• 検索結果がありません。

Development of Methodologies for Analyzing Conflicts for Resolving Local Concerns by Participation of Multiple Concerns*

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2022

シェア "Development of Methodologies for Analyzing Conflicts for Resolving Local Concerns by Participation of Multiple Concerns* "

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

多主体参加による地域課題解決のためのコンフリクト分析手法の開発*

Development of Methodologies for Analyzing Conflicts for Resolving Local Concerns by Participation of Multiple Concerns*

榊原弘之**・山崎慎也***

By Hiroyuki SAKAKIBARA**・Shin-ya YAMASAKI***

1.はじめに

地域公共交通活性化・総合再生事業に見られるように,

近年の自治体においては,地域コミュニティ,企業,周 辺自治体などとの協調によって,地域の課題を解決する 必要性が高まっている.各主体は利害を異にしているこ とも少なくないが,互いの置かれている状況に対する理 解を共有することが,協調関係成立の契機になると考え られる.本研究では,主体間のコンフリクトを解析し,

互恵的な協調関係の成立可能性や,潜在的な連携相手を 把握するための手法について提案する.また,提案手法 を事例に適用することにより,提案手法の妥当性につい ても考察を行う.

2.コンフリクト解析手法

(1) 政策コンフリクトモデル

複数の主体が,地域の課題の解決のために,計画策定 に関与している状況を想定する.本研究ではこのような 状況を「参加型意思決定過程」と呼ぶこととする.また この過程に関与する主体を「参加者」と呼び,i で表す ものとする.各参加者iはそれぞれ地域の理想像や,利 害関係を有している.政策コンフリクトモデルでは,こ れを参加者i の「関心事」と呼び,iで表す.参加者

i

の関心事iを実現できる参加者をアクターと呼び,関 心事iを有する

i

自身(受益者)のことをレシーバーと呼 ぶ.

また,以下のような関心事の集合と利得関数を定義 する.

i:参加者

i

がアクターである関心事の集合

i:参加者

i

がレシーバーである関心事の集合

*キーワーズ:計画基礎論,地球環境問題,総合交通計画

**正員,博(工),山口大学大学院理工学研究科 (山口県宇部市常盤台2-16-1,

TEL0836-85-9355, FAX0836-85-9301)

***正員,修(工),建設技術研究所

i :参加者

i

がレシーバーでない関心事の集合

) (

pj

が実現した時の参加者

j

の利得

) (

pj

が実現しなかった時の参加者

j

の利得

(2) 参加者ペアの関係の類型化

本研究では,多主体が関与する参加型意思決定過程 においても,2名の参加者による1対1の交渉を基本と する.この2名による交渉単位を「参加者ペア」と呼ぶ こととする.本研究では,参加型意思決定過程を,参加 者ペアによって構成されるネットワークとして解釈する.

地域課題解決のために,まず,各参加者ペアで,2 者間 の協調関係を成立させることを目指すものとする.次に,

2者による協調が困難な場合には,他の参加者を関与に より,3名以上の参加者による協調関係成立を図るもの とする.最終的に,個別の協調関係の集積により,全体 の課題解決につなげることを目指すものとする.

各参加者の関心事や選好によって,参加者ペアの関係 を以下の6種類に分類する.これにより,類型に応じた 合意形成の方策を選択することが可能となる他,参加者 は自分の立場や役割を再認識することができ,協調や妥 協を促すことができると考えられる.

以下では参加者ペアを構成する2名の参加者をi, jと 表す.また,参加者 i, j の任意の関心事を と表す.

} {

i j は,参加者

i

がアクターで,参加者

j

がレ シーバーである関心事が少なくとも一つは存在すること を表している.

第 1 種の関係(図-1)

以下の条件を満足するとき,参加者i, jは第1種の関 係にあると呼ぶ.

(ij{},ji{}) (1ij,pi(1)pi(1)) (2ji,pj(2)pj(2))

第1種の関係は,参加者i, jの双方が,お互いに相手 がアクターである関心事を有している.また,このとき,

相手の関心事を達成するための行動をとることにより,

(2)

自らが損失を被ることはないため,お互いの関心事の達 成に貢献することへの躊躇は存在しない.そのため,参 加者i, j間に協調関係が成立する可能性が高い.このと き参加者i, jは,いわゆる「ウィンウィン」の関係にあ る.実際の交渉において,合意形成が容易な関係性であ るといえる.図-1に第1種の関係を模式的に示す.矢 印はアクター,レシーバーの関係を示し,矢印の根元側 がアクター,先端側がレシーバーである.また,矢印に 付した○は,アクターが当該の行動で損失を被らないこ とを示し,×は損失を被ることを示す(以下同様).

