気象庁委託調査
気候情報を活用した気候リスク管理技術に関する
調査報告書【概要版】
~ドラッグストア産業分野~
平成 27 年 3 月
株式会社インテージ
(協力:日本チェーンドラッグストア協会)
< 目 次 >
1.調査目的 ··· 1
2.調査方法 ··· 1
(1)利用データ ··· 1 (2)分析方法 ··· 23.気候リスク評価と対応 ··· 3
(1)虫対策商品 ··· 3 (2)熱中症対策商品 ··· 8 (3)風邪・乾燥対策商品 ··· 134.まとめ ··· 17
(1)気候リスク管理の「評価」 ··· 17 (2)気候リスク管理の「対応」 ··· 19 (3)調査結果の活用について ··· 22 (4)日本チェーンドラッグストア協会からのコメント ··· 221.調査目的
気候情報を活用したリスク管理(一定期間持続する顕著な高温や低温等による影響を分 析・評価し、悪い影響の軽減や良い影響の利用に向けた対策の実施)を行うことにより、気 候リスクを軽減あるいは利用できる産業分野は多い一方、週間天気予報より先の予測につい てはその予測精度が向上してきているにも関わらず、利活用が進んでいないのが実情である。 本調査は、交通政策審議会気象分科会「気候変動や異常気象に対応するための気候情報とそ の利活用のあり方」(平成 24 年 2 月 27 日)の提言を受け、気候の影響を受けやすい産業 分野を対象とした気候リスク管理の有効性を示す実例(成功事例)を創出し、その成果の公 表により、様々な産業分野へ気候リスク管理の普及に資することを目的として実施した。本 調査は、気候の影響を受けやすい産業分野としてドラッグストア産業業界を対象とし、日本 チェーンドラッグストア協会(JACDS)の協力を得て、気象庁の委託調査として、株式会 社インテージ(以下、弊社)が実施したものである。2.調査方法
(1)利用データ
①販売データ ・JACDS 会員企業 2 社(東京 23 区内を中心に店舗を持つ A 社、岡山県 を中心に店舗を持つB 社)から提供いただいた店舗での販売データ。 ・弊社の全国小売店パネル調査(SRI)1の POS データ2(東京23 区、札 幌のドラッグストア)(地域的な傾向等の把握に利用)。 ・気温と販売数に関係のありそうな品目を中心に選定。 ②気象データ ・東京は東京(東京管区気象台(大手町))3、岡山南部は岡山(岡山地 方気象台)、岡山北部は津山(津山特別地域気象観測所)、札幌市は札 幌(札幌管区気象台)の地点データ。 ・期間は2011 年 2 月 1 日~2014 年 10 月 31 日。 ・販売数は品目ごとに、A 社、B 社のデータは 2011 年 2 月 1 日~2014 年 1 月 31 日の 3 年 間、弊社POS データは 2012 年 2 月 1 日~2014 年 1 月 31 日の 2 年間の日別販売数の最 大値を1 として指数化した。さらに、週単位の定期的なポイントデー及び曜日の影響を除 くため、各日の販売数はその日と前後3 日間の販売数の 7 日間平均値とした。 ・販売数と気温の関係の分析には、特にことわりがないかぎり日平均気温を用いた。日々の 気象変動の影響を除くため、各日の気象観測値はその日と前後3 日間の気象観測値の 7 日 間平均値とした。 ・このほか、熱中症搬送者数(消防庁)、花粉飛散量データ(環境省花粉観測システム4、 東京都健康安全研究センター5)、環境省花粉総飛散量及びスギ花粉飛散開始時期予測等6 1 スーパーマーケット、コンビニエンスストア、ホームセンター、ディスカウントストア、ドラッグストア、 専門店等全国約4,000 の小売店舗をパネルとして、小売店販売データ(POS)を定期的にオンラインで 収集する調査。 2 「Point of Sales(ポイント・オブ・セールス)」の略で、店のレジで販売(支払い)がなされる時に、 商品についているバーコードをスキャナーで読み取ることで、収集蓄積される商品・販売価格・時間等の 販売データ。 3 東京は、観測場所移転(2014 年 12 月 2 日)に伴い、現在は北の丸公園で観測されている。本報告書での 調査対象期間は移転の前であるため大手町のデータを用いている。 4 http://kafun.taiki.go.jp/を利用した。
(2)分析方法
気温を中心とした気象要素とドラッグストアでの販売品目の関係を調査(気候リスク評価) し、関係が明瞭に認められた品目(経験上の目安として相関係数 0.4 以上のもの)について、 主に2 週間先までの気温予測を利用した販売促進策等の対策(気候リスクへの対応)につい て分析を行った。以下、気候リスク評価及び気候リスクへの対応の分析方法について解説す る。 ① 気候リスク評価 気候リスクの評価は、気温の変動と各品目の販売数の変動の関係について、主に下記の点 に着目して分析を行った。 ・平均気温と販売数の相関関係 ・販売数が大きく増加する時期の気温 ・販売数が増加する期間の気温と販売数の変動 ・地域(札幌、東京、岡山)ごとの上記それぞれの特徴の違い ・熱中症対策商品、花粉症対策商品の販売数の変動を検討するため、熱中症搬送者数や 花粉の飛散量と気温や販売数の関係など ② 気候リスクへの対応 気候リスク評価の結果、特に気温と販売数の関係が明瞭に認められた品目については、気 温の変動と販売数の変動の傾向が平年と異なる場合や販売数が大きく増加し始める気温に着 目し、気象庁が発表する異常天候早期警戒情報7の基礎資料として公表している 2 週間先ま での平均気温の予測8を活用した対応策を検討した。ドラッグストア各社には、該当する期 間の当時気象庁が発表した予測を利用して、具体的な対応について検討いただいた。 6 http://www.env.go.jp/press/ 7 http://www.jma.go.jp/jp/soukei/ 8 確率時系列図(http://ds.data.jma.go.jp/gmd/cpd/soukei/guidance/index.php) 確率密度分布図(http://www.data.jma.go.jp/gmd/risk/probability/guidance/index_w2.php)3.気候リスク評価と対応
