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そもそもカリキュラムマネジメントとは?

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1.カリキュラムマネジメントとは何か?

 はじめに

近年、各学校における教育課程の実施にあたって、「カリキュラムマネジメント」が重要視 されるようになってきている。

たとえば、 平成29年3月に公示された新しい学習指導要領には、「各学校においては、校長 の方針の下に、校務分掌に基づき教職員が適切に役割を分担しつつ、相互に連携しながら、各 学校の特色を生かしたカリキュラムマネジメントを行うよう努めるものとする」とある。

また「教職課程コアカリキュラムの在り方に関する検討会」の出した教職課程コアカリキュ ラムにおいても、「教育課程の意義及び編成の方法」にこれまでなかった「(カリキュラムマネ ジメントを含む)」という表現が追加され、その全体目標にも、「学習指導要領を基準として各 学校において編成される教育課程について、その意義や編成の方法を理解するとともに、各学 校の実情に合わせてカリキュラムマネジメントを行うことの意義を理解する」とある。さらに はカリキュラムマネジメントの一般目標として、「教科・領域・学年をまたいでカリキュラム を把握し、学校教育課程全体をマネジメントすることの意義を理解する」と述べられ、その到 達目標として、「1.カリキュラムマネジメントの意義や重要性を理解している」「2.カリ キュラム評価の基礎的な考え方を理解している」が明示されている。

このように近年非常に重視されるカリキュラムマネジメントであるが、多くの者、特に現場

そもそもカリキュラムマネジメントとは?

―美原中学校におけるカリキュラムマネジメントから考える―

杉浦 健

*1

・奥田 雅史

*2

What is Curriculum Management ?:

Thinking From the Curriculum Management in Mihara Junior High School

(SUGIURA Takeshi and OKUDA Masashi)

*1 近畿大学教職教育部 教授

*2 堺市立美原中学校 教諭

〔キーワード〕カリキュラムマネジメント、学習指導要領、ア クティブ・ラーニング、総合的な学習の時間、

特別活動

(2)

に直接携わっていない者や、教職課程の学生などにとってはその言葉がどうしても抽象的で理 解しにくいものとなっていると思われる。また現場の教員からすると、実質的にカリキュラム マネジメントを行っていても、それがカリキュラムマネジメントとはわからないで行っている ことも多いのではないかと思われる。

そこで本論文では、そもそもカリキュラムマネジメントとは何なのか、どんな意義があるの か、筆者の一人が所属する中学校を具体例としながら理解することを目的とする。抽象的なカ リキュラムマネジメントという言葉も、具体的な事例とともに理解することで、より深く理解 することができると思われる。それに加えて本論文では、学校におけるカリキュラムマネジメ ントの成立と改善のプロセスについても明らかにしていく。カリキュラムマネジメントの成立 と改善のプロセスをたどることは、単にカリキュラムマネジメントがどのようなものなのかを 記述するだけよりも、今後さまざまな学校がカリキュラムマネジメントを行っていくために重 要なヒントを提供してくれるはずである。

 そもそもカリキュラムマネジメントとは

新しい中学校学習指導要領(平成29年3月公示)では、カリキュラムマネジメントは、次の ように表現されている。

「各学校においては、 生徒や学校、 地域の実態を適切に把握し、 教育の目的や目標の実現に必 要な教育の内容等を教科等横断的な視点で組み立てていくこと、教育課程の実施状況を評価し てその改善を図っていくこと、教育課程の実施に必要な人的又は物的な体制を確保するととも にその改善を図っていくことなどを通して、教育課程に基づき組織的かつ計画的に各学校の教 育活動の質の向上を図っていくこと(以下「カリキュラムマネジメント」という)に努めるも のとする」

この文言には、カリキュラムマネジメントの重要な要素が的確に表されている。ここではそ の要素を取り出して示していこう。

まず一つ目は、カリキュラムマネジメントは、「各学校において」行われるということであ る。各学校は地域的に置かれた状況も、児童・生徒たちの課題も異なるものである。であれば、

それぞれの学校において児童・生徒を成長させるにあたって、学習指導要領を基準としながら

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も、行うべき教育課程(カリキュラム)は変わるべきである。これがカリキュラムマネジメン トの考え方の基本のひとつである。

二つ目は、そのように各学校や児童・生徒の置かれた状況が違う以上、各学校において「教 育の目的や目標」が異なるということであり、その異なる目標を実現するのがカリキュラムマ ネジメントだということである。そう考えると、そもそも各学校には、各学校で定めた「教育 の目的・目標」が必要であることになる。つまりカリキュラムマネジメントのスタート地点は、

「各学校の教育の目的・目標」と言えるのである。

三つ目が、「各学校の教育の目的・目標」に必要な「教育の内容等」を「教科等横断的な視 点で組み立てて」いくということである。 このことは後にも記述するように、 そもそもカリ キュラムマネジメントが重視されるようになったのは、総合的な学習の時間が設けられ、各学 校がカリキュラムを創造しなければいけなくなったためであることから、教科等横断的な視点 はカリキュラムマネジメントの核の一つであると言える。

四つ目が、カリキュラムマネジメントが「教育課程の実施状況を評価してその改善を図って いく」とある通り、各学校は教育目標を定め、指導計画を作って終わりではなく、常に評価を 行いながら、改善していく、すなわち常に PDCA(Plan Do Check Action)サイクルを回して いくということである。

五つ目が、「人的又は物的な体制を確保するとともにその改善を図っていく」とある通り、

単にカリキュラムを作るだけでなく、そのカリキュラムが円滑に実施されるように人的・物的 に体制整備をすることもカリキュラムマネジメントであるということである。カリキュラムが 絵に描いた餅になり、教育効果が上がらないようになってしまわないためにも、体制や組織を 整えていくことは、近年の多忙な学校において重要なことであろう。