第 2 種の関係(図-2)

以下の条件を満足するとき,参加者i, jは第2種の関 係にあると呼ぶ.

} {

i j ,j i {}

j

i

1 ,2ji (pi(1) pi(1),pj(2) pj(2))

or

(pi(1) pi(1),pj(2) pj(2)) 第2種の関係では,第1種の関係同様,参加者i, jの 双方が,お互いがアクターである関心事を有している.

どちらか一方の参加者は,相手の関心事を達成するため には,自らが何らかの損失を被ることになる.そのため,

この参加者は相手参加者に協力することをためらう可能 性がある.つまり,一方の参加者は容易に協調できるが,

もう一方の参加者は協調困難であるような関係を意味し ている.公共サービスのための資源を再配分するような 場合,これまでの受益者が既得権の一部を譲ることを求 められた場合,第2種の関係が生じることがある.また,

合意のためには,両参加者が互恵的行動をとることが保 証される必要がある.

第 3 種の関係(図-3)

以下の条件を満足するとき,参加者i, jは第3種の関 係にあると呼ぶ.

(i j {},j i {}) (1ij,pi(1) pi(1)) (2ji,pj(2) pj(2))

第3種の関係も,参加者i, jの両方が,お互いがアク ターである関心事を有している.双方の参加者とも,お 互いに相手の関心事を満たす行動をとると自らが何らか の損失を被ることになる.そのため,お互いに相手参加 者に協力することをためらう可能性があり,お互いに協 調困難となる場合がある.互いに自らの既得権を譲るこ とが求められるようなケースが第3種の関係に該当する.

相手の関心事を達成するために行動したときに被る損失

i

j

図-1 第 1 種の関係

i

j

×

図-2 第 2 種の関係

×

i

j

×

図-3 第 3 種の関係

i

j

図-4 第 4 種の関係

×

i

j

図-5 第 5 種の関係

A B C

図-6 第 3 の参加者との連携による互恵的関係の形成

と,相手が自分の関心事が達成されたときの利得を比較 して,お互いに利得の方が大きいときには合意形成の可 能性があるが,一方でも損失の方が大きければ合意形成 は困難である.また第2種の関係同様,互恵的行動の保 証が必要である.

第 4 種の関係(図-4)

以下の条件を満足するとき,参加者i, jは第4種の関 係にあると呼ぶ.

「ij {},ji {}

j

i 

1 ,pi(1) pi(1)」 or

「ji {},ij {}

i

j

2 ,pj(2) pj(2)」 第4種の関係においては,参加者i, jのどちらか一方 のみが,相手がアクターである関心事を有している.他 方の参加者の関心事は,相手参加者によって満足される ことはない.従って,第4種の関係でアクターとなり得 る参加者にとって,協力は一方的となる.アクターは自 分の行動によって損失を被ることはないが,代償も得る ことができない.筆者らのゲーム実験1)においては,第 4種の関係において,協力的行動を選択しない被験者も 存在した.この場合,ペア内での合意が困難となる.

第 5 種の関係(図-5)

以下の条件を満足するとき,参加者i, jは第5種の関 係にあると呼ぶ.

「ij {},ji {}

(3)

j

i

1 ,pi(1) pi(1)」 or

「ji {},ij {}

i

j 

2 ,pj(2)pj(2)」 第5種の関係は,参加者i, jのどちらか一方が,相手 がアクターである関心事を有している.他方の参加者の 関心事は,相手参加者によって満足されることはない.

第4種の関係同様,アクターとなり得る参加者にとって,

協力は一方的なものとなる.また,アクターは相手参加 者の関心事を達成するために行動すると,自らが損失を 被る.一方的な関係であることから,その損失に対する 代償となる措置も存在しない.以上より,アクターがレ シーバーの関心事の達成に協力することは困難である.

実際の交渉では,参加者ペアの単位での合意形成が困難 な関係である.

第 6 種の関係

以下の条件を満足するとき参加者i, jは第6種の関係 にあると呼ぶ.

} {

i j and ji {}

第6種の関係では,参加者双方が,相手がアクターで ある関心事を有しておらず無関係である.

(3)第 3 の参加者との提携による互恵的関係の形成 第4種,第5種の関係において,第3の参加者の介在 によって,互恵的な関係を形成し,課題を解決していく ことを考える.図-6に例を示す.参加者A,Bについ て,AはBの関心事のアクターであるが,BはAの関 心事のアクターではない.つまり,参加者A,Bは第4 種または第5種の関係である.