気候リスクの評価と対応の事例は、虫さされ薬などの「虫対策商品」、経口補水液などの 「熱中症対策商品」、風邪薬などの「風邪・乾燥対策商品」、鼻炎治療薬などの「花粉症対 策商品」に分類した。概要版では「虫対策商品」、「熱中症対策商品」、「風邪・乾燥対策 商品」について概説する。(1)虫対策商品
○ 虫さされ薬は、東京も岡山南部も平均気温がおおむね 18℃を上まわる頃から販売数が大 きく増え始める。殺虫剤も同様である。この気温と販売数の増加量を把握することによ り、気温の上昇に伴う販売数の増加の目安を立てることができる。 ○ 虫さされ薬は、5 月中旬から 7 月中旬頃までは気温と販売数の関係が明瞭であるが、気 温のピークとなる8 月には販売数は落ち、気温との関係は不明瞭となる。 ○ 虫さされ薬、殺虫剤ともに、販売数が増加する期間において、週単位の気温の変動と販 売数の変動が連動している。この関係を把握することで、前週と比べた販売数の増加・ 減少の目安を立てることができる。 ○ 札幌市における殺虫剤の販売数は、東京よりも 5℃以上低い気温で増加しはじめ、気温 の上昇に伴い販売数が次第に増加する。増加し始める時期は東京とほぼ同じである。 ○ 殺虫剤は、5 月上旬から 6 月下旬頃まで気温と販売数の関係が明瞭である。東京では平 均気温が25℃に達した時の販売数が最大となった年が今回調査した 4 年間のうち 3 年あ った。 ○ 虫さされ薬や殺虫剤の販売対策としては、販売最盛期に 2 週間先までの予測で平年より 高い時期や低い時期等の変動に着目し、それらの時期の販売数の目安を把握すること で、在庫量を確認しつつ品切れや売れ残りをおこさないように発注量を調整することが 可能である。 ① 虫対策商品の気候リスク分析結果 虫対策商品として、東京の虫さされ薬、殺虫剤(ハエ・蚊用)、岡山南部・岡山北部のか ゆみ・虫さされ用薬、蚊取り線香を対象として、平均気温と販売数の関係を分析する。ここ では前者を「虫さされ薬」、後者を「殺虫剤」と記述する。また、主に岡山南部の虫さされ 薬と気温等との関係図を用いた分析結果を示し、必要に応じて東京・札幌との違いや殺虫剤 との傾向の違いを述べる。 岡山南部の虫さされ薬の販売数は平均気温がおおむね 18℃を超える頃から増加し始め、4 月下旬から 7 月中旬までは気温の昇降と販売数の増減が連動している(図 3.1、図 3.2)。 東京も同様の傾向がみられる。気温は7 月中旬以降も上昇するが、虫さされ薬の販売数は増 加していない。この要因として、虫さされ薬は飲料等のように 1 回の使用で消費される商品 とは異なり、1 回購入すれば数か月間は使用できる商品のため、気温が上昇してある程度購 買が進めば需要が満たされ、その後の販売数が増加しないことが推察される。そのため、他 のチェーン店よりも早く販売数を伸ばすことが重要となる。殺虫剤も、気温と販売数の変動 が連動する期間に多少の違いがみられるが、販売の傾向は虫さされ薬と共通している。週間単位での平均気温の変動と虫さされ薬の販売数の変動の関係をみるため、虫さされ薬 の販売数が大きく伸びる5 月 15 日~6 月 30 日の期間について、平均気温前週差と販売数前 週差の関係を調べた(図 3.3)。ある程度のばらつきはみられるものの、平均気温が前週よ りも低いほど販売数は減少し、前週よりも高いほど販売数は増加する傾向がみられる。岡山 南部では、前週から 5℃気温が上昇すると販売数指数は 0.1 程度増加している。指数化して いるので、例えば販売数指数 0.1 が 100 個に相当すると考えると、前週の販売数が 200 個 であれば、当週に気温が 5℃上昇した場合、1.5 倍の 300 個売れることに相当する。東京も 同様の関係がみられる。 図 3.2 平均気温と虫さされ薬販売数(指数)の関 係(岡山南部) 2011 年 2 月~2014 年 10 月の平均気温と販売数 (指数)の関係を示す。赤線は販売数が大きく増加する 目安の気温(18℃)を示す。平均気温、販売数(指 数)は対象日と前後 3 日間の 7 日間平均値。 図 3.3 平均気温と虫さされ薬販売数(指数)の 前週差の関係(岡山南部) 2011 年~2014 年の各年 5 月 15 日~6 月 30 日 の平均気温前週差と販売数(指数)前週差の関係 を示す。直線は 2011 年~2014 年の平均気温と販 売数(指数)の前週差の関係の近似直線(相関係 数:0.75)。平均気温、販売数(指数)は対象日と 前後 3 日間の 7 日間平均値。 図 3.1 平均気温及び虫さされ薬販売数(指数)の推移(岡山南部) 細線は平均気温(岡山)、太線は販売数(指数)を示す。平均気温、販売数(指数)は対象日と前 後 3 日間の 7 日間平均値。点線は販売数が大きく増加しはじめる目安の気温(18℃)を示す。