六つ目が、カリキュラムマネジメントにおいては教育課程に基づき組織的かつ計画的に各学 校の教育活動の質の向上を図っていくことが求められるということである。つまりはカリキュ ラムマネジメントとは学校の教育活動そのものだということである。マネジメントという言葉 から、カリキュラムマネジメントは管理職が行うべきものと誤解されがちだが、そうではなく、

全教員そして学校に関わるすべての人たちが協働して行う教育活動なのである。

カリキュラムマネジメントの主要な研究者の一人である田村は、カリキュラムマネジメント とは、「各学校が、 学校の教育目標をよりよく達成するために、 組織としてカリキュラムを創 り、 動かし、変えていく、継続的かつ発展的な、問題解決の営み(田村、2011)」と定義して

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いる。さらに簡略化したものでは、カリキュラムマネジメントとは「カリキュラムを主たる手 段として、 学校の課題を解決し、 教育目標を達成していく営み(田村,2014)」という定義も なされている。つまり、カリキュラムマネジメントとは、各学校の教育目標を果たすために行 われるカリキュラムを中心としたすべての教育活動なのである。どのような教育目標を立てる のか、そのためにどのようなカリキュラムにするのか、どのような組織を作り上げ、どのよう な人材を整え、どのように学校内外とつながるのか、どのように効果を評価し、どのように改 善していくのか、それらの総体がカリキュラムマネジメントであると言えるのである。

今回具体例として挙げる美原中学校は、カリキュラムマネジメントという言葉が流布する以 前より、生徒たちの実状に応じ、学校の教育目標を立て、人権学習や地域学習など教科等横断 的な視点で学びと教えの実践を行い、学校内外のさまざまな人材とつながり、それらをより良 いものとするために改善を行ってきた。つまり美原中学校の教育実践は上記の要素をすべて内 包した、まさにカリキュラムマネジメントの実践の好例となっているのである。

以下、第2章からは、美原中学校の教育実践を実例にしてカリキュラムマネジメントとはど ういうことなのかについて大枠の理解をしていく。第3章ではさらに詳しく、実際にどのよう な教育実践が行われているのか、またこのような取り組みがどのように成立し、改善されてき たのかを当事者の視点から明らかにしていく。

2.美原中学校の実践を通したカリキュラムマネジメントの理解

 なぜカリキュラムマネジメントが重視されるようになったのか?

吉富(2016)は、カリキュラムマネジメントが重視されるようになったのにはいくつかの理 由があると述べている。

その一つ目は、そもそも学校の教育は、教育の目標を達成するために行われるものであり、

そのためには、学校の教育活動全体にわたって計画をしっかりと策定し効果的に展開していく、

つまりカリキュラムマネジメントが重要だからである。

二つ目は近年、学校の自主性・自律性を高め、地域に開かれた創意工夫を生かした特色ある 教育活動が展開されるよう、学校の裁量の拡大が図られてきているからである。特に総合的な 学習の時間の創設からは、決められたカリキュラムが無いために、各学校が教育課程の開発や マネジメントに本格的に取り組むことが求められるようになった。

三つ目は二つ目とも関連するが、平成10年から平成20年の現行学習指導要領までの改訂に

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よって、学習指導要領の大網化・弾力化が進められてきたためである。この改定の流れのなか で、総合的な学習の時間の創設のみならず、教科によって目標や内容を複数学年まとめて示す、

1 

単位時間は学校が定める、小学校ではすべての学年で合科的な指導が認められるといった改 革や、学習指導要領の「基準性」によって、学習指導要領に示していない内容を加えて指導で きること、長期休業に各教科の授業を行えること、10分程度の短い時間の指導も一定の要件を 満たす場合には教科の年間授業時数に含めることができるなど、学校が創意工夫を生かして教 育課程を編成・実施できるようになってきたのである(吉富,2016)。

各学校において、教育の目標が異なるわけであるから、各学校においてその目標を果たすた めのカリキュラムが異なってくるのは当然である。また各学校の創意工夫の余地が増えたとい うことは、各学校に対してカリキュラムの実施と成果により責任が課せられるようになったと いうことである。そうだからこそ、各学校におけるカリキュラムマネジメントがより重要視さ れるようになってきたのである。

 美原中学校のカリキュラムマネジメント

今回カリキュラムマネジメントの実例としてあげる美原中学校は、生徒の実状に合わせて学 校教育目標が定められ、目標を果たすための教育課程の工夫がなされている学校である。また 教員の自主的なリーダーシップでカリキュラムの運営、学校組織の改善、アクティブ・ラーニ ングの導入など、カリキュラムマネジメントが行われてきた学校であり、カリキュラムマネジ メントを具体的に考えるにあたって好例となると思われる。

 美原中学校の学校目標

美原中学校の学校力向上プラン(学校評価計画書)によると、平成29年度の重点目標は、

「学びの共同体」を核とした「総合的な学力」の向上、

人権教育の推進:さまざまな人権を 理解する教育に「ほんものとの出会い」を通して取組み、自尊感情の熟成を図る、

地域に信 頼される学校づくりの推進、の3つである。

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表1 美原中学校の学校評価計画書

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誰もが承知の通り、 表1の大項目「確かな学力」「豊かな心・健やかな体」は現行学習指導 要領で示された「生きる力」の3つの要素と対応している。とはいえ、その目標は学習指導要 領を取ってつけたようにそのまま当てはめて学校の目標にしたのではない。第3章で詳しく示 す通り、生徒の荒れに対応すべく、もともとあった人権教育をベースとして、生徒の人権を尊 重するという意味で学力保障を目指すというプロセスがあった。そして学力保障の方法として

「学びの共同体(佐藤,2012)」を導入し、さらに学びの共同体による対話と生徒同士の認め合 いによって学習を進め、自尊感情を熟成するというプロセスを経て、 現時点での学校目標と なっている。つまり、美原中学校では、中教審論点整理(中教審 教育課程企画特別部会 論 点整理資料 平成27年9月14日。以下、論点整理)にあるように「学習指導要領等を受け止め つつ、子供たちの姿や地域の実状等を踏まえて」教育目標を設定しているのである。

