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論文審査の結果の要旨

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Academic year: 2021

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様式8の1の2 別紙2

論文審査の結果の要旨

専攻名 システム創成工学専攻 氏 名 岡野 千草

(1,500字程度とし,1行43文字で記入)

本論文は、「Quorum Sensingを正および負に制御するオートインデューサーキャリアの創成」

と題し、グラム陰性細菌における細胞間情報伝達機構Quorum sensing(QS)のオートインデュー サー(AI)を標的としたキャリアの設計と、そのQS機構制御能について論じている。

多様な細胞機能を制御するQS機構は、情報伝達を担うAIの濃度が上昇し閾値濃度に達した際に、

標的遺伝子の転写活性を向上させる遺伝子発現系である。本論文では、QS機構の正制御、負制御 の双方に効果を発揮するAIキャリアを設計してその効果を試験し、培養液に含まれるAIを捕捉す ることでモデル細菌のQS機構を効果的に制御可能なことを示している。

本論文では多くのグラム陰性細菌がAIとして生産するN-アシルホモセリンラクトン(AHL)と高 い親和性を有するキャリアとして、シクロデキストリン(CD)を固定化したコアシェル型ミクロス フェア、ポロキサマーミセルを調製し、これらのQS機構制御効果を明らかにした。

本論文で得られた主要な研究成果は、以下のように要約される。

1)ポリスチレン粒子をコア、ポリメタクリル酸をシェル層とするCD固定化ミクロスフェアは、

Pseudomonas aeruginosa AS-3株、Serratia marcescens AS-1株のQS機構を効果的に阻害するこ とを明らかにした。本ミクロスフェアは水への分散性に優れており、固定化CDは菌体から培養液 へ放出されたAHL分子を効率良く捕捉し、AS-3株のピオシアニン生産量、AS-1株のプロディジオ シン生産量が有意に減少することが示されている。

2)ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドのブロックコポリマーであるポロキサマー が水中で形成するミセルは、Pseudomonas chlororaphis subsp. aurantiaca StFRB508株, S.

marcescens AS-1株のQS機構を効果的に阻害することを明らかにした。8-アニリノ-1-ナフタレン スルホン酸をプローブとする蛍光スペクトル測定の結果は、液体培地へのポロキサマーの添加に より疎水場が形成されたことを示している。蛍光スペクトル解析、動的光散乱法による粒子径解 析の結果はミセルの形成を示唆しており、AHL分子が疎水性相互作用によりミセルに捕捉されて いる可能性が高いことを示している。培養液へポロキサマーを添加することで、StFRB508株のフ ェナジン生産量、AS-1株のプロディジオシン生産量が有意に減少することが明らかになった。

3)S. marcescens AS-1株の培養液に含まれるAHLを捕捉したポロキサマーミセルの分散水溶液 を、臨界ミセル濃度未満に希釈して、AS-1株のAHL合成遺伝子を破懐したAS-1S株の培養液に添加 すると、プロディジオシン生産量が有意に増大することから、QS機構を人為的に活性化する正制 御が可能であることが明らかになった。

本論文について、2016年2月10日に陽東キャンパス2号館221教室において、全審

(2)

査委員及び関連分野の研究者が出席のもとで公聴会が開催され、研究成果の発表および質疑応答 が行われた。公聴会終了後に審査委員全員による学位審査委員会を開催し、本論文の内容につい て詳細に検討した。本研究で設計したキャリアは、AI分子と相互作用しQS機構を効果的に阻害し ており、多様な細菌の機能制御への有用性が認められる。さらに、本論文ではQS機構の正負制御 を同一のキャリアで実施可能であることを示しており、AIキャリアの設計に新しい知見を与えた ことが認められる。本研究成果は工学的に価値が高く、かつ研究内容の学術的水準、有用性につ いても優れていると判断した。

よって、本論文は博士(工学)の学位論文に値するものと認める。

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