② 2 週間先までの気温予測を用いた気候リスク対策 平均気温の予測を用いることで、売上の最盛期に2 週間先までの平年より気温が高い時期 や低い時期等の変動に着目し、それらの時期の販売数の目安を把握し、品切れや売れ残りを 減らすように発注量を調整する対策を検討する。岡山では、2013 年は 5 月中旬から気温が 平年を上まわり、その状態は6 月中旬まで続いた(図 3.4)。特に、6 月 10 日頃からは平年 からの差がより大きくなり、他の年よりも気温が高く、虫さされ薬の販売数が急増した(図 3.5)。その後、6 月 15 日以降は気温が下がり、虫さされ薬の販売数も減少した。 2013 年 5 月 31 日発表の 2 週間先までの気温予測では、6 月上旬から中旬の気温の上昇傾 向(平年より高くなる)、6 月 14 日発表の気温予測では、6 月下旬の気温の低下傾向(平 年程度に戻る)を予測していた。これらの予測に注目した対策を表3.1 のとおりまとめた。 図 3.4 2013 年の平均気温及び平年値の推移(岡山) 期間は 5 月 1 日~8 月 15 日。平均気温は対象日と前後 3 日間の 7 日間平均値。
図 3.5 平均気温及び虫さされ薬販売数(指数)の推移(岡山南部) 細線は平均気温(東京)、太線は販売数(指数)を示す。期間は 5 月 1 日~8 月 15 日で、平均気温、 販売数(指数)は対象日と前後 3 日間の 7 日間平均値。赤丸、青丸はそれぞれ、2 週間先までの気温 予測で注目する時期を示す。 表 3.1 2 週間先までの気温予測の概要と対策 2 週間先までの 気温予測の発表日 予測の概要と対策 2013 年 5 月 31 日 (図3.6) ・6 月 2 日以降、平年よりも高い・かなり高い確率(橙色及び赤 色棒グラフ)が 50%を超えて、平年よりも高い気温で推移する と予測されている。 ・6 月 7 日~13 日のもっとも現れる可能性の高い気温は 23.5℃ で、前年(2012 年)の 22.3℃を上まわる可能性が大きく(図 3.6 下)、この時期としては販売数の増加が予想される。 ・品切れとならないように在庫量をこまめに確認して、必要に応 じて追加発注をかける。 2013 年 6 月 14 日 (図3.7) ・平年よりも高い・かなり高い確率(橙色及び赤色棒グラフ)は 急速に小さくなる。6 月 20 日~26 日は平年並(23.5℃~ 24.6℃)の確率が 38%ともっとも大きく、これまでの高温が一 段落することが予測される(図3.7)。 ・在庫過多を防ぐために、発注量を控えるように調整する。 以上のように、気象庁が発表する2 週間先までの平均気温の予測を用いて平年より気温が 高い時期・低い時期等の変動に注目し、それらの時期の販売数の目安を把握することで、追 加発注量を調整し、適正な在庫を維持することに役立てることができる。 殺虫剤の場合は販売数が大きく増加し始める平均気温はおおむね 18℃であるが、平均気 温と虫さされ薬の販売数の関係と傾向は同じことから、虫さされ薬と同様の対策が可能と考 えられる。
図 3.6 2013 年 5 月 31 日発表の気温予測(岡山) 上の棒グラフは、7 日間平均気温の「かなり低い」「低い」「平年並」「高い」「かなり高い」の 5 階級に入る 確率の推移を示す。グラフの色はその上の表の階級に対応している。例えば 6 月 7 日~6 月 13 日はかな り高い確率(赤棒グラフ)が 31%であることを示す。 下のグラフは、6 月 7 日~6 月 13 日の 7 日間平均気温の累積確率と確率密度分布を示す。図の横軸 は気温の平年偏差(カッコ内の数値は岡山の平均気温)、縦軸は確率。累積確率(図の青線)は 7 日間 平均気温がある値以下となる確率を示す。確率密度分布(図の緑線)は出現する可能性がもっとも大き いところ(右表のモデルの予測値)で最大となる。 図 3.7 2013 年 6 月 14 日発表の気温予測(岡山) 図の説明は図 3.6 と同様。
(2)熱中症対策商品
熱中症対策商品である経口補水液は、平均気温がおおむね 23℃を超える頃から販売数 が大きく増加しはじめる。 熱中症搬送者数と経口補水液の販売数の関係をみると、搬送者数が増加し始める頃から 販売数も大きく増加しており、関係が認められる。これより、熱中症予防の観点からの 積極的な販売対策が推奨される。 経口補水液は、平均気温と販売数の前週差の関係も比較的明瞭である。 スポーツドリンクも、上記 3 項と同様の傾向がみられる。ただし、販売数が大きく増加 しはじめる平均気温は、経口補水液よりもやや高いおおむね25℃となっている。 経口補水液やスポーツドリンクの販売対策としては、2 週間先までの気温予測で、熱中 症の搬送者数が増加し始める平均気温 25℃を超える時期を把握し、これらの商品の配 置を目立つところに変更する。また、25℃を超える確率が大きければ、来店客に熱中症 に対する注意を喚起しつつ、経口補水液やスポーツドリンク等を勧めて販売数を伸ばす ことなどが販売対策として有効である。 ① 熱中症対策商品の気候リスク分析結果 熱中症対策商品として東京の経口補水液やスポーツドリンク9、岡山のスポーツドリンク を対象として平均気温と販売数の関係を分析した。 東京の経口補水液の販売数は平均気温が 20℃を超えると徐々に増加し始め、おおむね 23℃を超えると販売数の増加が顕著になる(図 3.8、図 3.9)。平均気温が 30℃を最初に超 えた時点の販売数が、その年の最大になっている年が多く、その後は 30℃を超えても最初 ほどには販売数は増えない。 また、東京の経口補水液の販売数が大きく増加し始める気温(23℃)を基準温度として、 販売数増加から気温のピーク時期(8 月上旬)までに限定して気温と販売数の関係をみると、 基準温度(23℃)より 5℃高い 28℃時点の販売数は、基準温度(23℃)時点の販売数に対 して約2.6 倍となる(図 3.10)。 