 美原中学校のカリキュラム運営のための組織

美原中学校のカリキュラムにおいて特に注目すべきは、道徳や特別活動、総合的な学習の時 間において行われている人権学習において、平和学習・部落問題学習・男女共生学習・国際理 解学習・障がい者理解学習からなる「五単元部会」が組織されていることである。全教員は五 単元部会のいずれかに所属し、学年の学習はもちろん、他学年の学習の計画にも携わっており、

生徒たちは3年間でこの五単元を系統立てて学習できるようになっている。

また五単元部会は分掌として人員が配置されており、それぞれの部会においてテーマが設定 され、加えてこれまでの人権学習のノウハウが蓄積されているために、教員が人権学習を計画 するにあたって比較的容易であり、またそれぞれの教員が深く各教材を学ぶことができる素地 になっている。 カリキュラムマネジメントにあたっては、「教育課程の実施に必要な人的又は 物的な体制を確保する」ことが重視されているが、五単元部会はその役割を十分に果たしてい るのである。

 美原中学校におけるカリキュラムの改善

美原中学校では、美原町が堺市に編入した平成17年より、堺市の歴史や文化、産業から学ぶ 地域学習である「子ども堺学」を総合的な学習の時間に行っていた。しかしながら、平成24年 から27年度においては、教育目標が「人権尊重の精神を基盤として、自尊感情の醸成を図り、

『学びの共同体』を核とした『総合的学力』の向上をめざす」だったこともあり、27年度から

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上記人権学習とリンクさせるように改善を行っている。その際には、「ほんものとの出会いを 通した人権学習による心の育成」を評価目標とし、27年度、28年度の2年間でのべ35人の講師 と30の企業や団体に協力を仰いだという。これは論点整理で示された、「『社会に開かれた教育 課程』の観点からは、学校内だけではなく、保護者や地域の人々等を巻き込んだ『カリキュラ ムマネジメント』を確立していく」ということを高度な形で実現している例と言えよう。

 美原中学校のカリキュラムマネジメントとアクティブ・ラーニング

カリキュラムマネジメントにおいては、アクティブ・ラーニング(主体的で、対話的な深い 学び)が重視される。論点整理の「アクティブ・ラーニング」の視点と連動させた学校経営の 展開においては、以下のように示されている。

「アクティブ・ラーニング」は、形式的に対話型を取り入れた授業や特定の指導の型を目指 した技術の改善に留(とど)まるものではなく、子供たちの質の高い深い学びを引き出すこと を意図するものであり、さらに、それを通してどのような資質・能力を育むかという観点から、

学習の在り方そのものの問い直しを目指すものである。 中略

その意味において、次期改訂に向けて提起された「アクティブ・ラーニング」と「カリキュ ラムマネジメント」は、授業改善や組織運営の改善など、学校の全体的な改善を行うための鍵 となる二つの重要な概念として位置付けられるものであり、相互の連動を図り、機能させるこ とが大切である」

美原中学校では学力保障は生徒の人権保障という意図を持っている。美原中学校では学びの 共同体というアクティブ・ラーニングが行われているが、それはあくまで教育目標を果たすた めに行われる。人権を尊重する、だから全ての子どもの学びを保障する、すべての子どもの学 びを保障するから学びの共同体、子どもの学びを保障する学びの共同体だからこそ、聴く力の 養成と感性の育成、というように、学校の目標と学びの共同体は密接に関連したものであり、

アクティブ・ラーニングは、そのものが目的ではなく、生徒の人権を尊重するという教育の目 的を果たすための手段となっているのである。

第3章で示す通り、美原中学校では、かつて人権学習を行っても荒れる生徒たちを見て、あ る教員が「生徒たちの人権は尊重されているのだろうか」という疑問を持ち、生徒たちが自尊

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感情を持てるように、学力を保障することを通して根のある人権学習をしていくために学びの 共同体が導入されたいきさつがある。自分の人権が尊重されずして、他者の人権を本当に尊重 することはできない。自分が大切にされて人も大切に出来る、そしてその基盤があるからこそ、

教育目標である「人権教育の推進:さまざまな人権を理解する教育に『ほんものとの出会い』

を通して取組み、自尊感情の熟成を図る」ことができるのである。

 美原中学校における教科等横断的なカリキュラム

新学習指導要領では、カリキュラムマネジメントの重要な要素として「教育の目的や目標の 実現に必要な教育の内容等を教科等横断的な視点で組み立てていくこと」がある。この意味で も、美原中学校において学びの共同体の果たす役割は非常に大きいと言えよう。授業での4人 組での学び合いはもちろん、総合的な学習の時間や人権学習の成果についても、学んだことを 対話や発表によって共有することが行われている。佐藤(2011)は、学びの共同体は単なるグ ループ活動ではなく、「二一世紀型の学校と教室の『ヴィジョン』であり、 学校改革と授業改 革の『哲学』であり、学校と教室を改革する『活動システム』である」と述べたが、美原中学 校では、全ての教科、人権学習、総合的な学習の時間、さらには特別活動においてもこの哲学 に基づいた知識の共有が行われている。

論点整理では、教育課程全体を通しての取組として、「これからの時代に求められる資質・能 力を育むためには、各教科等の学習とともに、教科横断的な視点で学習を成り立たせていくこ とが課題となる」、「特別活動や総合的な学習の時間の実施に当たっては、カリキュラムマネジ メントを通じて、子供たちにどのような資質・能力を育むかを明確にすることが不可欠である」

とある。美原中学校の取り組みは、学びの共同体による総合的な学力と、人権学習に基づく自 尊感情の熟成という教育目標、すなわちどのような資質・能力を育むかが明確になっており、

それを果たすために「ほんものとの出会い」と対話を重視したカリキュラムマネジメントが的 確に行われていると言える。

 教育課程の実施状況の把握(美原中学校の PDCA サイクル)

カリキュラムマネジメントにあたっては、教育課程の実施状況と成果の把握、評価に基づく 改善が重要視される。美原中学校においても、学習成果の評価が常に行われている。学校力向 上プランにおいても、それぞれの項目についてアンケートを中心とした評価を行い、その改善