参加者Bが参加者A の関心事のアクターである参加 者Cと連携することで,参加者Aと参加者B,Cは互 恵的な関係となる.これにより,合意形成を促進するこ とが可能となる.

(4) 第 3 種の関係における両立不可能な関心事 第3種の関係において,お互いの関心事が両立不可能 なケースが存在する.例えば,開発計画を巡る企業と反 対住民のコンフリクトにおいて,開発企業の関心事が

「開発の実施の了承」であり,反対住民の関心事が「開 発の中止」であるという場合,互いに相手の関心事のア クターであり,第3種の関係にある.しかし実際には,

両者の間に互恵的関係は成立し得ない.開発企業がアク ターとして「開発の中止」を選択すれば,自らの関心事 である「開発実施の了承」は達成不可能となる.一方,

反対住民がアクターとして「開発実施の了承」に踏み切

れば,自らの関心事である「開発の中止」は達成不可能 となる.つまり「開発実施の了承」と「開発の中止」は 独立した関心事ではなく,同じ関心事の両面を記述して いるに過ぎない.従って,両立不可能であるため,両者 は互恵的関係にはない.このような状況を,「第3種の 関係(完全トレードオフ)」と呼ぶこととする.完全トレ ードオフにおいて,両者の協調関係を成立させるために は,少なくともどちらか一方の参加者について,新たな 関心事を見出し,互恵的関係を導く必要がある.

3.事例への適用

2.で提案した解析手法を,多主体が参加した意思決 定の事例に適用し,分析を行う.ここでは地方都市の生 活交通計画を想定する.

参加者とその関心事は以下の通りである.関心事に 付されたby以下の番号はアクターを示す(以下同様).

① 市行政

・補助金の削減…by①

・市街地のバス路線の再編…by①②④

・郊外路線の合理化…by①②③⑤⑥

② バス事業者

・補助金の維持by①

・病院へのバスの乗り入れ…by①②③

・A地域へのバスの乗り入れ…by①②③⑤

③ タクシー事業者

・バス路線の現状維持…by①②

・デマンド交通への参入…by①②③

④ 商業関係者

・商業施設の路線・交通利便性の向上…by①②④

⑤ A地域住民

・A地域へのバスの乗り入れ…by①②③

⑥ B地域住民

・便数の現状維持…by①②

・商業施設,病院へのバス路線の改善…by①②

⑦ C地域住民

・バスの延伸…by①

⑧ D地域住民

・小学校児童の通学への配慮…by①

次に,各参加者の,自分が他の参加者のアクターとな る関心事の達成に関する選好について表-2に示す.○ は当該の関心事が達成されてもよいことを意味し,×は 関心事の達成を望まないことを示す.

以上の項目を入力すると,表-3の結果が得られた.

考察を以下に示す.

・「市行政」と「バス事業者」は第2種の関係及び第3 種の関係である.市行政の関心事「市街地のバス路 線の再編」や「郊外路線の合理化」には,不採算路

(4)

表-2 各参加者がアクターとなる 関心事についての選好

線の効率化を通じた補助金の削減という目的が含ま れている.そのため,バス事業者の関心事「補助金 の維持」とは相反する関心事同士であり,2(4)で示 した第3種の関係(完全トレードオフ)に近い.そのた め,これらの項目で両者の協調は困難である.一方,

第 2 種の関係においては,バス事業者が不採算路線 の効率化を受け入れる一方,市行政が病院や A 地域 への新規バス路線を計画するという協調関係が成立 し得ると考えられる.

・「市行政」と「タクシー事業者」は第1種の関係及び 第 2 種の関係であり,互恵的な関係である.また同 様に,「市行政」と「商業関係者」も第1 種の関係 である.これらの参加者間では,互恵的関係が成立 するため,協調が比較的容易であると考えられる.

・「バス事業者」と「タクシー事業者」は第3種の関係 である.バス事業者の関心事「病院へのバスの乗り 入れ」「A地域へのバスの乗り入れ」はタクシー会社 の関心事「バス路線の現状維持」と両立せず,完全

表-3 参加者ペアの関係性(第 6 種除く)

トレードオフの状態にあり,協調困難であるといえる.

そこで,第3種の関係のうち,「病院またはA 地域 への乗り入れ」と,「デマンド交通への参入」に注目 する.これらは,それぞれ独立した関心事であり,互 いに譲歩することにより協調関係が成立する可能性が ある.