スポーツドリンクについては、東京でも岡山でも経口補水液の販売数が大きく増加し始め る気温より高いおおむね 25℃を超えると販売数が大きく増加する。平均気温が 30℃を最初 に超えた時点の販売数がその年の最大になることは経口補水液と同様である。 熱中症対策をより科学的な分析に基づいて実施するために、東京都の熱中症搬送者数と東 京の気温の関係を分析した。東京では 25℃を超える頃から熱中症搬送者数が増加しはじめ、 気温の上昇とともに急増する傾向がある(図 3.11)。また、経口補水液やスポーツドリン クの販売数は、熱中症搬送者数が増加し始める時期に増加する、販売数の増減と熱中症搬送 者数の増減が連動するなど、販売数と熱中症搬送者数の変動には一定の関係がみられ、特に 経口補水液はその関係が明瞭である(図3.12)。 9 (一社)全国清涼飲料工業会が制定した清涼飲料水への「熱中症対策」の表示ガイドライン (http://www.j-sda.or.jp/technology_and_regulations/regulations_and_guidelines05.php)によると、 ナトリウム濃度として、少なくとも、飲料100ml あたり 40~80mg 含有する清涼飲料水にのみ「熱中症 対策」の用語を使用することができるとされていることに留意が必要である。このように、経口補水液やスポーツドリンクの販売数の増減は熱中症搬送者数と連動して いることから、6 月~8 月の熱中症搬送者が増加する時期に熱中症に対する注意や熱中症対 策としてそれらの摂取を積極的に推奨することは、販売促進のみならず熱中症予防の観点か らも有効だと考えられる。 図 3.8 平均気温及び経口補水液販売数(指数)の推移(東京) 細線は平均気温、太線は販売数(指数)を示す。平均気温、販売数(指数)は対象日と前後 3 日間の 7 日間平均値。点線は販売数が大きく増加しはじめる目安の気温(23℃)を示す。 図 3.9 平均気温及び経口補水液販売数(指 数)の関係(東京) 2012 年 4 月~2014 年 10 月の平均気温と販売数 (指数)の関係を示す。平均気温、販売数(指数)は 対象日と前後 3 日間の 7 日間平均値。赤線は販 売数(指数)が大きく増加する目安の気温(23℃)。 図 3.10 平均気温の基準温度(23℃)の差と経口 補水液販売数(指数)の関係(東京) 2012 年~2014 年各年の 6 月 1 日~8 月 10 日の 平均気温の基準温度(23℃)差と販売数(指数)の 関係を示す。平均気温、販売数(指数)は対象日と 前後 3 日間の 7 日間平均値。直線は、基準温度以 上で気温と連動する期間のうち気温のピーク時期まで (6 月 1 日~8 月 10 日)のデータから求めた近似直 線。近似直線から、基準温度での販売数(指数)が 0.17 で基準温度差+5℃の販売数(指数)が 0.45 で あることから、5℃の上昇で販売数が約 2.6 倍となる。
図 3.12 平均気温及び熱中症搬送者数及び経口補水液販売数(指数)の推移(東京) 期間は 5 月 21 日~9 月 15 日。熱中症搬送者数は 6 月 4 日以降のデータのみ。細線は平均気温、 太線は販売数(指数)、棒グラフは熱中症搬送者数を示す。平均気温、販売数(指数)、熱中症搬送者 数は 7 日間平均値。点線は販売数が大きく増加しはじめる目安の気温(23℃)を示す。 ② 2 週間先までの気温予測を用いた気候リスク対策 熱中症搬送者数が増え始め、経口補水液やスポーツドリンクの販売数が増加する 25℃を 超える時期を 2 週間先までの気温予測をもとに把握することで、店頭で実施可能な対策を 2013 年 7 月を対象にして検討する。 東京では2013 年は 7 月上旬に平均気温が平年を上まわって 25℃を超え、7 月 10 日頃に は平均気温が 30℃に達しており(図 3.13)、この時期は熱中症搬送者数が増加した(図 3.12)。熱中症に対する注意喚起はドラッグストアでも行われているが、夏の最盛期が主で、 6 月に実施しているところは少ないと考えられる。 2013 年 6 月 25 日発表及び 6 月 28 日発表の 2 週間先までの気温予測では、7 月上旬の気 温の上昇傾向(平年より高くなる)や 25℃を超える可能性を示した。これらの予測に注目 した対策を表3.2 のとおりまとめた。 図 3.11 平均気温と熱中症搬送者数の関係(東京) 2011 年~2014 年の各年の 6 月 4 日~9 月 15 日の平 均気温と熱中症搬送者数の関係を示す。平均気温、 熱中症搬送者数は対象日と前後 3 日間の 7 日間平均 値。