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を図っている。また学びの共同体に関しては、PDCA サイクルの一環として、広島の小学校元 校長や堺市の元校長などにスーパーバイザーとして指導を仰ぎ、改善点の指摘を受けていると いう。

そもそも美原中学校の現在のカリキュラム自体が、これまでの改善の結果である。第3章で も示す通り、そもそもは10数年前に学校が荒れはじめて、先生方が何とかしようと孤軍奮闘し たもののうまくいかない時期があり、その後、教員がみんなで何かをしようということで人権 学習がはじまったという。なぜ人権学習なのかというと、周りの中学校には被差別地区がある が、自分たちの学校にはない、だから人権学習をやってもどこか他人事であったという。その 一方で子どもも家庭で認められず大切にされていない状況があった。そのため人権学習で子ど もを大切にしよう、今までも人権学習をやっていたけれど、もっと前向きに伝えていかないと いけない、それに当たってはそれぞれの教師のスキルでやっていたのを、学校として形に残し ていこうということで、五単元部会ができたという。

学びの共同体についても、最初は一人の先生が人権を大切にする授業とはどんな授業だろう と考え、学びの共同体を推進する佐藤学氏のところに行ったという。社会科の先生が1年間実 践したのち、佐藤氏が堺で広げていきたいということもあり、美原中学校でやろうということ でスーパーバイザーの元校長先生が9年前に広島から来校した。その後、学校をあげてやりま しょう、ということではじまったという。

また3,4 

年前には、人権学習の負担が膨れ上がった時期もあったという。人権を意識する あまり、道徳だったり、学活だったりが取れなくなったことがあり、教師の方も教科の授業研 究が取れないようなことになってきた。そのため、教科のところでできる部分は教科で効率的 にやろうということになった。例えば国語の時間に人権で学んだことを作文で書いたり、お礼 の年賀状を書いたり、理科では地震を取り上げたら、その被害に人権のテーマを絡めたり、英 語で異文化理解を行ったりするようになったという。そこでは第3章で示すように、管理職が 進めて改革をするのではなく、各教員が自らの学習方法を共有するなど、いわゆるミドルリー ダーがリーダーシップを取って改革を進めるなど、ボトムアップの PDCA サイクルが働いて いたことも注目に値する。

このように、美原中学校では学校・教員と生徒たちがおかれた状況を捉え、管理職だけでな く、若手も含めた全教員が教育課程を策定し、改善を行い続けて、現在の学校目標とそれを果 たすための教育課程を作り上げてきた。そのプロセスそのものがカリキュラムマネジメントで

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あり、それはこれからも引き続き行われていくものなのである。

3.美原中学校におけるカリキュラムマネジメントの成立と改善

 はじめに

この章では、カリキュラムマネジメントの実践について、その成立や改善のプロセスをより 具体的に詳しく示したい。筆者(奥田)は、当事者として美原中学校のカリキュラムマネジメ ントに実質的に関係してきた。カリキュラムマネジメントという概念は意識されていなかった が、ふりかえって見るとこれまで行ってきたことはまさにカリキュラムマネジメントであった。

美原中学校に赴任して6年目になる現在、筆者らが行ってきた教科での実践に加え、総合的 な学習の時間や特別活動における実践が、多くの方に参考にさせてほしいと言っていただける ようになった。そして、多くの講師の方に講演をしていただいたり、企業や団体の方から教材 の提供を受けたりするなど、多くの協力を受けた。結果としてこれらの実践から生徒は多くを 感じ、考え、学ぶことができたと感じている。

これらの実践はもちろん筆者だけが取り組んだものではなく、学校の教育目標という同じ方 向を目指し、学年の教員や学校全体の教員が協働して作り上げてきたものである。さらに、こ れまで本校で勤務され、生徒の学びのために尽力されてきた諸先輩方の実践が教育課程として 引き継がれ、現在の実践の背景となっている。つまり、授業デザインや教材づくりに学校の多 くの教員の想いが込められており、また過去に勤務されていた先輩教員の経験や実績が組み込 まれている授業を、筆者らが現在の生徒の実態に即して学校を代表して行っているのであり、

今の授業は常に本校の実践の集大成であるとも言える。

本報告では、先輩方から引き継ぎ、生徒の学びに合うよう改善を続けてきた実践を、学校の 教育目標、そのための教育課程、組織形態などのカリキュラムマネジメントの重要ポイントか ら振り返り、次の世代の教員に引き継ぐために何が必要かを整理していく。また、これらにつ いて整理することで、美原中学校の教育課程、教育目標などのカリキュラムマネジメントの重 要ポイントがどのようなプロセスで構築され、維持され、改善されているのかが明確になり、

同様の課題を抱える学校への手がかりとなるのではないかと思われる。

まずは本校の効果的なカリキュラムがどのようにして成立したかを、過去に勤務された先輩 教員からの話をもとに整理する。そして、カリキュラムの構築に必要なエッセンスについて考 察する。

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 人権学習 ~荒れない美原中に向けて~

平成28年度に教育目標が「

『学びの共同体』を核とした『総合的な学力』の向上、

人権 教育の推進、

地域に信頼される学校づくりの推進」へと変更される前、平成24年度から平成 27年度の4年間においては、「人権尊重の精神を基盤として、自尊感情の醸成を図り、『学びの 共同体』を核とした『総合的学力』の向上をめざす」という教育目標が用いられてきた。つま り、この時点では教科学習よりもまずは生徒一人一人の人権を尊重するというのが学校として の一番の目標であった。

この背景には10数年前に、教室で授業を受けることができない生徒が複数いるなど、いわゆ る学校が荒れている状態があったと聞いた。当時は生徒指導が一番大切であるとされ、教員の 創意工夫で生徒への個のアプローチや家庭への働きかけや授業での取り組みがなされていた。

