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商標審査基準について

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Academic year: 2021

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(1)

審判決要約文 第4条第1項第1号 審決取消訴訟 出願された商標が菊花紋章と類似するとして拒絶された事例(昭和 56 年 8 月 31 日 東京高昭和 55 年(行ケ)第 211 号) 本願商標は、下記のとおりの構成からなり、第21類「バンド類、身飾品その他の装身具」 等を指定商品とするものである。 ところで、本願商標は、菊花紋章と菊花の花弁の数がほぼ同一であり、また、各花弁が相互 に放射状に連なる形態も中央部を除いては、ほぼ同一である。そして、花弁の先端部が丸みを 帯びて円輪郭に内接している関係上、その部分は花弁の先端部に吸収されているようにも見え、 重弁の菊花紋章と対比して、さほど際立つものではなく、また、中央部に表示された「博士」 の文字が花心または総包として態様上の役割を果たしているようにも見られるものである。そ うしてみると、16個の花弁を円形に連ねて描き中央に「博士」の文字を表してなる本願商標 は、これと菊花紋章とを全体的に観察対比すると、その外観においても、また看者に想起させ る皇室に係る菊花紋章の観念においても類似するものである。 したがって、本願商標は、商標法4条1項1号に該当する。 本願商標

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第4条第1項第2号、第3号及び第5号 審決 昭和 54 年 11 月 8 日 昭和 53 年審判第 2883 号 本願商標は、下記に示すとおりの構成よりなり、第24類「おもちゃ、人形、娯楽用具、運 動具、つり具、楽器」等を指定商品とするものである。 よって按ずるに、本願商標は、下記に示すとおり、図形と文字との結合よりなるものである ところ、図形と文字とが一体不可分のものとはみられないばかりでなく、図形部分も全体とし て一体不可分のものとして特定の称呼、観念が生ずるものとは認め難いところ、構成中のカエ デの葉を図案化して表したと認める得る図形部分は、カナダ国の記章と外観において類似する ばかりでなく、独立して看者の注意を惹くものとみるのが相当である。 したがって、本願商標は、商標法4条1項2号に該当する。 本願商標 審決

登 平成 11 年 6 月 18 日 平成 7 年審判第 8941 号 本願商標は、「EUREKA」の文字を横書きしてなり、第11類「民生用又は家庭用の電 気掃除機」を指定商品とするものである。 そこで判断するに、本願商標は、欧州先端技術共同体構想(European Resea rch Coordination Action)の略称を表示する標章であって、商標法 4条1項3号の規定に基づき通商産業大臣が指定(平成6年4月26日号外通商産業省告示2 91号)し、同年5月1日から適用しているものと綴りを同じくし、同指定標章と同一又は類 似の商標である。 したがって、本願商標は、商標法4条1項3号に該当する。

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審決 平成 11 年 6 月 18 日 平成 7 年審判第 8944 号 本願商標は、「ユーリカ」の文字を横書きしてなり、第11類「家庭用電気掃除機、その他 の民生用電気機械器具」を指定商品とするものである。 検討するに、本願商標は、欧州先端技術共同体構想(European Research C oordiantion Action)の略「EUREKA」の呼称であって、商標法4条1 項3号の規定に基づき通商産業大臣が指定(平成5年12月2日号外通商産業省告示624 号)する「ユーレカ」の文字よりなる標章と、その構成文字において相違するところ(「リ」 と「レ」)があるが、発音表記上の違いによるものとみられ、いずれも、前記「EUREKA」 を指称したものと理解、認識させる点で共通するものであるから、互いに相紛れるおそれのあ るものである。 したがって、本願商標は、商標法4条1項3号に該当する。

(4)

第4条第1項第6号 第4条第1項第6号に該当するとされた事例 審決 「全国消費者団体連合会」(昭和 52 年 9 月 30 日 昭和 48 年審判第 2453 号) 本願商標は、「全国消費者団体連合会」の文字を書してなり、第26類「印刷物(文房具類 に属するものを除く)、書画、彫刻、写真、これらの附属品」を指定商品とするものである。 よって判断すると、東京都渋谷区千駄ヶ谷4−1−13に所在する「全国消費者団体連絡会」 は公益に関する団体であって、営利を目的としない著名な団体を表す名称である。 そして、上記の構成文字よりなる本願商標は、「全国消費者団体連絡会」なる標章とは互い に類似するものである。 したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第6号に該当し、登録することができない。 審決 「 」(大船渡市の紋章と類似の商標)(昭和 56 年 1 月 23 日 昭和 52 年審判第 4291 号) 本願商標は、下記に表示する構成よりなり、第4類「せっけん類、歯みがき、化粧品、香料 類」を指定商品とするものである。 よって判断するに、本願商標は、下記に表示するとおりの図形を描いてなるものであり、一 方岩手県大船渡市の紋章は、下記に表示するとおりの図形からなるものである。 そこで、これら二つの図形についてみるに、両者はこれを子細に観察すれば、左右対称に描 かれた三日月状の図形の上方、先端の部分において差異が認められるとしても、これらの相違 点は、それぞれの図形全体の中に占める位置、形状などからみると、まことに小さいといえる ものであってむしろ、底辺の中央部分に∧(やま)形の小さな切り込みをいれた三角形と、左 右対称に描かれた三日月状の図形とを組合わせてなるものとの印象を強く与えるところから、 全体として極めて近似したものと認めざるを得ない。 してみると、本願商標と大船渡市の紋章とは、時と処を異にして離隔的に観察されるときは、 外観上彼此相紛らわしい類似のものと認められるところであり、更に、同市の紋章は、同市を 表彰するものとして使用されるものであるところからすれば、その地域において広く知られた 著名なものと判断するのが相当である。 したがって、本願商標は、商標法4条1項6号に該当する。 本願商標 大船渡市の紋章

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審決

「Junior Original Concert・J.O.C」(昭和 56 年 2 月 5 日 昭和 54 年審判第 9109 号)

本願商標は、「Junior Original Concert」の欧文字を上段に書し、 これの下段中央部に「J.O.C」の欧文字3文字を書してなり、第25類「紙類、文房具類」 を指定商品とするものである。 よって按ずるに、本願商標は、上記構成のとおり「Junior Original Co ncert」「J.O.C」の各語を上下2段に書してなるものであって、上下各段のそれぞ れの各部の部分は独立して看者の注意を惹くものと認められる。しかして、「J.O.C」の 欧文字部分は、欧文字の「J」「O」「C」の3文字を基本として配列したものであることが看 取され得るものである。ところで、わが国において、該欧文字3文字をもって表示される団体 に、日本オリンピック委員会の名称を英語式に「Japan Olympic Commit tee」と書き表したこれの各語の語頭文字の1字を抽出した「JOC」の語があることは、 現代用語の基礎知識、「JOC」の文字の記載の項に徴して明らかなところである。ところで、 該委員会は、日本を代表する機関であって、公益に関する団体であり、営利を目的としないも のに該当するものである。また、該「JOC」の語は、日本オリンピック委員会の略称を表示 するものとして、わが国を含む世界各国に広く知られているものであって、最早、今日におい ては、上記委員会を表示する略称として著名なものとなるに至っているというを相当とする。 してみると、上記の団体は、その権威を尊重され、その名称など保護されるべきものである ことは当然なことといわなけれならない。 したがって本願商標は、上記団体を表示する「JOC」と類似するものを含むものと認めら れるから、商標法4条1項6号に該当する。 審決 「五輪」(昭和 63 年 2 月 25 日 昭和 58 年審判第 23669 号) 本願商標は、「五輪」の漢字を横書きしてなり、第16類「台所用品、日用品」を指定商品 とするものである。 そこで判断するに、本件商標を構成する文字は、わが国おいて「オリンピック」の俗称とし て広く一般世人に親しまれ、かつ、「ゴリン」の称呼をもって普通に使用されているのが実情 であり、これに接する者は「オリンピック」に通ずるものであると容易に理解し、把握すると 判断するのが相当である。 ところで、「オリンピック(OLYMPIC)」の文字は、オリンピック憲章に基づき開催さ れるオリンピック競技大会を指導する国際オリンピック委員会(I.O.C.)及びその承認の下 に直接事業を運営する日本オリンピック委員会(J.O.C.)が、営利を目的としない事業活動 を表示する標章であり、わが国においても著名であると認められるものである。してみると、 前記標章と観念上類似する本願商標が登録され一私人の商標として営利の目的のために使用 されることは、前記委員会の権威を損ねると共に、国際信義の上からも好ましくない。 したがって、本願商標は、商標法4条1項6号に該当する。