図 3.13 2013 年の平均気温と平年値の推移(東京) 期間は 6 月 1 日~8 月 31 日。平均気温は対象日と前後 3 日間の 7 日間平均値。点線はスポーツドリ ンク等の販売数が大きく増加しはじめ、熱中症搬送者数が増加しはじめる目安の気温(25℃)を示す。 表 3.2 2 週間先までの気温予測の概要と対策 2 週間先までの 気温予測の発表日 予測の概要と対策 2013 年 6 月 25 日 (図3.14) ・6 月 29 日~7 月 4 日から気温が平年より高い確率(橙色及び赤 色棒グラフ)が大きくなる(図3.14 上)。2 週間先(7 月 3 日 ~7 月 9 日)に 25℃を超える確率は 57%(図 3.14 下:25℃以 下の確率が43%であるので 25℃を超える確率は 100%-43%と なる)となり、次第に平年を上まわり、この時期としては気温 が高くなることが予測される。 ・週間天気予報の最高気温等も参考にしつつ、気温が高くなる時 期に経口補水液等の熱中症対策商品を来店客の目につきやすい 場所に山積みするなど、購買意識を高めることで、売り逃しを 減らすことができる。 2013 年 6 月 28 日 (図3.15) ・引き続き平年より高い確率が大きく、2 週間先(7 月 6 日~7 月 12 日)に 25℃を超える確率は 69%とさらに高まり、熱中症に 対する注意が必要である。 ・店内で熱中症に対する注意を喚起するボード等を使って熱中症 対策を来店客に促すとともに、熱中症対策商品を買いやすくす るために特設コーナーを設ける。 以上のように、気象庁が発表する2 週間先までの気温予測を用いて熱中症搬送者が増加し 始める 25℃を超える時期を把握し、その可能性が高まった場合には、熱中症対策商品を来 店客の目につきやすい場所に山積みしたり、特設コーナーを設けたりするなど、店頭での販 売促進を積極的に推進することで販売数の増加が期待できる。 また、暑くなる直前には登録販売者や薬剤師が、平均気温の予測や週間天気予報を使って、 来店者に対して熱中症に関する情報提供や相談を行うことで、来店者が熱中症になることを 予防するとともに、熱中症対策商品の販売数の増加が期待できる。
図 3.14 2013 年 6 月 25 日発表の気温予測(東京) 上の棒グラフは、7 日間平均気温の「かなり低い」「低い」「平年並」「高い」「かなり高い」の 5 階級に入る確 率の推移を示す。グラフの色はその上の表の階級に対応している。例えば 7 月 3 日~9 日はかなり高い確 率(赤棒グラフ)が 11%であることを示す。 下のグラフは、7 月 3 日~9 日の 7 日間平均気温の累積確率と確率密度分布を示す。図の横軸は気温 の平年偏差(カッコ内の数値は東京の平均気温)、縦軸は確率。累積確率(図の青線)は 7 日間平均気 温がある値以下となる確率を示す。確率密度分布(図の緑線)は出現する可能性がもっとも大きいところ (右表のモデル予測値)で最大となる。 図 3.15 2013 年 6 月 28 日発表の気温予測 (東京) 7 月 6 日~12 日の 7 日間平均気温の累積確率 と確率密度分布を示す。図の横軸は気温の平年 偏差(カッコ内の数値は東京の平均気温)、縦軸は 確率。累積確率(図の青線)は 7 日間平均気温 がある値以下となる確率を示す。
(3)風邪・乾燥対策商品
かぜ薬やハンドクリームは、平均気温がおおむね 25℃を下まわる頃から販売数が大きく 増加し始める。 東京では 2011 年から 2013 年までは残暑が厳しく、9 月中旬頃から 25℃を下まわった が、2014 年は近年の傾向とは異なり、8 月下旬から 25℃を下まわった。これに対応し て、かぜ薬やハンドクリームの販売数も例年より早く増加したものの、8 月下旬の時点で の販売数の増加は商品の入れ替えのタイミングが遅れるなどしたため限定的であった。 かぜ薬や乾燥対策商品の販売対策としては、2 週間先までの平均気温の予測から、季節進 行が平年よりも早いのか遅いのかを把握して、平年より早いと予測された場合には、欠 品を防ぐため早めに在庫を確保する、かぜ薬や乾燥対策商品を手に取りやすいところに 置く、季節の変わり目や気温の変化に敏感な来店客を対象とした相談コーナーを設ける などが効果的である。 ① 風邪・乾燥対策商品の気候リスク分析結果 風邪・乾燥対策商品として、東京の総合感冒薬と岡山南部のかぜ薬(ここでは「かぜ薬」 と記述する)、東京のハンドケアと岡山南部のハンドクリーム(ここでは「ハンドクリーム」 と記述する)を対象として、平均気温と販売数の関係を分析したが、概要版では主に東京の かぜ薬の分析結果について述べる。 東京のかぜ薬の販売数は、平均気温がおおむね 25℃を下まわる頃から販売数が大きく増 加し始める(図3.16)。その時期は分析期間では 2014 年を除き 9 月中旬(図 3.17)頃で夏 から秋の季節の変わり目の時期にあたり、気温の変動が大きく、体調を崩しやすいことが販 売数増加の一因と考えられる。2014 年については、8 月下旬には分析期間の他の年よりも 早く気温が下がり、9 月の残暑は厳しくなかった。このため、かぜ薬の販売数も他の年より もやや早く 9 月中旬から増加し始めているが、25℃を下まわった 8 月下旬には大きな増加 は見られなかった。これは、例年にない気温の低下により、商品の入れ替えの時期が遅れた り、在庫不足になったりしたことが要因として挙げられる。 図 3.16 平均気温とかぜ薬販 売数(指数)の関係(東京) 2011 年 2 月~2014 年 10 月 の平均気温と販売数(指数) の関係を示す。平均気温、 販売数(指数)は対象日と 前後 3 日間の 7 日間平均値。 赤線は販売数(指数)が大 き く 増 加 す る 目 安 の 気 温 (25℃)を示す。図 3.17 平均気温及びかぜ薬販売数(指数)の推移(東京) 細線は平均気温、太線は販売数(指数)を示す。平均気温、販売数(指数)は対象日と前後 3 日 間の 7 日間平均値。点線は販売数が大きく増加しはじめる目安の気温(25℃)を示す。 ② 2 週間先までの気温予測を用いた気候リスク対策 2 週間先までの平均気温の予測を用いて夏から秋への季節の変わり目の 25℃を下まわる時 期を把握して、かぜ薬を目立つところに置いたり、ハンドクリームやリップクリーム等の乾 燥対策商品をレジ前等に置いたりして、季節の変わり目や気温の変化に敏感な来店客に対し てアピールする対策を検討する。 東京では 2014 年は 8 月下旬に平年よりも早く気温が低下し、25℃を下まわった(図 3.18)。 図 3.18 2014 年の平均気温と平年値の推移(東京) 期間は 8 月 1 日~10 月 31 日。平均気温は対象日と前後 3 日間の 7 日間平均値。点線 はかぜ薬などの販売数が大きく増加しはじめる目安の気温(25℃)を示す。