教員は担当教科や担当部活動、性別や年齢、性格などさまざまな特徴を生かし、学校の荒れに 立ち向かっていたのである。しかし、当時の生徒指導担当教員は、このような教員の特徴を活 かした教育が、逆に教員に差をつけるように生徒に誤解され、「この先生の時はこう。 この先 生の時は~」と対応が分かれ、授業や学年によって生徒が態度を変える原因になったと振り返 る。 そのため、「教員が一枚岩になる必要がある」という思いから教員が同じ方向を向く必要 があると考え、学校としての方向性としての学校目標を決めることにしたのである。そして、

家庭でも課題を抱える生徒も多くいたため、生徒の自尊感情を醸成するために人権学習に力を 入れることにしたのだと聞いた。

そして、教員のこれまでの経験を活かした平和学習や部落問題学習などの多くの人権学習を 行った。すると、「自分も大切にされている」と感じる生徒が増えたためか、 さっそく学校は 落ち着きだす。しかし、その効果は長くは継続できずに、また荒れへと逆戻りしていく。この とき、せっかく有効的な人権学習を行っているが、今までと同様に結果的に教員の個に頼った 学習になっているため、学校として同じ教育を系統立てて行わなければならないと考え、五単 元部会を組織したのである。これが本校の人権学習の最大の特徴である教育課程の大きな柱の 五単元部会の始まりである。

このように教育目標だけでなく、教育課程および教員組織まできちんと構築することで、こ れまでの経験を活かしたさまざまな生徒の学びに効果的な実践が一般化される。これにより経 験のある限られた教員の限られた実践ではなく、多くの教員が実践することができる開かれた 実践となるのである。また、生徒の成長を見据えて、担当教員が入れ替わっても3年間を見据

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えた系統立てた学びをデザインすることも可能になり、生徒をさらに深く学ばせることにもつ ながったと考えられる。

この後、10年間ほどこの教育課程が維持され、引き継がれ、筆者が赴任する平成24年度へと つながっていくのである。その中で、平成27年度には「在日外国人理解学習」から「国際理解 学習」に名称を変更し、取り扱う内容の幅も広げるなど生徒の実態や社会の現状に合わせた教 育課程になるよう改善を続けている。

 教科での実践 生徒の人権尊重のための学びの共同体

のように人権学習を柱とした教育目標を掲げ、学校の荒れに立ち向かっていく過去の本校 の先輩方の実践の中で、「人権教育を推し進める一方で、学校生活の中心となる授業において は、生徒の人権を大切にできているのか」と疑問に感じた教員が自身の授業において平成19年 度より学びの共同体に取り組んだ。そして、その授業の生徒の学ぶ様子から学びの共同体が本 校の生徒に適しているのはないかと考え、授業の中に協同的な学びを取り入れることを提案し たのである。これを後に聞いたとき筆者は、人権学習を推し進める上での教育課程の改善の一 つが、授業内における人権学習としての学びの共同体であったのではないかと考えるように なった。

結果として、平成20年度より「美原中学校重点目標」として第一に「学ぶ意欲…自ら学ぶ意 欲を高める授業の工夫」を掲げ、「各教科において公開授業を行い、 生徒の学びにおける研修 を深める」ことを目指し、学びの共同体に全学年・全教科で取り組み始めることになった。

そして、人権学習同様に学びの共同体もさまざまに改善され、現在は教育目標の第一に「『学 びの共同体』を核とした『総合的な学力』の向上」が掲げられるなど本校の教育の中心へと なっていった。

 学びの共同体に取り組んで

前任校が他市である筆者にとって、本校に赴任して1周り目では市としての方針や、学校と しての教育目標などさまざまな違いに戸惑うこともあった。特に、前任校では「協同学習」(杉 江、2011)に取り組んでいたが、本校では学校として学びの共同体に取り組んでいたため、同 じ「学び合い授業」ではあるものの違いもあり、うまくいかなかった点や悩んだ点、課題など も多かった。(杉浦・奥田,2014)

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平成24年度にはすでに、学びの共同体を提案した教員と、その提案を受け学校全体として取 り組むべく押しすすめてきた校長の両者が異動していたため、彼らと同勤し、ともに実践して いた教員から聞き教わるか、提案した教員が残した授業ビデオや教材から学ぶかという方法し か筆者が学びの共同体を校内で学ぶ機会はなかった。実際に、筆者が赴任した平成24年度は教 員の3分の1が異動で入れ替わっていたため、「学びの共同体に取り組む意図が分からない」

や「今まで慣れた一斉授業の方が楽」などという意見を持った教員も少なくなかった。

しかし、このときすでに、 教育目標に「『学びの共同体』を核とした『総合的学力』の向上 をめざす」と掲げられており、管理職だけでなく全ての教員でその必要性を共有した結果、全 学年、全教科で取り組み、研修部を中心とした校務分掌により、月に1回の研究授業(校内研 修)と学期に1回の相互授業参観を行うことや、1 

年に1回は研究授業を行うことなど授業改 善に向け、教育課程が細かく設定された。そのため、学びの共同体に取り組まないという選択 肢がなく、経験豊富なベテラン教員は苦労している様子だったが、筆者のように経験の浅い教 員や新任教員は他に経験がない分、自然と取り組めたと振り返ることができる。校内研修にお いては学びの共同体研究会のスーパーバイザーとして広島市内の元校長の講師の方や堺市内の 元校長などにもお越しいただくなど、学外からも指導していただいた。

また、何もない状態から何かを作り上げるより、ある程度、基本形を提示してもらいそれを 活用する方が授業をイメージしやすかったこともあった。また、学校として教員みんなで取り 組むことにより悩みや課題を共有することできたのも、自身が成長する上で大切であったと感 じる。

さらに、出張として1年に1回は他校への視察や研修などに参加するということも決められ ていたため、負担に感じることも少なく学ぶ機会を作っていただけたことも、カリキュラムマ ネジメントが機能していたからであると考えられる。