・「バス事業者」と「商業関係者」,「タクシー事業者」

と「A地域住民」はそれぞれ第4種,第5種の関係で ある.ここでは,バス事業者や商業関係者の関心事 に応えることができ,タクシー事業者は A 地域住民 の関心事に応えることができる.しかし商業関係者 や A 地域住民は相手(バス事業者,タクシー事業者)

の関心事に応えることができない.2(3)で示したよ うに,第4種,第5種の関係においては,第3の参 加者の介在によって,互恵的な関係を形成し,課題 を解決していくことが考えられる.この場合,商業 関係者や A 地域住民と連携し得る参加者は市行政で ある.従って,市行政が関与した多角的な交渉を通 じて,課題の解決を図ることが必要と考えられる.

4.おわりに

今後は事例の蓄積により,提案手法の妥当性について の検討を行うことが必要となる.

参考文献

1) 榊原弘之, 木村香奈江 ,山﨑慎也:参加型計 画におけるコンフリクト類型と合意形成に関 する実験ゲーム分析,土木計画学研究・講演集, Vol.38, 2008.

関心事 レシーバー 選好

補助金の維持 バス事業者 ×

病院へのバスの乗り入れ バス事業者 A地域へのバスの乗り入れ バス事業者 バス路線の現状維持 タクシー事業者 × デマンド交通への参入 タクシー事業者 商業施設の路線・交通利便性の向上 商業関係者 A地域へのバスの乗り入れ A地域住民

便数の現状維持 B地域住民 ×

商業施設,病院へのバス路線の改善 B地域住民

バスの延伸 C地域住民

小学校児童の通学への配慮 D地域住民

市街地のバス路線の再編 市行政 ×

郊外路線の合理化 市行政 ×

バス路線の現状維持 タクシー事業者 × デマンド交通への参入 タクシー事業者 × 商業施設の路線・交通利便性の向上 商業関係者 A地域へのバスの乗り入れ A地域住民

便数の現状維持 B地域住民

商業施設,病院へのバス路線の改善 B地域住民

郊外路線の合理化 市行政

病院へのバスの乗り入れ バス事業者 × A地域へのバスの乗り入れ バス事業者 × A地域へのバスの乗り入れ A地域住民 ×

市街地のバス路線の再編 市行政

郊外路線の合理化 市行政

A地域へのバスの乗り入れ バス事業者

郊外路線の合理化 市行政 ×

市行政の選好

バス事業者の選好

タクシー事業者の選好

商業関係者の選好 A地域住民の選好

B地域住民の選好

参加者ペア 関係性

「市行政」と「バス事業者」 第2種の関係、第3種の関係

「市行政」と「タクシー事業者」 第1種の関係、第2種の関係

「市行政」と「商業関係者」 第1種の関係

「市行政」と「A地域住民」 第1種の関係

「市行政」と「B地域住民」 第2種の関係、第3種の関係

「市行政」と「C地域住民」 第4種の関係

「市行政」と「D地域住民」 第4種の関係

「バス事業者」と「タクシー事業者」 第3種の関係

「バス事業者」と「商業関係者」 第4種の関係

「バス事業者」と「A地域住民」 第1種の関係

「バス事業者」と「B地域住民」 第4種の関係

「タクシー事業者」と「A地域住民」 第5種の関係

参照

関連したドキュメント

In this study, an attempt is made to develop an Interactive Multiple-Objective Genetic Algorithm (IMOGA) based on a consept of “the consensus building”. Several numerical examples

The development of a Closeness Support Scale for abused children by employees of self-support homes Ema YOKOYAMA (Waseda University) , Minoru EHARA (University of the Ryukyus) ,

Shoji, “Continuous and regulated organic micro bubble generation using lumped gas and organic injected junction”, 20th IEEE International Conference on Micro Electro

Cyclic peptides are expected to have higher metabolic stability, cell membrane permeability, and target binding properties, compared to linear peptides, and are attracting attention

Model Experiment for Estimation of Uplift Pressure for Piled Jetty of Approach Light on Offshore Airport.. 齋藤英治 1 ・平山克也 2 ・稲垣茂樹 3

道路幅員,商店数,休日ダミーといった外生変数につ いては,おおよそ予想通りの結果が得られている.道

K.腭 1999 腮Health Transition in Kerala, Discussion Paper No.10, Kerala Research Programme on Local Level Development, Thiruvananthapuram: Centre for Development Studies.

9) Ashley Kovas,E舖ciency,Conflicts of Interest and Govema皿ce−Regulatory Developme皿ts for Investm㎝t Mamgers/Law罰nd Regula七〇n of Investm㎝t