2014 年 8 月 21 日発表の 2 週間先までの気温予測(図 3.19)では 8 月下旬以降は平均気 温が平年よりも低い確率(水色及び青色棒グラフ)が大きくなっており、平年より気温が低 くなる可能性が大きいと予測されている(図3.19 上)。また、8 月 29 日~9 月 4 日の平均 気温が25℃以下になる確率は 22%と大きくはない(図 3.19 下)が、最も現れる可能性の大 きい気温は 26.1℃で、前年の同時期(29.6℃)と比べると 3.5℃低い予測値となっており (図 3.19 表の赤枠)、2014 年は、残暑が厳しかった 2013 年までの近年とは異なり、季節 進行が早いことを示唆する。 近年になく気温の低下が予測されることから、欠品をしないように前年より早めにかぜ薬 やハンドクリーム等の乾燥対策商品といった秋以降に販売数が増加する季節品の在庫を早め に確保しておき、店頭づくりなどの対策を適切な時期から展開できるように準備を行うこと が重要と考えられる。 図 3.19 2014 年 8 月 21 日発表の気温予測(東京) 上の棒グラフは、7 日間平均気温の「かなり低い」「低い」「平年並」「高い」「かなり 高い」の 5 階級に入る確率の推移を示す。グラフの色はその上の表の階級に対応している。 例えば 8 月 29 日~9 月 4 日はかなり低い確率(青棒グラフ)が 10%であることを示す。 下のグラフは、8 月 29 日~9 月 4 日の 7 日間平均気温の累積確率と確率密度分布を示す。 図の横軸は気温の平年偏差(カッコ内の数値は東京の平均気温)、縦軸は確率を示す。累 積確率(図の青線)は 7 日間平均気温がある値以下となる確率を示す。確率密度分布(図 の緑線)は出現する可能性がもっとも大きいところ(右表のモデル予測値)で最大となる。
季節の変わり目や気温の急な変化に敏感な人たちは、この時期に体調を崩したり、肌トラ ブル等に悩まされたりする。夏から秋への季節の変わり目を把握して、ハンドクリームやリ ップクリーム等の商品をレジ前に置くなどして、来店客の目に留まりやすくする。 また、このような来店客のニーズに応えるために、季節の変わり目に相談コーナーを設け て来店客の悩みをカウンセリングしつつ、来店客に合った医薬品やヘルスケア商品を紹介す ることで、店に対する満足度の向上とともに、季節商品の導入時期の販売数の増加に効果を 上げることが期待できる。
4.まとめ
(1)気候リスク管理の「評価」
① 気温の上昇(下降)に伴い販売数が増加する品目と気温の影響が小さい品目がある 気温と相関関係が認められる品目が多数存在する。総合感冒薬やかぜ補助薬(医薬品) 等は負の相関関係があり、気温が低いほど販売数が増える。逆に虫さされ薬や殺虫剤 (ハエ・蚊用)等は正の相関関係があり、気温が高いほど販売数が増える。解熱鎮痛薬 や肉体疲労・栄養補給(ビタミン)・ドリンク薬等は、気温との相関は小さい。気温の 影響が大きい品目は、販売数が増加する時期に限ると、その関係がより明瞭となる。 ② 販売数が大きく増加する気温が比較的明瞭な品目がある 一定の気温を超えると販売数が大きく増加し始める品目があり、その気温や増加量は 品目によって異なる(表4.1、図 4.1)。 表 4.1 販売数が大きく増加し始める時期、気温との連動終了時期、販売数が大き く増加し始める平均気温(基準温度)及び販売数の増加の目安(東京・岡山南部) 販売数の増加の目安の算出において、2014 年 3 月と 4 月のデータは消費税引き上げの 影響があるため除いている。 地域 品目 販売数が大きく 増加しはじめる 時期の目安 気温との 連動終了 時期の目安 基準温度 販売数の増加の目安 (基準温度時点の比率) 備考 東京 虫さされ薬 5月上旬 7月中旬 約18℃ 5℃上昇で約2.6倍 岡山南部 かゆみ・虫さされ用薬 5月上旬 7月中旬 約18℃ 5℃上昇で約1.9倍 東京 水虫薬 3月下旬 7月上旬 約13℃ 5℃上昇で約1.3倍 岡山南部 水虫・たむし用薬 3月下旬 6月下旬 約11℃ 5℃上昇で約1.4倍 東京 殺虫剤(ハエ・蚊用) 4月下旬 6月中旬 約18℃ 5℃上昇で約3.2倍 東京は平均気温がおおむね25℃に達した時点の販売数が最大 岡山南部 蚊取り線香 5月上旬 7月上旬 約18℃ 5℃上昇で約4.3倍 東京 殺虫剤(ゴキブリ用) 3月中旬 7月上旬 約11℃ 5℃上昇で約2.7倍 岡山南部 殺虫剤 3月下旬 7月中旬 約11℃ 5℃上昇で約2.2倍 東京 サンケア 3月中旬 5月下旬 約10℃ 5℃上昇で約4.7倍 岡山南部 UVケア 3月中旬 5月下旬 約10℃ 5℃上昇で約1.7倍 スポーツドリンク 6月下旬 9月中旬 約25℃ 5℃上昇で約1.6倍 販売数の増加の目安は7月下旬までのデータから算出 経口補水液 6月上旬 8月下旬 約23℃ 5℃上昇で約2.6倍 販売数の増加の目安は8月上旬 までのデータから算出 岡山南部 スポーツドリンク 6月中旬 9月中旬 約25℃ 5℃上昇で約1.9倍 販売数の増加の目安は8月上旬 までのデータから算出 東京 