 総合的な学習の時間の実践 ~学年を超えた組織運営で学んだ五単元部会~

学びの共同体と同じくらい筆者が戸惑ったのが人権学習であった。教育目標に「人権尊重の 精神を基盤として、 自尊感情の醸成を図り、『学びの共同体』を核とした『総合的学力』の向 上をめざす。」(平成24年度)と掲げられるなど、教科学習よりも学校として力を入れていたの が人権学習である。同和教育研究指定校が部落問題について学び、外国人が多く通う学校は国 際理解学習を学ぶイメージを持つ人が多いと思うが、本校では平和学習・部落問題学習・男女

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共生学習・国際理解学習・障がい者理解学習からなる五単元部会を組織していた。そして、3  年間で五単元を系統立てて学習できるように計画することになっていた。つまり、筆者が3年 間担任として授業をする中で、それぞれの人権課題について必然的に学ばなければならなかっ たのである。当時は大変だと感じることも多かったが、今振り返って考えると、それは今まで それらを意識して生きてこなかったからであり、生徒とともに学び直してきただけだと学んで よかったと思っている。

また、全教員が五単元部会のいずれかに所属し、学年の学習はもちろん、他学年の学習の計 画にも携わることも少なくない。つまり、授業のデザインの基を作らなくてはならないため、

自身が所属する分掌についてはさらに深く学ばないと他の教員に伝えられない。しかし、各分 掌には先輩教員もいるため、一緒に授業を作る中で先輩教員から自然と多くを学ぶことができ ていた。

このように、教育課程において校務分掌でやらなければならないことが明確に決まっている ため、生徒に何を学ばせたいかから悩み一人で試行錯誤するより、生徒にこれを学ばせるため にどのような教材でどのように伝えればいいかを複数の教員で協働できるため、結果的に筆者 自身が深く学ぶことができたと感じている。

 教育課程から若手教員が学んでいくために必要なこと

これをしなければならないという教育目標に加えて、このようにしましょうという細かい教 育課程が決められていれば、「大変だ」や「これをやる必要があるのか」などと感じてしまう ことは少なくない。しかし、「今の生徒にどのような教育が必要か」を見抜くのもとても大変 であり、「この教育が本当に必要なのか」を確かめるのも難しい。

教科の授業についても、人権学習についても授業実践を終えて振り返ってみると、明確な目 標が示されているのに加えて、教育課程である程度、内容が決まっていたため、内容について 深く追求することができたと実感している。また、特に経験が浅く、さまざまなことを学ばな ければならない若い教員にとっては、「これを学ぶ必要があるのか」ということを考えるより、

まず「学ばなければいけない」という状況である程度受け身的に学ぶことも学び始めにとって は必要だったのではないかと筆者は自身の経験から感じた。また、教科等や学年を超えて協働 することで、若い教員が多くを学べることに加え、生徒を協働的に学ばせる方法を体感的に学 ぶこともできたと感じた。

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 総合的な学習の時間の改善

本校のある堺市においては、堺の教育資源(歴史・文化・産業・自然・人々など)を学ぶこ とを通して、身近な地域社会に関わってその現状や課題と向き合い、よりよい社会を創り出し ていく担い手の育成をめざして「子ども堺学」の推進を行っている。

本校でも、美原町から平成17年に編入し、堺市美原区になった12年前から、堺市の歴史や文 化、産業などから学ぶ地域学習を教育課程において「堺市フィールドワーク」と題し、毎年10 月~11月の校外学習として行えるよう計画している。平成27年度以前は、人権課題を学習する コースに加え、与謝野晶子の生家跡や歌碑をめぐる「与謝野晶子コース」や大仙古墳をめぐる

「古墳コース」、自転車や刃物について学ぶ「地場産業コース」など地域の特色を生かした5~

6コースに分かれて学習を行っていた。

しかし、筆者は平成27年度の教育目標に「人権教育の推進」と掲げられていることと、地域 の人的・物的資源を効果的に組み合わせることにこだわって実践を行った。コースは人権に関 わるコースを加え、例年より多い9つのコースを設定し、すべてのコースで講師を招き講演を 聞いたり、防空壕などに入ったりするなどの体験をするなど「ほんものとの出会い」をテーマ にして授業を組みたてた。さらに、翌年度も同様に教育課程をそのまま実践するのではなく、

「ほんものとの出会い」を推し進めて生徒の実態に合わせた授業実践を心がけることで、 平成 27・28年度の2年間で、総合的な学習の時間を中心とした人権学習において、のべ35人の講師

の方と、30の企業や団体に協力いただくことができた。

このように、筆者は総合的な学習の時間として一つの学級で学習をすすめることよりも、学 年または学校として一丸となり学習をすすめていくことで、教員もともに感じ、ともに学べる ことができると考え、授業実践を行った。これは、すべての教員は生徒の学びを深めるための 授業づくりなどを行っているが、日々の多忙な業務に追われ、教科の授業についてもなかなか 教材研究に費やす時間がないのが現状であり、ましてや、総合的な学習の時間となると教科に 比べ、教員自身の経験も意識も不足しているのではないかと考えたからである。実際に、提案 すると多くの教員が生徒の学びにつながるならと積極的に協力してくれ、学年・学校全体とし て授業デザインを考えることができた。

結果として、生徒のアンケートから例年に比べて「人権学習に興味を持ち、学習の意義を理 解する生徒」が増えたり、「人権学習は将来の自分に役立つ」、「学級や学年の雰囲気も互いを 認め合えるようになったと感じている」と思う生徒が増したりするなど、人的・物的な地域資

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源を活用した結果、生徒の学びが深まったと思われた。教育活動だけでなく教育課程も生徒や 地域の現状に合わせて改善し実践することによって、理想的な PDCA サイクルを行うことが できたと考えられる。

 教科での実践 ~対話的に深く学ぶ教科を横断した「はがき新聞」授業実践~

ここまで述べてきたように、平成20年から学校として全学年、全教科で学びの共同体に取り 組み、 生徒が「何を知っているか」よりも、「知っていることを使ってどのように他者と関わ り、理解を深めるか」ということを重視し、授業をはじめとしたさまざまな教育活動を行って きた。

