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ヘルムホルツ共鳴器の頸部延長による低音域用薄型吸音構造 [ PDF

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Academic year: 2021

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(1)ヘルムホルツ共鳴器の頸部延長による低音域用薄型吸音構造 金子 芳人. 1. はじめに 近年,一般家庭にもシアタールームやリスニングルー ムが普及しつつある。このような小空間では低音域に おけるブーミングなどの音響障害が発生しやすいため, それを防止するために低音域における十分な吸音が必 要となる。本研究は,このような小空間に適用できる 薄型の吸音構造を開発しようとするものである。小空 間に適用可能な低音吸音構造には,薄型で低周波数の 音を広帯域に吸音する性能が求められる。本研究では, 薄いヘルムホルツ共鳴器を基本にして,こうした条件 を満たす吸音構造を探る。 一般に,ヘルムホルツ共鳴器の共鳴周波数 f0 は,f0 = √ c/2π a/V le で与えられる。ここで,c は音速 [m/s],a は開口部の面積 [m2 ],V は胴部の体積 [m3 ],le は頸部 の実効長さ [m] である。この式から,f0 は,開口部の 面積を小さくする,胴部の体積を大きくする,頸部の 実効長さを長くすることで小さくできることがわかる。 建物の壁のように,薄い板の背後に閉空間を有する 構造を想定すると,頸部を胴部内に延長することで,共 鳴器の大きさを変えることなく f0 を低域に持っていく ことができると考えられる。しかし,頸部を延長する と胴部の体積は減少するため,低域へ移動できる周波 数には限界があると思われる。また,頸部は “実効” 長 さという名称からも推察されるように,ヘルムホルツ 共鳴器における頸部と胴部の正確な境界は分からない。 そこで本研究では,ヘルムホルツ共鳴器を基本とした 吸音構造の音場を時間領域差分法 1) (以下 FDTDM と 表記) によって数値解析し,そこから吸音特性を求める こととする。 まずは頸部長さを変化させることで低音域の吸音性 能を改善させることについて検討し,その後,頸部長 さの異なる複数の共鳴器を組み合わせることによる吸 音域の広域化について検討する。 2. 薄型ヘルムホルツ共鳴器の吸音特性 2.1 頸部の折り曲げ方が吸音特性に与える影響 胴部内に頸部を伸ばしていくと胴部の端に到達する ため,頸部を更に延長させるには必ず頸部を曲げる必 要が出てくる。その際に頸部の折り曲げ方は無数に考 えられるが,折り曲げ方によって吸音特性が変わらな いかどうかを検討することにした。頸部の折り曲げ方 として,直角に曲げる場合 (図-1 の Case1) と蛇行して 曲げる場合 (Case2) について検討することとし,頸部. 図-1 頸部の折り曲げ方. 図-2 吸音構造の基本形状. 図-3 解析音場 を系統的に伸ばしていき,同じ頸部長さでも曲げ方に よって f0 に違いが出るか確かめた。検討に用いる共鳴 器は,図-2 に示す大きさ 100 mm × 100 mm × 70 mm. (Type1) と大きさ 200 mm × 200 mm × 60 mm (Type2) の 2 つで,いずれも開口部の面積 a は 400 mm2 とし た。Type1 では,頸部の長さ l を 30 mm から 270 mm まで 60 mm ずつ延長した 5 パターンについて,Type2 では l を 30 mm から 180 mm まで 50 mm ずつ延長し た 4 パターンについて解析した。解析は,図-3 に示す 音場を想定し,端部に図-2 の吸音構造を設置した場合 に,“Sound Source” の位置で平面波を初期音圧として 与え “Recieve Point”(16 点) で得られる音圧から垂直 入射吸音率 α0 を算出した。計算条件は解析時間 10 ms, 空間離散幅 2 mm,時間離散幅 0.001 ms とし,PML 吸 収境界には Adaptive PML. 2). を用いた。. 頸部の長さを変化させたときの吸音率の変化を図-4 に示す。Type1(上図),Type2(下図) について,頸部を 直角に曲げた場合 (左図) と蛇行して曲げた場合 (右図) を比較すると,両者の吸音特性はほとんど同じ傾向で. 49-1.