(6)

審決 「 」(笠岡市の市章と類似の商標)(平成 6 年 6 月 30 日 昭和 62 年審判第 17474 号) 本願商標は、下記の構成よりなり、第22類「はき物、かさ、つえ、これらの部品及び付属 品」を指定商品とするものである。 そこで判断するに、本願商標は、ローマ文字「C」を左右対称に交差させ、その中央部に、 左端をやや上方、右端をやや下方へ屈曲させた横線を配した図形よりなるものであるのに対し て、岡山県笠岡市の市章(以下「引用標章」という。)は、下記に示すとおり、ローマ文字「C」 を左右対称に交差させ、その中央部に、左右両端を丸くした横線を配した図形よりなるもので あるところ、両者は、ともに肉太のローマ文字「C」を左右対称に交差させ、その中央部に肉 太の横線を配してなる点において、その構成の軌を一にすると認められるものである。そして、 これらを細部にわたってみれば、左右対称に描かれたローマ文字「C」の先端部分及びその中 央に配した横線の両端部分等に差異を有するとしても、その差異が両者の構成全体から受ける 印象に与える影響は必ずしも大きいものとはいえないと判断するのが相当である。 してみると、本願商標と引用標章とは、時と処を異にして離隔的に観察した場合には、外観 上相紛らわしく、彼此見誤られるおそれがあるものといわなければならない。 さらに、引用標章は、笠岡市の発足以来、その市章として永年使用されてきたものであると ころから、同市を表示する標章として、その地域において広く知られた著名なものということ ができる。 したがって、本願商標は、地方公共団体を表示する著名な標章と類似するものであるから、 商標法4条1項6号に該当する。 本願商標 引用標章 同旨審決 「 」(笠岡市の市章と類似の商標)(平成元年 9 月 14 日 昭和 58 年審判第 19446 号)

(7)

審決 「 」(日南市の市章と類似の商標)(平成 6 年 9 月 7 日 平成 2 年審判第 11477 号) 本願商標は、下記に表示したとおりの構成よりなり、第7類「消火栓用鉄蓋、仕切弁用鉄蓋、 マンホール用鉄蓋、その他本類に属する商品」を指定商品とするものである。 そこで、本願商標と、日南市の市章とについて、比較検討すると、両者は、ともに、上下左 右に三角形の突起を有する黒塗りの肉太円輪郭とその輪郭内部の中心に黒塗りの正円図形を 配してなるものであり、その差異は正円図形の若干の大小の微差にすぎないものであるから、 全体としては、「日」の漢字を邦紋章状に変形して描いたものとの印象を与えるものであって、 着想、構図等その構成の軌を1つにするもので、両者は、外観において互いに相紛らわしいも のである。 してみれば、本願商標と日南市の市章とは、時と所を異にして離隔的に観察すると外観上彼 此相紛らわしい類似のものと認められるところ、日南市の市章は、同市を表彰するものとして 使用され、その地域において広く知られた著名なものと判断するのが相当である。 したがって、本願商標は、商標法4条1項6号に該当する。 本願商標 日南市の市章 審決 「万博・ばんぱく・BANPAKU」(昭和 48 年 12 月 3 日 昭和 44 年審判第 9193 号) 本願商標は、「万博」「ばんぱく」「BANPAKU」の各文字を三段に横書き併記してなり、 第14類「原料繊維」を指定商品とするものである。 思うに、「万博」の語は、1928年11月パリにおいて締結された国際博覧会条約の規定 に基づき、国が直接主催する又は国が認める公益団体が主催する国際的博覧会(万国博覧会) の略称としてわが国において広く知られているものであるから、これと類似する構成からなる 本願商標が登録され、一私人の商標として営利目的に使用されることは同博覧会の権威を損な い、国際信義の上からも好ましくなく穏当でないものと認めざるを得ない。 したがって、本願商標は、商標法4条1項6号に該当する。

(8)

審決 「 」(昭和 52 年 11 月 4 日 昭和 51 年審判第 7447 号) 本願商標は、下記に表示した構成よりなり、第24類「釣り具」を指定商品とするものであ る。 本願商標は、図形と文字よりなるものであるが、図形部分は黒字方形内にまとまり良く表さ れており、「OLYMPIC」の文字は図形の下部に図形と分離され顕著に書されているもの である。しかして、このような構成よりなる本願商標は、たとえ飛魚と五輪の図形とが一体の 結合をなすものであるとしても、「OLYMPIC」の文字は、その図形部分とは異なった意 味を有し、図形部分と一体不可分のものとして、称呼、観念しなければならない特別の事情も 認められないので、本願商標はその文字部分も独立して、要部と認識されるものと判断するの が相当である。 ところで、「OLYMPIC」の文字はオリンピック憲章に基づき開催されるオリンピック 競技大会を指導する国際オリンピック委員会(I.O.C.)およびその承認の下に直接事業 を運営する日本オリンピック委員会(J.O.C.)が、営利目的としない事業活動を表示す る標章であり、わが国においても著名であると認められるものであるから、本願商標中に顕著 に表された「OLYMPIC」の文字は上記標章の「OLYMPIC」と構成文字を同じくす る類似のものといわざるを得ない。 したがって、本願商標は、商標法4条1項6号に該当する。 本願商標

(9)

審決 「 」(平成 10 年 11 月 27 日 平成 9 年審判第 15155 号) 本件商標は、下記に表示した構成よりなり、第25類「被服等」を指定商品とするものであ る。 本件商標と五輪マークとが相違するところは、五輪マークは「輪」であるのに対し、本件商 標が「りんご形状の略楕円図形」である点にすぎず、他の構成を同一にするものであって発想、 構成を共通にするものである。しかも、本件商標が指定商品に使用された状態を考慮すると、 両者の外観上の相違点が実際に取引者、需要者に与える印象は弱く、全体として両者は類似す るものであるといえ、加うるに商標法4条1項6号の趣旨が同号に掲げる標章を一私人に独占 させることは同号に掲げる標章の権威を尊重することや、国際信義上から好ましくないという 点にあるところ、請求人提出の新聞記事の「長野冬季オリンピックを意識した「五輪」を「五 つのりんご」に置き換えた「ごりんご」ブランドを開発した」との記載から本件商標は五輪マー クの「輪」を「りんご形状の略楕円図形」に置き換えたものであると認められる。さらに、請 求人は五輪マークを多くの企業に使用許諾し、五輪マークを含む標章が被服等の商品に使用さ れている事実が認められるから、本件商標は出所につき混同を生ずるおそれがあるものであっ て、請求人の権威を損ない、ひいては国際信義に悖るものである。 したがって、本件商標は、商標法4条1項6号に該当する。 本件商標 五輪マーク 同旨審決 「 」(平成 10 年 11 月 27 日 平成 9 年審判第 15159 号)

