その後の機能や 反応を起こす重要なシグナル伝達経路の一翼を担っていることが明らかにされている( )。し かしながら、これら膨大な実験結果の多くは、動的である 遺伝子発現の一時点あるいはごく 短時間の動きをみているという理由で、あるいは細胞集団の平均値として解析されるという理由 で、成果の多くは未だ生物の不思議の混沌の中にあり、それらの意義と理解を模索する途中にあ るといわざるを得ない。一方、発がんとの関わりについては、 遺伝子に起こる突然変異や、
欠失等は腫瘍抑制経路の減弱した効果として、がん細胞で起こる頻度の高い変化としてみいださ れており( )、また、先天性の一連の 遺伝子のヘテロ接合突然変異症候群における自発が んの発生率の高さから、 遺伝子の存在状態が発がん過程に深く関与していることが認められ ている( )。
このように原因と結果は明快で、 遺伝子の基本的な動的機序の解析も進み( )、先に述 べた ( )のような 遺伝子ハプロ不全が主な原因とされる遺伝性 疾患で( )、発がんとの関係が強く示唆されているにもかかわらず、その機構についてはよくわ かっていない( )。しかし、 遺伝子ハプロ不全の発がん過程への関与という切り口は、
まず 遺伝子産物の量的な違いからのアプローチが可能であり、このこと自体が初期腫瘍発生 に必要なイベントかどうかというところからの解析法として有用な糸口となるということで、こ こを切り口として、これまで行われてきた研究の一部の現状に、我々が行っている実験で得られ つつある結果も加え、 遺伝子ハプロ不全の発がん過程への関与を考える。
北九州市八幡西区医生ヶ丘
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キーワード 遺伝子、ハプロイド、発がん、放射線