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補修後の実構造物における電気化学測定による調査について

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Academic year: 2022

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(1)

カソード領域(防食)

アノード領域(腐食)

Fe2 Fe2

補修後の実構造物における電気化学測定による調査について

北陸支社 敦賀管理事務所 正会員 ○高久 英彰 正会員 加藤 陽一 飛島建設株式会社 正会員 槙島 修

1.はじめに

北陸自動車道では、コンクリート橋の桁端部に大きなクラックや一部剥離する状態が見受けられている。

原因は活荷重の衝撃などに加え、凍結防止剤を含んだ路面排水の影響とみられる鉄筋腐食も確認された。こ れらの損傷は、耐久性の観点からも適切な補修が必要であり、劣化コンクリートを除去し、断面修復を行う 断面修復工法を採用することとした。なお、断面修復工法に適用する材料によっては、補修部と未補修部と の境界でマクロセル腐食と見られる再劣化が発生する場合があることが近年の研究1で指摘されており、そ の検証が必要といえる。

そこで、対象とした構造物に一般的な断面修復材料であるポリマーセメントモルタルと無機系の補修材料 による断面修復を実施し、マクロセルによる再劣化への影響を電気化学的に評価することとした。本件では、

補修を行った実構造物の電気化学的な計測を開始した現状と測定結果について報告する。

2.マクロセル腐食のメカニズム

図-1にマクロセル腐食の概念図に示す。補修部と未補修部 の境界部に生じるマクロセル腐食とは、補修部の鉄筋電位が 貴な方向へ移行し、未補修部の鉄筋電位との電位差が拡大す るために起こる現象と考えられる。この時、鉄筋位置におけ る電流は、アノード側からカソード側に向かって流れ、アノ ード側の鉄筋が酸化する。

マクロセルの形成や腐食速度は、既設コンクリート中に含 有する塩化物イオン濃度、酸素透過性、電気通電性、湿潤状 態、温度、アノード、カソードの面積比等により大きく影響 を受けると考えられる。このため、既存のコンクリートと比 較して酸素透過性や電気通電性が異なる断面修復材について は、マクロセルによる再劣化が生じやすいことが想定される。

3.調査概要 3.1 対象構造物

表-1に調査の対象とした構造物の諸元を示す。対象部位は、

道路橋の床版下面であり、凍結防止剤による塩害が主な劣化原因と考えられた。

3.2 補修工法

適用した補修工法は、断面修復材として一般的に使用されるSBR系のポリマーセメントモルタルと無機系 特殊モルタルを用いた断面修復工法である。無機系特殊モルタルとは、無機系結合材を主成分としたモルタ ルに硬化促進剤を添加したものである。なお、この無機系特殊モルタルは、ポリマーセメントモルタルと同 程度の付着性や硬化収縮抵抗性を有するとともに、高い厚付け性能を有するものである。

3.3 調査項目および方法

未補修部と補修部の境界部に生じるマクロセル腐食を評価するために、電気化学的な計測を経時的に行う キーワード 断面修復材、無機系特殊モルタル、マクロセル腐食、再劣化

連絡先 〒914-0014 福井県敦賀市井川17号字稲荷薮8-1 JH敦賀管理事務所 TEL0770-22-9293 図-1 マクロセル腐食概念図

表-1 対象構造物概要

橋梁名 北陸自動車道 井川橋(上り)

橋 種 3径間中空スラブ橋

橋 長 42.7m

対象部位 A1橋台

劣化状況 塩害による浮き・剥離

(損傷面積8.14m2 部分補修箇所 土木学会第60回年次学術講演会(平成17年9月)

-367- 5-184

(2)

ことを計画した。図-2 に計測器の設置概要を示す。

測定項目は、補修境界部の鉄筋の自然電位と補修部 と未補修部に設置した鉄筋(プローブ)間の電流密 度の測定である。自然電位の測定は、照合電極とし て鉛電極を使用し、長期間の自然電位及び変化量を 計測し、補修境界部の鉄筋の腐食を評価するもので ある。また、電流密度の測定は、埋設した分割鉄筋 間に流れるマクロセル電流をとらえる方法 2)を参考 として実施した。なお、未補修部にプローブを埋設 する際に使用したモルタルは、モルタル中に未補修 部と同等の塩化物を混入したケースも設定した。

4.計測結果 4.1 自然電位

電極を埋設した時点と材料の凝結がほぼ収束したと考 える初期値(材齢1ヶ月)と初期値から3ヶ月後の計測 結果を図-3に示す。 初期値における飽和硫酸銅電極に 換算した自然電位は、無機系モルタル近傍のコンクリー ト部の鉄筋で-324mV であった。この結果は、選定した 鉄筋が腐食している可能性を示すものである。その他の 位置での自然電位は約-200mV の値であり、鉄筋の腐食 の可能性は低いと考えられる。3 ヶ月後では、両者の断 面修復材近傍のコンクリート部において自然電位が卑に シフトしている状況が見られた。

4.2 電流密度

自然電位の場合と同様の時期における電流密度の測定 結果を図-4 に示す。初期値における電流密度は、0.02μ A/cm2 程度以下といずれも小さいものであり、腐食が生 じるような状況は認められなかった。なお、ポリマーセ メントモルタルと未補修部において相対的に若干高い値 が計測された。さらに3ヶ月後では、全体に電流密度の 増加が認められた。

5.まとめ

実際の構造物において断面修復材料の品質の差異によ って生じると考えるマクロセル腐食に着目した電気化学 的調査を開始した。現状では、一部に初期値の段階から 自然電位の低い部位も認められた。また、電流密度は、

いずれの測点においても初期値において腐食が生じるような状況は認められなかった。今後の継続調査によ って劣化の進行を評価したい。

参考文献

1)伊藤正憲,宇野祐一,弘中義昭,魚本健人:補修条件の違いによる補修後の再劣化に関する研究,日本コンクリート工 学年次論文集,vol.26,2004.7

2)長滝重義,大即信明,守分敦郎:鉄筋コンクリート部材の断面修復部における腐食形成に関する実験的研究,土木学 会論文集,V-32,No544,p.p.109~119,1996.8

図-2 計測器の設置概要

図-3 自然電位の計測結果

図-4 電流密度の計測結果

mA mA

mV

mV

mA mA

mV

mV

無抵抗電流計

無抵抗電流計

高抵抗電圧計 高抵抗電圧計 既設コンクリート

(未補修部)

断面修復材(補修部)

既設鉄筋

プローブ③

プローブ④ 照合電極 照合電極

-500 -400 -300 -200 -100 0

H16.12.9 H17.1.21 H17.4.1 測定日

自然電位(mV)飽和硫酸銅 極換算値

照合電極① (未補修部:ポリマーセメントモルタル側)

照合電極② (ポリマーセメントモルタル)

照合電極③ (未補修部:無機系特殊モルタル側)

照合電極④ (無機系特殊モルタル)

0.00 0.02 0.04 0.06 0.08

H16.12.9 H17.1.21 H17.4.8 測定日

電流密度(μA/m2)

プローブ①ポリマー→プローブ②未補修部(塩化物無)

プローブ③ポリマー→プローブ④未補修部(塩化物混入)

プローブ⑤無機系→プローブ⑥未補修部(塩化物無)

プローブ⑦無機系→プローブ⑧未補修部(塩化物混入)

土木学会第60回年次学術講演会(平成17年9月)

-368- 5-184

参照

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