(10)

第4条第1項第8号 審決取消訴訟 出願に係る商標が商標法(旧法)第2条第 1 項第 5 号(現行商標法の第 4 条第 1 項第 8 号に相 当)に該当するには、生存する他人の肖像等であることを要すると解するとされた事例(昭和 3 年 3 月 29 日 大審院昭和 3 年(オ)第 125 号) 商標法(旧法)2条1項5号にいう、他人の肖像、氏名、名称又は商号を有するものは、そ の他人の承諾を得ることを要するものと規定した理由は、要するに、他人の肖像、氏名、名称 又は商号を濫用して商品の出所に関して世人に誤解を生じさせたり、不測の損害を被むらせた りすることを予防すると同時に、正当権利者の信用を傷つけることがないようにすることに由 来することにほかならないから、いわゆる他人とは、生存者を指称するものと解するのが相当 である。そうすると、これと同趣旨の解釈の原審決は正当である。 審決取消訴訟

登 人格権は、一身専属的な権利であって、その者の死亡により消滅するというべきであるから、 商標法4条1項8号でいう「他人」には故人が含まれないとされた事例(平成 17 年 6 月 30 日 知財高平成 17 年(行ケ)第 10336 号) 本件商標は、「アナ アスラン」の片仮名文字と「Ana Aslan」の欧文字とを上下 二段に横書きしてなり、旧第3類「家庭用帯電防止剤、家庭用脱脂剤、さび除去剤等」を指定 商品とするものである。 商標法4条1項8号は、「他人の氏名・・・を含む商標」は商標登録を受けることができな い旨規定する。同号は、「その他人の承諾を得ているものを除く。」と定めているから、同号 にいう「他人」は、生存ないし現存するものに限られると解するのが相当である。 これを本件についてみるのに、アナ・アスラン博士は、本件商標の登録出願時以前の昭和6 3年5月19日に死亡しているから、本件商標は、商標法4条1項8号にいう「他人の氏名・・・ を含む商標」に当たらない。 原告は、商標法4条1項8号の立法趣旨は、人格権の保護であって、同号にいう「他人」は、 故人であっても、特にその氏名が著名であり、かつ、故人に対する強い敬愛追慕の情があると きには、保護されるべきであるとして、アナ・アスラン博士が同号にいう「他人」に含まれる と解釈すべきであると主張する。 しかし、人格権は、一身専属的な権利であって、例えば著作権法60条のような個別の規定 がある場合を除き、その者の死亡により消滅するというべきであるから、商標法4条1項8号 の立法趣旨が人格権の保護であるからといって、そのことから、同号にいう「他人」に故人が 含まれるということにはならない。 本件商標

(11)

審決 出願に係る商標が自己の氏名を表すものであっても、同一氏名の他人がいるときはその他人の 承諾を要するとした事例(昭和 54 年 12 月 17 日 昭和 52 年審判第 17348 号) 本願商標は、「青木功」の文字を横書きしてなり、第24類「運動具、その他本類に属する 商品」を指定商品とするものである。 本願商標は、「青木功」の文字を書してなるものであって、出願人の氏名をあらわすもので あるところ、これと同一氏名の他人多数が、本願商標出願以前より所在することは、東京都に おける電話番号簿に徴しても明らかであり、本願登録出願人はその他人の承諾を得ていないも のと認められる。 したがって、本願商標は前述のごとく他人の氏名でもある「青木功」の文字を書してなる商 標であって、かつ、当該他人の承諾を得ていないものであるから、本願商標は、商標法4条1 項8号に該当する。

(12)

審決取消訴訟 出願時に8号に該当する商標について商標登録を受けるためには、査定時において承諾がある ことを要するのであり、出願時に承諾があったとしても査定時にこれを欠くときは登録を受け ることができないとされた事例(平成16 年 6 月 8 日 最高裁平成 15(行ヒ)265 号) 本願商標は、「LEONARD KAMHOUT」の欧文字を横書きしてなる商標につき、第14 類、第18類及び第25類の商品を指定商品とするものである。 本願商標は、アメリカ合衆国の彫金師であり、銀製アクセサリーのデザイナーであるレナー ド・カムホートの氏名から成る商標である。 8号は、その括弧書以外の部分(以下、便宜「8号本文」という。)に列挙された他人の肖 像又は他人の氏名、名称、その著名な略称等を含む商標は、括弧書にいう当該他人の承諾を得 ているものを除き、商標登録を受けることができないとする規定である。その趣旨は、肖像、 氏名等に関する他人の人格的利益を保護することにあると解される。したがって、8号本文に 該当する商標につき商標登録を受けようとする者は、他人の人格的利益を害することがないよ う、自らの責任において当該他人の承諾を確保しておくべきものである。 また、3項は、8号に該当する商標であっても、商標登録出願の時(以下「出願時」という。) に8号に該当しないものについては、8号の規定を適用しない旨を定めている。これは、商標 法4条1項各号所定の商標登録を受けることができない商標に当たるかどうかを判断する基 準時が、原則として商標登録査定又は拒絶査定の時(拒絶査定に対する審判が請求された場合 にはこれに対する審決の時。以下「査定時」と総称する。)であることを前提として出願時に は、他人の肖像又は他人の氏名、名称、その著名な略称等を含む商標に当たらず、8号本文に 該当しなかった商標につき、その後、査定時までの間に、出願された商標と同一名称の他人が 現れたり、他人の氏名の略称が著名となったりするなどの出願人の関与し得ない客観的事情の 変化が生じたため、その商標が8号本文に該当することとなった場合に、当該出願人が商標登 録を受けられないとするのは相当ではないことから、このような場合には商標登録を認めるも のとする趣旨の規定であると解される。 8号及び3項の上記趣旨にかんがみると、3項にいう出願時に8号に該当しない商標とは、 出願時に8号本文に該当しない商標をいうと解すべきものであって、出願時において8号本文 に該当するが8号括弧書の承諾があることにより8号に該当しないとされる商標については、 3項の規定の適用はないというべきである。したがって、出願時に8号本文に該当する商標に ついて商標登録を受けるためには、査定時において8号括弧書の承諾があることを要するので あり、出願時に上記承諾があったとしても、査定時にこれを欠くときは、商標登録を受けるこ とができないと解するのが相当である。 これを本件についてみると、本願商標は出願時に8号本文に該当するものであり、査定時に おいて上告人が本願商標につき商標登録を受けることについてカムホートの承諾がなかった ことは明らかであるから、本件出願は、本願商標が8号に該当することを理由として、拒絶さ れるべきものである。 LEONARD KAMHOUT (標準文字) 本願商標

(13)