加えて筆者は、生徒が一人一人互いの違いを認め、一人一人輝けることを常に意識して実践 を行うことで、生徒が主体的に、そして対話的に深く学べるよう授業を計画し実践してきた。

特に理科において平成27・28年度の2年間で合計5回行った「はがき新聞」(理想教育財団,

2017)を用いた実践では、言語活動に加えて、生徒は「思考力・判断力・表現力」に加えて、

「問題解決力」や「継続的な学習力」を身につけられるようになった。 また、 平成27年度にお いて、これらの取り組みが生徒の深い学びに効果的であると感じたため、言語活動に加え、生 徒が対話的に学ぶ授業づくりに悩んでいた国語科の教員に紹介したところ、すぐに取り組んで くれた。授業づくりに関しては筆者も一緒になり考えることで教科を超えて、生徒の学びに向 けて協働することができた。

平成28年度には、筆者が学年主任を務めていた学年の数学科においては単元の中間まとめ学 習として、英語科においては職業体験のまとめ報告書として、教科を横断して「はがき新聞」

に取り組むことができた。言語活動の充実や対話的に学ぶためのコミュニケーション能力など の育成が生徒に必要であると考え、教科横断的に「はがき新聞」に取り組み、学びを深めるこ とができた。

また、教科学習だけでなく、総合的な学習の時間での平和学習においても生徒の使い慣れた ツールとしてはがき新聞を用いて、沖縄の調べ学習を行ったり、生徒会役員が学校紹介や活動 報告を行ったりするなど、学年を超えて取り組むこともできた。まさに、教科等間を関連づけ 横断的に生徒の学びに必要なことについて考えることが自然とできたと感じた。

さらに、本校でのこのような取り組みを堺市内の43中学校の生徒会役員が集まり、研修を行 う「堺市立中学校 生徒会代表者のつどい」や「堺市立中学校 生徒会リーダー講習会」など

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で紹介したところ、興味を持ってくれた多くの教員や生徒会役員がその後、自身の学校で取り 組んでくれるなど本校だけに留まらず、堺市内の多くの中学校へと広がっていった。

このように筆者一人から始まった実践が各教科だけでなく、総合学習や特別活動と学校全体 での取り組みへとつながり、今では堺市内の多くの中学校へと広がっていったのは、教員同士 の同僚性が大きく関わっていると考えている。生徒の学びにとって有効である授業づくりや学 習ツールがある教員のある授業で実践されていても、他の教員はその有効性に気づかず、その 取り組みが広がるのに時間がかかることは学校現場において少なくない。しかし、教員が生徒 指導上のことがらだけでなく、自身の授業実践への想いや、実践での生徒の変容などを細かく 情報交換するなど同僚性を大切にしたことがこのような実践の広がりにつながったのではない かと考える。

これらは教育課程を編成し、 実施し、評価して改善する PDCA サイクルの確立のプロセス と同様であり、このような密な情報交換を自然と行えることがカリキュラムマネジメントを支 える基盤になっていると考えられる。

 特別活動のカリキュラムマネジメント

過去の先輩方が多くの実践を築いてきた本校においても、特別活動においてはカリキュラム マネジメントが効果的に実施できていない。文部科学省国立教育政策研究所教育課程研究セン ター(2016)も特別活動には教科書がないことなどから、先輩教員からの指導技術の継承が円 滑に行われなかったり、特別活動の教育的意義が十分に理解されなかったりするなど、特別活 動の学習が必ずしも効果的に行われていないという課題が散見されると述べるなど、本校に限 らず特別活動における効果的なカリキュラムマネジメントの実施は多くの学校の課題であると 言える。

筆者が赴任する以前、特別活動を主に担当する校務分掌である生徒会活動担当は、他校の勤 務経験のない若手の教員が担当することが多く、何を行っていいのか分からない状態であった と聞いた。実際、生徒会活動が生徒会役員だけの一部の活動と誤解されていたり、生徒会役員 選挙も立候補者が立たず、教員が説得してなんとか立候補者を確保できても、選挙時に不信任 が過半数になり、再選挙になったりする現状があった。

この状態から特別活動を活性化させるべく多くの生徒会担当が孤軍奮闘してきたが、結局、

担当者の入れ替わりで引き継がれることがなかった。そこで、筆者は生徒会担当として平成24

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年度には生徒会活動を中心とした活動を活性化させ、生徒だけでなく教員にも生徒会活動の重 要性を再確認させた。平成25年度には生徒会活動と学級や学年の特別活動をリンクさせ、特別 活動全体について意識させるようにした。平成26年度には学校全体として教員が一丸となり特 別活動に取り組み、特別活動を活性化させることができた。このように3年間をかけて活動全 体を活性化させ、多くの教員の巻き込むことができた。

その間、3 

年間の実践という教育活動を振り返り、生徒会活動を系統立てて行うことと、組 織的に行えるように意識した教育課程を構築した。その後、3年間で生徒会担当は2名変わっ たが、構築した教育課程に基づき教育活動が実施され、結果として「学級力アンケートを用い た学級力向上プロジェクト」が日本特別活動学会で第3回全国推薦実践事例として表彰される など、生徒の学びにつながった。

このように、カリキュラムマネジメントの実施の第1段階としては、系統立てた教育課程を 構築するために、3 

年間の教育実践で多くの教員を巻き込み、生徒も教員も実践の成果を実感 することが必要である。次に、成果を実感できた実践ができるような教育課程を構築し、実践 の裏にある想いが伝わるように工夫することが大切である。今後は、この教育課程を見直し、

改善できるようしていきたいと考えている。

 教育課程と教育活動をつなげるもの ~教員の同僚性と実践に対する想いを共有する~

全国的に若い教員が増えている中、本校も例にもれず若い教員が中心の学校であり、教わる 先輩教員が少ないため、若手教員らで協働し学んでいくしかない。これは、経験が少ないのが 課題であるが、同時に固定概念に捉われず、授業に活かせると感じれば新しいものでも抵抗な く取り入れられるという側面もある。これらを生徒の学びにより効果的に活かすために筆者は 生徒が聴き合う関係を大切にした学級づくり同様に、若手教員が聴き合う関係作りを大切にし た学校づくりにも力を入れてきた。