(2) (a)Type1. (b)Type2. 図-4 頸部の折り曲げ方の違い 図-6 頸部の延長の検討に用いる吸音構造. (a)Type1. (b)Type2. 図-5 f0 の比較 ある。図には高域の周波数にも吸音率の山が現れてい るが,ここでは f0 のみに着目して図-5 に比較した。. 図-7 頸部長さ l による吸音特性の変化. f0 は,頸部の折り曲げ方によってわずか数 Hz の違 いが認められるだけであり,曲げ方による f0 への影響 はないと判断される。以上のように,頸部を折り曲げ て伸ばしても f0 を低域に持っていく効果はあり, その 効果は曲げ方に関係しないことが分かった。そこで大 きさを決めた共鳴器について,頸部の長さを可能な範 囲まで伸ばしたときの吸音特性について検討する。. 2.2 頸部の長さが吸音特性に与える影響 図-6 に示すような大きさ 88 mm × 88 mm × 70 mm の共鳴器について,頸部を胴部内に延長することで, f0 をどこまで低域に持っていくことができるか検討し た。開口部の面積 a は 256mm2 であり,頸部の長さ l を 26 mm から 394 mm までらせん状に系統的に伸ばし た 6 パターンで解析を行った。計算条件は,頸部の延 長を考慮して解析時間を 200 ms としたことを除いて 2.1 と同様である。また解析手法の特徴上,共鳴器内 部に減衰項となる要素を入れる必要があったために単 位面積流れ抵抗 ρ が 56,940 kg/m3 の多孔質吸音材 (密 度 96 kg/m3 のグラスウールに相当,以下 GW96K と. 49-2. 図-8 f0 の予測値と計算値の比較 表記) を挿入した。 頸部の長さを変えたときの吸音特性の変化を図-7 に 示す。この図より,頸部を伸ばすことで f0 を低域に移 動させる効果が確認できた。この f0 を胴部内に侵入し た頸部の体積分を引いた胴部の体積 V ′ を用いて計算 した f0 の予測値と比較して図-8 に示す。図より予測 値と実際の f0 には差が認められるが,変化の傾向は概 ね一致した。また,その差は頸部が短いときに大きく, 頸部が伸びるにつれて小さくなる傾向が見られた。こ.

(3) 図-11 2 つの共鳴器を組み合わせた吸音構造. 図-9 解析および実測する吸音構造. 図-12 2 つの共鳴器を組み合わせた構造の吸音特性. 図-10 計算値と測定値の比較. 傾向は概ね一致している。このことから頸部を伸ばす. れは,頸部の長さがヘルムホルツ共鳴器の頸部として. と f0 を低域に移す効果があることが実証できた。. 短いためであると考えられる。頸部を最大に伸ばして も f0 はまだ限界点となっていないと思われ,今回の形 状では頸部の長さの限界を見出すことは出来なかった。 とはいえ,頸部を伸ばすことで f0 を小さくできること は確認できた。. 2.3 頸部を伸ばす効果の実測による検証 解析による頸部延長の効果を検証するために,音響 管 (B&K Type4206 の太管) を用いて垂直入射吸音率の 測定を行い,吸音特性の計算値と実測値を検討した。検 討する形状は,図-9 に示す管径 100 mm で厚さ 200mm の筒状の共鳴器で,前面壁には円形天然ゴム,頸部に は角型アルミニウム管 (管径 10 mm × 10 mm,厚さ 1.0 mm) を使用した。開口部の面積 a は 324 mm2 とし, 頸部の長さ l を 10 mm から 150 mm まで 50 mm ずつ 伸ばした 4 パターンで計測を行った。そして実測と同 じ吸音構造について解析した。 計算値と実測値の比較を図-10 に示す。吸音率は,実 測値では 0.5 Hz ごと,計算値では 3.8 Hz ごとの値であ る。図-10 より,吸音率の値は絶対値では必ずしも一 致していないが,頸部の延長による吸音特性の変化の 49-3. 3. 頸部長さの異なる共鳴器を組み合わせた構造の吸音 特性 2. より頸部を伸ばすことで低音域の吸音性能を改善 できることが分かった。そこで吸音域を広域化させる ために,頸部長さの異なる共鳴器を組み合わせること で,複数の吸音率のピークを立たせられないか検討し た。まず,2 つの共鳴器を組み合わせて吸音率のピーク が 2 つ立つか確認した。検討した形状は,図-11 に示す ような大きさ 200 mm × 100 mm × 20 mm で,開口部の 面積 a を 400 mm2 (TypeA) と 240 mm2 (TypeB) とし た 2 つの吸音構造である。2 つの頸部長さ l は TypeA, TypeB それぞれ 2 パターンずつ延長した。 結果を図-12 に示す。この図より,いずれの形状にお いても吸音率のピークが 2 つ出現することが確認出来 た。次に頸部の長さの異なる 4 つの共鳴器を組み合わ せた場合について検討した。組み合わせ方としては,頸 部を 2 つに分岐して更に分岐する場合 (TypeC) と,頸 部を一度に 4 つに分岐させる場合 (TypeD) の 2 つが考 えられる。そこで TypeC と TypeD それぞれに,図-13.