審決取消訴訟

登 商号から「株式会社」の文字を除いた部分は,「他人の名称の略称」にあたり,「著名」である ときに限り商標登録を受けることができないと判示された商標「月の友の会」の事例(昭和 57 年 11 月 12 日 最高裁昭和 57 年(行ツ)第 15 号) 株式会社の商号は商標法4条1項8号にいう「他人の名称」に該当し、株式会社の商号から 株式会社なる文字を除いた部分は同号にいう「他人の名称の略称」に該当するものと解すべき であって、登録を受けようとする商標が他人たる株式会社の商号から株式会社の文字を除いた 略称を含むものである場合には、右略称が他人たる株式会社を表示するものとして「著名」であ るときに限り登録を受けることができないものと解するのが相当である。 ところで、「月の友の会」なる商標は、上告人の商号である「株式会社月の友の会」から株式 会社なる文字を除いた部分と同一のものであり、他人の名称からなる商標にほかならないので あって、被上告人がその登録を受けることができないのは、「月の友の会」が上告人を表示す るものとして著名であるときに限られるものというべきである。 大審院判例(注:昭和16年(オ)1176号)は、「他人ノ商号ヲ有スル商標」は登録を受 けることができない旨規定するにとどまり、他人の称号を含む略称についてなんら規定してい なかった旧商標法(大正10年法)のもとにおける判例であって、本件に適切でない。 (注)この最高裁判決以前に上記判示事項とは逆の判断をした事例に「『日本美容医学研究 会』昭和 52 年 12 月 22 日 東京高昭和 52 年(行ケ)第 70 号」、「『平野屋』昭和 56 年 12 月 3 日 昭和 53 年審判第 16998 号」がある。

(14)

審決取消訴訟

登 権利能力なき社団の名称については,法人との均衡上,その名称は,商標法4条1項8号の略 称に準じ,著名性を有するものとした事例(商標「財団法人・日本美容医学研究会」無効審判 請求人「日本美容医学研究会」平成 13 年 4 月 26 日 東京高平成 12 年(行ケ)第 344 号外) 法人の名称については,たとえば,商法,有限会社法に基づき設立されるもののように,法 律上,その種類に従い,名称中に法人の種類を示す文字を用いることを要するものとされてい るものが多数存在する(商法17条,有限会社法3条等)。また,たとえば,公益法人のよう に,法律上は,その名称中に法人の種類を示す文字を用いることは要件とされていないもの(民 法37条,46条参照)についても,本来,法人の種類を示す文字を用いることが好ましいこ とから(法人登記規則5条参照),現実には,原告のようにその名称中に財団法人等の法人の 種類を示す文字を用いている例が多いことは,当裁判所に顕著な事実である。 これに対し,権利能力なき社団は,権利能力なき社団であることの必然的な結果として,法 人の名称(法人の種類を示す文字を含む名称)から,法人の種類を示す文字の部分を除いたも のに相当する名称を採用することになり,また,その名称の選択について法的な規制を受けな いから,名称の選択は自由に行い得る。 そうすると,その名称中に法人の種類を示す文字を用いた法人については,その名称から法 人の種類を示す文字を除いたものは略称となるから(最高裁第2小法廷昭和57年11月12 日判決参照),商標法4条1項8号に基づき,他人がその略称を商標登録するのを阻止するた めには,その名称から法人の種類を示す文字を除いたものが著名であることを主張,立証しな ければならないことになる。 これに対し、権利能力なき社団については,単に法人の名称に,自己の名称が含まれている ことを主張,立証すれば足り,それが著名であることの主張,立証を要しないことになる。こ のような解釈は,法の定める手続に従って法人格を取得した法人を,法の定める手続をとらな かった権利能力なき社団よりも著しく不利に扱うことになり,看過することのできない不均衡 を生じさせるものであるうえ,このような取扱いを認めると,商標法4条1項8号を利用して, 法人の名称の商標登録を阻止するために権利能力なき社団が濫用的に用いられる危険も大き くなる。 したがって,権利能力なき社団の名称については,法人との均衡上,その名称は,商標法4 条1項8号の略称に準ずるものとして,同条項に基づきその名称を含む商標の登録を阻止する ためには,著名性を要するものと解すべきである。

(15)

審決取消訴訟

登 権利能力なき社団は、商標法第4条第1項第8号の「他人」としての資格を有するとした事例 (平成 11 年 9 月 30 日 東京高平成 10 年(行ケ)第 380 号) 原告は、「日本美容医学研究会」との名称で「専門医師の指導と関与のもとに、医薬部外品 クロロフィル化粧料の適切なる使用法および正しい取り扱いを調査、研究し、これを広く普及 し、以て日本美容文化の向上に資する」ことを目的として設立された団体であり、そのとき以 来、法人格を有しないものの、定款を定め、代表者として理事から互選される会長を置き、皮 膚と化粧料の研究及びその助成等の事業を営み、美顔教室を運営し、美容等に関する出版物を 発行するなどし、社団として独自の社会活動を営んできていることが認められる。 すると、原告については、少なくとも本件の無効審判の請求により守られるべき利益の典型 の一つである自己の名称(商標権者から見れば他人の名称)に関し、権利能力なき社団に対し ては、「他人」としての資格を認めるべきものである。 したがって、法人格を有しない社団であることのみを理由としての、商標法4条1項8号に 該当しないとの判断は誤りであるといわなければならない。 本件商標 第4条第1項第8号に該当するとされた事例 審決取消訴訟

登 「モロゾフ・MOROZOFF」(第 39 類ウオツカ等 昭和 39 年 8 月 15 日 東京高昭和 37 年(行ナ)第 43 号) 本件登録商標は、「モロゾフ」の片仮名文字と「MOROZOFF」の欧文字を二段書きし てなり、第39類「ウオツカその他本類に属する商品」を指定商品とするものである ところ、原告の氏名は、バレンタイン・エフ・モロゾフ(Valentine・F・ Morozoff)であるから、本件登録商標はその氏姓の部分である。 しかるところ、たとえ、氏名の一部ないし略称であっても、それが当該氏名を有す る者を指称するものとして周知のものであるような場合は、他人の氏名を有する商標 に準じて商標法(旧法)2条1項5号が適用を受けるものと解するのが相当である。 また、たとえ商品につき誤認混同を生ずるおそれがない場合でも商標法(旧法)2条 1項5号の規定は、当該他人の個人的権益を保護することを主眼として設けられたも のであるから、その登録を許すべからざるものである。

(16)

審決取消訴訟

登 「池田物産株式会社」(第 19 類 昭和 44 年 5 月 22 日 東京高昭和 44 年(行ケ)第 6 号) 本願商標は、ゴシック体で「池田物産株式会社」の文字を左横書きしてなるものである。 そこで判断するに、商標法4条1項8号は、氏名、名称自体(フルネーム)については、そ れが著名であることを要しないことは文理上明らかであり、のみならず、その立法趣旨は、他 人の承諾がある場合を商標登録の禁止から除いていること、同号の他に15号の規定があるこ とから考えると、他人の商品と誤認、混同を招くことによる不正競争の防止にあるのではなく、 他人の氏名、名称に対する人格権を保護するにあると解するのが相当であるから、他人の氏名、 名称が著名であるかどうかによって区別する実質上の根拠はない。商号権、特に会社の商号権 は財産権的性質を帯びるとはいえ、なお人格権的性質を有することは否定できず、氏名や他の 名称に対する人格権と同様に解すべきである。 商標法4条1項8号の立法趣旨は、他人(本件では引用会社)の人格権(本件では商号権) の保護にあるから、他に特段の規定がない以上、本件商標は、他人の名称を含む商標といわな ければならない。 したがって、本願商標は、商標法4条1項8号に該当する。 審決 「アンディ・ウィリアムズ」(第 16 類織物等 昭和 44 年 7 月 15 日 昭和 42 年審判第 8917 号) 本願商標は、「アンディ・ウイリアムズ」の文字を横書きしてなり、第16類「織物、編物、 フエルトその他の布地」を指定商品とするものである。 本願商標の構成は上記のとおり「アンディ・ウイリアムズ」の文字を横書きしてなるもので あるところ、これは昭和19年にポピュラー歌手ビング・クロスビーのレコードに共演し、同 22年ソロ・シンガーとして歌手生活に入り、同31年 7 月ヒット第1作「カナダの夕陽」以 後幾多のヒット作を発表したアメリカ合衆国ポピュラー歌手上位者であり、わが国においても 本願出願前から、ポピュラー音楽愛好者に周知となっているものである。 してみれば、本願商標は、他人の氏名を書してなるものであり、同人の承諾を得た事実も認 められないから、商標法4条1項8号に該当する。