総合感冒薬 9月上旬 10月下旬 約25℃ 5℃下降で約1.5倍 本格的な増加は11月以降だが気温との関係は不明瞭 岡山南部 かぜ薬 9月上旬 11月上旬 約25℃ 5℃下降で約1.6倍 東京 ハンドケア(一般) 9月上旬 10月下旬 約25℃ 5℃下降で約2.9倍 本格的な増加は11月以降だが気温との関係は不明瞭 岡山南部 ハンドクリーム 9月上旬 11月下旬 約25℃ 5℃下降で約2.0倍 東京 リップケア 9月上旬 10月下旬 約25℃ 5℃下降で約1.6倍 本格的な増加は11月以降だが 気温との関係は不明瞭 岡山南部 リップクリーム 9月上旬 11月下旬 約25℃ 5℃下降で約1.2倍 6月は梅雨のため気温が上昇して も売り上げは伸びない 東京図 4.1 品目別販売数が増加する気温や期間の目安(東京) 濃い矢印は気温と販売数が連動する期間、薄い矢印は販売数のピークまでの期間。 折れ線グラフは東京の 2011 年~2013 年の 3 年間の 7 日間平均気温の平均値。 ③ 販売数が増加する期間、気温の週単位の変動と販売数の変動がリンクする品目がある 販売数が増加する期間、気温の週単位の変動と販売数の変動が連動する品目がある。 この関係を把握することで、前週と比べた販売数の増加・減少の目安を立てることがで きる。 ④ 熱中症搬送者数と販売数が連動する品目がある 熱中症搬送者数と経口補水液やスポーツドリンクの販売数の関係をみると、搬送者数 が増加し始める頃から販売数も大きく増加する。特に経口補水液の販売数の変動と搬送 者数の変動との関係は明瞭である。 ⑤ 花粉の飛散量の最初のピーク時に販売数が最大となる品目がある 鼻炎薬や目薬は、スギ・ヒノキ花粉の飛散量が多くなる時期に販売数が大きく増加す る。また、花粉の飛散量が大きく増加する最初のピーク時に、販売数がシーズン最大に なることが多い。平均気温の積算が一定水準を超え、気温が急激に上昇する時期に花粉 の飛散量が増加するなど、花粉の飛散時期と気温にはある程度の関係がある。
⑥ 販売数が大きく増加する気温は地域によって異なる品目がある 東京と岡山では販売数が大きく増加し始める気温に大きな違いはなかったが、札幌で は殺虫剤(ハエ・蚊用)や UV ケア等一部の品目の販売数は東京よりも 5℃以上低い気 温で増加し始め、気温の上昇とともに徐々に増加する。
⑦ 本調査における販売数と気温の関係は同じ地域内で活用可能 特定のチェーン店の販売データと多くのチェーン店の販売数を平均した POS データ を比較した結果、気温と関連の高い品目の販売数の変動の傾向は大きくは変わらないた め、本分析結果は同じエリアの他のチェーンにおいても活用可能であると考える。 なお、両者を詳細に比較すると、特に2014 年 8 月下旬以降の低温等、平年とは異な る気温の変化に対して、ハンドケア等販売数が増加する時期に違いのある品目があり、 気温の変化に対応した販売対策の有効性が示唆された。 (ドラッグストア関係者のコメント等) (A 社) 今回の分析では、気温と商品売れ数の関係を科学的に解明しており、商品のライフサイク ルに基づいて、導入期の設定と特に衰退期での在庫調整でより活用できると思います。 今後におきましては、過去のデータを振り返りながら、また、現在のデータを確認しなが ら商品展開を進めていけば、効率はさらに向上していくものと考えます。 但し、気温データは「平均気温」で捉えられており、我々が日常的に使っている「最高気 温」・「最低気温」を取り入れていただくと、もっと小売業サイドで使いやすい資料になる ものと思います。 (B 社) 今回の分析結果で、年によって気温の上がり始める時期やピークが大きく変動する事や気 温と販売量の相関関係がある品目も分かりました。 但し、予測情報をうまく活用していく には、素早い対応が必要となる為、社内の体制づくりが課題です。 気温との相関関係がみられる品目についても、使用量と内容量の関係で初動が重要なもの や、一定の気温以上で継続的に販売が伸びるものなどいくつかのパターンに分かれる為、各 品目がどのパターンに該当するのかをよく把握しておくことが重要と思われます。
(2)気候リスク管理の「対応」
ドラッグストアの季節商品の入れ替えや商品の発注、販売促進策等は、長年の経験や最 近の傾向から培われた勘に頼って行われることが多い。季節の変わり目などで、気温の変 化傾向が近年とほとんど変わらなければ経験に基づいた方法でも大きな問題にはならなか った。しかし、2014 年 8 月下旬の北日本・東日本・西日本のように、ここ数年続いてい た厳しい残暑がなく、近年の傾向とは異なる天候となると、効果的な対策ができない場合 もある。そのため、一般に利用が進んでいる今日・明日の天気予報や週間天気予報に加え て、2 週間先までの平均気温の予測を参照することで、これまでの経験だけではなく、科 学的な根拠に基づいて、より早い段階で効果的な対策が展開可能となると期待できる。 販売数が大きく増加する時期と平均気温の関係が比較的明瞭な品目については、2 週間 先までの気温予測を使って販売数が大きく増加する時期を事前に把握することで、商品の 山積みやレジ横展開等の店頭における販売促進を検討することができる。 また、販売の最盛期までの時期に、2 週間先までの気温予測を用いて、気温の変動を把 握することによって、先の販売数の増減の目安を立て、追加発注の検討に役立てることが できる。以下では、2 週間先までの気温予測を活用した具体的な対策について述べる。 ① 2 週間先の平均気温を活用したドラッグストアの対策 ○導入期の対策 2 週間先までの気温予測を活用した販売促進策として、店頭における対策は最も取 り組みやすいもののひとつである。気温と相関のある品目の販売数が大きく増加し始 める時期を2 週間先までの気温予測により把握し、販売数の増加が期待できる商品を アピールするために、棚のエンドに商品を山積みして来店客の目にとまりやすくした り、雑貨品や乾燥対策商品であればレジ前やレジ横に商品を置き、ついで買いを促し たりする対策をとることで導入時期の販売増が期待できる。 また、来店客の目にとまりやすい POP やボードを使うことで、来店客の関心を引 き付けることも有効である。ドラッグストアでは、製造メーカーが提供する POP や ボードに加えて、店独自の POP やボードを利用している店も少なくない。虫、熱中 症、風邪、乾燥、花粉症対策商品等ドラッグストアで扱う商品は気象と関連のあるも のも多い。これまで気象情報はあまり活用されてこなかったため、POP やボード等 に、気象に関連した情報を加えてみることは、来店客にとっても目新しく注目を集め る可能性もある。 ○最盛期の対策 2 週間先の気温の予測を使って販売数の増減の見込みを把握することで、入口付近 の催事コーナーに関連する商品を集めて、特設コーナーを設ける時期を調整すること で、販売の最盛期に向けて販売数を伸ばすことが期待できる。 また、商品の販売数が大きく増加している時期は、気温の変動の影響を受けやすく、 予想外に販売数が増加したり、逆に急に販売数が減少したりすることがある。2 週間 先までの気温予測から今後の気温の変化の傾向や販売数が大きく増加する気温に達す る確率を把握することで、追加発注の判断をして、品切れや過剰在庫の防止に役立て ることが期待できる。 ○その他 最近は、ドラッグストアでも新規来店客の取り込みや優良来店客の囲い込みのため、 メール会員やネット通販等を取り入れているところが増えている。メールやネット通 販であれば販促を行うまでに要する時間はチラシ等より短いため、2 週間先の気温の 予測を使って、気温の変化への対処や体調管理に関する啓発、関連するおすすめ商品 の情報提供や商品購入サイトへの誘導等が可能と考えられる。 ② 気象データを用いたカウンセリング ドラッグストアは医薬品の専門家と相談しながら、自分に合った商品を購入できる点 で、他の小売店と大きく異なる。 季節の変わり目や気温の急な変化に敏感な人たちは、この時期に体調を崩したり、肌 トラブル等に悩まされたりする。このような来店客のニーズに応えるために、相談コー
ナーを設けてカウンセリングしつつ来店客に合った医薬品やヘルスケア商品を紹介する ことで、季節商品の導入時期の販売数の増加に効果を上げることが期待できる。 夏にかけて気温が急に高くなる時期は、薬剤師や登録販売者が、週間天気予報や2 週 間先までの平均気温の予測を使って、来店客に対していつごろから気温が高くなって、 熱中症に対する注意が必要であるかなどの情報提供を行ったり相談を受けたりすること が販売数増加に有効である。 花粉症の症状は、アレルギー体質の程度や花粉の量によって、人によって症状は大き く異なる。環境省等の花粉飛散予測を基本に、気象庁の2 週間先までの平均気温の予測 も参考にして、今後の花粉の飛散量の動向に注意を払いつつ、来店客の花粉症の症状や ニーズに応じて、タイプの違う鼻炎治療薬から来店客に合った商品を勧めることが可能 である。 このように、店の薬剤師や登録販売者等のスタッフが気象予測を活用して、熱中症等 の気候が人体に与える影響や、花粉症や風邪等の気候と関連のある疾患等を啓発しつつ、 来店客に合った医薬品等のカウンセリングをすることによって、来店客の健康の維持に 寄与し、販売にも貢献できる。 (ドラッグストア関係者のコメント・対応策等) (A 社) 現在使っているのは「長期予報」と「週間天気予報」になります。 長期予報は、例えば今年は暖冬になるのか、厳冬になるのかを見ています。それにより商 品政策は大きく異なってまいります。 週間天気予報は、セール日の天候・気温を確認しています。それによって、売場作り・商 品発注の指示を本部よりしております。 「2 週間先の予測」は、アパレル等生産のともなう業界では非常に活用できると思います が、ドラッグストアは、今日発注すれば明日入荷する業界ですので、店舗段階での活用は難 しいと思います。しかしながら、例えば 2014 年 8 月末に「予期せぬ寒さ」が発生しまし た。このとき、風邪薬が売れましたが、まったく対応できずに欠品が発生致しました。この 「予期せぬ事態」が 2 週間先の予測でわかっていれば、対処できたはずです。このように 「予期せぬ事態」を事前に知る、ここがポイントであると思います。 (B 社) 気象予測の精度については満足していますが、活用できる体制作りが課題です。そのひと つの方策として予測情報を WEB ページでリアルタイムに確認できるよう、スマートフォン やタブレット端末を利用することも検討する必要があります。また、売り場にデジタルサイ ネージとして気象情報を流すのも面白いのではないでしょうか。 今回の調査結果を、欠品対策へ活用することも当然ですが、返品削減のために活用するこ とがより重要です。特にシーズン後の返品も多い殺虫剤等で活用したいと思いますし、メー カーへのアプローチも行いたいと思います。 日本の気候が大きく変わっているのに、店頭の在庫管理システムが全然変わっていませ ん。また、バイヤーの認識も変わっておらず、年間スケジュールと勘や運での売り場作りに なっています。今回の調査結果を踏まえて、関係者の意識改革が必要と思います。