(4) 図-15 8 つの共鳴器を組み合わせた吸音構造. 図-13 4 つの共鳴器を組み合わせた吸音構造. 図-16 8 つの共鳴器を組み合わせた構造の吸音特性 頸部長さ l は,f0 が 1/4 Oct. ごとになるように予測式 から決定した。 結果を図-16 に示す。吸音特性の山は網掛け部分に 示すように 8 つの内 7 つが立ち,山のピーク値は高域 側ほど低くなる傾向が見られた。この原因については 今回解明できていないが,8 つの吸音率の山が適度な 周波数間隔で並ぶことで,より広帯域に亘って吸音で きることが示された。. 図-14 4 つの共鳴器を組み合わせた構造の吸音特性 に示すような 200 mm × 200 mm × 20 mm の大きさで, 開口部の面積 a を 400 mm2 と 240 mm2 にした 2 つの 吸音構造で検討した。 結果を図-14 に示す。TypeC は吸音特性の山が 1 つ もしくは 2 つしか立たなかった。頸部を 2 つに分岐し て更に分岐する場合,頸部を共有する部分が大きくな るため 4 つの頸部長さを変えにくいといった欠点があ る。一方 TypeD は 4 つの吸音率のピークが確認され,. 2 つのピークの周波数間の吸音率も少し持ち上がった。 この結果から,組み合わせ方として TypeD の方が優 れており,頸部の分岐は一度にした方が良いことが分 かった。これを踏まえて,吸音率の更なる広域化のた めに共鳴器を 8 つ組み合わせた場合 (TypeE) について 検討した。検討した形状は,図-15 に示すような大き さ 400 mm × 200 mm × 20 mm で,開口部の面積 a は 240 mm2 とした 1 つの吸音構造である。ここで 8 つの. 49-4. 4. まとめ 本研究は,ヘルムホルツ共鳴器を基本として,小空 間に使用する薄型で低周波数の音を広帯域に亘って吸 音させる吸音構造を開発することを目指して,頸部を 伸ばすことで低音域の吸音性能の改善を図る検討を行 い,更に頸部の長さが異なる複数の共鳴器を組み合わ せることで吸音域を広域化させる検討を行った。その 結果,頸部を伸ばすことで f0 を低域に移す効果がある こと,また共鳴器を組み合わせることで吸音率のピー クが複数立つことが示され,開発に向けての知見が得 られた。ただし今回示した吸音構造の吸音特性は山の 隙間が目立ったため,この隙間を埋めることが今後の 課題である。そのためにより多種類の共鳴器を組み合 わせる検討を行いたい。また,山のピーク値が高域側 ほど低くなった原因についても今後解明していきたい。 参考文献 1) 坂本慎一, 橘秀樹: 差分法による 2 次元音場の過渡応答の数値 計算, 日本建築学会講演梗概集 D (環境工学), pp.1757-1758 (1994) 2) 坂本慎一: 音波の進行方向に適応した PML 無反射境界, 日本音 響学会研究発表会講演論文集 (秋), pp.909-910 (2005).

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