(17)

審決 「ロールスロイス」(第 16 類織物等 昭和 50 年 3 月 17 日 昭和 42 年審判第 5114 号) 本件商標は、「ロールスロイス」の文字を横書きしてなり、第16類「織物、その他本類に 属する商品」を指定商品とするものである。 よって按ずるに、在英国の日本名「ロールス・ロイス・リミテッド」(原名「ROLLS R OYCE LIMITED」)なる法人は、「ROLLS ROYCE」なる商標を付した世界 の最高級車といわれる自動車を製作している会社として、我が国においても広く知られている ばかりでなく、「ロールス・ロイス」の文字もまた日本名における上記法人の略称を表すもの として著名であることは、当庁において顕著な事実である。 そして、本件商標を構成する文字は、上記の「ロールス・ロイス」の文字と綴字を同一とす るものと認定し得るところであり、かつまた本件商標を出願するに際して、上記法人の承諾を 得たとの事実があるとは認め得ないところである。 してみれば、本件商標は、商標法4条1項8号に該当する。 同旨判決 「ROLLS‐ROYCE」(第 16 類 昭和 50 年 3 月 12 日 昭和 42 年審判第 5117 号) 審決

「American Bowling Congress」(第 24 類おもちゃ等 昭和 52 年 1 月 6 日 昭和 47 年審判第 8124 号) 本願商標は、「American Bowling Congress」の欧文字をゴシッ ク・イタリック体で横書きしてなり、第24類「おもちゃ及びその他本類に属する商品」を指 定商品とするものである。 よって判断するに、「American Bowling Congress」は、アマチュ アボウラーを対象とした競技会の中でも代表的なアメリカ選手権のABCトーナメント(アメ リカ合衆国において1907年に第1回大会が開かれ世界で最も古い伝統のあるもので、毎年、 各州の主要都市を舞台に長期開催され、日本からも1968年大会以後、選手団を派遣してい る。)の主催者である。 したがって、本願商標は、他人の名称を書してなるものであって、同人の承諾を得た事実が 認められないから、商標法4条1項8号に該当する。

(18)

審決 「Kardan・カルダン」(第 27 類タバコ等 昭和 53 年 3 月 8 日 昭和 48 年審判第 8629 号) 本願商標は、「Kardan」の欧文字と「カルダン」の片仮名文字を上下二段に書してな り、第27類「タバコ、喫煙用具、マッチ」を指定商品とするものである。 よって按ずるに、フランス国在住の服飾関係のデザイナー「ピエール カルダン」(Pie rre Cardin)は、わが国において「カルダン」と略称されて著名であるところ、本 願商標中の「カルダン」の文字は、前記「カルダン」を表示するものと認定し得るところであ り、かつ、本願商標を出願するにあたって同人の承諾を得たとの事実があるとは認められない から、本願商標は他人の著名な略称を含む商標と認められる。 したがって、本願商標は、商標法4条1項8号に該当する。 同旨判決 「カルダン」(第 22 類 昭和 45 年 5 月 19 日 昭和 41 年審判第 9250 号) 審決取消訴訟

登 「SONYAN」(第 16 類織物等 昭和 53 年 4 月 26 日 東京高昭和 52 年(行ケ)第 133 号) 本件商標は、「SONYAN」の文字を横書きしてなり、第16類「織物、編物、フェルト その他の布地」を指定商品とするものである。 ところで、原告の取り扱いに係る「トランジスターラジオ、テレビ、テープレコーダー」等 「電気通信機械器具」の商標として、「SONY」の欧文字からなる造語標章及びその称呼を 表した「ソニー」の片仮名文字からなる標章が、国内的にも国際的にもきわめて著名となり、 本件商標出願時すでに一般世人の間において、原告が製造販売する商品の商標としてだけでな く、原告の略称としても広く認識されて周知著名となっていることが認められる。一方、本件 商標「SONYAN」は、各文字が一連に表示された書体に格別の特異性はないものであると ころ、全体が6文字のうち、語頭から4文字は、原告の造語表示「SONY」と一致し、これ に付随する語尾の2文字「AN」は、わが国における英語の知識の普及度に徴すると「∼の」 「∼の性質の」「∼人」の意の語を形成するものと直感されることも多い。 そうすると、本件商標からは、著名な略称である「SONY」を容易に想起看取し、その主 要部を「SONY」として理解する蓋然性がきわめて大きい構成のものであるといわざるをえ ない。 したがって、本件商標は、他人の著名な略称を含む商標というべきであるから、商標法4条 1項8号に該当する。 本件商標

(19)

審決 「JIMSTEFANICH・ジムステファニッチ」(第 17 類被服(運動用特殊被服を除く。)等 昭和 54 年 8 月 21 日 昭和 47 年審判第 3104 号) 本件商標は、「JIMSTEFANICH」の文字と「ジムステフアニツチ」の文字を併記 してなり、第17類「被服(運動用特殊被服を除く。)、布製身回品(他の類に属するものを除 く。)、寝具類(寝台を除く。)」を指定商品とするものである。 判断するに、アメリカ合衆国イリノイ州ジョリエット在住の「JIM STEFANICH」 が米国有数のプロボーラーとして本国及び我が国で有名であることは請求人提出の証拠に よって認めることができる。 しかして、本件商標は、一連に表記してなるとしても、氏名を離れて全然別異の親しまれた 観念を生ずるものでなく、上記「JIM STEFANICH」の氏名を一連に表示したもの と認識されると解するのが相当である。 そうとすると、本件商標は一般の形式による氏名の表示ではないが、実質的に請求人の氏名 と同一のものを表示したものである。そして、出願にあたって、同人の承諾を得ていない。 したがって、本件商標は、商標法4条1項8号に該当する。 審決 「CHANEL DE BEAUTE」(第 16 類テープ等 昭和 55 年 3 月 24 日 昭和 44 年審判第 9018 号) 本件商標は、「CHANEL DE BEAUTE」(「L」と「D」及び「E」と「B」の 間は少しあけてある)の欧文字を書してなり、第16類「テープ、リボン、その他本類に属す る商品」を指定商品とするものである。 請求人会社「CHANEL」(シャネル)の名称は、香水その他の化粧品、被服その他の服 飾品などの商品を通じて我が国の取引者、需要者の間に広く認識されているものである。 一方、本件商標は構成前記のとおりであるところ、そのうち語頭部に表された「CHANE L」の文字は、請求人の名称として広く認識されている「CHANEL」と一致しているばか りでなく、全体の構成文字は14文字と比較的多いものであり、しかも、何らの語義を有しな い造語とみられる「CHANEL」の文字と、美の、美しいを意味する「DE BEAUTE」 の文字とが結合された結果、一体として親しまれた特定の観念を生じ、常に一体不可分にのみ 称呼、観念しなければならない格別の事情も認め難いものである。 してみれば、一般世人がこれに接した場合、請求人の名称として広く認識されている「CH ANEL」の文字部分が「DE BEAUTE」に比較して圧倒的顕著に印象づけられるもの といわなければならない。 そうとすれば、本件商標は他人の名称である「CHANEL」の文字を含むものであり、か つ、その承諾を得ているものとも認められない。 したがって、本件商標は、商標法4条1項8号に該当する。 同旨判決 「シャネル・SHANEL」(第 22 類 昭和 53 年 6 月 23 日 昭和 48 年審判第 6982 号)