その結果、教員同士が連携を密にし、周りからの情報を交換しあうことで、先輩が少なく、

経験が少ないことをカバーでき、教科を超えて授業づくりを協働することで他教科での実践や 新しい教材やツールを導入するなど生徒の学びを深めることにもつながった。

実践を振り返ってみると、教員が生徒にどのように学んでほしいか、生徒のどのような資質・

能力を育みたいかという想いをしっかり持ち、共有できたことが生徒の質の高い深い学びにつ ながったと感じることができた。また、それらの想いを形として伝えることで、外部講師の方

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にもその思いがしっかり伝わり、多くの方に講演をいただいたり、団体や企業の方から教材を 提供いただいたりするなど協力していただくことにつながった。

また、これらの実践はもちろん、教育課程も学校ホームページなどで公開するなど、保護者 や地域の人々を巻き込んだカリキュラムマネジメントが確立されていることが、地域協働学習 のような教育活動や家庭学習の推進などにもつながったと考える。

 カリキュラムマネジメントを見据えた教育目標・教育課程の構築

筆者が本校で大切にしてきた「ほんものとの出会い」と「教員の聴き合える関係づくり(同 僚性)」はカリキュラムマネジメントがきちんと実施されてきた本校において、実践を行う中 で、無意識に養われたものであった。しかし、それはこれまでの教育課程などが構築されるプ ロセスを整理していく中で、当時の先輩方が大切にしてきたことを自然と引き継いでいたので あった。

これまで述べてきたように、教育課程の構築には3年間を系統立てて学習できるように全体 を見据えて構成することや、誰でも実践できるように一般化されていることなどが大切である。

しかし、それに加えて、教育課程そのものが単なるノウハウや教材だけを示すものとなるので はなく、実践の裏にある当時の実践者の苦労や成果などの「想い」が伝わるような工夫が必要 であると感じさせられた。本校の教育課程を見た時は、筆者も正直「大変だ」や「資料が多す ぎる」と戸惑ったことは事実である。しかし、それは過去の実践者がこのようなプロセスで授 業を組み立てたことなど、実践者の思考を辿れるような配慮があったからだと今になって想像 することができる。

次の世代に分かりやすく引き継ぐことや一般化することだけに着目して、簡素化していけば、

もっとシンプルな教育課程を構成することができるが、そうなると生徒の背景や教員の想いが 無くなってしまい、本当の意味での教育課程ではなくなってしまうのではないか。まさに、各 学校が教育課程の編成主体となり、生徒の姿や実態に応じて構築することが重要である。

 今後も効果的な実践を引き継ぐためのカリキュラムマネジメント

本校においては、教科学習や総合的な学習の時間においては、過去の先輩教員らがカリキュ ラムマネジメントの重要性に気づき、効果的な教育目標や教育課程を構築してきた。さらに、

それらを維持し、改善する一連のサイクルまでも確立していた。しかし、本研究のように意識

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しなければ、普段の教育活動から本校がきちんとしたカリキュラムマネジメントを確立してい ることに気づくことは難しい。よって、各教員はこの重要さを他教員と共有し、今後ともカリ キュラムマネジメントが継続できるように意識しなければならない。

このときに大切なのは、教育目標・教育課程に込められた想いを理解することである。裏に 隠された想いを理解せずに表に見える部分だけで実践を行うと、教育課程の想いと指導者の想 いが一致しないため、効果的な指導につながらない。すると、その教育活動そのものの意義が 問われ、せっかくの実践が無くなってしまう可能性が高くなる。もちろん、教育活動や教育課 程を見直すことは必要ではあるが、この改善は教育課程を構築した教員らの想いとは異なるた め、効果的だとは考えにくい。過去の教員の想いを受けて、現在の教員が教育活動・教育課程 を改善していくことがカリキュラムマネジメントであると筆者は考える。このことに意識して、

今後も学校として展開していく必要があり、筆者もそう実行していけるようにしたい。

生徒の学びに効果的な授業実践を引き継ぎ、次の生徒の学びに活かすことはすべての学校に おいて不断の課題ではないか。本論文で示した本校のカリキュラムマネジメントの取り組みが、

教育活動の引き継ぎという課題に悩む教員や学校の参考になればうれしい。

付 記

本論文は、第1章、第2章を杉浦健が分担執筆し、第3章を奥田雅史が分担執筆しているた め、共に第1筆者である。

引用文献

文部科学省国立教育政策研究所教育課程研究センター 2016 学級・学校文化を創る特別活動

【中学校編】東京書籍

佐藤 学 2012 授業改革の哲学 東京大学出版会

佐藤雅彰・佐藤学 2011 中学校における対話と協同 ぎょうせい 杉江修治 2011 協同学習入門 ナカニシヤ出版

杉浦健・奥田雅史 2014 学びの共同体の授業実践 ―理論、現状、課題― 近畿大学教職教 育部紀要、Vol.26、1 

、1 

15.

田村知子 2011 実践・カリキュラムマネジメント ぎょうせい

田村知子 2014 カリキュラムマネジメント ―学力向上のアクションプラン― 日本標準

(22)

中教審論点整理 中教審 教育課程企画特別部会 論点整理資料(平成27年9月14日)

吉富芳正 2016 資質・能力の育成を実現するカリキュラムマネジメント 田村知子・村川雅 弘・吉富芳正・西岡加名恵編 カリキュラムマネジメントハンドブック ぎょうせい

参考資料

理想教育財団 HP(2017年12月2日現在):https://www.riso-ef.or.jp/

教職課程コアカリキュラムの在り方に関する検討会 教職課程コアカリキュラム(参考ホーム ページ 2017年12月2日現在):

  http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/126/houkoku/1398442.htm

参照

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