(20)

審決 「Soldano」(第 21 類ハンドバッグ等 昭和 56 年 8 月 10 日 昭和 55 年審判第 2283 号) 本願商標は、「Soldano」の欧文字を横書きしてなり、第21類「ハンドバック、そ の他本類に属する商品」を指定商品とするものである。 そこで判断するに、「Sergio Soldano」は、世界的に著名な毛皮のファッショ ンデザイナーであり、同人の商品はわが国にも輸入販売されており、本願商標の出願前より取 引者、需要者間において単に「Soldano」と略称され、親しまれていることは服飾辞典 等より認めることができる。 そうすると、本願商標は、上記デザイナーの著名な略称を表示したものであり、本件出願に ついて、請求人は未だ上記デザイナーの承諾を得た事実が認められない。 したがって、本願商標は、商標法4条1項8号に該当する。 審決取消訴訟 「HENG・ヘンク」(第 11 類電気機械器具等 昭和 56 年 11 月 26 日 東京高昭和 54 年(行ケ)第 154 号) 本件商標は、下記に表示したとおり「HENG」及び「ヘンク」の文字を二段に書してなり、 第11類「電気機械器具、電気通信機械器具、電子応用機械器具、電気材料」を指定商品とす るものである。 原告は、1846年に創業され、主として電気関係機械器具の製造販売を業とし「HENG STILER」の文字を商標として使用てきたものであるが、戦後その業務は急速に発展し、 欧米各国に子会社を設けて業務活動をし、わが国に対しても、昭和36年ごろ製品を販売し、 昭和41年2月には、被告を日本における総代理店と定めて、主として電磁カウンタを輸出し てきたこと、昭和40年ごろ当時、国産のカウンタは、正確性について必ずしも信頼できない ものであったのに対し、原告製品は、きわめて高い正確性を有していたため、全輸入量の95 パーセントを占めるに至ったこと、原告の名称の略称「ヘンクストラー」が電磁カウンタの販 売に使用するに適切でないと考え、被告は原告の了解も得たうえ、「ヘンクストラ社のカウン タ」という意味で「ヘンクカウンタ」という名称で販売することに決定し、強力に宣伝・販売 したため、遅くとも本件商標登録当時には、取扱業者のほとんどに対し、原告の電磁カウンタ について「ヘンクカウンタ」の名称は徹底し、また、これに伴って、原告自体についても、取 引上「ヘンク社」、「ヘンクさん」、ないしは「ヘンク」と呼ばれることが多くなり、「ヘンク」 が「ヘンクストラ」ひいては原告を指称するものであることが、取引者、需要者の間に広く知 れ亘るにいたったこと、以上の事実が認められ、この認定を覆すに足る証拠はない。そして、 この認定の事実によれば、本件商標の登録出願の時点において、原告が当業界においては「ヘ ンク」と略称され、その略称は著名であったというべきものである。 したがって、本件商標は、他人の著名な略称を含むから、商標法4条1項8号に該当する。 本件商標

(21)

審決

登 「サンローラン」(第 30 類菓子、パン 昭和 61 年 5 月 1 日 昭和 57 年審判第 14520 号) 本願商標は、下記の構成よりなり、第30類「菓子、パン」を指定商品とするものである。 よって判断するに、フランス在住の服飾デザイナー「イブ・サンローラン(Yves Sa int−Laurent)」は、わが国において「サンローラン」と略称されて、著名である ことは当庁において顕著な事実である。そして、本願商標の構成中「サンローラン」、「Sai nt Laurent」の各文字は、前記の「イブ・サンローラン」、「Yves Saint −Laurent」の著名な略称を表示するものと認めざるを得ないものであり、かつ、本願 商標を出願するについて、同人の承諾を得ているものとは認められないところである。 したがって、本願商標は、他人の著名な略称を含む商標と認められるから、商標法4条1項 8号に該当する。 本願商標 審決

登 「AVON HOUSE」(第 17 類被服(運動用特殊被服を除く。) 昭和 62 年 10 月 22 日 昭和 55 年審 判第 1692 号) 本願商標は、「AVON HOUSE」の欧文字を横書きしてなり、第17類「被服(運動 用特殊被服を除く。) 」を指定商品とするものである。 よって按ずるに、本願商標の構成は、前記のとおりであるところ、「AVON」と「HOU SE」の文字の間には間隔があり、構成上、分離して見られ、観念上も一体不可分の結合関係 を見出し難いから、一連にのみ称呼、観念しなければならない格別の事情は存在しない。また、 「AVON」は、本願商標の出願前から、日本国内で長期間にわたって化粧品の販売、宣伝を してきた結果、本願商標の出願時には米国化粧品会社「AVON PRODUCTS,INC.」 の略称及び商標として、取引者、需要者はもちろんのこと一般世人間にも広く認識されるに 至っているものと推認し得るものである。そして、本願商標は、前記法人の著名な略称である 「AVON」を含むものであり、さらに、請求人は、本願商標の出願にあたって上記法人の承 諾を得ているものとは認められない。 したがって、本願商標は、商標法4条1項8号に該当する。

(22)

審決

登 「アンペックス・AMPEX」(第 17 類被服等 昭和 63 年 9 月 16 日 昭和 58 年審判第 5062 号) 本願商標は、「アンペックス」の片仮名文字と「AMPEX」の欧文字を横書きしてなり、 第17類「被服、布製身回品、寝具類」を指定商品とするものである。 証拠によると、登録異議申立人である「アンペックス・コーポレーション」(AMPEX C ORPORATION)は、アメリカ合衆国カリフォルニア州レッドウッド市に所在し、同国 最大のテープレコーダーメーカーで、その他コンピューター周辺機器の大手メーカーでもあり、 また、日本においても、日本法人「アンペックス・ジャパン(株)」、合弁法人「東芝アンペッ クス(株)」などを有し、松下電器産業(株)、三洋電機(株)など大手電機メーカーに技術供 与するなど日本と密接な関係にあり、そして、その略称である「AMPEX」(及びその字音 「アンペックス」)は、本願商標の出願時において、既に著名であったと認め得るところであ る。 してみると、本願商標は、「アンペックス」と「AMPEX」の文字を書してなるものであ るから、前記電機メーカーの著名な略称及びその字音よりなるものといわざるを得ない。そし て、本願商標を出願するについて、請求人(出願人)は、前記電機メーカーの承諾を得ている ものとは認められない。 したがって、本願商標は、商標法4条1項8号に該当する。 審決 「ジョリーカルチェ」(第 4 類せっけん類(薬剤に属するものを除く) 昭和 63 年 11 月 24 日 昭 和 59 年審判第 10257 号) 本件商標は、「ジヨリーカルチエ」の文字を書してなり、第4類「せっけん類(薬剤に属す るものを除く)歯みがき、化粧品(薬剤に属するものを除く)、香料類」を指定商品とするも のである。 よって判断するに、「カルチエ」の文字は、宝石、貴金属細工物、ライター、時計等につい ての最高級品メーカーとして世界的に周知、著名なフランス国パリ2区リユ、ド、ラ、ペ13 に所在する「カルチエ、ソシエテ、アノニム」の著名な略称と認められる。 したがって、「ジヨリーカルチエ」の文字よりなる本件商標は、前記会社の著名な略称「カ ルチエ」を含んでなるにもかかわらず該会社の承諾を得ていないので、商標法4条1項8号に 該当する。

(23)

「秀英学院」」(第 26 類印刷物(文房具類に属するものを除く。) 平成元年 1 月 18 日 昭和 57 年審判第 3295 号) 本願商標は、「秀英学院」の文字を横書きしてなり、第26類「印刷物(文房具類に属する ものを除く。)その他本類に属する商品」を指定商品とするものである。 本願商標は、その構成前記のとおり「秀英学院」の文字を書してなるものであるところ、こ れと同一の名称を有する者「秀英学院」(東京都世田谷区世田谷1−3−3)が存在している 事実があり、しかも本願商標の登録出願について同人の承諾を得たものであることを証してい ない。 したがって、本願商標は、他人の名称と同一の商標であり、かつ、該他人の承諾を得ていな いものであるから、商標法4条1項8号に該当する。 審決 「ジャイアンツの江川」(第 17 類被服等 平成元年 4 月 13 日 昭和 57 年審判第 7023 号) 本願商標は、「ジャイアンツの江川」の文字を書してなり、第17類「被服、布製身回品、 寝具類」を指定商品とするものである。 よって按ずるに、本願商標中の「ジャイアンツの」の文字部分は、それに続く「江川」を確 定させるための修飾的部分であり、「ジャイアンツの江川」の文字に接する一般世人をして誰 しも、プロ野球読売ジャイアンツに在団していた江川卓氏を想起させるものである。してみれ ば、たとえ江川卓氏が本願出願の時点に読売ジャイアンツに入団していなかったとしても、同 氏は、高校(作新学院)大学(法政大学)在学中から超一流の野球選手として有名であり、ま た、読売ジャイアンツの入団という風評も高かったことよりすれば、本願出願当時において、 一般需要者は、読売ジャイアンツと江川卓氏との関連についてもある程度認識していたといえ るし、江川卓氏がすでに著名であつたと認め得るところである。 したがって、本願商標は、著名な江川卓氏を指す「江川」の略称を含むものであり、かつ、 同氏の承諾を得ているものとは認められないから、商標法4条1項8号に該当する。 同旨判決 「ジャイアンツの原」(第 17 類 平成元年 4 月 13 日 昭和 57 年審判第 7024 号)

(24)

審決 「Hilton's」(第 32 類食肉等 平成 3 年 5 月 30 日 昭和 55 年審判第 17366 号) 本願商標は、下記に示すとおり、草葉様輪郭内に「HILTON S」の文字を横書きして なり、第32類「食肉、卵、食用水産物、野菜、果実、加工食料品」を指定商品とするもので ある。 よって審理するに、登録異議申立人(「以下申立人という」)提出の各書証を総合勘案するに、 アメリカ合衆国ニューヨーク州パークアベニュー301番ウオルドーフ・アストリヤ在「ヒル トン・インターナショナル・カンパニー」は、1946年創業以後、数多くのホテルを世界各 地に展開している世界的ホテル企業として屈指の存在であり、商号中の「ヒルトン」ないし「H ILTON」は、同社さらには申立人をも含む系列会社の略称として、本願商標の出願時には 既に著名なものであったと認め得るところである。 そして、本願商標は下記に示すとおり、草葉様輪郭内に「HILTON S」の欧文字を横 書きしてなるものであるところ、該文字中の「 S」の部分は英語の接尾辞で所有格を意味す るものとして理解し把握されていることよりして、その語幹ともいうべき部分は「HILTO N」の文字にあるというべきである。 してみると、本願商標は、他人の名称の著名な略称を含む商標よりなるものといわざるを得 ないし、かつ、出願人は、本願商標の出願に際し同社の承諾を得ているものとは認められない。 したがって、本願商標は、商標法4条1項8号に該当する。 本願商標 同旨判決 「ヒルトン・HILTON」(第 33 類 平成元年 11 月 9 日 東京高平成元年(行ケ)第 37 号) 審決 「JOHN MCENROE」(第 24 類おもちゃ等 平成 4 年 8 月 20 日 昭和 62 年審判第 4195 号) 本願商標は、「JHON MCENROE」の欧文字を横書きしてなり、第24類「おもちゃ、 人形、娯楽用具、運動具、釣り具、楽器、演奏補助品、蓄音機(電気蓄音機を除く。)レコー ド、これらの部品および附属品」を指定商品とするものである。 よって判断するに、本願商標は、「JHON MCENROE」の文字を書してなるもので あるところ、該文字は、世界的に著名なアメリカの現役プロ・テニスプレイヤーである「ジョ ン・マッケンロー」の欧文字綴りと認められる。そして、出願人は、本願商標を出願するにつ いて、上記プロ・テニスプレイヤーの承諾を得ているものとは認められない。 したがって、本願商標は、商標法4条1項8号に該当する。

(25)

審決 「AMEX・アメックス」(第 19 類台所用品等 平成 5 年 9 月 16 日 昭和 62 年審判第 9784 号) 本願商標は、「AMEX」の欧文字と「アメックス」の片仮名文字を上下二段に表してなり、 第19類「台所用品、日用品」を指定商品とするものである。 そこで判断すると、「AMEX」(アメックス)の文字は、昭和54年頃から本格的に新聞、 雑誌の記事等に使用されており、少なくとも、本願商標の出願当時(昭和59年)には既に「ア メリカン・エキスプレス・カンパニー」(American Express Co.)の営業 を表す略称として、わが国において広く認識されていたものであることは、証拠により認め得 るところである。そして、本願商標の出願に当たって上記会社の承諾を受けているものとは認 められない。 したがって、本願商標は、商標法4条1項8号に該当する。 審決 「雅叙園・Gajoen」(第 33 類穀類等 平成 6 年 6 月 13 日 平成 2 年審判第 14739 号) 本件商標は、「雅叙園」の文字と「Gajoen」の文字とを上下2段に併記してなり、第 33類「穀類、豆、粉類、飼料、種子類、その他の植物及び動物で他の類に属しないもの」を 指定商品として登録されたものである。 よって判断すると、請求人「合資会社雅叙園」は昭和3年に設立され、「目黒雅叙園」等に おいて料理、結婚式場等の営業の業容を順次拡張しつつ現在に至っているものである。 そして、請求人の提出した各証拠によれば、請求人の設立した「目黒雅叙園」の略称として 「雅叙園」が、本件商標の出願時には、この種業界はもとより一般需要者間に広く知られてい たと認められる。 これに対して、被請求人である「雅叙園観光株式会社」(雅叙園観光)が、「雅叙園」の略称 をもって通用する程に一般に認識され、使用されていることを是認することができない。 そうすると、本件商標は、請求人会社である「合資会社雅叙園」の設立、営業に係る「目黒 雅叙園」の著名な略称とその字音のローマ字「Gajoen」よりなるものであり、かつ同人 の承諾を得ていないものであるから、商標法第4条第1項第8号に該当する。

(26)

審決取消訴訟

登 「フリーフレーム」(第 7 類)(平成 10 年 1 月 14 日 東京高平成 8 年(行ケ)第 225 号) 本件商標は、下記に表示したとおりの構成よりなり、第7類「建築又は構築専用材料、セメ ント、木材、石材、ガラス」を指定商品とするものである。 法人格のない社団は、法人格を有しない故に一定の範囲で権利主体となることに制限がある とはいえ、個々の構成員とは別個に独立して存在し、社会において一定の地位を占めるもので あるから、その実質的な社会的地位に伴う名誉、信用等の人格権的利益を共有しうるものであ ることは、社団法人の場合と変わりがなく、その中には「自己の名称等が他人によってみだり に使用されない」利益をも含むものというべきである。 商標法4条1項8号が「他人の氏名若しくは名称若しく著名な雅号、芸名若しくは筆名若し くはこれらの著名な略称を含む商標」について商標登録を受けることができないとした趣旨は、 当該「他人」の「氏名若しくは名称・・・もしくはこれらの著名な略称」に対する人格権的利 益を保護することを主たる目的とするものであることは、同号かっこ書に「(その他人の承諾 を得ているものを除く。)」と規定されていることから明らかである。 そうすると、法人格のない社団が一定の範囲で商標法上の権利の主体となり得ないものとさ れているとしても、同法が、一般私法上の人格権的利益の保護を主たる目的とする本号から、 法人格のない社団を除外している、すなわち、本号にいう「他人」に法人格のない社団は含ま れないと解する理由はなく、その名称又はその著名な略称を含む商標は、本号によって商標登 録を受けることができないものと解すべきである。 本件商標の登録出願時までには「フリーフレーム」の語は、全国規模にわたる当業者及び法 面工事の需要者間において、フリーフレーム工法の略称として著名であったとともに、同工法 を実施している法面工事施工業者からなる業界団体である原告の名称の略称としても著名と なっていたことが認められる。 よって、本件商標は商標法4条1項8号に該当する。 本件商標

(27)

審決取消訴訟

登 「ダイレクトライン」(第 36 類生命保険契約の締結の媒介等 平成 12 年 1 月 27 日 東京高平 成 11 年(行ケ)第 184 号) 本件商標は、「ダイレクトライン」の片仮名文字と「DIRECT LINE」の欧文字を 上下に横書きしてなり、第36類「生命保険契約の締結の媒介」等を指定役務とするものであ る。 ところで、証拠によれば、登録異議申立人(ダイレクト ライン インシュアランス パブ リック リミテッド カンパニー)は、1985年に設立された英国の保険会社であり、保険 の直接販売を成功させた会社として欧米では極めて著名であると認められる。また、登録異議 申立人は、「ダイレクトライン社」、「ダイレクト・ライン社」、「ダイレクト・ライン」、「ダイ レクトライン」、「Direct Line社」などの略称をもって、本件商標の登録出願前に、 我が国においてもしばしばその事業活動が業界新聞や業界誌上で紹介されていた事実を認め ることができる。 したがって、本件商標は、登録異議申立人の著名な略称を表す商標といわざるを得ないから、 商標法4条1項8号に該当する。 本件商標

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審決取消訴訟

登 「Carrefour・カルフール」(平成 13 年 7 月 18 日 東京高平成 12 年(行ケ)第 257 号) 商標法4条1項8号所定の他人の名称とは、当該他人が外国の会社である場合には、当該国 の法令の規定に則って付されたその正式な名称をいい、当該国の法令において、株式会社等の 組織形態を含まないものが法令上の正式名称とされているときは、これを含まないものが同号 所定の他人の名称に当たると解するのが相当である。なぜならば、他人の名称を含む商標につ いて登録を受けることができないと規定する同号の趣旨は、当該他人の人格権を保護するとい う点にあるところ、同号が他人の名称については著名性を要するものとしていないのに対し、 他人の略称についてはこれを要するものとしているのは、略称については、これを使用する者 がある程度恣意的に選択する余地があるためであると解されるから、このこととの対比におい て、著名性を要せずに同号該当性が認められる他人の名称とは、使用する者が恣意的に選択す る余地のない名称、すなわち、法令上の正式名称であるというべきであり、以上の理は、当該 他人が法人、ひいては外国の会社であっても異なるところはないからである。また、法令上の 正式名称は、人格権保護のために最も重要であるから、略称等と異なり著名性を要件としてい ないということもできる。 原告は、我が国の会社にあっては、「株式会社」の文字を除いた部分は、同号所定の他人の 名称の略称として著名であるときに限り、商標登録を受けることができないのに、被告がフラ ンスの会社であるからといって、組織形態を含まない名称が同号所定の名称に当たるとするこ とは、内外国企業を不当に差別することであると主張するが、上記のとおり、他人が恣意的に 名称を選択する余地を残すべきではないことに照らすと、外国会社の組織形態が会社の名称に 含まれるかどうかが各国の法制によって異なっても、このことをもって、内外国法人の差別と いうべきものではない。 フランス法に基づいて設立された被告の正式名称は「CARREFOUR」であり、このことは、本 件商標の登録出願時及び登録査定時においても同様であったと認められ、この認定を左右する 証拠はない。 そうすると、頭文字以外を小文字で書してなり被告の法令上の正式名称と同一性がある 「Carrefour」及びこれを片仮名文字で表記した「カルフール」を上下2段に表記した本件商 標は、商標法4条1項8号に規定する他人の名称に該当するというべきであり、これと同旨の 審決の判断に誤りはない。

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審決取消訴訟

登 「国際自由学園」(第 41 類技芸・スポーツ又は知識の教授等 平成 17 年 7 月 22 日 最高裁平 成 16 年(行ヒ)第 343 号) 本件商標は、「国際自由学園」の文字からなり、第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授、 研究用教材に関する情報の提供及びその仲介、セミナーの企画・運営又は開催」を指定役務と するものである。 商標法4条1項は、商標登録を受けることができない商標を各号で列記しているが、需要者 の間に広く認識されている商標との関係で商品又は役務の出所の混同の防止を図ろうとする 同項10号、15号等の規定とは別に、8号の規定が定められていることからみると、8号が、 他人の肖像又は他人の氏名、名称、著名な略称等を含む商標は、その他人の承諾を得ているも のを除き、商標登録を受けることができないと規定した趣旨は、人(法人等の団体を含む。以 下同じ。)の肖像、氏名、名称等に対する人格的利益を保護することにあると解される。すな わち、人は、自らの承諾なしにその氏名、名称等を商標に使われることがない利益を保護され ているのである。略称についても、一般に氏名、名称と同様に本人を指し示すものとして受け 入れられている場合には、本人の氏名、名称と同様に保護に値すると考えられる。 そうとすると、人の名称等の略称が8号にいう「著名な略称」に該当するか否かを判断する についても、常に、問題とされた商標の指定商品又は指定役務の需要者のみを基準とすること は相当でなく、その略称が本人を指し示すものとして一般に受け入れられているか否かを基準 として判断されるべきものということができる。 本件においては、前記事実関係によれば、上告人は、上告人略称を教育及びこれに関連する 役務に長期間にわたり使用し続け、その間、書籍、新聞等で度々取り上げられてきており、上 告人略称は、教育関係者を始めとする知識人の間で、よく知られているというのである。これ によれば、上告人略称は、上告人を指し示す名称として一般に受け入れられていたと解する余 地もあるということができる。そうであるとすれば、上告人略称が本件商標の指定役務の需要 者である学生等の間で広く認識されていないことを主たる理由として本件商標登録が8号の 規定に違反するものではないとした原審の判断には、8号の規定の解釈適用を誤った違法があ るといわざるを得ない。 自由学園 本件商標 上告人略称 (標準文字)

参照

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